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No.3303の一覧
[0] コードギアス 反逆のお家再興記[0](2010/01/26 23:47)
[1] お家再興記 2話[0](2008/07/07 16:04)
[2] お家再興記 3話[0](2008/07/07 16:04)
[3] お家再興記 4話[0](2010/01/26 23:48)
[4] お家再興記 番外編 [0](2008/07/07 16:07)
[5] お家再興記 5話[0](2008/07/07 16:07)
[6] お家再興記 6話[0](2008/07/07 16:18)
[7] お家再興記 7話[0](2008/07/10 17:57)
[8] お家再興記 8話[0](2008/07/28 07:22)
[9] お家再興記 9話[0](2011/07/12 23:36)
[10] お家再興記 10話[0](2008/08/08 03:36)
[11] お家再興記 11話[0](2008/08/12 10:02)
[12] お家再興記 12話[0](2008/09/06 21:44)
[13] お家再興記 13話[0](2008/09/06 22:26)
[14] お家再興記 番外編 2上[0](2008/09/28 23:34)
[15] お家再興記 番外編 2中[0](2008/09/28 23:34)
[16] お家再興記 番外編 2後[0](2010/01/23 21:25)
[17] お家再興記 番外編 2完結[0](2010/01/23 21:24)
[18] お家再興記 14話[0](2010/01/26 23:50)
[19] お家再興記 15話[0](2013/01/28 19:16)
[20] お家再興記 16話[0](2013/01/28 19:20)
[21] お家再興記 17話[0](2013/12/06 02:00)
[22] お知らせ[0](2015/12/25 02:52)
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[3303] お家再興記 16話
Name: 0◆ea80a416 ID:e332fd4d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/01/28 19:20
放課後。
トイレの個室でテンションMAXとなっていた僕は結局最後の授業に出ることなく、そのまま校舎裏へと突撃していた。
そしてそのまま校舎裏で放課後が来るのを待ちかねていたのである。
一時間以上も校舎裏で待ちぼうけとかってどんだけー。と思うかも知れないがそんなの関係ねー!!というのが僕の実情だ。
き、緊張する。
もしかしたら今日という日で僕の人生がらりと変わるのかもしれないのだ。
今日という日を過ぎれば、僕は憧れの彼女をGETできるのかもしれない…。そう考えただけで僕の心はいてもたってもいられない。
だが、不安もある。
このラブレターに対して僕は三つの可能性を考えた。

① 本当に女の子が書いてくれた…。アクア君好き…ぽっ…GOODEND一直線。

② 唯のいたずら…。ラウンズだからって調子乗ってんじゃねぇ。ぎゃははは、悪戯のラブレターでからかってやるぜ!!ぷげらwww…ションボリEND一直線。

③ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・男が書いた…。おいどん、あんたに惚れたバイ!!どうか、おいどんの気持ち…受け取ってほしいバイ!!………アッ----!!失踪END大一直線。


………いかん、①以外悲惨なエンディングしか想像できない。
特に③何か深刻すぎて、死にたくなってくる想像だ。
だが、実は一番可能性が高いのは③だと僕は思っている。

その理由は士官学校に在籍している時の事だ。

当時、ブリタニア士官学校に在籍していたとき、僕は計12回告白された。
この言葉だけ見ると、リア充爆発しろと思うだろうが、きちんと裏がある。

あれは僕がブリタニア士官学校に入学して1ヶ月が経った頃だった。
正直、あの頃はばりばりのホームシックと爺への憎さがいい感じでミックスされていたので、家に帰りたくて仕方が無かった。
士官学校に入学する前は、僕は毎日ごろごろ食っちゃ寝していた身分なのだ。
それがいきなり、軍人の養成機関である士官学校へ叩き込まれ、そのギャップに僕のストレスは天元突破寸前であった。
とにかく早く家に帰ってニート生活を送りたい。
それだけしか思ってないかなった時である。…………あれ?今とあまり変わってない気がする。

ま、まあとにかくそんな時だった。
僕が生まれて初めてラブレターもらった時は。

可愛らしい便箋の中には1枚の手紙。
そこには可愛らしい文字で僕への愛が綴られていた。
書き主の真心が籠もった、嬉しはずかしの見事なラブレターだった。

この手紙を貰った時、僕は狂喜乱舞した。
初めてこの学校に来てよかったと思った。やるじゃん、ブリタニア士官学校と本気で思った。

浮かれる気持ちのままで急ぎ指定された場所へと向かった。
手紙には名前が乗っていなかったので、手紙を送ってくれたのは、女子科の誰かだろうかとか。もしかしたら校長の秘書のアシェリーさんだろうかとか。やべえ、禁断のラブだったらどうしよう。
手紙を送ってくれた女性の事を、想像しながらうきどきと相手を待っていた。
そしてついに待ち人は来た。

その人はとても身長の高い人だった。
当時の僕の身長が160台だったのだが、その僕を優に40センチは超す背丈だった。
そして体つきはその身長に相応しい、ゴツリという擬音が聞こえるような体躯。
その胸囲はたくましいの一言で、だきしめてーというか、だきつぶしてーなんて言葉が聞こえるかのようだ。
腕もたくましく、上腕が子供の胴体ほどあるんじゃないかと錯覚してしまう。
顔立ちは彫が深く、精悍な顔つきなのだが、なんだか非常に濃い顔立ちをしている。
統計的に非常にたくましい人だったのだ。

…………ああ、もう面倒くさい。
ぶっちゃけると男だったんだよ。男!!
しかもめっちゃごつい。北部の拳に出てても違和感ゼロなレベルのな。

最初僕は人違いだと思った。
たまたま、この場所で誰かと果し合いをしに来た人だと。
告白場所が、果し合いの場所とブッキングしてしまったんだと。

ラブレターを送った人が果し合いの現場となってしまった告白場所を見て、この場所に来るのを躊躇してしまうんじゃないか。
心配する僕に目の前の彼は言葉を発してきたのだ。

『アクア・アッシュフォード』

低いバリトンな声。地鳴りがおこったかのような錯覚が起きる。

『我、お前を欲する』

漢らし過ぎる告白。

これが僕の人生において、初めて告白された瞬間であった。
この時、僕の頭は機能停止していた。
だってそうだろう?
僕は少女との甘いひと時を過ごしに来たのだ。
顔も知らぬ見知らぬ君よ。
さあ、恥ずかしがらずに俯いた顔を上げて、僕と話をしよう。
あはは。うふふ。ぐふふ。

何て想像をしていたのだ。
それが何がトチ狂ってこんな世紀末覇者のような人物に僕は愛の告白をされているのであろうか?

『いざ行かん、我らの理想郷に』

そして何故か、知らんが気づいたら目の前の世紀末覇者に担がれてどこかへ連れ去られていた。





















その日、僕はブリタニア士官学校の真の恐ろしさをその身を持って知ったのであった。






























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………………………………………………………………………………………………………………………………………ここから先は思い出したくない。

……………………………………………でも、とりあえず貞操だけは死守したということだけは言わせてくれ。



ううう、あんまりな僕の始めての告白シリーズに涙が出てきそうだ。

そしてここまで来れば、想像が付くと思うが、他の11回の告白も全て男からだったのである。
何故だ。僕にはホモを誘うフェロモンが漂っているのだろうか。

男からの告白連続12回達成というありがたくも無い達成のため、僕にとって告白というのは一種のトラウマとなっていたのだ。

しかし!ここはアッシュフォード学園である。
男の方が圧倒的に多い、ブリタニア士官学校と違い、男女比が半々という聖地である。
このアッシュフォード学園であるのならば、僕だって女子に告白される可能性は高い!…多分!!

ああ、というか、そろそろ待ち合わせ相手が、来てもいい頃じゃないか。
やばい、あまりの緊張と不安で眩暈と動悸がやばくなってきた。
これで何かショッキングな結末となってしまったら、僕は倒れてしまうかもしれない。

も、もう男でも女でもどっちでもいいから、早く来てくれ…このままでは僕は倒れてしまう…。いや、やっぱり男は嫌だ。
と、とにかく早く来てくれることを切に願います。

ふらふらする意識を必死に繋ぎ止めていた僕であったが、ついに待ち人は来た。
それも最高の形で。




「アクア君…」




僕の目の前に現れたのは黒髪の少女。
ものすごく可愛いというわけではない、普通そうな少女だ。
しかし、ここで大事なのは女の子という事だ。
女!男ではなく女!
大事なことなので何度も言うが女!!
我が人生に春が来た!

うう…苦節16年…ついに年齢=彼女いない歴という悪しき方程式から逃れられる時がきたのか…。

脳裏に今まで駆け抜けてきた、暗い青春時代が思い浮かぶ。

美幼女と婚約して人生ウハウハかと思っていた幼少時代。

ウハウハから転げ落とされて、男色家達に囲まれた淫獄の館士官学校時代。

戦場ヴァイオレンスストーリーを毎日の日常とする軍人時代ナウ。


……………やべえ、最初の頃しかいい思い出が無い!!
何て暗黒な青春や。
もはやいつ、暗黒面に堕ちてもおかしくない暗黒っぷりだ。

だが、そんな暗黒ナウな僕にも、ついに光は照らされたのだ。
僕達はこの後、お互いの気持ちを伝えあう。
そして、始まる二人の物語。
不器用な二人の平凡なラブストーリー。
時に甘く、時に切なく、時にほろ苦い平凡な…だけど大切な物語を築いていくんだ。

「アクア君…私ね…」

目の前の僕の彼女筆頭候補である少女が何かを話そうとしている。

わかる…。
この少女が何を言おうとしているか、空気が読めない僕でも理解できる。

僕は、フッと自分でも似合わないとわかる笑みを、一生懸命浮かべる。

「何も言わなくていい…君の言いたい事はわかってるさ…」



くっせーーー!
くっせーーーにも程がある台詞だ。
まさか僕がこんな言葉を発する時が来るとは。
ふっ…恋とは怖いもんだぜw



「ううん、アクア君…。
私の口から言わせて…」


僕の言葉に首をふり、自らの言葉を発しようとする少女。

なんといじらしい。
自らの言葉で僕に愛を伝えなければ、気がすまないとは。

顔を真っ赤にし、自らの思いを健気にも伝えようとする少女に、僕は表情筋をフル活動させ、笑顔を浮かべながら言葉を待っている。


「軍に所属して…ましてはナイトオブラウンズのアクア君が、こんな事にうつつを抜かすなんてだめだっては、わかっているの…」

いや、僕は十二分にうつつを抜かしたいです。

「会でアクア君に、手を出すのを禁じられているのもわかっているの…」

会?会ってなんだ??
もしかして裏組織とかが学校でできてるのか?
どんな会なんだ。
まさか、ホモ関連の裏組織とかではないだろうな。
だったら、僕は光の如くこの学校を立ち去るぞ。

少女の言葉に疑問が激しく噴出すが、表情には出さず、ひたすら爽やかな笑顔を浮かべ続ける僕は、マジイケメンだ キリ

「それでも!!それでもこの気持ちは抑えられないの!!
始めて貴方を見た時から私のこの気持ちは!!」

少女が身を切るような大きな声で叫ぶ。
ようやく少女の独白もクライマックスを迎えたようだ。
そして僕の人生のクライマックスはもうすぐ始まるようだ。


来る。来た。来てしまったのだ。

僕の人生初となる彼女GETの瞬間が!!

うぉぉぉぉ!!。
何かうぉぉぉぉぉ!!。
もう、うぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉっぉぉぉ!

やばい、あまりの嬉しさに心がどうにかなってしまいそうだ。
自分の心がやばい。
やばいにも程があるが、物凄く嬉しい!!

「アクア君の事…!!」

少女の告白。

僕は笑みを浮かべ、それを受け入れる。

そう、受け入れいるのだ。













「アクア君の事…お姉様って呼んでもいい!?」















こいつを受け入れられる者は勇者と呼べるだろう。




















アッシュフォード学園の敷地内。
僕は今学園内をさまよっている。
自分で言うのもなんだが、肩を落とし、足取り重く、まるでとぼとぼという擬音が聞こえてきそうな歩きだと思う。

件の少女---エリーシアちゃんの告白は僕の歩みを重たくさせるには十分な内容だった。

まさかの④ タイが曲がっていてよ?マリブ様が見ておられるわ。…お姉様ぁん…はぁーキュン…マリぶてENDで来るとは思ってもいなかった。
というか、予想できるほうがおかしい。
責任者出て来い。

エリーシアちゃん曰く…。
彼女は元々ミレイ姉さんに憧れを持っていたらしい。
最初はただの憧れの先輩だった。
しかし、時が経つにつれ、憧れの先輩から恋する相手へと変わっていったらしい。
勿論、彼女は悩んだ。
自分は女で、恋する相手も女。
世間では許されない恋だとは理解している。
でも、自分の気持ちに嘘は付けない。
でも、どうすればいいんだろう…?

悩む彼女は、このままではいけないと、気晴らしにあるイベントを見に行く。
たまたま、アッシュフォード学園で行われた行事。


しかし、そこで彼女は運命と出会うのであった。


彼女は見た。
彼女は見ていた。
彼女は見てしまった。

白い青みがかかった髪をひるがえし、愛する人と誓いを立てるための衣装を着た、一人の可憐な………男を。
つまりは僕だ。
僕なんだよ、ちくしょう。

ナイトオブセブン歓迎会。
つまりはあのトラウマの女装大会である。
そこで彼女は、女装した僕を見て、ある事を思った。


元々愛しの相手はミレイ姉さんである。
だが、自分の性別は女であり、ミレイ姉さんも勿論女。
世間的にも論理的にも許される恋ではない。
だが、僕ならばどうだ?

僕は男だ。
あんな格好をしたが普通の男なのだ。

女であるエリーシアと男である僕が付き合えば何も問題ない。

しかも将来、僕と結婚することができれば、ミレイ姉さんは本当にエリーシアの義姉となるのだ。
堂々とミレイお姉様と呼べるのだ。

女装させた僕と付き合い、ミレイ姉さんを本当のお姉様と呼べる。
そんな一石二鳥の策をエリーシアは思いつき、実現しようとしたのである。



エリーシア…何て恐ろしい娘!!
恐ろしいにも程がある娘!!
大事なことなんで二回言いました!!
ちくしょー。


あまりのショックに、告白の返事を保留させてもらったが、これはもう色々と駄目であろう。

あそこでエリーシアの告白を受け入れた時、僕の学園生活は終わりを迎え、新たな学園生活が始まる。
例えるならば、おとぶくの世界へと突入してしまう。
そう、女装男児という新たな世界を広げたおとぶくの様に…。
おとぶく…案外いいかもしれない。

…………て、は!?
いかんいかん、何度僕はインモラルな世界に突入しようとしているんだ。
いい加減学べ、僕よ。
身内が経営している学園でおとぶくの世界なんて、繰り広げるなんてどんだけ勇者なのだ。
いかに、女の子と付きあるシチュエーションだからって、これはいかんだろう。
ここは心を鬼にして断るべき…でも、この機会を逃せば二度と訪れない機会なんだよなぁ。
うう、僕はどうすりゃいいんだ。


頭を抱えながら学園を彷徨う僕。

よし、どうなるかわからんが、とりあえず女子制服だけは用意しておこう。

うん、と決断を決めた僕はクラブハウスの近くに来ていた。
どうやら、考え事をしている間に気づいたらクラブハウスに来ていたようだ。
とりあえず、家に帰ろうかと思った矢先、僕の目にある信じられない物が飛び込んできた。

それはピザのデリバリーサービスであった。
ピザ屋の店員がピザを届けに来ているのだ。
それはいい、どうでもいい。
問題はそのピザを受け取っている少女だ。

僕の視線は少女に釘付けになっていた。



馬鹿な…。何故彼女がここに…!?




腰を超える長い緑色の髪を持ち、特徴的な白い拘束衣のような服装。
凛とした表情を持つ少女だった。

少女は自分を凝視している僕に気づくことなく、ピザを受けとり、クラブハウスの中に入っていった。
それを呆然と見送る僕。
自然と唾を飲み込む。
それほど彼女は信じられない存在だったのだ。


今見たものが信じられない、信じられない。
そう、彼女は、彼女は。











コスプレイヤーだ!!!!






そう、彼女こそは間違うことなくコスプレイヤーである!!

その現実を受け入れた時、僕の心は歓喜と興奮でいっぱいになった。

うぉぉぉ!アキバが無くなって絶望していたが、まだ日本にはオタ文化を受け継ぐ勇者達が存在していたのだな!!
あの白い服装!あんなものはお世辞には普段着とは言えない!しかしあえてそれを普段着にするとは、正しく真のコスプレイヤーだ!!
あれは何のコスプレだろ!?何かうちの軍の囚人に使う拘束衣に似ているけど、何かのアニメや漫画に出てくるコスチュームなのだろうか。
ふ、世界いは広いな。この僕にも知らないコスチュームがあるとは…。日本最高wwww
感動した!僕は本当に感動した!日本マジ最高wwwwww


こうはしていられない、彼女とアポイントを取らなければ!
きっと彼女の他にコスプレ仲間はいるはずだ。
彼女をきっかけとして、僕も輪に加えてもらおう。


彼女を後を追うように、クラブハウスへと入ろうとする。
が、そこまで来て気づいた。
いきなり声をかけては彼女に警戒されるかもしれない。
せっかく見つけたコスプレイヤーを警戒させるのはよくないな。
とりあえず、彼女の部屋を知って、あとから行動を起こしたほうがいいか…。
そ、それにいきなり声をかけるなんて恥ずかしいし…モジモジ。

ふふふ。
僕は目標を前にしても氷の心を思い出せる男なのだよ。
ならば、僕がすべきことは一つ。


クラブハウスの何に音も無く、侵入した僕は瞼を閉じて自然体を取る。

視覚が消えた気がする。多分。
触覚が消えた気がする。きっと。
嗅覚が消えた気がする。恐らく。
味覚が消えた気がする。だといいな。

だがそれでいい。
五感の内、四感が消えた代わりに、残った一感―――聴覚が冴え渡るのを感じる。


達人でもなんでもない僕が、このような芸当が出来るとは…常々思う。やはり萌えは偉大だ。
萌えに不可能は無い。
僕はそれを今再び感じている。


今の僕には普段聞こえない音も、逃すことなく聞こえている。
そしてそんな超人と化している僕の聴力が捉えているのは、彼女の足音だ。

……彼女は今5歩北に歩いて右に曲がり、そのまま10歩直進して、ドアを開けた。

そこから、動く気配は伝わらない。
つまりはそこが彼女の部屋!!!!

くわっ!と閉じていた瞼を開く。
ふふふふふ!これで彼女の部屋はわかった!
何かストーカーっぽい気もするが萌えの前では全てが許される!!
だから、通報はしないでくださいね!

心の中がハイテンションになっているのがよくわかる僕の心情だ。

よし、あとは彼女の部屋をこの目で確認するのみ!!

部屋に入ってからは動くような音や気配は無かった。
おそらく部屋でくつろいでいるのだろう。
ならば部屋の前に行っても、気づかれる心配はないであろう。
これで彼女の部屋を確認できる。

ふふふ、と表情は無表情ながらも、心の中で笑みを浮かべながら、足音が示した部屋の前へと辿り着く僕。

ここが、彼女の部屋!!

目の前の扉の向こうには彼女の部屋が広がっている。
その部屋の中には、まだ見ぬコスプレがいっぱいなのだろうか。
そう思うと、心が浮つくのを感じる。

だが、ここは我慢だ、アクアよ。
まず彼女の部屋は確認できた。
ここは一度自分の部屋へと引き返し、彼女とコンタクトを取る方法を考えよう。
そしてコスプレの輪を広げようではないか!!
夢が広がりまくり!

自分の完璧な計画に思わず笑みが浮かびそうになる。

このときの僕は浮かれていた。
だから僕に近づいてきている気配に気付く事ができなかった。



「アクア様?」

「うぉぉあい!?」

僕に呼びかける声。
それに対して、変な声を上げる僕。
背後から呼ばれる声にマジでびびッた。
心臓がめっちゃ鳴ってしまった。
これが漫画だったら、口からハートが出ているような勢いだ。

慌てて後ろを振り向くと、そこには一人の女性がいた。
黒い髪に黒い瞳を持ち、温和そうな顔立ちをしている。
典型的な日本人の容姿をしている女性は、メイド服を着ている。

そしてそんな彼女を僕は知っている。


「咲世子さん」

「はい、アクア様」


僕の言葉に頷く咲世子さん。

咲世子。
篠崎 咲世子は元はアッシュフォードに使えるメイドだったが、今はルルーシュやナナリーの世話を担当している女性だ。
僕が軍人になってから雇われたので、僕にとっては馴染みは浅い女性である。

「このような場所でどうしたのですか?」

「い、いや、何というか」

僕を見て不思議そうに尋ねてくる咲世子さん。

それに対して返答をうまく返せない僕。

しかし、まずいことになった。
まさか、彼女に僕がコスプレ少女をストーキングしている現場を見られるとは!!
彼女にその事がばれれば、彼女を通じて、雇い主のクソ爺や姉さん、ルルーシュやナナリーにまで僕のストーキング行為が伝わってしまう。
な、何とかしなければ。
だけど、こんな時に限って僕の口は旨く回ってくれない。
余計な時には、憎たらしい程によく回る口だというのに、何と使えない口なのだ。
ファックマウス!!
ああ、ストーカーと呼ばれる僕の未来が近づいてきた気がする・!?

「ああ、もしかしてルルーシュ様に用があるのですか?」

そんな窮地の僕を救ったのは、僕を窮地へと叩き込んだ張本人である咲世子さんであった。
何を勘違いしたのか、僕がルルーシュへと用があったと思ったようだ。
これに乗らない手はない。

「あ、ああ、そうなんだ。
ルルーシュに用事があったんだよ」

実際はルルーシュに用何てないが、ここはルルーシュに用事があるという事で行くしかないだろ!常考!

僕の言葉に対して、咲世子さんは顔を曇らせながら返答をしてきた。







「まあ、そうだったのですか。だからルルーシュ様の部屋の前に居られたのですね。
しかし申し訳ございませんが、ルルーシュ様はまだご帰宅されていないのですが…」




そしてそれは爆弾だった。




「はい?」

彼女の言葉が信じられなくて思わず問い返す。
彼女の言葉は僕には見逃せないキーワードがあったのだ。
そんな僕の態度を見て、再び彼女は言葉を発してきた。





「ですから、ルルーシュ様はまだご帰宅されていないと」

「いや、そこじゃなくてもっと前」

「?ルルーシュ様の部屋の前で?」

「ルルーシュの部屋の前?」

「ええ」

「この部屋ってルルーシュの部屋?」

「ええ、ルルーシュ様の部屋です」

「……………………本当に?」

「はい」






その言葉に僕は目の前の扉を見る。
何も変哲もない扉。
しかしその先にはコスプレ少女の部屋へと繋がる無限の可能性を秘めた扉である。
そう、無限の可能性を秘めた扉のはずであったのだ。







「本当の本当にルルーシュの部屋?」


「本当の本当に、そうです」







どういうこっちゃい、こりゃ。



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