<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

その他SS投稿掲示板


[広告]


No.37503の一覧
[0] インフィニット・ストラトス ~弱きものの足掻き~【転生オリ主】[友](2013/05/05 20:35)
[1] 第一話 IS学園入学初日[友](2013/05/05 20:36)
[2] 第二話 IS特訓[友](2013/05/05 20:39)
[3] 第三話 クラス代表決定戦[友](2013/05/05 20:40)
[4] 第四話 まさかの共同生活の始まり[友](2013/05/05 20:42)
[5] 第五話 天才なんて嫌いだぁぁぁ![友](2013/06/23 22:14)
[6] 第六話 首突っ込むつもりは無かったのに………[友](2013/08/13 00:29)
[7] 第七話 2人の転校生…………ま、俺には関係ないが[友](2013/08/15 11:34)
[8] 第八話 俺が活躍すると? ブーイングの嵐です。[友](2013/08/15 11:35)
[9] 第九話  海の楽しみは海水浴だけではない![友](2013/08/25 11:52)
[10] 第十話  名は体を表すを地で行ってます。[友](2013/08/25 11:54)
[11] 第十一話 まさかのデート!?  そして…………[友](2013/09/15 22:47)
[12] 第十二話 楯無の心[友](2013/11/09 23:38)
[13] 第十三話 楯無の答え[友](2013/11/10 06:36)
[14] 第十四話 信頼の二次移行[友](2013/11/30 21:02)
[15] 第十五話 今日は自宅でゆっくり…………のはずが![友](2013/12/23 01:47)
[16] 第十六話 プールでデート。 あれ? プールで原作イベントってあったっけ?[友](2014/02/20 22:15)
[17] 第十七話 夏祭り………相変わらず一夏は唐変木だ[友](2014/03/30 18:01)
[18] 第十八話 彼女の家に行くのは初めてだ………不安です[友](2014/04/13 20:07)
[19] 第十九話 沖縄旅行 1~2日目[友](2014/05/26 00:03)
[20] 第二十話 沖縄旅行4日目~6日目[友](2014/07/26 22:24)
[21] 第二十一話 努力の成果[友](2014/08/16 17:32)
[22] 第二十二話 特訓風景と一夏ラヴァーズ急襲………まあ、予想通りだが[友](2014/11/02 13:22)
[23] 第二十三話 一夏の特訓風景と学園祭[友](2014/12/09 01:06)
[24] 第二十四話 妹達の邂逅とシンデレラ[友](2015/02/22 18:04)
[25] 第二十五話 白式を寄越せ? 人違いです![友](2015/03/29 19:26)
[26] 第二十六話 偶には自分から原作ブレイクしてみよう[友](2015/05/17 11:13)
[27] 第二十七話 男には やらねばならぬ 時がある    今がその時だ!![友](2015/08/12 07:36)
[28] 第二十八話 ワールド・パージ。 俺は別任務だけど[友](2015/12/06 21:11)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[37503] 第十二話 楯無の心
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/11/09 23:38
第十二話





【Side 楯無】



事の発端は、私が言い出した一言だった。

「最近は回避と防御は上手くなってるけど、少しは攻撃しなきゃダメだよ。 そこで、君のやる気を出すために、私に一撃入れたらご褒美をあげようと思うんだけど、何がいい? あ、前みたいに訓練を増やしてくれ、とかは無しね。 純粋に君のやる気を引き出すためだから、君が喜ぶご褒美じゃないと、意味無いからね」

「はあ、ご褒美ですか…………?」

彼は突然の提案に、答えに困ったのか曖昧な声を漏らす。

彼はしばらく考えると、答えが決まったのか私の方を向き、

「じゃあ、ここは学生らしく、先輩、デートしてください………とでも言いますか?」

「へっ?」

あまりにも予想外な答えに、私は素っ頓狂な声を漏らした。

「デ、デート………? わ、私と………!?」

私は混乱しながらも再確認する。

彼の様子からして、聞き間違いということはなさそうだ。

「う~~~~~……………」

私は思わず唸るほど悩んでしまう。

デ、デートだなんて、そんな………

私は悩みに悩みまくっていたが、

「た、楯無先輩! 今のはほんのじょ「い、いいよ……!」って、はい!?」

彼が提案を撤回しようとしていることに気づいた私は、反射的にOKしてしまった。

自分がどんな事を言ったのか直ぐに気付いたが、もう後戻りは出来ない。

「いいよ……! 君が一撃入れたら、デ、デートしてあげる!」

顔が熱くなるのを感じながら、私はそう言い切る。

頑張ってる後輩の為にサービスしてあげるのもいいかもしれないわね、うん。

私は自分にそう言い聞かせる。

「あの……「シャラップ! 生徒会長に二言はないわ!」」

雰囲気から遠慮しようとした事を予想した私は、彼の出鼻から挫く。

「君も男の子なら、二言は無いわよね?」

私が更に確認すると、

「………まあ、どっちにしろ無理でしょうから問題ないんですけど………」

彼は諦めたようにそう呟いた。

…………あれ?

いつの間にか立場が逆になってる?

「なら、始めましょうか!」

私は釈然としないながらもランスを構えた。




模擬戦が始まったけど、いつもと変わらなかった。

防御や回避は大分上手くなったけど、攻撃を全然してこない。

だから私はいつものように強打で防御のブレードを弾き、体制を崩させ、その隙に連撃を叩き込む。

いつものパターンでこのまま終わるかと思った。

盾君のシールドエネルギーが0になる寸前、

「これで終わり!」

いつもの様に止めの一突きを放った。

だけど、

「〇巻閃!!」

次の瞬間、盾君の姿が消えた。

「え………?」

思わず声を漏らす私。

ハイパーセンサーで盾君の姿を捉えた時、盾君は高速回転しながら私の後ろに回り込んでいた。

そして、

――ドゴッ

背中に強烈な衝撃が走る。

「あうっ!?」

咄嗟に水のヴェールで防御したはずなのに、軽く打ち破ってきた。

間違いなく今の技は瞬時回転イグニッション・スピン

しかも移動を同時に行う高等技術。

普通は回避に使うための技術を、ブレードでの攻撃に使うなんて………

その威力は、通常のブレードを振るだけの時とは比べ物にならない。

今のは峰打ちだったから吹き飛ばされただけで済んだけど、刃の方を向けてたら、ほぼ確実に絶対防御が発動していた。

彼の方を見ると、何が起きたのか分かっていないようでポカンとしていた。

「驚いた。 盾君、いつの間に瞬時回転イグニッション・スピンなんて覚えたの?」

「はい? 瞬時回転イグニッション・スピン?」

「うん。 瞬時加速イグニッション・ブーストの応用技で、簡単に言えば超高速回転。 しかも君がやったのは、移動を併用して行う更に上級の技なのよ」

私の説明に、何やら呆れた様子の彼。

「…………ま、まあ、偶然ですよ偶然。 ただ、何とかしようと必死だっただけで………」

「そう…………」

そこまで聞いて、私は試合前の約束を思い出し、思わず顔が熱くなった。

そして、私から切り出す。

「そ、それで…………い、何時にするの…………?」

「はい? 何をですか?」

試合前の約束がすっかり頭から抜け落ちていたのか、そう聞いてくる彼。

「だ、だからその……………デ、デートよ………!」

「へぁっ!?」

私が思い切ってそう言うと、彼は変な声を上げる。

「いやいやいや! ちょっと待ってください! なんでそんな話になってるんですか!?」

「………もしかして、気づいてないの?」

「はい?」

彼の様子から、本当に気づいてないようなので、私は後ろを向く。

「君、私に一撃入れたんだよ」

そう言って、背中の装甲の傷を見せた。

「私の水のヴェールの上から………しかも、峰打ちでこの威力。 もし刃の方を向けてたら、確実に絶対防御は発動してたよ」

そう説明する私。

「い、いや、それは偶然ですよ! 偶々反撃できたのだって、楯無先輩のいつものパターンを読んだだけですし!」

「偶然でもなんでも、私に一撃入れた事は事実なのよ。 もっと自信を持ちなさい」

「は、はあ………」

「そういうわけで………や、約束だからね。 その……デートの予定を決めないと………」

思わず『デート』という単語に顔が熱くなってしまう。

「あの………嫌ならそんなに無理することも無いですよ。 あの約束を持ちかけたのだって冗談半分みたいなものですし………前も同じようなこといったと思いますが、しょうがなくデートされても、こっちも嬉しくありませんから」

彼はそう言ってくるが、

「べ、別に絶対に嫌って訳じゃ…………それとも、盾君は私とデートするのは嫌?」

何故か否定してしまう私。

その事に疑問を覚えようとしたとき、

「…………そりゃ楯無先輩のような美人とデートはしてみたいですが………」

彼に『美人』と言われ、私はドキリとする。

「じゃあ決まり。 日にちは次の日曜日……って言っても明後日だね。 待ち合わせは、朝の10時に駅前で」

恥ずかしさを隠すように私は一方的に予定を決めてしまう。

「いや、2人とも同じ部屋なんですし、一緒に行けばいいのでは?」

「いいの! デートは待ち合わせから大事なんだから!」

正直自分でも無茶苦茶なこと言ってると思う。

「じゃあ、今日の訓練はここまで。 ああ、明日の訓練は休みだから、しっかり休んでおいてね」

私はそう言って話を終わらせ、先にピットへと戻る。

それからISを解除し、通路へ出る。

その瞬間、私は思わず駆け出した。

どうしようどうしよう!?

デートの約束しちゃったよ!?

デートなんて初めてだし!

わーん! どうしよう!?

私の頭の中で色々な考えがごちゃごちゃになる。

虚ちゃ~ん! 助けてぇ~~~~!

私は混乱しながら生徒会室へ向かった。






デート当日。

私は盾君を先に行かせ、部屋の中でとある服を取り出す。

昨日一日かけて今日のデート用に選んだ服。

私はそれを着て鏡の前に立つ。

えっと………変じゃないよね?

私は何度も鏡を見直しておかしな所が無いか、念入りにチェックする。

「…………よし!」

しばらくして、ようやく納得ができた私は、鞄を持って待ち合わせ場所へと向かった。




待ち合わせ場所の駅前には、当然だが既に彼がいた。

「………ッ」

直ぐに声を掛けようと思ったけど、思わず声が詰まった。

普段の彼の私服は、見た目よりも動きやすさ重視で、お世辞にもセンスが良いとは言えなかった。

だけど今の彼は、彼なりに必死に考えたであろうコーディネートで着飾っており、いつもの彼とはまた違った印象を受けた。

結構カッコいいかも。

って、何考えてるんだろ、私?

私は気を取り直して彼に声をかけた。

「お待たせ~」

私が声を掛けると彼はこちらに振り向き、

「ッ!?」

思わず息を呑んだ事が分かった。

「待った?」

私は気にせずに言葉を掛ける。

「いえ、それほど………」

彼は顔を赤くして、視線を逸らしている。

可愛いな。

「うふふ、似合う?」

私は笑みを浮かべて問いかける。

「え、ええ………よく似合ってて、綺麗です」

その言葉は何の飾り気もなかったけど、彼の本心だということが伺えた。

「うふっ、ありがと」

少し顔が熱くなるのを感じながらお礼を言う。

「じゃあ、行こっか」

「分かりました。 楯無先輩」

それを聞いた瞬間、私は何か違うと感じた。

「むぅ~。 盾君!」

「はい?」

「折角のデートなんだから敬語禁止!」

「え?」

「それと先輩もダメ!」

「ええっ?」

「敬語は禁止。 先輩も禁止」

そう、彼はこんな時まで敬語で先輩呼びだった。

私だって初めてのデートなんだし、もう少し雰囲気出したいわよ。

すると、

「………分かった、楯無。 これでいいか?」

彼はあっさり敬語をやめた。

だけど、

「むー…………」

私は、まだ何か違うと感じていた。

少し考え、その理由に思い当たる。

「ね、ねえ………」

私は少し勇気を出して、彼に話しかけた。

「何だ?」

「その……前も話したと思うけど、私の家は対暗部用暗部なの。 それで、私の“楯無”っていう名前は、代々当主が受け継ぐ名前で、本当の私の名前じゃないの」

私は、“楯無”の名について説明する。

「ふーん。 折角のデートに楯無の名は無粋だから、違う名前で呼んで欲しいとか?」

すると、彼は私の真意を読み取ってくれたのか、そう返してくる。

「う………そうよ」

私は少し恥ずかしかったけど頷く。

「まあ、流石に本名を教えるのは拙いんじゃないのか? そういう類の名前って、軽々しく教えちゃダメなんだろ?」

「………よくわかったね?」

私は彼の推理にドキリとした。

もしかして、彼は更識の仕来りについて何か知ってる?

だったら、彼はどこかのスパイって事も………

などと、考えていると、

「テンプレだからな」

その言葉を聞いた瞬間、私はガクッと脱力した。

ま、まあ確かにどこかで聞いたことあるような設定だけど……

「ウチの仕来りをテンプレの一言で済まさないで欲しいなぁ」

私は思わず苦笑してしまう。

「………で? 結局何て呼べばいいんだ?」

それを聞いた瞬間、私は思わず“刀奈”と言ってしまいそうになった。

でも、その言葉を押し止め、

「……………君の好きに呼んで」

私はそう言った。

そうだよね。

私の本名は軽々しく教えちゃダメなんだから………

彼を騙しているような気がして、少し悲しくなる。

「えっ?」

「今日一日は、私は君の彼女だから、君の好きな名前で呼べばいいよ」

だから、せめて今日だけは彼の“彼女”でいようと思った。

彼は少し考え、口を開く。

「じゃあ“カタナ”で………」

「えっ!?」

彼が信じられない名を口にし、私は思わず声を漏らしてしまう。

「そ、その名前にした理由を聞いてもいいかな?」

いくらなんでも偶然にしては出来すぎてる。
その理由を聞く。

「単純な話だ。 俺の名はじゅん、つまりたて。 盾と対になる物は剣。 だけどケンやツルギじゃ女の子っぽくないだろ? けどかたななら女の子の名前でもおかしくないからな。 まあ、正確には刀は盾と対になるわけじゃないかもしれないけど、そこは気にしないでくれ」

「そ、そうなんだ」

確かにその言葉の連想なら、“カタナ”と呼んでもおかしくないかな………?

「まあ、嫌なら他の名前を考えるけど?」

「あ、ううん。 それでいいよ!」

彼の言葉に、反射的に頷いてしまった。

でも、心のどこかで“カタナ”と呼んでもらって嬉しいと思う自分がいる。

「じゃあ改めて。 今日はよろしくな、カタナ」

「うん! よろしくね盾!」

今日は彼の“彼女”。

だから私も彼を呼び捨てにする。

「じゃあ、早速映画館へレッツゴー!」

そう言って私は彼の手を取って歩き出す。

ふと見れば、彼は顔を真っ赤にしていた。

それを見て、ますます彼が可愛いと感じた私は、

「ふふっ………えいっ!」

思い切って彼の腕に抱きついてみた。

「おわっ!? カ、カタナ!?」

彼は驚いて叫ぶ。

耳まで真っ赤にして可愛いの。

「いいでしょ? 今は君の彼女なんだし。 それともこういうのは嫌?」

私は上目遣いで問いかける。

「…………嫌じゃないです」

彼は正直に答えた。

「じゃあいいわよね」

そのまま腕を組んで歩き出す。

実を言えば、心臓がドキドキしっぱなしだった。

心臓の音が彼にバレていないか少し不安になりつつ映画館へ向かった。




正直映画の内容は覚えていない。

調子に乗って映画の間中彼の手をずっと握っていた。

おかげで彼の体温を意識して、映画の内容は全く頭には入っていなかった。

続けていったアクセサリーショップ。

その中で気に入ったペンダントがあったんだけど、手持ちが不安だったので諦めようとした。

でも、彼が直ぐに買って私にプレゼントしてくれた。

な、何か貢がせてるみたいで悪い気がするなぁ。

「えへっ、どうかな?」

私は彼の買ってくれたペンダントをその場で身に付け、彼に見せてみる。

「ああ。 似合ってると思うぞ」

彼の言葉は相変わらず飾り気のないもの。

だけど、だからこそ本心からの言葉だと思えた。

「ふふっ、ありがと」

だから、私は笑顔でお礼を言った。





残りの時間は遊園地へ行った。

彼は絶叫マシンは苦手なようで、ジェットコースターでも悲鳴をあげていた。

でも、ISの機動はもっと激しいんだけどなぁ。

それを彼に聞くと、

「自分の意思で飛ぶのと、振り回されるのは全然違う」

だそうだ。

お化け屋敷とかも回ったけど、そこでは彼は冷静だった。

何でも、

「作り物と分かってるからさほど怖くはなかった」

らしい。

私は内心怖かったから、結構心強かった。

やがて、楽しい時間はあっという間に過ぎる。

夕日の中で帰路につく私達。

「う~~~ん……! 今日は楽しかったぁ!」

私は伸びをしながらそう言う。

「俺も楽しかったよ。 今日はありがとうな、カタナ」

彼もそう言って笑みを向けてきた。

ちょっとドキッとなる。

ふと、彼がカタナと呼んでくれる時間がもうすぐ終わると思うと少し寂しく感じた。

ってあれ?

私、今寂しいって思った?

私がその理由を考えようとしたとき、突然彼が立ち止まった。

私は突然立ち止まった彼に振り返る。

「どうしたの?」

私がそう尋ねると、彼は今まで見た中で一番の真剣な表情をして、

「…………今から言う言葉は、俺の本当の気持ちです」

「えっ?」

彼の言葉に、思わず心臓が高鳴る。

そして、

「“刀奈”、あなたが好きです」

“カタナ”という仮初の恋人ではなく、ハッキリと私自身を見て、彼はそう言った。




「え…………?」

突然の彼の告白に、私は考えが纏まらなかった。

自分が何を考えているのかすらわからない。

と、とにかく何か言わないと。

私が口を開こうとしたとき、

「………答えはいいです。 分かりきってることですから」

とても寂しそうな笑みを浮かべてそう言った。

「すみません! 先戻ります!!」

彼はそう言うと、いきなり駆け出す。

「あっ…………ま、待って!」

私は彼を呼び止めようとした。

だけど、足が動かなかった。

彼はそのまま走って行き、やがて見えなくなってしまう。

その光景に、寂しさを感じる私。

しばらくして、ようやく足が動き出した私は、帰路へついた。





私は、部屋の前で立ち止まる。

彼とは少し……ううん、とても顔を合わせ辛かった。

でも、入らないわけにはいかない。

私は意を決してドアを開けた。

すると、

「お帰りなさい、“楯無先輩”」

何時も通りの言葉で、彼は出迎えてくれた。

でも、

――ズキッ

何故かとても胸が痛んだ。

そして、胸にポッカリと穴が空いた様な空虚感が生まれた。

「?………どうかしましたか? 楯無先輩」

彼は不思議そうに聞いてくる。

でも、

――ズキンッ

再び胸に痛みが走り、空虚感がますます大きくなる。

「楯無先輩?」

彼が私の名を呼ぶたび胸に痛みが走る。

「………う、ううん………何でもないわ……」

私は何とか気丈に振舞う。

「そうですか。 体調が悪かったら言ってくださいね」

「う、うん……ありがとう」

何時も通りの彼の言葉。

だけど、それがいつもより遠くに感じてしまう。

その後も、何時も通りだった。

いつも通りの筈なのに、彼がいつもより遠くにいるような気がしてならなかった。

就寝時、彼はいつもの様に私に背を向けてベッドの端に寄っている。

これも何時も通り。

何時も通りの距離の筈なのに、彼の背中がとても遠い。

私は、思わず彼の背中に手を伸ばしそうになる。

だけど、全然届く気がしなかった。

寂しさを心に残したまま、夜は過ぎていった。





数日後。

「はぁ…………」

私は教室で思わずため息をついてしまう。

原因は彼との関係。

何時も通りのはずなのに、いつも通りじゃない。

心の空虚感もそのまま。

「どうしたのたっちゃん? ため息なんてらしくないよ?」

薫子ちゃんが話しかけてきた。

「薫子ちゃん………」

「たっちゃん、最近元気ないみたいだけど、ホントにどうしたの?」

薫子ちゃんは心配そうに聞いてくる。

「私でよければ、相談に乗るよ?」

「薫子ちゃん………実は……」

私は、薫子ちゃんの言葉に甘えることにした。

私は、あのデートの出来事を話す。

「むっ、無剣君に告白されたぁ!?」

吃驚仰天と言わんばかりに仰け反りながら驚く薫子ちゃん。

「ま、まあ、たっちゃん美人だし、男の子ならほっとかないよね…………で? たっちゃんは何て答えたの?」

「それが………分かりきってるから、答えはいらないって………」

「あちゃ~、無剣君。 後ろ向きにも程があるよ~。 断られるって決め付けて告白するなんてさ」

薫子ちゃんは呆れと驚きが半分ずつといった感じ。

「それからなんだけど………避けられてるわけじゃないし、何時も通りなんだけど………今まで以上に一線を引かれちゃってる気がして………」

私は俯きながらそう呟く。

「なるほどなるほど………」

薫子ちゃんはうんうんと頷く。

すると、

「で? 何でそんなに元気無いの?」

薫子ちゃんは態度をコロッと変えてそう言ってきた。

「え?」

私は薫子ちゃんの言葉の意味が分からず声を漏らす。

「だから、何でそんなに元気なくしちゃったわけ? 別に避けられてるわけじゃないんでしょ? 何時も通りなんだし。 何がそんなに不満なの?」

「えっ? ふ、不満って………」

私が何か言おうとしたとき、

「そ・れ・に!」

薫子ちゃんがそう言いながら私の首元に手を突っ込んだ。

「きゃっ!? 薫子ちゃん!?」

私は驚くが、薫子ちゃんが私の首元からある物を引っ張り出した。

それは、デートの時に彼が買ってくれたペンダント。

「珍しいよね? たっちゃんが普段からアクセサリーをつけてるなんて」

薫子ちゃんがペンダントから手を放し、私はそれを手で受け止める。

「無剣君はさ、たっちゃんに振られると決め付けて告白したみたいだけど、たっちゃん自身はどうなのさ?」

「えっ? 私自身………?」

「そう、無剣君の勝手な思い込みじゃない。 たっちゃん自身の気持ちだよ」

「わ、私は………」

「その答えが出た時に、たっちゃんの悩みは解決すると思うよ」

薫子ちゃんはそう言うと立ち去っていく。

私は、薫子ちゃんに言われたことを考える。

盾君の思い込みじゃない、私自身の気持ち………

その答えを出すには………

私は、あることを決めた。







あとがき


十二話の完成。

完全楯無サイドでした。

はてさてこの先どうなることやら。

まあ、激甘ラブコメになるのは間違いないのですがね。

今の所テイマーズや生きる意味よりもこっちのほうが書きやすかったりする。

あと、アニメのIS2で楯無が出てきてテンション上がったのも理由の一つですかね。

裸エプロンは威力絶大です、はい。

では、今回はこの辺で失礼。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.028548002243042