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No.37185の一覧
[0] 【完結】一夏がついてくる【IS】[コモド](2014/01/23 06:57)
[1] 一夏がついてきた[コモド](2013/04/10 22:03)
[2] 一夏がついて……?[コモド](2014/01/23 06:56)
[3] 一夏がついてこない[コモド](2013/04/11 22:03)
[4] 一夏がついてない[コモド](2013/04/16 22:58)
[5] 一夏がやってきた[コモド](2013/10/06 00:38)
[6] 一夏がやってこない[コモド](2013/04/15 23:38)
[7] 一夏がやって……?[コモド](2013/04/16 23:20)
[8] 一夏がやった[コモド](2013/04/19 23:48)
[9] 一夏とやった[コモド](2013/04/29 23:08)
[10] 一夏がついてくるの?[コモド](2013/04/29 23:10)
[11] 一夏がついてきてもいいのか!?[コモド](2013/04/29 22:58)
[12] 一夏がついてきたのか[コモド](2013/05/03 20:05)
[13] 一夏がついてこなくてもいいや[コモド](2013/05/11 01:09)
[14] 一夏がついてたらいやだ[コモド](2013/05/19 19:17)
[15] 一夏とした[コモド](2013/12/13 02:38)
[16] 一夏と真夏の夜の悪夢[コモド](2013/06/06 19:33)
[17] 一夏と真夏の夜の白昼夢[コモド](2013/06/06 19:13)
[18] 一夏と真夏の夜の 夢[コモド](2013/12/13 02:44)
[19] 一夏と真夏の夜の淫夢[コモド](2013/09/08 16:09)
[20] 一夏と一夏のアバンチュール[コモド](2013/09/16 13:43)
[21] 一夏と一夏のあいだに[コモド](2013/09/16 13:35)
[22] 一夏と一夏の終わりに[コモド](2013/09/25 00:28)
[23] 一夏がついてきてほしい[コモド](2013/09/25 00:28)
[24] 一夏がついてこないから一夏になる[コモド](2014/01/23 07:24)
[25] 一夏がついてこないからいけないんだよ[コモド](2013/10/06 00:54)
[26] 一夏がついてこないから……[コモド](2014/01/10 01:03)
[27] 一夏がついてくるっつってんだろ![コモド](2013/12/13 02:58)
[28] 一夏がついてこい[コモド](2013/12/22 17:24)
[29] 一夏と[コモド](2014/01/10 02:47)
[30] みんながついてくる[コモド](2014/01/25 05:54)
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[37185] 一夏とやった
Name: コモド◆53cfaf75 ID:fe1b02d0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/29 23:08
「金剛、客が来ているぞ。至急、応接室へ迎え」

 トーナメント当日の朝。全生徒が大会の準備に勤しむ中、雑務中に織斑先生に呼び出されたかと思うと、慮外の連絡を受けた。

「客? 誰ですか?」
「行けばわかる。私はお前を呼べと言われただけだ。それ以上は知らん」
「はあ」

 的を射ない言葉に首を傾げつつも応接室に向かうと、黒革の豪奢なソファに腰を深く沈める、久しぶりに見た人物がいた。

「おぉ、榛名くん。久しぶりだね。元気そうでなによりだ」

 おれが政府に保護された時にいた政治家だ。ネクタイが窮屈そうな首元と絵に書いたような中年太り。
 強欲な内面が面貌に浮き出ている、与党幹事長のオッサンだった。
 ぶっちゃけ会いたくなかった。この人、おれを使って影で色々してそうなんだよな。
 酒に酔ったような赤ら顔を綻ばせて、「ささ、座りたまえ」と対面のソファに座るよう促す。
 部屋の奥の黒檀の机に座る女性は誰だろうか。憶えがない。

「突然呼び出してすまないね。君が元気にしているか気になってな。どうだね、IS学園は?
 女の子ばかりの中に男子二人だけでは参るだろう」
「いえ、特には。皆が気を遣ってくれるので支障なく過ごせています」
「そうかそうか。野暮な話だが、IS操縦者とはいえまだ君は学生なんだ。
 顔も悪くない。世界的に有名な君はモテモテじゃないか?」
「いや、そんなことないですよ。さっぱりです」

 もう一人が独占してるからな。
 幹事長は誤魔化すように大笑した。

「ははははは、これは失敬。見目麗しい女生徒ばかりだからね、ここIS学園は。男なら目移りするのは仕方ないと思っていたんだが」
「はあ……」

 下世話な世間話。オッサンと高校生ですることかな。
 親の実家に帰省した時に、酒に酔った親戚のおじさんに絡まれたような感覚になる。
 というか、何でこの人ここにいるんだろう。
 大方トーナメントの来賓だろうけど、生徒に直接面会とかできるのか?
 ……まあ、規則も半ば有名無実と化しているから、学園側の許可を貰えば可能なのか。

「あぁ、そういえば君のルームメイトはフランスの代表候補生と聞いたが」
「はい。仲良くさせてもらっています。トーナメントでもペアで出る予定ですし」
「うむ、他国の候補生と交流を深めるのはいいことだ。それで切磋琢磨し、技術を磨くことが此処の存在意義だからね。
 思えば君は初の男性適合者であるにも関わらず、他国の候補生に引けを取らないほど適正が高かったからねえ。私たちも当時は腰が抜けるかと思ったほどだよ」
「はあ……」

 適当に相槌を打つ。なんだ、本当に世間話始めやがったぞ。

「幹事長、そろそろ……」
「む、わかった。榛名くん。トーナメント、期待しているよ。ではまた」
「はい」

 秘書らしき人物に促され、幹事長が退室する。
 ……マジで世間話をしに来ただけなのか?

「……」
「……えと、失礼しました」

 ずっと黙っていた女性に頭を下げて、おれも応接室をあとにした。
 いったいなんだったんだ?



「榛名、どこ行ってたの?」
「んー……野暮用?」
「何で疑問形なの?」

 更衣室で組み合わせの発表を待っていると、シャルルに問い質された。
 与党の幹事長が挨拶に来たとか言えるわけないので適当に答えたが、シャルルは胡乱げだ。
 とはいえ、他言できる訳が無いので知らんぷりを決め込む。シャルルがじーっと見つめてきたが黙殺した。
 不可視の圧力で居心地が悪い。耐えられなくなったおれは一夏に話を振った。

「結局、一夏は誰と組むことにしたんだ?」
「え? なんだって?」
「だから誰と組んだんだよ」
「あ、あぁ……ふ、ふふ、それはなぁ……み、見てからのお楽しみだ」

 何をカッコつけているのか判らないが、気障なポーズを取ってはぐらかす一夏。
 結局、一夏が誰かとペアを組んだという話はなく、一夏に迫る女生徒も開催日が近づくにつれ音沙汰がなくなっていった。
 終いにはあの鈴音さんとセシリアさんでさえ直接ペアを組むことを諦め、専用機持ちのおれとシャルルの優勝を阻むべくタッグを組む有様。
 篠ノ之さんと組むのかと思ったが、篠ノ之さんは同室の鷹月さんと組み、ついに一夏が誰と組んだか明かされることはなかった。
 ペアが決まらなかった人はランダム抽選になるのだが、まさかあれだけの立候補がいるのに誰も選ばなかったなんてことはあるまい。
 ないと思うのだが……一夏だからなぁ。

「……うわ」

 モニターに映る来賓席を見ると、さっきの政治家や政府で見たお偉いさんが何人か談笑していた。
 海外組もそうそうたる顔ぶれで、IS学園が如何に国際的に重要視されている機関かまざまざと実感させられる。
 おれ、人前に出るの中学の全中以来なんだけど。
 そんな小市民が、今やテレビの中でしか見られなかった国の重鎮に目玉のひとつとして刮目されているのだから、人生わからないものだ。
 いや、人生は詰んだっけ。

「緊張してる?」

 シャルルがおれの顔を覗き込んだ。一夏といいこの子といい、なぜ落ち着いていられるんだろう。

「緊張しいなのか、榛名」
「こういう大舞台は初めてなんだよ」
「あ、僕もだよ。お揃いだね」
「俺もだぞ。はは、榛名にも弱点があるんだな」

 むしろ弱点しかないんだけどな。長所ってなに、って感じだし。
 そうこうしているうちに抽選が始まった。同時に組み合わせも決まる。
 最初に映し出されたのはAブロック。そこにおれとシャルルの名前があった。
 うわ、初戦か。相手は――

「げっ!」
「……おれ、目が悪くなったのかな? ありえない文字が見えたんだけど」
「僕も」

 眼を擦り、見間違えなのではないかと期待をこめながら目を凝らした。

【ラウラ・ボーデヴィッヒ 織斑一夏】

「……」
「……」
「……」

 静寂に更衣室が包まれる。痛々しい静謐。
 いったいなにがどうなっているの?

「おい、一夏。お前まさか……」
「何てことだ……何てことだ……!」
「ひょっとして……誰とも組まなかったの……?」

 頭を抱える一夏。コイツ……本当に誰も選ばないで本選に望みやがったのか。
 しかも抽選で選ばれた相手が、よりにも寄ってラウラさんって。
 お前ら思わしげな因縁があっただろ。味方になってどうするんだよ。

「うわああああ! 何でアイツとなんだよぉぉ!」
「敵同士だな、一夏」
「あっち行こっか。作戦練り直さなくちゃいけなくなったし。一夏も挨拶してきなよ」
「薄情だぞお前ら!?」

 どう考えても一人を選ばなかった一夏が悪いよ。
 一夏が悪い。シャルルが辛辣なのは先日、脱げよと迫られたからか。
……にしても、専用機持ち全員がペアになるなんて、作為的なものを感じずにいられない。
 鈴音さんとセシリアさんは逆ブロックだから決勝まで当たらないのが救いか。
 下馬評では圧倒的優勝候補だし、シャルルは勝てると豪語したけど、おれには自信ない。
 それより今はラウラさんと一夏の対策をしなければならないから、頭を切り替えるか。
 ……でも、何でだろう。
 まったくの素人から凄まじい成長を見せる一夏。第三世代最先端の技術を搭載したハイスペックIS『黒い雨』を乗りこなすラウラさん。
 単体で見れば難攻不落な敵で、ラウラさんに至っては攻略が不可能に近い性能を誇る両者なのに、アイツらがペアで対戦相手だとどうなるか、容易く想像できてしまうんだが。



 結果的に、どうにかなってしまった。

「邪魔をするなッ! 織斑一夏ァ!」
「邪魔してるのはそっちだろ!」

 案の定、味方なのに対立しあい、息がバラバラ。二人同時におれに向かって突進してきたり、簡単な誘導に引っかかって機体が衝突し合ったりと、実力がまったく活かせていない。
 おれとシャルルはつかず離れずの距離を取り、対角から銃撃で徐々にシールドを削るだけ。
 近距離一辺倒の一夏は近寄らせない限り問題ないし、ラウラさんのワイヤーブレード、レールカノン等の中距離武器も使う暇を与えなければ脅威ではない。
 おれの武器は、自前は基本装備の手首に付いた鉤爪状の近接戦闘武器『剥爪』と、同箇所に設置され、意思一つで引き金を引ける、IS相手には牽制にしかならない威力のガトリングガン『壊鎧』、そしてシャルルから借りているアサルトライフル。
 他の専用機とは比べるまでもない見窄らしい仕様(各関節に動作補助のブーストという特色はあるが)なのに、戦術次第でこうも差が出るとは。

「クソ! こうなったら――!」

 おれと一夏は、シャルルが転入してくるまで、ずっと付きっきりで特訓してきた。
 だから、一夏の気質と癖は完全に把握している。
 おれは一夏が溜めを作ったのを見て、『瞬時加速』で真上へ飛び上がった。

「当たって砕けろだッ!」

 一歩遅れて、一夏が雪片弐型を構築し、『零落白夜』を発動。『瞬時加速』をも併用しておれを追う。
 一夏は落ち詰められると、途端に状況を打開しようと直情的、短慮になる。
 白式の『零落白夜』と『瞬時加速』の威力は確かに驚異的だが、先読みして距離を取っていたおれには届かない。
 追ってくる一夏を『壊鎧』で牽制しつつ、肉薄してきたのを見計らって各補助ブーストを作動。MAXスピードから急反転し、今度は地面に向けて垂直降下する。

「なに!?」

 驚く一夏と擦れ違う。
 この無茶苦茶な制動で発生する負荷も、宇宙空間での作業を想定して造られたISは人体に無害なレベルにまで軽減してくれる。
 元々、鳥がモデルなだけあり空中性能に特化し、機体性能も高いんだから装備もまともなら一夏にもタイマンで勝てると思うのに。
 だが、今回は『零落白夜』を発動させた時点でおれの勝ちだ。

「待て!」

 追撃を仕掛け、追ってくる一夏の速度に合わせて減速し、機体制御の役割を果たす機械翼を広げた。
 これは目隠しだ。地上の様子を一夏に見せないようにするための。
 地上では、黒い雨のAICによってシャルルが制圧され、今まさに攻撃されようとしていた。
が、AICの制御には多大な集中力を必要とする。眼前のシャルルに意識を集中させているラウラさんは、上空から迫るおれに気づいていない。
死角である頭上からライフルを一発命中させ、注意を逸らす。

「――ッ! 貴様……!」

 AICが解除され、シャルルが離脱する。標的をおれに変更したラウラさんは、ワイヤーブレードを放つが、事前に減速していたおれは方向転換して躱した。

「は!? うわっ!」
「何をしている、馬鹿者がッ!」

 するとどうなるか。ワイヤーブレードは背後にいた一夏を絡め取り、重力で加速した勢いを殺せず、一夏とラウラさんは正面衝突した。

「ぐあっ!」
「ぐっ……!」

 呻く二人。だが、ワイヤーが絡まり、おまけに『零落白夜』と『瞬時加速』の併用でエネルギー残量も僅かな一夏。
 ラウラさんは、余力はあっても対策済の二人相手には勝目が薄い。
 もはや勝敗は明らかだった。

『そこまで! 金剛榛名、シャルル・デュノア組の勝利!』

 シールド切れを待つまでもなしと判断したのか、アナウンスで勝者が告げられた。
 会場から大歓声が湧き上がる。……妙な気分だ。興行スポーツで活躍する選手もこんな気持ちを味わっているのか。
 しかし、あっさり勝ってしまった。ここまで作戦通りだと気味が悪いな。

「ま、負けた……? この私が……?」
「あ痛て……くっそ〜、負けたかー……」

 呆然とするラウラさんと、悔しがる一夏。
 普通に協力し合っていれば結果は違っていただろうに、なにしてんだか。

「やったね榛名!」
「うん」

 駆け寄ってくるシャルルに笑いかける。今回はシャルルが土壇場で立案した作戦の通りに事が運んだので、彼女が殊勲を貰うべきだろう。

「やられたよ。強いな二人とも」
「一夏、戦争って戦う前には勝負が決まってるらしいぞ」
「? なんだそれ」

 シャルルが言ってた。実際その通りだった。一夏はペアを組む相手を決めるか、協力すれば良かったんだよ。
 絶対協力しないってわかってたから、こんな展開になったんだし。

「う~ん……悔しいけど、素直に負けを認めるよ。おれたちの分も頑張ってくれよな」
「ああ、任せとけ」

 でないと、お前が悲惨な目に合うからな。
 一夏は安堵したように微笑むと、未だ呆然としているラウラさんに目を遣った。

「帰ろうぜ、ラウラ。足を引っ張っちまって申し訳ないけど、負けは負けだ。後が控えているから、もう行かないと」
「わ、私は負けていない……嘘だ……こんな……」
「ラウラ……」
「くっ」

 睨まれた。え、おれ?
 ラウラさんはおれを睥睨すると、這々の体でアリーナを去っていった。

「……悪いことしたかな」
「元々、一夏が誰かと組んでいればこんなことにはならなかったよね」
「うぐっ」

 図星を突かれて、一夏が閉口する。
 このトーナメント一週間もあるんだけど、何か不安しか募らないや。



 初日を終えて、一年生の一回戦が消化された。
 Eブロックの篠ノ之さんと鷹月さんのコンビは見事一回戦突破、一夏と付き合うと張り切っているが、準決勝で鈴音さんとセシリアさんのペアが立ちはだかる。
 その二人はシードで出番はなし。今回のトーナメントには、第三世代機のテストパイロットとして入学している彼女らの機体と仕上がりを一目見ようと集まっている人も多かった筈なので、残念がる来賓も多かったようだ。
 一番の注目カードの男性操縦者を含む専用機持ち対決は、一夏・ラウラペアの空中分解で力を見せることなく終わったし、無駄足を運んだことになる。
 まあ、一週間もあるし、滞在してるだろうから関係ないのか。また明日もあの人たちが来るのかと思うと沈鬱になる。
 まあ、明日は二年生の一回戦だからおれは出ないのだが。

「はい、榛名」
「ん」

 質素なカップから漂うコーヒーの芳醇な薫りが鼻腔をくすぐった。
 夕食を取ったあと、おれとシャルロットは早めに部屋に戻り、休むことにした。
 備え付けの緑茶ばかりでは味気ないとコーヒーやら紅茶やらを買ってきたのだが、

「……おれ、コーヒーが良いって言ったっけ?」
「ううん。でも、何となく今日はコーヒーが欲しそうだったから」
「……正解」
「アハ、やった。当たっちゃった」

 当たったのはおれの心だけでなく、作戦もなのだが、口にするのも野暮なのでやめておこう。
 コーヒーが主流なフランスだけあって、シャルルが淹れたコーヒーは美味かった。
 勝手なイメージで、紅茶ばかり飲んでいるイメージがあったんだが。

「今日は運が良かったね。強敵のボーデヴィッヒさんと一夏に勝てたのは大収穫だよ。あと気を付けるのは、鈴とセシリアのペアだけだね」
「シャルロットのおかげだよ。咄嗟に考えた作戦が見事に嵌ったから。あそこまで徹頭徹尾思い通りに事が運ぶと、ちょっと怖いくらいだ」
「買い被り過ぎだよ。榛名が一夏の性質を把握してくれたから出来た作戦だもん。
 それに、あんな無茶な機動をやってのける榛名の方が凄いよ」

 シャルルは謙遜するが、おれの機体性能と実力を見立てた上で立案したとしか思えないので、少し……いや、かなり戦慄するレベルの明晰さだと思う。

「いや、やっぱりシャルロットが凄いよ。おれだけじゃ絶対に勝てなかった。
 シャルロットがペアで良かったって、心から思ってるよ」
「そ、そう? なんか、照れるな……」

 カップに口をつけて、はにかむシャルロット。
 部屋着は色気のないジャージだが、長めの袖で隠れた手と赤らんだ頬が愛らしかった。

「あとでお礼しなきゃな」
「え? いいよ、別に、そんなの欲しくて頑張ったわけじゃないし」
「今まで模擬戦で一回も勝てなかった一夏に勝たせてくれたから。男に華を持たせてくれたんだもん、お返しに何かしなきゃカッコつかないよ。
 何かして欲しいことある?」
「えぇ!? うー……突然言われても……」
「何でもいいよ」

 あたふたするシャルロットに、つい調子に乗ってしまう。
 やっぱり女の子の前では見栄を張りたがるんだよな。おれも男ってことか。

「何でも……何でもかぁ……じゃあ」
「うん」

 お金ならたんまりあるし、使うのが怖かったから手をつけていなかったけど、これを機に下ろすのもいいだろう。
 どうせ使う機会もないしな。
 シャルロットはおずおずと、

「ひ、膝枕して欲しいな……」
「膝枕? おれが?」
「うん」

 恥ずかしそうに首肯する。意外なお願いに面を食らった。
 女の子の膝枕ならともかく、野郎の膝で喜ぶ奴なんているのか。

「……まあ、おれでいいなら」
「やった!」

 不思議に思いながら了承すると、シャルロットは童心に帰ったように無邪気な顔で笑った。

「はい、どうぞ」
「う、うん……おじゃまします」

 ベッドに腰掛け、膝を閉じてシャルロットを促すと、どこか緊張した固い面持ちで頭を乗せてきた。
 そんなに緊張しなくていいのに。

「……どう?」
「うん……いいよ……すごくいい」

 男の膝なんて高いし硬いしで、決して心地よくなんてない筈なのに、シャルロットは感極まったような夢見心地だった。
 何と言えばいいか、面映ゆい。

「榛名、やっぱりホモ扱いされるのイヤだよね?」
「そりゃあ……」

 おれを見上げながら訊いてくる。そもそもホモって同性愛者の侮称だし、勘違いされて気分が良い人なんていないだろう。

「そっか、そうだよね。うん、わかった」
「? なにが?」
「教えない」

 意地悪く笑ったので、仕返しに手持ち無沙汰になった右手で頭を撫でてやった。

「ひゃっ」
「嫌だった?」
「イヤっていうか、ビックリしたよ、もう。あの、まだシャワー浴びてないから、汚いし、触らない方が」
「大丈夫大丈夫」
「あ……もう」

 そのまま柔らかい髪を整えるように撫で続けると、シャルロットは拗ねたように息を漏らして、されるがままになった。
 膝にあたる吐息の熱がこそばゆい。しばらくすると、疲れが出たのか、シャルロットがウトウトし始める。

「ん……何だか、榛名といると安心する……」
「そう?」
「うん……お母さんみたい……」
「……」

 何とも言えない複雑な気持ちになり、返事ができなかった。
 ただ、眠りそうなシャルロットの邪魔はしたくないので、彼女が眠るまで撫でた。

「お母さん、か」

 安らかに寝息をたてるシャルロットの寝顔を眺めながら、感傷的になってしまう。
 ――結局、この子は一度も怪しい行動は取らなかった。
 信頼しているとは言ったものの、気を許せばつけ込まれると気を緩めることはしなかった。
 だがシャルロットの行為には疑念を持つ隙もなく、それどころかおれの心配までしてくれた。挙句、IS操縦の薫陶や勉強の面倒まで見てくれている。
 シャルロットは周囲を騙している自分に負い目があるようだが、おれにも彼女に負い目があった。
 なんでもすると言ったのは、見栄以上に疑ったことの償いをしたかったから。
 お願いの予想は外れたが……これでよかったのか。いや、ダメだよな。
 ……ところで、おれ、いつまで膝枕してればいいのかな。初めてやったから、そろそろ足が痺れてきたんだけど。肩まで乗っけてきて、さらに重くなったんだけど。





「……ん? あ、あれ! 寝ちゃった?」

 深夜を過ぎて、ようやくシャルロットが飛び起きた。
 ずっとあった重みがなくなって、久方ぶりに解放された気分になる。
 長かった……凄い長かった。

「ゴメン、榛名。僕、うっかり……眠れなかったよね? 榛名も疲れてるのに」
「いいよ。可愛い寝顔がタダで見られたから役得だった」
「――ば、バカ!」

 途中から顔を見る余裕もなかったんだけど、意地でかっこつける。
 そう、男って生き物は気合と意地で何とかなるものなのだ。

「ちょ、ちょっとトイレに――」

 そう言って立とうとしたら、足の感覚が全くなくて顔面からすっ転んだ。

「は、榛名! 大丈夫!? どうしたの!?」
「痺れた……足が、痺れた……」
「僕のせいだよね? ゴメン、ゴメンね榛名!」

 血流が回らなくて足が無くなったみたいだよ。
 そういえば、腕枕して朝起きたら腕が青くなってたとか良く聞くもんね。
 どんなに小顔の美少女でも、頭って重いんだよ。体を深く埋められたらますます重くなるよね。
 人体枕って怖い。



「私と戦え」

 決勝戦前日になって、ラウラさんに呼び出された。
 おれたちは見事に快勝を重ね、遂に決勝で鈴音さんとセシリアさんとの対決を迎えることとなった。
 その途中で、篠ノ之さんと鷹月さんのペアがその二人に敗れ、篠ノ之さんが悔しさのあまり引きこもったり(鷹月さんが慰めたらしい)、準々決勝で四組の日本代表候補生と当たっておれが睨まれたりしたが、波乱もあったトーナメントも明日で終わりだと快哉を叫んだ矢先だった。

「無理です」
「なぜだ!」

 率直に断ると、歯を剥き出しにしたラウラさんの片目に射抜かれる。
 いや、無理だから。

「明日は決勝が控えてるから、ラウラさんと模擬戦なんかしてISに欠損でも出たら大変だもの。それに、学園内での許可されていないISの展開は禁止されてるし」
「くっ……」

 正論を返すと、ラウラさんが歯噛みした。遮二無二襲ってくるかと思ったが、意外と律儀で規則にうるさいのかもしれない。
 ていうか、決勝は主要先進国の専用機持ち同士の対決とあって、注目度も桁違いで、ある意味で国家の威信と技術力、パイロットの研鑽具合を示す代理戦争みたいになっているので、もしおれがドイツの候補生と私闘を行った所為で出られなくなったとかなったらヤバイのだ。
 まず間違いなく日本とドイツの関係が悪化する。IS学園が外圧の及ばない場所だとしても、こうして公の場で生徒が出る以上、おれが出ないとあれば問題視されて直に詳細も明らかになるだろう。
 高校生同士の些細な喧嘩で大事になったら目も当てられないし。
 だが、ラウラさんは諦められないようだ。

「納得いかん! 私は負けていなかった。奴が足を引っ張らなければ……それに、まだ私は戦えたのに!」
「無理じゃないかな。一夏に装備が絡まってしばらく身動きとれなかったでしょ」
「黙れ!」

 感情的になるラウラさん。子どもみたいだ。

「おれからも言わせてもらうけど、ラウラさんはそんなに勝ちたいのに、どうして一夏と協力しなかったのさ。
 少しでも協力しあえば結果は違ったと思うのに」
「なぜ私が奴と手を組まなければならない。想像しただけで反吐が出る」
「ラウラさん……要らぬお世話かもしれないけどさ、もう少し肩の力を抜いた方がいいよ。
 クラスでも浮いてるし、自分から溶け込もうとしなきゃ」
「ISをファッションか何かと勘違いしているお気楽な連中と私が? 必要性が感じられないな」
「そういう友達が必要だって思わないところが、見てて心配になるんだよ」
「……心配?」

 説教臭くなるのも勘弁なので、踵を返した。

「あ、待て!」
「ラウラさん、何で一夏を敵視してるのかおれには検討もつかないけど、一度偏見を持たずに話してみてくれないかな?
 きっとラウラさんが思ってるような奴じゃないと思うからさ」
「……」

 返事を待たずに立ち去る。
 疲れた。連日の戦闘で無理が祟っているのかもしれない。
 明日に備えて早めに寝よう。
 ……何か、嫌な予感がするけど、関係ないよな?



「フフ……フフフフフ! 来ましたわ! ついにこの日が! 今か今かと待ちわびましたわよ!
 あなたをこの手で倒せる日を!」
「一夏ー! 首を洗って待ってなさいよー! 今にあたしたちがコイツを倒して優勝の栄冠を手にするのを!」

 鈴音さんに指を指される。ちょっと日本語がおかしいが……いや、合ってるのか。やはりおれが最大の障害と認識されているらしい。
 セシリアさんは優雅に髪をかきあげ、一日千秋、悲願の時は来たり、と士気に満ち満ちている。
 トーナメント最終日。全学年の決勝戦が行われる、祭りのフィナーレ。
 世界的な注目度も最高潮だ。一学年は最初に行われるのだが、政治的な意味合いでは最重要な試合である。
 今年の一年生はおれと一夏の世界初の男性操縦者に加え、イギリス、中国、ドイツの第三世代のテストパイロットが所属している。
 IS学園は生徒にとってはISの操縦技術を磨く場であり、国にとっては自国のIS技術とパイロットの優秀さを見せつける場でもあるから、このような生徒対抗試合は、それらを披露する絶好の機会なのだ。
 映像は世界中に放送され、普通はその対戦の結果からISの改善点を見つけたり、優秀な人材をスカウトするのだが……今回は少し旗色が違う。

 前述したが、これは代理戦争なのだ。
 ペアはおれとシャルル、鈴音さんとセシリアさん……政治的な問題に口出ししたくないが、日本と中国、イギリスとフランスは、国家間の仲が悪い。
 おれたちには関係ない昔の話だが、軋轢は風化しにくいので、どうもおれたちの知らない所で勝手に盛り上がっているらしい。
 おまけにおれ以外は専用機持ちの代表候補生。かかる期待も半端じゃない。
もうヤダ、逃げたい。

「は、榛名? 大丈夫? 体がすごい震えてるよ?」
「あ、ああ……これは武者震いだから」
「そうなんだ。やっぱり男の子なんだね」

 クスクスと笑う。ごめんなさい嘘です、ビビってます。
 尋常じゃなくビビってます。だって、大統領とかいるんだよ?
 「Yes,we can」とか言ってる人だってくらいしか知らない、テレビの中でしか見たことない雲上人なのに、何で今はおれのこと見てるの?
 出世が早すぎじゃない?

「さぁーて、アップ完了! 今この場で世界中に、あたしの実力が金剛くんより優れてるってのを証明して見せなきゃね!」
「榛名さん、あなたのことは友人として好ましく思っていますが、それとこれとは話は別ですわ。
 あなたを倒して、私は名実ともに一夏さんに相応しい人になります!」

 案の定おれ狙いだし。まあ、普通は弱い方から攻めるよね、常套だよね。
 でも、それもイヤだ。……仕方ない。これだけは使いたくなかったが……

「鈴音さん、セシリアさん。聞きたいことがあるんだけど」
「なんですか?」
「なによ? 命乞いなら聞かないわよ。ギブアップなら聞いてあげるけどね」

 不敵な笑みを浮かべる二人に、悪魔の言葉を囁いてやった。

「二人が勝ったら、どっちが一夏と付き合うの?」
「――」

 ピタリと、二人の表情が固まった。やっぱり決めてなかったのか。

「せ、セシリア~? 今までの戦いで倒した数って、あたしの方が多かったわよね?」
「オホホ……鈴さん、それは私がサポートに徹していたからではないですか? 戦闘での貢献度では私の方が上ですわよ」
「いやー、でもさぁ。ほら、あたしと一夏って幼馴染だし、お似合いだと思わない?」
「何を言ってるのですか、鈴さん。一夏さんと並んで一番絵になるのは、生まれも育ちも高貴なこの私、セシリア・オルコットですわ!」
「でもでもー。あたしの方が一夏のこと何でも知ってるし、話も合うのよ? け、結婚の約束までしてるし~」
「重要な過去ではなく、これからですわ。過去の栄華ばかりを誇るなんて、鈴さんは一夏さんに好かれている自信がないのですか?」
「アハハ……」
「ウフフ……」

 これから対戦が始まるってのに睨み合う二人。呆気なく仲間割れしてくれた。

「何だか、あっさり勝てちゃいそうだね」
「うん」

 ちょろすぎて半笑いになってしまう。
 最大の強敵なのに一回戦みたいに楽に勝てそうだ。
 そう思うと緊張が解けてくる。リラックスした状態で試合に望めそうだと思っていたら――

『きゃあああああ!』

 会場が騒々しくなり、悲鳴まで聞こえてきた。
 見上げると、会場にいるラウラさんの『黒い雨』がラウラさんをも取り込んで変態してゆく、異様な光景が広がっていた。

「なに、あれ」
「さ、さあ……」

 呆然としていると、シャッターが下り、避難誘導の指示が飛び交う。
 マジなのか、訓練じゃないのか。
 アリーナにいるおれたちはどうしていいか分からず、ISを展開したまま立ち竦むしかなかったが、黒い人型の巨人になった『黒い雨』がバリアを破って突っ込んできた。
 おれに向かって。

「って、おれぇ!?」
「榛名!」「榛名さん!」「金剛くん!」

 行動が早すぎたことと、気を抜いていたので、剣の横薙をモロに食らい、一瞬でISのシールドが消失した。
 勢いを殺せず、フェンスにぶつかり、衝撃に意識が途切れる。

「榛名に何しやがるテメェ!」

 暗転する意識の中で、一夏の声を聞いた気がした。



 目が覚めると、白い天井があった。

「……」
「あ、榛名……目が醒めたんだね。良かった……」
「……シャルロット?」
「おぉ! 榛名が起きた。……ところで、シャルロットって誰だ?」
「お、起きたばかりで榛名も気が動転してるんだよ! もう、僕はシャルルだよ。
 同居人の名前を間違えないでよね、榛名ったら」
「あ……ごめん」
「ううん、いいんだ。榛名が元気なら、僕はそれだけで……」

 目の端に涙が滲んでいた。泣いてたのかな。悪いことをした。
 意識がはっきりするにつれて、事態が飲み込めてきた。
 確か、黒いのに攻撃されて気を失ったんだっけ。
 ……油断していたとはいえ、弱すぎじゃないかな、おれ。

「……そうだ、あれはどうなったんだ?」
「ボーデヴィッヒさんなら、一夏が助けてくれたよ。あの暴走ISを一人で倒してね」
「……そうか。一夏は凄いな。おれは一撃でやられたっていうのに」
「なに言ってんだ。その俺に勝って、ど素人の俺の特訓に毎日付き合ってくれたヤツは誰だよ。
 感謝してるんだぜ? 榛名がいなかったら、俺はまだズブの素人だったろうしな」
「おれがいなくても、あの三人に扱かれて強くなってたんじゃないか?」
「……それは辛そうだから嫌だな」

 軽口を叩いて、笑い合う。どこか抜けてるけど、肝心な時は誰よりも頼りになる。
 その場面を見られなかったのは残念だが。

「ありがとな、一夏。おれがやられたあと、真っ先に駆けつけてくれたろ?」
「げ、聞こえてたのか!?」
「ああ、ちょっとだけ。おれにも心配してくれる友達がいるんだな、って、少し嬉しかった」
「……ばかやろう。困った時はお互い様だろ? それに、俺の方が榛名にはお世話になってるんだ。
 まだまだ迷惑かけてくれても全然釣り合わないっての」
「む、僕だって心配したのに……」

 むくれるシャルル。彼女にも礼を言わないとな。

「シャルルにも感謝してるよ。シャルルがいなかったら、おれは一回戦負けだった。
 シャルルと組めて、本当によかった」
「え、えへへ……そうかな、えへへへへ」
「賢いっていうか、ずる賢いよな。シャルルって」
「一夏! 余韻を壊さないで!」
「なんでだよ!」

 ……賑やかだなぁ。
 IS学園のノリは苦手だったが、最近はこれがないとものさみしい自分もいる。
 おれには勿体無い友達もできた。……おれも、ここにいてもいいのかな。

「なーに悟りを開いたみたいな顔してんだよ、この!」
「痛ッ! 首を絞めるな、こ……。……!」
「一夏! 完全にキマってるって! 榛名の顔がトマトみたいだよ!」

 父さん、母さん……やっぱり、生きるのって辛いです。



 トーナメントの事件から数日が経ち、事件のほとぼりもお祭り騒ぎの余韻も冷めてきた。
 振替休日も終わり、久々の登校となったわけだが、どうも今朝はシャルロットの様子がおかしかった。
 含み笑いを浮かべては、思わせぶりにおれを一瞥して、明らかに何か隠しているように見えた。
 訊いてみると、拳を握りしめて、

『見ててね榛名。僕がホモ疑惑を払拭してみせるから!』

 と、豪語していた。もう一夏が特定の彼女とくっ付く以外には、どうやっても不可能だと思っていたのだが、シャルロットに考えがあるようなので任せてみることにした。
 しかし、朝食を摂ってからシャルロットの姿が見えない。いったい何をしているんだ?

「おーす、榛名。あれ、シャルルはどうしたんだ?」
「さあ……」

 教室を見渡し、金髪の男装少女を探しても見つからない。
 篠ノ之さんとセシリアさんを見ると、優勝商品の一夏との交際券が有耶無耶になったことにショックを受けているようで、机に沈んでいた。
 そういうのは自力で叶えようね。可能性は低いけど。
 ……あれ、ラウラさんもいないな。事件の影響が残っているのか? 無傷だったって話だけど。

「え、えーと……今日は、転校生を紹介します。いえ、紹介はもう済んでいるんですけど、いちおう紹介はしないといけないと言うか……」

 窶れた山田先生が支離滅裂な第一声で挨拶した。
 また転校生が来るのか。一組にだけ来すぎじゃないかな。

「あーと、ええと……じゃあ入って来てください!」

 扉が開くと、現れたのはシャルルだった。何で転校生で紹介されているんだ?
 眉を顰めながら、見慣れた顔から視線を下に移すと、そこにはブカブカな男子制服ではなく、優美な脚線をさらけ出すスカートが……スカート?

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」
「デュノアくんは、デュノアさん、でした。あはは、はは……」
『ええーっ!?』

 湧き立つ教室。おれも訳がわからない。
 デュノア社は? 候補生は? 何でおれに相談もなしに?
 混乱したおれは、つい一夏の方を見てしまった。唖然とし、なぜかショックを受けていた。
 脱衣強要したもんな、一夏。そりゃショックだろう。
 どよめきの中に疑問の声が聞こえてくる。

「金剛くんとデュノアくんって同室だったよね? じゃあ知らない訳ないよね」
「でも、デュノアくんって明らかに金剛くんのこと……」
「織斑くんと取り合いしてたってことは……」
「あれ……もしかして……」

 徐々に、疑問が確信を帯びてゆく。シャルロットに目を遣ると、満足げに微笑した。
 ――狙い通り! これでホモ疑惑はなくなるよ!
 ……何て考えてる顔だな、あれは。これでいいのか。……いや、ダメだろ。おれの立場的にも。
 おれが焦り始めたのを見て、シャルロットは深く息を吸い、

「みんな、聞いて! 僕と榛名は――」
「――その前に、私の紹介をさせてもらおう」
「……ラウラさん?」

 シャルロットの声を遮って現れたのはラウラさんだった。
 けたたましい音をたてて扉を開いたラウラさんは、大股で教室に入ってくると、一夏とおれの手を引き、両脇に侍らせた。
 は? なに? 何でおれ?

「皆に紹介しよう。私の嫁と――」

 一夏の手を持ち上げ、

「――母だ!」

 おれの手を持ち上げた。
 ……何が何だかわからない。

「え? どういうこと?」
「織斑くんが嫁で、金剛くんが母?」
「二人とも女の子だったの!?」

 再びざわめく教室。ラウラさんは混乱を沈める大きな声で、

「日本では気に入った相手を嫁にすると聞いた! だからコイツを私の嫁にすると決めた!
 文句があるヤツはかかってこい! 叩きのめしてやる!」
「文句があるに決まってますわーーーッ!!」
「何だその暴論は!? ふざけるな!」
「誰が一夏を嫁にしていいって言ったコラーーーッ!」

 殺気立つ女性陣。
 どっから湧いてきたの鈴音さん。

「ちょ、何なのボーデヴィッヒさん! 一夏はどうでもいいけど、榛名はなに!?」

 邪魔をされたシャルロットまで食ってかかる。ラウラさんはさも当然のように、

「日本では自分の心配をし、支えになってくれる相手を広義的に母と呼ぶと聞いた。
 金剛の、自棄になった私を気遣い、叱ってくれる姿に……教官にはない優しさを感じたのだ。
 その時、私は思った……『金剛榛名は私の母となってくれるかもしれない人だ』とな!」

 ……訳がわからない。

「そんなのおかしいよ! 榛名は男だよ!?」
「一夏さんだって男性ですわ!」
「そんなものは知らん! 私が決めたのだ、異論は認めん!」

 思考停止するおれと一夏の手を取り、言った。

「金剛、私を導いてくれ……そして織斑一夏を娶り、毎日みそしるを飲むんだ。
 さあ、教えてくれ、金剛。結納はどうすればいい?」
「させるかーッ!」
「何を勝手に話を進めている!」
「誰が結婚を許しましたの!? 決闘ですわ!」
「上等だ、格の違いを見せてやろう」
「先生―、金剛くんが倒れました」
「織斑くんが白目向いてる!」
「あああ、私に聞かないでください。ど、どうすれば……お、織斑先生、早く来てくださいぃ~」
「どうしてこうなっちゃったの……」

 父さん、母さん。天下のIS学園は今日も平常運転です。
 今日は教室で女性陣がISを展開して、騒ぎを聞きつけた織斑先生に鎮圧されるまで殺し合いしてました。
 繰り返しますが、今日もIS学園は平和です。


あとがき
要点まとめ
・(ノンケとホモに)媚びを売る
・主人公、母になる
・シャル「俺の計画は、絶対に狂わないっ!!!」



          ハヽ/::::ヽ.ヘ===ァ
           {::{/≧===≦V:/
          >:´:::::::::::::::::::::::::`ヽ、   モッピー知ってるよ
       γ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
     _//::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
.    | ll ! :::::::l::::::/|ハ::::::::∧::::i :::::::i      そろそろ終わった方が良いって
     、ヾ|:::::::::|:::/`ト-:::::/ _,X:j:::/:::l
      ヾ:::::::::|≧z !V z≦ /::::/
       ∧::::ト “        “ ノ:::/!
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         | ``ー――‐''|  ヽ、.|
         ゝ ノ     ヽ  ノ |
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