後藤慎太郎の勧めにより、火野映司の住む河原を訪れた暁美ほむらであったが……「……留守、ね」どうやら、無駄足であったらしい。残念ながら、河原にて見受けられる影は、蝙蝠娘一人分だけの模様であった。日も高く、ちょうど昼飯時にあたったようで、トーリは電撃漁で軽食を捕っている様子である。嫌に手慣れているように思えるのは……多分、このヤミーの適応力が意外に高いからなのだろう。ホームレス生活に馴染み過ぎてしまったに違いない。器用に弱電流を用いて枯葉に火を点けて魚を焼き始めた辺り、特に。が、別に暁美ほむらは、ホームレスヤミーの様子を見に来た訳では無いのだ。とっとと接触して、火野映司の行先を聞き出すに限る。……そう思っていたのだが。「……アレは」まるで魚の匂いに釣られた猫のようにトーリに近付いている男の存在に、ほむらは遠目に気付く事が出来ていた。銀髪の目立つ痩躯の青年が、トーリのもとへと歩み寄って行ったのだ。その青年の姿をほむらは何処かで見たことが有るような気がするのだが……思い出せそうに無かった。トーリと挨拶を交わしている様子が遠目に窺える辺り、あの蝙蝠娘の知り合いなのは間違いないが。……まさか、ヤミーに彼氏が居るという訳でもあるまい。ほむらの見込みによれば精々、美樹さやかよりは彼氏を作れる可能性が高いかもしれない、という程度である。ダメ女スキーの男性も世の中には居るのかもしれないが。それにしても、トーリの奴が人間の友人を作ってどうするのかという疑問は、もっともであった。もちろん、現在のほむらにとっての最善手が火野映司との合流である事は、改めて述べるべくもない。しかし、火野映司の居場所が分からないのも事実な訳で。何より……純粋な興味として、あの蝙蝠女が人間とどうやって共存しているのか気になり始めていた。別に、ほむらが人見知り気味だからトーリを妬んでいる、という訳でも無い。無いのである。なので、河原から遠ざかる二人を、ほむらは密かに追う事にしたのであった。魔力による聴力の強化を始めた辺り、何気なくストーキング上級者である。かつて視力を強化してメガネっ娘の称号を返上したほむらにとって、その程度の事は造作も無いのだ。「カザリさん、今日はどうしました? また新しい実験ですか?」「いいや、そういう訳じゃないんだ」……と思っていたら、聞こえてきた会話の中に、聞き慣れた名前が混じっていた件について。何時の間にか人気の無い裏路地に辿り着いた成年の姿は、やはり人間にしか見えない。しかし、カザリという名前は、ドレッドのような毛を頭から垂らした黄色の怪人のものであったはずなのだ。まさか、グリードが人間に化けるなんて事が出来たのだろうか。あの性格の悪いカザリが魔法少女や火野映司に化けての騙し討ちに出ない辺り、擬態に何らかの制限はあるのだろうが。思わず息を飲んだほむらは……しかし、どこか安心しても居た。そもそも、最近トーリが目に見えた悪さを働かないものだから、ほむらとしても少し扱いに悩んでいるところがあったのである。マミやさやかのトーリに対する信頼を見れば、ほむらとて心中穏やかでは居られなかった。むしろ、さやかの救助に尽力したトーリを少しは信じても良い、なんて心の中で少しばかり思わないでも無かったのだ。まぁ、トーリがカザリと通じているのならば、やはりトーリは敵なのだろうが。「攻撃しても勝ち目は……無いわね」そして、トーリの扱い以上にほむらを悩ませているのが、今からの身の振り方である。先制攻撃に出ても、勝ち目があるとは思えない。精々、カザリがトーリを盾にして事無きを得るぐらいが、関の山だと言える。カザリには時間停止も効かない上に、地力が違い過ぎるのだ。となれば、カザリ達が口を滑らせてほむらに情報を零してくれるのを願うのみである。……が、ほむらの意に反して、カザリは結界の入り口を生み出し、トーリと共に結界の中へと姿を消してしまった。盗聴防止のつもりなのだろうか。さすがに暁美ほむらの存在に気付いているとも思えないが、カザリは余程慎重に動いているという事なのかもしれない。しかし、ほむらが未だ存在を悟られていないとしても、結界の奥まで踏み込むのは深追いと言わざるを得ない。爆弾を投げ込もうにも、相手の結界の内部構造が分からないのだから、嫌がらせ以上の意味は無さそうである。かと言って、魔法少女達を集めて密会を目撃させれば良いのかと言えば、そうも言っては居られない。悪足掻きを得意とするあの蝙蝠ヤミーならば、カザリに襲われていた、なんて言い始めるかもしれない。いっその事、端からトーリがカザリに襲われている事にして仲間を集めるか。それにしても、ほむらがすぐに助けを求められる戦力はマミしか居ない。映司と杏子は何処に居るか分からないし、後藤もバースの調整中だろう。ましてや美樹さやかに至っては、魔法少女としての力を失っている始末であった。結論としては、「まず、佐倉杏子か火野映司に会うべき……ね」マミとほむらのタッグでトーリとカザリを相手にするのは、少し重い。先日はマミとバースが組んでカザリをようやく退けたと聞くぐらいなのだ。加えて、完全に後衛に回るであろうトーリも地味に鬱陶しい働きを見せそうである。確定戦力として暁美ほむらと巴マミを数えたとしても、プラスアルファが欲しいと言わざるを得ない。別に暁美ほむらは、勝てる見込みが無い戦いに身を投じるようなバトルジャンキーでは無いのだ。なので結局、ほむらの行動指針は変わらない。まずは自分の身を守るためにも、火野映司を探すべきだ。佐倉杏子も戦力ではあるのだが、ドライな面もあるので扱い辛いのである。結界から足を遠ざけた暁美ほむらは……まさか、想像出来た筈も無かった。カザリが結界を張った理由に。そして……結界の中で起こっている出来事に。『その欲望を開放して魔法少女になってよ』第百二十九話:目指す、先トーリは……突如として展開された結界に、警戒心を強めていた。カザリが何故結界を張ったのかと考えると、あまり良い予想は頭に浮かばないのだ。襲撃者が現れたのかとも思ってみたが、それならば結界は襲撃者の逃げ道を塞ぐために使う筈である。ところが、現在のカザリの結界の使い方は、まるで……。「カザリ、さん……?」「なんだ、そこまで考えが回らないかと思ったのに。もしかして君……少しだけ頭が良くなったのかな?」……まるで、結界にてトーリの逃げ道をなくしたようではないか。考えてみれば、カザリは今までトーリを実験台に使ってきた。混色コアとグリーフシードの取り込みは、トーリが危険を負ってこそカザリが手にした力である。しかし、それらが終わったら、トーリの存在価値とは?根本的に、ヤミーはグリードに『収穫』されるために生み出される生物である訳で。「……ウヴァさんのため、ですから」だが当然、トーリがセルメダルを届けるべきグリードは、カザリでは無い。「その調子だと、僕が怪しいって今気づいた感じじゃないね? いつから?」……ところが、いざ聞かれてみると、具体的に何時からと言われても思い至る節が無かった。前回トーリがカザリと会ったのは、ほむらの髪の毛を渡された時である。その時には既に、カザリに少しばかり不満を持っていた筈だ。危険な実験をトーリに押し付けるカザリを、トーリが快く思う道理も無い。それでも、カザリに対して決定的な不信感を抱いていた訳では無かった。さやかの一件に関しても、蝙蝠ヤミーがカザリを疎む理由は無かった筈だ。グリードが邪魔な魔法少女を始末した事については、ヤミーとしては問題無い。ヤミーならば大量のセルメダルに喜ぶべきであって、そのセルメダルをつぎ込んでたった一人の人間を救うなど……実行する訳が無い。トーリは、カザリを警戒していたというよりも……嫌っていたのかもしれない。損得の勘定でない部分において、さやかを殺そうとしたカザリの行動を受け入れられずに居るのだ。「何となく、です」「まぁ良いさ。僕にもそんなに余裕があるわけじゃないし、さっさと君のメダルを貰うよ」そして……カザリは、瞬き一つの間にトーリへと肉薄していた。自分自身の放った音声を抜き去るような速さにて、カザリが迫って来たのだ。当然、トーリへと垂直に突き立てられようとしている爪は、コアメダルを抉り出す事を目的としてのものなのだろう。トーリは黄色コアを持っていないので、カザリ自身の強化よりもトーリの弱化という意味合いの方も大きいに違いない。が、トーリが鎌のように振り降ろした翼によって、カザリの腕は叩き落とされてしまっていた。もちろん、トーリの翼には斬撃特性など微塵も備わっていないので、鎌のように腕を切り落とす事は出来なかったが。さらに、間髪入れずにトーリは、カザリの胴体へと足の裏をぶつけていた。……ただし、自身の足が伸びきる前に。つまり、カザリへのキック攻撃では無く、カザリを足場にしたジャンプである。ロストアンクとの戦闘経験があるトーリは、理解していたのだ。グリードは生半可な白兵戦が通じる相手では無い、とだが、トーリとしてもロスト戦から進歩している点はあるわけで。「でやぁっ!!」カザリを蹴って距離をとりながら、電撃を放ってみた。どういう理屈か翠の火花を散らす電撃が、瞬く間にカザリへと襲い掛かる。さすがにカザリがグリードの中で最速といえども、放電攻撃を回避する事はかなわなかったらしい。案の定、手の甲で電撃を防御しているカザリの姿が、そこには在って。「なんだ、こんなものなんだね。最初の動きのせいで、少し警戒し過ぎたかな」……当然のようにノーダメージだった。その身体からは、セルメダルの一枚たりとも零れ落ちては居ない。表皮からは少しばかり煙が上がっているものの、おそらく焦げているのは表面に付いた汚れなどであって、カザリ自体は無傷だと思われる。マズい。具体的に言うと、カザリに対する有効打が無い。まさか屑ヤミーや使い魔ではカザリに太刀打ちできる道理も無い。詰んでいるような気がしないでも無い。ついでに言うと、カザリの結界には内側からの出口も無い。無い無い尽くしとしか言い様が無い。もしも暁美ほむらが仲間を引き連れて結界に突入していたならば、トーリは簡単に助かったのかもしれない。人間の面々の目には、魔法少女を襲っているグリードの構図にしか見えないだろうから。しかし、トーリの知らぬところでそんなフラグは既に折れていて。援軍は……きっと、来ない。勝利を確信したカザリが、嗤った。そんな、気がした。ちょうどその頃……郊外の静けさの中に佇む真木邸にて。家の主たる真木清人は、何をするでもなく、壁にかけられた一枚の絵へと視線を注いでいた。世界の終焉を示す宗教画を模して描かれていながら、而して何故か所々にメダルの絵柄が埋め込まれた、奇妙な絵を。自身の為すべきことと決まっている『良き終末』の完成図たるそれは、真木の使命を再確認させてくれる。肩に乗った白肌の人形と共に、ただ滅びの絵画を視界に収めていたのだ。……そんな、時だった。真木清人が、背後に人間の足音を聞いたのは。「あの……」聞き覚えのある声色であった。間違いなく、昨晩に真木と手を組んだグリードの一人のものに違いない。何故か小さな人間の姿を借りている、赤いグリードの声と同じものだった。だが……真木清人は敏感に、その判断が半分誤っていることを見定めていた。真木の知るグリードという生物は、こんなに自信というものが欠如した気まずそうな声を出す事など有り得ないのだから。「アンク君……では、ありませんね。鹿目まどか君、ですか」「は、はい!」確か、アンクが憑代に使っている女の子の名前が、それだった筈だ。しかし、何故その少女が真木に話しかけて来ているのか。というか、アンクに支配されている筈の人格が、どうして表に出て来ているのだろう?「アンク君はどうしましたか?」「……えっ」疑問に思ったので聞いてみたが、どうも答えにくいというリアクションを返された。何か、真木に言えないような事がアンクに起こったのだろうか。それとも、真木が肩に乗せた人形に視線を固定しながら相手と話している様子に、ドン引きしたか。まさか、愛らしすぎる頭部を光らせる人形ことキヨちゃんの外見に文句がある訳ではないだろうが。「……えっと、ずっと私を支配してるのも疲れるから、時々アンクちゃんも休むみたいです」……その言葉に真木清人は、何だか引っかかるモノを感じとっていた。確かに、アンクは先日まで鹿目まどかに完璧に抑え込まれていた訳だ。従って、現在のアンクが鹿目まどかの管理に苦労していたとしても、有り得ない話では無い。だが、それならばアンクは鹿目まどかの身体を使わなければ良いのだ。何か、真木清人に隠されている情報があると見える。もっとも、それを隠しているのがアンクなのか鹿目まどかなのかは、判断できないが。「そういう事にしておきましょう。それで、鹿目君は私に用事があるのですか?」それはともかく、最初に話しかけてきたのは鹿目まどかの方なので、何か真木に言いたい事があるに違いない。しかし、鹿目まどかが一体何を物申したいと言うのだろうか。まさか食事の改善要求のような小事では無いだろうが、果たして?「教えて、欲しいんです。真木博士がどうして……世界を終わらせようと思ったのかを」果たしてその質問は、鹿目まどかの疑問なのか、それともアンクの疑問なのか。何となく、アンクなら聞いて来ないような気はする。しかし、鹿目まどかにしても、一体何故聞いてくるというのか。ひょっとすると、この少女の純粋な興味なのかもしれない。ちなみに、真木自身は鹿目まどか本人に対して良き終末を説いた事は無かったような気もするが……。脱獄時に残してきた映像辺りを鴻上会長から見せられたというのが、ありそうなところだろう。「私にはかつて……愛すべき姉が居ました」まぁ、今更隠す事でも無いので、真木としては過去語りに抵抗がある訳でも無いのだ。であるからして、真木はこの屋敷にて起こった事件のあらましを鹿目まどかへと話し始めた。早くから両親を亡くした真木少年が、たった一人の姉と共に暮らしていたことを。そして、姉が結婚を機に真木少年を遠ざけ、嘲笑ったことも。最後に、美しいものも最後は醜く堕ちるという変貌こそが世界の真理であると悟った真木少年がまだ美しいままの姉を『終わらせた』ところで、真木博士は話を締めくくった。「……」黙ったままの鹿目まどかは、真木の話を自分なりに噛み砕こうとしているのだろう。当事者にしか理解できない感覚的な部分もあるので、全てを分かれというのは無茶だろうが。「しかし、何故そんな事を聞くのですか?」……この真木清人の返しに、特に意味がある訳では無かった。ただ、何となくとしか言い様が無い。聞き返された鹿目まどかも、真木の言葉が意外であったらしい。真木から少しばかり目を逸らしてしまっている様子からは、自身の思考を言葉にするという行為に対する躊躇いが感じられた。……いつも全力でキヨちゃんの方に視線を逸らしている真木が感じたのだから、間違いない。「私が考えている『願い』が……真木博士の『終末』に近い気がしたから、です」まだ戸惑いが見える鹿目まどかの言葉は、しかしその願いの内容が既に大筋にて固まっている事をうかがわせた。おそらく『願い』というのはキュゥべえに叶えてもらえる一件だろう。しかし、幸せな家庭に生きていて、友達思いでもあるこの少女が、世界の終末を目指すとは思い難い。「……私、『過去と未来の全ての魔女をこの手で消し去りたい』って願うつもりで居たんです」鹿目まどかの言葉の意味を、人類最高峰を誇る真木清人の頭脳は瞬時に理解していた。おそらく彼女は、真木と同種の使命を抱いている。真木が滅びの対象を人類全体としたのに対して、まどかが魔法少女のみを対象にしているという違いは確かに存在するだろう。だが根本的な部分において、両者の思考の本質は同じものだと言えた。要するにまどかの『願い』は、魔法少女は醜い魔女になる前に良き終末を迎えるべきだ、という事なのだから。そして、その願いが過去形にて語られるとすれば……「なるほど。それなのに君は、魔女から魔法少女に戻った美樹君を見てしまって、醜い魔女にも可能性を見出してしまった訳ですね」「すごい、ですね。私がまだ殆ど話してないのに……」真木清人とて、姉を終わらせてから20年の間に、考えなかった訳では無い。もし姉があのまま生きていたら、後から優しい姉に戻った可能性はあっただろうか、と。実のところとして、真木が醜い末路という結果を人類全体に適用しようとしたのも、姉の持つ可能性を否定するためであったのかもしれない。既に姉を終わらせてしまったが故に、その未来の可能性を否定するために全人類の可能性を否定したのだ。「ですが……今回美樹君に使われたセルメダルは、容易に用意できる量ではありません。ヤミーが君の学友を襲って欲望を満たした分も含まれています」そこまでの対価を払ってようやく、美樹さやか一人を人間に戻せたというレベルなのである。さやかの場合は、志筑仁美が致命傷を負わなかっただけ、マシなのかもしれない。だが、今後に死に際の魔法少女からヤミーを作るにしても、その欲望次第では被害は計り知れないものとなるだろう。つまり、現実問題としては美樹さやかの方が特例であり、被害を出さずに魔女を人間に戻すのは殆ど不可能と言って良い。「それに加えて、その願いを実現することは、君自身に良き終末を招くことにもなります。未来の自分自身を倒す願いとなれば、その矛盾から人としての存在を保てなくなりますからね」真木も真面目に時間遡行を考えた事があるので、分かる。過去や未来の自分に干渉すればどうなるのか。全く別の歴史が生まれるという可能性もあるが、いわゆる主観的な時間遡行以外の時間移動は、タイムパラドクスを生むのだ。実際にそのようなパラドクスが生まれた例を真木が実際に観測した訳では無い。だが思考実験の中では、大まかな結論は出ていた。パラドクスを生む時間改変を行ってしまった場合、その改変者は他者から観測される事が無くなるのだろう、と。すなわち、鹿目まどかが全ての時間の魔女を消し去りたいと願った場合、鹿目まどかという人間が存在しない世界が再構成されることだろう。「……そう、ですよね」……そしてここでも、鹿目まどかが見せた反応は、少しだけ意外なものであった。真木清人の見立てでは、鹿目まどかは決して頭脳明晰とは言い難い。もちろん、剣を使っていた元脳筋魔法少女よりは遥かにマシだろうが、それでもタイムパラドクスのような面倒な問題に一人で答えを出せるほどの頭脳を持っているとは思えないのだ。まぁ、アンクに相談したというのが一番ありそうな線なので、特に突っ込む程でも無いが。「心配は要りません。鹿目君は、もう少し自信を持つべきです」確かに、真木清人と鹿目まどかでは、目指すものの規模は違い過ぎる。しかし真木は、人間には分相応という言葉があることを知っていた。真木は人類全体の良き終わりを導く事が出来るが、まどかが変えたい範囲は魔法少女に限られているのだ。そして、そんな小規模な終末にしても、真木と同じ方向に進む志には違いない。「例え魔法少女だけのものであっても……君の目指す終末と願いは、美しい。私が保証します」未だ、鹿目まどかの迷いを払拭出来た様子は無かった。だが彼女も、じきに理解する事だろう。人間は美しさを失って醜くなっていく事を。そして、そうなる前に人間は良き終末を迎えるべきである、と。もちろん、願いを叶えるために必要な因果の量の問題があるので、実際に鹿目まどかの願いが叶うかどうかは分からない。理論上、未来への時間移動は然程難しくないが、過去への干渉は難易度が高すぎるのだから。それでも真木清人の心は……どこか、晴れやかであった。規模は違えど、良き終末を目指す同志と巡り会えた事が、嬉しかったのかもしれない。「それと……着替えなら、私の姉が幼い頃に使っていたものが幾つかあります。自由に使って構いません」・今回のNG大賞現在のカザリの結界の使い方は、まるで……。「最近思うんだ。実はガメルとドクターを始末すれば僕のハーレムが完成するんじゃないかって。君も来ない?」「一応アンクさんは♂じゃないんですか、カザリさん……?」(憐れむような目)未成年者にいかがわしい事をしようとする不審者そのものじゃないか……。・公開プロットシリーズNo.129→まどかが真木博士にフラグを立てに行ったようです。