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No.29586の一覧
[0] その欲望を開放して魔法少女になってよ!【完結】(仮面ライダーオーズ×魔法少女まどか☆マギカ)[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/27 22:08)
[1] 第二話:ここで死んで。世のため人のため、そして何より彼女のために[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:13)
[2] 第三話:後藤と黒と盗撮画像[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 03:27)
[3] 第四話:パンツがあるから恥ずかしく無いもん[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 03:29)
[4] 第五話:Cyclone effect――風が呼ぶバッティング[カードは慎重に選ぶ男](2014/02/23 16:14)
[5] 第六話:魔法少女を逮捕せよ[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:26)
[6] 第七話:死なないのか? 私は聞いてない! [カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:26)
[7] 第八話:彼女には72通りの称号があるからな[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/27 15:55)
[8] 第九話:灼熱地獄の黄祭[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 03:56)
[9] 第十話:treasure sniper――殺してでも奪い取る[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:30)
[10] 第十一話:その時歴史が狂った[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:31)
[11] 第十二話:Tの災難/赤信号を振り切れ [カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:32)
[12] 第十三話:Tの災難/ 私は友達が少ない[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:35)
[13] 第十四話:(心が折れる音) [カードは慎重に選ぶ男](2011/10/05 14:52)
[14] 第十五話:rebirth ――珍獣は二度死ぬ[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:37)
[15] 第十六話:緑の党[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/21 04:02)
[16] 第十七話:A dying hero, a dead heroin[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:44)
[17] 第十八話:自分が変われば世界も変わる[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:42)
[18] 第十九話:その配役はおかしいでしょ[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/13 18:19)
[19] 第二十話:Ride the wind――風向きは変わり続けて[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:48)
[20] 第二十一話:悪魔へ下す鉄鎚[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/06 18:37)
[21] 第二十二話:暴走特急隊[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/06 19:04)
[22] 第二十三話:海へ辿り着かない雫[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/11 01:14)
[23] 第二十四話:壁にミミリア 障子にメアリー[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/16 19:07)
[24] 第二十五話:Free your heat――本当の気持ちと向き合えますか?[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/13 21:30)
[25] 第二十六話:小さな手のひら[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/13 21:29)
[26] 第二十七話:弱い女[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/17 21:17)
[27] 第二十八話:秘密主義者の集い[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/17 21:32)
[28] 第二十九話:継接インディアンポーカー[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/21 04:09)
[29] 第三十話:Power to tearer――暴君と泣き虫と欲望 [カードは慎重に選ぶ男](2011/09/21 03:58)
[30] 第三十一話:ずぶ濡れ衣々[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/24 22:21)
[31] 第三十二話:XXX板に出張スレを建てる予定はありません[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/25 09:19)
[32] 第三十三話:化物[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/28 17:36)
[33] 第三十四話:カンドロイドは電気鰻の夢を見るか?[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/28 17:59)
[34] 第三十五話:Individual-System――悪意[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/02 02:18)
[35] 第三十六話:戦略的敗走[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/02 09:02)
[36] 第三十七話:颯爽退場洋菓子城[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/05 12:15)
[37] 第三十八話:口は万災のモト[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/05 12:22)
[38] 第三十九話:彼女の名前は[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/08 10:33)
[39] 第四十話:Sun goes up――夜明けを待つ休日[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/08 10:45)
[40] 第四十一話:変異[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/12 03:49)
[41] 第四十二話:恐怖心 俺の心に 恐怖心[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/12 02:39)
[42] 第四十三話:かの人のみぞ知る真価[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/15 09:24)
[43] 第四十四話:地雷付迂回路[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/15 09:52)
[44] 第四十五話:LORD OF THE SPEED――卂き魔法少女、マギブラック![カードは慎重に選ぶ男](2011/10/18 22:37)
[45] 第四十六話:円環の折り返し[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/18 22:34)
[46] 第四十七話:役者は揃わなかった[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/23 01:33)
[47] 第四十八話:ヤミーの身体はボロボロだァ![カードは慎重に選ぶ男](2011/10/23 01:32)
[48] 第四十九話:もう誰も頼りない[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/25 18:46)
[49] 第五十話:Break the Chain――蝙蝠の意地[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/25 18:46)
[50] 第五十一話:Kの誤算/それはとっても中ボスかなって[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/29 19:52)
[51] 第五十二話:Kの誤算/切掛[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/29 19:45)
[52] 第五十三話:逆転の似合う女[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/01 20:21)
[53] 第五十四話:さらば戦友よ[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/01 20:31)
[54] 第五十五話:Time judged all――運命を奪い取れ[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/06 03:29)
[55] 第五十六話:愛しのグリード[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/06 03:34)
[56] 第五十七話:疑心伝心[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/09 01:00)
[57] 第五十八話:第一発見者を疑え[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/12 18:48)
[58] 第五十九話:伊達姿鎧男[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/16 00:20)
[59] 第六十話:EGO 〜eyes glazing over――勝手なヒト[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/19 23:02)
[60] 第六十一話:困った時に他人に頼れる奴は手強い[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/22 22:16)
[61] 第六十二話:捻くれ女[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/26 21:33)
[62] 第六十三話:ヤミーがこうなったのは私の責任だ……だが私は謝らない[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/29 20:54)
[63] 第六十四話:戦いの後に[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:32)
[64] 第六十五話:Love Wars――愛っていうのは呪いみたいなものなんだ[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/06 22:29)
[65] 第六十六話:平日の昼間に出歩いてる女子中学生って……[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:27)
[66] 第六十七話:ダイナミック起床[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/14 02:56)
[67] 第六十八話:遅れた役者[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/18 05:59)
[68] 第六十九話:戦・略・崩・壊[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/20 23:48)
[69] 第七十話:Stranger in the dark――信じられるヒト[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/25 20:22)
[70] 第七十一話:扉越アンサンブル[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/28 11:37)
[71] 第七十二話:浴びるようにおでんを食べてみたい[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/31 23:06)
[72] 第七十三話:調査とプレゼントと危険な会長[カードは慎重に選ぶ男](2012/01/28 22:21)
[73] 第七十四話:鋼・騎・無・双[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/04 21:36)
[74] 第七十五話:DEEP BREATH――虎の溜息[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/08 05:21)
[75] 第七十六話:汝の隣人を愛せよ[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/18 21:13)
[76] 第七十七話:未決断チルドレン[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/24 20:42)
[77] 第七十八話:私の会う人がこんなに人間じゃない訳がなくもない[カードは慎重に選ぶ男](2012/03/03 20:09)
[78] 第七十九話:道化とピエロと形無しジョーカー[カードは慎重に選ぶ男](2012/03/12 07:36)
[79] 第八十話:Flashback――不気味な過去[カードは慎重に選ぶ男](2012/03/18 03:30)
[80] 第八十一話:一・触・即・発[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/27 15:59)
[81] 第八十二話:緊急回避は確かに格好良い。しかし余裕を以て回避するのが理想的である事は間違いが無い。[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/01 00:32)
[82] 第八十三話:妖怪と理解と望まれない再会[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/14 20:06)
[83] 第八十四話:将軍は日本語でジェネラル、英語でSHO-GUN[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/14 20:40)
[84] 第八十五話:SAMURAI STRONG STYLE――男の昔話[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/21 20:10)
[85] 第八十六話:欲しい言葉[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/28 17:52)
[86] 第八十七話:破・願・逸・笑[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/05 21:18)
[87] 第八十八話:永かった一日[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/12 20:53)
[88] 第八十九話:暴れん坊前哨戦[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/19 21:13)
[89] 第九十話:Break a warning――ウロボロスの綻び[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/26 20:22)
[90] 第九十一話:ひとのちから[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/02 08:49)
[91] 第九十二話:時代劇の中で会った、ような……[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/09 19:37)
[92] 第九十三話:二つに一つのA/二兎を追う者は二兎とも獲れ[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/25 17:04)
[93] 第九十四話:二つに一つのA/世界を回すもの[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/25 17:08)
[94] 第九十五話:Switch on! ――切り替わる舞台[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/30 19:17)
[95] 第九十六話:友・達・野・朗[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/09 20:56)
[96] 第九十七話:巨大化は悪の美学[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/14 22:40)
[97] 第九十八話:泡沫の夢[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/21 19:08)
[98] 第九十九話:押収Cheater[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/28 21:36)
[99] 第百話:Naturally ――本当の貴方ですか?[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/04 23:08)
[100] 第百一話:閃きの黄色[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/12 00:42)
[101] 第百二話:もしも無限があるのなら[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/18 22:09)
[102] 第百三話:錬金術師の残したアレコレ[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/26 18:15)
[103] 第百四話:探究エンカウンター[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/01 20:05)
[104] 第百五話:Bounce Back ――善意より高いものは無い[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/24 06:34)
[105] 第百六話:河原割[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/15 19:04)
[106] 第百七話:犯人はヤス[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/22 23:17)
[107] 第百八話:ごとごとホットポット[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/29 21:20)
[108] 第百九話:かくれんぼの必勝法は、誰がゲームに参加しているのかを鬼に教えない事である[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/06 17:37)
[109] 第百十話:Ride on right time ――少し遅れるぐらいがヒーローの定時出勤である[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/13 20:41)
[110] 第百十一話:結界天丼[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/20 20:19)
[111] 第百十二話:伏兵[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/27 21:19)
[112] 第百十三話:胸に七つの……[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/03 21:14)
[113] 第百十四話:割りたい背中[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/10 22:12)
[114] 第百十五話:Last engage ――約束された良き終焉[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/18 01:04)
[115] 第百十六話:生と死の狭間に[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/24 22:56)
[116] 第百十七話:残念パーティ[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:39)
[117] 第百十八話:凍える子羊にカモミールの温もりを[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/08 22:04)
[118] 第百十九話:いしのゆくえ[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/15 23:49)
[119] 第百二十話:Shout out ――さや歌[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/22 23:28)
[120] 第百二十一話:俺が変身する!!![カードは慎重に選ぶ男](2013/08/17 11:01)
[121] 第百二十二話:開幕[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/05 20:39)
[122] 第百二十三話:Mに目覚めの口付を/生者より愛を込めて[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/20 16:14)
[123] 第百二十四話:Mに目覚めの口付を/引いて駄目なら殴り倒せ[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/20 16:10)
[124] 第百二十五話:Reverse / Re:birth ――相転移[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/26 21:27)
[125] 第百二十六話:人魚姫と灼熱と奇跡の担い手[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/02 20:45)
[126] 第百二十七話:本当に裏切ったんですか[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/02 21:37)
[127] 第百二十八話:彼女の守った世界[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/09 22:28)
[128] 第百二十九話:目指す、先[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/16 20:57)
[129] 第百三十話:Got to keep it real ――ホントにしちゃえば良いんだよ[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/23 21:39)
[130] 第百三十一話:グリードと人間と半端者[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/30 22:43)
[131] 第百三十二話:完全態[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/07 01:03)
[132] 第百三十三話:死を解する獣[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/13 21:37)
[133] 第百三十四話:獣愛ずる姫君[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/27 18:30)
[134] 第百三十五話:Double-Action ――二律背反[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/27 18:49)
[135] 第百三十六話:羽のような重さ[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/04 20:57)
[136] 第百三十七話:獅子身中の蟲[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/11 21:16)
[137] 第百三十八話:蝙蝠女は選べない[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/19 00:17)
[138] 第百三十九話:魔法と約束と最後の希望[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/25 21:56)
[139] 第百四十話:Regret nothing ――後悔なんて、あるわけない[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/01 22:37)
[140] 第百四十一話:信頼[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/08 22:22)
[141] 第百四十二話:ウヴァ死す[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/16 08:43)
[142] 第百四十三話:光もたらす者[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/29 22:08)
[143] 第百四十四話:絆の鎖[カードは慎重に選ぶ男](2014/01/23 21:03)
[144] 第百四十五話:Finger on the trigger ――世界に弓引く意思[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/06 23:24)
[145] 第百四十六話:コネクト ――全てを繋げ[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/13 21:09)
[146] 第百四十七話:また あした ――俺たちの 私たちの[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/21 18:29)
[147] 第百四十八話:Anything Goes! ――選んだ明日[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/27 22:26)
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[29586] 第百三十四話:獣愛ずる姫君
Name: カードは慎重に選ぶ男◆e9b07b89 ID:ab888f41 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/27 18:30
とある、橋の上から。
人間の少女の姿を模した偽りの姿にて、メズールは視線を泳がせていた。
真木邸を後にした時分にはまだ日は高かったはずなのに、既に辺りは薄暗さに彩られつつあった。

何をしよう、と明確に決めて屋敷を出てきた訳では無い。
ただ、物言わぬメダルの山へと還っていったガメルの姿を思い出すと、心の内は穏やかでは居られなかった。

……メズール自身の一番の目的は完全態になって世界を喰らい尽くす事であり、ガメルはそのための犠牲になった。
そんな事は、分かっている。
ならば……メズールの胸に巣食う言い様の無い感覚は、一体何だというのか。

メズールを慕っていた一体のグリードは、既に居ない。
その事実に、どれほどの価値があるのか。
思えば、以前にもガメルがオーズによって倒されたことがあった。
その時にメズールは……何を、考えていたのだったか。

――オーズ。『ガメル』はどうなったか知らないかしら?

なぜ、メズールはあの時、オーズにガメルの行方を尋ねたのか。
ガメルが消えたものの、メズール自身はガメルの取って来た青コアを得て、損をするどころか大幅な得をしている筈なのに。
……満たされない。
何とも言えない喪失感は、増すばかりだった。

「メズール君。ガメル君のコアメダルは……何枚が残っていましたか?」
「……6枚も、やられたわ」

背後から唐突にかけられた声に、何か感情を返すでもなく。
メズールは振り返る素振りさえ見せずに、ただありのままを告げた。
即ち、9枚あったガメルのコアメダルはその内6枚もが砕かれてしまったという事実を。
しかも、下手をすれば残りのメダルにも、目に見えないダメージが入っている可能性は否めなかった。
どちらかと言えば、会話の相手にとって重要なのは、砕かれたコアよりも残ったコアの方らしかったが。

「残ったコアメダルからガメル君を復活させるつもりですか」

相も変わらず背中越しにメズールへとかけられた言葉は、どこまでも淡々としていた。
きっと真木も、メズールの方など見ていないのだろう。
いつもの不気味な人形に目を向けているに、決まっている。

「グリードの復活には最低でも5枚のコアが必要よ、ドクターの坊や。意識の入ったコアはあるけれど、残り3枚じゃぁ、どうしようも無いわ」

発言してみてから、思った。
メズール自身の言葉は……まるで、灰色のコアが5枚残っていたらガメルを復活させたかった、というような響きを含んでいたのだ。

ガメルは……メズールの傍らに居るのが当たり前のグリードだった。
ガラの兵隊に襲われた時には、ガメルが灰色コアを奪われながらも、身を呈してメズールを守り抜いた。
今回だって、ガメルはその存在を失ってまでメズールのメダルを取り返してくれた。

「バカな、子。私が居ないと、ダメなんだから……」

もしメズールが先に消えていたら、ガメルも今のメズールのような喪失感を味わっていたのだろうか。
それよりも、ガメルはメズールを復活させるためにまず足を動かすだろう、とメズールは不思議と確信出来ていた。

「足りない2枚の代替物は、用意出来るのではありませんか。『今から完全態になる貴女』なら」

……現在のメズールは8枚まで青コアを揃えているものの、あと1枚は行方不明の筈だが。
そんな指摘を入れようと、メズールがようやく真木博士に向き直ったとき。
メズールの頭から、数多の疑念が吹き飛んだ。
こちらへ顔を向けている一体の青白い人形と視線を交差させつつ……メズールは確かに、その存在を感じ取っていた。
真木博士の肩に座った人形が胸に抱いている一枚のコアメダルの存在感は、メズールにとってあまりに大きかったのだ。

「どう、して」
「……退職金代わりに、財団から頂いたんですよ」

完全態に、なれる。
一体のグリードとしての思考は、現在の状況を至高のものであると訴えていた。
だが同時に、メズールの中の冷静な何者かが、状況の理解を促してもいた。

真木博士が何故、メズールを完全態に導かねばならないのか、と。
彼の目的は世界に良き終わりを迎えさせることであって、その道具がグリードとコアメダルである。
完全態のグリードに大量のコアメダルを取り込ませて暴走態を作り出し、世界を完全な『無』へと到達させるというのが、真木清人の計画の筈だ。
そして、現在殆どのコアメダルが真木邸に揃っているにもかかわらず、真木清人がそれを実行しない理由とは?

決して愚鈍では無いメズールの頭脳は、簡単に正解へと行き着く事が出来ていた。
真木が目的を達成するためには、完全態グリードの一体を残して他のグリードを解体する必要がある。
しかし、実際にグリードの誰かが真木に消されたら、その時点で残りのグリードが逃亡を図るのは必然と言える。
都合よく全員を真木の手にかけることが理想的なのだろうが、逃亡されるリスクも相応のものとなってしまうのだろう。
だからこそ、グリードの数がもう少し減るまでは、真木が直接手を下す事は出来ない。

……完全態になったグリードが勝手に暴れて、人間に倒されでもしない限りは。

つまり、そういう事だった。
この人間モドキは、メズールが人間に倒される事を予期している。
早く完全態になって暴れて、人間達に始末されて来い、と。
それが、真木清人の意図に違いない。
きっとメズールの次はカザリが、真木の隠し持っていた9枚目を渡されて完全態になって、人間に処分されるのだ。
だったら。

「そう、ね。完全態になるのは、私達の悲願だったわね」

乗ってやろう、とメズールは決めた。
どこまでやれるのか、分からない。
それでも……この虚ろな感覚から解放されるのなら。
悪くは、ない。



『その欲望を開放して魔法少女になってよ』
第百三十四話:獣愛ずる姫君



メズールは、まず動物を攫った。
陸上動物を見世物にする巨大な展示施設から、サイやゾウを頂いた。

ガメルのコアメダルの代替品として使えそうだったからだ。
だが、圧倒的に数が足りない。
錬金術師達がコアメダルを作る時にどれだけの贄を使ったのかは分からないが、とても一桁で足りる量では無い筈だ。
初めて見る動物園というものに、800年前の王が初めて作った獣の庭園に似た気味の悪さを感じながら。
メズールは、必要なモノを集めた。

動物園の檻の中には、瞬く間に材料が集められていった。
同時に、動物園は阿鼻叫喚のコンサートホールと化した。
歌っているオーケストラは、声と涙を枯らした子供達だった。
ガメルのメンタルに最も近い年齢層であると考えて、メズールは近隣の民家から児童をかき集めたのだ。
完全態の出力による激流噴射を以てすれば、民家の防御壁など脆弱そのものだった。

メズールは、その一人一人を薄皮のタマゴに閉じ込めた。
手間を考えれば2~3人を一つのタマゴに入れた方が早かったが、手を抜いたことによって子供達が安心してしまっては、元も子もない。
親の助けを強く求める欲望を強く抱いてもらわなければ、困るのだ。
その欲望を魂が枯渇するまで搾り取れば……新たなコアメダルを作り出すまでは出来なくても、ガメルを復活させる際の不足コアの代替品には足りるかもしれない。
残ったガメルの意識コアに、自前のコアが5枚あるのだと誤認させれば良いのである。
完全態にまで戻ったメズールが行うならば、成功の目は充分にあった。

最後に、動物園の中央付近に聳える監視塔の一室に灰色のコアメダルを安置して。
ガメルを構成していたセルメダルに加えて、メズールが持っていたセルメダルも、相当量を積み上げた。
後は、材料達から養分を抽出するだけだった。

……もっとも、そう時間も経たないうちに、妨害者も姿を見せた。
闇夜の中でも色を失わない、黄なる魔法少女が。
物騒な筒を手に、メズールを恫喝したのだ。
子供達を離しなさい、と。
もちろん、そんな程度の言葉で引き下がるような怪人も居る訳が無い。

飛来する銃弾を、完全態になって甦った液状化能力によってスリ抜けながら。
メズールは、散弾銃のように水の弾丸を黄の魔法少女に浴びせた。
戦いが続くにつれて地面を染めていく朱は、しかし、どこか薄かった。
魔法少女から毀れた命の雫はメズールの発した水と混ざり合い、紅と呼ぶには色が足りない。

戦いの最中、魔法少女が尋ねて来た。
親から引き離された子が何を感じるのか分かるか、と。
どうでも良い、とメズールは思った。
この大筒使いの魔法少女が過去に何を経験してそんな言葉を発しているのか、そんな事はメズールの知るところでは無い。

むしろ、ガメルを失ったメズールの何を、こいつは分かっているというのだろう。
メズール本人でさえも、分かっていないというのに。
そんな事は、メズールはおくびにも出さないが。

思い出してみれば、メズールが剣の魔法少女を捕えて弄っていた際に。
銃使いの魔法少女は、メズールに対して怒りを露わにしたことがあった。
もしあのままメズールが青いソウルジェムを砕いていたら、眼前の魔法少女は、今のメズールのような心境に陥っていたのだろうか。
……これも、どうでも良いことだった。

少し経つと、銀の鎧を纏った青年が増援にやってきた。
だが彼も液状化したメズールに対して有効打を持っていなかった。
厳つい装飾銃も、右腕に追加された巨大なクレーンアームも、水を叩き潰す事は適わない。
メズールの水の弾丸を受けても削れる程度で済む装甲は、人間が作ったものにしては上出来なのかもしれない、という次元でしか無くて。
……人間どもを地に転がしても、何の感慨も湧かなかった。

粘る人間達にとどめを刺そうとしていると、上空からの砲撃にて身体を半分ほど消し飛ばされた。
液状化しているので損壊はさほど大きくないものの、この攻撃を受け続けると危険である。
頭上遥か高くには、紫の恐獣が翼を広げながら、いつもの大斧を砲撃形態に展開している様子が確認できた。
……それが、どうしたというのだ。

メズールはもうじき、儀式を終える。
この動物園の中央に突き立った塔では、あと幾許も無いうちにガメルの復活の準備が整う。
あそこに安置された灰色達が、メズールの帰りを待っている。

空中の紫のオーズを撃ち落そうと、メズールは水撃の矛先を上方へと向けた。
それを隙と見た地上のバースと魔法少女が、同時に最大威力の砲撃を試みたようだが、どのみち液状化しているメズールには効果は無い筈だ。
人間達の弾丸はメズールの身体をすり抜けて終わる。
そう、思った。

その射線の一つがメズールの帰るべき塔に重なっている事に、気付くまでは。
必殺技級の砲撃とはいえ、灰色のコアが砕かれると直感した訳では無い。
目に見えないレベルの損傷が灰色のコアに残っていれば大きな衝撃によって灰色コアは破壊されるかもしれない、と事前に思っては居たものの、それも確信では無かった。
それでも、メズールは。

……考える前に、行動していた。
人間達の驚く声が、この街に馴染んだメダルの落下音に塗り潰された。
回避できる筈の攻撃を、メズールは回避しなかった。
液状化を解いて実態を取り戻したメズールの身体には、人間達の砲撃によって抉られた傷口が確かに開いていて。
そこから、濡れに濡れた大地へとセルメダルが零れ落ちていった。

直後、上空から降り注いだ冷たい一撃が、全てを砕いた。
グリードの鈍い感覚でも分かるほどの肌寒さが、メズールの身体を貫いていて。
紫のオーズの放った最後の光芒が、終わりを告げた。
メズールというグリードが、終わる。
そう、分かった。

薄れ行く意識の中、メズールは最後に思った。
もしガメルが居てくれたら、オーズの砲撃からメズールを庇ってくれただろうか、と。

……貴方が居ないとダメだったのは、私の方だったのかもしれない、わね。

断末魔の悲鳴をあげる間も惜しんでメズールが考えたのは、そんな些細なことだった。




「……マミちゃん。何だか、妙にセルメダルが少ないような気がしない?」
「言われてみると、確かにそうですね……」

地上に降り立った映司が変身を解きもせずに言い放ったのが、そんな言葉であった。
どうも、映司がざっと見たところによると……グリード一体を解体した割には、随分セルメダルが少なく思えたらしい。
映司は過去にも不完全態だったウヴァとガメルを倒した事があるというが、その時よりも明らかに、現在動物園に飛び散っているメダルは少ないそうだ。
それが、映司が不審に思った点だという。

メズールが完全態だった割にあっさりと逝ってしまったのも、セルメダル不足に依るところがあったのかもしれない。
何か、セルメダルを消費する用事でもあったのだろうか。
まさか、何処かに置き忘れてきた訳でもあるまいが。

最悪の想定として、飛び散った残骸の他にメズール本体が何らかの形で生き延びているというのが、一番厄介なケースである。
人質の方に足を向けたりメダルを回収に行ったりした時に背後からぐっさりと殺られるとなれば、笑いごとでは無い。
しかし、飛び散ったメダル達の中には、ちらほらと青い輝きが散見された。
なので、メズールが完全態で再び襲ってくる可能性は、おそらく既に潰えていると見るべきだろう。

財団に報告を入れている後藤を尻目に、マミと映司はそれとなく言葉を交わしながら、他にも共通の疑問を抱えていた。
液状化していたメズールが最後の最後でマミと後藤の砲撃を食らってしまったのは何故だったのか、と。
ひょっとすると、液状化能力には使用制限があって、それがたまたまあの時に発動してしまったのもしれない。
都合の良すぎる仮説だが、それが一番ありそうかもしれないとも思えてしまう辺り、この考察には答えは無いと見た方が良いのだろうが。

「様子見を続けても仕方ないね。俺が残ったコアを回収してくるよ」

そうしないと、オチオチ捕虜たちの救出にも行けないので。
冷たいアスファルトの床に散らばったセルメダルを踏み分けつつ、紫のオーズは足を踏み出していた。
周囲に警戒を回して、ゆっくりと前進しているオーズは、今のところ危険分子を発見できていないらしい。

当然、マミも警戒は怠らなかった。
もしメズールも魔女を取り込んでいたりすると、オーズの感知器官では出遅れてしまう危険もあるからだ。
だが……緩慢な速度にて歩くオーズの進路の先を見た瞬間。

「…………えっ?」

……巴マミの背中が、鳥肌に染まった。
歩いているオーズの目と鼻の先、10メートル程前方に、人の形をしたものがあったのだから。
黄色の格子模様のジャケットと銀髪を目立たせた青年が、いつしか閑散とした動物園の中に現れていたのだ。

しかし、人間が居ること自体は、マミを恐怖させる材料となった筈も無い。
マミ達が警戒しているのは敵襲を退けるためなのだから、当たり前である。
問題は、そこではない。

「火野……さん……?」

そう。
マミの理解を超えていたのは、いつの間にかそこに突っ立っている闖入者の存在ではない。
紫のオーズが、未だに臨戦態勢に入らず、前進を続けていることだった。

まるで、オーズの進路上には誰も居ないと言わんばかりに、辺りを見回しながらオーズはゆっくりと歩みを進めているのだ。
巴マミには、まったく事態が呑み込めなかった。
メダルの取り込みに伴って火野映司の視覚が損なわれているのかとも考えたが、それも原因としては弱いと思えた。
先程まで戦闘まで熟していた程度には視力は残っているのだから、さすがに目前の不審者の存在を見落とす筈も無い。

この異常を感知しているのは、マミだけなのだろうか。
そう考えて後藤の反応を観察してみると……。
通信機片手にオーズの様子に目を割いている後藤も、無反応であった。

もはや、あの人影はマミだけに見えている幻なのではないか、という可能性の検証を巴マミの頭は始めていた。
幾らなんでも、おかし過ぎる。
もしマミの捉えた視覚情報通りにオーズの進路に見知らぬ人間が立っているのなら、映司や後藤が何らかの反応を見せない訳が無い。

相手が映司達の知り合いなのかもしれないが、この状況で人間が現れたら、怪しまれて然るべきである。
にもかかわらず、もはや相手が腕を伸ばせば触れられるところまでオーズは進んでしまっているのに、映司も後藤も銀髪青年の存在にすら気付いていないのだ。
状況に、現実感が足りない。

おもむろに、青年がオーズへと手を伸ばした。
……オーズは、やはり無反応のままに辺りを見回して、意味の無い警戒を続けていた。
青年が掴んだものは、オーズの中枢機関であるオーズドライバーで。
それを剥ぎ取られた映司は、人間の姿に戻ってしまっていた。

「あれ……?」

疑問気な声を漏らしている映司の様子は……出来の悪いコントのような気味の悪さを、巴マミに感じさせていた。
何かが、狂っている。

銀髪の青年が掏り取ったオーズドライバーからは、紫のメダルが飛び出して映司の体内へと帰還していた。
しかし、紫のコアメダル以外のオブジェクトは、一向に平常運行には戻らなかった。
ようやく、巴マミが全てを理解したのは……銀髪の青年であった姿が反転して、怪人が本来の形へと戻った時であった。

しなやかな細身に猫科動物の独特な鉤爪を輝かせ、ドレッドのような毛を頭から垂らした、一体の獰猛な怪物。
それが……人間に擬態していた不審者の、正体だったのだ。
どう見ても、お馴染みの黄色グリードのカザリだった。
そんなカザリの姿を目の当たりにして、マミは全ての不自然な事象に関する答えを手にしていた。

と同時に、マミは一足飛びに、カザリと映司が立ち尽くす場へと踏み出していた。
カザリが振るおうとした凶刃から、映司を守るために。
映司の自衛を期待しようという思考は、ことこの場面において、既に巴マミの頭からは抜け落ちていた。

「危ないっ!!」

カザリの爪が映司の腹を裂くのと、巴マミが映司を突き飛ばしたのは……殆ど、同時のことだった。
お蔭で、映司の足と胴体が泣き別れになる事も無かったが。
精々、腹の表面の数センチから出血しているという程度だろう。

だが、カザリの手には、たった今映司の懐から掠め取られた黄と緑のコアメダルが握られていて。
事態の最悪さ加減に、拍車をかけていた。

「マミちゃん……?」
「巴……?」

地面に突き倒されて、起き上がろうとしている映司は……状況を把握できていないに決まっている。
先程までマミが立っていた場所に居る後藤も、当然理解できていない。

かく言うマミも、今の今まで理解できていなかった。
映司と後藤が、何故眼前のカザリの存在に気付かなかったのか。

答えは、『感知する事が出来なかった』から。

「カザリ……貴方、キュゥべえを、食べたの……?」

マミの目が真っ先に向いたのは、カザリの耳から長く垂れた白い無駄毛で。
白から桃色へのグラデーションが美しいその耳毛には、どういう理屈か、宙に浮くように金環が備わっていたのだ。
言うまでも無く、マミの良く知る生物の身体的特徴に他ならなかった。
そして、白い宇宙人の生態を誰よりも知るマミだからこそ、カザリが怪人態を現した瞬間に答えへと辿り着いた。
すなわち、カザリは……キュゥべえを体内に取り込んだことによって特性を引き継ぎ、普通の人間から目視されることが無くなったのだ。

「カザリだと? 一体どこから攻撃したんだ……!?」

驚愕顔の後藤さんの反応も、マミの言葉から全てを察した様子の映司も。
現在進行形で、カザリのことが全く見えていないのである。

これは、あまりにも過酷な状況であった。
先程まで紫のオーズであった映司も見えていなかった事から察するに、おそらくカザリの纏う迷彩は物理的なものでは無い。
多種多様な感知器官を備えているオーズが警戒心を高めていたのなら、高々光学迷彩程度の偽装を見破れない筈も無いからである。
間違いなくキュゥべえの不可視化機能の流用なのだが、そうだとすれば、かなりの確率で『観測者の持つ因果の量』に依存するシステムだと見るべきだ。
おそらく、キュゥべえを目視できること自体が、魔法少女候補生としての資質を量る基準の一つなのだろう。

今までキュゥべえを当たり前のように見てきたマミは気が付かなかったが、魔女とキュゥべえの不可視化機能の間には歴然たる格の違いがあったに違いない。
普通の人間でも、メダルを持っていれば、魔女を見られる程度の因果を手にすることは出来る。
だが今思えば、メダルを持っているだけの人間がキュゥべえを見たという話は、マミは聞いたことが無いのだ。
現に映司等は、キュゥべえを取り込んだグリードを見ることが出来ていない。

しかも、そんな驚異的な迷彩能力を得てしまったのが悪辣なカザリであるというのが、最大の難点であった。
身体の色合いを黄に深めたカザリは、おそらく先程映司から奪った最後のコアを以て、完全態へと復活を遂げたと思われる。
縮れ毛のようだった髪は、いまや神話のヘビ女のそれのように、うねりながら空中を漂っていて。
その形態変化は、メズールが液状化能力を得たのと何処か似た雰囲気をマミに感じさせていた。

直感的に、分かった。
カザリもまた、失われていた完全な力を取り戻したのだ、と。

一方、人間側の置かれた状況は、最悪もひとしおだった。
映司と後藤はカザリを目視することも適わず、実質的に戦えるのはマミ一人。
先程の騒動を聞きつけて佐倉杏子か暁美ほむらも駆け付けるかもしれないが、それだけの人員でカザリを退けられるものなのか。



……絶望の足音は、刻一刻と存在感を増していた。



・今回のNG大賞

「よし、火野! 俺達も今からキュゥべえを食べるぞ!」

多分、人間には無理だと思います。
良い子の皆は絶対にカザリさんの真似をしないでください。

「どうやって探すんですか、後藤さん……」

そういう問題でも無い筈だ、映司……。

「佐倉さんが、キュゥべえは筋張ってて不味いって言ってたわよ」


・公開プロットシリーズNo.134
→カザリ×キュゥべえ


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