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No.29586の一覧
[0] その欲望を開放して魔法少女になってよ!【完結】(仮面ライダーオーズ×魔法少女まどか☆マギカ)[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/27 22:08)
[1] 第二話:ここで死んで。世のため人のため、そして何より彼女のために[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:13)
[2] 第三話:後藤と黒と盗撮画像[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 03:27)
[3] 第四話:パンツがあるから恥ずかしく無いもん[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 03:29)
[4] 第五話:Cyclone effect――風が呼ぶバッティング[カードは慎重に選ぶ男](2014/02/23 16:14)
[5] 第六話:魔法少女を逮捕せよ[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:26)
[6] 第七話:死なないのか? 私は聞いてない! [カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:26)
[7] 第八話:彼女には72通りの称号があるからな[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/27 15:55)
[8] 第九話:灼熱地獄の黄祭[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 03:56)
[9] 第十話:treasure sniper――殺してでも奪い取る[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:30)
[10] 第十一話:その時歴史が狂った[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:31)
[11] 第十二話:Tの災難/赤信号を振り切れ [カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:32)
[12] 第十三話:Tの災難/ 私は友達が少ない[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:35)
[13] 第十四話:(心が折れる音) [カードは慎重に選ぶ男](2011/10/05 14:52)
[14] 第十五話:rebirth ――珍獣は二度死ぬ[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:37)
[15] 第十六話:緑の党[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/21 04:02)
[16] 第十七話:A dying hero, a dead heroin[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:44)
[17] 第十八話:自分が変われば世界も変わる[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:42)
[18] 第十九話:その配役はおかしいでしょ[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/13 18:19)
[19] 第二十話:Ride the wind――風向きは変わり続けて[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/04 02:48)
[20] 第二十一話:悪魔へ下す鉄鎚[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/06 18:37)
[21] 第二十二話:暴走特急隊[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/06 19:04)
[22] 第二十三話:海へ辿り着かない雫[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/11 01:14)
[23] 第二十四話:壁にミミリア 障子にメアリー[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/16 19:07)
[24] 第二十五話:Free your heat――本当の気持ちと向き合えますか?[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/13 21:30)
[25] 第二十六話:小さな手のひら[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/13 21:29)
[26] 第二十七話:弱い女[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/17 21:17)
[27] 第二十八話:秘密主義者の集い[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/17 21:32)
[28] 第二十九話:継接インディアンポーカー[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/21 04:09)
[29] 第三十話:Power to tearer――暴君と泣き虫と欲望 [カードは慎重に選ぶ男](2011/09/21 03:58)
[30] 第三十一話:ずぶ濡れ衣々[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/24 22:21)
[31] 第三十二話:XXX板に出張スレを建てる予定はありません[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/25 09:19)
[32] 第三十三話:化物[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/28 17:36)
[33] 第三十四話:カンドロイドは電気鰻の夢を見るか?[カードは慎重に選ぶ男](2011/09/28 17:59)
[34] 第三十五話:Individual-System――悪意[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/02 02:18)
[35] 第三十六話:戦略的敗走[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/02 09:02)
[36] 第三十七話:颯爽退場洋菓子城[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/05 12:15)
[37] 第三十八話:口は万災のモト[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/05 12:22)
[38] 第三十九話:彼女の名前は[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/08 10:33)
[39] 第四十話:Sun goes up――夜明けを待つ休日[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/08 10:45)
[40] 第四十一話:変異[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/12 03:49)
[41] 第四十二話:恐怖心 俺の心に 恐怖心[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/12 02:39)
[42] 第四十三話:かの人のみぞ知る真価[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/15 09:24)
[43] 第四十四話:地雷付迂回路[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/15 09:52)
[44] 第四十五話:LORD OF THE SPEED――卂き魔法少女、マギブラック![カードは慎重に選ぶ男](2011/10/18 22:37)
[45] 第四十六話:円環の折り返し[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/18 22:34)
[46] 第四十七話:役者は揃わなかった[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/23 01:33)
[47] 第四十八話:ヤミーの身体はボロボロだァ![カードは慎重に選ぶ男](2011/10/23 01:32)
[48] 第四十九話:もう誰も頼りない[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/25 18:46)
[49] 第五十話:Break the Chain――蝙蝠の意地[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/25 18:46)
[50] 第五十一話:Kの誤算/それはとっても中ボスかなって[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/29 19:52)
[51] 第五十二話:Kの誤算/切掛[カードは慎重に選ぶ男](2011/10/29 19:45)
[52] 第五十三話:逆転の似合う女[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/01 20:21)
[53] 第五十四話:さらば戦友よ[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/01 20:31)
[54] 第五十五話:Time judged all――運命を奪い取れ[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/06 03:29)
[55] 第五十六話:愛しのグリード[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/06 03:34)
[56] 第五十七話:疑心伝心[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/09 01:00)
[57] 第五十八話:第一発見者を疑え[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/12 18:48)
[58] 第五十九話:伊達姿鎧男[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/16 00:20)
[59] 第六十話:EGO 〜eyes glazing over――勝手なヒト[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/19 23:02)
[60] 第六十一話:困った時に他人に頼れる奴は手強い[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/22 22:16)
[61] 第六十二話:捻くれ女[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/26 21:33)
[62] 第六十三話:ヤミーがこうなったのは私の責任だ……だが私は謝らない[カードは慎重に選ぶ男](2011/11/29 20:54)
[63] 第六十四話:戦いの後に[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:32)
[64] 第六十五話:Love Wars――愛っていうのは呪いみたいなものなんだ[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/06 22:29)
[65] 第六十六話:平日の昼間に出歩いてる女子中学生って……[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:27)
[66] 第六十七話:ダイナミック起床[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/14 02:56)
[67] 第六十八話:遅れた役者[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/18 05:59)
[68] 第六十九話:戦・略・崩・壊[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/20 23:48)
[69] 第七十話:Stranger in the dark――信じられるヒト[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/25 20:22)
[70] 第七十一話:扉越アンサンブル[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/28 11:37)
[71] 第七十二話:浴びるようにおでんを食べてみたい[カードは慎重に選ぶ男](2011/12/31 23:06)
[72] 第七十三話:調査とプレゼントと危険な会長[カードは慎重に選ぶ男](2012/01/28 22:21)
[73] 第七十四話:鋼・騎・無・双[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/04 21:36)
[74] 第七十五話:DEEP BREATH――虎の溜息[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/08 05:21)
[75] 第七十六話:汝の隣人を愛せよ[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/18 21:13)
[76] 第七十七話:未決断チルドレン[カードは慎重に選ぶ男](2012/02/24 20:42)
[77] 第七十八話:私の会う人がこんなに人間じゃない訳がなくもない[カードは慎重に選ぶ男](2012/03/03 20:09)
[78] 第七十九話:道化とピエロと形無しジョーカー[カードは慎重に選ぶ男](2012/03/12 07:36)
[79] 第八十話:Flashback――不気味な過去[カードは慎重に選ぶ男](2012/03/18 03:30)
[80] 第八十一話:一・触・即・発[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/27 15:59)
[81] 第八十二話:緊急回避は確かに格好良い。しかし余裕を以て回避するのが理想的である事は間違いが無い。[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/01 00:32)
[82] 第八十三話:妖怪と理解と望まれない再会[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/14 20:06)
[83] 第八十四話:将軍は日本語でジェネラル、英語でSHO-GUN[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/14 20:40)
[84] 第八十五話:SAMURAI STRONG STYLE――男の昔話[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/21 20:10)
[85] 第八十六話:欲しい言葉[カードは慎重に選ぶ男](2012/04/28 17:52)
[86] 第八十七話:破・願・逸・笑[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/05 21:18)
[87] 第八十八話:永かった一日[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/12 20:53)
[88] 第八十九話:暴れん坊前哨戦[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/19 21:13)
[89] 第九十話:Break a warning――ウロボロスの綻び[カードは慎重に選ぶ男](2012/05/26 20:22)
[90] 第九十一話:ひとのちから[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/02 08:49)
[91] 第九十二話:時代劇の中で会った、ような……[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/09 19:37)
[92] 第九十三話:二つに一つのA/二兎を追う者は二兎とも獲れ[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/25 17:04)
[93] 第九十四話:二つに一つのA/世界を回すもの[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/25 17:08)
[94] 第九十五話:Switch on! ――切り替わる舞台[カードは慎重に選ぶ男](2012/06/30 19:17)
[95] 第九十六話:友・達・野・朗[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/09 20:56)
[96] 第九十七話:巨大化は悪の美学[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/14 22:40)
[97] 第九十八話:泡沫の夢[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/21 19:08)
[98] 第九十九話:押収Cheater[カードは慎重に選ぶ男](2012/07/28 21:36)
[99] 第百話:Naturally ――本当の貴方ですか?[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/04 23:08)
[100] 第百一話:閃きの黄色[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/12 00:42)
[101] 第百二話:もしも無限があるのなら[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/18 22:09)
[102] 第百三話:錬金術師の残したアレコレ[カードは慎重に選ぶ男](2012/08/26 18:15)
[103] 第百四話:探究エンカウンター[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/01 20:05)
[104] 第百五話:Bounce Back ――善意より高いものは無い[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/24 06:34)
[105] 第百六話:河原割[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/15 19:04)
[106] 第百七話:犯人はヤス[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/22 23:17)
[107] 第百八話:ごとごとホットポット[カードは慎重に選ぶ男](2012/09/29 21:20)
[108] 第百九話:かくれんぼの必勝法は、誰がゲームに参加しているのかを鬼に教えない事である[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/06 17:37)
[109] 第百十話:Ride on right time ――少し遅れるぐらいがヒーローの定時出勤である[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/13 20:41)
[110] 第百十一話:結界天丼[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/20 20:19)
[111] 第百十二話:伏兵[カードは慎重に選ぶ男](2012/10/27 21:19)
[112] 第百十三話:胸に七つの……[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/03 21:14)
[113] 第百十四話:割りたい背中[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/10 22:12)
[114] 第百十五話:Last engage ――約束された良き終焉[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/18 01:04)
[115] 第百十六話:生と死の狭間に[カードは慎重に選ぶ男](2012/11/24 22:56)
[116] 第百十七話:残念パーティ[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/29 10:39)
[117] 第百十八話:凍える子羊にカモミールの温もりを[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/08 22:04)
[118] 第百十九話:いしのゆくえ[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/15 23:49)
[119] 第百二十話:Shout out ――さや歌[カードは慎重に選ぶ男](2012/12/22 23:28)
[120] 第百二十一話:俺が変身する!!![カードは慎重に選ぶ男](2013/08/17 11:01)
[121] 第百二十二話:開幕[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/05 20:39)
[122] 第百二十三話:Mに目覚めの口付を/生者より愛を込めて[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/20 16:14)
[123] 第百二十四話:Mに目覚めの口付を/引いて駄目なら殴り倒せ[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/20 16:10)
[124] 第百二十五話:Reverse / Re:birth ――相転移[カードは慎重に選ぶ男](2013/01/26 21:27)
[125] 第百二十六話:人魚姫と灼熱と奇跡の担い手[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/02 20:45)
[126] 第百二十七話:本当に裏切ったんですか[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/02 21:37)
[127] 第百二十八話:彼女の守った世界[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/09 22:28)
[128] 第百二十九話:目指す、先[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/16 20:57)
[129] 第百三十話:Got to keep it real ――ホントにしちゃえば良いんだよ[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/23 21:39)
[130] 第百三十一話:グリードと人間と半端者[カードは慎重に選ぶ男](2013/03/30 22:43)
[131] 第百三十二話:完全態[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/07 01:03)
[132] 第百三十三話:死を解する獣[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/13 21:37)
[133] 第百三十四話:獣愛ずる姫君[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/27 18:30)
[134] 第百三十五話:Double-Action ――二律背反[カードは慎重に選ぶ男](2013/04/27 18:49)
[135] 第百三十六話:羽のような重さ[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/04 20:57)
[136] 第百三十七話:獅子身中の蟲[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/11 21:16)
[137] 第百三十八話:蝙蝠女は選べない[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/19 00:17)
[138] 第百三十九話:魔法と約束と最後の希望[カードは慎重に選ぶ男](2013/05/25 21:56)
[139] 第百四十話:Regret nothing ――後悔なんて、あるわけない[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/01 22:37)
[140] 第百四十一話:信頼[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/08 22:22)
[141] 第百四十二話:ウヴァ死す[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/16 08:43)
[142] 第百四十三話:光もたらす者[カードは慎重に選ぶ男](2013/06/29 22:08)
[143] 第百四十四話:絆の鎖[カードは慎重に選ぶ男](2014/01/23 21:03)
[144] 第百四十五話:Finger on the trigger ――世界に弓引く意思[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/06 23:24)
[145] 第百四十六話:コネクト ――全てを繋げ[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/13 21:09)
[146] 第百四十七話:また あした ――俺たちの 私たちの[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/21 18:29)
[147] 第百四十八話:Anything Goes! ――選んだ明日[カードは慎重に選ぶ男](2013/07/27 22:26)
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[29586] 第十二話:Tの災難/赤信号を振り切れ
Name: カードは慎重に選ぶ男◆e9b07b89 ID:ab888f41 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/04 02:32
「志筑仁美、急いでまどかの居場所を聞き出して! 今すぐに!」

行きつけのファミレスで仁美が、親友である鹿目まどかからのメールを暁美ほむらに見せた時の反応が、それだった。
暁美ほむらという少女は、感情が乏しい。
少なくとも、仁美はそう感じていた。

「どうしたんですの? 巴マミさんは、暁美さんのお知り合いでしたか?」

だからこそ、目の前の暁美ほむらの姿に一番驚いていたのもまた、仁美だったに違いない。
焦燥感に囚われている暁美ほむらの表情には、いつもの静けさの裏に潜んでいた何かが、確かに見えていたのだから。
その思考の奥底にあるものの正体を看破することこそ適わなかったものの、暁美ほむらが非常事態を察知していることは間違いない。

「転校生、そんなに慌ててどうしたのさ?」

他人の機微に鈍感な節のある美樹さやかでさえ、暁美ほむらの変化にただならぬ事情を感じ取っているらしい。

「まどかを、巴さんに会わせてはいけない」

普段冷静なキャラクターを演じている暁美ほむらなら、二人のことを『鹿目まどか』『巴マミ』と呼称していたはずである。
それが崩れていることに気付いているのは、おそらく仁美だけだろうが。
ともかく、巴マミという先輩がとんでもない危険人物であると言う事だけは理解出来た。

「事情は大体解りました。とにかく、手分けして鹿目さんを探しましょう」

『大体解った=絶対解ってない』の法則というやつである。
実在の脚本家及び世界の破壊者様とはあまり関係がありません。
なお、結局まどかとのメールでのやり取りによって、巴マミと鹿目まどかが接触したわけではないという事実が判明することになったのだった。

魔法少女とは、世間に誤解されながら生きていく運命を背負っている者たちなのかもしれない……



『その欲望を開放して魔法少女になってよ』
第十二話:Tの災難/赤信号を振り切れ



少女ヤミーは、腹を括っていた。
何にしても魔法少女についての知識を得なければ、何も始まらないのだから。
すなわち、巴マミに直接会うという危険を冒さなければならない。
アンクの言葉がただの脅し文句だと見なすのは、楽観思考が過ぎる……そう思いつつも、少女ヤミーは僅かな希望に縋って巴マミに会いに来てしまった。
……見滝原中学校に。

狙い目は、下校時である。
校門付近に直立している警備員さんの目が非常に怖いので、付近の藪の中から様子を窺っているのだ。
傍から見れば不審極まりない人物なのだが、隠れているためにそれを不審認定する人間は居ない。

そして、お目当ての魔法少女は……ようやく現れる。
巻かれた金髪と年不相応に育った胸部を、誰が見間違えるものか。
巴マミ、その人に違いない。

「巴マミさん! どうか、ワタシの話を信じてください!」

第一声から、クライマックスにも程がある。
出会い頭に、その頭をそのまま下げるという文字通りの低姿勢に出たのだ。
土下座に出た方が良いかと一晩考えた末に、とりあえず頭を下げるぐらいに留めようと判断したのである。

「貴女は昨日の……」

一方の巴マミは、目の前で自身に懇願している少女の登場に驚きつつ、自分なりに状況をまとめようとしていた。
巴マミとしては、先日この少女にマスケットを向けたことが記憶に新しいものの、相手から怯えられることは本意ではない。
若干胡散臭いとも思っているが、少女ヤミーの言が真実であったら、あまりに不憫だとも感じているのだ。
そして、周囲から不審を多分に含んだ視線が集まっていることも、マミの精神を若干削り取っていたりする。

「とにかく、落ち着いて話せる場所を探しましょう」
「あのアンクさんっていう人の所じゃないですよね?」
「アンクがそんなに怖かったのね。大丈夫よ。きつく言っておいたし、手出しなんてさせないから」

この時、巴マミの頭の中では、少女ヤミーの恐怖の対象はアンクだけであるという思考誘導が行われた。
というか、自分が恐れられている可能性を無かったことにしたのだ。

――そうよ、可愛い後輩が私を頼って来てくれているのよ!

人間の精神的防衛能力は、時に目を見張るものがある……のかもしれない。
少女ヤミーの腰が引けた態度を、勝手に魔法少女としての先輩への尊敬だと解釈しようとする巴マミの姿は、何処か優しげであった。
それどころか、少女ヤミーを悪漢アンクから守らなければならないという加護欲まで働き始めている始末である。

「アンクはともかく、私のもう一人の仲間を呼んで良いかしら? 火野映司さんっていう人だけど」
「是非会ってみたいです」

おそらく、先日アンクから『オーズ』と呼ばれていた男のことだろう。
普段の思考の外れぶりからは想像もつかないような勘の良さを見せた少女ヤミーは、巴マミの申し出を快諾した。
アンクの危険度が巴マミ以上に高いことが想定される今となっては、最早オーズさんが常識人であることを祈る以外に少女ヤミーに希望は無いのだ。

携帯端末で夢見公園付近の公衆電話へとコールを繋ぎ、火野映司を呼び出してくれるマミさん。
何故直接かけないのかと尋ねてみれば、火野さんが携帯電話を持っていないからとのこと。
火野映司という存在の生活形態について、既に色々と情報が把握できた少女ヤミーだった。
ちなみに、もちろん少女ヤミーも携帯電話など持っていない。

「というか、私達にはもっと便利な魔法があるでしょう?」
「……何のことでしょう?」

どうしてこの後輩は、こんなに魔法関連の知識に乏しいのだろうか。
一瞬そんな疑惑が脳裏をよぎった巴マミだったが、少女ヤミーが記憶喪失を自称していたことを思い出し、そのせいだと思う事にした。

『聞こえる?』
「!?」

腹話術ですか? という古典的なボケをかまそうかと迷った少女ヤミーだったが、状況的におそらくテレパシーの魔法なのだろう。
何故そう言えるかというと……少女ヤミーのセルメダルが少しだけ、増えたからである。
つまり、ピンチ再来である。
セルメダルが増加したことを探知して、アンクが駆けつけて来てしまう。

「実は先ほどからアンクさんに追われていて、多分アンクさんがまだ近くに居るので、とりあえずこの場から離れたいです」
「そう……アンクには、後で私からもう一度きつく言っておくわ」

他人の名誉を棄損する嘘をさらっと口にする少女ヤミーは、正直さに関しては親であるキュゥべえと似なかったらしい。
マミの中で、アンクへストーカー疑惑が植え付けられた瞬間だった。
というか、マミからアンクへの呼び名に敬称が抜け落ちたのは、一体いつからだっただろうか?
アンク抜きでマミの住むマンションに集まることになったのも、結局マミからアンクへの人物評価が大きく関係しているのだろう。

そして、二人がマンションに辿り着く前から火野さんはその階下で待っていたわけなんですが、やっぱりこの人って無職なんじゃ……


「その子が例の記憶喪失の魔法少女?」
「そうですよ」
「……初めまして?」

少女ヤミーは何度かオーズの戦いを盗み見たことがあるものの、互いに顔を突き合わせたのはこれが初めてである。
だからこそ少女ヤミーが少し緊張しているのだろう、と巴マミは推測した。
だがしかし……対人経験の豊富な火野映司が下した判断は、それとは異なっていた。

――俺、何か怯えられるような事をしたかな……?

映司には、少女ヤミーの抱いている感情が恐怖であると感じられたのだ。
単純に目の前の少女ヤミーに対人恐怖症の気があるのかもしれないが、映司には一つだけ思い当たる節がある。

「初めまして。君、この間の俺達の戦いを見てたんだっけ?」
「……すみません」

映司の立てた仮説は、オーズの戦いを見た少女が、映司を恐れているというものであった。
……大当たりである。
少女はヤミーであるのだから、オーズがヤミー狩りを敢行する現場を目撃してしまった後では無意識の中に恐怖心が生まれてしまったことは仕方がないことだと言えるだろう。

「大丈夫。魔女かメダル絡みじゃなきゃ、基本的に変身はしないから。安心して」
「……?」
「心に留めておきます」

会話の流れが読めずに首を傾げた巴マミの疑問を曖昧な笑みで受け流した映司は、色々と流石過ぎる。
というか、恐怖感の原因以外の部分は完答しているのだから恐ろしいものだ。
そして、映司の言葉に、別の意味を読み取ってしまった少女ヤミーは、戦慄していたりする。

ヤミーだとバレたら間違いなく殺られる、と。

少女ヤミーの恐怖感を拭いきれていない様子を感じ取りつつも、とりあえずその件を保留にする映司。
人の感情を変えるのは難しい時が多いのだということを、知っているのだろう。
マミの住む部屋へ二人を招き入れ、簡単に名前を確認する程度の自己紹介を行った頃には、マミの抱いた疑問も完全に霧散していた。

「そういえば、名前無いんだっけ?」
「無いんじゃなくて、忘れているだけでしょう」
「多分そうだと思います」

――すみません、無いんです。
このオリ主は、割と平気で嘘を吐けるタイプの人間……もとい怪人である。
ただ、マミの淹れてくれた紅茶を啜りながら、心の中で謝る程度の罪悪感はあるらしい。

「呼びやすいように呼んで頂いて構いませんよ」
「じゃあ、『トーリ』って呼ぶことにしよう」

映司の、即答だった。
ひょっとすると、一晩の間に考えて来てくれたのかもしれないが。

「火野さん……その心は?」
「羽がある子なんでしょ?」

……それはもしかして、『鳥』っていうことなの?
確かに少女ヤミーの羽は虫よりは鳥に近い羽ではあった。
しかし、どちらかと言えば哺乳類らしさが残っていたようにマミには思われたのだが……映司は実物を見たことが無かったのだから、勝手な想像をしてしまったのだろう。

巴マミの額に青筋が浮かんでいることを敏感に察知した映司だが、心当たりが無い。
むしろ、喜ばれるだろうとさえ思っていたのに。

「……その名前で良いですよ」
「嫌なことは嫌って言っていいのよ!?」

少しだけ悩んだような間を置いた少女ヤミーだったが、映司からの命名を受け入れる意思はあるようだ。
思わず突っ込んでしまったマミは……お姉様キャラを演じるのに疲れたのだろうか。

「映司さんが折角考えてくれたのを、無下に扱うのも悪いですから」
「まぁ、本人がそれで良いって言うなら……」

割と本気で気にして居なさそうな少女ヤミーと満足そうな火野さんの様子を見て、ひょっとして自分のセンスがおかしいのかと疑い始める辺り、マミも相当の苦労人なのかもしれない。
それはともかくと場を切り替えて、もう一度少女ヤミー……もとい『トーリ』の身の上を簡単におさらいしたマミと映司は、『オーズ』と『魔法少女』についての説明を一通り施してくれた。
とは言え、その内容は先日アンクを含めた3人で話し合ったものと同一のそれに過ぎなかったのだが。

「それで、トーリさんがソウルジェムを持っていない理由を私なりに考えてみたの」
「流石、魔法少女の先輩です!」

マミさんは最高です!
ソウルジェムとは、魔法少女が魔法を使う時に魔力を引き出すためのアクセサリーである。
基本的に、ソウルジェムに振れている状態でないと魔法の行使は不可能だということらしい。
マミの黄色いソウルジェムを見せてもらいながら、綺麗ですねぇ、と漏らすトーリの興味津々な言葉が、マミの心をくすぐる。
嬉しくもあり、こそばゆくもあり。

「確認だけれど、トーリさんは魔法が使えるのよね?」
「この通りです」

そう言いながら、骨格の見える黒く艶のない羽を展開して見せるトーリ。
鳥っぽく無いなぁ、とその羽を見ながら呟く映司を余所に、トーリは期待満々な視線をマミに向けていた。

「私がキュゥべえと契約した時、ソウルジェムは私の身体の中から出て来たのよ」
「それは興味深いですね」

未だに本題を切り出していないマミの言葉に相槌を打ったトーリが思い出したのは、

『私達の魂は変質させられ、身体はただの入れ物に過ぎなくなる』

誕生日に暁美ほむらより告げられた言葉だった。
聞いた時には魂の変質という言葉の意味が掴み取れなかったが、今考えてみると魔法少女の身体から取り出されるというソウルジェムはそのイメージに合致している。
名前だってそのまま、魂の石だ。

「それで思ったんだけれど、トーリさんのソウルジェムは、まだ体内にあるんじゃないかしら」
「つまり、目視は不可能ってことですね」

そもそもヤミーである自身に魂などというものがあるのかという疑問は残ったが、巴マミがそういう仮説を立ててくれるのならば、それに頷いておくのが吉というものである。
そして、トーリのソウルジェムが見えない場所にあると納得してくれるのなら、願っても無いことであった。

「……という話を火野さんにしたら、良いアイデアがあるらしくて、今日は二人を合わせたのよ」

あれれぇ……何だか嫌な予感しかしないのは何故でしょうか?
先ほどまで、今日はラッキーデイだ、などと浮かれそうになっていたテンションが、既に底冷えを見せ始めていた。
いや、まだ映司さんは何も言ってないじゃないですか。
ネガるにはまだ早い、多分。

マミさんの口調から察するに、火野さんが何をやろうとしているのか未だ聞いては居ないみたいだけど……

「タカのメダルを使ってオーズに変身すると、目に備わる力で物の内部構造を調べることが出来るんだ。それを使ってみようと思って」

まずい。
マズすぎる。
身体のスキャン?
そんなことをされたら……予測される三つの出来事は!

一つ! アンクはメダルのためなら何処までも残酷になれるんだァ!
二つ! ヤミーがセルメダルを生むなら、殺るしかないじゃない!
三つ! セ イ ヤ ァ ッ !

死亡コース直行である。
明らかに先ほど飲んだ紅茶の量以上の冷たい汗が、トーリの服の下に溢れている。
暑さと肌寒さを同時に体感するという、出来ることなら一生味わいたくない状況を経験をしている真っ最中だ。

「ちょ、ちょっと待ってください! 変身って、何かワケが解らない副作用とか無いんですか? 身体がボロボロになっていくとか!」

必死である。文字どおりの意味で。
そして、アンデッドなら、実は貴女の隣に居ます。
火野さんやトーリの横に座って紅茶を淹れなおしているその子はゾンビなんです。

「そういえば、これを使えばただでは済まないって言ってくれた人が居たような……」

――それを使えば、タダでは済まない……!

そいつは人では無かったはずだ。
カマキリの姿をした緑色の怪人ではなかったか?
奇しくも、映司を説得しようとしていた彼はトーリの兄にあたる人物だったりするのだが、そんなことは誰として知るよしも無い。
その怪人のことを思い出しながら水色のオーズドライバーに目を落とす映司だが、その手を止めた時間は一瞬の間だけに留まり、すぐさまベルトを装着する。

「映司さんにそんな迷惑をかけるのも悪いですから……ね、ねぇ、止めましょうよぉ!」
「大丈夫。もう何回か変身してるし、副作用はあったら有ったで仕方ないでしょ」


小気味良い音を立てて、ベルトの3つのくぼみに赤・黄・緑のメダルが嵌めこまれる。

――三つ数えろ!

何処かの町の探偵たちの名台詞の語源であるこの言葉が、セットされたメダルを見た少女ヤミーの頭に届いたという。
……ただの、電波である。

機械音と共にオーズドライバーの平行が崩れ、コアメダルが上中下を表す関係へと配置を変える。

「待っ……」

左手をまるで何処かの二号さんの鏡映しのようなポーズに曲げた映司は、その右手にコアメダルの読み取り機器であるオースキャナーを取り出している。

「変身っ!」

そう高らかに声を出す映司を前に、トーリの頭の中には新たな作戦が……何も、無かった。

――天国のお母さん。今、貴女の所に行きます。

もし天国や地獄があるとして、トーリやキュゥべえが天国へ行けると、本気で思っているのだろうか……



今回のNG大賞
「そのコアメダルってアンクさんの所有物ですよね?」
「アンクがマミちゃんに射殺されそうな所を助けた時に、条件として俺が預かっておくことにしたんだ」
(マミさんって、やっぱりトリガーハッピーだったんですね……)

誤解は、深まるばかり。


・公開プロットシリーズNo.12
→実はオーズには、かなりのチート設定が詰まっている。


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