【SIDE:転生者】
先だってのハンター達も特に問題なく終わった。
大勢が駄目だったから、少数で来たんだろうし、それなりに選抜はされたんだろう。実際、結構驚かされたが、特に問題もなく無事終わった。
ただ、本当の意味で驚かされたのはそれからしばらく経っての事だった。
空から見て反応に困った。
ある日狩りに出てみれば、地面にでかでかと文字が……。
《話し合いがしたいので、是非来てらえませんか? ハンターズギルド》
……こんな文字が平原に多分染めた丸木を使って書かれてたら、反応に困る。
傍に天幕が幾つかあるのを見ると、あそこにハンター達はいるんだろう、多分。
さて、困った。
俺はそれなりに用心深いのだ。……これが罠で、天幕の中にはびっしりとハンターが詰めてたり、でっかいバリスタが照準を合わせてたりしたら……うーん。
と、悩みはしたが結局降りる事にした。
ここで警戒してもしょうがない。
虎穴にいらずんば虎子を得ず!ってのもあるし、今後ずーっとハンターを警戒し続けるのも大変だ。
話し合いで解決するのならそれに越した事はない。
……話が出来るのか、って問題はある訳だが。
さて、来てみれば罠とかではなかった。
その点は良かった良かった。
こっちが喋れないけど、理解はしてるって事を理解してるみたいで、幾つかの条件と提案をしてきた。
一つ目はこっちの食事場所の片付けをさせてもらえないだろうか、って事。
要は素材もらえません?って事らしい。
ちょっと迷ったんだけど、交換条件を出した。ふ、その為にご飯時に飛来したんだぜ。
要は香辛料とかの調味料を提供しろ、って事。
塩だけじゃやっぱ物足りないのよ。
言葉が通じないから、時間かかったけど、最終的には「ひょっとして、素材と調味料の交換って事では?」とギルドの下っ端の子供が言い出した事が突破口になった。
バカな事を言うなと叱られていたから、どうももっとややこしい話だと勘違いしてたらしい。
こっちが頷いてるのを見て、唖然としてたっけ。
ま、こっちにしてみれば食べ残しなんだけど、向こうからすれば命がけでしか手に入らない貴重な素材だからな……でも、価値観が違うんだよ、根本的に。
それから二つ目は相互不干渉。
といっても、向こうが勝手に行動するのを妨げないで、って話じゃない。
要は、「私らはここで狩りはしません。だから、あなたも私達の街を襲撃しないでください。あ、もちろん私らもランポスとかに襲撃された場合は反撃しますし、街の連中がバカやって襲撃かけた時の反撃は仕方ないです。ただ、なるだけ被害を抑えてもらえると助かります」、って話。
まあ、それなら問題ないだろう。
こうした交渉は時間がかかった。
別に難しい話をした訳じゃない。
ただ、言葉が通じない上に、こっちの身振り手振りとか顔の様子とかが人間は分からないからねえ。
同じ人間同士なら、何となく雰囲気とかで分かるんだろうけど……。
最後に、人間達は檻に押し込められた老人連中をどうしますか、って示してきた。
……何でも最後の最後まで、俺を狩る事を主張してた連中らしい。
で、とうとうギルドの総本部含めた最上層部、下のハンター連中全員から総スカン食らった挙句に、こうして連行されてきたらしい。
ふんふん、俺が手出しするなら煮るなり焼くなり好きにしてくれと。
手出ししないなら、このまんま総本部へ連行されて処断される、ってか。
まあ、こんなもの貰っても仕方ないので、丁重に……と思ってもらえたかはともかく、お断りした。
だってねえ……こっちが顔を近づけただけで、顔真っ青を通り越して真っ白になってるわ、失禁するわ、卒倒するわ……土下座して命乞いしたり、他の奴に責任なすりつけようとして連中同士で罵りあいの喧嘩になって周囲から止められたり……いや、これ。関わりたくないわ。
【SIDE:ガラム】
ほっとした。
基本的にはお互いに手を出さずに、仲良くやりましょう、って事ではあったんだが、本当にリオレウスに知能があるのか、怯えてた連中も多かった。
もっとも、最初は怯えて、途中からは唖然としたり顎が外れそうな顔になって、最後は最低でも人並みの知能があると皆が普通に考えて動いてたな。
ちなみに、私は新たにギルドの幹部の一人に入る事になった。
理由は単純。文官が増えすぎた結果が今回の面子優先の行動に繋がったからだ。
もっとも、ハンターばっかりだと脳筋ばかりになって、事務活動に支障が出る可能性があるから、当面は文官とハンターのバランスにハンターズギルドは四苦八苦する事になるだろう。
私自身も当面は文官仕事に苦労する事になりそうだが、今後は今回のような事がないように自分の全力を尽くしていかないといけない。……自分自身の行動の反省も踏まえて。
エナ自身も幹部昇格を誘われたのだが、彼女はまだ現役を続けるそうだ。
で、問題となるのが彼女の武器だ。
ブリュンヒルデは破壊されてしまった。さて、どうするか、と思ってたんだが……想定外の方向から事態は解決の方向に向う事になった。
何と、それを聞いていたのだろう、今回の交渉は一日では終わらなかったのだが、翌日見た事もない鱗やら殻やらを持ち込んでくれたのだ。
一つ一つが恐ろしく巨大なそれらは、倒したのかと思ったのだがどうも当人曰く……いや、こっちが確認したのに頷いてくれただけなのだが、どうもこの種の竜が倒れた場所があるのだとか。要は死んでも鱗や殻は残ったって事かな……どうも俺らが辿りつくのは相当に難しい絶海の孤島のようだが。
風雨に晒されてはいるが、そんじょそこらの竜の素材より強力じゃないか、って取ってきてくれたらしい。
……信じられるか?最後はエナの奴とか子供達、リオレウスの背中に乗って飛んでたんだぞ。
怖くなかったんだろうか?そう思って後で聞いた所によると、それ以上に興味の方が強かったらしい。
……そして、街に持ち帰られた鱗を初めとする素材はリオレウスが狩った素材は希少な武器として売りに出され(ハンター限定で、装飾品としては却下だ!)、あの巨大な殻や鱗はエナの武器の素材として活用された……問題は、こんな化物がまだ世の中にはいるって事か。
こいつの正体は総本部でもその正体は掴めなかった。まだまだ世界は広い、って事なのだろう……。
ちなみに、ブリュンヒルデに勝るとも劣らない良い武器が出来たという事だけは言っておく。
【あとがき】
耳栓に関しては、前の話に少し書き足しました
持ってきた素材はフロンティア最大級のアレです
もう一体の超ド級なんかと共に超大型の災厄らとか出すか、それともここで締めるか……
と考えた末、一旦次の話で締めます
その上で、災厄同士の大激突は外伝か第二部という形で記していきたいと思います尚、こんな奴との決戦を見てみたい、というのがありましたら名前を上げてください
こちらで対応可能な相手ならば、出してみたいと思います
……そんじょそこらのじゃあ、瞬殺なんですが