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No.36360の一覧
[0] 【チラ裏より】えろくてんかとういつっ!! (ミスマルカ×マスラヲ&レイセン)[隣](2013/03/12 18:28)
[1]        1-2[隣](2013/02/22 21:14)
[2]        1-3[隣](2013/02/22 21:14)
[3]  第二章 偽りの勇者[隣](2013/03/08 16:20)
[4]        2-2[隣](2013/03/09 01:05)
[5]        2-3[隣](2013/03/03 03:35)
[6]  第三章 両雄、立つ[隣](2013/03/08 20:54)
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[36360]        1-2
Name: 隣◆d5e42c83 ID:a025b578 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/02/22 21:14
               ②



 執務室にヒデオとフォルゴーレが入ってくる。
 手早く着替えを済ませたシャーリー改めシャルロッテは、いつになく気分が高揚するのを感じながら、じっとそれを見守っていた。
 傍らのユリカが僅かな警戒を含ませた声で囁く。

「姉上。あれは誰」
「きっとすぐにわかりますよ。中々……いえ、とても面白い人です」

 ふふっ、とつい笑みを漏らしつつ、シャルロッテはユリカの質問に答えた。
 ただの視察のつもりが、思わぬ拾い物をした。この男……いったい何者なのだろうか。
 シャルロッテは素早く思考を巡らせる。
 まず一つ。自分の正体を見破ったことについて。
 いかに慣れているとはいえ、顔を晒して街を歩くからには今日のように怪しまれることも少なくない。相手がよく会う人物なら尚更のこと。
 だが初対面、それも出会って数十分で正体を見破られたのは今回が初めてだ。
 確かに怪しまれる要素もあったし、相手が見知らぬ顔ということで自分にも油断があった。本当にただの記者なのか、と疑念を抱かれるのは仕方ない。
 しかし。
 この者の目は疑念などという段階を通り越して、間違いなく確信を抱いていた。
 というか、そうでなければおかしいのだ。あの生きたコンピューターは売るところに売れば一生遊んで暮らせるような代物である。
 ただの一般人相手に、盗まれるリスクを負ってまで見せつける理由など何一つとしてない。今思えば、あれは自分に対する牽制だった……ということなのだろう。
 それに加えてあの不思議な少女。当然あれもただ者ではあるまい。
 久しぶりに楽しく話ができそうな予感に、胸を高鳴らせながらシャルロッテが言う。

「まずは自己紹介を。グランマーセナル帝国第一皇女、シャルロッテ・アルセイン・マジスティアと申します」

 視線を向けると、妹もそれに続く。

「……ユリカ・美ヶ島・マジスティア」
「川村ヒデオと、言います」

 ヒデオは平然と一言。
 なるほど。帝国の最重要人物二人を前に、眉一つ動かさない……と。ますます面白い。

「ヒデオさん。お互い隠し事はしない、ということでしたね」
「それは、まあ。嘘をついても仕方ないので」
「結構。では単刀直入に聞きましょう。何者ですか」

 もちろん正直な答えなど期待していない。さあ、彼はどう出るか。
 そしてシャルロッテの質問に、ヒデオが口を開こうとしたその時。
 突如、目の前にあの少女が虚空から現れた。
 またしても唐突な出現。直前まで気配すら感じられなかった少女の登場に、ユリカとフォルゴーレが即座に反応して身構える。
 シャルロッテはそんな彼女らを手で制し、少女の言葉を待つ。

「ヒデオの正体? 変なことを聞くのね。お姉様が自分で言ってたじゃない」
「私が……というと?」

 少女は宙に浮いたままヒデオの背後に移動。首と口のあたりに手を回して抱きつくような体勢で、言った。

「だからぁ、聖魔王よ。このヒデオが二代目聖魔王本人なの。ねぇ、閣下?」

 ぽかん、と。
 そんな擬音が聞こえてきそうな雰囲気が部屋を満たす。三人が三人とも、呆気に取られたような表情で少女を見つめていた。
 一方、口を塞がれたヒデオはヒデオで声を出そうともがいていたのだが、さておき。

「ちなみに私はヒデオに召喚された守護精霊。闇理ノアレって言うの。ノアレって呼んでね♪」
「……守護精霊。そして聖魔王、ですか」

 思わず声をあげて笑いそうになった。
 聖魔王。よりにもよって聖魔王だ。
 世界を律する権利を持つと言われる存在。生ける聖魔杯とも称される伝説上の人物。
 それがまさかルナスに聖魔杯を取りに行かせたこのタイミングで出てくるとは、何たる皮肉。
 他人のオモチャを奪おうと画策した瞬間に、偽のオモチャを笑顔で渡されたようなものではないか。それも、こちらの動向を完全に把握した上で、だ。

(ルナスの動きが察知されるまでにはもう少し猶予があると考えていたのだけど……ちょっと甘かったわね)

 ではこの男はミスマルカからの刺客と見るべきか? いや、さすがに対応が早すぎる。宣戦布告からまだ二日しか経っていない今の段階では、人を送り込むことまでは不可能であろう。
 ならば共和国の“先読みの魔女”あたりの仕業? だがそれも不可解な話。共和国がこんなことをして何の意味がある。
 だとすると。

(本物の、聖魔王……?)

 …………いやいや、それこそまさかだ。名前が同じヒデオだというだけで聖魔王? 酔っ払いだってもう少しマシなことを言うだろう。
 そもそも、その名前の真偽すら不明なのだ。何しろ噂の出所が、旧文明時代の文献の片隅に書いてあっただとか、遺跡に現れる亡霊が言っていただとか、はっきり言ってどれも信憑性のないものばかり。
 自分がカフェで話題に出したのだって、たまたまそんな話を覚えていたからに過ぎなかった。
 ……まあいい。ひとまず話を進めることとしよう。

「それで。あなた方はどんな理由でこの国に?」

 ノアレが回した手を解き、ヒデオは何かを諦めるように嘆息を一つ。後、言った。

「……信じて貰えないかも、しれませんが。突然、気がついたらこの街に。ノアレの話では、転移魔法か何かかもしれない……と」
「転移魔法?」
「はい。もし、何か心当たりがあれば。教えていただきたいのですが」
「心当たりですか……ユリカ、魔法の専門家としての見解は?」

 ユリカは首を横にふるふると。

「無理。転移魔法はそんなに便利なものじゃない。他人を街単位の距離で移動させるなんて絶対に不可能」

 続けてシャルロッテが言う。

「私としても同じ意見です。どうしたらそんなことになるのか見当もつきません」
「……そう、ですか。ありがとうございました」
「いえ、こちらこそお力になれず。確認ですが、ヒデオさんはこの街に飛ばされた原因を探っていた、ということでよろしいですか?」
「ええ、まあ。そういうことに」

 ヒデオが首肯。対してシャルロッテは小さくかぶりを振った。

「おおよその事情は把握しました。ですが残念ながら、あなたが聖魔王という証拠がありません。ヒデオさんが何者なのか……私はそれがどうしても知りたい」
「……それは、しかし。こちらが証明しなければならない理由もないかと」
「確かに。では理由を作りましょう」

 シャルロッテは微笑を消し、指を鳴らす。

「証明できないのであれば、あなたを密入国の罪で処分させていただきます」

 直後。
 銀髪の侍女がヒデオの首にナイフを添え、闇の法王がロッドの先をノアレに向ける。一瞬の出来事だった。
 ヒデオたちは反応することもできず、ただ立ち尽くすのみ。……失望とまでは言わないが。少々期待外れではある。

「どうでしょうか? あなたが何者なのか、教え……」

 シャルロッテは言いかけて、はたと言葉を止めた。
 呆れたことに。
 事ここに至っても、彼の表情は微塵も揺るがない。揺らぐ気配すらない。
 反応できなかったのではなく、反応する必要がないと言わんばかりに。
 生殺与奪を握っているのはこちらなのにも関わらず、まるで自分が脅されているような感覚にさえ陥ってしまいそうだ。
 この若さでこのような目付き……いったいどんな経験を積んできたというのか。これに比べれば銀髪鬼や独眼龍の方がまだ扱い易い。

「やめておいた方がいいんじゃないかしら。特にユリカお姉様。私に対して闇属性は、ちょっと良くないわ」

 笑みを崩さずノアレが言う。
 彼女も彼女で相当な危うさを秘めていた。守護精霊という肩書き、伊達ではないということか。
 なるほど、この主従。
 期待外れなどとんでもない。当たりも当たり、大当たりだ。
 初対面で自分の正体を見破る慧眼、殺すと脅されても全く動じない胆力、そして帝国姫二人を前にして自ら聖魔王を名乗るという傲慢なまでのその態度。

「結構。大いに結構。ユリカ、フォルゴーレ。冗談はこのくらいにしておきましょう」

 シャルロッテは再び元の微笑みを浮かべて場を収める。ユリカとフォルゴーレは無言で一歩後ろへ。
 同時にノアレの姿が掻き消え、ヒデオは文句の一言も漏らさない。

「ここからが本題です。ヒデオさん、私と簡単なゲームをしませんか?」

 ヒデオが瞬きを一つ。

「……ゲーム、ですか?」
「はい。ルールは一つ。あなたが聖魔王だということを、私に証明してくだされば結構。それが出来ればヒデオさんの勝ちです。仮に出来なくてもペナルティはありません」

 これはそう。ちょっとした戯れだ。買い物帰りに気まぐれで宝くじを買ってみるような、それだけのもの。

「参加してくださるのなら、転移の原因究明について全面的なバックアップを約束しましょう。それなりの地位を与え、寝食も保障します。もちろん、暇な時はこちらの仕事を手伝っていただくことになりますが」

 しかも宝くじとは違い、ノーリスクハイリターン。
 もし彼が聖魔王じゃなくとも、召喚師という貴重な手駒が得られる。

 そして万が一、億が一。

 本当に彼が世界を律する聖魔王だったとしたら。

 そう――――大陸の覇権は我が物に。


「賞品は、この私。シャルロッテ・アルセイン・マジスティアがあなたのものとなりましょう」


 ならば、この身を捧げてなお。余りあるに、違いない。



               ◆



 ……神よ。我が神、闇理ノアレよ。
 何か突然すごいことを言い出したのですがこのプリンセス。

“ええそうね。すごく楽しいわね。うふっふふふっ……!”

 ダメだ。完全に楽しんでらっしゃる。
 というか前もこんなことがあったような。そして死にかけたような記憶が。

“エルシアお姉様の時は当事者だった私に、もう一回同じことを見せてくれるなんて。ヒデオったら優しいんだからぁ”

 別に自分が意図したわけでは……。
 むしろ原因はノアレではないか。せっかく気づかれてなかったのに、聖魔王本人だ何だとバラすから……。

“うふふ。うっふふふふふふ……”

 …………。
 もういい、この小学生には何も期待しない。 
 ……しかしアレか。自分自身を賭けるのが姫の間でブームになっているとでもいうのか。
 しかも今回はこちらにペナルティが全くないのだから逆にタチが悪い。
 いくらNOと言えないヒキコモリでも、負けたら目を抉るぞと脅されればまだ断りようがある。
 だがデメリットがないと言われてしまったらどう断れと。「賞品がちょっと不満ですね」とか言ったらきっと殺される。

“受けちゃえばいいじゃない。帝国の一番姫って言ってたし、将来皇帝になれるかもしれないわよ?”

 なってどうしろと。
 それに何か嫌な予感がするのだ。上手く言葉にできないのだが、シャルロッテを見ているとなぜか昼間の腹痛を思い出すというか……。
 脂汗をダラダラ流しつつ、ヒデオがどう断ろうかと思い悩んでいると。
 何やら会話が聞こえてきた。

「姉上……!? いきなり何を言って」
「控えていなさいユリカ。あなたが口を挟むことではありません」
「でもっ」

 どうやらあちら側も一枚岩ではないようだ。それはまあ、いきなりあんなことを言えば普通は揉めもする。
 ユリカの追求を振り切り、シャルロッテが言った。

「どうですか、ヒデオさん? 受けていただけるでしょうか」
「いや、その……」
「不服ですか。ならば賞品にユリカとフォルゴーレも付けましょう」
「あ、姉上っ!?」

 ユリカの叫びをシャルロッテは完全に無視。フォルゴーレは微笑みながら事態を見守っている。

「……そうでは、なく。人数などの問題では……」
「では脱がせたタイツやニーソックスを自由にする権利も与えます」
「乗った」

 ……。
 …………。
 ……………………あっ。
 あああぁああぁぁ…………。

「…………」
「…………」
“…………”

 冷めた視線がヒデオに突き刺さる。

“…………嫌な予感が何ですって?”

 いや。いやいやいや。
 あそこまで言われたら仕方ないではないか。むしろ断る方が失礼ではなかろうか。
 何しろ相手はお姫様。機嫌を損ねたら何をされるかわからないじゃないか。

“………………あ、そ。まあ私は楽しいからいいんだけど。頑張ってくださいね、閣下”

 いよいよノアレにも見放され。
 立ち尽くすヒデオに、シャルロッテがこくりと頷いて言った。

「では今日はもう遅いですし、このあたりにしておきましょう。お部屋を用意しますので、そちらでお休み下さい。フォルゴーレ」

 合図を受けたメイドがすぐさま動き出す。一切の動揺も狼狽も見られなかった。
 なんだかんだで彼女が一番すごいような気がする。

「お部屋までご案内致します。こちらへ」

 扉を開け、ヒデオと案内役のフォルゴーレが執務室を出ていく。
 部屋に残るは姉妹二人。
 ぱたんと扉が閉まると同時、ユリカが言った。

「あ、姉上っ、いったい何を考えて……! 姉上だけならともかく、なぜ私やフォルゴーレまで賞品にっ」
「……わかってないわね」

 え? と首を傾げたユリカに、シャルロッテが言う。

「召喚師よ召喚師。あんな面白いもの放り出してどーすんのよ。それに、あんなの所詮口約束じゃない。用が済んだら『約束? 何のことでしたかしらウフフフフ』とか言っときゃいいのよ」

 うわぁ……と声には出さないが、そのような顔でユリカが一歩引いた。

「それとあんた一番大事なことを忘れてない?」
「……大事なこと?」
「仮にあの男が私たちを娶ると言ったとして。お父様が許すと思う?」
「…………あぁ」

 それは、何というか。この上なく説得力のある言葉に、さすがのユリカもヒデオへの同情を隠せなかった。




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