面倒な。
そう思いつつ、飛ぶ。
領域が広がると、どうしてもその中で暮らす奴も増える。
昨今では食い物の量が減ってるのが自分でも分かる。……こう何と言うか、自然が語りかけてくる、と言えばいいのかな?自然の中にいれば自然と満たされ、食う量がかつてのそれより大きく減って、嗜好品のレベルに落ちつつある。
それだけではない。自然が語りかけてくれるお陰で、悪い奴というか……自然環境を破壊するというか、荒らす奴とか悪い気配を放つ奴が分かるようになっている。
悪い話じゃない。
先だっては入り込んだイビルジョーを仕留めた。
イビルジョーも共存出来るなら良かったんだが……奴はとにかく腹が減ったら手当たり次第に食う。
生態系の事とか、何もお構いなしだ。
会話を試みてみたが……。
『オレサマ、オマエマルカジリ』
……腹が減っていたんだろう。まるで理性が感じれなかった、というか感じる様子もなく齧りに来た。
もちろん、逆に粉砕した。
ただ、もし、自分が未だにこの図体に相応しいメシの量を必要としていたら、きっとイビルジョーすら上回る量が必要になっていたかもしれない……。だから、可哀想じゃあった。
今度の奴は話が通じるといいよなあ。
だから、そんな風に思うのは当然だろう。
自然がざわめく地に向って飛ぶ、しかし。
(なんで、火山の火口近辺に好き好んで暮らすんだか)
メシも少ない。
周囲は暑いを通り越して、熱い。確かに一部のそういう場所に特化した生物がいるのは確かなのだが。
さて、つらつらと考えつつも大気を切り裂き、飛来した【竜王】の眼前には。
「……また面倒な状況に」
二体が大喧嘩の真っ最中だった。
これがそこらの竜種ならば二体だろうが、たいした問題ではない。
だが目の前にいるのは……。
古龍種の一体、煌黒龍アルバトリオン。
古龍に近いとも言われる古き竜。覇竜アカムトルム。
双方が縄張り争いをしていた。
『われ、ここはわしの縄張りじゃあ!!』
『なんじゃと、わっしがここにゃあ先に住んどったんじゃあ!』
人間が聞けば、双方が顔を突き合わせて吼えあっている、という光景なのだろうが。
会話が理解出来るせいで、話が理解出来てしまう……。
「おい、お前ら何してる!!」
こっちが舞い降りると、向こうは慌てて頭を下げてきた。
『あ、こりゃあ【竜王】の親分』
『あっ、【竜王】の旦那、お久しぶりです』
この『庭園』に住む竜達はいずれも【竜王】の存在を知っている。
頭の悪い竜種ならば、そもそも怯えて逃げるし、ここにいる連中のように年経て十分な力を得た連中ならばこうして話をする事も出来る。
かつてと異なり、敵対しようという気をなくさせるだけの力を得たからこその事だとも言える。
とはいえ、この口調はどうにかならんものかとも思うが……。
「それで?一体なんでまた喧嘩なんかしてるんだ?」
『『ええ、それがこいつが勝手に俺っちの住処に入り込んできまして』』
口々に言って、直後に睨み合う。
それを宥めつつ、話を聞いてみると……どうもこれまでは相互不干渉状態だったらしい。
無視して互いに暮らしていたんだな。
それがここ最近、獲物が減ってきた為に激突しだして、遂に、という事らしい。
正直呆れたが、この場所が獲物が限られているのは事実だ。これを機に引越ししたらどうかというと、そこは譲れないらしい。……意地らしいね、両者の。
とか、考えてる内に……。
『この爺が!!』
あっ、アルバトリオンの奴がぶちきれやがった。
バックジャンプブレス、って奴だな。後方に飛び退りながら、火炎弾を叩き付けた。
……とはいえ、俺もアカムトルムもこの程度じゃびくともしない。
アカムトルムも普段は溶岩の中に潜り込むような奴だ、炎には強い、とはいえそれはアルバトリオンも分かっているし、それにあいつの強みは……。
案の定、そのまま空へと上がって氷塊を放ってきた。
……けど、アカムの奴、氷にも強いんだよなあ。
「おい、お前ら……『やりおったのう、若僧が!!』!」
と思ったら、アカムトルムの奴がソニックブラストぶっ放しやがった。
……おお、必死で避けてる。そうだよなあ、このソニックブラストって龍属性なんだよな。
空飛んでる時は、アルバトリオンは龍属性は弱点の一つだし……。
とはいえ、地上戦を挑むのが無謀なのは理解しているだろう。
アカムトルムはデカイ。いや、アルバトリオンも十分他の連中と比べればでかいし、サイズ的にはこいつらほぼ同等だ。
だが、位置が低いというのは防御がガッチリしているのならば、弱みにはならない。
むしろ、アカムトルムは下からの突き上げが得意だから低い方がいい。
何が言いたいかというと、下手にアルバトリオンが地上に降りて挑むと、腹に直撃を喰らう反面、自分は棘で一杯のアカムトルムの背中に攻撃する事になる。あの頑丈な背甲にだ……。
そもそも、首の長さ含めてほぼ同等の大きさなんだから、純粋な肉体面ではアカムトルムの方が上……。
とか、言ってる内にアルバトリオンは空を飛ぶ故の機動性を活かして、アカムトルムの背後へ背後へ回り込む。無論、アカムトルムはそうはさせじと超信地旋回を繰り返す。
……が、超信地旋回なんてものは言ってみれば、その場でぐるぐると回る事だから、そんな事を繰り返していれば当然……。
『お、おお~?』
まあ、目が回るよな。
その隙をついて、低軌道から雷を纏った一撃を与えた。
さすがに、雷はアカムも多少効いたみたいだが……。
(浅いな)
まあ、そりゃあ、あの尖った背中を殴りつけるのは難しいよな。
かといって、対空で打ち上げるにもアカムの場合、首の長さの関係上、ブレスの上空への範囲が狭い。
……さて、こんな事を何故考えているかというと……。
(どうやって止めよう)
いや、力ずくで何とかする方法はあるんだが……。
下手にやると、こいつらに大怪我をさせてしまうのだ。
うーん、どういえば分かりやすいだろう?バイク二台が激しいレースやってる所へ大型トラックでそれを止めようとしてる、って言えばいいだろか?
っていうかだな……。
『死ねや、おらあああああっ!!』
『はっ、馬鹿が、その程度じゃ効かねえよ!くらええええ!!』
『ノロマ!こっちだぜ!!』
……さっきから流れ弾がこっちに来てるんだがね?
さっき、ソニックブラストがこっちの腹に当たったよ。いや、まあ、いいんだけど、こんぐらいなら。
とはいえ……。
「いい加減にしろやああああああああああああ!!!!!」
『『!%!?☆???※』』
アルバトリオンの奴が低空に降りてきた所を見計らって、全力で咆哮を放った。
それでアルバトリオンは墜落、アカムトルムも混乱してふらふらになってる。よし。
「お前ら!!さっきから見てればガキみたいにぎゃーぎゃーと……!」
『『で、でもこいつが……』』
「ああん!?」
『『……すいませんでした』』
たっぷり叱った後、両方ともここから出て行くか、それとも共存していくかを選ばせてやった。
ん?移住?
何で、こいつらに今更新しい場所探してやらんといかんのだ。
しかし……。
『よう、兄弟!今日は外でちと美味そうな奴狩って来たんだぜ』
『お、いいねえ!こっちゃ、見ろ!』
『おお、塩じゃねえか!それにこりゃまた随分とたくさんの龍殺しの実だね』
……なんだか、妙にあの後仲良くなったみたいなんだよな。
ま、いいか。
『『……親分に怒られるのはもう御免だしな』』
ん?
【あとがき】
アルバトリオンのモンスター情報が3105?
アカムトルムが2994程度ですか
ほぼ同サイズですが……形状とか見る限り、やはり筋肉質なのはアカムトルムが一枚上手?
今回は前回がまともな戦闘のお話だったので、少し軽めのお話で
次回は何にするかな……
昔のほのぼの話にしましょうか
【とりあえず本編完結を迎えたので、チラ裏からその他板へ移動しました】