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No.28140の一覧
[0] 餓狼少女まどか☆マギカ 【完結】[クライベイビー](2013/08/15 00:31)
[1] 餓狼少女まどか☆マギカ―1―[クライベイビー](2011/06/27 04:25)
[2] 餓狼少女まどか☆マギカ―2―[クライベイビー](2011/06/07 16:39)
[3] 餓狼少女まどか☆マギカ―3―[クライベイビー](2011/07/03 14:17)
[4] 餓狼少女まどか☆マギカ―4―[クライベイビー](2011/08/07 00:11)
[5] 餓狼少女まどか☆マギカ―5―[クライベイビー](2011/08/09 21:03)
[6] 餓狼少女まどか☆マギカ―6―[クライベイビー](2011/08/11 19:11)
[7] 餓狼少女まどか☆マギカ―7―[クライベイビー](2011/08/27 23:43)
[8] 餓狼少女まどか☆マギカ―8―[クライベイビー](2012/02/11 08:53)
[9] 餓狼少女まどか☆マギカ―9―[クライベイビー](2012/01/01 13:46)
[10] 餓狼少女まどか☆マギカ―10(修正)―[クライベイビー](2012/06/16 11:26)
[11] 餓狼少女まどか☆マギカ―11(ほとんど修正)―[クライベイビー](2012/04/23 15:23)
[12] 餓狼少女まどか☆マギカ―12―[クライベイビー](2012/04/23 12:17)
[13] 餓狼少女まどか☆マギカ―13―[クライベイビー](2012/06/16 17:38)
[14] 餓狼少女まどか☆マギカ―14―[クライベイビー](2012/09/19 06:18)
[15] 餓狼少女まどか☆マギカ―15―[クライベイビー](2012/10/15 17:32)
[16] 餓狼少女まどか☆マギカ-16-[クライベイビー](2013/08/26 06:47)
[17] 餓狼少女まどか☆マギカ―17―[クライベイビー](2013/08/06 18:14)
[18] 餓狼少女まどか☆マギカ―18―[クライベイビー](2013/08/15 00:33)
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[28140] 餓狼少女まどか☆マギカ―15―
Name: クライベイビー◆8b17b1df ID:4a0bd1c8 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/15 17:32
暗い空間であった。
無限に広がる闇。
星のない宇宙。
しかし、それは完全な闇ではなかった。
黒い空間であるのには変わりないが、不思議と物がはっきりと見えるのである。
物と物の距離もはっきりとわかる。
光が通っている黒い空間。
この矛盾した言い方がもっとも適しているように思える。
その闇の中に一つの箱があった。
白い線で四角く囲まれている。
骨組みだけのようにも見える。
しかし、その白い線にはめ込まれるようにガラスのような、そして、ガラスよりはるかに透明なものがはめ込まれているのである。
その中に二つの影があった。
一つは白い髪の少女であり、顔に凛としたものがある。
その少女はずっとサンドバックに向かってコンビネーションを続けていた。
サンドバックは見えない糸につながれているように宙に浮いている。
そのサンドバックに突きと蹴りが当たるたびに音を立てて揺れていた。
少女の身体から大量の汗が流れていた。
その流れた大量の汗は少女の足元に水たまりを作っている。
そして、その水たまりから少女の熱気に当てられた水が白い霧を作っていた。
相当長い時間、コンビネーションを繰り返しているのだろう。
しかし、息は乱れていなかった。
その後ろからもう一つのモノが声をかけた。
「やあ、精が出るね」
キュゥべえであった。
しかし、少女は黙々とコンビネーションを続けて答えない。
少女がサンドバッグを叩く音のみが響いている。
それでも、ひとり言のようにキュゥべえは続ける。
「先からずっとその調子だね。そうまでしてまどかに勝ちたいだなんて、ちょっと異常なんじゃないかな」
キュゥべえは尻尾を揺らしながら言った。
「君の正体はようやく分かったけど君がなぜこうやって存在できているのか、まだ分かっていないんだよね」
そこで、初めて少女が反応した。
「それで、私に聞きに来たってこと?」
「ああ、その通りだよ。知っているのなら、是非教えてほしいね」
少女はサンドバッグに向かいながら続ける。
「意外だね。私の出生が分かっているのなら、簡単な話じゃない?」
キュゥべえはその少女の意図に未だ気が付いていないようであった。
「私はね、まどかと闘うために生きているんだよ」
「それは興味深い話だね」
キュゥべえはやはり感情を感じさせない声で言った。
「じゃあ、君とまどかが闘えば僕の望む現象も起きるかもしれないというわけか」
「それはないかな」
「へえ。なぜそう思うんだい」
「勝つのが私だからだよ」
その言葉には少しだけ気負いが感じられた。
しかし、感情を知らないキュゥべえにそのわずかな気負いは感じられなかった。
「そうかい、じゃあまどかと君が闘うのを楽しみにしているよ」
そう言ってキュゥべえが歩を進めるとの体が頭、首、胴と順番に消えていった。
透明の何かが頭から順番に飲み込んでいくようでもあった。
後には少女とサンドバッグしか残っていなかった。
その少女は祭囃子咲夜と言った。



学校。
まどかは冬服で登校していた。
11月の中旬。
かなり寒い。
吹いてくる風が刺すように肌にしみ込む。
ふと、まどかは肩に重みを感じた。
さやかが身体をまどかに密着させていたのである。
「やめなさいよ」
ほむらがつっけんどんに言った。
さやかはそれに構わず、まどかに身体を押しつけてる。
「だってさぁ、まどかの身体は温かいんだもん」
「はぁ、そんなことあるわけ…」
「それがそうでもないのですよ、ほむらさん。まどかさんの身体は何故かとても温かいのです」
まどかとさやかの左隣の仁美が、まどか達を挟んで反対側のほむらに言う。
ほむらは意外そうに仁美を見た。
「あなた触ったの?」
「お恥ずかしながら、興味があるなら、ほむらさんも触ってみたらどうでしょう」
「なんですって!?」
「いいよ。ほら、触ってみてよ」
まどかもそういうのでほむらは、まどかの身体に手を伸ばした。
「暖かい」
ほむらは手の中に熱を感じた。
太陽の光に手をかざしたときに感じる熱。
それを感じた。
「朝のトレーニングに溜まった熱が少しだけ残るんじゃないかな」
なんという…。
まどかの言葉を聞いてほむらは思った。
もし、そうならまどかが本気になったときどれほどの熱が生まれるのか。
あるいはまどかが闘っているときに感じる、圧力の源はこの熱ではないだろうか。
ほむらが思索に浸っていると、さやかがにやりと笑った。
「なんだよ、やっぱりその気があるんだな」
仁美が大仰に声を上げた。
「そんな、わたしが知らない間にそんな感情をまどかさんに持っているなんて」
「違う」
「それは禁断の関係ですのよ」
「お願い。話を聞いて」
ほむらがそう言うが、しかし、仁美は頬を赤らめて走り去って行った。
ほむらは静かにさやかに目を向けた。
「あなた、どう責任を取ってくれるの」
「いやぁごめん。ついはしゃいじゃってさぁ。ほら、あんた達があのでっかい魔女に勝ったから…」
「そんなことを言っても、ごまかせないわよ」
「大丈夫。仁美にもちゃんと説明するしさ」
「当り前でしょう」
「あ、早いほうがいいよね。じゃあ仁美追ってくるわ」
さやかはそそくさと背を向けた。
その遠くなる背を見て、ほむらが呟いた。
「逃げたわね」
「許してあげてよ」
「喧嘩を売ったのは、あっちよ」
「まあまあ。きっと、仁美ちゃんも分かってくれるって」
「ふん、まあいいわ。それよりもまどか…」
「なぁに」
「あなたに言いたいことがあって」
「え?告白?」
「馬鹿。そうじゃなくて最近妙な事が起こってるのよ」
「妙なことが?」
そう言って、まどかは顔を傾ける。
「素手で魔女を倒しているやつがいる」
「――」
「そいつの後ろ姿しか見えなかったけど。十中八九、あなたの言っている白夜って娘だと思う」
まどかは白夜と会った時のことを思い出した。
魔女の拳を破壊する、恐ろしい剛拳であった。
そのときの記憶がまだまどかにはこびり付いていた。
「魔力も感じなかったし、グリーフシードが放ってあったから、魔法少女ではないと思う」
「ふぅん、そうなんだ」
白夜とは一カ月ほど会っていないが、よく覚えている。
あの炯々と光る眼が"お前と闘うのはこのわたしだ”と言っていた。
近いうちに何かが起こる。
まどかには予感があった。
それからのまどかは上の空であった。



授業が終わり、いつものようにトレーニングをして帰る。
家について、部屋に入ると、まどかは何かを感じ取ったのか、
「出てきてよ」
と、言った。
ひょこりと白い生き物が出てきた。
キュゥべえであった。
「やあ、まどか」
「何の用かな?」
まどかは訝しげに訊いた。
「白夜についてさ」
尻尾を揺らしながら、キュゥべえは続けた。
「君は他の魔法少女を救いたいかい?」
「話が見えないよ」
「いや、大事なことだからちゃんと答えてよ。君は他の魔法少女や魔女を解放してあげたいと思わないのかい?」
「救いたいよ。だけど、それが何だっていうの」
「言葉どおりさ」
「どういうことかな?」
「まどかは魔法少女や魔女を、もっと言うなら宇宙を救えるってことさ」
「……」
「その方法を君に教えに来たのさ」
「契約は絶対にしないよ、キュゥべえ」
まどかはキュゥべえの尻尾をつかんで、窓から放り出そうとした。
「違うよ。僕はね、契約とは全く関係ない話をしようとしているんだ」
吊り下げられたまま、キュゥべえは意に介さないで言う。
「白夜の話さ」
「白夜ちゃんの?」
「そう、君は白夜と闘いたがっているだろう」
「それと何の関係があるの?」
「ああ、まず彼女は純粋な人間ではない」
それを訊いてまどかはキュゥべえを降ろした。
「彼女は二人の魔女から生れた人間なのさ」
「嘘でしょ」
「嘘じゃない。そもそも、これは君が原因で起った事さ」
「――」
「君は記憶を盗み見る魔女を倒したときに、黄金の光を見ただろう。あれはね魔法少女が魔女になるのとは逆の現象なのさ。
強烈な希望のエネルギーには魔法少女と魔女の魂の在り方さえ、変えてしまう力がある。あれには物凄いエネルギーがあってね、より強い絶望に引き寄せられるという性質があるんだ」
まどかは天に昇って行った、あの光を思い出した。
「どうやら思い出したようだね。そこで不思議に思わないかい。あのとき、周りには絶望した人間が工場にいっぱい居たのに誰一人もあの光を浴びていないんだ。それ何故かというとね、あのとき異空間に、この世で一番の絶望があったからさ」
「それってつまり…」
もし、絶望が魔女の喩だとするのなら。
答えは一つしかなかった。
一人の魔女がまどかの脳内に浮かんだ。
「そう、最強の魔女"ワルプルギスの夜"にあろうことか吸収されたのさ。しかし、あれほどの希望のエネルギーが混じればワルプルギスの夜は崩壊してしまう。そこで彼女は自分の一部を引き剥がしたのさ。その一部も消えて無くなるはずだったけど…」
「それが、白夜ちゃんってこと?」
「そうさ」
「ふぅん」
それを聞いてまどかは白夜が自分を知っていることに合点がいった。
恐らく、記憶の魔女がまどかから読み取った記憶が白夜に引き継がれたのだ。
「でも彼女が何故生きているのか、分からなかったのさ。引き剥がされた方は巨大なエネルギーとなって散るはずだったのに、
それが人間として存在できているんだからね。不思議だったんだけどそれが判明したのさ。彼女はまどかに勝つという情熱が分
離を防いでいるのさ」
「で、それが何の関係があるのかな?」
「つまり負けを認めれば、彼女は死ぬってことさ」
「なに!?」
「そして、彼女が負けた瞬間、彼女は分離して、あの光の何十倍というエネルギーになるのさ」
「……」
「もう分かるね。君が彼女に勝てばそのエネルギーで、魔法少女の魂は肉体に入り、魔女は光となって消滅する。さらには、宇宙の危機も無くなり魔法少女が生まれることも無くなるのさ」
「……」
まどかは背筋に寒気が走った。
白夜と闘いたいという気持ちさえあれ、殺したいなどとは思っていなかった。
しかし、もしまどかが白夜を殺しさえすれば、おそらく全ての魔法少女が助かる。
もう誰かが魔女に襲われることもなくなり、魔法少女も過酷な運命から解放される。
あるいは、キュゥべえが嘘をついているのか。
まさか、こんな大げさな嘘はつくまいと思う。
しかし、もし本当だとしても白夜を殺したいとは思わない……。
まどかはどうすれば良いのか分からなかった。
ふと、あの炯々と光る眼を思い出した。
白夜に会わねば。
まどかはそう思った。



まどかは家を飛び出した。
白夜と話をしたい。
その一心であった。
幸い会える可能性もあった。
白夜は魔女と闘っているところを目撃されている。
間違いなくそれは白夜流の鍛錬だと、まどかは思った。
実際、白夜にとって魔女の結界に身を置くことは、より実戦に近づくための鍛錬であったのだ。
魔女をいち早く見つけて向かえば白夜に会えるかもしれなかった。



まどかが走り始めてどれほど経ったのだろうか。
息が弾むようになったころ。
魔女の気配を感じた。
そして、それに紛れてあの日本刀のように鋭いものを感じた。
――白夜だ。
まどかはその気配に向かって、全力で走りだした。
すると、魔女の気配が消え、あの鋭いものも感じなくなった。
どうやら、魔女を倒して臨戦態勢ではなくなったようである。
まどかはさらにスピードを上げる。
汗が身体ににじみ出たとき、まどかは魔女の結界があった場所に着いた。
「まどか、か?」
そこには少女がいた。
白髪である。
「白夜ちゃん」
まどかが声を掛けた。
「なにかあったのかな」
白夜はまどかの様子にただならぬものを感じたようであった。
「キュゥべえに聞いたよ。あなたのこと」
「ふん、余計なことを」
「あなたは知っているの?自分が負けたらどうなるのか」
「もちろん。知っててあなたと闘いたいのよ」
白夜はそう言った。
まどかはそれをある種の驚きをもって聞いていた。
そこまでの覚悟があるのか。しかし、どうして。
「どうして、私と闘りたいの?」
気づけば、思いが漏れていた。
「いい?わたしはね、魔法少女とか魔女とかのために闘りたいんじゃない。あなたと闘りたいから闘るんだよ。
あなたに勝ちたいから闘るんだよ」
白夜が笑みを浮かべて言う。
キュゥべえの話を聞いて感じた儚さとは無縁のものであった。
「いい?まどか、わたしにとってはね、自分が死ぬとか死なないとかはただの結果よ」
「むう」
「わたしとあなたが真剣に闘って、それでわたしが死ぬって言うんならそれは仕方がないことよ」
なんということを言うのか。
まどかは震えていることに気がついた。
「ふふん。震えてるよ、まどか」
白夜の声が嬉しそうに弾んでいる。
まどかは恐ろしくなった。
白夜を殺したくもなかった。
白夜と闘りたがってもいた。
勝ちたくもあった。
自分がどうしたいのか分からない。
しかし、一つだけ分かることがあった。
白夜は自分の何もかもを捨ててもいいとさえ想っていることである。
そこまで想われれば闘るしかない。
まどかは知らずに知らずの内に構えていた。
もし、白夜がこの場で始めるつもりであるなら、油断はできない。
「心配しなくても今始めるつもりはない。邪魔が入るかもしれないしね」
「……」
「次の週の日曜日。朝の9時に、まどかがいつもトレーニングをしている公園で待っている」
白夜はそれだけを言うと、十分な距離をとってから背を向けて走り去った。
まどかは白夜がいなくなってからも、その背のあった所をずっと見ていた。


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