ハンターの仕事とはただ、モンスターを狩るだけではない。
採取もそうだし、採掘もそうだ。
或いは護衛任務などもあるし、探索だってある。
今回はその内の探索に当たる。
ゲームでも新しいフィールドが発見された、という時にギルドからの極秘依頼、という形で「危険があるだろうから」と腕利きのハンターに探索に赴いてもらう、というものがあるが、それは何も極秘なものだけではない。
開拓村の為の先行調査。
それが今回の依頼だった。
開拓村の為の先行調査をハンターが行うのは、危険が予想されるからだ。
何しろ、これまで人が本格的に住み着いた事のない場所だ。
そこが荒地ならば、水が確保出来るか。住んだとして、生活していく目処は立ちそうか。
豊かな土地ならば、そういう心配はないが、そういう場所にはモンスターの数も多い。
可能ならば、その生息領域を確認すると共に、場合によってはドス級モンスターを狩る必要もある。
最悪、飛竜クラスが生息しているのならば、討伐隊を繰り出さねばならない。
ハンター達にとって出くわす事が多い大型モンスターは、各種のボス級モンスターだ。
所謂ドスランポスやドスジャギィ、或いはドドブランゴなど。
それらは群が一定の大きさを超えれば、自然と生まれてくる。
反面、特に面倒なのが大型の飛竜種だ。
彼らの行動範囲は広い。
飛行能力を保持する為に、大型故に食料もたくさん必要とする為に、行動範囲すなわち縄張りも広くなるのだ。
何が面倒かといって、最初の調査では目撃されなかったからといって、そこが飛竜種のテリトリーではないと一回では断言出来ないからだ。
結果的に、幾度も調査を重ねる事で、目撃情報がないか探っていく事になる。
もっとも、実際には他の調査も含めるとどの道複数回の探査が行われるのだが……。
「……いい土地だな」
五人の集団からなるハンターの一人がそう呟いた。
確かに良い土地だった。
穏やかに広がる草原にはアプトノスの大きな群が草を食んでいる。
中央には大きめの川がゆったりと流れて、海へとそそぐ。
視界には雄大な山脈があり、その麓から森も広がっている。
確かにここならば、水の確保も問題なく、耕作も可能。森の恵みや狩りも大丈夫だろう。
「だが、気になる事もある」
別のハンターがそう言った。
誰もが薄々理解していた。
これだけの豊かな地であるのに、ランポスなどの鳥竜種の数が限られている。
肉食の獣の存在は生態系には不可欠だ。
草食の獣だけでは、やがて草食動物も食べるものがなくなって減少に移る。
生態系が維持されているというからには、そこには草食動物を捕食する肉食動物がいるはずなのに、ランポスなどにドス級がいない。それが意味する所は……。
「いる、という事か?飛竜種が」
ごくり、と誰かの喉が鳴る音がした。
いや、或いは全員だったのかもしれない。
ここにいる誰もが飛竜種との戦闘も経験しているベテランハンター達だ。だが、それはこんな少数ではなく、もっと大規模な部隊の一員として、だ。
何も好き好んで危険を冒す事はない。
少しでも安全に狩りを行う為に、特に危険な飛竜ともなれば、ハンター達は部隊を組み、それでも生還出来ない者は必ずいた。
「せめて、イャンクックとかならいいんだが……」
「古龍だったりしてな」
そんな軽口を叩いた時だった。
空が翳った。
「「「「「!!!」」」」」
全員が見た。
空を舞う赤い鱗の飛竜を。
アプトノスをその両脚で掴み、空を飛翔し、彼らの頭上を超え、悠然と山脈へと向っていく。
その姿こそ名高き空の王。
「……リオレウス」
誰かの呟きが彼らの間に静かに響いた。
【あとがき】
とりあえず、書いてみる