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No.28168の一覧
[0] 【完結】 お姫様じゃいられない 【魔法少女まどか☆マギカ・女オリ主】[ひず](2014/11/24 21:29)
[1] #001 『奇跡みたいな出会いだなって』[ひず](2011/06/26 20:54)
[2] #002 『笑顔でいてほしいんだ』[ひず](2011/06/05 20:35)
[3] #003 『ボクの為の願いじゃない』[ひず](2011/06/26 20:55)
[4] #004 『もしも奇跡を願うなら』[ひず](2011/06/12 21:17)
[5] #005 『まだ大丈夫』[ひず](2011/06/19 20:17)
[6] #006 『やっと、見付けた』[ひず](2012/10/23 21:45)
[7] #007 『ボクらはボクらの、正義の味方だ』[ひず](2012/10/23 00:00)
[8] #008 『はじめまして』[ひず](2011/07/24 20:42)
[9] #009 『安心してて、いいからね』[ひず](2011/08/21 20:49)
[10] #010 『だってボクにできるのは』[ひず](2011/08/21 20:48)
[11] #011 『ボクはずっと願ってる』[ひず](2011/09/04 20:52)
[12] #012 『これはやるべき事なんだ』[ひず](2011/09/18 22:32)
[13] #013 『強がりなんかじゃない』[ひず](2011/10/09 21:49)
[14] #014 『なんでだろうな』[ひず](2011/10/23 22:52)
[15] #015 『だから嫌いなのか』[ひず](2011/11/13 23:17)
[16] #016 『なんだか似てるね』[ひず](2011/11/28 22:43)
[17] #017 『魔法少女って、なんですか』[ひず](2012/10/23 00:01)
[18] #018 『女の子なのよ』[ひず](2012/04/01 21:32)
[19] #019 『名前で呼んでもいいですか?』[ひず](2012/10/20 21:53)
[20] #020 『私は、必ず、ほむらになる』[ひず](2012/12/31 19:14)
[21] #021 『あなたに、ほむらは、必要ない』[ひず](2013/09/08 21:43)
[22] #022 『ありがとう。うん、それだけ』[ひず](2014/07/21 06:09)
[23] #023 『わたし、魔法少女になります』[ひず](2014/08/16 21:20)
[24] #024 『ダメな先輩でごめんなさい』[ひず](2014/09/14 23:13)
[25] #025 『他の誰でもないキミに』[ひず](2014/10/13 12:45)
[26] #026 『それは本物だと思うから』[ひず](2014/11/24 21:28)
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[28168] #015 『だから嫌いなのか』
Name: ひず◆9f000e5d ID:d2055b83 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/13 23:17
  奇跡。その一言が、彼女の思考を支配した。鼓動が高鳴り呼吸は止まる。瞬間、彼女の全身から冷や汗が噴き出した。視界の端には煌めく刃。槍の穂先と思しきそれは、彼女が弾いた相手の武器だ。

 風を引き裂く一閃だった。岩を貫く一撃だった。それを彼女が防げたのは、実力ではなく偶然だ。直感任せに振るった斧が、運よく彼女の命を繋いでくれた。まさに僥倖。二度目があるなら命は無い。

 初撃は凌いだ。しかし彼女に安堵は無く、ただ次撃への恐怖が胸を覆う。

 攻撃は最大の防御なり。瞬時に導いたその結論に従い、彼女は腕を振り上げた。攻撃する。相手が立て直す前に、追撃が来る前に、自分の方から攻めに出る。それは決して相手への敵意から生まれた判断ではなく、ただ攻められる事を恐れる守りの考えだった。

 だが、彼女の思惑は容易く崩される。

「ぐぅっ」

 衝撃が脇腹を突き抜けた。視界がブレ、肺の空気が押し出される。薙ぎ払われた、と彼女は宙に浮いたまま理解した。即座に左手で床を突いた彼女は、そのまま体勢を整えて着地する。右手の斧は放していない。ならば早く反撃を、と彼女は柄に両手を添える。

 直後、迷いの無い振り下ろしが彼女を襲う。

 甲高い金属が響き渡り、刃の間に火花が散った。鍔迫り合いにもつれ込み、彼女と杏子は視線を交わす。歯を食い縛り、足を踏ん張る。肋骨の辺りから鋭い痛みが走ったが、彼女は気にせず杏子を睨む。

 杏子は冷たい目をしていた。どこかつまらなそうな色を、怒ったような熱を瞳に宿して、間近の彼女を見下ろしている。本気で自分を殺そうとしているのだと、彼女は本能的に理解させられた。慄きそうな腕に力を籠め、血が滲むほどに唇を噛む。このまま押し切ってみせると、彼女は斧を全力で握り締める。

 その時だ。急に相手の力が弱まり、彼女は勢い余って体を泳がせた。

「――――ガッ」

 短い呻き声と共に、彼女の脇腹から鈍い音が聞こえる。
 今度の攻め手は蹴りだ。鍔迫り合いに夢中な彼女を、杏子は見事に蹴り抜いた。

 二度三度とコンクリートの床を跳ね、彼女はついに倒れ込む。白い頬は埃に塗れ、大きな瞳は涙に濡れる。痛い。骨が折れた。もうやだ。脳裏を巡るそれらの弱気を振り払い、彼女は震える腕で体を起こす。と、そこで斧を手放した事に気付く。

 驚きで目を瞠った彼女の視界は、同時に小豆色で覆い尽くされた。

「――――――ッ」

 もはや言葉も無い。顔面を蹴り上げられた彼女は、鼻血を散らしながら宙を舞う。小柄なその身が弧を描く。なにも出来ずに床に落ちる。背中と頭を打ち付けて、一瞬、彼女の視界は暗転した。そしてそのまま、彼女は汚れた床に横たわる。

 立ち上がらなければ。抵抗しなければ。そうは思っても、彼女は指先一つすら動かせない。彼女は焦点の定まらぬ目で天井を見上げたまま、力無く床に倒れている。体の痛みは耐えられるのに、疲労もまだ限界ではないはずなのに、彼女の体は思うように反応してくれなかった。まるで他人の物になったみたいだと、彼女はボンヤリ考える。

 原因に心当たりはあった。おそらくは魔力が枯渇しそうなのだろう。今日だけで六度も戦った彼女は、先程の魔女との戦闘で魔力のほとんどを使い果たしていた。ようやく手に入れたグリーフシードは杏子に奪われ、元より予備など残っていない。回復手段を持たない彼女は、このまま魔力が尽き、間も無く魔女になってしまう。

 足音が鼓膜を揺らす。ゆっくりとしたそれは、彼女の耳元で止まった。
 未だ判然としない彼女の視界に、杏子と思しき影が映る。それでも彼女は動けなかった。

「……獲物を嬲る趣味はねぇんだが、思ったよりしぶといじゃん」

 淡々とした杏子の言葉。だがそこには、たしかに疑念の色が含まれている。

 杏子の言う通り、彼女は他の魔法少女と比べても頑丈だ。それは彼女の願った奇跡に由来する。自身の病気の治癒を叶えて貰った彼女は、治癒能力と丈夫な体を手に入れたのだ。それでも癌が再発してしまったのは、やはりそういう運命だったのだろう。

 とはいえ、今の彼女にとってそんな事はどうでもいい。
 いくら治癒能力があろうと、魔力が枯れていれば行使出来ないのだから。

「なん、で……」

 微かに唇を開き、掠れた声で彼女が問う。

 グリーフシードが欲しかったから。競争相手である魔法少女が邪魔だったから。そんな風に杏子が襲ってきた理由を幾つか考えてみた彼女だが、納得のいく答えは見付からない。いや、納得どころか理解出来る動機も思い浮かばない。それが不気味で、それが気持ち悪くて、彼女は怒りよりも困惑を胸に抱いていた。

「なんとなく、かね」

 ただ一言。どうでもよさげな返事を聞いて、彼女は醜く顔を歪めた。

 最低だ。最悪だ。こんな理不尽な事があっていいのだろうか。こんな馬鹿げた事が許されていいのだろうか。あまりにも不合理な杏子の言葉を聞いて、彼女は叫び出したい衝動に駆られた。

 彼女はマミが嫌いだ。自分の気持ちを裏切ったマミが嫌いだ。けれどマミの目的は理解出来たし、共感する部分もあった。でも杏子は違う。まったく違う。なんとなくだなんて、そんな理屈は納得出来ない。だってそんなの、彼女から見てもマミ以下だ。

 ただ魔法少女を殺したい、という動機なら彼女も受け入れられる。競合相手を減らすというのは、たしかに合理的な考えだ。生存の為にソウルジェムが必要と判明した今では、むしろ下手な協力体制こそ危ういものだと感じている。だけど現実はそうじゃない。杏子には理由も理屈も動機も無かった。ただ自らの感情が赴くままに、杏子は彼女を殺そうとしている。不条理を押し付けようとしている。

 どうして、どうして、どうして。際限無く膨らむ激情と共に、疑念の言葉が積み重なっていく。彼女には杏子の頭が可笑しくなっているとしか思えなかった。そう思わなければ、現状と折り合いがつけられなかった。

 彼女の心臓が時を刻む。徐々に間隔を短くし、遂には煩いほどの拍子となり、彼女の命脈を伝えている。それは迫り来る死の予感を前にして、一生分の命を燃やし尽くそうとしているかのようでもあった。

「あく……ま……」

 彼女が零したのは、そんな言葉。
 返ってきたのは、大きな溜め息。

「そいつは、これからアンタがなるんだよ」

 吐き捨てるような杏子の言葉が、彼女の胸に突き刺さる。

 そう、彼女はこれから魔女になる。人を殺す化け物に、命を喰らう悪魔へと、彼女は成り果てるのだ。抗いようの無い未来として、それは彼女の心に影を落とす。処女雪を踏み荒らすように、無垢な魂を蝕んでいく。

 思考に靄が掛かる感覚に気付き、彼女は必死に歯を食い縛る。

 分かってしまった。どうしようもなく理解させられた。魔法少女が魔女になるという事の意味を、彼女は魂で悟ったのだ。それはキュゥべえの説明よりも遙かに生々しく、彼女の心には深い傷が刻まれていく。その傷から流れ出る鮮血が絶望の呼び水となり、徐々に自分の内側が変質しようとしている事を、彼女は本能的に察していた。

 もはや幾ばくもしない内に、自分は自分でなくなってしまう。それが分かったところでどうしようもなく、彼女は途方も無い徒労感に苛まれた。まるで体が鉛になったかの如く重く感じられ、気分も下降の一途を辿る。

 落ちていく。彼女の心が、魂が、闇の底へと引き寄せられる。霧に覆われた頭では碌な思考も出来ず、這い上がる気力すら底を尽きた。彼女の心に残ったのはただ一つ。かつて願った奇跡だけ。

 生きたいと思った。苦しみから解放されたいと願った。それはたしかに叶えられた気がしたけれど、たぶんきっと間違いなのだろう。奇跡なんてまやかしで、希望なんて幻で、自分は変わらず地獄に居たのだと、彼女は気付いた。

 でも、だとしたら、世界はとても残酷だ。

「わた……しは…………」

 罅割れた声を彼女が漏らす。それは誰に向けたものでもなかったけれど、あえて言うなら、運命とやらに伝えたかった。あまりに無情な彼女の人生。それ故に求めずにはいられなかった願いを、彼女は世界にぶつけたかった。ぶちまけて、呪ってやりたかった。

「たすけて…………ほしかった……」

 本当に、それだけだった。幸せになりたかった訳じゃない。贅沢をしたかった訳でもない。ただ不幸から抜け出せれば、彼女は満足だった。せめて平凡な人生を送りたいと、その程度の事しか願っていなかったのだ。

 なのに、現実は厳しい。彼女の願いが聞き入れられる事は無く、一時の幸せと引き替えに、これまで以上の苦しみが彼女を襲ったのだから。まるで荒波に揉まれる小舟のようだと彼女は思った。抗う事など許されず、気紛れに訪れる平穏の後には、必ず絶望がやってくるのだ。

 目頭が熱くなり、勢いを増した涙が、彼女の頬を伝って零れ落ちる。幾筋もの跡を引く涙を拭う事も出来ず、彼女は黙って泣き続けた。嗚咽を漏らす事も無く、しゃくり上げる事も無く、壊れたように涙だけが溢れ続ける。

 瞬間、杏子が動きを見せた。手にした槍を構えたのだ。

 どうしてだろう、と彼女は不思議に思った。このまま彼女を放っておけば、すぐにでも魔女へと成り果てる。トドメを刺すならそれからの方がいいはずだ。だってそうすればもう一つグリーフシードが手に入るし、これまでの会話から察するに、杏子はそれを躊躇するような性格ではない。だから理由が分からなくて、彼女はちょっと混乱した。

 銀色が煌めく。凶刃が迫る。涙で歪んだ視界でも、ハッキリとその事を理解出来た。殺されるのだと、彼女は近い未来を予見する。言いたい事は一杯あるし、後悔だって無数にあった。だけど何一つ頭の中で形にならなくて、彼女はただ、反射的に目を瞑る事しか出来なかった。

 痛みは無い。代わりに、彼女の耳元で甲高い音が鳴った。

 思わず顔を顰めた彼女が、恐る恐る目を開く。自分が死んでいない事は分かる。ではどうなったのかと考えた彼女の視界に、長い槍の柄が映った。杏子の手元から伸びる槍は、その穂先を彼女の頭の真横に突き立てている。

「――――チッ」

 大きな舌打ち。短いそれは、だけどこの場で聞いた杏子のどの言葉よりも、強い感情が籠められていると彼女は思った。

「アタシは、アタシのやりたいようにやるだけだ」

 絞り出すように呟いて、杏子は槍を引き戻す。そしてそのまま、槍を消してしまった。

 訳が分からず、彼女は目を丸くする。杏子が考えている事が理解出来なくて、何をしたいのか予測も出来なくて、彼女はひたすら戸惑っていた。更に魔法少女の衣装まで解除した杏子を見るに至っては、彼女の頭は完全に白で染め上げられてしまう。

「これ、返してやるよ」

 腰を屈めた杏子が、彼女の胸元に何かを置いた。途端に彼女の体は楽になり、気持ちにも幾らか余裕が出来る。彼女の胸にはソウルジェムが変質したブローチがあり、杏子は黒い物体を握っていた。だからつまり、そういう事かと彼女は理解する。

 でも分からない。杏子の真意は、さっぱり読めない。先程までの事が嘘のように杏子は平然と去っていく。その足音を聞きながら、彼女は思考の渦に呑まれていた。グリーフシードを奪って、自分を殺そうとして、だけど最後には助けた杏子。その心が、彼女は理解出来ない。

 やがて出口の見えない思索に見切りを付け、彼女はゆっくりと体を起こす。顎先から垂れる赤い血を見て、そう言えば鼻血が出ていたな、と彼女は今更ながらに思い出した。ポケットを漁り、ハンカチが無い事に気付き、彼女はシャツの袖で血を拭う。白い生地が真っ赤に染まったが、それよりも彼女は、止まらない涙の方が気になった。

 恐怖ではなく、安堵による涙。頬を流れるそれを何度も拭いながら、彼女は小さく笑った。壊れたように笑い続けた。なんにも分からないけど、まったく見当も付かないけれど、生きている事だけは確かなんだと、彼女は笑い声を響かせていた。


 ◆


 教会を訪れる人間は、はたして何を求めてやって来るのだろうか。救いか、信仰の確認か、あるいは単なる習慣か。個々人によって理由は様々だろうが、なんらかの目的意識がある事は確かだろう。それは杏子も同じで、彼女もまた、故あってこの教会に足を伸ばしていた。

 埃と木片が散らばる床を進みながら、杏子は教会の奥へと進んでいく。既に日は沈み、明かりの無いこの場所は、冷たい暗闇に包まれていた。その中に浮かぶ杏子の相貌は、決して周囲の環境によるものではない影を纏っている。

 視線を落とし、遅々とした歩みを続けた彼女は、やがて最前列の長椅子に腰掛ける。かつてこの場所は、杏子の父の教会だった。この椅子は、いつも杏子が座る指定席だった。間近で父の教えを聞き、信者の人達が、その話に耳を傾けているのを見て満足する。それは杏子にとってえも言われぬほど幸せな時間であり、自身の選んだ道を再確認する空間でもあった。

「ふぅ……」

 息を吐き、杏子は自らの手元を見遣る。そこには血のように赤いリンゴが、一つだけ握られていた。ここに来る前に杏子が買ってきた、売り物の中でいっとう上等なリンゴだ。暗がりでも艶やかに光るその表面を、杏子は優しく撫でた。

「なんでだろうな」

 目を瞑った杏子が呟く。脳裏には、あの斧を持った魔法少女が浮かんでいた。

 杏子がこの教会にやって来た理由は、色々と考えたい事があったからだ。中でも大きな問題が、あの魔法少女のこと。どうして彼女を襲ってしまったのか、実は杏子自身もよく分かっていない。たしかに苛立たしい部分はあったが、それでも流せる程度だと杏子は感じていた。

 だが事実として杏子は、あの魔法少女を襲っている。大した理由も無く、大した理屈も無く、だけどたしかに感情に衝き動かされて、杏子は女の子を殺そうとしたのだ。殺人未遂、というものを深く悩む彼女ではないけれど、正体の掴めない自身の衝動は気持ち悪かった。

 杏子にとって、あの魔法少女はそこまで気に掛けるような存在ではないはずだ。アイとの事情を聞かされて、ただの他人と思える相手ではないのは確かだが、だからと言って重要度は高くない。杏子と似た価値観を持っている訳でもなく、絶対に許せないほど意見が違う訳でもない。そういった面では、やはりアイの方が杏子に近い存在だろう。

 では、何故。そう自問してみても、杏子は答えを見出せない。

 殺したかった。消してしまいたかった。どこからやって来たのか分からないその感情は、今も杏子の胸にくすぶっている。もしもあの時、女の子があんな事を言わなければ、杏子はその衝動に従って彼女の命を刈り取っていたはずだ。

 助けてほしかった。とてもシンプルなその言葉は、おそらくあの魔法少女の本心から生まれたものだろう。他に余分なものの無い、どこまでも純真な少女の願い。それを聞いた瞬間、杏子の中に言い様の無い感情が生まれていた。その結果があの見逃しだ。

 リンゴを握る杏子の手に、俄かに力が籠められる。
 軋みを上げるリンゴを見詰めながら、杏子は口を開いた。

「なにか用かい?」

 杏子の呼び掛けは、視線を動かす事無く行われた。

「ええ、少し話がしたくて」

 背後から聞こえてきた声には、杏子も覚えがある。ちょっと前に知り合った、暁美ほむらという魔法少女のものだ。しかし杏子は大きく反応する事無く、手元のリンゴを弄びながら、静かな口調で問い掛けた。

「ワルプルギスの夜のこと?」
「いいえ、違うわ」
「だったらアイに関して?」
「それもハズレ」
「……あの魔法少女?」
「その通りよ」

 一瞬だけ眉根を寄せ、それから杏子は嘆息する。

「ちょっと殺そうとしただけだよ。結局は見逃したけどな。あぁ、でも、あれはヤバイね。聞いた話だけじゃなく、傍で直接見てよくわかった。魔法少女は魔女になるし、アイツの精神状態はかなりマズい。あと一歩で魔女になるんじゃないかな」

 振り返らずに杏子が話せば、背後の気配が僅かに動揺した。その意味は、はたしてどういうものなのだろうか。あの女の子が心配なのか、アイが心配なのか、それとも他の理由があるのか、杏子には分からない。ただ少しだけ心を揺らすものがあり、杏子は知らず天井を仰いだ。

「ねぇ、アンタはなんの為に戦ってるのさ?」
「…………なれ合うつもりは無い、と言ったはずよ」

 返ってきたのは拒絶の言葉。その声音に強張りを感じて、杏子は頬を緩める。特に意図があった訳ではないが、なんとなく、ほむらの見せた弱みが面白く感じられたのだ。

「アイツは助けてほしかったらしいよ。ボロボロ泣きながら、そう言ってた」

 杏子が瞑目する。瞼の裏には、ちょっと前に見た魔法少女の泣き顔が映っていた。心身共に疲れ果て、絶望の淵に立たされた彼女は、それでも手を伸ばしていた。助けてと、苦しいと、必死に救いを求めていた。まるで汚れを知らぬ赤子の如きその姿は、今も杏子の胸に焼き付いている。

「馬鹿だよね。図々しいしよね。厚かましいよね。とんでもない奇跡を叶えてもらって、代償なんて払いたくないって駄々こねて、それでもまだ助けてほしいだなんて、恥ずかしいにもほどがある」

 まさしく餓鬼だと、杏子が吐き捨てた。

 与えず、手放さず、ただ求める。それは世の道理を知らない子供だからこそ出来る、残酷なまでの純粋さ。だからこそ助けるには値しないし、見捨てたところで胸も痛まない。そう思って、そう断じて、だけど心から消す事が出来ない自分に、杏子は歯痒さを覚えた。

 なんでだろうな。繰り返される、その言葉。あと一歩で疑念の正体を見極めれそうな気がするのに、それはまるで雲を掴むような感覚で、一体全体、自分はどうしてしまったんだと杏子は思う。

「あなたはどうなの?」

 ほむらに問われた杏子は、僅かに目を細めた。

「アタシは、アタシのやりたいようにやるだけさ」

 いつも通りの杏子の答え。佐倉杏子は、何物にも縛られない。勝手気侭に生き、自由を謳歌する。全ての責任を自分で負う気概を持つからこそ、彼女は誰に咎められても気にしない。家族を亡くしてからはそういう風に生きてきたし、それを後悔した事も無い。たしかにこれから考えが変わる事もあるかもしれないが、今現在は意見を翻すつもりは無かった。

 そのはず、なのに。

 どうしてか、杏子は心に不安が宿る。迷い、と言い換えても良いかもしれない。えも知れぬ焦燥が胸を焼き、杏子は体の内から引っ掻き回されるような感覚を覚えた。何かを見落としているような、何かを忘れているような、不気味な感触。思わず震えそうになる背筋を無理やり抑えて、杏子は手の内のリンゴを握り締めた。

「なら、あなたのやりたい事はなんなのかしら?」

 ギクリ、と杏子の顔が凍り付く。一気に鼓動が勢いを増し、白い額に汗が浮かぶ。

 たぶん杏子が考えないようにしていた事で、きっと目を逸らそうとしていた事だ。やりたいように生きるとしても、では佐倉杏子は、一体何をやりたいと言うのだろうか。最初に杏子が思い浮かべたのは、美味しい物を食べたいという欲求。でもすぐに首を振る。貧乏時代の名残で食事には煩い杏子だが、別にそれが生きる目的という訳ではない。しかし他に特別やりたい事がある訳でもなく、杏子はリンゴを見詰めたまま口元を歪めた。

「昔は、誰かを助けたかったんだけどな」

 零してから、杏子はハッと目を見開く。慌てて彼女が振り返ると、そこには通路に立つほむらの姿があった。夜の暗がりで判然としないが、それでもほむらが驚いている事はよく分かる。舌打ちしたいのを我慢して、杏子は苛立ち紛れに髪を掻き乱した。

「忘れろ。アンタにゃどうでもいい事だ」
「…………わかったわ。ゆっくり話す気分でもないようだし、今夜は帰らせてもらいましょう」

 一方的にそう告げて、ほむらは踵を返して去っていく。暗闇に溶けた黒髪を揺らし、規則的な足音を響かせ、彼女は教会から出て行った。その背中が完全に見えなくなったのを確認してから、杏子は息を吐いて力を抜く。そのまま背もたれに体を預けた彼女は、疲れた様子で額に手を当てた。小豆色の瞳からは、常に無い動揺が見て取れる。

 誰かを助けたい。かつての杏子は、たしかにそれを生き甲斐としていた。魔法少女になる前からそんな風に考えていて、なった後は、父と一緒に人々を助けるんだと意気込んだ。でもそんなのは、過ぎ去った思い出だ。戻ってこない幻想だ。今の杏子は人助けをしたいなんて思わないし、そんな生き方は馬鹿みたいだと考えている。自分だけの為に生きる方が楽なんだと、家族を失って気付いたから。

「あぁ、いや。そっか、そうだよな」

 右手で顔を覆い、杏子は緩やかに首を振った。

 自分の為に生きたかった訳じゃない。そんな生き方をしたかった訳じゃない。本当はただ、向き合うのが怖かっただけなのだ。誰かを助けようとして、でも運命に裏切られたから、辛い現実を直視したくなかった。そう、結局は逃げなのだ。自分が悪い。たったそれだけの言葉で全てを片付けた気になって、纏めて頭の隅に追い遣った。考えたくないと、弱い心に負けてしまった。それが今の佐倉杏子だ。

 本心では、杏子は今でも人助けをしたいと思っているのかもしれない。でもそれは、既に彼女自身でも分からなくなっていた。もうずっと過去の罪から目を逸らしていたから、本当の姿を見失ってしまったのだ。

 杏子が嘆息する。心の底から、想いを吐き出す。

「だから嫌いなのか」

 どうしてあの魔法少女が気に食わないのか、ようやく杏子は気が付いた。彼女もまた、杏子と同じなのだ。マミが悪い。アイが悪い。そう決め付けて、それで終わらせて、問題と向き合う事を放棄している。杏子と違うのは、周りに責任の全てを押し付けて、自分の願いに執着している点。自分に責任があるとして、願いを捨てた杏子とは正反対だろう。でも真逆だからこそ、根っこの部分では変わらない。

 根本では同じ癖に、やっている事はまるで違う。杏子があの魔法少女を嫌うのは、それが原因だったのだろう。まるで自分を見ているようで、だけど自分とはまったく似ていなくて、そのチグハグさが杏子の心を掻き乱した。

 でも、それが分かったからと言って、一体なにが変わるというのか。自分の心を確認したからと言って、何を変えれば良いのか。信念を、生き方を、もう一度やり直せば良いのだろうか。分からない。まだ杏子には、何一つ分からない。

 闇に呑まれた教会で、明かりの消えた教会で、杏子は独り、悩み続けた。


 ◆


「はぁっ……はっ…………っ」

 息が荒れる。歩みが乱れる。顔に色濃い疲労を浮かばせ、彼女は休む事無く足を進める。

 杏子との戦闘から一夜明けた今日、彼女が居るのは、鏡の迷宮としか言い表せない場所だった。床には鏡が張られ、壁も鏡張りで、天井すらも全てが鏡。更には真っ直ぐな通路がほとんど無く、曲線と分かれ道を無数に組み合わせたここは、まさしく迷宮だ。勢い勇んで魔女の結界に侵入した彼女は迷宮に囚われ、かれこれ一時間以上も迷っていた。

 まだ彼女の魔力には余裕がある。だが、無暗に回復するような事はしない。魔女を倒せばグリーフシードが手に入るからと、ペース配分を考えずに攻め続けた結果が昨日の魔力切れだ。焦っては駄目。逸っては駄目。全力を出すのはただ一瞬、魔女を仕留める時だけだ。そう心に決めた彼女は、疲労の抜け切らない体を酷使して、未だ迷宮を彷徨い続けている。

 魔女の居る方角は見当が付いている。だが通路が複雑に入り組んでいる所為で、中々思うように進めないのだ。斧で壁をぶち抜いてしまえば楽なのかもしれないが、彼女はそれをする決心がつかなかった。

 壁の向こうに通路が無かったら。壁を壊す事が敵の罠だったら。そうした不安が幾つも湧いてきて、彼女は鏡に斧を振り下ろす事が出来なかった。もしも壁を壊しても意味が無ければ、魔力の無駄になってしまう。魔力の枯渇が早まってしまう。そう思うと手が震えるのだ。

 魔力の枯渇。重大な事だとは理解していても、今までの彼女は、それを軽く見ている部分があった。その認識を改めたのが昨日の出来事。実際に魔女へと堕ちる寸前だった彼女は、これまでよりも遥かに憶病になっていた。そしてその憶病さが、今、彼女を追い詰めている。

「……っ」

 黙って額の汗を拭い、彼女は前を睨み付けた。

 全面鏡張りとなっているこの空間には、ただ立っているだけでも頭が可笑しくなりそうな光景が広がっている。全方位に向けて無限に広がり続ける鏡の世界。もちろん下を向いても、果てしない景色しか見えない。そこに床がある事は分かっているけど、足元には何も見付からなくて、言い知れない不安に襲われる。なんせここは魔女の結界だ。もしかすると鏡の下には、暗い奈落が待ち構えている可能性だって捨て切れない。そんな考えが過ぎる度に、彼女は足を震わせるのだ。

 どこにあるのかもよく分からない壁に手をつき、彼女は通路を進む。彼女の全身から滲む疲れの気配は、身体的なものよりも、精神的な負担によるものが大きい。そして心の負荷は、そのまま魔力消費へと繋がってしまう。

 悪循環だ。この状況を打開しなくては、彼女は遠からず自滅するだろう。彼女もその事は分かっているのだが、やはり怖さが先立って踏ん切りがつかないままだった。そうしてまた、無為に時間が過ぎていく。

「ッ!?」

 静かに通路を歩いていた彼女が、唐突に体を強張らせる。

 今、一瞬、動く影が見えた気がした。鏡に映った自分だろうか。いや、あれは絶対に自分以外の何かだ。いやいや、やっぱり自分かもしれない。そうした疑心暗鬼に苛まれながら、彼女は斧を両手で構える。震える瞳で辺りを見回し、万が一の奇襲に備える。気配は感じられないが、魔女の結界に常識は通じない。そのまま息を潜めて、彼女は一歩も動かず待ち続けた。

「……ふぅ」

 やがて十分ほど経った頃、彼女はようやく構えを解く。どうやら気のせいだったらしいと胸を撫で下ろした彼女は、疲れた顔で頬を緩めた。それからまた、魔女の気配を目指して、終わりの見えない迷宮探索を再開する。

 そうして一歩、彼女は足を踏み出した。

「――――ッ!」

 一瞬だった。気配も前触れも感じさせず、衝撃が彼女の脇腹を襲ったのだ。ミシリと骨が音を立て、次の瞬間には容易く折れる。奇しくもそこは、昨日杏子に折られた箇所だった。最低限の修復しか済ませていなかった所為かもしれないが、それでも威力は十分。いきなりの奇襲に目を丸くしながらも、彼女は慌てて臨戦態勢を整える。

「えっ?」

 だが周囲を見回しても、それらしき姿は見当たらなかった。変わらず鏡の世界が広がるだけで、敵の気配など微塵も無い。

 絶対に気の所為ではない。彼女は確信を持ってそう断言出来るが、やはり相手は影も形も見付からなかった。それで気を抜くような彼女ではないが、厄介な敵だと分かり、否応なく緊張が高まっていく。彼女の呼吸は浅くなり、斧の構えも定まらない。明らかによくない状態なのだが、ここで気を抜けば確実にやられてしまう。それを理解しているからこそ、彼女は疲れた体に鞭打った。

 一分。二分。頬を伝う汗を拭う事もせず、彼女は敵を待ち続ける。今にも腕は震えそうで、歯の根はまるで噛み合わない。このまま時が経てば、彼女は疲れ果てて倒れるだろう。しかし僅かでも気を抜こうものなら、敵の攻撃に晒されるだろう。どうにも対抗する手立てが思い付かず、彼女の心に不安が積もる。その弱気が、彼女の足をふら付かせた。

 瞬間、彼女は視界の端に影を捉えた。

「くぅっ!」

 無理に背中を反らせた緊急回避。必死の形相で行ったそれは、どうにか彼女の安全を確保した。背中から床に倒れ込み、彼女は思わず顔を顰める。その眼前を、小さな影が通り過ぎた。大きさはソフトボールと同じくらい。色は紺色で、全身は長い毛で覆われていた。使い魔だと判断した彼女は、けれど深く考える間も無く体を転がせる。直後に彼女の背後を、何かの影が過ぎ去った。その気配を感じながら、彼女は急いで立ち上がる。

「今のは――――ッ」

 自分の見たものがなんなのかを理解して、彼女は盛大に顔を歪めた。

 使い魔は鏡から出てくる。天井から降ってきた使い魔を見て、彼女はその事実に気が付いた。これは不味い。いや、不味いどころの話ではない。辺りは全て鏡に囲まれ、使い魔がどこから襲ってくるのかも分からない。もちろん気配は感じられないし、鏡の中に居る影を探すのも難しい。幸い使い魔は一体しか居ないようだが、そんなのは気休めだ。

 見境無く鏡を割るか、とにかく走り抜けるか。今後の対応を思索する彼女に、刹那、隙が生まれた。

「かはっ」

 今度の襲撃は背後から。倒れそうになりながらも、彼女は鏡に手をついて持ち直す。そのまま手にした斧を消した彼女は、脇目も振らずに駆け出した。もはや魔力を気にする余裕も無く、彼女は速度を落とす事無く治癒魔法を行使する。

 一分でも、一秒でも早くこのエリアを抜けるべきだ。そう結論付けて、彼女は全力で通路を駆け抜ける。鏡を壊して進む事は不可能だ。そんな事をしていたらやられてしまう。もちろん反撃も難しい。今の彼女には、そんな技術も力も無い。だから走る。ひたすら走る。それしかないから、他には無いから、彼女は走り続ける。

 だが、現実はやっぱり残酷だ。

「――――っつう」

 走り始めた時点で体力も精神も限界が近かった彼女は、当然の如くこけてしまった。勢い余って床を滑り、頬を擦り剥いた彼女の顔には、絶望の色が漂い始めている。恐怖で慄く腕で体を支え、けれど彼女は立ち上がる事が出来なかった。

 使い魔がやって来る。鏡の世界から、果て無き向こうから、物凄い速度で迫ってくる。

 避けれない。本能的に、彼女はその事実を理解した。瞠った瞳に映る使い魔は、刹那の後に彼女の頭を襲うだろう。頭をぶたれたら痛い。痛いし、次の行動が大きく遅れる。だから追撃を喰らうし、その次だって喰らうだろう。つまり、そう、自分は詰んだのだと、彼女は瞬時に結論付ける。そしてそのまま、抗う事を諦めた。

 体が疲れて、心が疲れて、もう全てが擦り切れそうな彼女には、頑張り続ける理由が無い。早く楽になりたい。努力しても良い事なんて一つも無いから、このままここで果ててしまいたい。その誘惑に、彼女は身を委ねた。

 どうして、誰も助けてくれないんだろう。

 最後に彼女は、そんな事を考えた。こんな時でも甘ったれた希望を捨てきれない事に彼女自身も呆れたけれど、やっぱりどうしても救いの手を諦められないのだ。子供だから。色んな意味で子供だから、その幻想から抜けられないのだ。

 衝撃が彼女の頭を突き抜ける。少しだけ意識が飛んだが、彼女は未だに生きていた。でも、抵抗はしない。背中から床に倒れて、そのまま指一つ動かさなかった。次は、きっと、天井から来るのだろう。そう思った彼女は目を瞑った。怖くて、恐ろしくて、現実を見るのが嫌だから暗闇の中に逃げ込んだ。

 あとは痛いだけだ。何度か攻撃を受ければ気絶して、その内、死ぬか魔女になるかするだろう。彼女の魂はその未来を受け入れたし、それ以外の結末を予測する事など出来なかった。だから、これでいい。ううん、これがいい。そう思って、彼女は全身から力を抜いた。

「――――?」

 暫く経っても、使い魔の追撃は来なかった。焦らしているのだろうか。嬲るつもりなのだろうか。それは嫌だなと思いながら、彼女は恐る恐る目を開ける。そうして彼女の視界に飛び込んできた光景は、信じられないものだった。

 最初に見たのは長い髪。小豆色をしたそれはポニーテールに結ばれ、背中を覆い隠している。次に飛び込んできたのは大きな槍。持ち手の身の丈を超える長さをしたそれに、彼女はたしかに見覚えがあった。

 彼女のすぐ傍に、一人の少女が立っている。それが誰なのかはすぐに分かった彼女だが、どうしてここに居るのかまでは分からなかった。分からなくて、理解出来なくて、予想もつかなくて、彼女はその目を丸くする。

「酷い顔してるじゃないか」

 振り向いた少女が、佐倉杏子が、倒れた彼女に笑い掛ける。
 彼女が初めて見る、とても優しげな表情だった。

「助けてやるよ。結局アタシは、そういう奴だ」

 片笑みを刻んだ杏子が宣言する。力強くて、心強くて、訳も無く頼ってしまいそうな声だった。

 彼女にとって、佐倉杏子は憎い敵のはずだ。気を許せる相手ではないし、助けてもらいたい相手でもない。今の言葉だって本当なら信じられる訳がなくて、何かの罠だと疑うのが普通だ。でも、どうしてだろうか。彼女の心には安心感が満ちていて、自然と心の強張りが解けていて、なんとなく信頼出来る気がしたのだ。

 どうせ死を覚悟した身だ。この瞬間だけでも信じてやろうと、彼女は緩く微笑んだ。




 -To be continued-


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