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No.33455の一覧
[0] ダークブリングマスターの憂鬱(RAVE二次創作) 【完結 後日談追加】[闘牙王](2017/06/07 17:15)
[1] 第一話 「最悪の出会い」[闘牙王](2013/01/24 05:02)
[2] 第二話 「最悪の契約」[闘牙王](2013/01/24 05:03)
[3] 第三話 「運命の出会い」[闘牙王](2012/06/19 23:42)
[4] 第四話 「儚い平穏」[闘牙王](2012/07/09 01:08)
[5] 第五話 「夢の終わり」[闘牙王](2012/07/12 08:16)
[6] 第六話 「ダークブリングマスターの憂鬱」[闘牙王](2012/12/06 17:22)
[7] 第七話 「エンドレスワルツ」[闘牙王](2012/08/08 02:00)
[11] 第八話 「運命の出会い(その2)」[闘牙王](2012/08/10 20:04)
[12] 第九話 「魔石使いと記憶喪失の少女」[闘牙王](2012/08/10 20:08)
[13] 番外編 「アキと愉快な仲間達」[闘牙王](2013/01/24 05:06)
[14] 第十話 「将軍たちの集い」前編[闘牙王](2012/08/11 06:42)
[15] 第十一話 「将軍たちの集い」後編[闘牙王](2012/08/14 15:02)
[16] 第十二話 「ダークブリングマスターの絶望」前編[闘牙王](2012/08/27 09:01)
[17] 第十三話 「ダークブリングマスターの絶望」中編[闘牙王](2012/09/01 10:48)
[18] 第十四話 「ダークブリングマスターの絶望」後編[闘牙王](2012/09/04 20:02)
[19] 第十五話 「魔石使いと絶望」[闘牙王](2012/09/05 22:07)
[20] 第十六話 「始まりの日」 前編[闘牙王](2012/09/24 01:51)
[21] 第十七話 「始まりの日」 中編[闘牙王](2012/12/06 17:25)
[22] 第十八話 「始まりの日」 後編[闘牙王](2012/09/28 07:54)
[23] 第十九話 「旅立ちの時」 前編[闘牙王](2012/09/30 05:13)
[24] 第二十話 「旅立ちの時」 後編[闘牙王](2012/09/30 23:13)
[26] 第二十一話 「それぞれの事情」[闘牙王](2012/10/05 21:05)
[27] 第二十二話 「時の番人」 前編[闘牙王](2012/10/10 23:43)
[28] 第二十三話 「時の番人」 後編[闘牙王](2012/10/13 17:13)
[29] 第二十四話 「彼と彼女の事情」[闘牙王](2012/10/14 05:47)
[30] 第二十五話 「嵐の前」[闘牙王](2012/10/16 11:12)
[31] 第二十六話 「イレギュラー」[闘牙王](2012/10/19 08:22)
[32] 第二十七話 「閃光」[闘牙王](2012/10/21 18:58)
[33] 第二十八話 「油断」[闘牙王](2012/10/22 21:39)
[35] 第二十九話 「乱入」[闘牙王](2012/10/25 17:09)
[36] 第三十話 「覚醒」[闘牙王](2012/10/28 11:06)
[37] 第三十一話 「壁」[闘牙王](2012/10/30 06:43)
[38] 第三十二話 「嵐の後」[闘牙王](2012/10/31 20:31)
[39] 第三十三話 「違和感」[闘牙王](2012/11/04 10:18)
[40] 第三十四話 「伝言」[闘牙王](2012/11/06 19:18)
[41] 第三十五話 「変化」[闘牙王](2012/11/08 03:51)
[44] 第三十六話 「金髪の悪魔」[闘牙王](2012/11/20 16:23)
[45] 第三十七話 「鎮魂」[闘牙王](2012/11/20 16:22)
[46] 第三十八話 「始動」[闘牙王](2012/11/20 18:07)
[47] 第三十九話 「継承」[闘牙王](2012/11/27 22:20)
[48] 第四十話 「開幕」[闘牙王](2012/12/03 00:04)
[49] 第四十一話 「兆候」[闘牙王](2012/12/02 05:37)
[50] 第四十二話 「出陣」[闘牙王](2012/12/09 01:40)
[51] 第四十三話 「開戦」[闘牙王](2012/12/09 10:44)
[52] 第四十四話 「侵入」[闘牙王](2012/12/14 21:19)
[53] 第四十五話 「龍使い」[闘牙王](2012/12/19 00:04)
[54] 第四十六話 「銀術師」[闘牙王](2012/12/23 12:42)
[55] 第四十七話 「騎士」[闘牙王](2012/12/24 19:27)
[56] 第四十八話 「六つの盾」[闘牙王](2012/12/28 13:55)
[57] 第四十九話 「再戦」[闘牙王](2013/01/02 23:09)
[58] 第五十話 「母なる闇の使者」[闘牙王](2013/01/06 22:31)
[59] 第五十一話 「処刑人」[闘牙王](2013/01/10 00:15)
[60] 第五十二話 「魔石使い」[闘牙王](2013/01/15 01:22)
[61] 第五十三話 「終戦」[闘牙王](2013/01/24 09:56)
[62] DB設定集 (五十三話時点)[闘牙王](2013/01/27 23:29)
[63] 第五十四話 「悪夢」 前編[闘牙王](2013/02/17 20:17)
[64] 第五十五話 「悪夢」 中編[闘牙王](2013/02/19 03:05)
[65] 第五十六話 「悪夢」 後編[闘牙王](2013/02/25 22:26)
[66] 第五十七話 「下準備」[闘牙王](2013/03/03 09:58)
[67] 第五十八話 「再会」[闘牙王](2013/03/06 11:02)
[68] 第五十九話 「誤算」[闘牙王](2013/03/09 15:48)
[69] 第六十話 「理由」[闘牙王](2013/03/23 02:25)
[70] 第六十一話 「混迷」[闘牙王](2013/03/25 23:19)
[71] 第六十二話 「未知」[闘牙王](2013/03/31 11:43)
[72] 第六十三話 「誓い」[闘牙王](2013/04/02 19:00)
[73] 第六十四話 「帝都崩壊」 前編[闘牙王](2013/04/06 07:44)
[74] 第六十五話 「帝都崩壊」 後編[闘牙王](2013/04/11 12:45)
[75] 第六十六話 「銀」[闘牙王](2013/04/16 15:31)
[76] 第六十七話 「四面楚歌」[闘牙王](2013/04/16 17:16)
[77] 第六十八話 「決意」[闘牙王](2013/04/21 05:53)
[78] 第六十九話 「深雪」[闘牙王](2013/04/24 22:52)
[79] 第七十話 「破壊」[闘牙王](2013/04/26 20:40)
[80] 第七十一話 「降臨」[闘牙王](2013/04/27 11:44)
[81] 第七十二話 「絶望」[闘牙王](2013/05/02 07:27)
[82] 第七十三話 「召喚」[闘牙王](2013/05/08 10:43)
[83] 番外編 「絶望と母なる闇の使者」[闘牙王](2013/05/15 23:10)
[84] 第七十四話 「四天魔王」[闘牙王](2013/05/24 19:49)
[85] 第七十五話 「戦王」[闘牙王](2013/05/28 18:19)
[86] 第七十六話 「大魔王」[闘牙王](2013/06/09 06:42)
[87] 第七十七話 「鬼」[闘牙王](2013/06/13 22:04)
[88] 設定集② (七十七話時点)[闘牙王](2013/06/14 15:15)
[89] 第七十八話 「争奪」[闘牙王](2013/06/19 01:22)
[90] 第七十九話 「魔導士」[闘牙王](2013/06/24 20:52)
[91] 第八十話 「交差」[闘牙王](2013/06/26 07:01)
[92] 第八十一話 「六祈将軍」[闘牙王](2013/06/29 11:41)
[93] 第八十二話 「集結」[闘牙王](2013/07/03 19:57)
[94] 第八十三話 「真実」[闘牙王](2013/07/12 06:17)
[95] 第八十四話 「超魔導」[闘牙王](2013/07/12 12:29)
[96] 第八十五話 「癒しと絶望」 前編[闘牙王](2013/07/31 16:35)
[97] 第八十六話 「癒しと絶望」 後編[闘牙王](2013/08/14 11:37)
[98] 第八十七話 「帰還」[闘牙王](2013/08/29 10:57)
[99] 第八十八話 「布石」[闘牙王](2013/08/29 21:30)
[100] 第八十九話 「星跡」[闘牙王](2013/08/31 01:42)
[101] 第九十話 「集束」[闘牙王](2013/09/07 23:06)
[102] 第九十一話 「差異」[闘牙王](2013/09/12 06:36)
[103] 第九十二話 「時と絶望」[闘牙王](2013/09/18 19:20)
[104] 第九十三話 「両断」[闘牙王](2013/09/18 21:49)
[105] 第九十四話 「本音」[闘牙王](2013/09/21 21:04)
[106] 第九十五話 「消失」[闘牙王](2013/09/25 00:15)
[107] 第九十六話 「別れ」[闘牙王](2013/09/29 22:19)
[108] 第九十七話 「喜劇」[闘牙王](2013/10/07 22:59)
[109] 第九十八話 「マザー」[闘牙王](2013/10/11 12:24)
[110] 第九十九話 「崩壊」[闘牙王](2013/10/13 18:05)
[111] 第百話 「目前」[闘牙王](2013/10/22 19:14)
[112] 第百一話 「完成」[闘牙王](2013/10/25 22:52)
[113] 第百二話 「永遠の誓い」[闘牙王](2013/10/29 00:07)
[114] 第百三話 「前夜」[闘牙王](2013/11/05 12:16)
[115] 第百四話 「抵抗」[闘牙王](2013/11/08 20:48)
[116] 第百五話 「ハル」[闘牙王](2013/11/12 21:19)
[117] 第百六話 「アキ」[闘牙王](2013/11/18 21:23)
[118] 最終話 「終わらない旅」[闘牙王](2013/11/23 08:51)
[119] あとがき[闘牙王](2013/11/23 08:51)
[120] 後日談 「大魔王の憂鬱」[闘牙王](2013/11/25 08:08)
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[33455] 第三十二話 「嵐の後」
Name: 闘牙王◆4daf4c7d ID:7bdaaa14 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/31 20:31
「何だ……収まったのか?」
「…………」


魔導精霊力エーテリオンの暴走地点、ハル達がいる場所から離れた場所。そこに二人の人影があった。一人はハルの仲間、ムジカ。もう一人は六祈将軍オラシオンセイスレイナ。今、二人はこの場で文字通り死闘を繰り広げていたところ。その証拠にムジカは既に満身創痍。だが対照的にレイナには傷らしい傷は見られない。同じ銀術師シルバークレイマーでありながらも二人の間には確かな力の差があった。そしてレイナにはDBという切り札がある。どう転んでもムジカに勝ち目は無い。だがそれでもムジカはその場から退く気は無かった。それは約束。この場を任された者としての。今頃ハルはエリーの元に辿り着いたはず。ならばその邪魔をさせるわけにはいかない。その覚悟を以てムジカはレイナと戦闘を行っていた。しかしそれは思わぬ展開を見せることになった。

一つはレイナ。初めの内はどこか小悪魔的な雰囲気を持ったまま楽しむように戦っていたにも関わらず今はそれがない。それはムジカがある言葉を発したことによって。

『リゼ』

それはムジカにとっての師であり、命の恩人でもある男の名前。どこで銀術を覚えたのかというレイナの問いに答えたもの。そしてそれを聞いた瞬間、レイナの表情が、雰囲気が一変する。先程までの甘さ、油断が全く見られない戦士としての顔。まるで親の仇を見るかのような視線。だがムジカにはその理由に皆目見当がつかない。そしてレイナが口を開こうとした瞬間、それは起きた。

凄まじい光の柱の出現と地震。まるで天変地異が起きてしまったのではないかと思えるような事態。それによって戦闘は中断してしまう。奇しくもそれはハルが向かって行った方向。嫌な胸騒ぎに襲われるもののムジカはその場を離れることもできない。レイナを足止めすることが自分の役目なのだから。もっともそう長くは保たない程ダメージを負ってしまっている。どうしたものかと考えているうちに天変地異は収まって行く。その理由は分からないが仕切り直し。そして正念場だとムジカが気合を入れ直していると


「ムジカとか言ったわね……あんた本当にリゼの弟子なの?」


レイナは腕を組んだまま無表情にムジカに問いただしてくる。答えなければ容赦はしない。そんな気配を感じさせるほどの殺気を孕んだ言葉。


「あん? 何だまだそのこと気にしてたのかよ。そんなことよりどう? この後デートでもしない? いい加減ドンパチすんのも飽きてきちまったしさ」
「質問に答えなさい!」
「な、何だよ……そんなに必死になっちまって……もしかしてリゼの知り合いか何かか……?」


凄まじい剣幕で問いただしてくるレイナに圧倒されながらもムジカは事情が分からず困惑するしかない。目の前のレイナの様子は尋常ではない。もしかしたらリゼの知り合いか何かなのだろうか。だが残念ながらリゼは既に他界してしまっている。申し訳ないがそれを伝えようとした時


「シルバーレイ……」


ムジカの時間は止まってしまう。レイナの言葉によって。知らず息を飲み、驚愕と共にムジカはレイナに視線を向ける。レイナはどこかそんなムジカの反応を探るかのように静かにそれを見つめていた。


「あんた……今、何て言った……?」
「そう……やっぱり知ってるのね。まあリゼの弟子なんだし当たり前か……」
「おい! 一人で何納得してやがる!? 何であんたがシルバーレイのことを……」


ムジカが混乱しながらもレイナに詰め寄ろうとする。そこには先程までの相手を挑発するような軽い雰囲気は全くなかった。だが先のレイナの言葉にはムジカをそうさせてしまうほどの意味があった。

『シルバーレイ』

それは銀術によって造られたとされる船。だがその正体は凄まじい危険を孕んだ兵器。その力は一瞬で街を消し飛ばしてしまうほどのもの。そしてそれを見つけて壊すことがムジカの使命であり目的。死の間際に師であるリゼが遺した遺言。だが何年も探しているにもかかわらず手がかり一つ掴めずにいる代物。にも関わらずレイナはそれを口にした。まるで何かを知っているかのように。興奮しないでいるなど不可能。だがそれは


「……教えなさい。シルバーレイはどこ?」


レイナのぞっとするほどの冷酷な声によってかき消されてしまう。瞬間、ムジカの周りに無数の銀の塊が生まれてくる。その数は先程までの比ではない。まさしくレイナの本気。遊びではなく本気で命を取りに来ているのだと悟るには十分すぎるほどの殺気。


「な、何だっ!? あんた、シルバーレイのことを知ってんのか!?」
「質問をしているのは私よ! あなたは黙って答えればいいの! どこに隠したの!?」
「か、隠す……? オレが? 何の冗談だ!? オレだってシルバーレイを探してんだ! それよりも何でオレがシルバーレイのことを知ってるってことになってんだ!?」


まるで人の言うことを聞こうとしないレイナの異常な様子にムジカは混乱しながらも必死に話しかける。間違いなく目の前のレイナはシルバーレイについて何か知っている。なら情報交換ができるかもしれない。とにもかくにもまずはこの場を納めなくては。だがそんなムジカの考えは


「いいわ……直接身体に聞いてあげる。安心なさい。手足の一、二本で済ませてあげるわ」


レイナの宣告によって粉々に打ち砕かれてしまう。同時に凄まじい力がムジカの周囲を包み込んでいく。それは銀術師シルバークレイマーの力。同じ銀術師シルバークレイマーであるムジカにはそれを感じ取ることができる。そして同時に悟る。自分にはもう逃げ場がないことに。既に満身創痍に加え歴然たる地力の差、DB。ムジカに対抗する術はもう残ってはいない。それでも何とかこの窮地を脱する術を模索しようとしたその時、それは現れた。


「っ!? な、何だ!?」


ムジカはいきなり自分の周囲が暗くなってしまったことに驚きの声を上げる。確かに今は夜だが周りには街の明かりがある。にもかかわらず今はそれがない。まるで巨大なものが頭上にあるかのように。ムジカはすぐさま自らの上空を見上げ、同時に戦慄する。そこにはムジカの想像を遥かに超えるものがいた。

ドラゴン

人間の十数倍はあろうかと思える巨大な黒龍がそこにはいた。黒龍はそのまま次第に高度を下げながらムジカたちに近づいてくる。正確にはレイナに向かって。同時にムジカは気づく。黒龍の背中に見たことのない男が乗っていることに。

 『龍使いドラゴンマスタージェガン』

それが男の名。レイナと同じく六祈将軍オラシオンセイスの一人。

ジェガンは一言もしゃべらず、首を動かすのみでレイナに用件を伝える。それは黒龍に乗れという合図、撤退を意味するもの。


「嫌よ! あんたこそ邪魔するなら容赦しないわよ!」


ジェガンの意図を理解しながらもレイナはヒステリックに反論するだけ。だがそれは無理のないこと。長い間探し求めていたシルバーレイの手掛かりになるかもしれない相手が目の前にいるのだから。もし邪魔をするなら戦闘も辞さないばかりの殺気を以てレイナはジェガンに向き合う。だがそれは


「キングの言葉を無視するのか」
「――――っ!?」


ジェガンの一言によって吹き飛ばされてしまう。瞬間、レイナの身体がビクンと震える。まるで条件反射のように。『キング』という絶対の言葉によって。ただでさえレイナはジークに与えられた任務を勝手に受け持ち、そしてジークの監視も満足にできていない。加えてレイヴマスターも逃がしてしまっている。さらにキングの命令にまで背けばどうなるか。いかな側近といえどもこれ以上失態を重なれば命はない。レイナは舌打ちしながらも戦闘態勢を解除し、ジェガンの元へと向かって行く。悔しさに顔を歪ませながら。


「……とりあえず命拾いしたわね。でも今度会うときは容赦はしないわ。それまでにシルバーレイのことを思い出しておくのね」


そう言い残したままレイナはジェガンと共に黒龍の乗り飛び去って行ってしまう。後にはいきなりの事態の連続によって置き去りにされたムジカが残されてしまった。


(……ったく、一体何だってんだ……?)


ムジカは頭をかきながらも煙草を取り出し一服する。大きな溜息と共に。形で言えば相手が退いたのだがどうみても見逃されたのは自分だったことにムジカは内心安堵していた。同時に悟っていた。DC、六祈将軍オラシオンセイスと自分達の力の差を。そしてレイナとシルバーレイ。分からないことだらけ。ムジカは一息ついた後走り出す。ハルとエリーの元に向かって。それがこの夜のムジカの役目の終わりだった――――




「……え? ここ……どこ?」


少女、エリーはきょろきょろと辺りを見渡しながらも目を覚ます。だがその姿はどこか間抜けさがある。まるで記憶喪失になってしまったかのよう。もっともその通りなのだがエリーは今の自分の状況が分からず右往左往するしかない。そんな中


「エリー! 目が覚めたのか、大丈夫か!? どこもおかしくねえか!?」
「ハル……? どうしてハルがここに? 確かあたし……」


どこか慌てながら駆けよって来るハルの姿にエリーは驚きながらも次第に思い出してくる。自分がどうしてこんな場所にいるのか。なんでこんなにボロボロなのか。そしてどうしてこんなに辺りが惨状になってしまっているのか。様々なことが頭の中を巡って行く中、あることにエリーは思い出す。ある意味もっとも気にしなければいけない人物のことを。


「そ、そうだ! ハル、アキは!? あたしアキに会ったの!」


エリーはどこか興奮しながらハルに告げる。アキに会ったことを。そして助けてもらったことを。ようやく会うことができた。そしてアキはハルにとっても探し人。これでやっと旅の大きな目的を果たすことができる。だがそれを聞きながらもハルはどこか罰が悪そうな顔をするだけ。そして


「ごめん、エリー……アキはもう行っちまったんだ……」
「え? な、何で? せっかく会えたのに?」
「ああ……オレも追いかけようとしたんだけど消えちまって……」


ハルは申し訳なさそうにしながらも事情を説明する。アキと共に協力してエリーを助けたこと。だがエリーの安否を確認した後、アキが突然いなくなってしまったこと。まるで四年前ガラージュ島からいなくなってしまった時と同じように。一言も会話を交わすことなく。エリーは悟る。恐らくはワープロードによってどこか遠くに移動してしまったのだと。だがどうしてそんな逃げるようなことをするのか分からない。助けてくれたというのに何故そんなことを。疑問を二人が抱いている中


「……追いかけなくてよかったかもしれんぞ。お前では金髪の悪魔には遠く及ばない」


そんな男の声がハルとエリーに向かって掛けられる。二人は驚きながらも振り返る。そこにはボロボロになりながらも何とか立ち上がり歩いているジークの姿があった。


「……っ!」
「お、お前……まだやる気か!? エリーから離れろ!」


ハルはTCMを構えながらもエリーを庇うように前に立つ。エリーはどこか怯えた表情を見せながらもハルに縋りつく。当たり前だ。つい先ほどまで自分の命を狙っていた、殺されかけた相手が再び近づいてきたのだから。ハルも立っているのがやっとであるがそれを悟られまいとするかのように必死にジークと対峙する。しかしすぐに二人は気づく。それはジークの雰囲気。そこには敵意も殺気もない。まるで敵対する気がみられない姿。


「心配するな……もうお前達と敵対する気は無い。それに今のオレには戦う力は残っていない。お前と同じくな……」
「ど、どういうことだ!? お前がエリーを襲ったんだろう!? 何でいきなりそんな……」
「……魔導精霊力エーテリオンの危機がなくなった。それだけだ」


ジークはそのまま一度自分に怯えているエリーを見つめた後、事情をハルに伝える。魔導精霊力エーテリオンのこと。金髪の悪魔のこと。そしてDCのこと。


「じゃあお前はアキのことも追ってるのか!? 何でそんなことするんだ!? アキは何も悪いことはしてないんだぞ!」
「金髪の悪魔……それが奴の正体だ。だがそれだけではない。お前も見た筈だ。奴が持っていたDBとその力を」
「それは……」


ジークの言葉によってハルは思い出す。アキの持つDBから放たれた力。それは今まで戦ってきたどんなDBとも比較にならないほどに強力なもの。レイヴマスターとしての力がその危険性を感じ取っていた。


「奴が持っていたのは『母なる闇の使者マザーダークブリング』シンクレアだ」
母なる闇の使者マザーダークブリング……!? それって大破壊オーバードライブを起こしたあの……!?」


ハルはジークの言葉に驚きを隠せない。母なる闇の使者マザーダークブリングシンクレア。それはシバから聞いていた存在。全てのDBの母なる存在。今は五つに分かれてしまっているDB。それを壊すことが自分の、レイヴマスターの使命。それはつまり自分とアキは戦う運命にあるということ。だがハルはまだ納得がいっていなかった。先程のアキの姿。確かに様子はいつもと違っていたがそれでもあれはアキだった。なのに何故シンクレアなんて物を。考えられるのはやはり一つだけ。


「……アキはきっとシンクレアに操られてるだけだ! オレがアキを助けて見せる!」


それがハルの答え。恐らくはアキがシンクレアに操られ、影響を受けているのだと。ならばそれを救うことが自分の役目。ハルはそのままその手にあるTCMに、レイヴに力を込める。決意を新たにするかのように。

だがそんな中、エリーは一人黙りこんでしまっている。それはジークとハルの話。アキが持つDBの話。


(ママさん……どうして……?)


エリーはマザーのことを想う。エリーは既に悟っていた。恐らくはDBがハル達のように悪の存在なのだということは。これまでの旅の中でもそれを何度も見てきた。だがそれでもエリーは信じたくはなかった。マザーの姿。意地っ張りながらも子供のような姿。そしてアキと楽しそうにしている光景。とてもハル達が言うような存在にはどうしてもエリーには思えなかった。いや、信じたかった。あの二年間での楽しかった時間を。


「金髪の悪魔を救うだと……? 本気か……?」
「当たり前だ! それに金髪の悪魔じゃねえ! アキだ! オレはアキを助けて見せる!」


ジークはそんなハルの言葉に呆気にとられるしかない。金髪の悪魔であるアキを助けようと本気で考えているのだと悟ったからこそ。世界を壊しかねない力を持つ存在。操られているというのも希望的観測に過ぎない。にも関わらずハルはそれを微塵も疑っていない。それはアキへの信頼。あきらめないというハルの信念といってもいいもの。だがそれを笑うことなどジークにはできない。

何故ならその力を実際に目の当たりにしたのだから。自分があきらめるしかなかったあの状況で見せた姿。それに知らず魅せられてしまったかのように。自分が殺すしかない、命を奪うしかないと判断したことに違う答えを見せた男。二代目レイヴマスター。

だが金髪の悪魔が操られているかはともかくその行動は不可解な点が多い。自分にとどめを刺さなかったこと。エリーを助けようとしたこと。何にせよ警戒することに変わりは無い。もっとも今の自分では金髪の悪魔には敵わない。それは既に嫌というほど味わった。


「……好きにするがいい。だが今のお前では返り討ちに会うのが関の山だ」
「なっ!? な、何でそんなこと分かるんだよ!?」
「実際に奴と戦ったからだ……恐らくは奴はキングに匹敵する力を持っている」
「キング……?」
「DC最高司令官、DCを束ねる男。六祈将軍オラシオンセイスにも及ばないお前では絶対に勝てない」
「くっ……!」
「ハル……」


ハルはジークの言葉に何も言い返すことができない。その力の差を嫌というほど味わったからこそ。自分はレイナに手も足も出なかった。そんな自分がそれを束ねているキングに、そしてそれに匹敵する力を持っているアキに敵うわけがない。一刻も早く強くならなければ。そんなハルに向かってジークは告げる。


「力を手に入れろ。混沌の国ルカ大陸に『闘争のレイヴ』がある」


ハルにとっての、レイヴマスターの力。新たなレイヴがある場所を。


「っ!? お前、何でそんなこと知ってんだ!?」
「驚くようなことではない。DCの者なら皆そのことを知っている」
「そっか……でも何でDCのお前がそんなこと教えてくれるんだ?」
「……言っていなかったか。オレはDCではない。DCに入り込んでいるのはキングを倒すためだ」
「キングを……? でも何でそれならすぐにアキを襲わなかったんだ? アキもDCの一員なんだろ?」
「何……? それは本当か……?」
「あ、ああ……シュダって奴から聞いたんだ。売人のアキって呼ばれてるって……」
「…………」


ジークはそのままハルの言葉によって黙りこんでしまう。同時にジークは思い出す。確かに売人のアキという名前は聞き覚えがあるが実際に会ったことはない。だが驚くべきことはそこではない。自分はハジャから金髪の悪魔の情報を得ていた。しかしハルの言う通りアキがDCの幹部だとすればハジャがそれを知らないはずはない。DCの頭脳とも呼ばれるあの男がそれを見逃すわけは無い。それはつまりハジャは金髪の悪魔だと知りながらそれを見逃し、DCに引き込んでいるということ。そしてそれを自分はおろかミルツにすら隠している。あまりにも疑わしい行為。何よりもそれが事実だとすれば自分は出来レースに参加させられた、はめられたということ。


(どうやら……少し調べてみる必要がありそうだな……)


ジークは決断する。それはDCを離脱すること。ある意味ハジャを、時の民を裏切ることになるかもしれない選択。だがそれをジークは選択する。それは自分自身の意志。まるで見えない意志によって動かされていたこれまでの自分との決別。新たな可能性を見せてくれたハルの影響。そして他の手段があったにも少女を、エリーを傷つけてしまったことへの贖罪。もっともそれを口に出すことは無い。それができるほど今のジークはまだ成長できてはいなかった。


「……礼は言わねえからな。それにまたエリーを狙ってきたら容赦はしねえ。必ず倒してやる」
「ふん……勘違いするな。オレは何も変わっていない。オレの目的のために動くだけだ……」


そのままジークは去っていく。結局エリーに声を掛けることはないまま。一瞬、口を開きかけながらもそれを噤んだまま。ジークは動き出す。誰かに決められたものではない、自分自身の答えを。時を守る答えを得るために。


それがジークとハル、エリーの定められた出会い、運命の始まりだった――――




(やれやれ……どうにかなったか……)


アキはそのまま大きな溜息と共にその場に座りこむ。同時に風が冷たい風が顔を吹き付け、マントがたなびくもアキはどうでもいいとばかりに無視を決め込む。今、アキはビルの屋上にいた。それは先のルナールと戦闘を行った場所。ワープロードのマーキングが残っている中で一番近い場所であるためアキはここに瞬間移動してきたのだった。そしてジークとハル達が接触するのを見届けたアキはまさに肩の荷が下りた気分だった。まさに嵐のような一日だった。


はあ……何で俺、こんなに疲れてんだろう? まあ身体は無傷でハル達に比べれば雲泥の差だけど体力的、精神的はもう限界突破した感じだな。ま、まあ何とか最悪の事態は避けれたわけだし、ジークもハル達と接触したし一応成功した感じか……何か色々気にしなきゃならないことが山積みのような気がするけどひとまずは……ん?


アキは知らず立ち上がる。それはあるものが目に入ったから。それは巨大な影。だがそれが何であるかをアキはすぐに気づき顔が引きつる。黒龍、間違いなくジュリアがこちらに向かって飛んできている。同時にDBの気配を感じ取る。ユグドラシルとホワイトキスの気配。


「はーい、アキ♪ 探したわよ、こんなところにいたのね♪」
「…………」


まるで遊園地の乗り物に乗っているかのような笑みを見せ手を振りながらレイナはジュリアから飛び降り、アキの元へと近づいてくる。ジェガンはそれを見ながらも無言のまま隣のビルに飛んで行ってしまう。アキはそんないきなりの事態に慌てながらも平静を装う。


「レ、レイナか……どうしたんだこんなところで……」
「あら? 忘れちゃったの? 確か今日、私とデートする約束だったはずだけど」
「そ、それは……」


アキは冷や汗を流しながらもどう言い訳したものかで詰まってしまう。本当はすぐに向かう気だったのだがルナールの襲撃、そしてジークとの連戦で全くそんな隙がなかった。もっともレイナもハル、ムジカと戦闘をしていたためどっちもどっちなのだがそれを知っているのはおかしいためアキは何か言い訳がないかと必死に頭を回転させる。そんなアキの姿をどこか楽しそうに見ながらも


「そっちも大変だったみたいね。でもジークを倒しちゃうなんて流石は『金髪の悪魔』といったところかしら?」


レイナはごく自然に、だがどこか妖艶さを見せながら告げる。その言葉を。


「―――――っ!?」


一瞬アキはレイナが何を言ったのか分からないかのように固まってしまうもののすぐに臨戦態勢に入る。

『金髪の悪魔』 その名をレイナが口にしたことによって。


え……? な、何がどうなってんの? 何でレイナがそのことを知ってるの? い、いやいやいやヤバすぎるだろ!? お、落ち着け俺!? と、とにかくいつでも動けるようにしとかねえと……!!


アキはその手にデカログスを持とうとしながらもレイナと睨みあう。既に一触即発の状況。加えて今のアキにはほとんど戦う力は残っていない。もし万全の状態ならば恐れる必要はないが今戦っても勝機は薄い。今は離れているがジェガンも近くにいる。まさに絶体絶命の状況。やっと綱渡りが終わったかと思いきやこの事態。もはやアキは精神的に死んでしまいかねない。とにかく一瞬でも隙を作り出しワープロードかイリュージョンでこの場を離脱せんとした時


「もう、そんなに怖い顔しなくてもいいじゃない。私はあなたと敵対する気はないわ」


レイナはいつもと変わらないような笑みを浮かべながらそう告げてきた。アキはそんなレイナの言葉に目をぱちくりさせるしかない。当たり前だ。金髪の悪魔といえば世界に知らない者はいない程の悪名。懸賞金も掛けられているお尋ね者。それがDCに潜り込んでいる。DCからすれば危険因子として処刑されてもおかしくない。だからこそアキはずっとそのことを隠してきた。


「……どういうつもりだ、レイナ」
「簡単な取引よ。あなたのことを見逃す代わりに私に力を貸してほしいの」
「力を貸す……?」
「そう♪ 私の探し物に付き合ってほしいの。手掛かりは見つけたんだけどまだすぐには無理そうだし……あなたならいろんな情報を持ってるんじゃないかと思って」


レイナは男が見れば間違いなく見惚れてしまうような笑みを浮かべながら提案してくる。その内容は一言でいえばレイナ個人に力を貸せというもの。そしてそれを断るのならDCに敵対するとみなして処刑するというもの。そのためにレイナは近くにジェガンを待機させている(ジェガンはそのことは知らない)。それは保険。恐らくはジークを退けたアキを警戒してのもの。六祈将軍オラシオンセイス二人がかりであれば戦闘になったとしても後れはとらないという策。もっともレイナは実際にジークとアキの戦闘は見ていないため気づいていない。もしアキが万全の状態ならどうなってしまうのかを。どちらにせよアキにはレイナを傷つける気は無いので問題はないといえばないのだが。


「それは取引じゃなくって脅迫じゃねえのか……?」
「さあ? どうなるかはあなたの答え次第ね。あなたもDCに何か狙いがあるんでしょ? だったらお互い様よ♪」
「…………」


アキはそのまま溜息を吐きながらもあきらめるしかない。自分はレイナには敵わないのだと。だがバレたのがレイナで良かったのかもしれない。もし他の連中であれば問答無用でDCと全面戦争になりかねなかったのだから。もっともここまでくればDCに属していることも大きな利点は無いのだがハル達の、DCの動きが掴みやすいのは変わらない。そしてレイナの探し物。それについてはどっちにしろ介入させてもらう気だったのだから。もっとも探し物自体ではなくレイナ自身と言った方が正しいのだが。


「……分かった。その代わり」
「分かってるわ、あなたのことは秘密にしておいてあげる♪ よかったわね、こんな綺麗なお姉さんと秘密が共有できて♪」


自分で言うな、と突っ込みたいのを必死に我慢しながらもアキはそのままレイナを見送る。どうやらそのまま本部まで帰るらしい。一緒に来るかと誘われたがアキはそれを丁重にお断りした。もうこれ以上の厄介事は御免だった。


「じゃあねアキ♪ また詳しいことは今度ね♪」


ウインクをしながらもレイナは龍に乗りながら飛び去っていく。結局ジェガンは一言も発することなく。その視線だけをアキに向けたまま。


「…………」


アキはそのまま一人佇んだまま。まるで魂が抜けてしまったかのように。そしてそのまま大の字になって屋上に床に倒れ込んでしまう。もう指一本動かせない程の疲労がアキの体を襲う。


(まじで……今日はもう勘弁してくれ……もう、俺、寝るわ……)


アキはそのまま眠りに着く。もはや気絶に等しい意識の失い方。その刹那に思い出していた。それはマザーのこと。あれだけ盛大にやりあったにも関わらず放置しっぱなしだったこと。だがもはやアキはあきらめていた。とりあえず明日になって考えよう。そんなダメ人間のような思考と共にアキは深い眠りに落ちて行くのだった――――




アキが眠りに落ちてから程なく、二人の人物がエクスペリメントへと訪れていた。子供と大人のような二人組。だがその姿はローブによって伺えない。だがそれは一般人ではなかった。


「間違いない、これは魔導精霊力エーテリオンだよ! やっと見つけた、ウン!」
「マジかよ! これでやっとこのめんどくさい任務からもおさらばできるんだな! で、そいつはどこにいるんだ?」
「もうここにはいないよ、ウン。でも大丈夫、もう魔力パターンは覚えたからいつでも追跡できる」
「じゃあさっさと見つけて攫っちまえばいいんだな。任しとけって」
「ううん、それはダメだよ。まずはルナール様が来てから。それにここはDCの支配域だし六祈将軍オラシオンセイスもいる。動くのはきっともう少し先になるよ、ウン」
「なんでえ、全員俺が眠らせちまえば簡単なのによ」
「でもまだ杖も見つかってないし、エンドレスも目覚めてない。焦る必要は無いよ、ウン」


二人はそのまま身をひそめるようにエクスペリメントの闇に消えて行く。



ダークブリングマスターの憂鬱は本人が眠っている中でもまだまだ続くことになるのだった――――


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