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No.34137の一覧
[0] キタローの幸せリア充ライフ用のぺルソナ4 【P4×P3主人公】[シンメトリー](2012/07/14 18:41)
[1] Sweet Way[シンメトリー](2012/07/14 02:22)
[2] 11:11 Pm[シンメトリー](2012/07/14 02:25)
[3] My Worst Nightmare[シンメトリー](2012/08/02 18:58)
[4] Pac-man Fever[シンメトリー](2012/08/04 12:37)
[5] Vanilla Twilight[シンメトリー](2012/08/10 21:01)
[6] Book Of Secrets[シンメトリー](2012/08/31 22:10)
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[34137] Pac-man Fever
Name: シンメトリー◆a001e8b6 ID:514e8ba9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/04 12:37
登校2日目の学校、その放課後。
そこかしこから山野アナウンサーの名前が耳に届く中、自分と同じく暇らしい隣の席のクラスメイト・里中と手持ち無沙汰にちらほら言葉を交わす。
転校初日から教科書の貸し借りで親交を持ったものの何処か互いが遠慮を抱きがちだったのだが、二日目となったこの日は他に重大な事案があった影響もあり里中のみならず他のクラスメイトとも無難に共有の話題を持つことが出来たのだ。


「やっぱ皆昨日のニュースの話題ばっかりだね。さっき行った隣のクラスも同じような感じだったよ。……ね、有里君も気になる?」

「少しだけ」

「だよね……。でも稲羽じゃこんなおかしな事件ホント珍しいんだ。転校したばっかで不安あるかも知れないけど……何かごめんね」

「里中が謝ることじゃない」

「……アハハっ、そーだね! 何言ってんだろ私。……でも昨日のニュースでインタビュー受けてたの知り合いの先輩だったし、何か人事って訳でもないからさっ」

「────あぁ。昨日のインタビュー受けてたの、小西先輩だったな。今日学校来てないっぽいし」

「花村?」

唐突に左隣から会話に加わってくるのは、朝からずっと調子がおかしかった友達・花村だ。
昨日の様に僕の席の左隣に立つ花村は、集まる視線に気付いたのか慌てて栗色の瞳をそらし、何処か歯切れ悪く話を続ける。


「あ、あのよ有里。昨日…………アレ見たか……?」

「……見たよ。お前は?」

「俺も気まぐれで見たんだけどさ………そ、その、なんつーか……」

「ちょっとー? 何の話? 置いてけぼりなんだけど!」

理不尽な話題変更を受けた里中の疑問符がついた言葉も頭には入らないのか、花村は頭に手をやり言うか言うまいか迷っているかの様な仕草を見せる。
……自分としては“話したい”事柄ではあるが、同じ体験をしたらしい花村が悩む理由もよく解る。ある程度心の準備をしてからでもいいだろう。
花村が悩んでいる間に、困った表情で僕の制服の裾を引っ張り意思表示をする里中へ簡単な説明をする。


「マヨナカテレビ」

「え? マヨナカテレビって……今、噂になってる“運命の相手”……って奴のこと?」

机に置いたペットボトルの飲み物に一口口を付け、こくりと頷き話を続ける。


「……それを昨晩、二人で試したんだ」

「ふ~ん? なんだっ、そんなこと。何か流行ってるもんね。で、誰か見えたり?」

「よ、よせ里中! ナチュラルに本題に切り込むなよ!?」

「はぁ? 何ビビってんのさ花村ー。唯の噂じゃんか。どうせ自分の顔が映ったとかそんなんでしょ!」

「いや、知らない女性が見えた」

「おわぁ、ストレート・イン!? 迷わず言いやがった! 必死に夢だったって誤魔化そうとしてたのにぃ!」


素直にあの日女性が見えたことを伝えると、里中のみならず花村さえも顔を顰めてしまう。
……やはり、花村もまた“運命の女性”とやらが見えたようだ。最も、運命というには余りにも気味の悪い雰囲気だった気もするのだけど。
話したい気持ちと夢だったのだと流してしまおうという気持ちが半々だったらしい花村はややオーバーリアクションで抗議するも諦めがついたように肩を落とす。
里中は好奇心を隠そうともせずこちらに身体を乗り出し問いかけてくる。


「じょ、女性ってまさか……運命の相手が映ったってこと……? ねね、君はどんな娘だった?」

「……ウェーブの長い髪。それと八十神高校の制服。それぐらいしか見えなかった」

「え、ウェーブの長い髪と制服? ……まさか、こんな風な?」

自分の言った女性像に心当たりがあるのか、肩を落としていた花村は疑問符と共に顔を上げ両腕で“こんな風”という大まかなジェスチャーをする。
アバウトすぎる動作だけど否定するほどの違いも感じないので素直に肯定しておく。
すると花村は心底驚いたかのような表情を作り眉間に手をやる。


「マジ……? もしかして見えたの、同じ人か? あ、後は……何か苦しそうにもがいてたっつーか───」

「……」

苦しそうにもがいていた……?
……言われてみれば何かしら動いていたのかも知れない。
確かに人物の影の焦点が定まらないとは思っていたが、ノイズが黒いカーテンの様に映像を覆いそこまで明確には見えなかった。
もしかしたら、自分と花村が見た映像は同じであってもそれの“見える範囲”というものは違っていたのかも知れない。
二人で見た人物に対する様々な考察をしていると、話し合いからはぶられていた里中は前の席の黒髪の女の子と話しており、その後何かを思い出したように再び此方を向き再び話に加わる。


「あ! そう言えばテレビを大きいのに買い換えようかって家族が話してたんだった。“マヨナカテレビ”で思い出したんだけど」

話を遮るその台詞にやや呆然とした後、花村は話題の転換を歓迎するようにテンションを上げ僕の肩を叩く。
……僕としてはもう少し話したかったのだけれど。


「───え、マジ? そうなのか? じゃジュネスでも寄ってく? 確か、今うち家電の特別セール中だったはずだしさ!」

「行く、行く! そういうのって見るだけでも楽しいし!」

「うっし! 決まりだな。……有里、お前ももちろん行くよな! 言っとくけど拒否権無いからな!」

「どうでもいい」

「……フ、フリーダムだなお前!?」

「あははっ! 何となく有里君のキャラ分かってきたかも」

不本意ながらもはやお決まりとなりつつある僕達のやり取りに、里中は愉快気な笑みを漏らす。
彼女の言葉は自分にも使えるものだ。不謹慎だけれど、“不可思議な事件”という共通の話題があったことで、隣の席だということも相余って今日は彼女のキャラを掴むことができたのだから。
昨日少しだけ言葉を交わし思い描いていた通り、彼女は見た目を裏切らず活発で子犬の様に人懐っこく、花が咲く様な笑顔が似合う女性だった。


「───あ、そうだ! せっかくだから雪子もどう? 面白そうじゃん」

「ごめん、千枝……今ちょっと、旅館が忙しくて」

里中の気軽な誘いを、やや深刻な面持ちで断りを入れるのは彼女の友達である・天城雪子だ。
“そっか”と気落ちする里中に天城は再度申し訳なさそうに謝罪をした後、そそくさと教室を後にする。その背で揺れる流麗な黒髪は高級糸の様に美しく、思わずそれに目がゆく。
……“旅館が忙しい”。想像をすることはできるが、その言葉の意味が自分にはうまく伝わらなかった。
それも当然、自分は彼女とは未だ会話らしい会話をしていない。彼女と親しい里中と知り合い、座る席も一つ斜めという状況の中でだ。
名前を交わす簡単な自己紹介は既に互いにし合った。その時の彼女の様子は特におかしな部分なんて無かった。
けれどそれ以来……自分の思いすごしかも知れないが、どうにも“避けられている”気がする。
最も、それがどうしたという話でもあるのだが。


「お? なんだよ有里。もしかして天城に興味アリ? でも止めといた方がいいぜ。お前がどうって訳じゃねーけど……何つっても“天城越え”! 天城の奴、色恋沙汰に興味がねーみたいにそのへん鉄壁なんだよ。俺も前にバッサリ切られちまったし」

……色々と聞いてもいないことさえも軽く曝露する花村を軽く右から左へと流す。
何にせよこの後花村達と共に昨日に続き、稲羽随一のデパート・ジュネスへと向かうこととなったのだった。









────ジュネスの左隅のやや小さなスペースに位置するポーダブルオーディオコーナー。安易に光りに集う誘蛾の様にその場所へと誘われてしまった。
昨晩のニュースを多くの人が目にしたのか、昨日よりかは人影が少ない気がする。或いはジメジメとした天気の悪さ故か。
何にせよその過疎感が自分に緩やかな和みとよく解らない安堵を与えてくれる。比較的賑わうオーディオコーナーで、まさか一人ゆるりと商品を品定めすることが出来るなんて想像もしなかった事だ。


(……安い)

手に取るメモリータイプ容量32GBの“スタイリッシュ”シリーズの価格は、在庫処分セール中という事も相余ってゼロが一つ少ない。
また一つ田舎の事を知る事が出来た。大都市との所得格差故か、地価の違い故か───。
特に野菜や果物については高層ビルに遮られない太陽と広大で豊かな自然に育まれたより美味しい物を安価で手にすることが出来る。
勿論この不景気の荒む時代、どこもそうであるとは思えないが、少なくとも稲羽においては物価の安さというものが様々な物品で目に付く。


「……」

自然と、手にとった商品と睨めっこする形となる。今、首から下げているWALKMANは未だ現役、それなりに愛着もある代物。
新しい代物を買う必要性はない。このコーナーに来たのも気まぐれみたいなものだ。
しかし────。


「お~い! 有里~! どこいるんだ~?」

家電コーナーの標識の先から自分を探す声がする。咄嗟に商品を持って近場のレジへと歩き出す。
……幸い手持ちは足りている。一人暮らしでの節制した生活感が身に染みており、“お小遣い”というものには慣れていない。叔父の申し出は嬉しかったものの断ろうとしたのだが、無理矢理押し切られてしまった。
“自分の欲しい物を、欲しい時に買え”。
幼児でも分かる、そんな当たり前のこと。勿論自分もお金の使い方などよく分かっているが、いざこうして“普通の学生”になってみれば戸惑いを覚えてしまう。
こんな場所で使うぐらいしか、自分にはこのお金の浪費方法が思いつかないんだ。




■ 




家電コーナーの大型テレビが並ぶ大規模なスペース。途中でフラフラとオーディオコーナーへと呼び寄せられてしまったが、距離的には随分と近い場所で、里中と花村はやや困った顔をし自分の姿を探していた。
小走りに合流した僕を見つけた花村はさして焦った様子も見せず、笑顔で声をかける。


「お、有里発見。……全く、迷子にでもなっちまったのかとちょい焦ったぜ」

「何言ってんのさ。都会から来た有里君がデパートで迷う訳ないじゃん」

「まぁな。……お? 有里、もしかして何か買ってくれたのか!?」

手に持つ小さなジュネスの袋を目ばやく視界にいれた花村は、満面の笑みでこちらへと躙り寄る。
その顔に若干引きながらも頷きと共に、左手人差し指で小さく首にかけるWALKMANを指す。
意図を察した花村は破顔し、自分の肩を叩く。


「ッハハハッ! お前らしいぜ。ありがとな!」

……ジュネスの王子様は売上高増加にも熱心なのだ。


「───で、花村。何かこう、すげーでっかくてやっすい奴って無いの?」

「アバウト過ぎだろお前! つかせめてどっちか一方にしろよ! ……はぁ、取りあえずデッカイ奴からでも見てみます?」

3人が集まったことで、里中と専属店員・花村は再び数多く並んでいる大型テレビへと向かっていった。
自分もそれに続こうと、ジュネスのロゴが入ったオレンジの袋の収納のため抱えていたバッグの口を開くが、暗い底に沈む一つの存在に動きが止まってしまう。
そこにあったのは─────射し込む僅かな光で鈍く輝く銀の銃。


(鍵……)

揺らいだ運命を廻す為の“鍵”。
ベルベットルームの“協力者”、才女・マーガレットの迦陵頻伽の声を思い出す。
徐に袋をバッグへと詰め込み、銀銃をバッグの底から手に取り、取り出した。
……幸いこの家電コーナーには人が少ない。店員さえも配備されていない様だ。だからと言って、“直感”のままに公衆の場で銃を取り出すのも理解できない行動だけれど。
最も、昨晩確認したがこの銀銃には不思議なことに弾は装填されていなかった。マーガレットが口にした鍵というのは本当なのだろう。


(叔父に見られたら逮捕だ)

今までに経験したこともない程の研ぎ澄まされた直感と、出処の解らない好奇心に抗えない己自身を思わず心の中で自嘲しながらも視線を再び眼前の大型テレビへと定め近づく。


「……」

────近づく前に、既に行動は決定している。
眼前に広がる画面の黒一色は己の顔を浮き彫りにする。打ち切られた思考を覆うのは、何時もの非情なまでの冷静さ。
バッグを地に置き無言のままで右手を、握り締める銀銃ごとテレビへと接触させると…………。


「ッ……!」

何と手はテレビの画面へと“沈んで”しまった。
……何かしらの“現象”は期待してはいたものの流石に驚きで身体が硬直してしまう。のめり込んだ腕には未だ銃を掴む冷たい感触が残っていた。


「──は? ……って、え? 腕が刺さってる!? まさかフリーダムに破壊活動か…!? ちょっと待て、はやまるな有里―───!!」

「う、うっさいよ花村! いきなり大きなこ……え…………って有里君!?」

遠く……いや、近場から自分を呼び止める声が聞こえる。
条件反射でそれに答えようと腕を引き抜こうとするが、液晶画面の先、誰かに掴まれているかの様に腕はびくともしない。……或いは、固定されているのだろうか。
しかし─────。


「なっ…………!」

その感覚をあざ笑うかの様に突然銃を持った右手は更に奥へと引き込まれ、驚きに硬直していた身体は踏ん張ることも出来ず、“テレビの中”へと僕は飲み込まれてしまったのだった。









────確かな“潜った”感覚の後、次に感じるのは妙な浮遊感。
意味も解らないまま咄嗟に身体を捻り、足腰に力を入れ何とか着地するが、その反動で右手に持っていた銀銃を手放してしまう。
転がる銃を拾い上げた際、地の質感や模様が“知らない”物に変わっていた事に今自分が立っているのは“テレビから落ちた先の場所”なのだと実感する。
徐に銃をブレザーの内ポケットに直し目線を上げると、そこには到底理解の及ばない光景が広がっていた。


「───……」

引きずりこまれた先テレビの内側に有ったのは、自分の腕を引っ張った存在ではなく無制限に沸いている霧に覆われた“スタジオ”……の様な場所。
透過性の薄い霧に覆われてはいるが、見通す視線の先に壁がないことは一目瞭然。此処がとてつもなく広い空間だということが解った。ドクドクと脈打つ鼓動とは裏腹に思考は氷の様に澄み渡る。
恐怖と好奇心、半分半分のブレンド。イヤホンを耳に掛けスイッチを押し込み、片方を焼き付くし歩き出そうとしたのだが…………後方から聞こえた何かが落ちてきた音にそれを阻止されてしまった。
イヤホンを首に下げ直し振り返ると、そこには奇妙な姿勢でお尻をおさえている花村の姿が。
花村はそのまま打ち上げられた魚のごとく暫く悶絶していたが、可哀想なものを見る目になっていた僕の姿を確認するや否や元気に、そして慌てて駆寄って来た。


「おおお、おまおまおま………」

「……落ち着け」

「ぉ、おう……。そうだな……ま、まずはおちちゅいて……って有里ぉ! 大丈夫か!? 怪我とか無いか……!?」

それは完全にこちらの台詞だ。しかしなぜ花村がこの場所にいるのだろう。その事を率直に伝えると考えてもなかった返答が帰って来る。


「い、いやさ……。錯覚かも知れねーけどお前がテレビん中に手突っ込んでたのが見えたから、それを慌てて止めようとして間に合わなくて────」

自分でも訳が解らないといった風にしどろもどろの回答をする花村がそれを言い終わる前に、“頭上”から聞き慣れない甲高い悲痛な叫び声が耳に届く。
慌てて花村の肩を押し、推定される落下地点から押しのけて庇う姿勢をとる。


「きゃあっ───!?」

「……ッ!!」

「さ、里中か?」

……呆ける花村の言う通り、落下地点へと落ちてきたのはもう一人の友達・里中だった。
こんな非現実的な世界だからこそ、ファンタジーな怪物でも襲ってくるのではと身構えていたのが逆に功を奏し花村同様テレビから落ちてきたらしい彼女を何とか腕の中でキャッチをすることに成功。
腕の中で借りてきた猫の様に身を丸め、更に大きな眼を驚きに丸くさせている里中の姿に自然と安堵が溢れてくるものの、背骨か何かが落下の衝撃と共に当たったのか鈍い痛みが上腕に響く。
里中よりもずっと体重が重いであろう花村のお尻を真剣に心配をする。


「っ……重い……」

痛みに思わず漏らしてしまった短い呟きに、邪推した里中は呆けていた顔を瞬時に赤く染め上げ異を唱え始めた。


「ちょ、ちょっと……! 重いってどういうこと!? ───き、筋肉だからしょうがないじゃん!?」

そのまま暫くキャーキャーと弁明らしい言葉を僕へと飛ばしていたが、少し落ち着きを取り戻した後ようやく自分が今誰に抱えられていているのかを知り平静を取り戻した顔をもう一度リンゴにする。
初対面の印象から勝手に、彼女は活発で男勝りな女性だと思っていたのだけれど、リンゴ状態で頑にこちらを見ようとしないその姿を見ていると、気さくで別け隔てない里中も立派な女の子なんだと思い知らされる。
……そろそろニヤニヤしている花村の視線が鬱陶しくなってきたので了承を得ないままに里中を腕の中から降ろす。
その際小さく呟かれた“ありがとう”に同じく小さな頷きを返し、3人で現状の確認を始める。


「……里中も僕を?」

「う、うんっ。急にいなくなっちゃったから、心配で。……安心したよ」

「───んで助けようとテレビの周り調べてたらいつの間にか落っこちちまったんだよな。まさか“中”があるなんて思いもしなかったんだけどさ」

花村は苦笑いを浮かべながらそう言い、周囲に眼を向ける。
“自分を助けにようとして落ちてしまった”と言う二人に、温かい感謝の気持ちと共にどうしようもない罪悪感が沸いてくる。
そもそも自分があそこで踏み止まる事が出来ていたのならばこんな事にはならなかったということなのだから。結果として僕の好奇心が人一倍優しい二人を“騙す”形を作ってしまった。


「ごめん」

「……ん? 何か言ったか、有里?」

「こうなったのは、僕のせいだ」

「有里君……」

軽率な行動を二人に素直に謝罪をする。
テレビの内側───。どんな危険が待っているとも知れぬ濃霧の世界に、二人を誘ってしまった。
花村も里中も、自分達が“有り得ない”現象を体験しているのだということを自覚しており、その顔には焦りと恐怖がありありと透けて見える。
だというのに────。


「全くだぜ。一人で楽しいアドベンチャーなんて許さねーから! ……ッヘヘ、今度からはちゃんと俺も誘えよな」

「てか有里君も自分から来たくて来た訳じゃないじゃん、多分。こう……腕刺さってる時なんか嫌そうな顔してたし!」

「おうよ! お姫様抱っこの時の里中サンはもの凄く嬉しそうだったけどな!」

「なっ、何言ってんのよこのガッカリ王子……!」

「ガッカリはやめろ! 割りとマジで傷付くからやめろ!」

気を使い、無理に明るく振舞っている二人に心を解され、この場において小さな決意をする。


「────僕が、必ず二人を助ける」

「ぉ、おうっ……」「……う、うん」

……だから、安心してくれていい。
強い口調で二人にそう告げる。濃い霧に覆われた上に、更には不安感を煽る程に広々とした空間内でそれを探すのは骨が折れる事かも知れない。
しかし入る扉があるのならば、出る扉もまたあるものだ。自分が、“他人のスペース”へと押し込まれた様に。
勿論僕も少なからず不安はある。けれどそれ以上に、今は二人の友達を守るんだという確固とした意志がその恐怖を覆う様にして自らの身体を奮い立たせていた。




■後書き■
そろそろ展開のペースあげます


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