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No.30780の一覧
[0] パワプロ9SS ~暁の軌跡~[兼久](2013/05/13 17:16)
[1] #2[兼久](2013/05/13 18:39)
[2] #3[兼久](2013/05/25 01:52)
[3] #4[兼久](2013/05/13 18:59)
[4] #4.5[兼久](2013/04/01 16:39)
[5] #5[兼久](2013/04/01 16:29)
[6] #6[兼久](2013/04/01 16:30)
[7] #7[兼久](2013/04/01 16:31)
[8] #8[兼久](2013/05/08 14:16)
[9] #9[兼久](2013/04/01 16:33)
[10] #10[兼久](2013/04/01 16:33)
[11] #10.5 [兼久](2013/04/01 16:34)
[12] #11[兼久](2013/04/01 16:35)
[13] #12[兼久](2013/05/15 22:09)
[14] #13[兼久](2013/04/01 16:37)
[15] #14[兼久](2013/04/01 16:37)
[16] #15[兼久](2013/04/01 16:38)
[17] #15.5[兼久](2013/04/11 00:24)
[18] #16[兼久](2013/04/24 14:05)
[19] #16.1[兼久](2013/05/12 18:22)
[20] #17 [兼久](2013/04/24 14:25)
[21] #18[兼久](2013/05/04 13:02)
[22] #19[兼久](2013/05/04 13:02)
[23] #20[兼久](2013/05/08 22:57)
[24] #21[兼久](2013/05/04 13:04)
[25] #22[兼久](2013/05/08 17:12)
[26] #22.5[兼久](2013/05/04 20:17)
[27] #23[兼久](2013/05/13 23:15)
[28] #24[兼久](2013/05/05 10:09)
[29] #24.5[兼久](2013/05/06 00:04)
[30] #25 [兼久](2013/05/20 18:04)
[31] 後書きの様なモノ(チラ裏的な何か)[兼久](2013/06/03 23:42)
[32] サクセスオールスターズ編 #1 [兼久](2013/11/27 21:28)
[33] サクセスオールスターズ編 #2[兼久](2013/11/27 21:34)
[34] サクセスオールスターズ編 #3[兼久](2013/11/12 00:13)
[35] サクセスオールスターズ編 #4[兼久](2013/11/12 00:31)
[36] サクセスオールスターズ編 #5[兼久](2013/11/20 22:35)
[37] サクセスオールスターズ編 #6[兼久](2013/11/27 21:36)
[40] SAS編 備忘録(所謂チラシの裏)[兼久](2013/11/27 21:06)
[41] 作世州オールスターズ選手名鑑(チラ裏その3)[兼久](2013/11/27 21:44)
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[30780] #12
Name: 兼久◆6d77000d ID:6af9bb31 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/15 22:09
2月14日。 

私は休み時間をフルに使い、昨日作った生チョコトリュフを野球部全員に配り歩いていた。一口に“手作り”と言っても市販の板チョコとアーモンドを細かく刻み、温めた生クリームと混ぜ合わせ、冷やして丸めてココアパウダーを塗しただけの代物。義理の塊。

せめて練習後にまとめてバラ撒ければ助かったのに、学年末試験前で部活は休止となっていたから渡すだけでも一苦労。当人達に変な気を起こさせたり、周囲に妙な勘繰りをされても困るので“全員に渡してます”とアピールすべく努めて事務的に、淡々と振舞う。

「ててっ、手作り‥‥‥だと?」 Σ(゚ω ゚ ;)
「…何がおかしいのかしら?何十人も居るんだからイチイチ買ってたらキリが無いじゃない」

千石監督は私の手間暇と士気高揚の労を犒い“レシートを持ってくれば材料費は全て部費で賄おう”と仰せになった。多分、サングラスの鬼監督にチョコを贈った女子生徒なんか過去には誰も居なかったんでしょうね。勿論気持ちで贈る物だから、お申し出は辞退してるわ。

言っておきますけど栄養学に基づき味より健康優先の料理を作るのは食べる人を想っての事であって、メシマズなんて謗りを受ける謂われは断じて無いわよ?…まぁ、ホウレン草と人参の野菜ジュース漬と、豚の牛乳ソース大蒜添えに多少改良の余地が有ったのは認めるけれど。

「あぁ、量産型か」
「当然でしょ?お嫌いでしたら無理に召し上がらなくても結構です」

何だ、と言わんばかりに十十は嘆息を漏らす。ここ2ヶ月の間、無料試写会に当選したからと下らない(スライダーマンのC.Gだけは素晴らしかった)映画をホンの数回観に行っただけの相手から本命チョコを貰える気でいたのだろうか?私の乙女心はそんなに安くは無い。

「ぃゃイヤ、貰ってばかりの十さんでは無いのダヨ‥‥‥ハッピーバレンタイン☆」つ□
「ぁ、ありがと。まさかアナタもチョコを作ったの?」

近年では友チョコだの逆チョコだの割と欧米の風習に近づいて来ているけれど、あの頃はまだまだ女性が男性にチョコレートを贈る日本独自の習慣が色濃く、正直男の子からバレンタインデーにプレゼントを贈られるなんて思ってもみなかったの。

だから、いつも意趣返しにと彼の分だけカカオ90%のビターチョコで作ったのを少しだけ後悔した。

「うんにゃ、チョコ絡みのイベント回避には必携の品を贈らせて貰ったょ。オレのとお揃いなのだー」
「?…そう、せっかく貰ったんだから使ってみるわ」

――後悔する必要なんか、全くなかったのに。



●┃┃
  ━━━ ● ● ●
●┃┃



「んぁ‥‥‥ぅ‥‥‥ゃあ」

室内にはヴィィィーンと唸る低いモーター音と、私の口から零れ落ちる雑音だけが響き渡っていた。十十が正しい使用方法の説明と称し、贈り付けたピンク色の異物で私を好き勝手にまさぐり続けているせいだ。

そろそろ兄が散歩から帰る頃の筈、いい加減もう止めにさせないと――そう思うのだがカラダに力が入らない。

「コラコラ、動いちゃメーなのです」

人を強引に自分の膝の上に乗せ、後ろから抱き竦めるような体勢。彼の左手は私の顎しっかりと抑えていて、身動きどころか顔の向きを変える事さえ許さない。

その指先は、滴る私の唾液でビチョビチョになっていた。

ごく一般的な女子高生に護身術の心得なんか有りはしないし、そもそも毎日体を鍛えている高校球児に腕力では敵いっこない。涙目になりながら、もう何度も何度も“兄さんが帰って来ちゃう!”と訴えているのに、まるで聞く耳を持とうとしなかった。

「帰って来たら、ナニ?もう何ヶ月もお預けを喰らった上にウマーなチョコまで貰ったんだからお礼をしなきゃぬ」(# ^ω^)

十十のだいぶ伸びた髪が私の耳に触れる。吐息が熱い。

騙し討ちには成功したものの予想以上の効果があったらしく、スイッチの入った十十の逆襲に全く抗えなかった。

「ドゥフフフ、大切な妹が後輩にイタズラされてるのを目撃したらお義兄さんどーなっちゃうのかなァ?」
「~~っ!! 」

彼からのプレゼントは電動歯ブラシだった。

身動きを取れない私の口の中に歯ブラシを差し挿れると奥歯から順に1本1本、丁寧に磨き上げていく。磨き終わると、彼の掌中にあるビターチョコを口だけで自主回収しろと言われたわ。

「そんなコトしたらアナタだって、てか?だったら早いトコ終わらせちまったらどーだい?」
「‥‥‥ぢゅる」

屈辱のあまりアイツの顔をキッと睨み付けてやったけど、涙や涎でグショグショの小娘が相手じゃ却って嗜虐心を煽るだけだったんでしょうね。

小鳥みたいに啄もうとしても、人差し指と中指の間にギュっと握り込まれたチョコはビクともしない。舌を使って刮ぎ取るには或る程度舐め溶かす必要があって、ベトベトになった指先を1本1本丹念にしゃぶらされるの。

それが済んで、ようやく解放されると思った矢先にまた一から歯磨きが始まった時の絶望感は――上手く表現出来ないわ。

「ただいまー…澄香?居るんだろーっ?」

そうこうしているうちに本当に帰って来た兄がやや大きめな声を上げ、私を呼ぶ。

こんな状況を見られたら、一体どうなってしまうのか?兄の鉄拳制裁で一件落着?0点よ。

自分の妹と付き合っている後輩部員を見咎めた先輩部員が、逆上して暴力に訴えた傷害事件。若しくは野球部部員が強引に同女子マネージャー宅へ押し入った暴行未遂。

どちらも最悪時のシナリオだけど、表沙汰になれば確実にセンバツ出場の道を閉ざす醜聞なんだから、絶対に回避しなくてはならない。

まずリビングを開閉する音、次いで階段を昇る足音が聞こえ始める。1階に私達の姿が無いのを確認し、私の部屋に直行しているのだろう。玄関先に、家族の者以外の靴が有るのに気付かない人じゃない。

「わぁ、オレってば悪役なう。おまわりさんにタイホされたら甲子園いけなくなっちゃうなぁ~…どーしよぉ?」

どんなに身を捩っても十十の束縛から逃れられそうもない。許しを乞うようにフルフルと首を振ろうとしても、それすらままならない。

誰も居ない自宅に招き入れておいて、前例があるのだから今回も大丈夫などとは考えが甘過ぎる。

男の人が怖い生き物なんだと思い知ったのはあの日が初めてで、ソコに野球部の皆に迷惑を及ぼすんじゃないかと云う自責の念がゴチャ混ぜになって渦巻く中“コンコン”とやや控え目なノックが2回。一拍の間を措いて“ドンドン”と少し苛立たしげなノックが1回。

我が家には両親の主寝室以外、部屋の扉に鍵は付いていなかった。

「ハイ、どーぞ♪ 」

と、耳元で囁きながら私の行動に全てを委ねる。

でも歯ブラシを引き抜いただけなので、兄からすれば妹がベットの上で自分の後輩に抱きしめられている訳ね。こう云う時には、なんて弁明すれば良かったのかしら?

「ぁ 開けちゃ駄目っ!…き、着替え中なのっ」
「つまらない嘘を付くのは止すんだ澄香。中に十が居るのは判ってるー…入るぞ」

咄嗟に口を衝いた出任せをバッサリと看破した兄が、徐ろにドアを開く。

この時は普段なら存在すら否定しそうな神様に祈りを捧げるしかなかったわね。

「…何をしている?テスト勉強は終わったのか?」
「これからっス。今はチョコのお礼にゴンさん直伝のデンタルケアを伝授してる真ッ最中っス♪ 」

終わった。そう痛感した。

そんな申し開きが通用するとでも思っているのか?と青ざめる私の脳裏には怒りに燃える兄と、嬉々として火に油を注ぐ十十のカタストロフィが一瞬にして過る。我ながら身から出た錆でしか無い。

「そうか。虫歯は困るからなー…今日はもう寝る。晩ご飯は要らないから、朝になったら起こしてくれ」
「うはwww パネェwww そのご様子だとガッツリ搾り取られたみたいっスねぇwww 」

「お前達もバレンタインデーだからってあまり羽目を外しすぎるなよ?ハハ」
「??? 」

いつから私達は兄から公認を受ける仲になっていたのだろうか?モチロン交際宣言をした憶えは無いし、それとなく関係を探られた事すら無い。第一、お互い“付き合ってくれ”と言った事も言われた事も無いのだ。

「知的メガネ先輩にあんな秘策(笑)が通るとは正直思わんかった」
「ワタクシの事はお姉様と呼びなさい」

彼のバイトと、大型冷蔵庫の段ボールと、姫野カレンの言葉を理解するのには、もう少し時間が必要だったわ。


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