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No.28168の一覧
[0] 【完結】 お姫様じゃいられない 【魔法少女まどか☆マギカ・女オリ主】[ひず](2014/11/24 21:29)
[1] #001 『奇跡みたいな出会いだなって』[ひず](2011/06/26 20:54)
[2] #002 『笑顔でいてほしいんだ』[ひず](2011/06/05 20:35)
[3] #003 『ボクの為の願いじゃない』[ひず](2011/06/26 20:55)
[4] #004 『もしも奇跡を願うなら』[ひず](2011/06/12 21:17)
[5] #005 『まだ大丈夫』[ひず](2011/06/19 20:17)
[6] #006 『やっと、見付けた』[ひず](2012/10/23 21:45)
[7] #007 『ボクらはボクらの、正義の味方だ』[ひず](2012/10/23 00:00)
[8] #008 『はじめまして』[ひず](2011/07/24 20:42)
[9] #009 『安心してて、いいからね』[ひず](2011/08/21 20:49)
[10] #010 『だってボクにできるのは』[ひず](2011/08/21 20:48)
[11] #011 『ボクはずっと願ってる』[ひず](2011/09/04 20:52)
[12] #012 『これはやるべき事なんだ』[ひず](2011/09/18 22:32)
[13] #013 『強がりなんかじゃない』[ひず](2011/10/09 21:49)
[14] #014 『なんでだろうな』[ひず](2011/10/23 22:52)
[15] #015 『だから嫌いなのか』[ひず](2011/11/13 23:17)
[16] #016 『なんだか似てるね』[ひず](2011/11/28 22:43)
[17] #017 『魔法少女って、なんですか』[ひず](2012/10/23 00:01)
[18] #018 『女の子なのよ』[ひず](2012/04/01 21:32)
[19] #019 『名前で呼んでもいいですか?』[ひず](2012/10/20 21:53)
[20] #020 『私は、必ず、ほむらになる』[ひず](2012/12/31 19:14)
[21] #021 『あなたに、ほむらは、必要ない』[ひず](2013/09/08 21:43)
[22] #022 『ありがとう。うん、それだけ』[ひず](2014/07/21 06:09)
[23] #023 『わたし、魔法少女になります』[ひず](2014/08/16 21:20)
[24] #024 『ダメな先輩でごめんなさい』[ひず](2014/09/14 23:13)
[25] #025 『他の誰でもないキミに』[ひず](2014/10/13 12:45)
[26] #026 『それは本物だと思うから』[ひず](2014/11/24 21:28)
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[28168] #024 『ダメな先輩でごめんなさい』
Name: ひず◆9f000e5d ID:a06c6f1d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/09/14 23:13
 よかった。アイが事故に遭ったあの日、その仔細を聞いたさやかが、最初に思い浮かべた言葉がそれだ。恭介じゃなくてよかった。アイを心配するよりも先に感じたのは安堵で、さやかは今でもその時の事を悔やんでいる。

 魔が差した、と言うほどでもないかもしれないし、アイなら笑って許してくれるかもしれない。しかし誰よりもさやか自身が、己の矮小さを責め苛むのだ。快く相談に乗ってくれた事も、恭介を助けてくれた事も、心の底から感謝しているからこそ、アイを裏切ってしまったような気がして、さやかの心に濃い影を落としていた。

 あの事故以降、さやかはあまりアイと会っていない。なんとなく顔を合わせ辛かったというのもあるし、マミの代わりに少しでも多くの魔女を退治する事で、贖いとしたかったというのもある。単なる自己満足ではあったが、それでも彼女は、そうせずにはいられなかった。

 恭介も大事だけれど、彼と同じくらい、アイを守りたい。それが今のさやかの素直な気持ちで、だからこそワルプルギスの夜という化け物が現れると聞いても、迷わず戦う事を選べれたのだ。

 でも、ならば、今の自分はなんなのだろう。闇に呑まれた意識の中で、さやかは思う。

 辛かった。魔法少女となって随分と肉体は強化されているはずなのに、それでも辛いとさやかは感じた。恭介の居る避難所とアイの居る病院を何度となく往復して、見付けた端から敵の使い魔を討滅する。終わりなんてなくて、誰も見ていなくて、見返りだってありはしない。延々と続くその作業に疲れて、彼女の精神は、徐々に磨り減らされていった。

 ――――――恭介とアイさんが居なければ、もっと楽だったのかな。

 まさしく魔が差したのだろう。たとえ一瞬でも、さやかはそんな事を考えてしまったのだから。後悔と自己嫌悪が湧き上がり、それすら徒労感に押し流される。普段の彼女なら絶対に有り得ないその囁きは、単なる肉体の疲弊によるものか否か。

 違う、とさやかは感じた。言い訳ではなく、自己の正当化ではなく、もっと深い魂の奥底とでも呼ぶべき部分で、そう感じていた。例えるなら底無し沼に引き摺り込まれるような、という表現が的確かもしれない。どれだけ足掻いても抗っても、冷たい沼底に沈んでいくみたいに、彼女の心は暗い感情に蝕まれていくのだ。

 嫌だな。曖昧で朧げなさやかの思考に浮かんだ、その言葉。それが呼び水となり、徐々に彼女の意識が焦点を結んでいく。このままでは駄目だ、とようやく気付いた。だけどあまりに遅過ぎた。既にさやかの心は、彼女自身ではどうしようもないほど汚染されているのだから。

 深い闇の底に、さやかは呑み込まれていく。溺れたように息苦しくて、心苦しくて、思わず手を伸ばしたけれど、何も掴む事が出来なくて。そのまま、独りのまま、彼女は静かに沈んでいく。

「…………?」

 不意にさやかは、誰かの声を聞いた気がした。少女の声。焦った声。聞き馴染みの無いそれは、しかし明確にさやかへ向けられたものだと分かる。

 声は徐々に大きくなる。明瞭になる。その度にさやかを呑み込む深淵が薄まり、代わりに光明が降り注ぐ。やがてさやかは温かな光に包まれ、そして――――――。

「――――――ッ! 起きろ!! オイッ!!」

 意識が覚醒する。重い目蓋を、さやかは徐々に開けていく。そうして彼女の視界に映ったのは、一杯の心配を湛えた小豆色の瞳だ。見覚えの無いそれは、だけど不思議な安心感を与えてくれて、さやかは知らず頬を緩めていた。

 小豆色の瞳が見開かれる。その持ち主である少女が、驚きを露わにする。

「起きた、のか……?」
「なんとかね」

 呆然と呟く少女にさやかは返す。状況は判然としないが、この少女に助けられた事だけは、今のさやかにも理解できる。と、そこで彼女は思い出す。気絶する直前に現れた女の子の事を。

 意識を失う前よりも軽くなった頭を動かし、さやかは辺りを見回し始める。目的の人物は、すぐ見付ける事が出来た。さやか達から僅かに離れた場所で、あの女の子が闘っている。戦闘の余波が二人に届かない程度の距離で、手にした大斧を揮っていた。

「杏子っ、そこのバカは起きた!? だったら手伝え! 手伝わせろ!!」

 影の使い魔を豪快に両断しながら、女の子がヤケクソ気味に叫ぶ。
 慌てて立ち上がろうとしたさやかを、杏子と呼ばれた少女が押し止めた。

「焦るな。アイツなら大丈夫だよ。それよりアンタの調子を確認するのが先だ」
「杏子の馬鹿! バカの馬鹿!! わたしも馬鹿だし馬鹿ばっかりだっ!!」

 必至に戦斧を振り回す女の子とは対照的に、杏子は軽く肩を竦めてみせる。

「気にすんな。どうにもネジがトンだみたいでね、今日はずっとあんな調子さ」

 それは大丈夫じゃないのではないかとさやかは思ったが、杏子の表情に気付いて、口を挿むのは野暮かと思い直した。代わりに杏子の忠告通り、さやかは自らの状態を確かめる。

 道路に座り込んだまま、何度か手の平を握り直し、知らずさやかは顔を顰めていた。

 率直に言うなら、さやかの調子は悪かった。未だに思考は緩慢として、四肢の反応も些か鈍い。それでも倒れる前と比べれば体が軽く、気力も充実していると言えるだろう。

「ほら、やるよ。今度は気を付けな」

 そう言って杏子が差し出したのは、一つのグリーフシードだった。魔法少女にとっては、どんな宝石よりも価値を持つソレ。まだストックがあると断ろうとしたさやかだが、僅かに逡巡した後、恐る恐る受け取った。なんとなく、額面以上の意味が籠められている気がしたのだ。

 さやかがグリーフシードを手にすると、杏子はホッと安堵の息を吐く。その姿を見て、さやかはこれで正しかったのだと目を細める。ただ同時に、引っ掛かりを覚えずにはいられなかった。

「…………あのさ、一つ聞いてもかな」
「ん? ああ、かまわないよ」

 唾を飲んで喉を鳴らし、さやかは杏子と向き合った。

「ソウルジェムが濁り切ったらどうなるか、あんたは知ってるの?」

 思えばその知識は無かったと、今更ながらにさやかは気付く。魔力を消費すればソウルジェムが濁る。ソウルジェムの濁りは、グリーフシードで浄化できる。マミから教わったのはそれだけで、魔力を使い切った時の話は聞かされていない。

 単純に推測すれば、ただ魔法が使えなくなるだけだろう。だが実際にその淵まで近付いたさやかとしては、とてもそれだけとは思えないのだ。ある種の予感に過ぎなかったそれは、杏子の反応によって生々しい現実感を与えられた。

 苦虫を噛み潰したような、という表現がピタリと嵌まる杏子の表情。白い歯を噛み締める彼女の心情は、他人が推し量れるものではない。明らかな秘密の気配が鼻孔を擽り、さやかのお腹に重い不安が溜まっていく。

「後悔しても知らないわよ?」

 沈黙が横たわるその空間を、幼く甲高い声が引き裂いた。見れば斧を担いだ女の子が、さやかを見下ろして立っている。戦闘は落ち着いたらしく、周囲に使い魔の影は無かった。

「あんたがどうなっても、わたしは知らない。それでもいいなら話してあげる」

 冷たく言い放ち、女の子は栗色の瞳を杏子へ向ける。
 鋭い視線が、何かを言い掛けた杏子を制した。

「それで潰れてしまうなら、最初からここに来るべきじゃない。そうでしょ?」

 杏子の返事は無い。その事が逆に、これから語られる内容を暗示していた。碌な話ではないと、さやかにも容易に想像できる。それでも、ここで引くという選択肢は有り得ない。

「……お願い。あたしに教えてちょうだい」
「いいよ。杏子もそれでいいよね?」
「ったく。流石に反対できる空気じゃないだろ」

 雨に濡れた髪を掻き乱し、杏子は大袈裟に溜め息をつく。それから女の子と顔を合わせ、同時にさやかの方へと向き直る。僅かな間を挿み、最初に杏子が口を開いた。

「魔法少女の契約には裏があってな――――――」

 そんな切り口から始まった二人の話は、どれほど続けられたのだろうか。短かった気もするし、長かった気もする。時間の感覚を失うほど聞き入っていたさやかは、全ての話が終わると、疲れと共に大きく息を吐き出した。

 どう受け止めるべきか分からず、持て余した感情がさやかを苛む。何かを言おうとして、だけど言葉が出てこなくて、彼女は力無く首を振った。

「それで、あんたはどうするの?」

 感情を排した栗色の瞳が、静かにさやかを見詰めている。逃げるように目を逸らしたさやかは、項垂れたまま、震える声を絞り出した。

「魔法少女って、なんなのかな?」
「魔女の卵。少なくとも、人間ではないよ」

 さやかが肩を震わせる。頬を伝う雫は、はたして雨粒なのだろうか。

「マミさんは――――」
「アイツはまだ知らないはずさ」

 今度の返答は、杏子によるもの。さやかの肩に手を置いた彼女は、数瞬、視線を彷徨わせた後、躊躇いがちに言葉を続けた。

「……ただ、アイは知ってる」

 不思議とさやかは、その話を冷静に受け止めていた。杏子が口にした”アイ”という名前が誰を指すのかなど、今更悩むまでもない。そして語られた情報も、殊更驚くほどでもない。

 そう、これまでの言動を鑑みれば、アイは全てを知っていても可笑しくない。否、むしろ全てを知っていなければ可笑しいという気すらしてくる。さやかはそう考えた。そう結論付けた。

 ――――――――ッ!!

 響いたのは、短い破裂音。雨音を掻き消したそれは、さやかの頬から生まれたものだ。両の頬に自らの手を添えた姿勢で、さやかは顔を俯かせている。

「だったら――――」

 紡がれた声は、誰に向けられたものでもなく。

「だったらあたしは、死んでも守らなきゃいけないじゃない!!」

 ただ純粋な感情を吐露しただけの、さやかの本心だった。

 忠告はあったのだ。後悔するかもしれないと、アイは初めから忠告していた。それを承知の上で契約したのは誰か。さやかだ。他ならぬさやか自身が決意して、魔法少女になったのだ。

 何よりアイは許してくれた。あの事故を。あの怪我を。魔法少女の事情を知っていたのならば、さやかの所為だと思われても仕方が無いのに、アイは笑って許してくれた。それが救いか呪いかは分からない。ただあの時の笑顔が、さやかの心を支えていた。

「あたしは、まだ戦える」

 決意と共に立ち上がり、さやかは迷いの消えた双眸で杏子達を見返した。それを受けた杏子達は顔を見合わせ、直後、その表情から強張りが抜ける。

「その意気だよ。アタシら魔法少女は、戦うための力を持ってるんだから」
「そうそう。わたし達は戦える。ワルプルギスの夜とも、魔法少女の運命ともね」

 どこか嬉しげな二人の言葉。それに頷きを返したさやかは、遥か彼方、ワルプルギスの夜が居る方角を睨んだ。未だに戦いは続いており、聞こえてくる音が、その激しさを物語っている。ならば自分も役割を果たそうと、さやかはお腹の底に力を籠める。

 刹那、さやかは驚愕に目を見開いた。視界を覆う紺。それがワルプルギスの夜だと気付くのに、彼女は幾許かの時間を要した。堕ちてくる。否。そんな生易しい表現では済ませられない勢いで、魔女の巨体が迫り来る。

 理解が追い付かず、ただ反射的に、さやかは腕で顔を庇っていた。巻いた風が唸りを上げ、一拍置いて、地鳴りと爆発音が全身を震わせる。その場に立ち竦んでいたさやかは、恐る恐る地鳴りがした方を振り返り、結果、言葉を失った。

 神様が戯れにボウリングでもすれば、あるいはこんな光景が出来上がるのかもしれない。そんなふざけた表現に逃げたくなるほど、それはさやかの常識から外れていた。

 先刻までそこに並んでいたビル群は砂糖菓子のように砕け、地面は瓦礫で覆い尽くされている。さやかの記憶にある景色とはあまりに懸け離れ、認識の齟齬が戸惑いを生む。だが何よりも異常を訴えているのは、その惨状の中心地だ。そこに在るのは人型で。そこに居るのは怪物で。その名をワルプルギスの夜と呼ぶのだと、さやかは知っている。

 最悪の魔女が、廃墟を寝床に沈黙していた。陶器を思わせる白い肌に数多の傷を刻み、ドレスの裾をほつれさせた魔女の姿は、ともすれば傷付き倒れたようにも見える。けれど下半分だけの顔に浮かぶ不気味な笑みが、その淡い期待を打ち消した。

 魔女の巨体が距離感を狂わせる。近いのか遠いのか、それすらさやかには分からない。ただ間を阻むはずのビル群は薙ぎ倒され、魔女の無防備な姿だけが、彼女の視界を埋め尽くしていた。

 どうする。どうする。意味の無い自問が空転し、さやかの焦燥が加速する。グローブに包まれた手の平には汗が滲み、背筋は細かに震えていた。

「おい、逃げるぞ!」

 叫んだ杏子が、さやかの手を取って駆け出した。進路はワルプルギスの夜とは逆方向で、それは彼女が宣言した通り、敵前逃亡の選択だ。

「ちょっと! アレを倒すのが目的でしょ!!」
「こんなワケわかんない状況で倒すもクソもないっての! とにかく離れるぞ!」

 グッとさやかが押し黙る。彼女自身、この事態に怯えや戸惑いを隠せないのだ。引かれる右手を振り払い、前を走る杏子に並ぶ。それからさやかは、一瞬だけ後ろを振り返る。見えたのは、宙に浮かび上がる魔女の威容。感じたのは、背筋が凍る力の高まり。

 危ない。そのさやかの叫びに先んじて、魔女の攻撃は放たれた。音よりも速く奔る一筋の晦冥。さやかの視界を両断したそれは、けれど彼女らを襲う事無く、あっさりとその頭上を過ぎ去った。反射的にその行く先を追ったさやかは、こちらに近付く人影に気付く。

 巴マミと暁美ほむら。さやかにとっては共に居る事が有り得ない二人の知り合いが、肩を並べて疾駆している。魔女が放った一撃は、二人の間を貫き、その背後の道路を抉っていた。

 さやか達と二人の距離が詰まり、やがてゼロになる。何かしらのやり取りがあったのか、杏子は十字路を曲がり、マミ達もそれに追従した。当然、さやかと帽子の女の子もそれに倣う。

「一体なにしやがった。潰されるトコだったんだからな!」
「それについては謝るわ。私としても、この結果は予想外だったから」

 最初に口を開いたのは杏子で、答えたのはほむらだ。知り合いらしき彼女達の様子を、さやかは黙って眺めている。彼女としてはほむらに対して思う所はあったが、状況を考えて飲み込んだ。

「まぁ、被害は無かったからいいけどさ。アレはなんだったんだよ?」
「わかりやすく言えばミサイルね。初めて使ったのだけど、ここまでとは思わなかったわ」
「ミサイルッ!? おいおい、そんなもんまで用意してたのかよ」
「軍事施設から拝借したのよ。残念ながら、手が回らなかった物も多かったのだけど」

 嘆息したほむらが、彼方へと目を向ける。その先では、ワルプルギスの夜が巨体を宙に浮かべて漂っている。逆さまの顔に双眸は無く、果たして何を見ているのか、さやかには分からない。

「それよりも、今はアイツをこちらに引き付けるわよ」

 ほむらが並走するマミを見遣る。その仕草で、さやかも彼女の意図に気付いた。

 先程までさやか達が居たのは、見滝原総合病院からほど近い地点だ。つまりワルプルギスの夜が進路を変えれば、アイが病院ごと潰される未来も有り得るという事である。それを考えると、今のマミの心境が如何ばかりか、さやかにはとても想像できない。

「マミさ――――」

 さやかが声を掛けようとした瞬間、マミは表情を変えて跳び上がった。その視線の先には魔女の姿があり、その手は喚び出した巨大な銃砲を構えている。狙いも溜めも存在せず、即座に放たれた眩い閃光は、過たず魔女の胴体に着弾した。

 だが無意味だ。ワルプルギスの夜は傷付くどころか、小揺るぎすらもしていない。同時にさやかは、魔女の進路が最悪の方向に向かっている事に気付く。すなわち、見滝原総合病院へと。

 未だ数キロ程度の距離はあるが、あの巨体ならすぐに病院へ到達するだろう。何事も無く上空を通り過ぎるだけならいいが、それでは楽観が過ぎる。かといってこれから攻撃を初めて魔女の気を惹いても、病院が巻き込まれる恐れがある。

 俄かに場が騒然とする。全員が足を止めて、その顔に焦燥を浮かべていた。誰もが行動すべきと理解しているのに、誰も最善手を見付けられない。マミもまた先程の銃砲を構えたまま、第二射を撃てずに迷っている。

 いたずらに時間が過ぎていき、魔女と病院の距離が縮まっていく。ここまでくれば、あとはもう無事を祈って見守るしかない。そう結論付けて、さやかは腕を下ろす。

 ――――――――瞬間、桃色の光が魔女の体を吹き飛ばした。

 驚きの声を上げたのは、はたして誰だったか。有り得ない光景を前にして、その場に居た誰もが固まってしまう。それほどまでに、衝撃的な事態だった。

 山ほどもある魔女の巨躯が、風船のように流れていく。マミが放つ光線とは違う、緩やかな弧を描く幾つもの光弾が、ワルプルギスの夜を押している。光が弾ける度に、魔女の外装に傷が付く。一発の威力はそれなりだが、数の暴力が目に見えるほど被害を広げていた。

「うそ……」

 瞠目して立ち尽くすほむらの呟きに、さやかは胸中で同意する。

 一発だけでもマミの必殺技に匹敵しそうな攻撃を、冗談みたいに連発する魔法少女など、まさに規格外と呼ぶしかない。本当に嘘のような存在だ。単純にそう考えていたさやかの頭の中を、続くほむらの発言が驚愕で塗り潰した。

「どうして、まどか…………」

 あってはならない名前が、ほむらの口から零れ落ちた。


 ◆


 マミにとって嬉しい誤算だったのは、暁美ほむらという戦力だった。普通の魔法少女とは違い、自らが産み出した魔法の武器ではなく、通常の銃火器に魔法の力を付与して戦う少女。その技量は間違い無くトップクラスであり、上手くマミのフォローとして立ち回ってくれた。

 一方で悪い意味での誤算だったのは、ワルプルギスの夜の頑強さだ。マミの必殺技でもほとんど傷付けられず、ほむらが用意したバズーカや迫撃砲すらほぼ無意味。その程度で闘志を失うような覚悟ではなかったが、頭の冷静な部分では、倒し切れないと判断していた。

 ほむらと共にどれだけの砲撃をワルプルギスの夜に与えたのか、マミは覚えていない。それほど攻撃を重ね、並の魔女ならば優に百回は滅びていると断言できるというのに、あの最悪の魔女は、まるで痛痒を感じた様子が無いのだ。

 たしかにダメージは蓄積されている。見た目には随分と傷も増えた。それでも本格的にマミ達を狙う事なく、ワルプルギスの夜は鷹揚に全てを見下ろすのだ。取るに足らぬと、言うかの如く。

 そうして戦闘を続ける内に、グリーフシードの消費が重なり、徒労感も積み重なっていく。だが何よりもマミを苛んだのは、ある種の飢餓にも似た無力感だった。

 守りたいものがある。守りたい人が居る。その為に戦っているのだという自負と、その為に何を成せたのかという自問が、マミの中でせめぎ合う。所詮は自己満足に過ぎず、ただ何かをしているというポーズが欲しいだけなのではないかと、そんな自傷的な考えすら浮かんでしまう。

 戦いの最中に、マミが何度も反芻した言葉がある。今朝、アイから投げ掛けられた問い。互いに口にしようとしなかった言葉は何かという謎掛け。その答えは、マミもすぐに理解していたのだ。アイに向けて言いたくない言葉を考えた時、最初に浮かんだのがそれなのだから。

 相手を貶めるものではなく、負の感情によるものではなく、ただ意地で言いたくない言葉。

『助けて』

 その一言が、マミもアイも口に出来ない。助けられれば喜ぶし、感謝もするが、自分から相手に助けを求めようとはしない。それは自分こそが相手を助ける立場にあるのだという、ちっぽけで、だけど譲れない意地があるからだ。

 だから。そう、だから今朝のアイは、抗議の意味を籠めて、あの謎掛けをしたのだろう。マミが隠し事をしていると知っていて、それを話さない事を受け入れて、だけど頼られない事には不満を覚えて、こんな回りくどい文句の付け方を選んだのだ。

 おそらく、そこに深い意図は無い。単に日頃の不満を嫌味として表しただけで、アイとしては、ちょっとしたじゃれあい程度のつもりだろう。マミもそのくらいは理解しているが、それでも首をもたげる不安は無視できなかった。

 結局、絵本アイという名の少女にとって、巴マミという存在は必要ないのかもしれない。

 アイが助けを求めていない事くらい、マミも理解している。それでも心の支えとして、あるいは病弱な身を支える者として、自分という存在は不可欠であると信じてきた。だけどここ最近では、あの事故の夜を除いて、マミは本心からアイが笑っている姿を見ていない。またアイの体を健康にするという悲願を成す者も、マミ自身とは言い難い。

 だから自分は、要らない子なのかもしれない。新たに現れた魔法少女を前にして、マミはそんな鬱屈とした感情を抱え込んでいた。

「マミさんっ!」

 明るい笑顔でそう言って、元気に駆けてくる少女が見える。彼女の名前は鹿目まどかで、先程、病院に向かいそうなっていたワルプルギスの夜を押し返した魔法少女でもある。攻撃を続けながら徐々にマミ達の方に近付いてきた彼女と、こうして合流したのだ。

「あの、あの――――――魔法少女になりました!」

 そう話すまどかは興奮しており、頭の中を整理できていない様子だった。なんとも初々しい姿で微笑ましくはあるが、場の空気は決して和やかなものではない。まどかを歓迎していない、という訳ではなく、どこか悲しむような、触れる事に怯えるような、そんな暗く湿っぽい雰囲気だ。

「えーと、えっと…………そう、アイさんが元気になりましたよ!」

 周りの雰囲気を払拭するかのように、元気よく告げられたまどかの言葉。それを聞いたマミは、頬の強張りを抑え込み、なんとか笑顔を貼り付ける事に成功した。

「……そう、ありがとう。あの子もきっと感謝してるわ」

 まどかは笑って頷き、次いでほむらの方へと顔を向ける。ほむらもまたまどかを見詰めており、二人の少女は正面から視線を交わし合う。

「どうして……」
「我が儘、かな」

 弱々しいほむらの呟きに、まどかは苦笑と共に答えを返す。

「色々教えてもらったよ。魔法少女の事も、ほむらちゃんの気持ちも。それでも魔法少女になったのは、わたしの我が儘だよ。友達が大変な時に、なにも出来ないのが嫌な、わたしの我が儘」

 ほむらの顔が歪む。濡れた髪を頬に貼り付け、彼女は眦を震わせた。

 二人が知り合いだったという驚きと、ほむらがこんな顔をするのかという驚き。どちらもマミの心に波風を生んだが、それ以上に気になったのは周りの反応だ。教えてもらったとまどかが告げた時、マミとまどかを除いた全員に緊張が走り、マミの方を窺ったのだ。

 何かある。自分には言えない何かが。そう感じたマミは、直後にくだらないと首を振った。

 分かっているのだ。魔法少女はいずれ魔女になるのだと、マミはちゃんと分かっている。それを確信したのは、この戦いの最中。影魔法少女達の中に、知り合いの姿を見付けた時だ。本当は心のどこかで理解していたのかもしれないが、マミはずっと目を背け続けてきた。だけど影魔法少女の姿を見て、もはや自分を騙す事は出来ないと、彼女は悟らされたのだ。

「はいはい、お喋りは後にしなさい。今は魔女を倒す事に集中しましょう」

 声が震えぬように努めながら、マミは二人の会話に割って入った。そして見上げてくるまどかの手を取り、幾つかのグリーフシードを握らせる。

「使い方は知ってるわね? 長期戦になるだろうから、大事にしなさい」

 コクリと頷くまどかに笑い掛け、マミはみんなから少しだけ距離を取った位置に移動する。顔を巡らせれば、見知った少女達がマミに注目していた。

 滑稽だ、とマミは思う。先程の反応を見れば、この場の誰もが魔法少女の秘密を知っているのだと予想できる。そして全員が、マミはその事を知らないと考え、黙っているのだ。

 これほど滑稽な事は無い。経験も知識も豊富なベテラン魔法少女だと自負していたというのに、蓋を開けてみれば、マミは独りだけ除け者にされていた。もしやアイも知っているのかもしれないと考えると、可笑しくて可笑しくて、思わずマミは笑い出しそうになる。

 ――――――――なんて、役立たず。

 多くの魔法少女を生み出してしまった。魔女にしてしまった。殺してしまった。アイを助けたいと頑張ってきたけれど、結局、彼女を救ったのはまどかだ。二人を引き合わせたのはマミだが、魔法少女と魔女の関係を考えれば、むしろアイに恨まれるかもしれない。そしてこの決戦においても、ワルプルギスの夜を倒そうと頑張ってはみたものの、大した傷を負わせる事は出来なかった。

 愚かで哀れで、道化にすらなりきれない無能者。それが今の自分なのだと、マミは思う。

「この戦い、勝つ為には鹿目さんに賭けるしかないわ」

 道路の上に並び立つ面々にそう宣言すれば、まどかを除く全員が頷いた。唯一まどか本人だけが戸惑っているが、残念ながらこれが事実だ。それほどまでに、先程のまどかの攻撃は強力だった。

「他の人達は、鹿目さんの護衛を優先してちょうだい。回復も彼女を最優先にね」

 やはり否定の言葉は無く、全員が首肯で応えている。まどかもようやく事態を呑み込めたのか、神妙な面持ちで頷いていた。

 マミが息を吐き、一歩、後ろに下がる。これでいいのだと、彼女は自分に言い聞かせた。

 あとはまどかに任せるしかない。彼女が死ぬまで戦っても倒し切れるかどうかは不明だが、その可能性に賭けるしか、この街を、アイを救う術は残されていない。そう結論付けたからこそ、マミは”全ての”グリーフシードをまどかに譲ったのだ。

 何も成せなかった自分だけれど、余計な事ばかりしてしまった愚か者だけれど、せめて邪魔者にならないようにしようと、マミは思った。

 マミがマスケットを召喚する。中空に浮かぶその銃口は、狙い違わず、マミの胸に向けられた。困惑の声が上がったが、マミがそれに答える事は無い。

 限界なのだ、色々と。とぐろを巻いた負の感情が膨れ上がり、暴れ回り、今にもマミを内側から喰い破ろうとしている。それが魔女になるという意味なのだと、マミは本能的に察していた。

 あるいはグリーフシードを使えば、暫く生き永らえるのかもしれない。だがこの戦場において、そんな無駄遣いをする余裕は無いのだ。故にマミは、これこそが最適解だと判断した。

「ダメな先輩でごめんなさい」

 謝罪の宛て先は、全てを押し付ける事になってしまった後輩達。出来るなら誰の目も無い場所で果てたかったが、マミにはその程度の時間すらも残っていなかった。

 マミが尽き掛けの魔力を行使すれば、誰の指も掛かっていない引き鉄が引かれていく。その時になって誰かが叫んだが、全てが遅過ぎた。

 一発の弾丸が、暗い銃口から放たれる。

 衝撃は一瞬。僅かな間を置いて、マミの胸から鮮血の花が咲いた。手足は力を失い、徐々に体が傾いでいく。闇に呑まれゆく意識の中で、最後にマミが思い浮かべたのは、己が親友の姿だった。


 ◆


 理解できない。否、理解したくない。その光景を前にしたほむらは、心中で否定の言葉を叫びながら、必死に千切れ飛びそうな思考を縫い止めていた。

 濡れたアスファルトの上に、マミが静かに横たわっている。胸元には赤い染みが広がり、顔には悲哀を滲ませた彼女は、欠片の生気すらも感じさせない。死んでいる、と誰もが思うだろう。事実この場に居るほむら以外の少女達が、マミが死んだと思って動揺している。

 だが、違うのだ。魔法少女の魂はソウルジェムに宿っており、それが破壊されるまでは不死身に近く、肉体を再生させる事も不可能ではない。たしかに肉体の死を、そのまま自らの死と誤認し、魂すら傷付く場合もあるが、それは現時点では分からない。

 つまり、未だにマミが生きている可能性はあるのだ。マミ自身でさえ死んだと思っているだろうが、ソウルジェムが破壊されるまでは生きているかもしれない。

 だが、それでもほむらは動けなかった。あの瞬間、マミが考えていた事は分からない。どうしてこんな凶行に走ったのか、彼女には理解できない。それでも一つだけ、確かな事実がある。マミは絶望していたのだと、それだけはほむらにも伝わっていた。

 だからこそ、ほむらは動けない。未だにマミが生きているとして、その魂が絶望に染まっているというのなら、如何なる結果が齎されるのか、彼女はよく知っている。

「どうして……」

 上手くいっていると思っていた。少なくとも、ほむらの想定から大きく外れたものはなかった。ワルプルギスの夜を倒せる可能性は残っていたし、マミが闘う理由も残っている。それでも絶望を抱くと言うのなら、はたしてほむらが信じてきたマミの姿は、一体なんだったというのだろうか。

「どうしてなんですか、マミさん」

 ほむらの嘆きに、返る言葉は無い。ただ雨音だけが、耳元で騒ぎ立てている。

 誰もが呆然と立ち尽くすその場所で、最初に動いたのはまどかだった。泣きそうな顔の彼女が、よろよろと倒れたマミに向かって歩いていく。その腕を、ほむらは反射的に掴んでいた。

 どうして、とまどかが振り返る。他の魔法少女達もまた、非難がましくほむらを見ていた。だがそれに答える余裕などほむらに無い。まどかの腕を引き、彼女は急いでその場から離れ始めた。

 何度となく経験したからこそ分かる。ほむらだからこそ理解できる。膨れ上がる気配が、魔女の波動が、これから起こる悲劇を伝えてくれる。

「おいおい、まさか……」
「嘘。だって、そんな」

 事態に気付いたらしい杏子達が、呆然と呟く。同時に、ソレは訪れる。激しい風と共に、広がる闇と共に、ほむら達に悲劇の開演を告げるのだった。

 雨が止む。地面が渇く。世界の全てが一変する。

 雨雲の代わりに現れたのは、白い半球状の天蓋だった。その天蓋を網目状に支える鉄骨からは、黒い鎖が幾本も垂れ下がり、黒髪の人形を吊り下げている。一方でアスファルトは硬質なタイルに置き換わり、そこには火を灯した赤い蝋燭が何本も立てられている。

 見慣れたようで、ほむらにとっても初めて見る、魔女の結界。その中央に鎮座する魔女の姿は、やはり彼女が知るソレだった。全身を隙間無く鎖で覆われた、あるいは鎖で肉体を構成した人型の異形。腰から下が存在せず、足の代わりに鎖を放射状に広げたその姿は、何度となくほむらが目にしてきた、マミの成れの果てだった。

 この場に居る誰もが、あの魔女が巴マミだという事を理解している。そしてだからこそ、誰一人として有効な行動を取れずにいる。ほむらもまた、未だに心の整理がついていなかった。

「――――――予想しなかったわけじゃない」

 沈黙が支配する空間に、少女の声が木霊する。ここに居る全員が聞いた覚えのあるそれは、故にこそ驚きと緊張をもって迎えられた。全員の視線が一斉に声の発生源へと集中し、そしてその場に立つ人影を目にして瞠目する。

 まるで絵本の中から飛び出してきた魔女のような存在が、そこには立っていた。真っ黒で大きな三角帽子を頭に被り、同じく真っ黒なローブで全身を覆っている。帽子の縁が邪魔をして顔はよく見えないが、輪郭や身長から少女である事は明らかだ。魔法少女のはずだが、ほむら達のそれとは懸け離れた衣装の趣が、周囲の空間から少女の存在を浮かせていた。

「むしろ予想したからこそ、ボクはここに居るわけだ」

 歩き出した少女が、ほむらの隣を通り過ぎる。その身長はまどかよりも一回り小さく、さながら小学生のよう。また帽子の下から覗く長い黒髪が、尻尾のように揺れ動いていた。

「けど、キッツいなぁ」

 魔女から幾分か距離を取った場所で立ち止まり、少女は鎖の異形を見上げた。背後のほむらにはその顔を見る事は出来ないが、決して笑っていない事だけは伝わってくる。

「ボクの出番なんて、一度も無い方がいいんだけどね。まったく、友達思いが過ぎるぜ」

 帽子の縁を手で引いて、少女は目深に被り直す。直後、少女の右手に大きな木の杖が出現する。節くれ立ち暗い色をしたそれは、不思議と小さな白い手に似合っていた。

 少女がゆっくりと杖を構える。さながら物語の一幕のようで、ほむらは何も言えず、ただ観客の真似事をする事しか出来なかった。

「ま、そこが可愛いトコなんだけどね」

 その瞬間、少女が何をしたのか、ほむらには理解できなかった。全てが白い光に包まれて、光が収まると、魔女の結界は消えていた。辺りは先程までいた街角で、再び雨が体を濡らし始める。

 少女を除いた誰もが、呆気に取られて立ち尽くす。ほむらもまた、この状況に思考が追い付いていない。少女が魔女を倒したのか、それとも違うのか。それすらも判然としない。だから少しでも情報を集めようと少女の姿を追い駆けて、そしてほむらは、またも驚愕に襲われた。

「ありえない……」

 ほむらが口に出来たのは、ただそれだけ。他には何も考えられないほど、衝撃的な光景だった。

 少女の足元に、巴マミが倒れている。先程まであった胸元の赤い花は消え、まるで悪い夢だったとでも言うかの如く綺麗な姿だ。何より彼女は生きている。魂が魔女となり抜け殻となったはずの肉体に、たしかに生命が宿っている。

 ありえない、とほむらは繰り返す。一度でも魔女になってしまえば、元に戻る事など不可能だ。そのはずなのだ。だからこそほむらは、マミを見捨てざるを得なかったのだから。

 だが、現実は目の前にある。ほむらの目の前で、マミは再び息を吹き返した。

 ほむらだけではなく、誰もが驚き思考を止めている。平然としているのはこの事態を起こした少女だけで、彼女はマミを見て一つ頷いた後、ほむら達の方に振り返った。

「調子は上々。さぁ、この戦いを終わらせようか」

 帽子の下から顔を覗かせ、少女が、絵本アイが、笑いながらそう告げた。




 -To be continued-


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