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No.37503の一覧
[0] インフィニット・ストラトス ~弱きものの足掻き~【転生オリ主】[友](2013/05/05 20:35)
[1] 第一話 IS学園入学初日[友](2013/05/05 20:36)
[2] 第二話 IS特訓[友](2013/05/05 20:39)
[3] 第三話 クラス代表決定戦[友](2013/05/05 20:40)
[4] 第四話 まさかの共同生活の始まり[友](2013/05/05 20:42)
[5] 第五話 天才なんて嫌いだぁぁぁ![友](2013/06/23 22:14)
[6] 第六話 首突っ込むつもりは無かったのに………[友](2013/08/13 00:29)
[7] 第七話 2人の転校生…………ま、俺には関係ないが[友](2013/08/15 11:34)
[8] 第八話 俺が活躍すると? ブーイングの嵐です。[友](2013/08/15 11:35)
[9] 第九話  海の楽しみは海水浴だけではない![友](2013/08/25 11:52)
[10] 第十話  名は体を表すを地で行ってます。[友](2013/08/25 11:54)
[11] 第十一話 まさかのデート!?  そして…………[友](2013/09/15 22:47)
[12] 第十二話 楯無の心[友](2013/11/09 23:38)
[13] 第十三話 楯無の答え[友](2013/11/10 06:36)
[14] 第十四話 信頼の二次移行[友](2013/11/30 21:02)
[15] 第十五話 今日は自宅でゆっくり…………のはずが![友](2013/12/23 01:47)
[16] 第十六話 プールでデート。 あれ? プールで原作イベントってあったっけ?[友](2014/02/20 22:15)
[17] 第十七話 夏祭り………相変わらず一夏は唐変木だ[友](2014/03/30 18:01)
[18] 第十八話 彼女の家に行くのは初めてだ………不安です[友](2014/04/13 20:07)
[19] 第十九話 沖縄旅行 1~2日目[友](2014/05/26 00:03)
[20] 第二十話 沖縄旅行4日目~6日目[友](2014/07/26 22:24)
[21] 第二十一話 努力の成果[友](2014/08/16 17:32)
[22] 第二十二話 特訓風景と一夏ラヴァーズ急襲………まあ、予想通りだが[友](2014/11/02 13:22)
[23] 第二十三話 一夏の特訓風景と学園祭[友](2014/12/09 01:06)
[24] 第二十四話 妹達の邂逅とシンデレラ[友](2015/02/22 18:04)
[25] 第二十五話 白式を寄越せ? 人違いです![友](2015/03/29 19:26)
[26] 第二十六話 偶には自分から原作ブレイクしてみよう[友](2015/05/17 11:13)
[27] 第二十七話 男には やらねばならぬ 時がある    今がその時だ!![友](2015/08/12 07:36)
[28] 第二十八話 ワールド・パージ。 俺は別任務だけど[友](2015/12/06 21:11)
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[37503] 第十五話 今日は自宅でゆっくり…………のはずが!
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/12/23 01:47
第十五話 




ふと気がつくと、俺は青い空が広がる緑の草原の上にぽつんと立っていた。

「あれ? ここって…………」

ここは、打鉄のコアの意識体とも呼べる少女と会っていた所だ。

俺は何でここにいるのかと首を傾げる。

すると、

「お兄ちゃん!」

突然後ろから飛びつかれる。

「おわっ!?」

いきなりの事にビックリして声を上げる。

俺は首だけ回して背中に飛びついてきた存在に目を向けると、

「こんにちは、お兄ちゃん!」

例の少女が満面の笑みで俺の背中にしがみついていた。

「あ、ああ。 こんにちは」

俺はビックリしつつもそう返す。

俺は一度しゃがんで少女を地面に下ろすと、少女に向き直る。

「それで? 何で俺はここにいるんだ?」

俺はそう尋ねる。

すると、

「んと…………お兄ちゃんに会いたくなったから!」

これまた満面の笑みでそう言ってくれました。

俺は思わず微笑ましくなる。

可愛いやつだな。

「そうか………」

俺は少女の頭を撫でる。

少女は目を細めて気持ちよさそうに俺の手を受け入れている。

そこで、俺はふと思った。

「そういえば………お前って名前はなんて言うんだ? 流石に打鉄じゃないだろ?」

俺は気になることを尋ねる。

「名前? 無いよ」

少女は何でもないように首を傾げつつそう言う。

「えっ? 無いの!?」

俺は驚いて聞き返す。

てっきり名前ぐらいあると思ってたのに……

「そうだ! 私の名前、お兄ちゃんが考えてよ!」

少女は思いついたようにそう言う。

「えっ? 俺がか?」

「うん! お兄ちゃんに付けて欲しい!」

少女は、期待に満ちた目で俺を見つめる。

「名前ねぇ………」

ネーミングセンスの無い俺だが、相棒からの頼みでは断るわけにはいかない。

俺はない頭を必死に回転させて考える。

「ん~と…………」

俺は目をつぶりながら考える。

中々いい案が思い浮かばず、目をつぶったまま上を向く。

そこで、ふと目を上げた。

俺の視界に広がるのは、透き通った青空。

「………………空(そら)」

自然と、その言葉が出てきた。

俺は少女に向き直る。

「空っていうのはどうだ? 俺の翼であるお前に、ピッタリの名前だと思うんだが…………」

俺はそう聞いてみる。

「空………空か……うん! いい名前だと思う!」

少女は、嬉しそうにそう言った。

「そうか。 気に入ってくれたのなら良かった。 じゃあ、これからお前は、俺の相棒、『空』だ」

「うん! 私は空! おにいちゃんの“あいぼう”だよ!」

そう言って、空は満面の笑みを俺に向けた。










「……………ん?」

気がつくと、見慣れた………それでいて久しぶりに見る天井が見えた。

俺は体を起こす。

見渡せば、久しぶりに見る自宅の自分の部屋。

「…………そういえば、夏休みだっけ」

俺は呟く。

時計を見れば、まだ朝の5時だ。

どうやらいつもの特訓の癖で、目が覚めてしまったらしい。

「ま、明日からまた特訓が始まるんだけど………」

今日は刀奈からの指示で、一日休みとのことだ。

今日一日英気を養って、また明日から特訓を始める、ということらしい。

因みにその時の刀奈の言葉は、

『明日から夏休みだけど、特訓開始は明後日からね。 明日は一日休み! しっかり休んで英気を養ってね。 それから、遊びに行っちゃダメだよ。 遊び疲れても、特訓は減らさないから! 明日一日は家で休んでること! いい?』

ということらしい。

妙に“家で休んでいること”が強調されてたような気もするが、まあ、遊びに行く予定もないので、大人しく家でのんびりと過ごしますか。

そうと決まれば先ずは二度寝。

おやすみ。











次に目が覚めたときは、10時近くになっていた。

思ったよりも眠ってた。

俺は、ゆっくりと着替えて居間へ向かう。

「おそうございます」

俺はそう言って居間に入る。

お“早う”ではないので、“遅う”ございますだ。

「はいおはよう。 いくら夏休みでも、ちょっと遅いわよ」

そういったのは俺の母さんの無剣 衣(ころも)。

因みに容姿は中の上。

「おはよう。 母さんの言うとおり、ちょっと遅いぞ」

次に言ったのは、父さんの無剣 竹光(たけみつ)。

母さんと同じく容姿は中の上。

「ごめん。 二度寝したら思ったよりも寝てた」

俺はそう言う。

因みに俺の容姿は前から言ってると思うが、中の中だ。

「朝ごはんはどうする?」

母さんがそう聞いてきたので、俺は時計を見る。

「ん~時間も中途半端だし、朝はいいよ。 今日は一日家に居るつもりだし」

俺がそう言うと、

「もう! あんたは少しは、街に出かけるとかしてみたら? いい加減彼女でも作りなさいよ」

そう言って居間に入ってきたのは、俺の2コ上の姉さんの無剣 帷子(かたびら)。

容姿は、何故この両親からこの姉が生まれたのか?と思える程の上の中。

弟の俺から見ても美人と思える。

まあ、今の俺にとっては、刀奈の方が美人と思うが。

「あはは! 無理無理、姉さん! この兄貴に彼女なんか出来るわけないじゃん」

「甲、それは言いすぎ」

2人揃ってそう言ったのは、俺の1コ下の二卵性双生児の姉弟の無剣 甲(きのえ)と無剣 鎧(がい)。

両者とも容姿は上の下。

因みに鎧は彼女持ち。

「お、お邪魔してます」

続けて遠慮がちに挨拶してきたのは、今言った鎧の彼女。

確か名前は弓美って言ってたと思う。

結構可愛い、容姿は上の下。

鎧が俺のフォローをしてたのは、弓美ちゃんが居たからだな。

いつもは甲と一緒に俺に言う方だ。

そういえば、弓美ちゃんを紹介された時に、

『もし兄さんが弓美より美人な彼女を作ったら、裸踊りで町内一周してあげるよ』

って言ってたな。

……………ホントにしてもらうか?

少なくとも、刀奈が弓美ちゃんより美人なのは確定だ。

「まあともかく、盾も早く弓美ちゃんみたいな可愛い彼女を作って紹介しろ」

父さんがそう言ってくる。

皆に言いたいが、彼女は既にいるぞ。

まあ、実際に見ないと信じないだろうから、ここでは言わんが。

「まあ、その内」

俺はいつものように受け流しておく。

すると、

――ピンポーン

玄関の呼び出しベルが鳴る。

「はーい!」

母さんが、返事をしながら小走りで玄関へ向かった。

俺は、話の途中で出されていたお茶を飲む。

母さんが玄関へ向かって少しして、

「じゅじゅじゅ、盾!」

取り乱した表情で母さんが居間に駆け込んできた。

「ん?」

俺がお茶を飲みながら母さんに顔を向けると、

「あああ、あんたに、と、とても綺麗な女の子が訪ねてきてるのよ!!」

母さんは驚きを隠しきれない表情でそう叫ぶ。

それにしても、俺を訪ねてくるとても綺麗な女の子?

俺は少し考えて、

「…………あ」

その人物に思い当たった。

俺は立ち上がって玄関へ向かう。

俺が玄関に着くと、

「あっ、盾!」

そこには思った通り、

「えへっ、来ちゃった!」

私服に身を包んだ刀奈がいた。

「か………楯無!」

危うく刀奈と言いそうになり、慌てて言い直す。

楯無の姿を見て、ようやく俺は、昨日の楯無の言葉の真意に気付いた。

「楯無、昨日遊びに行かずに家に居ろって言ったのは、これが目的か?」

「えへへ。 ビックリした?」

「まーな」

「ウフフ」

俺達がそんなやり取りをしていると、

――ドタタタッ

後ろの方で何かが倒れる音がした。

見れば、家族全員+弓美ちゃんが重なるように床に倒れている。

どうやら覗いていたらしい。

皆は、俺が見ている事に気づくと、

「じゅ、盾! 彼女は一体誰なの!?」

母さんが開口一番にそう言ってくる。

「あ~、彼女は………」

俺が口を開こうとしたとき、

「あっ、盾のご家族の方ですか? 初めまして。 私は更識 楯無。 盾とは、最近から親しいお付き合いを始めさせていただきました。 今日は、ご挨拶にとお伺いした次第です」

楯無が敬語でそう挨拶する。

呆気にとられる家族全員。

「ま、そういう事だ」

俺がそう言うと、

「盾! あんた一体いくら貢いだの!?」

「兄さん! 一体どんな手を使って脅迫したんだ!?」

「騙されてる! 騙されてるよ!! お兄ちゃん!!!」

「バカヤロウ(×3)」

前言撤回。

実際に見ても信じなかった。

まあ、そう言いたくなる気持ちも分からんでもない。

因みに、上から姉さん、鎧、甲の順だ。

ついでに甲よ。

お兄ちゃんって何だお兄ちゃんって!?

その呼び方は、お前が小学校卒業と同時にやめたはずだろ?

「まあ、信じられんかもしれんが、楯無と付き合い始めたのは本当だ」

俺の言葉を聞くと、家族全員がこの世の終わりとも思えるような表情を浮かべる。

「夢よ……夢に決まってるわ………盾に……あの盾に、こんな可愛い彼女ができるなんて………」

「ま、負けた………僕が兄さんに勝てる所なんて、容姿と可愛い彼女がいる事しかなかったのに………」

「ううっ………お兄ちゃんが………お兄ちゃんが泥棒猫に取られちゃう…………」

そんな事を呟いている姉弟達。

上の2人はまあいいとして、甲。

オメーはそんなキャラじゃねえだろ!?

それともあれか?

ツンデレな妹というキャラなのかお前は!?

すると、突然甲が立ち上がり、

「たっ、楯無……さんっ!!」

ズビシッ、っと効果音が付きそうな勢いで楯無を指差し、

「あなたがお兄ちゃんに相応しい人か………勝負です!!」

全く予想外の事を言った。

「はぁっ!?」

俺は思わず変な声を上げた。







【Side 鎧】




学校が夏休みに入ったため、兄さんも久しぶりに家に戻ってきた。

「もう! あんたは少しは、街に出かけるとかしてみたら? いい加減彼女でも作りなさいよ」

ふと甲、弓美と一緒に居間の前を通りかかったところ、姉さんの声が聞こえた。

見れば、今頃起きてきて居間にいる兄さんが、姉さんに何やら言われている。

でも姉さん、多分兄さんにはそれは無理だと思う。

兄さんは、いつものように聞き流しているようだったけど、

「あはは! 無理無理、姉さん! この兄貴に彼女なんか出来るわけないじゃん」

いきなり甲が話に割り込んだ。

「甲、それは言いすぎ」

僕はそう言うけど、正直甲の言った言葉には同感だ。

だけど甲、兄さんに彼女が出来ないんじゃなくて、甲が出来て欲しくないと願ってるだけじゃないの?

双子の姉にあたる甲は、言っちゃ悪いけど、物凄いブラコンだ。

兄さんは、普通の評価を受け続けてるけど、実際にはもっと頭がいいと思う。

僕や甲の勉強の面倒もよく見てくれたし、喧嘩になろうとした時もいつも兄さんが身を引いて僕達に譲ってくれた。

とても優しい兄さんだ。

そんな兄さんに甲はベッタリだ。

小学校を卒業してからは、呼び方を無理矢理『兄貴』に変えてるみたいだけど、兄さんが居ないところでは『お兄ちゃん』とよく口を滑らす。

兄さんがIS学園に行くことになって家に居なくなったときは、もう大変だった。

『お兄ちゃん分が足りない』とか『お兄ちゃんに会いにいくー』とか、宥めるのに苦労した。

彼女が出来るとは考えていないみたいだったけど。

まあ、昔から兄さんを見ていれば、全然女の子に話しかけないし、話しかけられることもなかったからいくら女だらけのIS学園に入っても一緒だろうと思っていた。

「お、お邪魔してます」

弓美が遠慮がちに挨拶する。

弓美は、僕が中学2年の終わりから付き合いだした僕の彼女だ。

正直、僕が兄さんに優っているところは、精々容姿ぐらいだと思っていた。

勉強でも敵わない、体力も互角以下、他も大体同じぐらい。

兄さんに勝てると自信を持って言えるのは、持って生まれた容姿ぐらいだった。

そんな僕に彼女が出来たことは、兄さんに自慢できる唯一のことだ。

弓美は可愛い。

だから、僕は調子に乗ってこんな事を言ってしまったことがある。

『もし兄さんが弓美より美人な彼女を作ったら、裸踊りで町内一周してあげるよ』

正直、兄さんが弓美より可愛い彼女を作れると思ってなかったから、ついつい口が滑った。

だけど、

――ピンポーン

話をしている時に、お客さんの来訪を告げるベルが鳴る。

「はーい!」

母さんが、返事をしながら小走りで玄関へ向かう。

そして、

「じゅじゅじゅ、盾!」

取り乱した表情で母さんが戻ってくる。

「ん?」

兄さんがお茶を飲みながら母さんに顔を向けると、

「あああ、あんたに、と、とても綺麗な女の子が訪ねてきてるのよ!!」

母さんは驚きを隠しきれない表情でそう叫ぶ。

正直僕も信じられなかった。

あの兄さんに女の子が訪ねてくるないんて、初めての事だ。

「…………あ」

兄さんは、その事に思い当たることがあるのか声を漏らす。

兄さんが玄関に向かい、僕らは居間の入口から顔だけ出して兄さんの様子を伺う。

「あっ、盾!」

そこには、笑顔を浮かべながら兄さんを出迎えるとても綺麗な女の人がいた。

水色の髪が外側に跳ね、ルビー色の綺麗な瞳をした、恐らく兄さんよりも年上の女の人。

「綺麗な人………・・・」

弓美も惚けたようにそう漏らす。

「えへっ、来ちゃった!」

まるで、彼氏の家に突然やってきた彼女の様な言葉。

「な、何なのあの女…………お兄ちゃんを呼び捨てで呼ぶなんて馴れ馴れしい…………!」

下を見ると、甲が握りこぶしを握って震えている。

「か………楯無!」

に、兄さんもあの人を呼び捨てで呼んだ!?

兄さんが女の人を呼び捨てで呼ぶなんて、甲意外じゃ誰もいなかったのに!?

「楯無、昨日遊びに行かずに家に居ろって言ったのは、これが目的か?」

「えへへ。 ビックリした?」

「まーな」

「ウフフ」

他愛のない会話。

なのに何故だろう?

口の中が甘くなってきたような…………

すると、突然誰かがバランスを崩したのか、

――ドタタタッ

全員が折り重なるように倒れてしまった。

見れば、兄さんが呆れたようにこっちを見ている。

「じゅ、盾! 彼女は一体誰なの!?」

母さんが、僕達の最大の疑問を代表して言った。

「あ~、彼女は………」

兄さんが口を開こうとしたとき、

「あっ、盾のご家族の方ですか? 初めまして。 私は更識 楯無。 盾とは、最近から親しいお付き合いを始めさせていただきました。 今日は、ご挨拶にとお伺いした次第です」

女の人が挨拶をした。

更識 楯無と名乗った女の人は、ハッキリと言った。

自分は、兄さんの彼女であると。

「ま、そういう事だ」

僕たちが固まっている間に、兄さんが言った。

僕達は信じられず、

「盾! あんた一体いくら貢いだの!?」

「兄さん! 一体どんな手を使って脅迫したんだ!?」

「騙されてる! 騙されてるよ!! お兄ちゃん!!!」

「バカヤロウ(×3)」

思わず兄さんに詰め寄ったが、一言で一刀両断にされた。

「夢よ……夢に決まってるわ………盾に……あの盾に、こんな可愛い彼女ができるなんて………」

「ま、負けた………僕が兄さんに勝てる所なんて、容姿と可愛い彼女がいる事しかなかったのに………」

「ううっ………お兄ちゃんが………お兄ちゃんが泥棒猫に取られちゃう…………」

僕達は項垂れる。

あと甲、地が漏れてる。

すると、項垂れていた甲が突然立ち上がり、

「たっ、楯無……さんっ!!」

勢い良く楯無さんを指差し、

「あなたがお兄ちゃんに相応しい人か………勝負です!!」

そんな事を言った。

「はぁっ!?」

兄さんは素っ頓狂な声を上げる。

「勝負?」

楯無さんは、口元に笑みを浮かべ、聞き返す。

「ええそうです! あなたがお兄ちゃんに相応しいか私が試してあげます! 私が勝ったらお兄ちゃんとは金輪際関わらないでください!」

甲はそう言い切る。

そんな無茶苦茶な………

「いいわよ」

と思いきや、楯無さんはアッサリとOKした。

「その勝負、受けて立つわ!」

楯無さんは自信満々にそう言うと、手に持っていたセンスをバッと開く。

そこには『勝負』と達筆で書かれた文字があった。

「とりあえず、私が勝ったら私の事を義姉と認めてもらおうかしら?」

「ええいいですよ。 絶対に負けませんから!」

甲は真剣な表情で、楯無さんは余裕のある表情でそう言い合う。

僕は、さっきから黙っている兄さんに顔を向け、

「兄さん、止めなくていいの? せっかく出来た彼女なんでしょ?」

「ま、まあ、甲のあの反応には驚いたけど、とりあえずは甲の気の済むようにするさ。 第一、楯無が負ける姿が想像できん」

兄さんは迷いなくそう言う。

なんやかんやで話が進んでいく。




すると、とある部屋の前に来た。

「最初の勝負は掃除です。 この部屋を半分ずつ掃除して、1時間でどれだけ綺麗にできるかです! 審査員は、お母さんにお願いしました!」

「うん、文句ないわ」

楯無さんも頷く、

「それじゃあ、よーい………始め!」

母さんの合図で2人が一斉に動き出す。

でも、しばらく見ていてわかった。

明らかに甲が負けている。

甲が所々もたついているのに対し、楯無さんはとてもスムーズに動き、無駄がない。

次から次へと物を片付け、手際よく掃除していく。

やがて、1時間が立ち、

「そこまで!」

母さんが終了の合図を告げる。

「はぁ………はぁ………」

甲は全力を出し切ったのか、肩で息をしている。

「♪~~~」

一方、楯無さんは、鼻歌まで歌って余裕の表情だ。

早速母さんが審査に入る。

ぱっと見、両方とも綺麗に掃除されているように見えるけど………

「ふむふむ………」

まず母さんは、甲の方の掃除をチェックする。

「う~ん………」

窓際の誇りを鬼姑のようにチェックする母さん。

その指には、ホコリが付いているのが見て取れた。

「まだまだね。 細かいところが荒すぎるわ」

「うぐっ……!」

甲が声を漏らす。

続いて、楯無さんの掃除のチェックを始めると、

「こ、これは…………!」

母さんが驚愕した声を漏らす。

甲は何か重大なミスを犯してくれたのかと期待に満ちた表情で顔を上げる。

しかし、

「か………完璧だわ………埃一つ無いどころか、窓もピカピカ。 本棚も順番通り。 申し分ないわ………!」

何やら感動したような表情で感慨深い声を漏らす母さん。

そこまでなの!?

「よって、この勝負は、楯無ちゃんの勝ちよ!」

「いぇーい!」

母さんが楯無さんの勝利を宣言すると、楯無さんは機嫌よさげな声で扇子を広げる。

その扇子には、『勝利』の文字が。

あれ?

さっきと文字が違うけどいつの間に?

「ううう…………まだです! まだ認めません! 次はちょうどお昼なので、料理勝負です!!」

甲が悔しそうな声でそう言う。

まだやるの?

「いいわよ。 いくらでも相手になるわ」

楯無さんは余裕の態度を崩さない。

「吠え面かかせてやるんだからぁ!!」

負け惜しみのように叫ぶ甲。

うん。

どう考えても甲が吠え面かく場面しか思い浮かばない。

兄さんが余裕な理由が、なんとなく理解できた。




料理勝負は2人平等に炒飯を作ることになった。

審査員は、ここにいる全員。

2人が料理している様子を見ているんだけど…………これも先ほどと同じで2人の差が歴然だ。

包丁さばきも甲が所々危なっかしく使っているのに対し、楯無さんは、まるでプロのように速くて正確。

炒める時も、甲はフライパンを使って木ベラで混ぜているが、楯無さんは、中華鍋を使って豪快に炒めている。

そして、完成した炒飯。

それぞれが口へ運ぶ。

甲のチャーハンは所々ご飯が固まっており、味も場所によってバラつきがあったが、楯無さんチャーハンはご飯一粒一粒がパラパラでしっかりと火が通っており、味も均一。

もはやプロの域と思えた。

結果も満場一致で楯無さんの勝利。

これで諦めるかと思いきや、甲は次から次へと勝負を挑む。

しかし、その全てにおいて完敗していた。

もう諦めたほうがいいんじゃと思った時、

「つ、次が最後の勝負です!」

甲が最後の勝負を持ち出した。

「次で最後? いいわよ。 勝負の内容は?」

楯無さんがそう聞く。

すると、甲は庭に出て、

「勝負の内容は、これです!!」

甲が拳を突き出しながらそう叫ぶ。

あ、そういえば甲って………空手2段だったっけ。

「お兄ちゃんは弱っちいので、お兄ちゃんを守れるぐらい強くないと認めません!」

そう叫ぶ甲。

「甲………弱っちいのは認めるが、本人の彼女の前で堂々と言うなよな………」

あ、兄さんにネカティブスイッチが入った。

ちょっといじけてる。

でも、これは止めたほうが………

「おーい、楯無~!」

兄さんが楯無さんに声をかける。

流石にこれは止めるよね?

「はーい♪」

楯無さんは声をかけられて嬉しいのか、機嫌良さげに返事をした。

「そんなんでも俺の妹だから、怪我させないようにしてくれ~」

「はーい!」

兄さんの言葉に何でもないように返事をする楯無さん。

「って、兄さん! 止めなくていいの!?」

僕は思わず問いかける。

「大丈夫だよ……楯無は強い」

それだけ言うと視線を2人に向ける。

2人は庭で向かい合っている。

すると、

「ああ、始める前にルールを決めておきましょうか。 あなたは私を1回でも地面に倒せたらあなたの勝ち。 私はあなたに負けを認めさせたら私の勝ち。 でどうかしら?」

楯無さんは信じられないことを言い出した。

流石にそれは無理があるんじゃ………

「なっ!? 舐めないでください!」

「フフフ、悔しかったら私を倒してみなさい」

「言われなくても!」

甲は言うが早いか踏み込んで正拳突きを繰り出す。

普通の人なら、反応できずに悶絶する威力。

だけど、

「はい!」

「えっ!?」

気付けば、甲が地面に倒れていた。

首元には、楯無さんの手刀が添えられている。

「まだやる?」

「ッ!?」

楯無さんの言葉に甲は飛び起き、すぐさま距離を取る。

「はぁあああああっ!!」

再び楯無さんに殴りかかるが、

「それっ!」

楯無さんは、簡単に拳を受け流し、鋭い足払いを仕掛けて甲の脚を払う。

「きゃっ!?」

更には、甲が怪我をしないように手を添えて落下の衝撃を和らげる始末。

素人目に見ただけで理解した。

楯無さんと甲の間には、天と地ほどの力量差があることを。

「……………兄さん………楯無さんって……何者?」

僕は思わず問いかけた。

「IS学園の生徒会長で、自他ともに認める学園最強………で、現在は俺の恋人………だな」

「そう…………」

確かに最強だ。

でも、どう考えても兄さんが釣り合うような人じゃないんだけどな~。

目の前では、甲が何度も楯無さんに向かっていき、その度に優しく倒されている。

実力の差は歴然だ。

甲がいつまで耐えられるのかと考えつつ、その様子を見続けた。





【Side Out】





最後の勝負が始まって約2時間。

そろそろかな?

俺がそう思ったとき、

「ううっ………! うぇえええええええええええん!!」

ついに甲が泣き出した。

「ふえぇぇぇん…………お兄ちゃん盗られたぁぁぁぁぁっ!!」

その反応は予想外だったのか楯無は焦った表情をしている。

さて、昔みたいに上手くいくかはわからんがやってみるか。

俺は甲に向かって歩いていく。

「ほら、よしよし。 もう泣くな」

俺は甲の頭を撫でつつそうあやす。

小学校の頃は、甲が泣くたびにこうやって慰めていたよな。

「ふぇぇぇ……でも、お兄ちゃんが…………」

こうやって泣く姿は、昔とちっとも変わってない。

「お前が何を考えてるのかはわからんが、楯無と恋人同士になったからといって、お前の兄じゃなくなるわけじゃないぞ」

「えぐっ……! ホント?」

「ああ、本当だ。 お前はいつまで経っても、俺の大事な妹だよ」

「お兄ちゃん!」

甲は俺にしがみついてくる。

俺は優しく頭を撫でると、

「だからさ、楯無の事、認めてやってくれないか?」

そう言った。

甲は顔を上げると楯無の方を向き、

「……………わかった…………お義姉ちゃん」

涙目&上目遣いでそう言った。

「え、ええ! 宜しくね甲ちゃん」

甲の態度の豹変に驚いたのかちょっとつまりながら返事をした。





その後、なんやかんやで楯無が帰る時間になり、俺が駅まで送っていくことに。

駅までの道を歩いていると、

「ねえ盾」

楯無が口を開く。

「何だ?」

「妹さんと仲いいんだね」

「ん? まあ、悪いと言うほど悪くはないと思うが……」

「私も…………簪ちゃんとあんな風に………」

「ん? 何か言ったか?」

俺は、“簪”という言葉が聞こえていたので、大体の予想は付いたが今のところはこう返しておく。

「ううん。 何でもない。 それよりも!」

駅まで100mといった地点で楯無、いや、刀奈は立ち止まる。

「いくら実の妹だからって、自分の彼氏が他の女を抱きしめるなんていい気分じゃなかったんだからね!」

「なっ!? あれはしょうがないだろ?」

「だーめ! 抱きしめる以上の事をしてくれなきゃ許してあげない!」

刀奈はそう言うと目を瞑って顔を少し上げた。

こ、これってあれだよな?

キスしろってことでいいんだよな?

俺は少し周りに目をやって近くに人がいないことを確認すると、そっと刀奈の唇に自分の唇を落とした。

「んっ」

刀奈が息を漏らす。

少しして唇を離すと、

「これでいいか?」

「うん! 上出来!」

刀奈はそう言って、頬を少し染めつつ駅に向かって駆けていく。

俺はその後ろ姿を見送る。

すると、途中で刀奈が振り返り、

「盾! また明日!」

手を降ってきた。

「ああ、また明日な」

俺も軽く手を振り返す。

さて、明日に備えて早く寝るとしますか。

そう思いつつ、俺は帰路へついた。






あとがき



第十五話の完成。

やっぱり他の小説よりも、こっちのほうが勧めやすい。

てなわけでこっちを更新してしまいました。

まずは、打鉄のコアの名前は『空』としました。

まあ、安直ですね。

で、楯無さんが盾君の自宅に襲来。

妹さん涙目でした。

このネタのために即興で考えた家族たちです。

さて、次はどうしようかな?

更識家に盾君がお邪魔するか、夏休みイベントを先に進めるか。

その時に決めましょう。

では、今回はこれにて。




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