【SIDE:人間ズ】
「……空の王リオレウスか」
苦い顔で唸った男達がいた。
開拓村(予定)の中心人物達だ。
「厄介だな」
深い溜息が漏れた。
飛竜種がいるといっても、即討伐には至らない。
理由は単純で、まず一つは純粋に危険な事。
一つは討伐資金がかかる事。
これは人数が大勢になる事や、装備にかかる金が多額になる為だ。
一つは飛竜が即人を襲うとは限らない事。
十分な獲物がいるならば、飛竜はそちらを狙う。
言い方は悪いが、人は大型の飛竜のご飯には小さすぎるのだ。
無論、逆に言えば一般人が襲われたりしたら、まず助からないと思ってもいいのだが……一人やそこらならば、これまた言うのは何だが予想の範囲内だ。
開拓とは厳しい。
村となるまでに、全く犠牲が出ずに終わる事は滅多にない。
貴重な鉱石が取れる事から設けられた雪山の小さな開拓村を襲った悲劇で有名なものでは、冬、飢えたモンスターが襲撃を繰り返し、次々と村人が犠牲となっていき、やむなく村を後に脱出した者達も街へと辿り着く過程で襲撃を受けたり、力尽きて倒れたりして、街へと辿り着いたのはたった一人の樵だった、という話がある。
まあ、今回の地は冬とてそう寒くならない場所だから、そこまで酷い事にはならないとは思う。
だが……。
それでも、飛竜が空を舞う地で安心して暮らせ、というのは酷な話だ。
「……領主に話はしてみるか」
【SIDE:転生者】
俺は気持ちよく空を飛んでいた。
やっぱり住み慣れた場所はいい。
今日のご飯はイャンクック。
迂闊に俺の縄張りに入り込んだ所を狩った。
……動物化してる、なんて言わないでくれ。
長い事竜生活なんてやってると、人と話す事さえない状態が続いてると、どうしてもそうなってしまうんだ……。
もう、俺が人だった頃の生活なんて殆ど覚えてない。
何しろ、一人暮らしになってからは必死だった。
それまでみたいに巣で待ってれば食い物がやって来る、なんて状況じゃない。
自分で狩りをする、人間風に言えば自分で稼がないといけないんだ。
家だってない。
俺が独り立ちして、まず探したのは住みやすい場所だった。
人間がほいほい来る所じゃ拙い。
幸い、まだこの世界じゃ人の領域は狭い。そして、俺には空を飛ぶ翼がある。
狩りをしながら、快適な場所を探してた。
そんな折、俺はこの地でアプトノスを狩った。それがこの地に住む事になる原因となる時はあの時は夢にも思わなかった……。
~回想~
「小僧、誰に断って、この土地で狩りなぞしている」
俺の目の前で唸っているのは……こいつひょっとしてベルキュロス?
うん、左右の翼から尻尾みたいなのが出てるし……全身が帯電してるみたいな感じだから多分間違ってないと思う……。
つか、お前峡谷で生息してるんじゃないのかよ?
そんな風に思ったが、確かにこんな場所に住んじゃいけない、って訳でもないだろう。
考えてるせいで、苛立ったのだろう。放電が強まった。
「小僧……死にたいのか?」
果たして、こんな風に喋ってるのって、人が聞いたらどう聞こえるんだろう……。
「いや、まあ……狩りをしたのは腹減ったからだよ。悪かった」
頭を下げたんだが……次の瞬間そのまま飛び退った。
当然だろう、下げた頭にいきなり翼から伸びる鉤爪を鞭みたいに振るってきたからだ。
「何するんだ」
「ふん……避けたか」
獰猛に哂ってるよ、おい……。
というか、殺る気満々じゃね、こいつ?
ここで俺が取れる選択肢は……。
1、ひたすら謝る
無理、どう考えてもやっこさん殺意で一杯だ。
さっきの俺の態度が怒らせちまったみたいだ。止まりそうにない……。
2、逃げる。
逃げ切れるか分からんのだよなあ……。
ベルキュロスの飛行速度と俺の飛行速度どっちが早いかなんて試した事ないし。
似たり寄ったりの速度だと最悪だ。
後ろから好き放題ブレスはきまくりになってしまう。却下。
3、説得する
1に通じるな、却下。
4、戦う
……それしかないかな。
これまでもやむをえず戦う場面はあった。
でも、ある程度ダメージを与えたら立ち去ってきたんだ。
理由は、ある。
同じリオレウス、リオレイアだったら同族って事もあるし、なんか気が引けた。
特にリオレイアは雌だしなあ……。
火山、雪山、荒地なんかは住みにくそうだった。
まあ、その他色々あるんだが……。
「本気か?俺は古龍種にも勝った事があるんだぞ?」
「……脅しか、ふざけた事を言う奴だ」
やっぱ駄目か。本当なんだけど……。
しょうがない、殺るしかなさそうだ。
~回想終了~
結果は……まあ、俺がこの地で特に怪我もなく暮らしている事から察してくれ。
……うん、圧勝だった。
飛竜の中でも特に賢い、って言われる竜なだけはあったし、それだけじゃなく、年経た竜だったようだ。
でも、電撃すらまともに効かないんだな、俺の体……。
戦い方は巧妙だった。
もし、俺が普通のリオレウスだったら、圧勝してたのは奴だっただろう。
だけど、攻撃の全てがまともに効かない、じゃあさすがの奴もどうにもならなかった。
結局、勝利した俺は奴から「この地の新たな王はお前だ」と勝手に告げられて……でも、奴から教えられた寝床とかの場所も理想のものだったし、住みやすかった。
結局、そのまんま俺はこの場所で暮らして、寝床も色々工夫して今じゃ竜なりに大分暮らしやすくなった。
こんな日々が何時までも続くと思ってたんだな、何時の間にか。
そんな時、だったんだ。人に出会ったのは……。
【あとがき】
感想板を見ると、なんですね……
色んな人がいると本当に思います