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No.34137の一覧
[0] キタローの幸せリア充ライフ用のぺルソナ4 【P4×P3主人公】[シンメトリー](2012/07/14 18:41)
[1] Sweet Way[シンメトリー](2012/07/14 02:22)
[2] 11:11 Pm[シンメトリー](2012/07/14 02:25)
[3] My Worst Nightmare[シンメトリー](2012/08/02 18:58)
[4] Pac-man Fever[シンメトリー](2012/08/04 12:37)
[5] Vanilla Twilight[シンメトリー](2012/08/10 21:01)
[6] Book Of Secrets[シンメトリー](2012/08/31 22:10)
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[34137] 11:11 Pm
Name: シンメトリー◆a001e8b6 ID:514e8ba9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/14 02:25
………見慣れない登校風景。田舎らしい平坦な道のりから、これもまた田舎らしい山登りの様な坂道へと歩を進める。
別れ際に菜々子に示された方向は合っているはずだ。
だというのに、まるで異世界のごとく己の日常とは異なる広がる景色に、自然と顔は顰め面になりかける。
自然を強調する鳥の鳴き声さえも自分を小馬鹿にしているように聞こえイヤホンは既に装着済みだ。
───そんな時、ゆっくりと歩く自分を物珍しそうにこちらを見ながら追い抜いてゆく生徒達の中で唯一人、自分に声をかけてくれる存在があった。


「……あれ? それってうちの学校の制服じゃねーよな?」

やや鼻にかかったその声にイヤホンを外し振り向くと、そこには自分が通うべき学校の“正規の”制服に身を包んだ茶髪の青年が自転車を携え立っていた。
スラリとしたスタイルに快活さを助長する外はねの茶色に染め上げた髪と、少し垂れ目の瞳が目をひく整った顔立ち────。
ややポートアイランドの制服をジッと見つめていたが、視線に気づいたらしく同じ様にヘッドホンを外して彼は茶目っ気溢れる笑みを浮かべ、僕に言葉を投げかける。


「あぁ、悪い悪い。ジロジロ眺めちまって。随分とオシャレな制服だと思ってさ。……俺は花村陽介。ここの八十神高校の2年生。お前は?」

「…有里湊。同じ2年生。……よろしく」

「おう、有里か。ヨロシクな! …もしかしてさ、今日うちのクラスに来る転校生ってお前?」

コクリと一つ頷き、学校への歩みを再開する。このまま転校初日から遅刻という訳にもいかない。やけに馴れ馴れしい……もとい気さくな青年・花村は意図を察し広い坂で自分と並ぶ様に歩き出す。
…押している自転車が歪な音色を奏でているのが少し不愉快だ。


「ふーん、やっぱか。まぁ何か解らないこととかあったら言ってくれよ。俺も前にこっちに転校してきたんだぜ。 ───ようこそ、日本が誇る広大な田舎町・八十稲羽へ! ……なんてな。出来ればヤローよりキャワイイ女の子の方がよかったんだけど」

「………」

「うぉぁ!? ちょ、無言で自転車小突くのやめて! こいつのライフはもうゼロなんだよ! つーか冗談だって、冗談! ……まぁ、お前も結構カワイイ顔してるけどな」

「……」

「って、うぉぉ……引っ張られる…!? だ、だから冗談だって! マジで謝ります有里サン…!?」

……表情豊かな男である。だけどこの田舎町で右も左も分からない転校生である自分に少し気を使っている面もあるのだろう。同じ境遇同士、思う所があるのかも知れない。
───少なくとも花村は、“悪い人間”ではないということは容易に解った。
自転車をゴトゴトと揺らしていた手を離し、再び花村へと視線を向ける。


「…辰巳ポートアイランド」

「へ? 辰巳…?」

「港区。…そこから引っ越してきた」

「嘘、マジで! あんな大都会から!? 道理でうちの古くさい学ランと違って今時デザインの制服着てると思ったぜ。…ハハッ、大方地元の制服全部売り切れとかだろ。田舎の魔力だな」

「…入荷も未定。もしかしたらこのままなのかも知れない」

「流石にジュネスにも制服コーナーなんてねーからなぁ。まぁいいじゃん。都会のオサレファッションで登校出来るんだしさ。………ところでさ、お前のそのすげー前下がりの髪型って前見えるのか?」

───相手が“打ち解けることのできる相手”と解るや否や、花村は水を得た魚の様に話すことをやめはしない。
頬をやや上気させながら笑みを浮かべ、身振り手振りを交えているその姿は見ているこちらさえも楽しい気分にさせる。
初めての町、初めての学校。当然初となる登校に緊張等はしていなかったのだけれど、一人孤独となるはずだった初日の登校風景は“自然と”二人並んで歩むものとなっていた。
……花村陽介。誰よりも速く、自分と出会った“クラスメイト”は明るく思いやりのある人間らしい。
暗く、感情を表に出すことを苦手としている自分とは正反対とも言える男────。


「───えぇ、マジ? 知らねーの? じゃあ今度俺が案内してやるよ。歓迎の意味もこめて飯おごるぜッ」

……だというのに。初対面とは思えない程、不思議と会話が弾んだ気がした。









すっかり打ち解けた(?)自称・ジュネスの王子様こと花村と分かれ職員室で手続きを済ませた後、教師に通された場所は自分が加入すると思われるクラスの渡り廊下。
転入に当たり書類に記載されていたホームルームの時刻は既に過ぎている。時折教室内から漏れてくる“腐ったミカン共め”などの言葉から、自分の紹介をしているらしい。


(………木製?)

漏れる罵声を掻き消す様に音楽をかけながら、手持ち無沙汰に天候の影響かやや湿り気を帯びている壁を撫でる。
何もかもが物珍しい……とまでは言わないが、やはり、都会で育ってきた自分にとってここまでの田舎というものは新鮮だ。
何より驚いたことは“生徒の少なさ”。事前に月光館学園に劣らない程広い学校と聞いていたので、稲葉でも人一倍規模の大きな高校なのだと思っていた。当然、通う生徒もそれなりの数なのだろう、と。
しかしその実、総生徒数は月光館学園の半数ほど。……“単に広いだけ”。
所狭しと建造物が背比べをする都会とは違い、この小さな国で土地が余る程の田舎である稲葉では、ある意味豪華な土地の使い方をしている訳なのだ。
少子化で年々子供の数が少なくなってはいても、無くてはならない場所。…テレビや雑誌で見た田舎のイメージとは少し異なる。
“情報”というものはやはり自分の眼で見なければ正しく入手できないらしい。
そんな“どうでもいい”ことを思考していると、ふとドアがスライドする音が聞こえた。
とっさにプレイヤーの音量を上げる。


「…ほらぁ! さっさと入らんかこのバカチンがぁ! みだらな制服を着おって!」

軽快なBGMと共にバリアントダンスを繰り出している教師に促され、一つ小さな溜め息をつき教室へと踏み込む。
…特に緊張は無い。無関心なのか図太いのか────自分はそういうのとは無縁だ。
教卓の前へと歩み、反転。教室はやはり広々としている。1クラスにしては少なめのクラスメイト達を徐に見渡すと、空席の後ろの席に座る“初めての友”の姿が眼に入った。
目が合うと、だらけた格好で座りながらも花村は笑顔でサムズアップしてくれた。


「…初めまして、有里湊です」

その笑顔に自ずと僕も笑みが溢れ、何時もより愛想良く自己紹介を終えることができたのだった。
…ほんの少しだけ、なのだけれど。









────その後、花村と会話する間もなく一限目へと入り今は3限目後の休み時間。
制服が無いのに教科書も全てが揃っている訳も無くついつい再生ボタンに指がのびかけたが、隣の席の親切な女生徒のおかげで難を逃れることが出来た。
解らないらしい部分を助けるなど、出来る限り彼女が苦にならない様に気を使ったが、流石にこれ以上教科書を分断する訳にもいかず一人眉を顰める。
自分にとっても彼女にとっても初対面の異性と必要以上に近づくというのは余り気分のいいものでもないのだ。


(…どうでもいい)

───だからこそ、そう決断してしまう。“授業はどうでもいい”と。得意という自覚は無いけれど、幸い元来勉学は周りよりも一歩進んでいる方だった。
先程の授業でそれとなくこの学校の“レベル”というものを把握できたがそこまで危惧するものでもなかった。
自分ならば教科書がなくともどうとでもなるはず。そもそも制服とは違い明日には届くそうなのだ。
自信とも自負とも思えないことを考えながら次の授業の準備を始める………が、調度背中をとんとんと叩かれてイヤホンを外し身体を反転させた。


「……?」

しかし、振り向いた先………一つ後ろの席には誰もいない。そのもう一つ後ろの人と目が合ってしまい、なぜか軽い会釈をされてしまった。


(会釈……)

果たして同級生にするものだっただろうか…。
釈然としない思いを抱きながらも斜め後方から人の気配を感じ再び反転すると、そこには腕を組みながら僕の席の隣に立つ花村の姿が。


「───よっ! さっきぶりだな、転校生!」

……そのしてやったりという子供じみた笑顔に自己紹介時とは違い、“小学生か”と呆れてしまう。
しかしそれをいちいち言及するのも面倒なのでスルーをして“何か用か”という思いを目線に乗せる。


「す、清々しいまでのジト眼ですよ有里さん…!? …ハハハ、ほんっと面白いキャラしてるぜお前。えーとさ、朝言ってたろ。ジュネス案内するって。だから一緒に帰ろうぜ」

「…帰る?」

「あれ、もしかして聴いてなかった? イヤホンしてたからか? まぁ俺も授業の延長線上で半分眠りかけてたんだけどさ………何でも、近くで“事件”があったらしいぜ」

「……」

「危ないから今日はこれで下校だとさ。…事件の概要とか何も知らされなかったんだけど。全く、信じられねーよなぁ。………あれ、もしかして怖い?」

「どうでもいい」

「何となく予想はしてたけどやっぱり…!?」

律儀に突っ込みを入れる花村の表情は笑っているが何処か険しい。
イヤホンを外しての教室はやはりざわついていた。自分達の様に現実感が無く笑っている生徒もいれば、恐怖に顔を引き攣らせ必死に携帯電話を弄っている生徒もいる。
……どうやら花村の話は本当らしい。転校初日にこのアクシデント。もしかしたら自分はとんでもない町に来てしまったのかも知れない。


「───ってな訳で、せっかくだから約束通りお前誘ってジュネスに行こうと思ってさ。うちなら人多いから安心だし」

「…いいよ」

「マジ? おっしゃ、さすが話がわかる男! 念のため一番に誘っといてよかったぜ!」

「……?」

「いやいや、お前もう“モテモテ”みたいだからさ。俺のナイスアシストの御陰でよ」

そう言われ、顎で促されるまま花村が示したその方向を見る。
促された視線の先にいて、此方を見ていたのかちょうど目があった女生徒達は顔を赤らめ直ぐに視線を逸らしてしまった。
………そういうこと、なのだろうか。


「ハハハ、もっと喜べよ有里。何にせよさっさと行こうぜ。その内強引にでも“略奪”されちまいそうだし」

ケラケラと笑っている花村に従い素直に立ち上がる。
……“その手”の断りは慣れているが、やはり気持ちのいいものではない。
何より見知らぬ女生徒と過ごすよりかはこの王子様と過ごしたほうが有意義だろう。


「───お、そうだ。この後コイツをジュネスに案内しようと思ってんだけど、里中と……天城もどう? この前のDVDの件もあるし、肉奢るぜ?」

「え……肉…!? あ……えと、でも…。……アハハっ。今日は止めとく。雪子と一緒に帰るからさ」

「…うん。ごめんね、花村君」

…そんな事を考えていた自分にお構いなく近くの女の子達を誘いあっさり断られてしまった花村に再び若干呆れながらも、イヤホンを装着し教室の出口へと向かう。
その時ふと、目が合ってしまったらしい隣の席の女の子………マッシュボブの茶髪が活発な雰囲気を助長しているクラスメイト・里中に、とっさに“ありがとう”と再度リップシンクで伝えておく。
彼女はその意図が分からなかったのか小首を傾げる。大きく見開かれた瞳が、小動物的で愛らしい。小さく手を振り、花村より先に教室を後にする。
三限だけだけど、今日は優しい彼女に助けられた。









場所を移して此処はジュネスのフードコート。
花村がジュネスジュネスと連呼していたので、いったいどんな所なのだろうとある意味期待していたが、実際足を運んでみれば何て事も無いただのデパートだった。
何処にでもあるとまでは言わないが、しいて目についた部分をあげるのならば敷地の広さ……規模だろうか。
デパート内はあまり見てはいないものの、幅広い層の稲羽の市民がこの場所を日常的に利用していることは容易に想像できる。何しろこんな時だというのに来客が多いのだから。


「────じゃーん! どうよ有里ぉ、ここがうち(ジュネス)のフードコートだぜ」

フードコートに腰掛け、注文した料理が運ばれて来た途端、花村は今更すぎることを鼻高々に叫ぶ。
見れば分かるよと思いながらも“ジュネスの王子様”こと花村がやけにジュネスをプッシュする理由を何となく察する。


「…花村王国?」

「ちっげーよ! 何だよキングダムって!? 何も生まれねーよ!? つーか真に受けるなよ、あれは冗談で言っただけだっつの。…はぁ……でもよー、物騒な事件の後にしちゃここも“何時も通り”な感じなんだよな」

「……」

「…人気のステーキハウスは“何時も通り”家族連れで席いっぱいだったし。皆実感とか無いのかも知れねーな」

……俺達が言えたことじゃねーけどさ。
苦笑いを浮かべながら花村は小さくそう締めくくり、注文したポテトを一つ、口に運ぶ。
それに習い自分も同じ様にポテトを食べる。絶妙な塩加減がじゃがいもにマッチしていて中々美味しい。
───言っている事は、僕もよく分かる。
この狭い町で、突然人が遺体で発見されるということ。田舎ならではの価値観というものは自分には分からないけれど、少なくとも何も感じ入ることの無い話の部類ではないだろう。


「ママー、わたしあれ食べたい!」

「めっ! デザートはご飯の後にしなさい」

…フードコートを行き交う人々は楽し気に笑っている。
凄く、怖い。けれど同じくらいに現実感が無い。自分には関係のない事、誰かが直ぐに解決してくれる事だと思ってしまう。
そんなところ……かな。
最も、やはり僕達が言えた事ではないのだけれど。そう言えば、警察官である叔父もこの件について調査をしているのだろうか。


「有里」

名を呼ばれ、目線を青年へと戻すとちょいちょいと手招きをされた。…片耳を近づける。


「何でもよ────遺体、“吊されていた”らしいぜ」

「……。……高い所から?」

自分にだけ聞こえる様に囁かれる言葉と共に花村が唾を飲む音も聞こえて来る。


「あぁ。…さっきパートのおばちゃんに聞いたんだけどさ。“テレビのアンテナ”みたいな物に引っ掛かってたって」

「…殺人だ」

「だよな、俺もそう思ったぜ。流石にこれで自殺か不慮の事故ですーなんっつっても誰も納得しないだろ。…それに、その殺された被害者ってのが………」

花村は気になる部分で話を区切る。何があったのかと真横を向いていた顔を花村に戻すが、既に花村はやや遠くの位置に座っている別の人物を見つめていた。


「…って歓迎会でする話題じゃなかったな。悪りぃ有里、ちょっと待っといてもらえるか?」

頷くと花村はその女性の元へと駆寄り、何やら話をし出したようだ。
────くすんだ灰色ウェーブの長い髪に、何処か妖艶なイメージを駆立てる切れ長の眼。ジュネスでバイトでもしていたのかエプロンを羽織り、薄化粧に彩られたその顔にはやや疲れが透けて見える気がする。
待つ間、手持ち無沙汰に観察していると、ふと眼が合ってしまった。…花村が僕の存在を知らせたのだろう。
逸らす訳にも行かず暫く視線を合わせていると、彼女はそれに答えるかの様にゆっくりと微笑み、花村を連れこちらへと向かってきた。


「こんにちは。私、小西早紀。…君の一つ年上かな」

「…こんにちは」

「貴方が、花ちゃんの言ってた不思議な転校生君? ……ふ〜ん、でも何か分かるわ。“そんな”空気を持っているもの、貴方」

「……」

「…うふふ。クールでドライ、ミステリアス。ここじゃ珍しいタイプだね。花ちゃんが興味津々なのもわかるかも。────でもウザイ時はウザイって言ってあげないと………ね?」

「うざい」

「言うと思ったよ!? クールでありながら、割りとお茶目なアナタなら絶対に言うと思いました! ていうかそんな心にも無いこというなよ!」

「あははっ、花ちゃん楽しそう…。今日会ったのに、もうそんなに仲良くなったんだ。…やっぱり、都会っ子同士気が合う?」

「せ、せんぱい…!」

たった一言に直ぐ様に反応し涙を流す………勢いで怒る花村は、再び彼女の言葉で羞恥に瞬時に顔を赤らめ、あたふたと両手を上下させ“違う”という意思表示をしている。
そんな友の意外な反応にそれとなく花村が小西先輩に向けている気持ちの種類に気付く。


「……えとさ。嫌な事とかあったら………何でも言ってよ。先輩、俺は────」

「それじゃ、花ちゃん。私もう行くね。最近物騒だから。変な噂もあるし」

「あ……う、うん」

…しかし花村の想いとは裏腹に、小西先輩は長い髪を揺らしあっさりと立ち去ってしまった。
言葉の節々に何処か違和感を感じたのは自分の気のせいだろうか───。
その背を暫く見つめていた花村は一つ大きな溜息をついた後、席に腰掛ける。


「はは……先輩、相変わらずだ」

「……気になる?」

「そっ! ………そりゃな」

そう言い、花村は照れた顔を隠すように鼻を擦る。
再び二人となった場で、その反応を特に言及もする気にもならず、とりあえずポテトを一つずつゆっくりと食べてゆく。


「噂、ねぇ………噂と言えば……なぁ有里。“マヨナカテレビ”って、知ってるか?」

ふと、それを思い出したかのような唐突な質問。
…マヨナカテレビ? 深夜番組のタイトルか何かだろうか。


「───噂も噂。誰がやり出したのかとかは解んねぇんだけど、雨が降る深夜12時に点けてないテレビと向き合うと“運命の相手”が映るっていう…」

「……」

「のわあっ…お前今鼻で笑ったな!? 無表情崩してないけど俺には解りますよ!? 今日たまたま雨降るっつーから言ってみただけだっつの!」

「小西先輩が映るといいね」

「こ、凍えそうな程の真顔でそういう事言うのやめて! ……あーもうっ。ていうかこういう変な話題はもうやめようぜ。今日はお前の歓迎で来たんだからよ!」

花村は頭をワイルドにがしがしと掻き、デスクを叩き付けるようにして意気揚々と立ち上がる。
その際倒れそうになるペットボトルを手で支えることを忘れない。


「───こっからもっかい仕切り直しだ。せっかく“元都会組”の仲間が増えたんだ。歓迎会はもっと盛り上がらなきゃいけねーよな!」

…そもそも近場で“殺人事件”があった後に良い雰囲気を期待するのも変な話だけれど。
それでも花村は、僕の事を精一杯歓迎してくれようとし、無理にテンションを上げてゆく。
そんな初めての友達の姿に素直に有難いと感じ、支えていたペットボトルを差し出す。


「っへへ、解ってるじゃん。まだまだお昼だぜ。…有里、今後ともヨロシクな!」

意図を察した花村は太陽をイメージさせる朗らかな笑顔で、自らもペットボトルを持ち少し遅めの“乾杯”をする。
───トレンドに乗り、お調子者で甲斐甲斐しい。心底明るく人見知りをしない性格。やや直感的な面もあるが、人を思いやる事が出来る優しさを持った真のある男だ。
出会ったその日、未だ一日目だというのに、不思議と朝からずっと一緒に居ることで彼の事を多く知る事が出来た。それは花村にとっても同じ事だろう。


「これ食ったら次は商店街でも案内するか? ちょっと遠出すれば沖奈市っていう割りと賑わってるスポットにも出れるんだぜ」

「…お金大丈夫?」

「まさかのオール俺持ち前程…!? ふっざけんな!」

…何にせよ、メリハリは必要。事件後だというのに今日は面白くなりそうだ。






書置き終了の瞬間である。
なお、千枝ちゃんと雪ちゃんとの下校はカット。時系列もちょっとズレてます。
千枝ちゃんは溢れんばかりのキタローの王気に若干ビビってる様子。
逆にジュネスは無駄に懐いた様子。ジュネスと話すときは割りとギャグ的なキタロー。
完全にジュネスルートだこれ。


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