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No.28140の一覧
[0] 餓狼少女まどか☆マギカ 【完結】[クライベイビー](2013/08/15 00:31)
[1] 餓狼少女まどか☆マギカ―1―[クライベイビー](2011/06/27 04:25)
[2] 餓狼少女まどか☆マギカ―2―[クライベイビー](2011/06/07 16:39)
[3] 餓狼少女まどか☆マギカ―3―[クライベイビー](2011/07/03 14:17)
[4] 餓狼少女まどか☆マギカ―4―[クライベイビー](2011/08/07 00:11)
[5] 餓狼少女まどか☆マギカ―5―[クライベイビー](2011/08/09 21:03)
[6] 餓狼少女まどか☆マギカ―6―[クライベイビー](2011/08/11 19:11)
[7] 餓狼少女まどか☆マギカ―7―[クライベイビー](2011/08/27 23:43)
[8] 餓狼少女まどか☆マギカ―8―[クライベイビー](2012/02/11 08:53)
[9] 餓狼少女まどか☆マギカ―9―[クライベイビー](2012/01/01 13:46)
[10] 餓狼少女まどか☆マギカ―10(修正)―[クライベイビー](2012/06/16 11:26)
[11] 餓狼少女まどか☆マギカ―11(ほとんど修正)―[クライベイビー](2012/04/23 15:23)
[12] 餓狼少女まどか☆マギカ―12―[クライベイビー](2012/04/23 12:17)
[13] 餓狼少女まどか☆マギカ―13―[クライベイビー](2012/06/16 17:38)
[14] 餓狼少女まどか☆マギカ―14―[クライベイビー](2012/09/19 06:18)
[15] 餓狼少女まどか☆マギカ―15―[クライベイビー](2012/10/15 17:32)
[16] 餓狼少女まどか☆マギカ-16-[クライベイビー](2013/08/26 06:47)
[17] 餓狼少女まどか☆マギカ―17―[クライベイビー](2013/08/06 18:14)
[18] 餓狼少女まどか☆マギカ―18―[クライベイビー](2013/08/15 00:33)
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[28140] 餓狼少女まどか☆マギカ―8―
Name: クライベイビー◆2205aff7 ID:86f2e92d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/11 08:53
廃墟同然の教会の中で二つの人影があった。
まどかと杏子である。
―――わけが分からない。
プロレスをするとまどかが言ったとき、杏子はそう思った。
「一体何をするつもりだ?」
杏子は言った。
まどかは笑みを浮かべてそれに答える。
「言葉通りだよ…いや」
まどかが少し考えるそぶりを見せて、訂正した。
「わたしのプロレスを杏子ちゃんに見せてあげる」
杏子が尋ねる。
「具体的には何すればいいんだよ?」
「わたしを滅多打ちにしてほしいの」
「なに!?」
「ねえ、いいでしょ?」
杏子は声を荒げる。
「…なんであたしがそんなことを」
「…お願い」
「……そんなこと言われても」
「打ってみればわかるから」
「……でも、それでおまえが怪我したらどうするんだよ?」
「わたしは大丈夫だから」
まどかは言う。
その言葉といっしょに熱が杏子に叩き込まれた。
まどかの中にある熱の一部が発露したようであった。
その熱から杏子はまどかの決意を窺い知った。
自分の肉体に与えられるであろう苦痛を耐えて見せるという決意である。
まどかが何を考えているか分からない。
しかし、まどかは一度自分を負かして見せたのだ。
それがそういう決意を胸に言っているのだ。

そういうことがあった。
そうして二人は向かい合った。
まどかは腰を落として、開いた掌を身体の前に構えている。
杏子は棒をまどかに向けている。
その棒は槍の穂の部分を外したものらしい。
その状況でまどかはにぃと笑みを浮かべている。
杏子はそれを見ながら苦笑いをする。
こんなことを引き受けた自分も自分である、という自嘲の笑みでもあった。

杏子が前に出ようとする。
そのとき杏子の顔に強張った。
額を汗が流れる。
杏子が前に出ようとした瞬間、まどかから圧力を感じた。
それで自然と身体が前に出なかった。
そのことに気がついたのである。
その圧力を掻い潜って前に出るには、本気になる必要があった。
全力で打ち込む気で前に出なければいけなかった。
その圧力の中では、ほんの手加減もできないであろう。
そういうことを察したのか、杏子の目つきが変わった。
目が吊り上がり、鋭く細められる。
遠慮や気遣いというものを捨てた、本気の表情であった。
「やっと本気になった」
まどかが笑みを浮かべたまま言う。
それに反応するように杏子が前に出た。

棒を振り上げる。
右足で踏み込み、まどかの左から打ちおろす。
棒はまどかの首の付け根に打ちつけられた。
それと同時に鈍い音が響いた。
音といっても、みちやみしぃと表現できる感触のようなものである。
何とも言えない、身体の芯に響く音であった。
それが棒を通して杏子に伝わった。
それを感じ取った瞬間、杏子の脳天を貫くものがあった。
―――なんだこれは?
そういう疑問を胸にしながら、それに押されるようにして動いた。
まどかの右脇に打ち込んだ。
杏子の身体が回転を始める。
首、膝、水月、肘、手首、胴、腿、脛―――
その回転とともに打ち込まれていく。
それとともにさらに多くの感触が杏子に感じられた。
みし、みち、ごすっ、ばき、ぐちっ、どぐっ、ぱぁん、ごん―――
それとともに杏子の脳天を走り抜けるものがあった。
楽器のようだと思った。
強く打ちこめば打ち込むほど、より大きな音に帰ってくる。
その音が身体の箇所ごとに違う楽器。
杏子にはそう思えた。
その楽器の音を聞けるのは杏子だけである。
例え第三者が見ていたとしても、棒を打ちつけている杏子だけにしか音を聞くことはできない。
つまりは杏子がまどかという楽器を独り占めしているということになる。
そういう愉悦が杏子の脳天を走り抜けているようであった
しかし―――
それだけではないようだった。
何か別のことに対する喜びもあるようだった。
考えてみても分からない。
それと同時に打ち続ければ分かる―――そういうふうにも杏子は感じた。


杏子は疲労していた。
打ち続けた。
胴と言わず、顔と言わず、最速で、全力で打ち続けた。
五分は打ち続けたかもしれない。
たかが五分と言っても、後のことを考えないほどの全力である。
杏子にかなりの長い時間に感じた。
それでもまどかには堪えた様子はなかった。
身体のところどころにあちこち痣が付いているが、その割に余裕があるようであった。

―――なんてやつだ。
かなり打ち込んでいるはずだ。
それも、全力で打ち込んでいる。
それでもまどかは堪えていない。
痣ができているが、ダメージは芯まで通ってはない。
なにより棒を伝わってくる感触から感じるものがある。
二つある。
その片方のほうが何なのか、わからない。
しかしもう一方の方はわかる。
それはまどかの中から響いてくるものだ。
まどかの中には大きなエネルギーがある。
それがよく分かる。
あたしの打撃をまどかがしっかり受け止めているから、まどかの中のエネルギーが反射される感触からわかる。
いや、エネルギーっていうより熱っていうほうがいいかもしれない。
熱って言うよりは情熱って言うほうがいいかもしれない。
そういう意味であたしはまどかと繋がっているのかも。
今ならまどかの考えていることが少しはわかる気がする。
それにしても。
この脳天を突き抜けていくものの正体がわからない。
まどかを独り占めしている以外の理由はなんだ?
わからない。
しかし、それこそがあたしの答えのような気がする。
それがわからない。
歯痒い。
考えてもわからない所がもどかしい。
ただ歯痒いとかもどかしいと思うということは、答えはすぐそこにあるということだ。
少なくとも自分が無意識に感じていることだ。
それを思うとその歯痒さが気にならなくなる。
答えはすぐそこにあることを思えば些細なことだ。
―――本当に何をしたいのかが大事だよ。
声が聞こえた。
声というよりもイメージに近い何かが聞こえた。
脳天を突き抜けていくあの感触と同時に感じた。

まどかなのか?
そういう意味を込めて杏子はまどかに視線を向けた。
まどかはその視線に笑みを深めることで答えた。
その笑みがそうだよと言っていた。

なぜそんなことを言うのか。
たぶんあたしが無意識の答えを探していることを知っているのだろう。
あたしの中の無意識の答えをまどかは知っていて、あたしがそれに気づけないからこういうことを言ったのだ。
つまり、あたしが考えていることがまどかは分かっているのだ。
あたしと同じだ。
あたしが全力で叩いた反動からまどかのことがわかったように、まどかもまたあたしが全力で叩いているからこそあたしのことがわかるのだろう。
そういう意味であたしと同じだ。
つまりまどかとあたしは今繋がっているのだ。
太い蛇が脳天を走り抜け、そこからさらに溶けていく。
全身に向かってその溶けたものが駆け巡っていく。
それが考える力になっていく。

本当にやりたいこととは何だろうか。
今の生活は割合気に入っているはずだ。
少なくとも昔のあたしよりはましだろう。
余計な事をしたと思う。
余計な事をしたせいで家族をなくしてしまった。
その余計なことにしたって他にやりようはあったと思う。
しかし、へまをしてしまった。
今はそんなことはしない。
他人のことに首など突っ込まない。
だからへまをすることはない。
自分のことだけ気にして好きなように生きている―
――情けないな。
そのとき杏子に声をかける者がいた。
まどかではない。
杏子の中から響いてくる声であった。
誰だ。
あたしだよ。
なに!?
ふふん、杏子―――お前自身さ。

それは杏子の無意識であった。
二つ感じていたもののうちの一方は杏子そのものだった。
杏子が全力で打ち、まどかが全力で受け、その反動が杏子に伝わってくる。
その元々の力は杏子の打撃からきているものだ、ということだ。
杏子の打撃をまどかひたすら全力で受けているからこそ、反動としてそのまま帰ってきたのだ。
まるでまどかは鏡のようでもあった。

そうか。
そうさ。
どういう意味だ。
何が。
さっき情けないと言った意味だ。
ああ、それはおまえが逃げているってことだ。
何から。
自分の気持ちからさ。
でもあたしは今の生活が心底気に入ってる。
それだ。それがよくない。
てめぇ……もったいぶってないでさっさと言え。
まあ、そう焦るなよ。つまりはだ、お前にはもっとやりたいことがあるんだ。
何だそれは?
本当は、魔女や使い魔から人間を守りたいということさ。
そんなわけが!?
そうでもない。なぜなら、おまえが今の生き方を気に入っている、というのは嘘だからだ。そして、その嘘はおまえの本当の願望に気づかないためのものだ。
………
おまえは、またあの失敗をしてしまうことが怖いんだ。あの失敗をまたしてしまうと思っているんだ。
………
だから、本当の気持ちから逃げているんだ。でももう逃げる必要はない。
本当に。
ああ、おまえは強くなった。
確かにそうだ。
なら、グリーフシードが少しばっかしなくても問題ないさ。
そうか。
そうだ、魔女を倒すにして、も魔力を最小限に抑えてに倒す方法を知っている。そういう具体的な方法論がお前にはあるんだ。それに――
なんだ。
どうせ開き直るなら、失敗を恐れる必要もないってことさ。
……確かにな。あたしのやりたいことをすればいいんだよな。
そうさ。どうせ死ぬことはそこまで、怖くないだろう。なら、気楽なものさ。
ああ、わかったよ。
まどかに礼を言うんだな。
わかってるさ……おい。
なんだ。
お前もありがとうな。

杏子の動きが止まった。

これがプロレスなのか。
詳しいことはわからないが一つだけわかることがある。
それはまどかが身体を張っているということだ。
あたしが答えを見つけるために、わざわざこんな事をしてくれたのだ。
そしてこの身体を張るということが、プロレスなんだろう。
単に身体を張るだけでなくそこにメッセージをのせることがプロレスなのだろう。

そう思いながら杏子はまどかに視線を向ける。
まどかもまっすぐに杏子を見ていた。
二つの視線は自然と絡み合う。
まどかは痣だらけの身体で笑みを浮かべていた。
それにつられて杏子も笑みを浮かべる。
心からの笑みであった。
たまらぬ笑みを二人は浮かべていた。
ステンドグラスから夕日が差し込んでくる。
やさしい光が杏子とまどかを包み込んだ。
まるでスポットライトのようでもあった。
夕陽を通したステンドグラスがきらびやかに光る。
まどかと杏子には教会が美しく見えた。
退廃的な教会の中に美があるように二人は感じた。
決心をした杏子を祝福しているようであった。


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