第二十話
沖縄旅行4日目。
3日目に関しては内容がアレなので、しかるべきところで語ることにしよう。
今日の昼間は体験ダイビングツアーに参加し、刀奈と水中デートを楽しんだ。
インストラクターのお兄さん付きだったが………
刀奈はともかく、俺はダイビングの資格を持っていないので仕方ない。
それでも、海の中の素晴らしい光景は、俺の心に深く感動を覚えた。
5日目は、土産の買い物を兼ねた街でのデートだ。
街を回って気に入った物を買っていく。
予想外だったことは、マジでアニメのように買ったものの箱のタワーを持つことになったことだな。
あ、因みにゲーセンとかも行ってみた。
原作通り刀奈はシューティングが凄すぎて圧巻だった。
しかし、レースゲームでは俺が勝った。
車の運転に慣れてないのかね?
そしてその夜。
俺達は偶然行われていたイベントの花火を見上げていた。
前に見た篠ノ之神社の風情ある打ち上げ花火とは違い、派手さを重視した近代的な花火だ。
これはこれで凄いと思う。
刀奈は俺の腕に自分の腕を絡ませ、俺に寄り添うように花火を見上げている。
「明日で旅行も終わりかぁ…………やっぱり楽しい時間っていうのはあっという間に過ぎじゃうものなんだね…………」
言葉の中に寂しさを織り交ぜつつ刀奈は呟く。
「そうだな………あっという間の5日間だったな」
俺も同意するように呟く。
「でも、旅行は終わりでも、私達はずっと一緒だよね…………?」
「ああ」
刀奈の言葉に、俺は迷いなく頷く。
俺は手を動かし、刀奈の手を握る。
刀奈も手を開き、指を絡めて来る。
「刀奈」
「うん………」
「愛してる」
「フフッ、嬉しい。 私もだよ、盾」
自然と互いの顔が近付き、キスを交わした。
翌日。
今日は昼一の飛行機で帰るため、ホテルのチェックアウトだけだ。
そんなこんなで空港で飛行機を待つ。
そこで、
「そう言えば、2学期は明後日からだけど、明日はどうするんだ? やっぱ特訓か?」
俺が思い出したようにそう言う。
「ううん、明日は休み。 私も溜まってた生徒会の仕事を片付けないと………」
刀奈の言葉に、
「生徒会の仕事か…………なあ刀奈、俺も生徒会入ろうか?」
俺はそう聞いた。
「えっ? こっちとしては嬉しい申し出だけど………いいの?」
「お前の時間潰してるのは俺だし、俺もどこの部活にも所属してないのは問題だろ? それならお前の居る生徒会に入ったほうが得だ」
「じゃあ…………お願いしていい?」
「ああ。 あ、でも役職は一番下っ端の庶務にしといてくれよ。 あんまりデスクワークは得意じゃないからな」
「りょ~かい! それじゃあ明日から宜しくね、盾!」
「おう」
こうして、俺達の沖縄旅行は幕を閉じた。
そして、IS学園の2学期が始まる。
―――と思いきや。
「全員! 大人しくしてもらおうか!!」
そう叫ぶ男。
なーんでこんな事になってるんだろう?
現在絶賛ハイジャック中です。
人数は10人、全員マシンガン持ち。
動機は知らん。
やれやれ、なんでこうもトラブルに巻き込まれるんだか。
俺にこうも余裕があるのは、右腕にISがあるからだ。
最悪飛行機が墜ちても俺と刀奈は死なんだろうから、そこだけは安心できる。
まあ、他の乗客を見捨てるのは気分が悪いから下手な真似はしないが。
「はぁ~~……………」
俺は溜息を吐く。
そして、
(刀奈、どうするんだ?)
俺はプライベートチャネルで刀奈に話しかける。
(とりあえず、犯人が落ち着くまでは様子見。 それから隙を見て機を解放するわ)
(了解)
俺は返事を返し、大人しくしていようと背もたれに身を任せた。
その時、
「おいガキ! そこのパッとしないガキ!」
いきなり怒鳴りつけられ、視線をそちらにやると、
「そうだ! お前だ!」
男に銃で手招きされ、俺は仕方なく立ち上がる。
(空、シールドバリアをやばくなったら展開してくれ)
(わかったよ、お兄ちゃん)
俺が男の前に行くと、
「ガキ、その扉の前に立て」
男が指示した場所は、機体中程にある扉の前。
俺は両手を上げながらその前に立った。
………なんかこの後の展開が読めた気がする。
「ご乗客の皆様、我々行動が決してが脅しでないことをご覧頂きましょう」
ジャキっと俺の後ろで銃を構える音が聞こえた。
マジで?
「開けろ!」
男の合図と共に扉が解放され、
――ズドドドドドドドドドドドド!!!
俺の背中にマシンガンが乱射された。
まあ、全部シールドバリアのお陰で怪我は無いんだが。
ともかくこのまま突っ立ってるのは拙いので、前に倒れこむように扉から飛び降りた。
その瞬間、
――ゴンッ!!
「んがっ!?」
頭に痛みが走る。
飛び降りた瞬間風圧で吹き飛ばされ、更に飛行機の翼に直撃したのだ。
流石にシールドバリアでは飛行機の直撃は完全には衝撃が殺しきれず、自身にも多少ダメージが通った。
「いって~~」
俺はパラシュート無しのスカイダイビングをしながら頭をさする。
飛行機からある程度離れたことを確認し、
「頼む! 空!」
相棒の名を呼び、ISを展開した。
【Side 楯無】
盾がマシンガンで撃たれて外に放り出された。
「あっ!」
私が思わず上げた声は、マシンガンの銃声にかき消される。
突然の事にいきなり声を上げてしまったが、ISを持ってる盾ならまず無事のはず。
私は気を取り直して犯人を睨む。
「「「「「「キャアァァァァァァァァッ!!!???」」」」」」
「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」」」」」」
今の瞬間を目撃した乗客たちが悲鳴を上げる。
まあ、傍目から見れば目の前でマシンガンで撃ち殺された挙句、パラシュート無しのスカイダイビング。
普通なら死亡確率100%ね。
盾は死んでないけど…………
「見たとおりだ。 もしも変な気を起こそうものなら今のガキの二の舞になると思え!」
脅しを含めて大声で男はそう言う。
その脅しで乗客たちは静まり返った。
その光景に満足したのかニヤリと笑みを浮かべる男。
すると、
「ああん? 嬢ちゃん、何見てんだ?」
別の男に声をかけられる。
やばっ!
露骨に見すぎた!
「おい、この席ってさっきのガキが座ってた席じゃないか?」
「ほ~………嬢ちゃん、先のガキとは姉弟か何かかい?」
男が私の周りに集まってくる。
「……………………恋人よ」
私は男達を刺激しないようにそう呟いた。
「くはははははははは! そいつぁ残念だったな! 嬢ちゃんの恋人は天国に旅立っちまったぜ!」
私の言葉を聞いて、バカ笑いする男。
いい加減黙らせて良いかな?
私はそう思いつつも、準備完了までもう少しなので我慢する。
「………彼は死んでないわ」
「ハハッ! 信じたくない気持ちはわからんでもないが、現実を見たほうがイイぜぇ」
ちゃんと見てるわよ。
少なくともあなた達よりかはね。
私は呆れた目で男達を見る。
「気に入らない目つきだな…………本当にあのガキが生きてると思ってるのか?」
「ええ、生きてるわ」
私はさも当然のように頷く。
「なら、俺が嬢ちゃんに手を出せば、あのガキが飛んでくるとでも?」
「そうよ」
「おもしれぇ。 なら望み通り滅茶苦茶にしてやらァ!」
男は私の胸ぐらを掴んで席から無理矢理立たせると、私を殴ろうと腕を振りかぶる。
その瞬間、
――ドゥン
マシンガンとは違った銃声が鳴り響き、私を殴ろうとした男が倒れる。
そして、
「人の彼女に何しようとしてんだコラ?」
突き落とされた出入り口から右腕のバスターをこちらに向けた盾がそう言った。
犯人たちは、反射的に振り向いてマシンガンを撃とうとしたが、
――ドドドン
バスターが連射され、更に3人の男達が倒れる。
すると、
「ア、IS!?」
「何で男がISを!?」
それを目撃した乗客が騒めく。
それにしても、一般人は盾の事全然知らないねぇ。
まあ、一夏君がブリュンヒルデである織斑先生の弟だからって注目されまくってるのが原因なんだろうけど。
でも、逆に言えば騒ぎにならないから楽でいいかも。
「何事だっ!?」
残りの犯人グループが異変に気付いてやってくる。
そこで盾に気付き、
「なっ!? ア、IS!?」
「う、撃て!!」
犯人達がISの突然の登場に反射的にマシンガンを構える。
何もしなくても、人間用のマシンガンじゃISに傷一つ付けられないだろうけど、流れ弾が他の乗客や飛行機の重要機器に当たったら危ないからね。
私は右手を前に出す。
既に先程準備は完了した。
その瞬間放たれる無数の弾丸。
私はそれを、
「なんちゃってAIC」
散布したアクアナノマシンで全てを受け止めた。
機内全てに散布を完了してるから、密着状態で撃たれない限り全て受け止められる。
「なっ!?」
「た、弾が止まった!?」
驚愕の声を漏らす犯人達。
その瞬間、
――ドドドドドドッ
犯人全てにバスターが放たれ、全員を気絶させた。
あ、1発外れて乗客に当たってる。
まだまだ狙いが甘いね。
今後の特訓のポイントを考えながら、気絶している犯人を縛っておく。
その後は無事に空港に着陸。
更識家の伝手を使って犯人グループを引き渡した後、私と盾はさっさとトンズラした。
警察に捕まったら2学期に遅れちゃうかもしれないしね。
隠蔽工作もばっちり。
さあ、2学期が始まるよ!
あとがき
第二十話の完成。
沖縄旅行を急ぎ足で終わらせました。
思ったよりもネタが思いつかなかった。
盾君生徒会へ入部。
次回は漸く盾君の特訓の成果が?
次も頑張ります。
PS. 暗号がわからないという意見が出てきたので、更にヒントを載せときます。
ヒントは『キーボード』、『かな』です。
そしてここからが大ヒント。
上のヒントを使って暗号を解くと、
『ツヅキガキニナルヒトハリ○○○○○○○ィ○ ア○○○○○○○ヘ』
となります。
頑張って解いてください。