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No.28794の一覧
[0] IS 幼年期の終わり  [のりを](2013/09/12 00:14)
[1] NGS549672の陽のもとに[のりを](2011/09/07 04:10)
[2] 彷徨える一夏/ vs銅[のりを](2011/12/26 09:53)
[3] 学園の異常な校風 Mr.strength love[のりを](2011/10/03 22:14)
[4] 織斑一夏はアイエスの夢を見るのか?[のりを](2012/03/27 00:49)
[5] 英国の戦士 / VSセシリア(2/10)[のりを](2011/12/26 09:55)
[6] Take Me[のりを](2011/12/14 21:03)
[7] ASIAN DREAMER / vs箒[のりを](2011/09/19 21:11)
[8] FIGHT MAN / ときめき セシリアVS箒[のりを](2011/12/26 09:57)
[9] La Femme Chinoise ラファールVS甲龍[のりを](2011/12/26 09:56)
[10] BREEZE and YOU  とあるアメリカ製ISの一日[のりを](2012/01/10 17:39)
[11] domino line[のりを](2012/06/03 19:19)
[12] Omens of love(前)[のりを](2012/03/31 16:34)
[13] 【番外編】 GALACTIC FUNK[のりを](2011/12/14 21:04)
[14] 【設定集】ファウンデーション [のりを](2011/12/27 10:33)
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[28794] La Femme Chinoise ラファールVS甲龍
Name: のりを◆ccc51dd9 ID:e7d0f7e6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/12/26 09:56
それは、オリーブグリーンの重厚な鎧だった。
まさしく兵器、まさしく工業製品と称賛すべき、機能を追求した結果の直線の織りなす造形は、最早独特の美を獲得していた。
それを纏うのは、美女と呼んでも差し支えない褐色の肌をした少女である。しかしその目鼻立ちの整った顔には表情というものがおよそ欠落し、ただ正面を凝視するのみである。
鎧の名は、ラファール・リヴァイブ。そしてそれを駆る少女の名はナタリア・フォセンカ

彼女の視線の先にあるもの、それは、日本製ISとはまた異なった、オリエンタルな曲線をフォルムに持っていた。
最も目を引くのは巨大な一対の浮遊部位である。正面から見れば赤紫の角を具えた双頭のカラスを従えているようである。
黒い嘴に金のアクセントを引いて、その無機質な目は正面を見据えていた。

曲線の映える籠手に対し、降着装置はスラリと地面へと伸び、二股に分かれ後部へと伸びる踵もまた特徴的である。
その背後にちらりと見える幅厚の刃は、IS化された青龍刀とでも呼ぶべき代物であった。

それに身を包むのは、まだあどけなさが残るといっても過言ではない少女である。
しかし、その可愛らしい顔に年相応の無邪気な笑顔を浮かべる様は、その強大な具足に対しあまりにも不釣り合いであった。

双方が静止したところで突如、目を輝かせてその少女は喋り始める。
「皆さん!私は中華人民共和国代表候補、鳳 鈴音(ファン リンイン)です!」
「IS学園の同志に、我が共産党の英知の結晶である、この世界新鋭IS『甲龍』(こうりゅう)を披露できる光栄に預かり、感激で身が震えるばかりです」

それは相対する少女を完全に無視した行為だった。その視線、その意識は、遮蔽シールドの向こうへと向けられている。

もはやナタリアが我慢を出来る道理はない。
ISライフルの銃口を指向した瞬間、ギロリと眼球を動かした鈴と眼が合う。引き金を構わず引く。ナタリアの腕の内でライフルが震えて咆哮し、超硬製の弾体が鈴へと殺到する。
それは数瞬前まで鈴のいた空間を突き差し、シールドに激突して爆ぜた。

<<やれやれ、せっかちねぇ>>

中空へと跳び、ナタリアを中心に円を描く軌道で飛翔する鈴が、ナタリアに圧縮言語でメッセージを伝える。
決闘の最中に言葉を発するなど、どうしようもない愚行か、挑発でしかない。時間・思考・IS演算容量、貴重なリソースを割いてそのような行為を行うなどは。

これは私闘であった。突発的な個別の“ケンカ”に介入するほど学園は暇では無い。
また、学園に介入させ、学園に正式に見届け人を依頼するには、多少の時間と手間を必要とした。
ゆえに、ナタリア・フォセンカとそのグループは、第三アリーナを生徒に事情を説明して占拠し、その私闘場とした。

見届け人は、学食での騒ぎを目撃した、それを聞きつけて来た、中国代表候補を観察すべく来た、各学年の生徒と教師達である。


ナタリアのライフルは、縦横無尽に翔けまわる鈴を追ってその銃口を細かく上下左右し、火を吹き続ける。しかしそれは、鈴の飛行経路を狭める牽制の役割すら果たさない。
ナタリアの視界には、鈴の軌跡が合成される。それは、鈴の速度の大きさを示す七色に色づけされて複雑な曲線を描いて鈴まで繋がっている。
曲率半径、速度、どれも規則性を一切感じさせない。

熱くなりそうな頭を冷やして、ナタリアも鈴を追うように宙へと舞う。空になった弾装を重力のままに薬莢の散らばる地面に落下させ、量子展開した弾装を装填。
高度を一気にとりながら、ラファールの背部バインダーから4発の、通常の対IS用高速ミサイルより二周りは太いミサイルが、偏向ノズルからオレンジの鋭い火炎を吹いて発射される。
マッハ2という、対ISミサイルにしてはかなりの低速で、一発はまさしく鈴の現在位置に、二発はそれぞれ別の未来予測位置に、もう一発は迂廻し、時間差で鈴へと向かう。、。

その光景を見て、鈴は不敵に笑う。
いや、その笑みにはあきらかに侮蔑の表情さえ混じっていた。

突如として鈴は単調な軌道を取り始める。それにいち早く気づいたのはラファールの演算装置である。
急激に絞り込まれる未来位置に、二発のミサイルはほぼ同じ位置を目指す。

鈴と交錯するわずかゼロコンマ数秒前、その二発のミサイルは突如花開くように、それまでの軌道を中心とする円周上に等間隔に6つの円柱に分裂する。
分裂位置を基準に、円錐状に広がりながら、さらに円柱はそれぞれ三つの短い円柱へと分裂。
全ての部位はカーボンナノチューブを縒り合わせたワイヤーで接続され、真正面からみれば、氷の結晶が成長するような、あるいは蜘蛛の巣が広がるような光景である。

無論、鈴の置かれる立場とすれば後者の表現のほうが正しい。それらは空間的な捕縛ネットであり、爆導索であった。
それに対して、鈴は急遽軌道を鋭く変え、蜘蛛の巣へと加速する。そして青龍刀を以ってワイヤーを一つ切断し、それをすり抜ける。
さも簡単な当たり前のことのようにそれをなしたが、、その行為はまさしく綱渡り的そのものである。
もし刀を振るうタイミングを一瞬でも間違えれば、刃の立て方を、最適の刹那に合わせることが出来なければ、青龍刀はワイヤーを切断することができず、
分銅と化した分裂体が鈴をしたたか打ちのめしたのち、爆破、一瞬動きの止まる鈴に砲弾が殺到し、敗北するであろう。
それは、とてつもない精神力・技術・度胸が無ければ、成すことが出来ない技だった。

ワイヤの断裂を感知した分列体はその場で爆裂するも、もはや鈴は有効圏内に無い。
もう一方の蜘蛛の巣は、慣性で飛ぶ破片と、鈴を真後ろから追撃していたミサイルを見事に捕縛し、爆裂した。

それをカメラとセンサーで無感情に眺めていたのは、迂廻したミサイルである。
そしてそれらは、背後に衝撃波を受けて急降下する鈴を捉えた。未来位置予測。地面への接地後、地面を一蹴しての軌道変更。

いや、対象は地面へと接地して、その場に留まった。これは好機である。
母機からの信号が無いことを確認すると、そこへと一直線に突撃する。6つの円柱へと分裂。そこにワイヤはない。
三つが先行。それぞれオレンジ色の火花と共に140個の小弾を鋭い円錐型に放射、遅延する三つが鈴のいる空間で爆発。派手な煙も炎も上げない。ただ空気が歪んで見えるほどの衝撃波を発生させる。
三つの衝撃波の焦点にあって、鈴が無事なはずがない。そこに鈴が居れば、だが。


その光景を歯がゆく見ていたのは、ラファールを纏うナタリアである。
甲龍はミサイルに対し欺瞞情報を流し、ミサイルとラファールとの通信をもののみごとに遮断したのだ。

鈴は、背後での爆発を後目に悠々と飛ぶ、いや、緩やかに見える曲線を描きながら高速でナタリアへと向かっている。
ライフルを撃ち続けるも、まるで宙に浮く羽毛をつかむような軌道によってその悉くを避けられる。
ラファールは、鈴の予測経路を絞りこめない。空間に確率を色づけしてナタリアに見せ、判断を委ねる。ライフルの銃口が、一瞬迷う。

その遊びを鈴は見逃さない。一気に加速しナタリアへと飛翔する。
ラファールとナタリアは、手に持つライフルのストッピングパワーでは鈴を止めるに不十分であり、このままでは両断される運命にあると知る。

後退。小型のローターで浮かぶ50cmほどの浮遊機雷を14個ほど量子展開・敷設しながら、弾装を交換しながらの、前面を鈴に向けての急速後退である。
機雷原と鈴が交錯する寸前、突如機雷のうちの二つが爆発する。それは、その機雷原に開けられたその孔は、鈴とナタリアまでを繋ぐ最短経路を形成した。

ナタリアの精神的衝撃、ナタリアの思考を受け、その爆発の原因を探ろうと、そしてその事態に対処すべくとラファールの急速演算。それは、一瞬の硬直を生じさせる。
気がついた時にはライフルを跳ね上げられた青龍刀が両断していた。

それを投げ捨て、回避…いや、それは本能的な逃避に近かった。
単調な軌道は、すぐさま鈴に捉えられる。高速でのすれ違いざまの手刀がナタリアに刺さる。
体制を崩したナタリアに、回り込んでからもう一発、たたき落とすように放たれたそれを受け、半ばラファールは自由落下に陥る。
さらに、ラファールのゆがめる空間の物理場の揺り戻し、フィジカルストップストリームを捕まえ、背後へと吸いつくように接近。

ラファールの巨大なバインダーをそれぞれ両手につかみ、足を背中にあてがい

<<壊れちゃえ>>

確かにナタリアは聞いた。
地面との間に押しつぶされて、絶対防御が無ければミンチになるほど地面に研磨され、背後のバインダーコネクターがメリメリと音を立てる中。

それは、幼い顔立ちに良く似合う、本当に無邪気な笑顔だった。
無垢な子どもが、トンボの羽を千切っては川に棄てる時、きっとそんな顔をしているだろう。

コアからのエネルギー供給と、安定化物理場を失って、湾曲空間翼と量子収納空間を御せなくなってバインダーが内側からひしゃげる。そしてそれは無造作に投げ棄てられた。
もう一方の羽にさらなる力が加えられ、シャフトと固定リングとが悲鳴を上げる。鈴の眼の前に突如浮遊機雷が展開される。
その爆発に巻き込まれたのは、ナタリアだけだった。無様にごろごろと地面を転がり這いつくばって、そして必死に起とうとするのを、
10mほど離れた位置から埃一つ着けずに観賞するのは、鈴だった。

「さぁ問題です。アタシが何度とどめを刺せたでしょう?」

ラファールは、音声センサでそれを聞いた。圧縮通信ではない。電波ですらない。
鈴の声帯が空気を震わせる原始的で悠長な情報発信手段である。

その屈辱に耐えながら、ナタリアは長剣を量子展開、それを杖のように体を支えて、なんとか起き上がる。

「ライフルのかわりに、両断できた」
人差し指が起つ
「手刀のかわりに叩き切ってもよかった」
中指と薬指が
「地面に叩き付けた時」
小指が
「翼をもいだ時」
親指が

「五回?さぁ、正解は?」

そう言って楽しそうに笑う鈴が与えたその時間の内に、なんとか起ちあがり、ナタリアは長剣を両手で、正中に構える。
その顔には、怒り、怯え、それに立ち向かう勇気が滲み出ている。IS乗りたる誇りが彼女を支える。

「……なによその顔。つまんない」
中指から小指までを一遍に曲げ、人差し指をナタリアに指向する。

「残念、時間切れ。」
手が架空の銃となって、ぴんと砲身が上へと跳ねてリコイルが再現される。

ナタリアの右二の腕と、左太ももがあらぬ方向へと折れ曲がり、一瞬遅れてそこを中心に空気の揺らぎが球状に広がる。

「正解は“いつでも”でした!」
崩れ落ちるラファールに、輝かんばかりの笑みで、そう言い放つ。

四肢の末端をびくびくと痙攣させながら、うつ伏せに蹲るナタリアに、見届け人を兼ねた彼女の盟友が駆け寄る。
エレベーターから赤い十字を纏った純白の回収機がせりあがり、ナタリアを掬いあげるように収納して、エレベータへと帰っていく。
友人たちはそれを見届けて、そして鈴に怯えながら批難の眼を向けることしかできない。

その光景を鈴は満足げに眺めて、遮蔽シールドの向こうのピットへと帰っていく。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……これが貴方がクラスマッチで戦う相手ですわ」
「名前は鳳 鈴音。中国共産党、人民解放軍・戦略IS軍所属、さらに中国国家代表候補生」

学園のデータアーカイブに接続した三人は、ISを通じて、これまでにない臨場感でそれを追体験した。

「そして、これが先ほど中国共産党の電子プレスですわ」

虚空に浮く新聞紙が、ブルーティアーズの手の上に現れる
曰く、新鋭IS『甲龍』、華々しくそのデビューを飾る。それを駆けるのは、わずかIS搭乗歴一年の超天才少女鳳 鈴音同志。
以下開発部同志と共産党への賛美であり読む価値はない。

「英国といたしましては、彼女の情報は、共産党が公式に発表した以上のものはなにも存じ上げません。おそらく。IS歴一年というもの事実でしょう」

そう言いうセシリアを、一夏はどこか上の空で聞いていた。

「どうなされました?顔色が優れないようですが…怖気づいたのですか?」

セシリアは、食堂での鈴と一夏との接触を知らない。騒々しい食堂をいち早く後にしたためである。

「いや、そういうわけじゃないんだ。ただ、ただ……」

うなだれる一夏に、一夏にとって予想外の救いの手が入る。

「どうやら一夏とその鈴という者は旧知の仲らしいのだ」
「それが、なんの前触れもなくIS乗りとなって眼の前に現れて、動揺しているのだ」

篠ノ乃箒であった。

「あら、そうでしたの?……どういう間柄で?」

「恋人…だった。そう、“だった”。あんなの、とても、あの鈴とは……信じられない」

その言葉に、箒はきゅっと締まる胸に思わず手をやる。
その光景を見て、セシリアは思考を巡らす。一夏と鈴の過去の関係についての詮索・調査は後回し。
まずは己の目標を遂行するためどうすればよいか、それだけを考える。そして一定の結論に至った。

<<箒、あなた、一夏に恋をしていますね>>

箒だけへの指向圧縮通信。なっ、と叫びそうになる箒に、推測が正しかったことを確認し、さらに畳みかけるように通信を飛ばす。

<<あなたは、その恋を成就させたい、私は不安事項を一つ取り除きたい。互いに得が一つ増えますわ>>

恋を成就!その言葉に、箒の思考はまさしく停止する。

「一夏!うじうじしていても始まりませんわ!!」
「悩もうと悩むまいと、クラスマッチの日は来るのです!それまでを一夏は無為に過ごすのですか?抗ってみせるのですか?」
突如、セシリアはそう勢いよく捲し立てる。
「一夏は、一流のIS乗りになりたいんでしょう?己の存在を世界に刻みたいのでしょう、これぐらいの逆境に耐えられなくてなんですか!」

一夏は、心を押しつぶさんとする暗雲を、“これぐらいの”と言われ、どうしようもなく血が頭にのぼり、そして引いて胸の冷たい血と混ざり、さらなる暗澹へと落ちる。
どうも、体と心が分離してしまいそうだった。ぐっと背を曲げてうなだれ、地面を見る。

「……では、憂鬱を吹き飛ばす特効薬をさしあげますわ」
「なにも考えられなくなるぐらいの鍛錬です、私もよく使いますわ」
<<箒!一夏の雑念を切り払っておしまい!心が弱っている今、畳みかけて、一夏をモノにするのです!>>

一夏は、ソレに、ほぼ骨髄反射で抜刀する。
跳躍する鬼が、そこにいた。刀をかつぎ、一直線にこちらへと向ってくる鬼が。

「わぁっ」

一夏の、腰の入っていない横払いははじきとばされ、腕と体をそれにもっていかれる。
鬼はあと一刀で一夏を両断できる。しかし切っ先はは天を指したまま微動だにしない。

足で踏ん張り、体勢を戻した一夏に、それを振りおろして、切り上げて、薙いで、払って、鬼は前進して重圧をかけながら、次々と斬撃を加える。
それを目で追い、腕と体を必死に使って、後退しながらそれを捌こうとする。

一夏は、やがてその連撃が、体の髄にまでしみ込んだ、篠ノ乃流の流れを汲むものであると、頭と体で同時に理解した。
バラバラであった、腕と体、切っ先と丹力が、気力と肉体が、だんだんとその流れを整え、ぎこちなかった剣捌きから淀みが消えていく。
鬼の前進が、一夏の後退が止み、そして連撃は突如止み、鬼の切っ先が天を衝いてぴたりと静止する。

はぁ、はぁと肩で息をする一夏の目に、雑然としたものはもはや存在しない。
眼の前のものを両断すべく研ぎ澄まされた刃のように、鈍く輝くだけである。

鬼のそれが振り下ろされる。一夏は真正面から受け止めて、つばぜり合いに持って行く、とみせかけて、一歩引いて刀を縦に回しての面割。
しかし鬼はそれに反応、互いに上段でのつばぜり合いへと持って行く。

鬼の瞬発的な前蹴り。鳩尾を突き破らんばかりの勢いのそれを、刀を押しやり、地面を蹴って回避。
一夏は重力偏向場を作用させ、未だ空中にあろうとする体をむりやり地面に押し付ける。そしてすぐさまに地面を蹴って、鬼の側面へと回り込み、その胴を狙う。

一夏は、鬼がその姿勢のまま、あまりに長い時間―― 一夏の主観においてである――静止していることに気がつく。
一夏の経験では、今の刹那があれば鬼は体勢を整え剣で迎え撃つか、その体術を用いて目に止まらぬ速さで間合いを詰め、柔を用いた搦め手へと移行できたはずである。

殺気!一夏は胴払いを中断、その場を一蹴して、鬼から距離をとる。一瞬前までいた空間を、弾体が切り裂く。

<<見事!>>

ハイパーセンサーを指向すれば、BTマザーを90度回転させ、四つの砲門を一夏に向けるブルーティアーズ

<<箒!本当のIS中距離戦闘を見せてごらんにいれますわ。そして、私に貴女の剣術を見せて下さいまし>>
<<私は近接戦闘を学び、箒は私から射撃戦闘を学ぶ、一夏は双方から業を学ぶ>>
<<私が世界一のIS乗りになったとき、篠ノ乃流から学んだと言っておきますわ。>>
<<そしてあなたがたが強くなれば、私の名が売れるというもの!>>
圧縮通信は、そのセシリアの意思を、0.1秒で両名の脳に理解させた。

今セシリアの顔は、自信に充ち溢れている。そしてその意思には邪念も怯みもない。
自負・自覚・覚悟、決意。それが世界一のIS乗り、という言葉に詰まっていた。

一夏はその姿に、胸が熱くなる。
そう、想うところは多々ある。もう一度抱きしめたいとずっと願っていたのだ。しかし今は、しかし今は!
しっかりと己の足で立つことこそが、成さなければならないことだ。そして、その暁に、鈴を、己の全てで受け止めてやろう。

鬼は、箒は、一夏との情事にイロイロと熱くする。ちょっぴり湿ってもいた。無論汗でだ。
あの女と一夏が恋人だったならば!いまこのような情事に耽る私たちはまさしく夫婦!!
その繋がりを、強くしよう!強く求め逢おう!
嗚呼…きっと私は今、とてもだらしの無い顔をしてしまっているな……けれど、幸せだからっ!こんな顔を見せるのは、一夏だけなんだからなっ
釣りあがった口角、僅かに開いた口から、白い蒸気と化した呼気が漏れる。
ぐっと見開かれ、瞳孔の開ききった目は、愛する者の一挙手一投足を見逃さないための、乙女の目である。

セシリアも、これからのことを考えて、胸が暖かい気持ちになるのを抑えられない。
そうそう!一生懸命頑張って下さい!、あの忌々しい中国女の顔に泥をたっぷりと塗りたくってくださいまし
男に初めて負けたIS乗り!これは歴史書に残りますわ。ふふ、まったくお望み通りですわよ!中国女!
一夏、箒!本当に愉しみにしていますわ。

箒が躍りかかり、セシリアが撃つ。
それを迎え撃つは織斑一夏
























ハーレムとは、すべての夫人に平等に愛を注いでこそである。
これは、風穴があいているか、ざっくりと切り裂かれているかで、どちらへの愛が足りなかったかは容易に分かるようになっている、分かりやすいハーレム物だ。


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