前回までの三つの出来事は!一つ!オリ主の名前がようやく決定した!「じゃあ、『トーリ』で」二つ!トーリのソウルジェムが体内に残っているのだという仮説が立てられた!「タカの目の力で物の内部構造を調べることが出来るんだ」三つ!トーリは、映司の変身を防ぐ理由を何も思いつかない!「天国のお母さん。今、貴女の所に行きます」「変身っ!」オースキャナーを構えた映司がそれをオーズドライバーのコアメダルに宛がおうとして、「火野さん、ちょっと待ってください」別の方面から声をかけられて、その動きを停止した。当然、トーリの発言では無いのだから、その声の主は巴マミ以外にあり得ない。他に類を見ない『死因=タカメダル』なオリ主となるところであったトーリを救ったのは……魔法少女の先輩であった。「女の子にそれは、やっちゃダメでしょう」「ああ! そういえばそうだね。俺、そういう事に鈍感でさ。ゴメン、ゴメン」救世主現る。この時、トーリの目には、巴マミの姿が救済の聖母に見えたという。間違っても『救済の魔女』では、断じて無い。そんなの絶対、あるわけない。「ところで、火野さん」「なに?」「火野さんは……ずっと私を『そんな目』で見ていたんですか?」マミさんの目の色が変わったような気がして、再び背筋に寒さが戻ってくるトーリ。今度はその脅威が自身に向けられていないことが救いではあるものの、別の危機が差し迫っている。ソウルジェムを握った巴マミがこれから何をするのか大体予想がついたトーリは、巴マミの行動を未然に阻止しなければならないのだ。魔法が行使されるとトーリのセルメダルが増えて、アンクに感知されてしまうのだから。今度はマミを宥める使命を負う事となったトーリ……彼女に安息の日は来るのだろうか。『その欲望を開放して魔法少女になってよ』第十三話:Tの災難/ 私は友達が少ない結局、マミから『タカメダル禁止処分』が発令されたものの、映司とトーリの命を懸けた説得によって大事には至らなかったのであった。タカコアを没収しようとしたマミとの間でもうひと悶着あったのだが、割愛させていただく。「それで、魔法少女になるのって、何か代償があるんじゃないんですか?」「……どういう事かしら?」暁美ほむらは、確かに魔法少女になるに際する代償があるような事を言っていたはずだ。魂が云々、肉体が云々、というやつである。「オーズじゃないですけど、例えば魔法を使う度に段々魔女になっていく、とか」大当たり、である。普段から割と電波を受信しがちな気があるトーリだが、斜め上に外れたアイデアが世界の核心を突くことだって、あるのかもしれない。もちろん、巴マミと火野映司はそんな真実をまだ知らない。「まさか、そんなことあるわけないじゃないの」マミの反応は映司と似たり寄ったりだったが……そこには付け入るべき隙が確かに存在したと、トーリは確信した。映司はともかくとして、マミには間違いなくある。オーズや魔法少女の力を使う事によって予期せぬデメリットが発生した場合、映司は大体の事は開き直って甘受するだろうが、マミは精神的に崩れそうだということが予想できたのである。そして、それを突くための材料も……それなりに手持ちにストックしてあったりして。「マミさん、実は先ほど初めて気付いたんですけど……ワタシ、記憶を失ってから今日まで何も食べなくても、全然平気だったんです」これは、事実である。トーリ自身は全く意識していなかったのだが、先ほど出された紅茶を啜っているうちに、ようやく気付いたのだ。経口で飲食物を摂取したことが一度も無い、と。「なんだか、自分の肉体がまるで人間じゃないみたいな、そんな感覚があるんですよ」はい、貴女はヤミーです。そもそもヤミーという生き物に食料が必要なのかという疑問は棚上げにして、トーリは『魔法少女』という存在に関する不信感をばらまいてみたのだ。映司のように『仕方ない』と開き直られたら会話が終わってしまうが、マミが魔法の行使を躊躇うような思考の誘導を行えれば、オーズの戦闘に随伴してセルメダルを少しずつ横領するという方針を取れるのである。「マミさんは、ソウルジェムが濁り切ったらどうなるか、知っていますか?」ワタシはもちろん知りませんが、と置いた上で、トーリはマミへ疑惑を植え付けることに腐心する。トーリとしては、口から出まかせを言ってマミを丸め込んでいるつもりなのだ。……それが偶々、キュゥべえの契約の真実を突いている、という偶然の一致が起こっているだけで。「……そんな状況は見たことが無いけれど、トーリさんは考え過ぎてると思うわ。記憶が無いっていう不安のせいで、考えが少しネガティブになってるのよ」「そうだと良いんですけど……偶然会った魔女さんが言っていたことが、凄く気になるんです」トラウマと共に植え付けられた記憶は、なかなか消えるものではない。だからこそ、世界の真実を知る暁美ほむらの言葉を明確に記憶していられる、とも言えるのかもしれない。「魔法少女の魂は変質して、肉体は入れ物に過ぎなくなる……らしいです」黒くて長い髪を真っ直ぐ伸ばしていて、ちょっとだけ目付きが悪くて、背は高めで、クールな感じの子です。あと、『魔法少女は私一人で良い……!』とか言っちゃうタイプだと思います。追加でその魔法少女の特徴をマミに伝えるトーリは……実は、暁美ほむらの名前を知らなかったりする。「多分……キュゥべえを殺したのと同じ子だわ。私はその子を魔法少女だと思ったのだけれど」「私が魔法少女の仲間を探している時にも、突然襲い掛かって来て……本当に怖かったです」暁美ほむらっていうのは、そういう奴なんだ。魔法の力に酔って同類を手にかける、危険な存在なんだよ!……とまでは、トーリとて言うつもりはないが。「アンクの話だと、その子はヤミーの疑いがあるんじゃなかったっけ?」謎は、深まるばかりである。一応補足しておくと、アンクが疑ったのは、暁美ほむらが猫型寄生ヤミーによって操られている親だという事態だったのだが……説明を面倒くさがったことが誤解に拍車をかけている。というか、映司は寄生型ヤミーを先日見たばかりのはずなのだから、そこに思考が結び付いても良さそうなものである。「何にしても、警戒が必要のようね」マミが3人の考えを保留にしようとした、ちょうどその時であった。コツコツ、という音が、マミの部屋の窓から響いたのは。扉ではなく、窓からである。高層マンションの、ベランダの付いていない方角の、窓から。「誰かがノックしてるみたいだけど、出なくて良いの?」「窓から入ってくる知り合いが居るなんて、マミさんはやっぱり一流ですねぇ」「それのどこが一流なの!? だいたい、そんな友達なんて居るワケが……」頼れる銃使いの先輩的な意味で。だいたい、マミにはそんな非常識な知り合いなど……意外と、居るかもしれない。アンクは宙に浮けるし、キュゥべえは何処からともなく現れるし、目の前のトーリだって飛べるし、魔女は非常識が当たり前だし……「……自分の人間関係を、洗い直してみたい気分だわ」碌な知り合いが居ない、ような。そんな現実逃避じみた考えを抱きながら、とりあえずカーテンを開けて窓の外に目をやったマミの視界に入ってきたものは、「ペーパークラフト……?」折紙のような薄い素材で出来た、赤いタカだった。その脚にはバッタらしき形状の緑色の物体が掴まれているのだが、今晩のオカズか何かだろうか。マミは知る由も無いことだが、普段ライドベンダーの中に収納されている缶状の物体が変形した姿が、目の前のタカやバッタである。……人外のお友達が更に増えてしまった件について、気付かなかったことにしようとして頭の中に消しゴムを走らせる巴マミ。「タカちゃん。それと……新しいカンドロイドかな?」火野さんのお知り合いですか。そうですか。何で彼らは私の住所を知っているんでしょうね?色々と突っ込みたいことが山積みのマミだが、とにかく来客を部屋の中に招き入れることにしたのだった。窓が開くとともに部屋の中に舞い込んだタカ、もといタカカンドロイドは素早くバッタをその脚から解放し、据え置かれたとある電化製品に向かって一直線に飛んでいく。その家電とは……テレビと呼ばれる映像を扱うための機器だった。素早くその電源を発見し、鋭いクチバシでスイッチを入れるタカちゃん。テレビのディスプレイに映った内容は、夕方から始まる子供番組、『まずは我々の出会いを記念してッ! ハッピィバースデイッ!!』ではなく、暑苦しいオッサンだった。ケーキを手前のデスクに飾った中年男性が、満面の笑みを浮かべながら、叫んでいた。「えええっ!? うちのテレビに何してくれてるのよ!? 買ったばかりなのに!?」別に、テレビが壊れた訳ではない。映像や音声を送受信する能力を持つバッタのカンドロイドが、通信データをテレビへ出力しているだけである。平日の昼間から公然と電波ジャックが行われている、とも言えるが。オッサンに対して、こちらこそ初めまして、と平然と挨拶を返す映司は、もしかするとマミとは別の常識を持った人種なのかもしれない。『人と人との出会いは、何かが誕生する前触れでもあるッ! 胸が躍らないかね!?』「胸も非常識な知り合いも、もう沢山よ! それよりテレビを弁償してっ!」最早、マミにお姉様キャラの面影は無かった。突っ込まずにやっていられるものか。いや、やっていられない!『こちらは、鴻上ファウンデーション会長の、鴻上光生です』「タカちゃんたちを使えるってことは、今まで俺達を助けてくれてた人たち?」台詞の前に米印が付いて聞こえるような抑揚のない声で、秘書と思しき女性が補足の説明を入れてくれた。出来ればその最も重要な情報を、真っ先に教えてほしかったものである。マミの傍らで、コレって本当に凄いですよね、と感心気にタカとバッタのカンドロイドを観察する映司は……そろそろ色々と諦め始めたマミの様子に気付いていないようだ。心なしかソウルジェムが濁り始めた気がする辺り、色々と末期なのかもしれない。そして、何故かセルメダルが増え始めたトーリは、ディスプレイを眺める二人を尻目に、空いている窓から逃亡を図った。アンクがもしこの場に来たら、色々と終わるので。セルメダルが増えた理由に心当たりが無いトーリは首を傾げながらも、こっそりとマミのマンションを後にした。魔法少女が絶望を抱く度に魔女へと近づき、それがキュゥべえの欲望と一致するために起こった現象であった……それはともかく。「私達が提供する武器やバイクの見返りに、君達の得たメダルの……70%を提供してくれないかね!? アンク君には既に伝えてある! 返事は後日聞こうッ!」映司の言葉を全く待つ気配さえ無く、通信は一方的に切られてしまった。そして、先ほどからリモコンのボタンを手当たり次第に押しまくっていたマミの努力がようやく報われたらしく、テレビの映像が地上波のモノへと戻る。額の汗を拭ってほっと一息つく巴マミの背には何故か哀愁が漂っていた、と映司は後に語ることとなる。紅茶は、既に冷めきってしまっていた……・今回のNG大賞「ほむらちゃん、誕生日おめでとう! バースデイケーキだよ!」「前もって言ってくれれば、あたしだってプレゼントぐらい用意したのに」「この間の、余りのお守りで宜しければ……」「……貴女達が祝ってくれるだけでも、私は嬉しい」果たして今日は自身の誕生日だっただろうか、という盛大な疑問を胸に抱えながらも、折角まどかが用意してくれたのだからと喜んでおくほむらさんの姿が、そこにはあったという……実は暑苦しい中年男性からの贈りものなのだが、本人たちが幸せそうなのだから、それでいいんじゃなかろうか。・公開プロットシリーズNo14→どう考えてもオーズ勢よりまどか勢の方が常識人が揃っている。