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No.33549の一覧
[0] DDD 二次創作 転生?物[ホーグランド](2017/11/02 20:41)
[1] 二話[ホーグランド](2012/07/03 21:26)
[2] 三話[ホーグランド](2013/06/10 20:31)
[3] 四話[ホーグランド](2013/06/20 00:21)
[4] 五話[ホーグランド](2014/08/14 02:38)
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[33549] DDD 二次創作 転生?物
Name: ホーグランド◆8fcc1abd ID:de55ef8e 次を表示する
Date: 2017/11/02 20:41





「未来予知、ねえ」

 白く、病院らしい消毒液の匂い漂う廊下を二人の医者が歩いている。
 ここオリガ記念病院は、病院と言うよりも監獄だろうと当の医者が平然と言い放つような職場であった。彼ら医者のうち、もう結構な人数が行方不明・死亡・怪我などを負っているのだから少なくとも監獄よりも危険な職場には違いなかった。
 
 医者の一人が手に持ったカルテに目を落としながらポツリと零した、そんな言葉にもう一人の白衣を着た男が反応する。

「んー、その未来予知っていうのは患者さんの言葉なのかい? それとも担当医の?」

「残念ながら担当医が書いているようだな。なんたって、こんなメルヘンをカルテに……」

「彼らはなんでもありだからね」

 そう言って遠い目をした男の胸には貫井という名札が見える。彼はその患者にかける、触れば火傷しそうな熱意によって患者、同僚から『ドクターロマン』というあだ名を頂戴していた。
 

 ―― 彼らはなんでもありだからね

 その言葉に、男は本当に、もううんざりだと軽く首を振った。
 彼らが扱い、オリガ記念病院という監獄に収容される患者たちの通称は『悪魔憑き』。名前からしてイカツイ感じなソレはその実際も”ヤバイ”ものであった。そんな怪物たちに、医者らしい仁の心を持って接することができるのは、隣のドクターロマンぐらいのものであろうと男は確信している。男の場合、わざわざ自分でこのオリガ記念病院に志願した訳でなく、前の病院でちょっとした不祥事を起こし、渋々移ってきたのだ。
 
 なんたって、患者が医者を溶かす、宇宙に飛ばされる、精神を乗っ取られる……といった事態でさえここでは日常の風景である。オリガに勤務する医者は保険に入れないというのは公然の秘密だ。
 しかし、これから会う患者はそこまで命の危機を心配する程では無いらしい。

 と、その点に関しては男はホッとしていた。



「さて、患者さんが来る前にいくらか確認しておこうか」

 診療室の控えについた二人は椅子に座ってカルテと資料を確認することにした。
 この後すぐ、二人はオリガ記念病院に”入院”することになった患者と対面して面談する予定である。病院では、軽い症状の者は基本ここで患者の症状や患部、新部などを観察したり診療したりするのだ。ここオリガでは観察、診療という二つの言葉に違いはあまりない。
 ちなみに医者の死亡件数が一番多いのも、このタイミングである。

「あー、名前は呉 一郎(くれいちろう)。19歳の男だ」

「なるほど、呉くん、ね」

「アゴニスト異常症がいつ発症したかはよく分かっていない。患者にありがちな家庭環境の荒廃もなく、至って良好。まぁ、良好に見えるだけかもしれんが。
 で、なんで彼がアゴニスト異常症だと判明したかだが、防大の試験の際に発覚したらしい」

「ボウダイ?」

「防衛大学校だよ、自衛隊の。あそこは身体測定もするからな、そこそこ成績は良かったそうだ。悪魔憑きと判明した時点で、勿論落とされたようだが。
 そして症状だが、小さい頃から継続的な一次妄想を持っている。患部は眼球及び脳。新部は見えないものが見える。妄想の内容だが『自分は前世があり、死んでこちらに再び生まれた。そしてこの世界は前世では小説の中の物語で――物語の中に転生したのだ』だとよ。
 これだけだと至って普通のイカレた、いつもの患者な訳だが見えるものが問題らしい。見えるものは分厚い”本”……、転生前の世界にあった小説」

「……転生前の小説、なるほど、それで未来予知だね」

「だろうな。カルテにはこれぐらいしか書いていない。その本とやらの内容を確かめるのが俺たちのお仕事なんだろう。良かった、今回は安全で楽そうだ」

「どの棟に入る予定なんだい?」

 その貫井の言葉に、再びカルテに目を走らせた男が顔が強張る。
 
 カルテの端に、『D棟収容予定』と書かれていたからだ。








「失礼します」

 そう言って開けられた扉から見えたのは、大人しそうな一見普通の男の子であった。
 背は170後半だろうか、さっぱりと黒髪は耳にかかる程の長さでチャラチャラした風でもない。しかし、確かにどちらかと言えば内向的に見えると男は納得した。

「はじめまして、今日診察を担当する医師の貫井です」

「坂井だ、よろしく」

「はぁ、呉です」

 やはり此処に来て元気な訳もなく、どことなく意気消沈した様子で呉は応えた。ソレもそうだろう、この病院へのアクセスはヘリポートだけ――つまりは本当の”牢獄”に来たのだと実感したに違いないからだ。
 そんな風に推測した坂井は彼に少し同情してしまうが、ドクターロマンは違ったようだ。

「どうかな、呉くん。少し調子が悪いように見えるけど、酔った?」

 精神治療の第一歩は患者との信頼関係だとも言わんばかりに、にこやかな顔で話しかける貫井に呉は気だるげに返事をする。

「楽しそうな動物園に来れて、嬉しいですね」

 そんな返事におや、と坂井は思った。
 呉の第一印象は、こんな皮肉たっぷりの返事を返す青年には見えなかったからだ。ドクターロマンはそんな彼の皮肉を理解できなく見えて、笑顔のまま首を少し傾げていた。
 呉は自身を含め様々なアゴニスト異常症を”研究”する、ここオリガを動物園と例えたのだろう。呉自身も、悪魔憑きへの一般認識を理解しているから、こんな顔をしているのだ。
 ドクターロマンのロマンたる所は、このいわゆる”悪魔憑き”に対する認識が一般のそれとかけ離れている所にある。彼は悪魔憑きをほんの少しでも下に見ていない。社会的弱者だと見下していない。坂井が彼らに同情するのは、悪魔憑きが救われるべき弱者だと――それに殺される医者、という現実は置いといて――いう建前があるからである。そんな凡人ではロマンできない。したくない。

「……まぁ、思うところも色々あるだろうが、そうだなぁ――」

 坂井は少し考えて、直接切り込むことにした。呉は医者を溶かそうなんてしないだろうからだ。

「――まずは妄想と新部の”見えないものが見える”とやらをみさせてもらおう」



 妄想といった瞬間、呉は顔をしかめたかのように見えたがすぐに消して薄く笑った。

「いや、”見えないもの”は見せれないですよ?」

「ふっ、そうだな。見えるものは、転生前の本?だったかね?」

 その確認に呉は頷いて、扉外から大きめのキャリーバッグを転がしてきのだった。そのキュルキュルと音のするバックは何か入っているような様子は無く、大きめであるのに重量感は無かった。
 呉はキャリーバッグからまるで大きな――図書館の奥にある大百科辞典のような――本を取り出す動作をして近くのテーブルに置いた。まるで、よくできたパントマイムの様に。

 また厚くなってるよ……と愚痴をこぼしながら見えない本を必死に捲る呉を見て、坂井は改めて目の前の青年も立派な狂人であることを理解した。しかし、そんな凡人なら間違い無く引く光景をのほほんと眺めながら、ドクターロマンは大きい本なんだねー、と朗らかに語りかける。
 
「まぁ、見えないでしょうけど――これが例の本です」

 と呉が指す先には何も坂井には見えない。何もテーブルの上には存在せず、空虚な空間があるだけだ。
 坂井は今、彼の目がどんな狂気を孕んでいるかを確認しようと目を伺ってみる。そこにあるのは意外にも、狂気にランランと輝く目でなく草臥れた、枯れた目であった。
 


「前世の話ですか? まぁ、すごく一般的な人生だったと思いますよ。普通に大学に入って、働いて、死にました。死んだらこのヘンテコな世界……ああ、失礼、”少しずれた世界”に生まれてたって話です」

「記憶が赤ん坊の頃はこんがらがって大変でした。こっちでも普通に暮らしてきたつもりです。ドコモおかしくない、普通の人生だった、はずなんですがね。前世のブーストもあって、もうちょっと上手く行くはずだったんですが、こんな意味不明な病気で一発ドロップアウトです。社会復帰は絶望的らしいですし」

「本ですか? タイトルは『DDD』って本でした。伝奇にカテゴライズされるんでしょうかね。
 ええ、その”本”自体は物心ついてからずっとありましたよ。この人生自体フシギなんですから、まぁ、見えない本ぐらい付録みたいなモンかなっと。あまり気にしてませんでした。普通に隠してました――え? 大きさは最初から大きかったのかって?――いや、そんなことないです。最初は前世読んだぐらいの大きさで、厚さは三センチもなかったはずです。
それから気付いたらページ数が増えていて、今ではブリタニカ百科事典ぐらいあるんじゃないですか? いや、ホント、二巻目が出来ていたときは笑っちゃいましたよ」

「結末、は必ず皆さん聞くんですね。実は、前世で自分が読んでいた頃にはこの本は完結しなかったんですよ。ええ、ホント、アナウンスすらされてませんでしたし、そのそも完結するのかどうかすら…… だから、今のこの”本”も最後まで書いて無いんですよ、多分」

 狂人の癖に随分と筋道立てた話方をするのだなと坂井は感心した。筋道立ったと言うよりは話慣れているといったほうが適切かもしないが。
 実際、何度も聞かれて飽き飽きしているのか話している間の呉の目はどんよりと曇っているようにも見える。

 そして、今回の核心であるその本の内容について坂井は質問しようとした時、呉は手のひらを向けて彼を制止した。

「……聞きたい事はわかります。未来についてですが、コレを話していいもんかどうか、まだ自分に判断ついてないんですよ」

「何か不都合があるのかい?」

 ドクターロマンが不思議そうな顔をして尋ねる。
 その問いにも、呉はまったくの無感動な表情で機械的に返答した。

「人は未来を知って幸せになるかって話です。例えば貫井さんが明日死ぬって分かって嬉しいですか?」

「残りの一日が分かれば、日常のように無為に消費することもなくいいじゃないですか」

 ドクターロマンは間髪入れずにそう応える。
 その答えに呉は初めて口歪めて、ニヤリと笑った。

「ですか、ならいいですよ」

「まて、話がずれている。今回は呉の予言の信頼度を測るために来たんだ。俺たちの未来を占ってもらおうなんて話じゃない」

「予言、っていうのも正確には違いますけどね。正確には『自身が物語に沿って行動した場合の未来』が分かるってだけです。外れた行動を取れば変わる未来もあります。ホント、ありがちな設定ですね」

「じゃあ、この後の事も分かるのか?」

 坂井は少しワクワクする自分を感じながら、問いを投げかける。
 そんな坂井を見ているようで見ていない――呉はナニカに勝ち誇るような表情を少し見せて声を出した。

「ええ――

 これで合格ですか、トマトさん」



『……ああ、どうやら本物の”バケモノ”らしいな。予知者には二重盲検法もどきも効かんとみえる』

 突然、部屋のどこからとも無く聞こえてきた声に坂井は驚き視線を彷徨わせた。隣のドクターロマンも同じく、声の出処を探そうとキョロキョロとあたりを見まわす。

『二人の医師もご苦労。つまらん事に付きあわせてしまったな、後で説明はする』

 その声は勝手に詫びた後、ブツッと明らかに切った音を出して沈黙した。

 その時やっと、坂井はわざわざこの二人に今まで散々確認してきたような事をもう一度させようとしたのか――という違和感の正体にたどり着いたのだった。
 






<作者コメ>
銀河最強ニートを図書館で読んで、なんとなく
続け

2017/11/02 別投稿サイトに修正加筆版を投稿中


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