「っりゃあ!!」
今日も今日とて、悠二らの朝の鍛練が繰り広げられている。しかし、六月の雨に邪魔されて休みが続いたので二日ぶりの、ではある。
本日の組み合わせは悠二とメリヒム、シャナとヘカテー、監督はヴィルヘルミナ。見学に平井が居るのはいつもの事として……今日はそれに加えてラミーまで居る。
「ふん」
横合いから振り抜かれる打撃を手にした竹刀で受け、衝撃を流すメリヒム。返しの一閃よりも速く小さい刺突が、悠二の額を浅く切る。
メリヒムは本来、直撃させるつもりだった。
「(二人掛かりとはいえ、あの『弔詞の詠み手』を倒した、か……)」
その鋭敏な感知能力を相対する中で確かに認め、その要を見抜いた老紳士に一瞬だけ視線を向ける。
「(確か唇、だったな)」
よそ見……そのあからさま過ぎる隙に悠二は食い付いた。力み過ぎた大振りの手首を打ち据え、間髪入れず前蹴りを顔面にお見舞いする。
「へぶっ!?」
間抜けな呻き声を上げてカエルの様に倒れる坂井悠二。あまり格好の良い姿とは言えないが、メリヒムは特に失望は覚えない。
「ペッ、ペッ! うわ、唾に血まざってる」
その評価を裏付けるかのように、悠二はあっさりと立ち上がった。隙に見合うだけの力で蹴り倒してやったのに、大したダメージは見られない。
怪力に裏打ちされる存在の統御力は、その打たれ強さにも遺憾なく発揮されていた。人間と違って『腕に筋肉が付いている』という物ではないのだから、これは当然の結果と言える。
まあ、これは以前から解っていた事。メリヒムが見たいのはこの後だ。
「時間はまだある。続けるぞ」
片手で突き出すように竹刀を構えて銀髪の剣士は少年を促す。悔しそうに睨み返す悠二の唇は、赤く、或いは青く腫れ上がっていた。
「行くぞ」
言葉少なに、メリヒムは踏み込む。
数日前の夜の鍛練で、彼はラミーのとある推察を耳にしていた。
『唇?』
『ああ、唇だ』
それは坂井悠二の持つ、徒やフレイムヘイズをも凌ぐ鋭敏な感知能力に関する事。
『君はそこを基点に周囲の力の流れを感覚として掴んでいる』
他の誰でもない、世界最高の自在師の言葉であるからこそ、その信憑性は高い。
『だが、それはとても脆く繊細なものだ。些細な傷で機能を失ってしまうほどにな。あの時もそうだったろう』
あくまで悠二に向けられた忠告を、メリヒムは同じ場で聞いていたに過ぎない。だが、興味は引かれた。
あの言葉が事実だと仮定すれば、今の悠二に異常なまでの感知能力は無い。
「手加減なしだ」
「んがぁあああーーー!!!」
爽やかな朝に不似合いな少年の断末魔が、天才自在師の言葉が真実だと告げた。
その、一方―――
「「………………」」
シャナとヘカテーは、無言で、無表情で、淡々と打ち合いを続けていた。
両者の技量が拮抗しているからこその竹刀の応酬は、悠二らと比較にならないほど激しい。それに反比例するように、二人の表情は異様に冷たい。
(パパパパパパパパパ!!!)
機関銃染みた竹刀の衝突音が止まらない。『パン!』という普通の音が響かない。剣圧が渦を巻き、足下の地面が掘り返すように抉り出した所で………
「そこまで」
二条のリボンが鋭く伸びた。次の瞬間、シャナとヘカテーは投げ飛ばされて地面に叩きつけられる。
「お見事ー!」
その圧倒的な絶技を間近で拝んだ平井の軽快な拍手が響く。彼女には二人の動きが見えてすらいなかった。
「これ以上は鍛練の域を越えてしまう。互いの微妙な立場も踏まえ、不用意に刺激を作るのは避けるべきでありましょう」
「軽挙自重」
今回ヴィルヘルミナが『監督』についている理由はこれが全てと言って良い。他の組み合わせなら大した問題は無いのだが、この二人だと少々熱が入り過ぎる。
「解った」
正確には、二人と言うのは誤りかも知れない。ヴィルヘルミナの苦言に特に文句も言わず砂埃を払うシャナの方には、大きな拘りを感じない。彼女が対抗意識を燃やす相手は飽く迄も坂井悠二であり、ヘカテーにはそれほど興味が無いのだ。
「本気でやらなければ、鍛練する意味などありません。中途半端な気構えなら、最初からしない方がマシです」
熱が入るのはヘカテーの方だ。彼女は『炎髪灼眼の討ち手』と面識など無い筈なのだが、どういうわけか初対面からずっとシャナを敵視している。
『炎髪灼眼』は徒にとって死神に等しい存在だから解らなくもないのだが、それにしてもヴィルヘルミナとの態度が違い過ぎた。『戦技無双の舞踏姫』も、決して『炎髪灼眼』に引けを取らない“悪名”だと思うのだが。
「って言うか、そもそもヘカテーは鍛える必要ないんじゃ。天使なんでしょ?」
「……私は巫女、戦闘は本来の領分ではありません。同じ『三柱臣(トリニティ)』でも、『将軍』には遠く及ばない」
根本的な平井のツッコミにも、ヘカテーは淀みなく返す。理論武装はバッチリ、鍛練を口実にシャナを襲撃する気十分である。
悠二とシャナは最低限の信頼関係は築けた気がしなくもないが、ヘカテーはサッパリ。むしろ悪化した気さえする。
「(やれやれ)」
声には出さず、これ見よがしに肩を竦める平井。どうせなら仲良くして貰いたいと常々思っているのだが、とことん相性が悪い。
おまけに、悠二の存在がある。
「(そういうトコも可愛いんだけどね)」
二人とも、それぞれの理由で悠二に関心があり、ヘカテーに到っては、どこまで自覚があるのか解らないが、独占欲にも似た態度を見せる事がままある。それもまた、二人に小さな諍いを招く火種になっていた。
「さってと、そろそろお開きにしよっか。千草さんが朝ご飯作って待ってるし」
おしりの砂を払いながら平井が立ち上がる。それに倣うようにヘカテーが寄って来て、悠二が首を鳴らし、そして……シャナも続く。
「……今日も来るつもりですか」
「千草は来て良いって言った。居候のお前にとやかく言われる事じゃない」
そう、以前は鍛練が済めば自宅に直行していたシャナだが、最近はそのまま坂井家の朝食に参加する事も多い。悠二の影響でもヘカテーの影響でもなく、悠二の母・千草の影響によって。
流石に人数が増えすぎる為か、入れ替わるようにヴィルヘルミナの来訪が無くなったが、悠二らが学校に行っている間に頻繁にやって来ているようだ。
「そう言えば、師匠は何で今日きてたんだ?」
「誰が師匠だ」
「いや、何となく」
そこでふと、メリヒムにやられた傷に絆創膏を貼っていた悠二が、特に何をするでもなく佇んでいたラミーに訊ねた。
彼……いや、彼女が悠二を指南するのは夜の鍛練の方であり、朝の鍛練は約束の範疇にない。現に今朝も、ラミーは手出しも口出しもしなかった。
「なに、今日は単に別れの挨拶に来ただけだ。この席ならば、顔見知りには残らず会えるからな」
そのラミーの、あまりに軽く言った一言に、僅かな沈黙が下りて………
「……別れ?」
やがて、否定して欲しいような未練がましい声が、悠二の口から零れ出た。
「『弔詞の詠み手』の傷も完全に癒えてしまったようだからな。君から貰う力惜しさについ長居してしまったが、そろそろ潮時だ」
「………………」
ラミーは元々、フレイムヘイズに目を付けられない為に“屍拾い”と名乗ってトーチのみを摘んで来た徒だ。
いくら悠二から受け取る存在の力が魅力的であっても、無害であるというポーズが通用しないマージョリーが居る御崎市にいつまでも留まるわけがない。
彼女が数百年も続けて来たスタイルを考えれば、至極当然の選択だった。
解っていても、名残惜しい。
「……そっか。淋しくなるけど、仕方ないね」
或いは この場に居る旧知ら以上の惜別を持って、悠二はラミーに右手を差し出す。
自在法の師という以上に、このラミーという徒自身に尊敬の念を抱くようになっていた彼にとって、この別れは響く。
ラミーもまた、それらむず痒くなる感情を感じ取った上で、少年の手を握る。
「来るべき時が来れば、また会える。君という存在が進む道と、私という存在の進む道が交われば、必ずな」
握られた手が離れ、穏やかな瞳が一同に流れる。
“頂の座”ヘカテー。
人間の少女・平井ゆかり。
『炎髪灼眼の討ち手』シャナ。
『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメル。
“虹の翼”メリヒム。
そして正面……未だ己に刻まれた運命を知らぬ少年・坂井悠二。
「因果の交叉路で、また逢おう」
背を向けて、一歩を踏み出す。それと同時に純白の羽根が舞ったかと思えば、老紳士の姿は既に無い。
「因果の、交叉路で……」
外れた者が好んで使う別れの言葉。そうと知らずに、悠二は反芻する。
「また、逢おう」
握り合った手で拳を作り、澄み切った青空を見上げた。
未来に続く因果が、どこかでまた交わされる事を願って。
「(失われたモノの復元、か……)」
坂井家に寄って行くというシャナと別れたメリヒムは、一人自宅に足を運ぶ。
ヴィルヘルミナは一緒ではない。かつて『天道宮』で共に過ごしていたにも関わらず、ヴィルヘルミナは未だ平井のマンションに住んでいる。お互い、色々と思う所があるのだ(シャナは大いに不満そうである)。
「(かつて主を拒んだ娘が似たような願いを抱くとは、何とも皮肉なものだ)」
歩きながら、メリヒムは先ほど去った自在師に思いを巡らせる。
実のところ、メリヒムはアラストールやヴィルヘルミナ同様ラミー……いや、“螺旋の風琴”リャナンシーと面識があった。
もっとも、アラストールらの様に友と呼べるような間柄ではない。数百年前の大戦、彼ら『とむらいの鐘(トーテン・グロッケ)』の果たそうとしていた『壮挙』の為に宝具『小夜啼鳥(ナハティガル)』として利用しようとした……という、どちらかと言えば陰性の関係だった。
……まあ、今さら“敗北”を誰かのせいにするつもりも無い。『小夜啼鳥』は元々味方だったわけではないし、裏切られたとも思わない。誰が悪いかと問われれば、“彼女”に敗けた自分が悪いのだ。
「(しかし、この短い間にこれだけの名前が揃うとは。まるでかつてのオストローデだ)」
得体の知れない因果の流れ、迫り来る戦いの予感に背筋が粟立つ。永らく眠っていた炎が身を焦がしていくのが解る。
「(世を騒がすのはダメだが、元から騒ぎになっていた場合はどうなる?)」
この場合『約束』はどうなるのかと考えている内に、メリヒムは自宅に到着する。
ポケットから鍵を取り出しつつ、郵便受けを何気なく漁ると………
「!!!」
一通の、封筒の感触。
目にも止まらぬスピードで封を解き、中身に目を通して………
「…………………………………………………くっ」
両翼の右は、力なく崩れ落ちた。白い紙がヒラヒラと宙を舞う。
内容はパン製造技能士資格試験の結果通知、その一番目立つ上の方に、『不合格』という文字が無情に佇んでいる。
夢に到る道は、誰にとっても険しく遠い。
「…………………」
「…………………」
あれから一週間、七月に突入した日曜日。豪邸と呼んでも差し支えない佐藤家、佐藤啓作の自室で、二人の少年が沈黙していた。
「……見たよな?」
“あれ”とは即ち先週の日曜日、ファンシーパークで遊んだ帰り、不良に囲まれた彼らが、あまりにもカッコいい一人の女性に助けられた事だ。
その女傑、マージョリー・ドーは今でも佐藤家の室内バーに居座っている。佐藤はもっとまともな部屋があると言ったのだが、彼女は動かない。食う、飲む、寝る、全てあの部屋で済ませていた。
そして気のせいでなければ、“一度もトイレに行っていない”。極め付けが、あれだ。
「……ああ、“生えてた”な」
マージョリーの左腕だ。初めて会った時には確かに中途から切断されていた。
佐藤の家に転がり込んでからはずっとゆったりとした浴衣を着ていたから、ハウスキーパーの人達は気付かなかったかも知れないが、今日、二人は、確かに見た。
無い筈のマージョリーの腕が、何事も無かったように在るべき場所に在る姿を。
「やっぱ……マジなんだよな」
「……もう信じるしかねーだろ」
既にマージョリーの持つ大きな本、“蹂躙の爪牙”マルコシアスから色々と説明は受けていた。本が喋る時点でもう可笑しかったのだが、ここに来て漸く実感として伝わってきた。
「フレイムヘイズに、紅世の徒に、トーチだっけ」
「姐さんは、そんな世界で戦ってる人……なんだよな」
人喰いの化け物と、それを倒す正義の味方。とても危険で、とても残酷な世界だという事は、何も知らない二人でも簡単に想像できる。
だがそれは同時に……マージョリー・ドーという女性が、そんな世界を力強く生き抜いているという事実をも証明していた。
「「………………」」
実感の湧かない脅威は、より以上の実感に塗り潰される。
まだ形を持たない、曖昧なままで、膨らんでいく。
―――漠然とした願いが、二人の中で生まれつつあった。
一方で、彼らに無謀な熱意を向けられているマージョリーの方はと言えば………
「う゛~~………ぎぼちわるい~……」
正反対に冷め切っていた。より正確には、ひたすら無気力に、酒に溺れてばかりいた。
「ヒャーハッハッ! 良い薬……いや毒か。せっかくだから暫くそうしてろ、我が酔いどれの天使マージョリー・ドー」
「バ~カ~マ~ル~コ~……!!」
この体たらくに、契約者たるマルコシアスは何も言わない。……もちろん、何も思っていないわけではない。
「(……実際、どうしちまったんだかな)」
何百年も戦い続けるフレイムヘイズだ。こんな事は今まで何度もあった。ましてあれほどの……自分を全否定されたような完全敗北。少しばかりクサったとしても不思議には思わない。
が、そんなものを遥かに上回る原動力もある筈だった。
彼女の仇敵・“銀”に繋がる、やっと見つけた初めての手掛かり。
むしろ敗北直後は、回復も待たずに動き出す事を心配していたくらいだ。
「……………ちっ」
マルコシアスの抱く疑念は、実のところ、マージョリー自身がより強く抱いていた。何をこんなに無気力になっているのか、自分でも良く解らない。ただ……何故だか動く事を躊躇っている。
「……ねぇ、マルコシアス。私、どんな風に敗けたの?」
「ミステスの坊主の反撃でキレて、暴走したトコで灼眼の嬢ちゃんにトドメ刺されたんだよ。まぁあんな戦り方じゃ勝てる勝負も取りこぼぶべ!?」
返答に余計な一言を付け加えるマルコシアスを、面倒くさそうにバシンと叩いて黙らせる。
戦闘の最中、記憶が飛んでからの事に原因があるのかと思ったが、返って来たのは消し去りたい汚点だけ。全くもって面白くない。
「…………………」
ワイシャツの胸に、そっと触れる。まるで、自分自身に問い掛けるように。
まさか……という思いは、ある。だが、それをマージョリーは即座に切り捨てる。
それは、今までの自分の全てを否定しかねない感情だったから。
「ったく、何なのよ本当………」
遠く、近く、銀の炎が目蓋の裏で燃え続けている。
「勉強会?」
梅雨を越えて七月、昼食を終えた『いつもの面子』が七夕に飾る短冊を書いている時に、そのイベントは降って湧いた。
「そう! 今日から部活休みなんだけど、実は私 結構ヤバいんだ~。池君たちに教わったら、少しは何とかなるかなって」
池を目前に、且つ皆を前方に納める位置で両手を合わせ頭を下げるのは、緒方真竹。バレー部期待の新人と聞くが、どうも学業には自信が無いらしい。
まぁしかし……横目でチラチラと田中の方を見ている辺りに、勉強以外の思惑が垣間見える。
そんな思惑に全く気付かず………
「えぇ~、いくら何でも早いだろ。テスト期間中は午前中なんだし、初日の前くらいに気合い入れれば痛っ!?」
露骨に嫌そうな唸り声を上げる朴念仁が一人。緒方の顔が暗く沈む寸前、机の下で池の爪先が田中の脛を蹴る。
「そうやって先伸ばしにするような奴は、結局テスト前になってもしないんだよ。心当たり、あるだろ?」
「そ、そうよ! あんた達だってせっかくの夏休みを追試とか補習で潰されたくないでしょ!?」
「達って何だ!? 俺まだ何も言ってないのに!」
メガネマンの淀みない正論に自信を得てか、勢い込んで机に乗り出す緒方。隣に居た同類(佐藤)が理不尽に巻き込まれる。
そんな、微妙に空回りつつも頑張る『女の子』の姿を自分と重ねて、吉田は一人真っ赤になった。
「(で、でもこれって………)」
緒方もまた、田中個人を誘う勇気は無かったらしい。この勉強会に誘われたのは、ここにいるメンバー全員。つまり……吉田にも同様のチャンスがある。
「さ、坂井君はどうですか? 勉強の方は……」
他人の企画に便乗する形になってしまうが、それでも吉田は坂井悠二との関わりを欲していた。
「うん、僕達もちょっと前から始めてるよ」
「(………“達”?)」
軽く返された一言に、吉田の時が停止する。
「ヘカテーが“ああ”だし、平井さんもあれでやる事はちゃんとやるタイプだからね。僕一人だとつい怠けちゃうけど……って、吉田さん?」
「いえ……ホント、大丈夫です。……薄々わかってましたから、ホント……」
次いで、机に額を打ち付けて影を背負う。哀愁漂う姿に、池ですら掛ける言葉が見つからない。
とりあえず、今は目先のイベントを調整すべく眼鏡を光らせる。
「じゃあ、坂井は賛成って事で良いんだな? 平井さんとヘカテーちゃんは?」
「訊くまでも無いでしょ」
問われて、ピッと人差し指で隣を指す平井。その先には、既に学者スタイルで胸を張るヘカテーが居た。
その可愛らしい姿に満足しつつ、平井は立ち上がって得意気に指を立てる。
「で、場所なんだけど、あたしに良いアイディアがあるのだよ」
「……あれ、もう決定で良いの?」
発案した緒方の方が戸惑う。いつの間にやら勉強会は決定事項になっていた。
皆の視線が自分に集まるのを待ってから、平井は高々と差し上げた人差し指を彼女に向ける。
「ズバリ、シャナん家!」
空気が凍り付いた……気がした。
「……私の、家?」
参加する、とさえ言っていない筈の少女は、目を丸くして呟いた。