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No.27528の一覧
[0] 【ネタ完結】私設武装組織ソレスタルキュービーイング(ガンダム00+キュゥべえ)[気のせい](2011/10/02 14:33)
[1] QB「皆僕のつぶらな瞳を見てよ!」[気のせい](2011/05/04 18:36)
[2] 変わりすぎるかもしれない世界[気のせい](2011/05/04 19:19)
[3] QB折衝[気のせい](2011/05/04 19:15)
[4] 僕に仕事を下さい[気のせい](2011/05/04 23:14)
[5] 管制官「こんなの絶対おかしいよ」[気のせい](2011/05/05 18:25)
[6] QBキャンセル[気のせい](2011/05/06 17:49)
[7] 次出たらぶん殴る[気のせい](2011/05/06 17:49)
[8] QB「本話の存在は了承されたよ」[気のせい](2011/05/08 17:24)
[9] 人革連「罠が仕掛けられない……だと」[気のせい](2011/05/08 17:51)
[10] QB「アレルヤ・ハプティズム、君の出番は余り必要性が無いよ」[気のせい](2011/05/08 18:45)
[11]  計 画 通 り[気のせい](2011/05/08 21:56)
[12] 金ピカ大使「私の頭の上にエンジェルの輪が見えるようだよ」[気のせい](2011/05/11 12:45)
[13] QB「もう少し我慢しててよ」[気のせい](2011/05/22 14:55)
[14] 三位一体「出番は?」 紫HARO「ネェヨ! ネェヨ!」[気のせい](2011/05/18 23:01)
[15] 三陣営首脳「我々って、ほんとバカ」[気のせい](2011/05/18 23:32)
[16] スメラギ「死相が見えるようだわ……」[気のせい](2011/05/21 16:01)
[17] 紅龍「浴室は無かった事にしよう」[気のせい](2012/05/30 18:52)
[18] 刹那「戦っているのか」 MS「戦っているわ」[気のせい](2011/05/23 21:11)
[19] MS「タダ飯! タダ飯!」[気のせい](2011/09/30 09:00)
[20] イアン「美人ならおk」 リンダ「あなた?」[気のせい](2011/09/30 09:03)
[21] サジ「ちゃんとご飯食べてる? 朝御飯食べないと力でないよ。育ち盛りはしっかり食べないと成長に支障が出たりするし、いくらナノマシンあるっていっても」[気のせい](2011/06/17 16:00)
[22] アレルヤ「刹那、それがGNタクシーの力だ!」[気のせい](2011/06/24 15:20)
[23] ロックオン「ハロ、Sレベルの秘匿義務って何かあったか?」[気のせい](2011/09/30 09:04)
[24] QB「CBの戦いはこれからだよ!」[気のせい](2011/06/30 23:47)
[25] QB「正しく2nd始まるよ!」[気のせい](2011/07/16 17:46)
[26] そんな機体名で大丈夫か。[気のせい](2011/07/22 23:25)
[27] 頭に……響くんだよォッ!![気のせい](2011/08/04 13:12)
[28] ヒリング「あたしの出番よ!」[気のせい](2011/08/30 13:32)
[29] 私マリナ・イスマイール。[気のせい](2011/08/21 04:05)
[30] トレミー「俺TUEEEEEEEE!」[気のせい](2011/08/30 15:58)
[31] ルイス「サジィ!」 サジ「ルイスゥ!」[気のせい](2011/09/22 21:10)
[32] アレルヤ「この期に及んで僕だけ原作イベントなのはどういう事なんだろうね……」[気のせい](2011/09/24 22:00)
[33] ミレイナ「アーデさんアーデさん! お話しして下さいですぅ!」[気のせい](2011/09/25 22:04)
[34] ELS「やあ」[気のせい](2011/09/30 09:07)
[35] ELS「待ってよー!」[気のせい](2011/09/30 08:51)
[36] 刹那「ネ申!」[気のせい](2011/09/30 09:35)
[37] ラッセ「なあ……最初から刹那だけテレポートすりゃ良かったんじゃないのか?」 スメラギ「それは言わない約束なの。でないと私達の出番無いわよ?」[気のせい](2011/10/02 19:25)
[38] 【小話】ミレイナ「魔法少女についてどう思うですか?」 スメラギ「これだから思春期は……」[気のせい](2012/03/16 23:13)
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[27528] ラッセ「なあ……最初から刹那だけテレポートすりゃ良かったんじゃないのか?」 スメラギ「それは言わない約束なの。でないと私達の出番無いわよ?」
Name: 気のせい◆050021bc ID:899ac1f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/10/02 19:25
 刹那・F・セイエイが目を覚まし、ゆっくりと瞬いた。
 無言で天井を見上げ、見渡すと室内には誰もいなかったが、固定されている右手に何か握っているような感触があった。
[目が覚めたか、刹那]
 刹那が起きた事にジョイス・モレノが気づき、手首固定用の錠が解除される。
 刹那は上体を起こし右手を確認すると、
「これは……」
 一本の赤いリボンがあった。
《刹那・F・セイエイ、目が覚めたようだね。それを貸しておくと暁美ほむらが君に伝えるように言っていたよ》
 QBの声が刹那の頭に丁度響いた。
 刹那はそのリボンから不思議と心が暖かくなるように感じ、そっと握りしめた。
 夢の中で逢ったような、『希望』そのものに触れているかのようだった。


―CBS-77プトレマイオス3・ブリッジ―

「刹那が?」
 スメラギ・李・ノリエガがミレイナ・ヴァスティの報告に聞き返した。
「はいです!」
 すぐにCB号から刹那の通信が入る。
[心配掛けて済まなかった]
 スメラギが顔を見て安堵する。
「刹那……」
[行こう、木星へ。ELSの元へ]
 刹那は何の迷いも無く言う。
「……分かったわ。行きましょう」
 スメラギは頷いて、モニターに映る木星を見た。

 刹那回復の報せを受け、プトレマイオス3はコロニー型外宇宙航行母艦CBに一度帰投。
 迅速にダブルオークアンタの搬入と物資の補充を完了し、出発の準備が整う。
[スメラギより全員に通達。トランザムで最大加速。これより本艦は木星圏の大型ELSへの接触に向かいます]
 スメラギの宣言と共に、CB号から少し離れた地点でプトレマイオス3は紅く輝く。
 艦船用GNバーニアから多重円の軌跡を放出し、その進路は木星の超弩級ELSへと取られた。


―UNION領・経済特区・東京―

 市民の多くが地下の施設に避難し、いつになく暗く閑散とした大都会の深夜。
 少女は背に白く輝く翼を展開し、地上に次々と湧いて出る魔獣を上空から射抜き続けていた。
 魔獣の両手から放たれる無数の光線が途切れる事なく少女が高速で飛び去った空を次々と追い続ける。
 少女は華麗に回避しながら弓を天に向け、夜を眩く照らす光を放つ紫色の矢を溜めるように引き絞り、
「ッ!」
 放った。
 矢が紫色の柱を成すように打ち上がり上空で一瞬留まる。
 次の瞬間、360度ドーム状に無数の矢が射出され、地上に激しい雨の如く降り注ぎ瞬く間に魔獣の群を殲滅して行く。
 数秒の後、周囲に重苦しく響く魔獣の呻き声は完全に消え失せた。
 少女はふわりと高いビルの屋上の端に舞い降り、弓を仕舞う。
 そこへQBが現れる。
「流石だね、暁美ほむら。あの数を一瞬で片付けるなんて」
「……グリーフシードを拾うのに手間が掛かるわ。手伝いなさい」
「任せてよ!」
 言って、QBは一度消えた。
 かなりの量のグリーフシードが集まり、少女は必要な分だけソウルジェムの浄化作業を行い、使い終わった物から空に投げ、QBが上手にキャッチして行く。
「君が言った通り、渡しておいたよ」
「助かったわ」
「君がお守りのように物を人に渡すなんて珍しいね」
 QBが言うと少女がコアを放り投げる。
「……そうね」
 少女にとって幾ら月日が経とうと劣化する事の無い赤い二本のリボンはほんの少しの本当の奇跡。
 そして夢と希望の象徴でもある。
 QBは人間の習慣でいうお守りと呼んだが、正しく世界にこれ以上無いお守りであった。


オリジナルのツインドライヴ9対を保有するプトレマイオス3がトランザムによる最大加速で地球圏を去った後。
絶対防衛戦でのELS進行の完全阻止は徐々にその難度を上げ始める。


―月軌道内周・絶対防衛線―

 量子型演算処理システム、ヴェーダが存在しながらELSがどういう訳か近づいてこないコロニー型外宇宙航行母艦CBの司令室からリボンズ・アルマークが通信で指示を出す。
[F42、S29、O16、T34、GNブラスターライフル、発射]
 順次ガンダムオメガを主軸とした高威力粒子ビームが放たれ、幾本にも及ぶ川に別れて地球に迫り始めたELSを消滅させてその進行を遮る。 
 戦闘継続に従い、本流から一本、二本、三本と分流が様々な角度にうねるように発生し、地球に直進するだけではなく迂回して回りこむようにも動きを見せ始め、完璧なローテーションで完封するのは困難さを増し続けていた。
 それに対し、CB号は防衛戦を抜かれた時のリスクは上がるが、その守備範囲がより小さく済むように月軌道の内周へ後退。
 そして、ただ分流が増えるのを見過ごしていた訳でもなく、適宜トランザムを始動する事により、分流をライザーソードで圧倒しELSの分流を根元まで一気に押し返す事も繰り返していた。
 CB号の一方でプトレマイオス2F及びプトレマイオスFも各宙域に展開、臨機応変にELS進行の対応に当たり、更にはより地球に近い宙域に後退した国連軍の巡洋艦にはガンダムが可能な限り護衛に付き、国連軍MSにとっての母艦喪失を防いでいた。
 カティ・マネキンは巡洋艦のブリッジでヴェーダが統括する目まぐるしく変わり続ける戦況データを素早く判断し指示を出し続ける。
「ジンバリスト隊、ポイント32のELS掃討に回れ。コーラサワー隊はガンダムと共に母艦の周囲で撃ち漏らしの掃討に専念しろ」
[了解!][了解です大佐!]
 エイミー・ジンバリスト、パトリック・コーラサワーの二人が返答をした。
「放て!」
 エイミー率いる三機の巡航形態のブレイヴは川から分断された小型ELSに向けて機首のドレイクハウリングを斉射し、三条のビームが目標を薙ぎ払う。
「逃がすかぁっ!」
 コーラサワー率いる同MS形態の三機は構えたドレイクハウリングを連射し、ガンダムオメガのGNブラスターライフル及び付近を飛び交うGNビットの砲撃から僅かに逃れたELSを撃ち落として行く。
「補給班、粒子供給急げ! 完了次第タンクをガンダムに回せ」
[了解!]
 ガンダムが使用するGN粒子貯蔵タンクは国連軍の巡洋艦で粒子を充填しガンダムに回されていた。
 CB……敵にすると脅威だが、協力するとなるとこうも心強いとは。
 マネキンは鋭い目でメインモニターに映るガンダムの姿を一瞥し、手元の戦況データにすぐに目を戻した。
 この時点でELSはMS及び艦隊には積極的には近づかず、寧ろ無視して逃げるように地球へと突入しようとして防がれていたが、この後ELSの動きは更に変化して行く。


―火星公転軌道圏外―

 地球から約5400万km程度の軌道を三日目にして通過したプトレマイオス3はELSが地球圏到達に約三ヶ月掛けた距離を約一ヶ月で到達可能予定であった。
 数千km離れた距離に延々とELS群の川が連なっていたが、一部のELSが分岐してプトレマイオス3へ寄ってきていた。
「トランザム!」
 開放された艦首ハッチのカタパルトに立つオメガに搭乗したヒリング・ケアがトランザムを始動させた。
 瞬く間にオメガは紅く輝き両腕に構えるGNブラスターライフルから特大ビームサーベル、ライザーソードが放たれ、桃色の長大なビームサーベルが宇宙空間で強烈に光る。
「くらぇぇぇッ!」
 分岐して迫りつつあったELS群は根元までごっそり消滅し、そのまま横に振られより多くのELSが撃破されていく。
 一応の目標を達成すると無駄な粒子消耗を抑えるためトランザムを直ちに中断し、機体は通常色に戻り通常砲撃にシフトする。
 別のハッチからはサバーニャが超々長距離狙撃を行い続ける。
「狙い撃つ!」
 ロックオン・ストラトスがトリガーを引く度、巡洋艦クラスの大型ELSが爆発して吹き飛び、ELS群の川の中に紫煙が上がる。
「チャージ完了。GNブラスターライフル、発射」
 残るもう一つのハッチからもリヴァイヴ・リバイバルがオメガで迎撃を行い、プトレマイオスは粒子量の大部分を推力に回していた。
「QBが何かしてるって?」
 ラッセ・アイオンがスメラギの呟きに対し聞き返した。
 スメラギは地球圏での戦況データを見ながら言う。
「ええ。おかしいのよ。ELSの行動パターンが変わるのは理解できるし、戦艦やMSに向かうようになるのも分かる。けど、CB号にだけELSは全く向かわず迂回してるのよ。迎撃が上手くいっているのも確かだけどそれだけでは説明がつかないの」
 リヒテンダール・ツエーリが軽く言う。
「意外とQBのいつものCBが壊滅するのは困るっていう奴じゃないすか?」
 一瞬ブリッジ内から言葉が消え、スメラギが遠い目をした。
「結局……それが一番ありえそうね」
 QBにとってもヴェーダは重要な存在であり、イノベイド魔法少女生産の為には不可欠、そしてオリジナルのGNドライヴも重要なもの。
 QBはCBの月面基地とコロニー型外宇宙航行母艦CB、加えて木星圏のGNドライヴ建造艦にELSが近づかないよう確実に何かしている。
「……この際QBはともかく……リヒティ、ルートをE21に変更して。少しELSから距離を取るわ」
 しても仕方ない思考を振り払い、スメラギは指示した。
「了解っす」
 リヒテンダールはすぐに操縦桿を操作し、ELSとの距離を開けに掛かった。
 しかし、すぐに木星で異変が発生する。
「スメラギさん! 大変です! 木星のELSが衛星のエウロパを同化してます!」
 フェルト・グレイスが報告した。
「何ですって!?」
 スメラギが驚いて声を上げると、フェルトがメインモニターに映像が映る。
 超弩級ELSから大型ELSを主として次々と飛んで行き、直径約3000kmのガリレオ衛星エウロパの表面が急速にELSの色へと変貌していく。
「何てことなの……!」
「おぃおぃ嘘だろ……」
「マジっすか……」
 スメラギ達はその光景に戦慄した。
 僅か数日にして超弩級ELSは二体に増え、遂に地球へと移動を開始した。


―経済特区・東京・JNN本社―

 巨大なモニターに報道官が映っていた。
[避難の済んでいないイノベイター市民の皆様は各国連軍施設への避難をお願い致します。移動が困難な場合は最寄りの保安局に……]
 報道関係者は地球の非常事態においても世界への情報発信を継続していた。
 部長が大声で指示を出す。
「軍からの最新の防衛状況と声明、纏めて十分以内に流すぞ!」
「はいっ!」「了解!」
 フロアのあちこちで慌ただしく動く社員達が返事をする中、絹江・クロスロードも自身のデスクで端末を操作しながら情報整理に当たっていた。
「二体の大型ELS……」
 ガンダムによるELSとの意識共有。
 これからCBで行われる作戦が成功すれば……。
[現在、国連軍は各軌道エレベーター及びオービタルリングに戦力を集中し、太陽光発電システムの防衛を……]


―人革領・国連軍宇宙局技術研究所―

 青白い照明の灯る薄暗く研究所内では、CBが十数日後に行うミッションの情報が伝わっていた。
 背景には青い円、天使の環を備え両翼を成すような黄色い十字のCBのマークが表示される白い画面に情報が記載されていた。
 ビリー・カタギリが信じられないという様子で言う。
「CBは例の現象でELSとの対話を本気で試みるつもりだというのですか。成功の保証などどこにも」
「保証は無いが、可能性はある」
 テリシラ・ヘルフィが目を閉じて言った。
 レイフ・エイフマンが杖をつきなおして唸る。
「儂も、その作戦の成功を信じたい。実際、それ以外に望みはないだろう。ELSが脳量子波を用いてコミュニケーションを取る生物でありながら、強い脳量子波を持つイノベイター達は肉体組織の半分を同化され意識不明の重体でここにおる」
 テリシラが再び目を開ける。
「イノベイター、ヴェーダ、ガンダムの特殊システム……一つではなく三つなら……」
 カタギリは黙り、不安そうな表情をするが、やってきていたハナミが元気づけるように両手を構えて言う。
「きっと大丈夫ですよ!」
「そうよ、ビリー。信じましょう。ELSだって私達人類の事を理解したがっているのかもしれないわ」
 ミーナ・カーマインが自然な動作でカタギリの腕に絡みついて言った。
「……そう、だね」
 一日、二日、三日と何とか防ぎ切れてはいるが、正直終わりの見えない状況、そして超弩級ELSが月サイズの衛星を同化して近づいてきているという事実に、後十数日でCBがミッションが行うというのは国連軍の士気が最悪な状態になるのを少なからず防ぐ効果があった。
 そして日毎に国連軍はMSと艦隊の疲弊が激しく同化される事を危惧した事もあり後方へと下がり続け、専ら太陽光発電システムの根幹を成すオービタルリング及び軌道エレベーターと地上宇宙双方のイノベイターを集中避難させた各軍関連施設の防衛に専念し始め、一方でコロニー型外宇宙航行母艦CBは謎の安置地帯として前進しGNブレスターライフルの連射により可能な限り纏めてELSを吹き飛ばしていた。
 しかし、密集し川のように連なって進行していたELSは、CB号が前に出れば、それに合わせてより遠方から広範囲に放射状に散開して地球圏に迫るようになり、逆に数で圧倒はされにくくなったが、対応はより困難になって行く。
 プトレマイオス3が超弩級ELSとの接触まで後二日となった時、地球の半球には銀色の小雨が降り注ぐかのようであった。


―人革タワー低軌道リング・脳量子波遮断施設―

 人革連の軌道エレベーターを支える低軌道リングに、嵌め込まれるように箱状の脳量子波遮断施設が存在する。
 しかし、この施設は遮断施設であるにも関わらず、実は脳量子波を遮断しきれていなかった。
「うぅッ! 来るっ!」「ぁぁァ!」
 そのため、避難しているイノベイターの脳量子波に引き寄せられ、ELSが絶え間なく寄ってくるポイントとなっていた。
 長い金髪に緑色の目をした青年レオ・ジークは擬似GNドライヴの搭載されたケルディムを受領し、ELSが迫るその高度斜線軸で一機のガンダムオメガと共に大量のGNビットを用いた粒子ビーム連射によって防衛していた。
「次が来るよハロッ!」
「GNビット展開! GNビット展開!」
 脳量子波に引き寄せられる為に、密度薄く小型ELS一体一体が迷子のように独立して動いていたのが再び収束し川となる所へ向けて、レオはハロの制御するGNビットと共にGNスナイパーライフルⅡを三連バルカンモードでビームを高速連射し、小型ELSを迎撃して行った。
 局所的に防衛はできたとしても、全長五万kmに及ぶオービタルリングはその長大さから言って防衛は困難。
 しかし、意を決してブレイヴに搭乗し、自ら囮となってELSを引き寄せ戦う者達の姿があった。
「っく、さあ、ついて来いELSッ!」
 外部からの脳量子波遮断スーツを着た厳しい表情のクラウス・グラードは巡航形態の最大速度で宇宙を駆け抜け、ばらけていた小型ELSは次々に引き寄せられ追跡し始める。
 ブレイヴは左右のサイドバインダーに搭載されているGNキャノンの砲身を後方に旋回させ、粒子ビームを連射し迎撃に当たる。
「GNブラスターライフル、発射」
 瞬間、クラウス機の背後を追尾していたELSが禍々しい粒子ビームに巻き込まれ一掃された。
 オメガによる砲撃。
「……これでは全く、ELSの餌だ。この、物の怪どもがぁぁーッ!」
 後方から追尾して来るELSをGNキャノンで捌き、デカルト・シャーマンは叫びながらドレイクハウリングを前方からも迫るELSに向けて放ち、進路を開いた。
「ソルブレイヴス隊、イノベイター機を落とさせるなッ!」
[了解!][了解!][了解!]
 グラハム・エーカー率いるソルブレイヴス隊はイノベイターがいれば何よりも優先してそれを追うELSを、ドレイクハウリングで薙ぎ払い、その身を挺してELSを引き寄せるイノベイターの乗る機体を援護していた。
「次から次へとッ!」
 絶対に、落とさせはしないッ!


最早完全には防ぎきれず、大気圏内に突入した小型ELSは、イノベイターに引き寄せられ、彼らが避難している軍関連施設では絶え間のない防衛が始まる。


―AEUフランス・軍事演習場―

 周囲に建物が無く、視界を遮るものが無い軍事演習場の管制室で報告が上がる。
「未確認の大型航空機八機が急速接近、生体反応ありません!」
 すぐに司令官が指示する。
「擬態したELSと断定しMS隊で迎撃を!」
「了解!」
「とうとうここにも現れたか……」
 空の輸送機が一路空から近づいて来る様子がモニターに映っていた。
 既に展開し、先頭のブレイヴに乗るアリー・アル・サーシェスが悪態を吐く。
「ったぁく、金属の化けもんと戦争たぁな!」
 三機のドレイクハウリングと三機のGNコネクトから粒子ビームが放たれ航空機を易々と撃墜し、紫煙を上げて、破片が地上に落ちる。
 しかし、ある程度の大きさで残った破片はドロドロに溶けると今度は何体ものQ頭身の姿になり、両腕を振って全力ダッシュで走り始めた。
「ッハハハハァ! こいつぁしつけぇ! 気味悪ぃんだよぉッ!」
 サーシェスは狂気染みた笑い声を上げると地上を猛ダッシュするQ頭身を僚機と共に容赦無く消滅させて行く。
 QBの頭部だけが運良く吹き飛んでコロコロ転がれば、カタカタ震えた後に崩れ落ちるように金属に戻って停止する。
 脳量子波遮断施設を用意しきる事ができず、イノベイターは周囲に一般人、建物のない軍事演習場などに収容していたが、当然ELSが引き寄せられて現れる。
 一定時間を置いては何度でも現れる擬態ELSに変化が起きた時、その防衛は難度を上げる。
 ブレイヴに擬態したELSが出現。
[ポイントF24よりブレイヴELS十機接近!]
 通信を受けてサーシェスは舌打ちをする。
「おぉおぉ、どっかの奴がしくじりやがったぁ! 糞がァ!」
 巡航形態のブレイヴELSは一斉に紫色の粒子ビームを放って来る。
 三機のブレイヴは鮮やかに避けて見せるが、二機のGNコネクトが被弾し、爆発を上げて墜落して行く。
「金属の癖に洒落臭ぇ! イノなんたら何か収容すっから寄ってきやがる!」
 圧倒的な操作技術でサーシェスは一機二機と撃墜していき、軍事演習場からもGNコネクトの増援が出撃し、防衛に当たる。
 ブレイヴELSに突撃され、GNコネクトの一機が侵食されながら墜落して行く。
[うぁぁッー!]
 通信でパイロットの叫びが聞こえるが、サーシェスは容赦なくドライクハウリングを向けた。
「ッチ、ったく仕方ねぇなァ」
 粒子ビームが直撃し、爆散した。
 続けてサーシェスは地上に落ちた破片にも射撃を加え、Q頭身に変化する傍から吹き飛ばした。
 高機動かつ粒子兵器を模倣するブレイヴELSの大量発生は、まさに悪夢の様相を呈した。
 しかし、ELSにしてみれば、
「何か撃ってきてるのおーぼえた! 見て見て! 僕らも撃てるようになったよー!」
 とメッセージを送っているだけである。


―人革連・軌道エレベーター・高軌道ステーション司令室―

「オービタルリング、23%がELSにより侵食! 電力送信ライン、六ヶ所途絶!」
「人革領ロシア北部、中国南部、各イノベイター避難施設、ELSの襲撃を受けている模様!」
 次々と管制官達がヴェーダからリアルタイムで上げられてくる情報を報告し、苦虫を潰すような表情でセルゲイ・スミルノフは自身の管轄に対し指示を出す。
「侵食されたオービタルリングの分離作業を急がせろ! 侵食をこれ以上拡大させるな!」
「了解!」
「大佐! ブレイヴに擬態したELSが六機、白虎に接近して行き来ます!」
 スミルノフが腕を振って言う。
「ブレイヴに擬態したELSの相手を下手にさせるな。ガンダムに任せて、牽制しつつ艦はすぐにポイントF53まで後退させろ! 巡洋艦にまで擬態されてはかなわん!」
「了解!」
 ブレイヴに擬態したELSが最終的に、ガンダムオメガのGNビットによって殲滅される映像がモニターに映った。
 スミルノフは拳を握り締める。 
「ELSめ……」
 ブレイヴに擬態しだした途端、よもやここまで急速に体勢を崩されるとは……。
 宇宙にはガンダムがいるからまだ良いものの、既に地上には各所で被害が出てしまっている。
 最早CBの特殊作戦とやらが成功でもしなければ、根本的な解決はありえんか……。
「信じるしか無いというのか……」
 スミルノフはガンダムオメガとケルディムが軌道エレベーターと、下の低軌道リングの脳量子波遮断施設を防衛する映像をモニターで見ながら呟いた。


―超弩級ELS進行宙域・CBS-77プトレマイオス3―

 二体の超弩級ELSが迫り、周囲には膨大な量の小型ELS、大型ELS、そしてブレイヴに擬態したELSの姿がプトレマイオスのメインモニターを埋め尽くす。
 迫り来るELSに向けて船体全体にGNフィールドを張り200基のGNビットを飛ばしているプトレマイオスの周囲には、既に順次ガンダムが出撃していた。
「ダブルオークアンタ、射出準備」
[了解した]
 ダブルオークアンタがカタパルトデッキに移動する。
「リニアボルテージ上昇、730を突破」
 機体がフィールドに固定され、ランプが点灯する。
[射出タイミングを刹那・F・セイエイに譲渡します!]
「了解。ダブルオークアンタ、刹那・F・セイエイ、出る!」
 言って、リニアフィールドに火花を散らし、ダブルオークアンタが出撃して行く。
 緑色に輝く軌跡を残しながら、クアンタは最初に出現した超弩級ELSの方へと向かって行く。
「行くぜハロッ!」
 ロックオンが声を上げ、ハロがパタパタしながら応答する。
「了解! 了解!」
「一気に道を切り開く! トランザムッ!」
 宣言と同時にサバーニャが紅く輝き、構えたGNバスタースナイパーライフルが唸りを上げる。
 溜めと共に極大の粒子ビームが斜線軸上のELSを全消滅させ、クアンタの進路を穿ち開いた。
 瞬時にハルートの頭部に三対のツインアイが姿を現し、超兵イノベイターとしての能力を最大限に解放するモードに移行する。
「いいかァッ! 反射と思考の融合だァ!」
「分かってる!」
 脚部に大型ブースター、GNバーニアユニットを装備した姿のハルートはクアンタが超弩級ELSに辿りつくまでの護衛となるべく、速度を上げて先行。
「いくぜぇぇぇぇッッ!!」
 ありとあらゆる方向に粒子ビームとGNミサイルを惜しみなく撒き散らし、幾本ものシザービットが宙を飛び交う。
 刹那はその後を追い、ただただ一路、目的のELSの元まで向かって行く。
[各機、トレミーを防衛しつつクアンタとハルートの援護開始!]
[了解!]
 六機のガンダムはそれぞれの武装を以て、後方からの援護射撃をしながらプトレマイオスの護衛を開始した。
「ポイント224よりブレイヴELS接近! 数24!」
「ポイント167から巡洋艦クラスのELS接近!」
「ラッセ!」
「おうさぁッ!」
 小型ELSが複数融合して擬態したブレイヴELSがプトレマイオスに迫りながらドレイクハウリングから粒子ビームを次々に放つ。
 即座にプトレマイオスのGNビットが六基一セットで円環状に組み合わさり、そこに強固なGNフィールドが展開され易々とビームを防ぐ。
 同時に数十基のGNビットが回避ポイントを与えぬ砲撃を放ちブレイヴELSを撃墜。
 ティエリアが叫ぶ。
「近づけさせるかぁッ!」
 大型ELSはラファエルのビックキャノンで中心を貫かれ爆散。
「GNブラスターライフル、発射」
「GNブラスターライフル、いけぇッ!」
「チャージ完了。GNブラスターライフル、発射!」
 リジェネ、ヒリング、リヴァイヴの三機がブラスターライフルを振り回すようにして強烈な光を発する粒子ビームを放ち、三方向から迫る小型ELSの群を薙ぎ払って行く。
「はぁぁぁーッ!」
 マリーはMS形態のアリオスで粒子ビームを放ち、サバーニャと共にクアンタとハルートの援護射撃を行う。
 そして周囲には200基のビットに加え、各ガンダムのビットが飛び、プトレマイオスからは全方向に無数の粒子ビームが乱射され続けた。
 スメラギは両手を握りしめる。
「刹那……」
 地球圏の状況は悪化の一途を辿り、その情報を逐一得ていたスメラギは、少しでも早く、ELSとの対話が無事成功に終わるようにと思っていた。
 不安げな様子でクリスティナが言う。
「スメラギさん、もしもの時は……」
「今は信じましょう。希望はあるわ!」
 操縦桿を握ったままラッセとリヒテンダールが言う。
「その通り!」
「そうっすよ!」
 最前線を行く刹那とアレルヤは後方からの援護射撃がありながらも、その前方には進路を塞ぎに来る途方も無い量のELSの群を相手にしていた。
「ッ! くぅッ!」
 ハレルヤのように脳量子波を遮断できない刹那は干渉を受けて呻き声を上げながらも遮断スーツ無しで機体操作を行う。
「じゃまだぁぁァァッ!」
 接近してくるブレイヴELSはハルートの秒速150kmを超えるシザービットに一瞬にして切り刻まれ次々に爆散し、GNキャノンが火を噴けば大型ELSは中心部から焼き尽くされて崩壊する。
「っぅ!」
 頭痛に刹那が声を上げると、瞬時にGNソードビットが円環を形成して飛来する粒子ビームを防ぎ、ハルートが砲撃を放ちブレイヴELSを片付ける。
 二機は動きを止める事無く前進し続け、後方からサバーニャの超長距離射撃の援護を受けて、小型ELSが雲を成す地帯も抜け、遂に超弩級ELS間近に到る。
 先行するアレルヤが刹那に通信を入れる。
「刹那、ELSの表面に穴を開ける! トランザムッ!」
 言って、機体が紅く輝き、
「いけぇぇぇーッ!!」
 超弩級ELSの木の根のような表面にGNキャノンとGNソードライフルを最大出力で撃った。
 着弾の瞬間、ELSの表面に虹色の膜が発生しビームの端が歪曲して弾かれるように拡散するが、ハルートの出力が勝った。
 照射が終了すると、周囲が溶けたような巨大な穴が穿たれていた。
[刹那ッ!]
「了解!」
 そして刹那は超弩級ELSの内部へと侵入して行く。
 トランザムをすぐに停止したハルートはコーン型ブースターを一気に噴かせ再び暴れまわるようにELS密集域から撤退を開始した。
 クリスティナが報告する。
「ダブルオークアンタ、ELSの中枢へと突入しました!」
「了解よ。頼むわね、刹那、皆」
 スメラギが頷いた。
 超弩級ELSの内部は有機的な艶やかな薄い青色をした大量の柱が表面を支えて立ち並び、最奥からは暖かな橙色の光が見えた。
 奥へと進行し始めるとクアンタのコクピット内に、
[へー、これがELSの中か]
 小人ヒリングが右手で遠くを見渡すようにしながら現れ、
[外観と違って中は有機的だね]
 小人リヴァイヴが現れ、
[ヒリング・ケア、君は緊張感が足りない]
 小人ティエリアが現れた。
[何? ティエリア・アーデ、緊張してるの?]
[そういう事ではない。時と場合を弁えた発言を]
 そこへ更に小人リジェネが少し呆れた様子で現れ、
[そんなやり取りをわざわざここに来てまでやるのはどうかな]
[……尤もな話だね]
 リボンズも現れ、無言でアニューも現れた。
 総勢六人のイノベイドのホログラムが刹那の右手近くを賑やかに彩る。
「中枢へ急ぐ!」
 刹那は簡潔に言って、所々節のある茎が無数に並ぶ青い空間を進んでいく。
 奥に近づくにつれて、周囲が暖かみを帯びた色をした空間になって行く。
 そして、最奥に複数の半球の出っ張りのある大きな紫色の球体が見えた。
 ティエリアが声を上げる。
[あれだ!]
[ELSの中枢]
 クアンタがその球体のすぐ近くにまで到着すると虹色の半球の出っ張りが動きを見せ、先端が吸盤のような形をした複数の雄しべと中心に雌しべのようなものが現れた。
[僕達を迎え入れるようだね]
 すぐに刹那はコンソールを操作し始める。
「クアンタムシステムを作動させる」
 コンソールにクアンタの機体とクアンタムシステムの文字が浮かび上がる。
[ELSの力は未知数だ。フルパワーで行く!]
 ティエリアが言うと、六人のイノベイドが刹那の目の前に扇状に並んだ。
「了解」
 刹那の虹彩が金色に輝き、紅い光がその両目を走り抜ける。
「クアンタムバースト!」
 クアンタの左肩のGNシールドが背面に移動し、二基のGNドライヴが直結。
 一瞬機体が紅く輝くと共にシールドから六基のソードビットが射出される。
 機体が次いで透明感溢れる翠色の輝きに変化すると各装甲がパージされ、ソードビットが脚部に並ぶ。
 GNコンデンサーが回転して機体表面に次々露出し、最後に胸部のものが展開され、全GN粒子が開放される。
[人類の存亡をかけた!]
「対話の始まり!」
 一際強烈な光を放つと膨大な超高濃度GN粒子が機体から湧き出すように噴出し始め、ELSの中央の吸盤がクアンタを飲み込むように動いた。
「うぅぅぉぉぉぇぇぁぁぁああアアァァ――ッ!」
 刹那が声を上げると意識が跳躍する。
 目の前が淡い紫色の奔流から始まり、青色、緑色と意識が吸い込まれていく。
《っだァッ! うぅッ、ぁぁぐァッ!》
 直後、刹那は発作のような痛みを感じ表情を歪める。
《え、ELSの意識がァッ!》
 青い激流の奥の黒い渦へと吸い込まれる中、ティエリアが囁く。
《僕達とリンクするんだ刹那!》
《ぁぁッ!》
《この情報の奔流は、あたしらとヴェーダで受け止めるから!》
 ヒリングがそぉい! と両手で情報を捌きながら自信たっぷりに言った。
 刹那の両手が一気に後ろに持って行かれ、
《くぁァッ! ぅくぁぁぁッ! あああぁァァァーッ!!。》
 パイロットスーツが千切れ飛ぶように消滅する。
 アニューが声を掛け、
《余計な物は受け流して》
 リジェネが囁き、
《本質を》
《彼らの想いを》
 リボンズが言った。
 刹那は金色に虹彩の輝く両目を大きく見開き、
《くっ! くッ、うァァっ!》
 次の瞬間、大量のビジョンが次々と意識に流れ込んでくる。
 その奔流の先に一筋の白い光が見え、出口へと出た。
 どこか遠くの星系。
 その緑色の木星型惑星の内部で誕生したELSの歴史。
 永い永い時をかけてELSは独自の進化を遂げた。
 しかし、星系が誕生から膨大な時間が過ぎ去った時、星系の恒星が水素をほぼ使い果たし外層が膨張し赤色巨星化。
 その過程でELSの母星は巨大化した赤色巨星に飲み込まれ、母星は爆風の嵐に見舞われ、木の根のような表面は薙ぎ払われ、熱を浴び続けた。
 それから徐々にガスが赤色巨星から流出して行き、最終的に中心核だけが残り恒星は白色矮星となった。
 過酷な環境の激変すら耐え切ったELSの母星は、周囲を濃いガスに覆われ白色矮星は白く弱い光を放つのみになってしまい、滅びを迎えようとしていた。
 ELSは中心から超弩級ELSを分離して外宇宙へと飛ばし、そこから更に四つが飛び出し、五つに別れてそれぞれの方向へと散った。
 それを宇宙空間から六人が並んで見送り、ティエリアが言う。
《……そうか、彼らの母星は死を迎えようとしていて、生き延びる道を探していたのか》
 刹那が続く。
《繋がる事で、一つになる事で。相互理解をしようとしていた》
 ヒリングが頭の後ろで腕を組む。
《そーいうことかぁー》
 リヴァイヴが納得したように言う。
《なるほど、道理で他の星を滅ぼしてしまった事もあった訳だ》
《生命体としての在り方の違いをELSは理解できなかった……》
 アニューが呟き、リボンズが目を細め、息を吐く。
《全く……QBが人類の脳量子波の水準に明確な段階が幾つか存在する事を教えていなければ、地球も他の星の例のように今頃全部同化されていたかもしれないね》
 ELSは人類で最も強い脳量子波を放つイノベイターに届くよう脳量子波でメッセージを送り続け、同化しては途中で失敗。
 それでもイノベイター以外に同化しても相互理解が成功する事はない以上、何度でもイノベイター相手に成功するまで同化を試みた。
 唐突に刹那の左手首が白い輝きを放ち、次の瞬間。
 刹那の左手を両手で包むように触れる、純白の法衣と煌く長い桃色の髪、美しい金の両目をした神々しい女性が顕現した。
《ガンダァァァムッ!!》
 否、
《神!》
 そう刹那が驚きに呼ぶと『希望』は穏やかな微笑みを浮かべ、刹那から離れELSの母星の前へとふわりと移動し、両手を広げた。
 六人には何も見えていなかったが刹那は言葉をゆっくりと紡ぐ。
《行こう、彼らの母星へ……。俺達は分かり合う必要がある》
《刹那・F・セイエイ……》
《……良いのか?》
 リボンズとティエリアが言った。
《良いも悪いもない。ただ俺には……生きている意味があった。みんな同じだ。生きている》
 言葉と共に、空間全体が光り輝き、急速に意識は現実に戻った。
 ダブルオークアンタは通常の形態に戻り、ELSの内部から一度出るために再び来た道を戻り始める。
[刹那、僕が同行する]
 刹那は簡潔に頷く。
「分かった。頼む、ティエリア」
[……なら、君達に任せるよ。ティエリア・アーデ、刹那・F・セイエイ]
 リボンズが一瞬間を置いて言った。
[ああ。ヴェーダを頼む]
[安心すると良いよ。行ってらっしゃい、ティエリア。刹那・F・セイエイも]
 リジェネがそう挨拶をして消え、
[またね、ティエリア・アーデ。じゃ、刹那・F・セイエイも頑張ってね]
 ヒリングが右手を頭の辺りで構え、片目を閉じて消え、
[また会う日まで、刹那・F・セイエイ、ティエリア・アーデ]
 リヴァイヴが落ち着いて言って消え、
[よろしくお願いします。刹那・F・セイエイ、ティエリア・アーデ]
 アニューが一礼して消えた。
[……それでは、またいつの日にか]
 最後にリボンズが言って、消えた。
 表層まで戻り、通路を開こうとGNソードⅤを構えるとELSは自ら外への通路を開いた。
 リンクした刹那とティエリアは言葉を交わす。
《……人は……なぜこうもすれ違う》
 ELSの外へ飛び出し、クアンタはソードビットを飛ばし、円環を形成する。
《なまじ知性があるから、些細な事を誤解する》
 刹那はコンソールを操作し、量子テレポートの準備に入って言う。
《それが嘘となり、相手を区別し》
《分かり合えなくなる。……ただ……気づいてないだけなんだ》
《だから、示さなければならない。世界はこんなにも、簡単だという事を》
 そして次元ゲートを通り、二重の円環の軌跡を残し、
 旅立った。


「アーデさん! アーデさん!」
 ヒリング達の乗るオメガはずっと変わらず戦闘を続けていたが、クアンタの旅立ちと同時にラファエルだけはその動きを完全に停止し、コクピット内のティエリアの体は安らかに目を閉じていた。
 ミレイナのモニターの前にリジェネが映る。
[ティエリアはELSの母星に刹那・F・セイエイと共に旅立ったよ]
「アーデさん……」
「刹那とティエリアが……」
 それを横で聞いていたフェルトが呟いた。
 直後、クリスティナが信じられない物を見たかのような表情で驚く。
「え、ELSが……!」
 メインモニターにはELSが次々と集まっていく様子が流れていた。
「これって……」
「これは……」
「こんな事が……」
「刹那の奴……」
 リボンズがモニターに現れる。
[彼らは人類を理解したよ]
 スメラギがしみじみと言う。
「……ええ。刹那が、やってくれたのね……」
 でも、あれ、誰……?


間もなく、ELSはその姿を変えた。
一つは『平和』を象徴する大きな黄色い花に。
そしてもう一つは、
両手を広げて花を優しく包み込み、純白の裾の長い法衣と桃色の長い髪をし、穏やかに目を閉じた『希望』を象徴する女神の姿に。
長い河のように連なっていたELSは続々とこの二つの元へと集まりながら、二つは地球圏へと移動し最終的に月軌道の外周に留まる。
半身をELSに同化されていたイノベイター達はELSとの共生体たるハイブリッドイノベイターとして復活を果たし、ELSが人類を理解したと周囲に伝え、脳量子波の干渉を数ヶ月に渡り受けていた人々はようやくその苦痛から解放され、地球圏に迫るELSの問題が終結したのだと悟った。
同時にQBの感情エネルギー回収ボーナスタイムも終了したとは世界の殆どの人は知る由もない。
ELS事変以後、緊急時特別政府議会は統一政府への足がかりとなり、2315年に地球連邦へと改名。
翌2316年、各国の軍は解体、一元化される形で地球連邦平和維持軍として発足した。
そして、世界のイノベイター人口はその後も加速度的に増え続け、その過程で様々な問題が起きたが、その度、人類は乗り越えて行った。
QBとELSという二種類の異星生命体と共存しながら。




―西暦2364年―

 地球、月、大きな黄色い花へと緑色のラインが途切れること無く続き、花を守るような女性の像も健在。
 そして花弁の一つの近くには、数時間で外宇宙へ旅立つ航行艦が係留していた。
[御覧ください、地球連邦が誇る最新鋭外宇宙航行艦スメラギの勇姿を]
 艦の周囲には作業用MSサキブレが飛び、驚きの白さの作業用Q頭身も飛ぶ。
[数時間後、この船は外宇宙へ向け、長い長い航海に旅立つのです。乗組員は長い航海に耐えられるよう、全てイノベイターで構成されています]
 外宇宙航行艦スメラギの内部には宇宙服を着たイノベイター達が働く姿があり、凡そ二十代の姿をしたアーミア・リーが艦長として指示を出す姿があった。
[全人類の六割がイノベイターとなった今、様々な問題をクリアし、我々は遂にこの時を迎えたのです]
 イケダ三世がカメラの前で右手を胸に当てて言う。
[私も、専従特派員として、この船と共に航海に出発致します。そして、できる限り情報を皆様にお届け致します。それではここで、1200人の乗組員を統括する最高責任者、クラウス・グラード氏のコメントをお聞き下さい]
 一面色鮮やかな花畑が広がる中、ポツンと真っ白なテラスが建っていた。
 空中にはマジカル☆モニターが浮き、そこからニュースの音声が小さく流れていた。
 テラスの席に少女は優雅に座り、目を閉じて紅茶を飲んでいた。
「暁美ほむら、彼が来たよ」
 突然QBがひょこっと現れて言った。
 少女は黙って目を開ける。
 ふと、柔らかな風が吹き、目を向けるとテラスに向けて歩いてくる人の姿があった。
 少女は僅かに目を見張り、すぐに表情を戻し紅茶のカップを置いて立ち上がり、QBは自然に素早く少女の肩に登った。
 そして少女は歩き出し、二人は丁度良い距離で止まる。
 虹彩が金色に輝く銀色の刹那が透明感のある落ち着いた声で言う。
「暁美ほむら。……こんなにも長く、時間が掛かってしまった」
「心配には及ばないわ。そこまで長くもなかったから」
 少女は軽く髪を掻き上げた。
 刹那はゆっくり少女に近づき、左手首に触れ、
「……これを、借りていた物を返しに来た」
 どこからともなく鮮やかな虹色に穏やかに輝く一本のリボンを取り出した。
 少女はそっと手を伸ばし、両手で受け取る。
「確かに、受け取ったわ。……綺麗ね」
 言って、少女はリボンを目の前に掲げて言った。
 刹那が口を開く。
「世界を、見ていてくれてありがとう」
「……どういたしまして」
 少女は伏せ目がちに言い、受け取ったリボンを見ながら続けて口を開く。
「変わらないと思っていた世界は、確かに少し変わったわ。……人の世の呪いは減り、この世界には希望が増えた」
「そうか……」
 安堵したような声を聞き、少女は受け取ったリボンを徐に髪につけた。
 つけ終えると、少女は徐に上を見上げ、青い空に白い月の隣に浮かんでいるものの姿を見据えながら言う。
「それでも、私のやることは変わらない。そして、これからも私は世界を見続けるわ」
 一陣の風が吹き、花びらが舞い上がる。













本話後書き

本話、冒頭と終わりは決めていたのですが、その中間が相当しょぼい感じになったことには自覚があります。
大反省です。
足りないシーンについてのご意見がもしあれば追加したいと考えています(ただ、盛り上げようと思うと、死者が出たシーンを入れないと駄目っぽいので個人的には戦闘シーンに関しては繰り返し気味になりそうでもあり、余り気乗りはしないです。すいません)。
ガンダム00はキャラクター数が多いので(本作で死んでいない人が多すぎる)それぞれのその後も気になるといえば気になりますが、確実にダレるので後日談のようなものは無しにしたいと思います(その代わり名簿形式で一人、一、二行程度でどうなった的な記述ぐらいはやっても良いか……どうか……という気はします)。
しかしながら流石にサーシェスの明確な末路を描いていないと言いますか、ロックオンとの決着がついていないのは大問題で、これを投げてしまっているのは良くない気がしますが、完全に始末するタイミングを逸しました……これも反省です。
全編に渡りCB「俺TUEEEE!」系のぬるい展開だったので最後の最後で余りブレるのもどうかと思い、ブレイヴに擬態されて押されたらしい空気をちょろっと出すぐらいになり……逆に微妙だったかもしれません。
ともあれ、最終的にはクアンタムバーストで解決する事は分かりきっているので、ある意味壮大な茶番でもあります(QB的にも)。
ELSが巨大なQBになるという展開が潰えた結果として、
「何だか良く分からないけどまど神でたー!」
本話のようになりました。
CB号が襲われなかったのは多分QBがELSの嫌がる脳量子波を出していたとかそういうアレです、適当ですいません。
小人ティエリアの件は全員で良いやと決めていましたが、ヴェーダにデータ上存在しているイノベイドのマイスター874は二つ以上の事を同時に遂行できる……そうなのでELS突入中も彼らは問題なくガンダムを操作している設定です。
そして、
「だったら最初から刹那だけテレポートしろよ!」
というのが本話の最大の間違いです(大型ELSも劇場版通り最初から地球圏に移動させた方が良かったか、あるいはプトレマイオス3にテレポート機能をこの際つけてしまう暴挙を犯しても良かったかもしれ……ません)。
あと、刹那は描写外ではきちんとマリナの元をほむらよりも先に訪れている脳内設定です(ほむらの元を訪れたのはリボン返しに来たという理由が大きいです)。


本作後書き

本作をここまでお読み下さり、感想を下さり、本当にありがとうございます。
続きまして、全体の後書きということで、本作は武力介入するCBが本格的武力介入する前に逆にQBに介入されたら、という一話目の意味不明なシーンが脳裏に閃いた(多分何かの病気です)所から始まりました。
二話目以降を考えるに当たり、やたら死者の出る00(1stでは各軍のパイロットやら絹江さん、エイフマン教授、ルイスの家族、そして特に2ndでは100万人規模の難民キャンプが吹き飛んだり、軌道エレベーターで数万人死んだり)をQBが感情エネルギーの回収という自身の利益の為に介入すれば「もったいないよね!」という理由で無理なくCQBが不殺をできるだけ貫き、死者を減らせそうで「理想的な共栄関係だよね!」となりそうだ……というのが基本的な骨子でした。
下手な人型オリ主を投下するより、自然に死者減ができたのではないかという気がします(そこに妙な満足感を感じてもだからどうしたという話ではありますが……)。
ともあれ、こうしてみるとQBは
「世界平和に貢献する極めて人類にとって有益な生物である」
……そんな単純な訳もないですが、部分的にそういう事になりました。
「これではQBの問題が解決していないからぶっ飛ばして欲しい、消して欲しい」
という意見の方もいらっしゃるかとは思いますが、一応結果として上記のような貢献をQBを果たしていますし、できれば生暖かい目であるとか、最悪ゴミを見るような目で許して下さい。
ELSが花とまど神像になった後も地球人類は何年か、あるいは十数年はいつまたELSがどういう行動に出るか分からないと恐怖したと思いますので、QB的には異星生命体を地球人類に宛てがう形になったのは大成功だったのではないかと思うと「流石QB先輩!」なのですが。


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