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No.31760の一覧
[0] なでしこっ! (いぬかみっ!二次創作)[闘牙王](2012/05/06 11:39)
[1] 第一話 「啓太となでしこ」 前編[闘牙王](2012/02/29 03:14)
[2] 第二話 「啓太となでしこ」 後編[闘牙王](2012/02/29 18:22)
[3] 第三話 「啓太のある夕刻」[闘牙王](2012/03/03 18:36)
[4] 第零話 「ボーイ・ミーツ・ドッグ」 前編[闘牙王](2012/03/04 08:24)
[5] 第零話 「ボーイ・ミーツ・ドッグ」 後編[闘牙王](2012/03/04 17:58)
[6] 第四話 「犬寺狂死曲」[闘牙王](2012/03/08 08:29)
[7] 第五話 「小さな犬神の冒険」 前編[闘牙王](2012/03/09 18:17)
[8] 第六話 「小さな犬神の冒険」 中編[闘牙王](2012/03/16 19:36)
[9] 第七話 「小さな犬神の冒険」 後編[闘牙王](2012/03/19 21:11)
[10] 第八話 「なでしこのある一日」[闘牙王](2012/03/21 12:06)
[11] 第零話 「ドッグ・ミーツ・ボーイ」 前編[闘牙王](2012/03/23 19:19)
[12] 第零話 「ドッグ・ミーツ・ボーイ」 後編[闘牙王](2012/03/24 08:20)
[13] 第九話 「SNOW WHITE」 前編[闘牙王](2012/03/27 08:52)
[14] 第十話 「SNOW WHITE」 中編[闘牙王](2012/03/29 08:40)
[15] 第十一話 「SNOW WHITE」 後編[闘牙王](2012/04/02 17:34)
[16] 第十二話 「しゃっふる」 前編[闘牙王](2012/04/04 09:01)
[17] 第十三話 「しゃっふる」 中編[闘牙王](2012/04/09 13:21)
[18] 第十四話 「しゃっふる」 後編[闘牙王](2012/04/10 22:01)
[19] 第十五話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 前編[闘牙王](2012/04/13 14:51)
[20] 第十六話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 中編[闘牙王](2012/04/17 09:57)
[21] 第十七話 「落ちこぼれの犬神使いの奮闘記」 後編[闘牙王](2012/04/19 22:55)
[22] 第十八話 「結び目の呪い」[闘牙王](2012/04/20 09:48)
[23] 第十九話 「時が止まった少女」[闘牙王](2012/04/24 17:31)
[24] 第二十話 「絶望の宴」[闘牙王](2012/04/25 21:39)
[25] 第二十一話 「破邪顕正」[闘牙王](2012/04/26 20:24)
[26] 第二十二話 「けいたっ!」[闘牙王](2012/04/29 09:43)
[27] 第二十三話 「なでしこっ!」[闘牙王](2012/05/01 19:30)
[28] 最終話 「いぬかみっ!」[闘牙王](2012/05/01 18:52)
[29] 【第二部】 第一話 「なでしこショック」[闘牙王](2012/05/04 14:48)
[30] 【第二部】 第二話 「たゆねパニック」[闘牙王](2012/05/07 09:16)
[31] 【第二部】 第三話 「いまさよアタック」[闘牙王](2012/05/10 17:35)
[32] 【第二部】 第四話 「ともはねアダルト」[闘牙王](2012/05/13 18:54)
[33] 【第二部】 第五話 「けいたデスティニー」[闘牙王](2012/05/16 11:51)
[34] 【第二部】 第六話 「りすたーと」[闘牙王](2012/05/18 15:43)
[41] 【第二部】 第七話 「ごきょうやアンニュイ」[闘牙王](2012/05/27 11:04)
[42] 【第二部】 第八話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 前編[闘牙王](2012/05/27 11:21)
[43] 【第二部】 第九話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 中編[闘牙王](2012/05/28 06:25)
[44] 【第二部】 第十話 「ボーイ・ミーツ・フォックス」 後編[闘牙王](2012/06/05 06:13)
[45] 【第二部】 第十一話 「川平家の新たな日常」 〈表〉[闘牙王](2012/06/10 00:17)
[46] 【第二部】 第十二話 「川平家の新たな日常」 〈裏〉[闘牙王](2012/06/10 12:33)
[47] 【第二部】 第十三話 「どっぐ ばーさす ふぉっくす」[闘牙王](2012/06/11 14:36)
[48] 【第二部】 第十四話 「啓太と薫」 前編[闘牙王](2012/06/13 19:40)
[49] 【第二部】 第十五話 「啓太と薫」 後編[闘牙王](2012/06/28 15:49)
[50] 【第二部】 第十六話 「カウントダウン」 前編[闘牙王](2012/07/06 01:40)
[51] 【第二部】 第十七話 「カウントダウン」 後編[闘牙王](2012/09/17 06:04)
[52] 【第二部】 第十八話 「妖狐と犬神」 前編[闘牙王](2012/09/21 18:53)
[53] 【第二部】 第十九話 「妖狐と犬神」 中編[闘牙王](2012/10/09 04:44)
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[31760] 第十一話 「SNOW WHITE」 後編
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/04/02 17:34
「ん……」

俺は、ふと気づく。誰かが体を揺すっている。同時に俺を呼ぶ声が聞こえてくる。だがいつの間にか眠ってしまっていたのか頭がまだはっきりしない。よほど深い眠りだったらしい。このままでは学校に遅れてしまう。しかしこの睡魔には抗えない。

「うーん、なでしこ……もうちょっと……」

そう言いながら俺は自然に、甘えるような形で俺を起こそうとしているなでしこに手を伸ばす。それは俺の朝の密かな楽しみ。寝起きという状態を言い訳にし、毎朝俺はなでしことスキンシップをとっている。決してセクハラではない。その証拠になでしこも嫌がる様子を見せていない。もっとも恥ずかしいのか顔は赤くするのだがそれがさらにいい。だが

「………ん?」

そのさわり心地がいつもと違う。そのやわらかい、絹の様な触り心地ではない。それはどこかごつごつとした、たくましさすら感じさせるもの。なんだこれ? なでしこの奴、いつの間にこんなに鍛えたんだ? でも俺はこの感覚を知っているこれはたしか……

啓太はふとその眼を開ける。目の前には

「おお、川平、目が覚めたか!」


パンツ一丁でネクタイと靴下だけを身につけているほぼ全裸の仮名史郎の姿があった。


「ぎゃあああああっ!!」

啓太は絶叫する。当たり前だ。いつも通りの朝、なでしこが自分を起こそうとしているとばかり思っていたのに目を覚ませば目の前に、目と鼻の先に仮名がいたのだから。しかもその格好が尋常ではない。ほぼ全裸に近い格好、いやむしろ全裸の方がまだマシなのではないかと思えるような姿。倒れているだけでも凄まじかったそれが動いていることでさらにそのヘンタイさが増している。まさに悪夢の様な光景がそこにはあった。

「ど、どうした川平!? どこか怪我でもしているのか!?」
「く、来るな! 近づくんじゃねえええ!」
「大丈夫だ、川平! いきなりのことで混乱しているのは分かるがまずは私の話を」
「か、仮名さんっ! ここはわたしに任せてくださいっ!」

仮名は尋常ではない様子を見せている啓太を心配し、落ち着かせようとするも啓太はさらに叫びを上げながら逃げ回っている。仮名はその原因が自分であることに気づかずさらに啓太に近づこうとするためまるでいたちごっこの様な状態。それを見かねたなでしこが慌てながら二人の仲裁に入ることでやっと啓太は落ち着きを取り戻すのだった―――――



「……で、一体何がどうなってんだ?」

何とか落ち着きを取り戻した啓太は改めて仮名にそう尋ねる。その場には仮名となでしこだけでなく、フラノ達もいる。しかし明らかに異常なことがある。それは仮名の恰好……ではなく、今、啓太達がいる場所。それは全く見覚えがない場所。しかもどこか西欧風な建物があちこちにある。中世のヨーロッパのような光景だ。だが辺りには自分たち以外誰もいない。どこか現実感がない不思議な空間だった。

「ふむ、どこから話したものか……君は私が持っていた魔道書を見つけたのだろう?」
「魔道書……ああ、あれか!」
「その力のせいで私たちはあの魔道書の中に取り込まれてしまったのだ」
「マ、マジで!?」

驚きながら啓太はなでしこ達の方へ視線を向けるもなでしこたちもそれに頷き返すしかない。それが何よりの証。同時に啓太は思い出す。なでしこが魔道書を見つけた後、それをどうするかで話し合いをしていたのだが結局その本を開けてみるしかないという結論に達したこと。そこでまたひと悶着あったのだが結局事故に近い形でそれが開かれ啓太達は意識を失ってしまったのだった。

「マジだ。これは魔道書というよりは絵本に近い物でな。開いた者をおとぎ話の世界へと取り込んでしまう危険な代物だ。どうやら私たちはシンデレラの世界に取り込まれてしまったらしい」
「そんな危ないもん誰が作ったんだよ!? っていうか何でそんなもん仮名さんがもってるわけ!?」
「うむ……非常に言いづらいのだがこの魔道書……以前、君に手伝ってもらったものも全て私の先祖が作ったものでな……。優れた魔導師だったのだが……その、ヘンタイだったらしく、そいつが作った迷惑な魔道具を封印することが私の仕事の一つなのだ……」

「そっか……仮名さんは先祖の頃からヘンタイだったんだな……」
「ちょ、ちょっと待て川平っ!? 確かに私の祖先はヘンタイだが私は決してヘンタイではないっ!」

啓太の聞き捨てならない言葉に仮名は慌てながら抗議するものの、その格好から説得力は皆無。啓太となでしこはもちろん、ちゃっかり距離を取っているごきょうや達もその心境は同じらしく、どこか冷たい、軽蔑の視線が仮名に向けられている。仮名はそれを前に冷や汗を流すことしかできない。間違いなく現実なら通報されるような姿だ。

「ご、誤解するな、これは私の仕業ではない! 目が覚めた時には何故かこの格好だったのだ!」
「分かった、分かったからそれ以上近づかないでくれ!」
「す、すまない、つい取り乱してしまった……しかし何故私だけ……? 君たちは普通の恰好をしているというのに……」
「さ、さあな……魔道書のイタズラなんじゃねえ……?」
「え? それはフラノ達が」
「き、きっとそうでしょう……! それで仮名様、何故この魔道書を封印するには人手が必要なのですか!?」
「そ、そうだ! そもそも何で俺ん家で死んでたんだよっ!?」

フラノの言葉を遮るようにごきょうやが矢継ぎ早に仮名に尋ねる。そんなごきょうやのファインプレーに啓太は心の中でサムズアップしながら強引に話題を変えることにする。

「それがこの魔道書の厄介なところでな、四人以上の人数が集まらないとおとぎ話が始まらない仕組みになっているんだ」

仮名はそのまま事態を皆に説明していく。この魔道書を封印するには取り込まれた四人以上の者たちがおとぎ話を演じなければならないこと。それができなければ魂を奪われてしまうこと。仮名は偶発的に啓太の部屋で本を開いてしまい、魂を奪われたままになってしまっていたこと。

「何のためにこんなもん作ったんだよ……」
「どうやら大人数で遊べるものを作ったものの四人以上の友人がおらずそのまま廃棄されてしまったらしい」
「あっそ……」

もはや突っ込む気力すら湧かない。色々な意味で。だがともかく今はこの状況を何とかしなければ。このまま魂を奪われたままなんて怖すぎる。白目をむいていた仮名を見ているから尚のこと。

「あんま気が進ねえけど……やるしかねえか……」

そうあきらめと共に啓太が呟いた瞬間、目の前に先程の魔道書が現れる。どうやら啓太達の準備が整ったと判断したらしい。そして再び魔道書が開き辺りは光に包まれていく。こうして啓太達はヘンタイ魔導師が作り出した迷惑な魔道書を封印するため、おとぎ話を演じることになったのだった………



「ん………」

目をこすりながら啓太は意識を取り戻す。どうやら光は収まったらしい。だが一体演じるといっても何をすればいいのか。確か仮名さんはシンデレラの世界だと言ってたな……となると王子様役とか……まあそれならいいか。結構役得かもしれん。だがそんな啓太の淡い期待は一瞬で粉々に砕かれる。何故なら


「なんじゃこりゃあああっ!?」

啓太は紛うことなき女性の服装をしていたから。長いロングスカートのどこかみすぼらしさを感じさせる服装。間違いなく主人公であるシンデレラの恰好だった。


「ふざけんなっ! おい、出てこい魔道書っ!」

憤慨しながら啓太は辺りに巻き散らすも、魔道書は一向に姿を現さない。周りはどこかの室内。恐らくはシンデレラの家なのだろう。っとそんなことはおいといて……くそっ、何でよりによってシンデレラ役なんだよ!? 女性が四人もいるのに何故わざわざ男の俺が……間違いない、これは確信犯だ! 流石は仮名さんの先祖といったところかもしれない。普通のシンデレラの話を演じるとばかり思っていたのが大きな間違いだったらしい。ここからは気を引き締めて行かなければ……。しかしまさか女装をさせられる羽目になるとは。だがまだ服を脱がされるよりは良かったかもしれないな………


ん? いやちょっと待て。俺、今何か変なこと考えてなかった? お、おかしいだろう? 女装だぞ、間違いなくヘンタイな行為のはず。でもそれがマシだと俺はさっき本気で安堵してた。な、何かがおかしい……俺はヘンタイじゃないはず! それなのに何故っ!?


啓太は知らず知らず自分の価値観が、常識がおかしくなってしまっていることに気づき自己嫌悪に陥って行く。全裸よりマシという、つまり全裸になることが日常、当たり前になりつつあることに今更ながら恐怖を感じつつあったその時


「啓太様、大丈夫ですか~?」

そんなどこか気の抜けるような、陽気な声が啓太に掛けられる。頭を抱えながら蹲っていた啓太は何とか自分を落ち着かせながらも振り返るものの目を見開きその動きを止めてしまう。まるで信じられないものを見てしまったかのように。そこには


何故か黒のボンテージ姿になっているフラノの姿があった。


「ぶっ!? お、お前、なんて格好してんだよっ!?」
「これがわたしたちの衣装みたいなんです~。何でも継母役らしいですよ。お気に召しませんでしたか~?」
「い、いや、そんなことはねえんだが……」

どこかしどろもどろになりながらも啓太はその姿に目を釘付けになってしまう。小柄な体からは想像もできないような見事なスタイル。胸の大きさはなでしこには及ばないものの間違いなく巨乳。そのめちゃくちゃな言動ですっかり忘れてしまっていたが間違いなくフラノは美少女。そんな少女が何故かSMプレイに使われるようなボンテージを身に纏っているのだ。男としてそれに見惚れないわけにはいかない! し、しかしその破壊力が強すぎる……なでしこの裸エプロンには及ばないものの俺の理性を崩壊させかねない。こ、ここは一旦距離を取らなければ……!

「? どうしたんですか、啓太様? 具合でも悪いんですか~?」
「ば、馬鹿っ!? くっついてくるんじゃねえっ!?」

だがそんな啓太の動揺に気づくことなくフラノはそのあられのない姿で啓太にくっついてくる。その感触と扇情的な格好によって啓太の理性はまさに決壊寸前。啓太の中の本能が、煩悩が騒ぎ始める。なでしことの四年間の生活によって抑えてきたそれがまさに解き放たれんとしている。このままではこれまで築き上げてきたものが無くなってしまいかねない気配を感じ取り、啓太は脱兎のごとくフラノから距離を取る。予想外の行動だったからなのか、フラノはどこかぽかんとそんな啓太を見つめているだけ。だがようやく事情を悟ったのかにこにこといつも以上の笑みを浮かべる。

「そうですか、案外初心なんですね~啓太様♪」
「や、やかましいっ! お前こそちょっとは恥じらいを持てよ!?」
「大丈夫ですよ~フラノは十八禁きゃらですから♪ 他のおぼこな子たちとは違いますよ♪」
「だからその十八禁きゃらってのは何なんだよ!?」
「そのままの意味ですよ? フラノはあだるとなきゃらですから♪」

そんな噛み合わないやり取りをしながらも何とか啓太は落ち着きを取り戻す。だが何かをしでかしかねないフラノに油断することはできない。短い付き合いだがそれぐらいは理解できた。

しかし何でこんな恰好してんだ? いや、女装している俺が言えることではないかもしれんが……。しかも継母役で何故ボンテージ? ん、待てよ? さっきフラノが何か変なことを言っていたような……

違和感を覚えた瞬間、啓太はようやく気づく。フラノばかりに気を取られていたため気づなかったがその後ろにも人影がある。そこにはフラノ同様、ボンテージを纏ったてんそうとごきょうやの姿があった。

「お、お前達もかっ!?」
「はい……わたしたちも継母役」
「そ、そうか……でも、その……お前、恥ずかしくねえのか……?」
「……いえ、特には」

いつもまったく変わらないぼーっとしているてんそうに啓太は尋ねるもどうやら本当に恥ずかしがっていないらしい。へ、変な奴だとは思っていたがどうやら俺の想像を遥かに超えているらしい。スタイルはフラノに比べれば劣るものの間違いなく魅力的なもの。だがその雰囲気のおかげでまったくエロさが感じられない。ある意味凄いことなのかもしれない。だがそれとはまったく真逆の姿と雰囲気を持つ少女が隣にはいた。

「け、啓太様、こちらをあまり見ないでください……」

ごきょうやは恥ずかしさで顔を赤くしながらその両手で自らの露出した肌を隠そうとしている。だがそのすべてを隠しきることができずその白い肌があらわになっている。それは普段のクールな姿からは想像もできないようなもの。その破壊力は間違いなく先程のフラノを上回っていた。


や、やばい……! これがギャップ萌えというやつなのかっ!? さっきフラノに恥じらいを持てと言ったがそれは大きな間違いだったのかもしれん……いや、むしろ恥じらいを持っていた方がこの場合やばいのでは!? い、いかん、本当なら飛びついていきたいところなのだがなでしこや仮名さんがいるであろうこの状況ではそれもできない! 落ち着け、とりあえず素数を数えるんだ……え、えっと……素数っていくつだっけ……?


そんな訳が分からない思考をしている中。啓太は気づく。フラノ達三人が何かをその手に持っていることに。それが何なのか知っているものの、啓太は恐る恐るあえて尋ねる。

「フラノ……それって……」

「はい、鞭ですよ、啓太様♪」

そう、紛うことなき鞭だった。間違いなくそういうことに使われるであろう鞭だった。啓太の背中が冷や汗で濡れていく。それはこれから自らの身に起こることを本能で悟ったから。

「何でそんなもん持ってんだっ!?」
「そう言われましても~そういう台本になってるので~」
「台本っ!? ちょっとそれ見せてみろっ!?」

啓太はどこか必死さを見せながらいつの間にかフラノが持っていた台本を奪い取る。そんな物があるならさっさと言えっつうの! っていうか何で俺には台本がないわけ!? そんな疑問を抱きながらもページを開いた先には


『シンデレラが鞭でいじめられる』


そう一言だけ書かれているだけだった。


「ふざけんなあああっ!! どういうシンデレラなんだよっ!?」

啓太はそのまま叫びながら台本を床に叩きつける。ふざけんなよっ!? どこの世界にSMプレイのごとくいじめられるシンデレラがいるわけっ!? 子供が読んだらトラウマになるわっ! っていうか台本適当すぎるだろ! やっつけ感が半端ないですけど! だがどうやらこの指示通りに動かないと物語が進行しないらしい。それはつまり

「じゃあ啓太様、準備はいいですか~♪」
「……御覚悟」

フラノは満面の笑みを浮かべながら鞭をまるでバットの素振りのように振り回している。その勢いによってヒュンヒュンと風切り音が聞こえてくる。やる気満々だった。てんそうはいつもと変わらない姿を見せながらもその鞭をまるで機械のように動かしている。

「………申し訳ありません、啓太様」

最後の希望であったごきょうやも目を閉じ、あきらめたようにその手に鞭を持つ。もはや逃げ場はどこにもなかった。

「いやあああああああっ!!」

辺りには啓太の悲鳴と何かを叩くような乾いた音が響き渡るのだった―――――




「ち、ちくしょう……何で俺がこんな目に……」
「だ、大丈夫ですか、啓太様……?」
「あ、でも条件はクリアできたみたいですよ♪」

まるで何か大切なものを失ってしまったかのようにその場にうずくまっている啓太をごきょうやは心配そうに介抱している中、フラノとてんそうはマイペースに騒いでいる。どうやら条件はクリアできたようだ。もしできていなければ啓太の犠牲は全くの無意味になってしまうのだがそれだけは避けられたらしい。一部の者たちにとっては御褒美とも言えるようなシチュエーションだったのだが流石に啓太でもハードルが高すぎたらしい。

だが啓太はそんな心のダメージを振り払いながら立ち上がる。もはやもう恐れるものは何もないと、そう開き直るかのように。それはまさに戦いに挑まんとする男の姿。もっとも端から見れば鞭に叩かれた痕を無数につけた女装姿の危ない男だったのだが。そんな中、

「あ、あの……」

そんなかすれるような少女の声が啓太達に掛けられる。そこにはどこかもじもじした様子を見せているなでしこの姿があった。だがその姿に啓太はもちろんフラノ達も目を奪われたまま。

そこにはまるで魔女の様な帽子をかぶり、なぜか黒のビキニを着たなでしこが立っていた。


「なでしこ……お、お前一体……」
「そ、その……これが魔女の恰好らしくて……」

啓太の言葉になでしこは顔を真っ赤にし涙目になりながら俯いてしまう。だが啓太はそんななでしこの恰好に目を奪われたまま。どうやら水着のサイズが小さすぎるせいか今にもその巨乳がこぼれかねないような状態。しかもその表情がさらに啓太の本能を刺激する。いつもの割烹着を着ている姿からは想像できない程のスタイル。間違いなくかつての裸エプロンに匹敵しかねない桃源郷がそこにはあった。これだけに関しては魔道書に感謝せねばなるまい。思わず出そうになる鼻血を抑えながらも啓太は何とか踏み留まる。身内フィルターを全開にしてもこれには長時間耐えれない。早く何とかしなければ……!

「と、とにかくなでしこ……お前も何か役目があるんだろ?」
「あ、は、はい! わたしはシンデレラに魔法をかけるのが役目みたいです!」
「そうか、ならちゃっちゃとやっちゃってくれ!」
「わ、分かりましたっ!」

一刻も早くこの状況を何とかしたかったのはなでしこも同じだったのかすぐさまなでしこはその手に持っていたどこかで見たことがあるような不思議ステッキをふる。するとそのスッテキからまばゆい光が生まれ啓太を包み込んでいく。どうやら演出らしい。だがそこで啓太は思い出す。

それはシンデレラのストーリー。その中ではシンデレラは綺麗なドレスとカボチャの馬車をもらっていた。だがこのふざけた世界の中でそんな普通の事態が起こるはずがない。啓太は悟る。自分がどんな目に会うのかを。それはまさに直感と言ってもいい物。何度も同じ目に会っているからこそ。その光が収まった先には


「やっぱりか、ちくしょおおおおっ!?」


全裸を晒している啓太の姿があった。


啓太は慌てながらも両手で自らの象さんを隠す。まさに神業と言ってもいい手際を以てそれを成し遂げる。だがそれを前にしてフラノは爆笑し、てんそうはいつもと変わらない姿、ごきょうやは顔を赤くしながら目をそらす。なでしこは赤面しながらもどこかあきらめたような表情を見せている。もはや何かを悟ってしまっているかのように。

「何で全裸にされなきゃならんのだっ!? さっきよりひどい格好になってるじゃねえかっ!?」

啓太はここにはいない魔道書、いやその創造主に向かって慟哭する。もはやシンデレラのストーリーなどどこかに置き去られてしまっているようなむちゃくちゃな展開に叫ぶことしかできない。そんな啓太の元にどこからか一枚の紙が落ちてくる。そこには


『気にすることはない。人は皆、プライドという名の服を着ているのだから』


そんな一文が添えられていた。


「てめえの流儀に人を巻き込むんじゃねえええっ! いいから着る物をよこせっ!」

紙を破り捨てながら啓太は叫びを上げる。何がプライドという名の服を着ているだ!? 結局全裸なのには変わりねえじゃねえか!? これじゃあシンデレラじゃなくて裸の王様だっつーの! いや、そっちの方がまだましだ!

そんな啓太の姿を見かねたのかどこからか服が現れる。どうやらそれぐらいの慈悲はあったらしい。安堵しながら啓太はそれを手にするもそのまま固まってしまう。そこには


間違いなく、自分がなでしこに贈ったエプロンドレスがあった。


「………」
「………」

それを手にしながら啓太は無言でなでしこへと視線を向ける。なでしこも無言でそれに視線を返している。啓太は何度かなでしことエプロンを交互に見つめた後、再びなでしこに目を向ける。なでしこは目を閉じ、顔を赤くしながらどこか観念したように頷く。


その瞬間、啓太の裸エプロン、まさに誰得のシチュエーションが完成したのだった………




「啓太様~早く付いてこないと置いていきますよ~」
「早く、啓太様」

「うるせえ! いいからさっさと先に行け!」

フラノとてんそうの言葉に言い返しながら啓太は距離を置き、なでしこたちの後ろから付いて歩いて行く。今、啓太達はお城へと向かっているところ。どうやらそこがゴールらしい。そこで誰が待ち構えているかは想像に難くないがあえて触れまい。そして啓太がフラノ達から遅れて着いて行っているのはその姿、裸エプロンのせい。まさか男である自分が裸エプロンをするとは夢にも思わなかった。いくらなでしこにさせてしまった罰だとしてもひどすぎる。映像化できないほどの有様だ。それ故に啓太は前を歩くことができない。そんなことをしてしまえばその後ろから見えてはいけない色々な物がなでしこ達から見えてしまう。それだけは絶対御免だった。啓太はまるでどこかの殺し屋のごとく背中を見せまいという絶対の覚悟を以て歩いている。それが分かっているからこそなでしことごきょうやも何も言うことができない。そんなこんなでようやく啓太達は城へとたどり着く。そしてその中には


何故か死んでしまっているかのようにベッドに横になっている仮名史郎の姿があった。


「またか―――――っ!?」


啓太は絶叫する。間違いなくその場にいる全員の心の声だった。しかもその格好も出会った時のまま。裸にパンツ一丁、ネクタイと靴下のみというもの。もはや悪意しか感じられない。恐らくは王子様役のはずなのにこの有様。そしてその傍らにはどこか禍々しいリンゴの食べかけがある。どっからどう見ても毒リンゴだった。


「ちょっと待てっ!? これじゃあ白雪姫じゃねえか!? 話が別物になってんぞっ!」
「なるほど、王子様のキスで目覚めるんですね~♪」
「この場合……立場が逆……」

もはや啓太にはフラノ達の言葉も姿も届いていなかった。この状況が意味する物が何であるかなどもはや考えるまでもない。間違いない。これを作った奴はこれがやりたかっただけだ! 賭けてもいい! この役割分担も全てはこのためだったに違いない! いったいどんだけヘンタイな魔導師なんだっ!? だがこれだけは譲れない……俺の、俺のファーストキスを男に……しかも仮名さんに捧げるなんて絶対いやだ! 俺は……俺はなでしことしたいとずっと思ってたのに!


だがそんな啓太の心の葛藤など知らないと言わんばかりに仮名の様子に変化が起きる。いきなり体が震え始め、目は白目をむき、口からは泡を吹き始めている。明らかに死ぬ一歩手前の様な惨状だった。

「い、いけない! このままでは!」
「啓太様、早く仮名様を助けてあげてください♪」
「早くしないと、手遅れ」

ごきょうやはその状態に驚きながらもどこかあきらめたような、同情するような視線を啓太へと向けてくる。それだけで十分だった。もはや自分に逃げ場はないと。そう悟りながらも啓太はふと、なでしこへと視線を向ける。なでしこはそんな啓太の心境を察しながら


「………大丈夫です、わたし、何も見てませんから……」


目を閉じながら後ろを向いてしまう。それがなでしこができる精一杯の慈悲だった。


啓太はこの世の物とは思えないような絶叫をあげながら生まれて初めての唇を仮名史郎へと捧げるのだった――――――




「………はっ! わ、私は一体……?」

仮名は意識を取り戻しながら体を起こす。そこは啓太の部屋。そして今までの経緯を思い出す。どうやら自分たちは無事に魔道書を封印し、戻ってこれたらしい。だがその中での出来事が記憶にない。確か川平達と一緒に光に包まれたところまでは覚えているのだが。仮名はそのまま部屋にいる啓太へと目を向ける。

そこには何故か部屋の隅っこで体育座りをしながらぶつぶつと独り言をつぶやいている啓太の姿があった。

「一体なにがあったんだ……なでしこ君、何か知っているか?」
「いえ……わたしは何も……」

仮名の言葉にどこか顔を引きつかせながらもなでしこはやんわりと質問をかわすだけ。なでしこ自身も口に出したくないようだ。一体何があったのかは気になるが無理に聞かない方が良いだろう。仮名はそう判断し、この話題を切り捨てることにする。知らず自己防衛が働いていることに仮名自身気づいてはいなかった。

「大丈夫です、啓太様……あれは緊急時でしたから……その、数には含まれないかと……」

ごきょうやはあたふたしながら蹲ってしまっている啓太を慰めている。それはまるでぐずってしまった子供をあやす母親のよう。もっともそれはそう的外れの物ではなかったのだが。そんなごきょうやの慰めが少しは効いたのか啓太は疲れ切った顔を見せながらも

「ありがとな……お前はいい奴なんだな、ごきょうや」
「……え?」

その手でごきょうやの頭を撫でる。それは啓太としては自分を気遣ってくれた相手への感謝の気持ち。フラノとてんそうとは違い自分を案じてくれたことへの喜びだった。だがごきょうやはどこか呆気にとられた声を上げたものの、心ここに非ずといった様子でぼうっとしている。啓太は何故ごきょうやがそんな姿を見せているのか分からずただその頭を撫で続けている。そしてその瞬間、部屋に異常な緊張感が走る。


(これは……!?)

それにいち早く気づいたのは仮名だった。仮名はすぐにその緊張感を発しているのがなでしこであることに気づく。表情はいつもと変わっていないがその雰囲気はまるで違う。それに思わず仮名は身を振るわせるもののその原因が間違いなく啓太のせいだと悟る。仮名は犬神に詳しいわけではないがそれでも自らの主が他の犬神を可愛がっている? のを見れば面白くないに違いない。だが啓太はそれに気づいていない。このままではまずい。

「そ、そういえば川平、今回の依頼の報酬の件なのだが……」

一度咳払いをした後、仮名は自然な形で啓太が食いついてきそうな話題を振ろうとする。それはまさにお気遣いの紳士とも言える仮名のファインプレーだった。だが

「ごきょうやちゃんだけずるいです! フラノも撫でてください~♪」
「な、なんだっ!? うぷっ!?」
「きゃっ!?」

それはフラノの乱入という名の暴投によって粉々に打ち砕かれてしまう。フラノは勢いをつけながら啓太とごきょうやの間に割って入り、二人を巻き込んでもみくちゃになって行く。そんな空気を読んでいないフラノの行動に仮名は呆気にとられるしかない。

だがそれは間違いだ。フラノはきちんと先程の空気を読んでいた。だが彼女には空気を読んだ上でそれをぶち壊すという特技を持っている。要するに面白ければ何でもいいのだった。そしていつのまにかてんそうもその騒ぎに加わり、何故か啓太の足に寝技を掛けている。もはや何が何だか分からない状況。さらに


「あ、みんなずるい! わたしも混ざります!」

いつの間にかやってきたともはねもその騒ぎの中へと突っ込んでいく。ともはねは大急ぎで屋敷の掃除を終わらせやってきたところ。そんなところでこんな楽しそうな状況を見せつけられれば我慢できるはずもなかった。


「痛えええっ!? や、やめろ、噛むのは禁止っ禁止――――!!」

まるで野生に帰ったかのように本能のままともはねが啓太の二の腕にかぶりつく。そんなともはねに感化されたのかフラノとてんそうも啓太にかぶりつく。甘噛みとは思えない力によって噛みつかれ啓太は悲鳴を上げ、それを何とかしようとごきょうやも動くがもみくちゃにされたままどうしようもない。それはまるで飼い主に遊んでもらっている犬達。

それを前にしてなでしこも体がうずうずしてくる。さっきまでの焼き餅、嫉妬もどこかへといってしまった。ただ自分もあの中に混じって啓太と遊びたい! そんな犬神としての本能だけ。知らず普段隠している尻尾も姿を現していた。

「け、啓太さん、わたしも!」

いつもなら恥ずかしくてできないことだがこの状況がなでしこを突き動かす。かくしてなでしこも含めた五匹の犬神にもみくちゃにされるという状況に啓太は陥る。本当なら喜べる状況なのだが啓太にそんな余裕は一片もない。というか噛みつかれ、技をかけられ命からがらな、散々な惨状。


「まったく……困ったものだ……」


仮名はそんな啓太達の状況をどこか微笑ましく見守りながらも、何故か辺りに散らばっていた自分の服をもくもくと着直していくのだった―――――


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