「じゃんじゃん情報流しちまえ! ちょんまげ詐欺師なんて仕事、今日で廃業させてやろうぜ!」ちょんまげを頭から垂らした一人の男が声を荒げながら指示を飛ばす、街角。そして、リーダー格の男を取り囲むように同心半円上に並んだ、同じくちょんまげ頭の一団。なんと、巨大な円盤が目撃された異様な街の中において……一層不気味な集団が発生していたのだ。「きょうび、呪いなんて流行んねーんだよ!」「頭髪は金よりも重い……!」その集団の何が不気味と言えば、彼らが手にしているモノにこそ答えがあった。全員が全員、何らかの形のインターネット端末を手に握り、一心不乱に操作を加えているのである。ある者は弁当箱のような携帯電話を、またある者はタッチ式の現代的な通信機を使い、データの送信を行っているのだ。……ちょんまげを結った団体様が街の一角においてそんな行動をとっていれば、怪しくない訳が無い。もちろん、この非常時だからこそ、警察が取り締まりに来ることも無いのだが。『【その頭髪】ピエロ女撲滅スレ【私に返しなさい】』20代前半程度の爽やかな青年が巨大ウェブ掲示板へと次々にスレッドを立ち上げ。『不完全なちょんまげのせいで、俺の頭皮はボロボロだァッ!! amano@0M0』とある男性は、身体の不調を窺わせる咳(せき)を吐きながら、呟きサイトへの投稿を続けて。『俺のちょんまげも笑ってもらおうか……!』電話の通信相手に対して謎の恐喝を始める輩まで混じっている始末である。……根本的に、この集団は何をしようとしているのか?答えは、彼らの頭に輝くちょんまげを見れば、一目瞭然だった。即ち、その場で情報操作に精を出している人間達は、女ピエロのちょんまげ契約の被害者な訳で。一生モノの傷を頭皮に負った彼らの考えることは……女ピエロへの復讐以外に、有り得なかったのである。「ちょんまげ提げてギターが弾けるかっちゅーの!!」瞬く間に女ピエロに関する情報を広げ、その思惑を潰すことに快感を覚えるというネガティブな復讐に走りながら。而して彼らは、気付いては居ない。錬金術師達の行動を妨害することが、この世界の滅亡を防ぐ行為に直結していることに。一枚目の反転現象によって現れたドイツの森の中央にて、契約者の欲望に応じた特殊なセルメダルが儀式に使われているのだから、彼らの一人一人が世界の滅びを遅らせていると言えるのだろう。そして彼らは、気付く筈も無かった。彼らのリーダー格の男が、ここまで集団的な行動を以て女ピエロの妨害へと走った理由を。切っ掛けは、腰まで届く赤毛を一本に纏めた通りすがりの女の子が、彼を一言唆してやったというだけのことに過ぎなかったのだ。……そんなにその髪型に腹立ってんなら、さっきのピエロぶっ潰しちゃいなよ?発言した本人でさえ、原因と結果を明確に予測していたかどうか、知る者は居ない。それでも彼女もまた、世界を救う歯車の一つ……なのかもしれない。『その欲望を開放して魔法少女になってよ』第九十話:Break a warning――ウロボロスの綻び1742秒。時計が長針換算にて174.2度が進むだけの時間を意味する、数字。それが、現在のオーズがプトティラコンボを維持できる時間の制限であったらしい。なぜ『らしい』などという曖昧な単語によって表されているかといえば、現在映司の状況を冷静に観察出来る人間が居ないからである。つまり、先程まで震えながら恐獣の様子を覗っていた美樹さやかが、映司を観察する任務から放たれた訳で。「どっせいっ!!」精神的な抑圧を受けていた反動もあってか、ナイト兵の隙間を縫って走り回るというトンデモ芸をやってのける美樹さやかの姿が、戦場を支配していたのだ。鬱憤を晴らすように剣閃を描きながら、次々とナイト兵を薙ぎ倒して回っているのである。……オーズは、一体どこへ行ったというのか?答えは単純、体力を使い果たして、コンボを維持出来ずに倒れてしまったのだ。そして、戦場の真っ只中にて倒れた映司をからナイト兵の注意を引き離すために、さやかが身の丈に合わない大立ち回りを演じているのである。「ったく! どんだけ出てくんのよ!!」さやかが悪態を吐く対象は……無敵の筈のプトティラをスタミナ切れにまで追い込んだ、兵力であった。一体一体は大した戦力で無いものの、無尽蔵に湧いてくるナイト兵は結果的に映司の体力を削り切ることに成功したのだから、雑魚といえども侮り難い相手である。もし映司が意識を保つことが出来ていたなら、スタミナの配分を考えていた筈だが……頭脳が使えなくなる点もプトティラの欠陥の一つなのだろう。もちろん、さやかの回復魔法があるのだから、使い切った映司の体力を戻してやることは可能である。だがしかし、当然さやかの魔力も無限では無い訳で。つまり……今後のピンチも、見えてくるというものだ。「このままじゃ……」即ち、さやかの魔力切れである。さやかにはグリーフシードのストックが無いため、魔法の使用に制限があるのだ。従って、無尽蔵に召喚されるナイト兵の相手を続けていれば、いずれガス欠を起こすことは目に見えている。更に、絶えず襲い来るナイト兵等の波状攻撃のせいで、悠長に映司を回復させている暇も無かった。先が見えない、絶望のゴールが待っている持久走。血を吐きながら続ける悲しいマラソン、とでも言えば良いのだろうか。ナイト兵も無限に出て来る筈は無いのだが、どちらの手玉が先に切れるかと言われれば、さやかとしては非常に心許ないのだ。……そんな、時だった。乾いた音が、戦場へと届いたのは。ナイト兵達の靴と同じ鉄の響きを奏でながら、而して彼らよりも遥かに生物特有のリズムの乱れを含んだ、音色が。馬の脚に取り付けられた蹄鉄が、地面を削って足音を掻き立てていたのだ。その音を耳にしたのが美樹さやかでは無く後藤慎太郎であったなら、きっと『時代考証が滅茶苦茶だ……』と思ったことだろう。何故なら、この時代の日本において『蹄鉄』というモノは、全く普及していない筈なのだから。元来日本の馬には蹄が固い種が多かったため、馬の蹄に鉄の補助具を付けるという行為が一般的となったのは明治以後の話なのだ。従って、明らかに文明開化以前である江戸時代に蹄鉄の足音を聞くのは、どう考えても不自然極まりない。……もちろん、そのような豆知識が美樹さやかの頭に収まっている筈も無かったが。だがしかし、蹄鉄付きの馬を乗りまわしていても不自然では無い人物が……この時代に一人だけ存在するのだ。海外から技師を呼び込み、馬の強化を図った猛者が。現代の言葉で言うところの魔改造ならぬ、馬改造といったところか。「ふんっ!」抜き放った刀で間髪入れずにナイト兵を薙ぎ倒す……侍。白馬の王子様と呼ぶには明らかに年を食い過ぎているものの、言い換えればそれは『貫禄』を纏っているとも捉えられる。つまり、王子というよりは『王』そのもの。ガラの目指す王とも、古代にオーズであった王とも違う、一つの王の形。それが……突如として美樹さやかに加勢した男の、正体であった。「あの童から話は聞かせてもらった! 助太刀させてもらう!」「えーと、昨日の……徳田さん? だっけ?」還暦を迎えるかどうかという年齢にもかかわらず、その声は気迫に満ちたそれで。その御仁がナイト兵を倒す時に有機的な音が聞こえないのが不自然だと思わせる程の存在感を纏いつつ、一騎の騎馬が美樹さやかの元へと辿り着いていたのだ。どうやら、映司達が町人を巻き込まないように竹林にて戦っているという話を若葉駿から聞いて、ここまでやってきたのだろう。尚、実は駿少年が徳田新之助に伝えた情報には『だから竹林には近づかないでください』という言葉が確りと続いていたのだが……細かい事は気にしないタチなのだろう。おそらく。……それだけでは、無かった。「御用だ! 御用だっ!」「転生トラァァック!!」十手を以てナイト兵の剣を受け止める、岡っ引き。そして、動きが止まったナイト兵の横っ腹から盛大に跳ね飛ばす、現代人。お互いの言葉の意味が通じて居なくても、そこには確かに協同の意志が存在していて。「一昨日来やがれ!」「ヒャッハーッ!」江戸の町人が箒を錫杖のように振り回してナイト兵を怯ませたと思いきや、瞬く間に火炎瓶がナイト兵に浴びせられる。業種も時代も超えて人々が命を張る、戦場。そこには江戸も平成も、もはや意味を為しては居なかった。……もっとも、火炎瓶を手当たり次第に投げているハイテンションな男は『平成』とも何かが違うようにも思えるが。ナイト兵が反撃に出ようとも、漬物石やら消火器やらの援護が飛び交い、ナイト兵の戦線を押し戻す。時折、『バックします、バックします……』という音声と共にナイト兵を轢き殺したり、鉄製農具を凶器として使用したりしながら。根性論だけで保っている膠着が長続きするとも思えないものの、而してその光景は……不思議と、さやかの心を軽くしていて。どうしても、この戦況を見せてやりたい。「おきてよ、パンツマン」自身のことを案じない、自己犠牲男に。自分の手を伸ばさないと気が済まない、英雄野郎に。「『あんた』を助けたいって人間が、こんなに居るんだ」江戸と平成の人々が加勢してくれた対象が、『映司一行』であることは、さやかも理解出来ていた。人々が協力してくれているのが、事態が収束する可能性をこの戦闘に見出しているからだということも、当然思考の片隅には分かっている。だがそれでも、伝えたかったのだ。彼らに力を借りているその一人として、紛れも無く火野映司という人間が居るという事を。「だから……だから、死ぬようなマネ、するな! 絶対にするな!!」嫌っても嫌い切れない、一人のヒーローに向かって。決して戦場を支配するような雄叫びでは無く、しかし地に伏した一人の男の耳には充分に届くほどの、声で。そしてさやかの視覚は、捉えていた。気を失っていた筈の映司の掌が……拳を、結んだことを。同時にさやかは、自身の言葉の中に潜んだ違和感にも、彼女らしからぬ鋭さを以て気付いていた。――あんたを助けたいって『人間』が、こんなに居るんだ。自分が吐き出した『人間』という言葉の中に、あまりにも自然に美樹さやか自身が含まれていたという事に。今日の未明までは、魔法少女は死体だと愚痴っていた筈なのに、さやか自身も驚くほど当然のように人間という言葉を使っていたのだ。ひょっとするとそれは……ショック療法のせいだったのかもしれない。言い回しは乱暴であったものの、さやかを『生きてんだろう』と言い切ってくれた鹿目まどかの言葉は、その実として何よりもさやかに効いた激励だったのだから。あの大人しいハズの子にしては似合わない尖った口調によって、痛みと共に与えられた一喝は……確かに美樹さやかが生きている人間であるという事を肯定してくれていて。「あたしにも居る、か……」未だ、終わらない。決して、終われない。ナイト兵の底が未だに見えなくても、人間達が早くも疲労を見せ始めていたとしても……後藤慎太郎は……既に高くなった日の光を背に、ライドベンダーを駆っていた。目的地は、ただ一つ。ピエロ女を倒して回っていた『バース』が、つい30分ほど前に突如として通信を途絶した場所に他ならなかった。バースを先兵として動かし、後藤が道化女の目撃情報を集めて伝えるという連携をとっていた状況において、バースの失踪は最大の誤算と言えただろう。怪我人ばかりのライドベンダー隊を動かせば、女ピエロを処理するだけの仕事は出来るだろうが、現状はそうも甘くは無いようで。道化女に危害を加えようとすると、ナイト兵が何処からともなく現れるのである。一種のブービートラップなのだろう。従って、実働要員がバース単騎に限られてしまったのは、やむを得ないことであった。そんな状況でバースが行方不明になったとすれば、最悪も最悪である。ライドベンダーを適当な路肩に止めて、バースが行方不明になった地点の調査を始めた後藤は、伊達明が置かれた状況に予想がついていた。「やはりそういうことか……!」であるからして、後藤が慌てふためいた筈も無い。……周囲の光景が歪み、魚が羽ばたく奇怪極まりない空間が現れていたことに対して。後藤は、知っている。空間を支配し、まるで精神病患者が描いたような使い魔を従える、異形の存在を。以前に後藤が見たものとは姿形こそ異なるものの、美樹さやかとトーリから聞いた情報から察するに、この空間の主は後藤の予測するモノに間違いが無さそうだった。「偶然とは考え辛い……ガラは魔女も操れるのか?」女性の下半身が鳥籠の中へと生えているという、常軌を逸した怪物の姿が空間の中央には浮かび上がっていて。その大きさが、縮尺比にして人間の10倍にも及ぶ辺りは、もはや自重による崩壊などといった概念の通用する相手でない事を教えてくれていた。更に、その結界の内部で苦戦を強いられている人間が居ることも、後藤は当然想定済みである。ただし、自身の傍らに止めてあった筈のライドベンダーと引き離されてしまったことは、予想外だったが。「くそぅ! キリがねぇ!」……案の定、その空間の中に見つけた。左手に具現化した巨腕を振りかぶって、襲撃者を振り払う仮面ライダーの姿を。羽の生えた魚の群れに喰らい付かれながらも、それを振り払い続けるバースの影が、魔女空間の最下層に確認されたのである。その様子からは、その空間の遥か上空に存在する魔女へ反撃する程の余裕を、覗うことは出来ない。「伊達さん! 大丈夫ですか!?」「後藤ちゃん! 良いところに来たッ!」伊達は、ショベルアームを振り回すばかりで反撃に出る気配を見せなかった。ブレストキャノンを溜めて使えば一気に勝負を決められるのでは無かろうか。その事に対して、一瞬だけ疑問を呈すことを考えた後藤だったが……瞬時に、理解することが出来た。おそらく伊達には、セルメダルのストックが殆ど無いのだ。昨晩から道化女を狩り続けていた伊達は、当然ライドベンダーやバースの運用費として相当のセルメダルを消費している筈であり、力押しが選択できなかったという事なのだろう。というか、それ以上に伊達明という人間の体力も消耗している筈なのだが……そんな中で30分も命がけの金魚掬いを続けられる辺り、実は超人染みている男である。もっとも、後藤もピエロ女の情報を収集しながらガラの結界の低出力地点を探す作業に追われていたため、伊達と同じく徹夜明けには違いないが。幸い、後藤が銃器を以て空遊魚を攻撃してみれば、一撃のもとに爆砕する事が可能であった。従って、後藤が援護射撃を行えばバースも砲撃に手をかける事が出来そうである。その隙に後藤の持っているセルメダルを伊達に渡して一気に決めれば、全てを解決できる筈だ。「伊達さん。セルメダルなら持ってきましたよ。一気に片付けましょう!」「いや、それだけじゃどうにもならん!」……『それだけ』?後藤の持って来たセルメダルが足りないという事だろうか?しかし、まだ後藤の持って来た枚数も伝えていないのに、その文句が出て来る筈は無い。つまり?「残念ながら、射程が足りないみたいでな。ブレストキャノンを最大威力にしても、この距離じゃ致命傷は無理だった!」果たして、伊達から返ってきた言葉には……最悪の状況が簡潔に表現されていた。どうやら、ブレストキャノンによる砲撃は既に試していたらしい。カッターウィングで飛んで敵に近寄ろうにも、空中からの砲撃では、反動が分散してしまうために一撃必殺は望めないだろう。後藤が持っているバースバスターを逆向きに噴射して反動を抑えれば……とも考えてみたものの、胸部に固定されたブレストキャノンの斜角を考えるに、かなり厳しい作業になりそうである。砲撃の射線と正確に逆方向へ銃を向けるという精密動作を、邪魔な翼が存在する背面から行うなど、無茶振り以外の何物でも無いのだから。「この悪趣味な部屋から出る方法、知らない?」「一方通行みたいですよ」後藤が周囲を見回したところ、出口と思しき抜け道は見当たらない。おそらく、出口に相当する場所を幻によって覆い隠しているか、空間ごと閉じているのだろう。伊達が大して落胆した様子を見せないのが、後藤としては気になるところではあるが。単調にショベルアームを振るい続けるその様子には、不思議と絶望は見られない。「何か策があるんですか?」「あるには有る! 物凄く危険だがな!」よもや『力尽くだ!』などと返された日にはどうすべきかと思った後藤だが、伊達の言葉を聞いて少しだけ期待を抱いても居た。もっとも、危険だと自分から言い出している辺り、どうしようもない作戦が出て来る可能性も否めないが。「あの鳥籠の柵にショベルとクレーンで砲台を固定して、そこからの最大威力のブレストキャノンだ!」……確かに、それが成功すれば、鳥籠の魔女を倒すことは出来るかもしれない。というか、その一撃によって鳥籠の魔女が倒せると仮定しなければ、後藤達は死を待つしかない。だがしかし、その作戦の致命的な欠点を、後藤は見抜いていた。「ショベルとクレーンを使ったら、どうやってセルメダルを補給するんですか!」その作戦を実行する場合、ショベルとクレーンの装備によって両手が塞がる訳で、ブレストキャノンの威力を最大にするためのチャージを行う事が出来ない。ブレストキャノンの威力を上げるためには、ベルトへと追加のセルメダルを投入することが必須であり、あまり長時間溜めておけるものでも無いのだ。代わりに片手を開けたとしても、今度は射線がブレてしまうために作戦として成り立たない。仮に先にエネルギーを溜めた状態で、後から別の装備を使おうとすると、溜めたエネルギーは優先的に後付け装備へと使われてしまうのである。加えて言うならば、マニュアルを読むのが嫌いな伊達明という男がそう言うからには、その作戦も一度実行して失敗しているのだろう。しかし、それを後藤に伝えたという事は、改善策も考えてあるという訳で。「つまり『バース』の他に、ベルトにセルメダルを入れる人員が居れば良いって事だろ?」……まさか?確かに、カッターウィングによって飛び上がるバースに掴まって後藤も一緒に鳥籠の付近まで行けば、固定砲台となったバースへとセルメダルの補給をすることが可能である。そして後藤は、当然に理解していた。「危険って、そういうことですか……」主に、バースを補助する人員の身が危険なのだ。バースに掴まって飛翔するということは、バースを狙って襲い来る空遊漁の攻撃を受ける可能性も高いという事を意味しており、生身で使い魔の攻撃に晒される危険を負わなければならない。更に、失敗のリスクは大きく、当然逆転の目は潰える。その場合、銀の鎧を纏っている伊達が即座に致命傷を負うことは無いだろうが、後藤が消えればバースも弄り殺されることは目に見えていた。正に、一発逆転のギャンブル。掛け金は数枚の銀貨と、二つの命。成功報酬は、三枚目の世界反転の阻止。もちろん、それ以外の策がある訳でも無い後藤には選択肢など有る筈も無い。「……なんなら、後藤ちゃんの方が変身してみるか? 俺はそれでも良いが」そんな思考を行っていた後藤の耳に入って来たのは……空遊漁を捌く音に紛れて聞こえた、声だった。そして、本気でどちらでも良いという声音を以て発せられたその言葉の意味を、後藤の意識は素早く理解していた。「俺が……」後藤をバースに変えるその提案は、世界を守りたいと言っていた後藤の望みを叶えるものに他ならない筈なのに。空遊漁を切り裂き続ける銀の鎧が、まるで血の雨を浴びているように見えてしまっていて。その作戦が失敗すれば二人とも死ぬのは変わらないと理解出来ていても。「俺が、伊達さんの……人の命を預かる……?」即答することなど後藤には出来そうに無かった……・今回のNG大賞「ヘヴンズトルネードッ!」「タイヤキ名人アルティメットフォーム! スペシャルターボッ!」「V1システム起動!」「アンタ等みたいな一般人が居るかァァ――ッ!!」ライダー世界の一般人の強さの幅は異常。・公開プロットシリーズNo.90→※将軍様の攻撃は全て峰打ちです。でもナイト兵は斬られているようにしか見えない! 不思議!