※この作品は東方シリーズと銀魂のクロスになります。そのため、ご都合主義な部分が大量に見られます。それでも大丈夫だと思われる方々は、本編をどうぞ。 ※東方緋想天のネタバレがあります。ご注意ください。 侍の国。この江戸という場所がそう呼ばれていたのは、はるか昔。 今この土地には天人(あまんと)と呼ばれる者たちが往来し、かつての面影も薄れつつあった。 江戸の中央にはターミナルが立てられ、天人たちが次々とやってくる。 そんな江戸のかぶき町と呼ばれる場所。そこは未だにかつての面影を色濃く残しており、その場所に、今回の主人公は居を構えている。 坂田銀時。よろず屋銀ちゃんなる店を構えるこの話の主人公。銀髪に白い服をだらしなく来たこのマダオ(まるで駄目なオッサン)は、かぶき町の往来をアイスクリーム片手に食べ歩いている。 「銀さん。銀さんってば! そんなに甘いもの食べてたら、また血糖値上がっちゃいますよ」 そんな彼の後ろを付いてくるのは、イマイチ目立たない顔立ちに眼鏡をかけた少年、志村新八であった。 新八とはもう一人、赤いチャイナ服に身を包んだ少女、神楽の姿もあり、そんな彼女の傍らには、信じられないほどデカイ白い犬、定春の姿もある。 「ばっか、オメェ。よぉやく銀さん糖分にありつけたんだよ、新八君。我慢して我慢して、ようやくこの糖分の塊を頂いちゃってるわけですよ。あれですか? 思春期の息子を持つお母さんですかこのヤロー」 そしてそんな新八の忠告など何処吹く風。自分の欲望に忠実な糖尿病一歩手前のマダオの様子に、新八は深いため息をついた。 「何言っても無駄ネ新八。銀ちゃんが糖分で妥協するわけないアル」 と、的確な意見を飛ばす神楽。その表情にはどうでもいいやという感情が見え隠れしていたが、そのことに気づいているんだかいないんだか、銀時はその言葉に便乗するように言葉をつむいでいた。 「そうだぞ~新八。さっきの依頼でもらったお金、今回は糖分とジャンプを補給することにしたんだよ、銀さんは」 「オィィィィッ!! あんたまたか!! いつまで少年の心でいるつもりなんだよ!! いい加減にしろコノヤロー!!」 あんまりといえばあんまりな発言に、すんごい顔した新八のツッコミが飛ぶ。まともに給料をもらっていないことで鬱憤がたまってるのかもしれない。結構、顔が怖い。 「いやね、銀さんもジャンプは卒業する歳だと思うんだけどよぉ。でもよ、男ってのはいつまでも夢を持たなきゃ生きていけないんだよ、これ」 そんな新八にもまったく持って動じないわれらが主人公。きっと体は糖で出来ているに違いない。 「ねぇ銀ちゃん」 「あんたはいつまで少年のつもりなんですか!! 歳考えろ、歳を!! いつまでジャンプ読むつもりだよ!!?」 「ばっか、オメェ! ジャンプ馬鹿にすんな!! ジャンプにはなぁ、男に夢と希望を与えてくれるものなんだよコノヤロー!!」 神楽がいつもの調子で言葉を投げかける。しかし、口げんかに発展した二人はその事にまったく気付かないでヒートアップしていく。町行く人が、そんな三人を遠巻きに見詰めていたりするが、そんなことにも気付かずに話は進んでいく。 「夢も希望もねぇじゃねぇかぁぁぁぁあ!! あんたの何処に夢と希望があるっていうんですか!! 死んだ魚のような目をしおってからに!!」 「バカヤロォォォ!! オマッ、この目を見ろ!! 夢と希望に満ち溢れてんだろーがっ!!」 「いや無いから!! 怠慢と堕落しか無いから!!」 壮絶な舌戦……かどうかは正直微妙だが、オーバーリアクションを交えての言い争い。はたから見れば面白い光景だったりするが、当の本人達はそれどころではねぇのである。 「銀ちゃ~ん」 今度は少し大きめに声を出す神楽。そしたらようやく聞こえたらしく、銀時が神楽のほうをむいた。 「なんだ、神楽!? 今、銀さんはなぁ、この分からず屋にジャンプについて話してるとこなんだよ!! どうでもいいことなら後にしてくんない!?」 それこそ心底どうでもいいんだよ。そう思いはしたが、今はそんなこと突っ込むのもめんどくさいんで、本題を切り出すことにする。そもそも、ツッコミは新八の担当だ。いずれきっと新八がツッコミを入れるだろう。 「じゃあ言うアルけど、私たちの足元、地面が綺麗さっぱりないネ」 『はい?』 その神楽の言葉に、言い争っていた二人が足元に視線を向けた。 そこに、あるはずの地面が無い。いやそれどころか真っ黒な空間の先に無数の目がギョロリと銀時たちを一斉に覗いているホラー空間が展開中。 それを確認した瞬間3人と一匹は、ものの見事にその空間の中に落下した。 「オィィィィィイイイイイ!! なんですか、この展開ぃぃぃぃいいいいいい!!?」 上がる叫び声。しかし、その言葉に応えられる人物は当然居らず、やがて不可思議空間は何事もなかったかのようにブッツリと閉じられる。 そうして、この物語はようやく始まりに立ったのである。 ■東方よろず屋■ ■プロローグ「死んだ魚の目の男にはろくな奴がいない」■ ところ変わり、ここは幻想郷。あらゆる幻想が住まうこの世界には、数多くの妖怪や人間、果ては天人や亡霊や幽霊なんかが存在する。 そんな世界の神社に住まう巫女、博麗霊夢は、ここ最近結構な悩みを抱えていた。 神社のはずなのにまぁ集まるのだ。何がって? 主に妖怪が。 「なんていうかさ、その辺りどうかと思うわけよ。私は」 「はぁ……」 そんなつかれきった霊夢の言葉に、緑の髪をした少女、東風谷早苗はなんともいえない相槌を打つ。そんなこと言われたって、彼女にしてみれば、かの妖怪たちは霊夢のことが気に入って集まってくるのだし、その辺どうしようもないんじゃないかとも思うわけだ。 「イイじゃない。困るわけでもないんだから」 そんな霊夢の言葉にまともに答えたのは、昼間ッから地上に降りてきている鮮やかな蒼い髪の天人くずれ、比那名居天子その人である。天人からその発言が出るのはどうよ? とも思ったが、皆までは言わなかった。 だって、この天人は不良で有名らしいし。天界では。 「よくないわよ」 「だったら拒めばいいじゃない。それをしないってことは、結局なんだかんだで彼女達が来ることを楽しんでるってことでしょうに」 むっとした顔の霊夢の言葉に、天子はそんな言葉を返していた。この歯に衣を着せないわがまま天人は、どうやら霊夢の機嫌を逆撫でしたいらしい。 頼むから勘弁して欲しい。主に被害が自分に来るから。 そんな思いで、はらはらと二人の成り行きを見守る早苗。事態はまさに一触即発の状態。いつでも逃げれる状態をスタンバイしながら、早苗はごくりと生唾を飲んで……。 突如上空に出現したスキマに、更にいやな予感を増幅される結果となった。 「あれは…」 ひんやりと流れる冷や汗。あの空間の裂け目は間違いなく八雲紫のものだ。 頼む。この状況で奴だけは現れて欲しくない。だって、現れたら現れたらで場を引っ掻き回すトラブルメーカーなんだから、あの女は。 最悪の状況を覚悟して、いよいよ逃げようとした早苗だったが――― ズドォォンッ!!! 『たわばっ!!!?』 その予想は、いい感じに裏切られることとなった。 スキマから落下してきた三人と一匹。チャイナ服の少女は綺麗に着地し、残りの二人、地味な少年と銀髪の男性は着地できず、人間乗せれそうな巨大な犬の下敷きになった。 突然の展開に、思考がまったく追いつかない巫女と天人くずれと風祝。しかし、そんな三人とは裏腹に、必死にもがく地味な少年と銀髪男性。 「定春ぅ!! 定春ぅぅぅうう!! 頼むからどいてくんない!? 出るって!! これ出るって!! なんか内臓的な物が銀さんの口から飛び出しちゃうんですけどぉぉぉおおおお!!?」 「定春!! お願いだから退いて!! 死ぬって!! これマジで死ぬって!!」 「わん♪」 現実は無情だった。残念ながら定春には二人の言葉がわかっていないらしい。本当はわかってて聞かないのかもしれないが。本人はじゃれてるつもりなのかもしれない。 「てんめぇぇ、クソ犬!! 退けッつってんだろコンチクショー!! 銀さん怒るよ!? マジで怒るよ!?」 「定春。私が許すネ。その二人を遠慮なくファックするといいヨ」 銀髪の罵倒に、チャイナが無情な命令を巨大犬に下す。そしてその人物の言葉に従って、遠慮なくプレスを強める顔だけなら可愛い巨大犬。 心なしかめきめきと骨が軋む音がする。 「うぉぉぉぉおおおおいい!! ギブ!! マジでギブ!! 謝るから!! 謝るから定春どけてぇぇぇえ!!?」 「ぎゃぁぁぁああああああああ!! 僕完全にとばっちりなんですけど!!? ちょっとぉ!! 神楽ちゃぁぁぁああああん!!?」 悲鳴を上げる銀髪と地味。相変わらずめきめきという音は継続中。だんだんと青ざめていく銀髪と地味。そんな様子を、呆然と眺めていた霊夢が一言。 「……なんなのよ、一体」 疲れたようにつむがれたその言葉。その言葉に、天子も早苗も全面的に同意したことは言うまでもない。 ■■■■■ 「は? 私がこのメンツを?」 夜の帳が落ちて、毎週恒例の大宴会が起こっている最中、霊夢は件の張本人と思われる八雲紫に、彼らを元の世界に戻すようにという言葉を投げかけていた。 彼女にしては珍しく、本当に心当たりがないといわんばかりに、昼間にスキマから落下してきた三人と一匹、坂田銀時、志村新八、神楽、定春に視線を向けた。 本来、幻想郷の外からやってきた人物を送り返すのは霊夢の仕事だ。ところが、この三人から話を聞いたところ、早苗の証言でどうやら外の世界の人間達ではないらしいことがわかった。多分、異世界とかそういった類じゃないだろうか。というのが、早苗の意見だった。もともと外の人間である早苗が言うのだから、この三人が外の世界の人間じゃないってことはほぼ確実らしい。 そうなると、霊夢では手に負えない。だったらと、手っ取り早く事件の犯人に送り返させようということに決まり、三人と一匹をひとまず博麗神社に留まらせ、宴会が始まって紫を待っていたのである。 「……まいったわねぇ。私も知らないわ、そんな世界」 「……知らないじゃないわよ。じゃあなんで、あの三人と馬鹿みたいにでっかい犬がこっちにいるって言うのよ?」 相変わらずとぼけた顔だが、本当に心当たりがないらしいことは、付き合いの長い霊夢だからわかる。しかし、納得できるかといえばそんなこたぁないのである。 「うーん。本当に覚えがないのよ。多分、寝ぼけてなんかやらかしちゃったんだろうけれど、参ったわね、元の世界がどこかわからないと戻しようがないわ」 「……あんたねぇ」 本気で頭痛がしてきた。この八雲紫、境界を操る程度の能力というとんでもない力を持っている。彼女の力なら、違う場所と場所をつなげて移動したり、物の境界をあやふやにして破壊したり、または創造したり出来るというデタラメなものだ。 …が、さすがの紫にも出来ないことはあったらしい。なのだが、じゃあどうしろというのか、あの三人と一匹は? 一方、そんな妖怪だらけの大宴会の中、坂田さんたちは何をしているのかというと。 「ささ、坂田さんもどうぞお一つ」 「おぉ、悪いねぇ。天狗のねぇちゃん。あれだ、妖怪が一杯来るってんで銀さんビクビクしちゃったんだけどもぉ、こぉんなに可愛い子達が一杯なら、別に怖がるこたぁなかったね」 「って、オィィイイイイイ!! 何あっさり順応してんだアンタァァァァアアアアアアアアアア!!」 「あっはははは!! 声大きいねぇ、君」 ばっちり順応してた。鴉天狗、射命丸文から酌をされる銀時のいつもの調子に、新八の切れのあるツッコミが唸りを上げ、その様子に大笑いする天子。神楽はとっくに酔いつぶれ、定春はレミリアとフランに抱きつかれてもふもふされている。 最初、銀時たちは妖怪がたくさん来ると聞いてビクビクしながら待っていたのだが、いざ集まってみれば美人、美少女のオンパレードという状況に、すっかりと恐怖心を投げ出してしまったのである。一応、彼女達も人間を食うから気をつけるように。という霊夢の言葉も、彼らにはすっかり頭から抜け落ちていた。 まぁ、浮かれるのは仕方がないかもしれない。彼らは最初、となりの屁怒絽みたいなのが大量にくると思っていたのだ。そしたらいざ着てみれば美人、美少女ぞろいだったもんだから、浮かれるのも仕方がないかもしれない。 紅魔館の面々。白玉楼の面々。永遠亭に天人くずれ。それから風祝に閻魔に死神。ワーハクタクに鴉天狗と鬼、更には七色の人形遣いに黒白魔法使いに竜宮の使い。そして今回新たに加わっている坂田さん一家。 そんなカオスな状況を遠巻きに眺め、霊夢は心底疲れたようにため息をついていた。 どうやら、あの三人組と一匹とは、しばらく長い付き合いになりそうだと思いながら、ひとまずワーハクタクで人間の里を守っている慧音にあの三人を頼もうと足を向けた。 内心、凄く憂鬱だったのを、隠しもせずにため息をついて。 ■あとがき■ どうも、白々燈です。はじめまして、そしてこんにちわ。 いや、蓬莱の姫のほうはどうしたと思われる方々、まず謝ります。スミマセン。 先日型月板である作品が荒れに荒れているのを見て、ちょっと型月のほうを更新するのがちょっと怖くなりまして…。情けない話ですが、しばらくあっちの方更新をちょっと休めようと思うんです。本当にスミマセン。チキン野郎で。 んで、書いてる作品がまたクロスとか何考えてるんだろうね、自分。 でも書きたかったんです。東方キャラと面白おかしく過ごす銀さんたちが。 そういうわけでいかがだったでしょうか? 違和感なくかけていればいいんですが…。 銀さんたちが来た原因がかなりむちゃくちゃですが、大丈夫でしょうか?どうだろう^^; ご都合主義満載でしたが、楽しんでいただけたら幸いです。 ちょっと短いですが、今回はこの辺で。 それでは。