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No.27528の一覧
[0] 【ネタ完結】私設武装組織ソレスタルキュービーイング(ガンダム00+キュゥべえ)[気のせい](2011/10/02 14:33)
[1] QB「皆僕のつぶらな瞳を見てよ!」[気のせい](2011/05/04 18:36)
[2] 変わりすぎるかもしれない世界[気のせい](2011/05/04 19:19)
[3] QB折衝[気のせい](2011/05/04 19:15)
[4] 僕に仕事を下さい[気のせい](2011/05/04 23:14)
[5] 管制官「こんなの絶対おかしいよ」[気のせい](2011/05/05 18:25)
[6] QBキャンセル[気のせい](2011/05/06 17:49)
[7] 次出たらぶん殴る[気のせい](2011/05/06 17:49)
[8] QB「本話の存在は了承されたよ」[気のせい](2011/05/08 17:24)
[9] 人革連「罠が仕掛けられない……だと」[気のせい](2011/05/08 17:51)
[10] QB「アレルヤ・ハプティズム、君の出番は余り必要性が無いよ」[気のせい](2011/05/08 18:45)
[11]  計 画 通 り[気のせい](2011/05/08 21:56)
[12] 金ピカ大使「私の頭の上にエンジェルの輪が見えるようだよ」[気のせい](2011/05/11 12:45)
[13] QB「もう少し我慢しててよ」[気のせい](2011/05/22 14:55)
[14] 三位一体「出番は?」 紫HARO「ネェヨ! ネェヨ!」[気のせい](2011/05/18 23:01)
[15] 三陣営首脳「我々って、ほんとバカ」[気のせい](2011/05/18 23:32)
[16] スメラギ「死相が見えるようだわ……」[気のせい](2011/05/21 16:01)
[17] 紅龍「浴室は無かった事にしよう」[気のせい](2012/05/30 18:52)
[18] 刹那「戦っているのか」 MS「戦っているわ」[気のせい](2011/05/23 21:11)
[19] MS「タダ飯! タダ飯!」[気のせい](2011/09/30 09:00)
[20] イアン「美人ならおk」 リンダ「あなた?」[気のせい](2011/09/30 09:03)
[21] サジ「ちゃんとご飯食べてる? 朝御飯食べないと力でないよ。育ち盛りはしっかり食べないと成長に支障が出たりするし、いくらナノマシンあるっていっても」[気のせい](2011/06/17 16:00)
[22] アレルヤ「刹那、それがGNタクシーの力だ!」[気のせい](2011/06/24 15:20)
[23] ロックオン「ハロ、Sレベルの秘匿義務って何かあったか?」[気のせい](2011/09/30 09:04)
[24] QB「CBの戦いはこれからだよ!」[気のせい](2011/06/30 23:47)
[25] QB「正しく2nd始まるよ!」[気のせい](2011/07/16 17:46)
[26] そんな機体名で大丈夫か。[気のせい](2011/07/22 23:25)
[27] 頭に……響くんだよォッ!![気のせい](2011/08/04 13:12)
[28] ヒリング「あたしの出番よ!」[気のせい](2011/08/30 13:32)
[29] 私マリナ・イスマイール。[気のせい](2011/08/21 04:05)
[30] トレミー「俺TUEEEEEEEE!」[気のせい](2011/08/30 15:58)
[31] ルイス「サジィ!」 サジ「ルイスゥ!」[気のせい](2011/09/22 21:10)
[32] アレルヤ「この期に及んで僕だけ原作イベントなのはどういう事なんだろうね……」[気のせい](2011/09/24 22:00)
[33] ミレイナ「アーデさんアーデさん! お話しして下さいですぅ!」[気のせい](2011/09/25 22:04)
[34] ELS「やあ」[気のせい](2011/09/30 09:07)
[35] ELS「待ってよー!」[気のせい](2011/09/30 08:51)
[36] 刹那「ネ申!」[気のせい](2011/09/30 09:35)
[37] ラッセ「なあ……最初から刹那だけテレポートすりゃ良かったんじゃないのか?」 スメラギ「それは言わない約束なの。でないと私達の出番無いわよ?」[気のせい](2011/10/02 19:25)
[38] 【小話】ミレイナ「魔法少女についてどう思うですか?」 スメラギ「これだから思春期は……」[気のせい](2012/03/16 23:13)
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[27528] ELS「待ってよー!」
Name: 気のせい◆050021bc ID:899ac1f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/09/30 08:51
木星探査船エウロパは国連軍とCBによって破壊。
細分化された破片の一部はサンプルとして回収され、残りは空力加熱で燃え尽きると想定されていた。
しかし、破片は燃え尽きず世界各地に落下したという情報が判明するのにそう時間は要しなかった。
そして、不可解な現象が発生し始める。
人革領アジア地域に落下した破片に国連軍が回収と調査に向かうと、軍の車両が一人でに動き出し、回収班に被害が発生。
AEU領モスクワ市街地では無人の車の暴走による自動車事故。
AEU領カナリア諸島では港に停泊していた全ての船舶が中央部から割れるように損壊。
AEU領ドイツではテロでもなく、大規模な地下鉄での列車衝突事故。
人革領モンゴル地区では変電施設がごっそり無くなり太陽光受信基地からの送電が停止。
そして、酷く気味の悪いモノが猛威を奮う。


―人革領・オムスク都市部郊外・住宅街―

 二年の間にアーミア・リーは自身がイノベイターに革新した確信を得ていた。
 余り得意で無かった体育も身体機能の向上のお陰で得意な授業に代わったり、元々得意であった物理や数学も空間認識力の関わる分野に関しては驚異的な理解力を発揮、状況判断能力の向上で大変空気の読める子になり、果ては周囲の皆が考えている事を何となく察せられるようになったり、場合によっては心の声が完全に読めてしまったりと、最早イノベイターに変革している以外にありえなかった。
 しかし、アーミア自身はそれを悟ってからはイノベイターである事を周囲から気味悪がられるのを恐れ、できるだけ隠すようにして生活していた。
 そんな中、この前の健康診断のデータにエラーが出て再検査になる事を告げられ、直感的にまずいなぁ、と思った日の帰り道。
 友達と一緒に住宅街に入りもうじき家の近くに着こうかという時、アーミアは急に足を止めた。
「どうしたの?」
「ぅ……あっ……」
 アーミアは頭を手で抑え、二三歩ふらついて後退し、瞳孔の開きが目まぐるしく変化し始める。
「大丈夫アーミア!? 頭痛いなら早く家に!」
 アーミアは背中にそっと触れる友達に手で触れ返す。
「ち、違うの……っぁ。……く、来るっ」
「な、何が来るの?」
 ザッ、と音が住宅街に響く。
 友人がふと前方を見て、混乱する。
「な、何……あれ」
 目に映ったのは透明感の溢れる際立つ驚きの白さ。
 そしてしなやかに伸びきった肢体。
 人と思わしき体をしているが、頭部に致命的な異常が。
 人間の胴体にサイズを合わせたかのように、頭部がQB。
 つまりQ頭身。
「に、逃げ、てっ!」
 呼吸も不規則にアーミアは声を絞りだし、Q頭身に背を向けて走り出した。
「あ、アーミア!」
 すると最高に不気味なQ頭身は無表情で両腕を全力でギュンギュン振り重厚な足音を響かせながらアーミアを追跡しだした。
「ひっ!」
 咄嗟に友達は飛びのいてQ頭身を避け、地面に尻餅をつく。
「っ、こ、来なぃでっ……!」
 アーミアは苦悶の声を上げながら、必死に走り、逃げていく。
 呆然とそれを目にし、友人は慌てて震える手で端末を取り出す。
「あ、アーミアが変質者にっ……。ほ、保安局!」
 急いで番号を入力し保安局に通報した。
 頭にQ頭身の「叫び」が響きながらも、イノベイターであるアーミアの判断は早く、すぐに鞄を途中で投げ出し、全力で都市部へと走っていた。
 人気のある街中に入ると、道行く人々は強烈な存在感を放つQ頭身を見て叫び声をあげたり、唖然としたり、偶然イノベイターの因子持ちであった場合は酷い頭痛に頭を抑え、瞬く間に騒ぎに発展する。
「くっ、ぅっ」
 そのような中、アーミアは一路保安局に向かって走っていた。
 そこへ友達が通報した事で保安局の方向から保安局員の乗る車が近づいてくるのが見えた。
「はっ、はぁっ」 
 全力疾走し続け呼吸が辛くなりながらも尚アーミアは必死で走り、Q頭身はペースを崩さず足音を立てて猛然と追い立てる。
 前方で車が急停止し、素早くニ名の保安局員が飛び出し銃を構える。
「後ろの奴、止まれッ!」
 しかしQ頭身は止まらない。
「君! 車へ!」
 局員の一人がアーミアに呼びかけた。
 アーミアは車へと走るが、
「ッぁ!」
 頭痛の波が押し寄せ、足がもつれて体勢が崩れ、強く打ち付けるような音共にアーミアは転倒してしまう。
 すぐ後ろに迫っていたQ頭身は勢いを落とし清々しいまでの無表情でアーミアに手を伸ばす。
「離れろッ!」
 局員は銃を発砲し、地面に威嚇射撃をした。
 が、Q頭身は怯まず動き続ける。
 銃声と共に、威嚇射撃二射目。
 しかし意味無し。
 アーミアは苦痛に顔を歪めながらも何とか立ち上がろうとしたが、Q頭身に接触されてしまった。
「ぇうぅァいゃぁあァ――ッ!!」
 一際大きな絶叫がこだます。
 そしてQ頭身は形状を瞬く間に刺のある輝く鉱石のように変化し、侵食を途中で止めた。
 その光景を付近で見ていた人々は戦慄し、若い女性は恐怖に叫ぶ。
 結局直接発砲できなかった局員が愕然とする。
「何なんだこれは……!」
「ぐ、軍の附属病院に連絡をっ!」
 この後……軍の回収班によりアーミアは宇宙局技術研究所に収容された。
 また、このようなイノベイターへのQ頭身による半身同化事件が世界各地で発生、被害者が出る度に専用施設に収容、イノベイターを執拗に襲うQ頭身の情報は世界に震撼を与えた。
 Q頭身の変異性金属体が全速力で腕を振って市街地を走る様は、イノベイターに取り付く事を抜きにしても最高に気味が悪く、気持ちの悪い映像で、世界的ニュースになるしかない。


―人革領・国連軍宇宙局技術研究所―

 青白い照明の灯る薄暗い研究室には、何人もの研究者達がモニターと端末を前に作業を行い、三名の研究者がテーブルの上のケース内の金属片を囲んで話をしていた。
「破片の分析の結果、微量の宇宙放射線が検出されただけで組成構造共にこれといった特徴は出ませんでしたね」
 メガネを掛けた研究者が言った。
「この回収された金属片を分析する限りでは特筆すべき点は無い。しかし、現実に起こった事象を考えるに何も無いという事はありえない」
「軍の報告によれば探査船から湧き出した金属群は二機のガンダムを追い、破壊された破片は大気圏に突入しても燃え尽きず、地上へ落下。そして地上ではQBの頭部を象った人形がイノベイターを襲っている……。この金属は活動状態では自力で移動し、強い脳量子波を発するイノベイターに向かって惹かれる特性があると見るのが妥当ね」
 長い赤髪の宇宙物理学者、ミーナ・カーマインが言った。
 研究室のメインモニターに変異性金属体に体の半分を侵食されたアーミアの姿が映る。
 生命維持装置を付けられ、アーミアはかろうじて生存していた。
 三人はアーミアについても議論を交わし、その途中、研究室の扉が開く。
「レイフ・エイフマン教授、ドクター・テリシラ!」
 気づいた研究者が言う通り、レイフ・エイフマンとテリシラ・ヘルフィそして、
「ビリィー!」
「っわ」
 ミーナは声を上げると同時にビリー・カタギリに一人突撃して押し倒し、馬乗りになってくねくねしながら喜びを顕にする。
「私に会いに来てくれたのね! あぁ、うっれしぃー! あはっ」
「み、ミーナ、君は相変わらずだね……」
 ビリーが困ったような表情で言った。
 しかしエイフマンとテリシラはそれを華麗にスルーし、研究所内で挨拶を交わし、話に入る。
「御覧ください、イノベイターであったこの少女の肉体組織のほぼ半分が金属へと変化しています」
 エイフマンが目を見張りながら唸る。
「うぅむ……。さしずめ地球外変異性金属体……ELSとでも言った所か」
 復帰していたカタギリが言う。
「それは良い呼称ですね、エイフマン教授。……それにしても、この状態で生存しているとは。現在のこの金属の状態は?」
「現在、活動を停止していると見られ、構造は把握できていません」
 研究員が首を振ると、カタギリは目を細める。
「それは厄介ですね……」
 カタギリの左腕に絡みついたミーナが上目遣いに言う。
「それにね、ビリー。回収された破片は落下した全体の二割にも達していないの」
「それがイノベイターを狙う……」
 テリシラが呟くと、エイフマンは杖を突き直して重重しく言う。
「事は重大じゃな。他に起こった不可解な事件から推測するに、移動の過程で他の物質と同化しその質量を増やしている可能性は高い」
 研究者が言う。
「国連軍は既にイノベイターを脳量子波遮断施設に避難させるように動き始めてはいますが……混乱は免れないでしょうね」
 地球統一連邦政府が樹立しているならまだしも、未だ三陣営政府の現状、そして悪い意味でインパクトのありすぎるQ頭身ELSはとでもではないが情報統制しきれるものではなく、脳量子波遮断施設への避難も足並みが揃うのに時間を要する。
 だが、ただテリシラはこの状況下、ヴェーダから送られてくる情報で地上に落下したELSは秘密裏に処理し続けられている事を知っていた。
「ELS……」
 7年かけて生み出され続けたイノベイド魔法少女達が今や魔獣だけではなくELS相手にも処理作業を実行している……。
 取り込まれてしまうと判明した実体弾が効果をなさなくとも、魔力攻撃ならELSには有効。
 ELSがイノベイターしか狙わない……。
 QBの絶妙な匙加減のような物を感じるが果たして。
 そして何故、ELSはあのような気味の悪い姿を……。
 テリシラは不意にQ頭身の姿を思い出し、顔を顰めた。


―ラグランジュ2・コロニー型外宇宙航行母艦CB・司令室―

 コロニー型外宇宙航行母艦CBの司令室は運用に向けて動き出し、CBのメンバーの殆どが各所ラグランジュ群の基地から集結し、作業に入っていた。
 リボンズ・アルマークはそれでも足りない人員を補う為にヴェーダを使って地上で社会に紛れて生活しているイノベイドを必要な分だけ覚醒。
 そしてヴェーダを通じてイノベイド魔法少女達によるELSの処理状況が順調に進み、地上での事態がようやく沈静化した事を確認していた。
 プトレマイオスクルー達は地上で事件が起こり始めた際、すぐに地上に降りて対処に当たるべきだと言ったが、そちらにはフェレシュテを対応に回させるとリボンズは言い、更にはここにきてイノベイド魔法少女の存在を暴露、対処に当たらせている事を示唆した。
 それにより、CBはプトレマイオス3と第五世代ガンダムの最終調整に専念し、加えてガンダムオメガの量産が月面基地のファクトリー及び航行母艦CBの両方で開始された。
 天井までの高低差のかなりある巨大な司令室の最上段でスメラギ・李・ノリエガが思い出すようにリボンズに言う。
「本当に、地上の事態が沈静化して良かったわ」

 地上の異変発生時、モニターでQ頭身を見た時の事。
「な、何なのこれは……」
「何故、QBの顔が……」
 スメラギとアレルヤ・ハプティズムがありえないものを見たように呟き、ロックオン・ストラトスも頬をひくつかせる。
「軽くトラウマになるぞ……」
「私気持ち悪い……」
「ミレイナも気持ち悪いですう!」
「怖い……」
 順にクリスティナ・シエラ、ミレイナ・ヴァスティ、フェルト・グレイス。
「……ホントっすね」
「何がなんだか……」
 リヒテンダール・ツエーリとラッセ・アイオンは訳が分からない様子だった。

「恐らく、これからだよ」
「そのために、打てる手は打つ……」
 スメラギは慌ただしく皆が動く様を見て思う。
 国連軍でELSと呼称され始めた異星金属生命体の行動パターンは融合。
 基本的に近接戦闘は厳禁……ELSの行動目的が何であるにしても、連射性能と威力を兼ね備えた粒子ビームによる迎撃が有効手段になる……。
 そこへ司令室内にアラート音が鳴り響き、メインモニターに木星が映しだされる。
 今まさに木星の大赤斑に次々とデブリが吸い込まれて行く所であった。
「一体何!?」
 スメラギの反応と同時に司令室内で端末を操作していたCBの人間オペレーターの何人かが頭痛に声を上げる。
「うっ、ぁあァッ!!」
 痛みに両手で頭を抑えだした。
「どうした!」「どうしたの!」
 それぞれ付近の仲間が近寄り、気にかける。
 イノベイターの因子持ちであった彼らが早急に司令室から医療室へと運ばれて行く中、木星の変化が更に加速する。
 ガリレオ衛星のうち二つ、イオとガニメデが内部から塵と化すように崩壊し吸い込まれる。
 塩基配列0666型の赤髪のイノベイドが報告する。
「イオ、ガニメデが消滅!」
 慌ただしくコンソールを操作しながらオペレーター達の声が次々と上がる。
「木星大赤斑に局所的重力場が発生しています!」
「リングが崩壊、次々と吸い込まれています!」
「大赤斑を中心に半径6万km規模が中心へ!」
「軌道エレベーターの天文台でも同様の観測結果が出ている模様!」
「信じられない……木星に穴が……!」
 オペレーターがモニターを目に呟いた。
「こんな事が……」
 スメラギも唖然とする中、付近の扉が開き、アレルヤが頭を片手で抑え駆けつけてくる。
「っは、はぁっ、くっ、一体何が……!」
「アレルヤ!」
 すぐ後ろに付いてきていたマリー・パーファシーが心配して言った。
 次の瞬間、木星に空いた穴から大量にELSの群が湧いて出現し始める。
 数m大の漏斗状、ナイフ状、角棒状の小型は勿論、400m規模の複雑な紋様のある白熱電球状、三本の触手のある蛸状、同じく三本の鉤爪状の大型も多数出現。
 瞬く間に木星の大赤斑を中心として広がって行く。
「え、ELSの大群が……」
「何てことなの……」
 司令室が愕然とする中、スメラギが指示する。
「ELSの地球圏到達までの時間を出して!」
「り、了解! ……地球圏到達まで95日です!」
 素早く計測すると、95日という厳然たる数値が判明する。
「たった三ヶ月……これが来たるべき対話に与えられた時間なの……?」
 止むこと無く木星の穴から湧いて出るELSの大群はその後一本の大河をなすように移動し始め、全てのELSが常時強烈な脳量子波を放ち、イノベイター及びイノベイターの因子を持つ人々に甚大な影響を与え始める。
 その数、数億人。
 局所的な戦争よりも、億単位の理解不可能なELSに対する恐怖という負の感情は極上の質。
 更に標準で計六十億を超える人類全体の言い知れぬ不安が。
 遂にQBの狙い通り、魔獣が加速度的に増え始める。


―UNION領・経済特区・東京・JNN本社―

[木星、大赤斑の異常と共に出現した謎の異星体、通称ELSの大群が太陽系の中心部へと移動しています。しかし現段階では地球圏へのルートに乗るかどうかは不明です。現在各国政府は来年の地球統一連邦政府の設立を前倒しする形で、国連下での緊急時特別政府議会の設置に向けて……]
 絹江・クロスロードは社内のモニターで今まさに流れている報道を見上げていた。
[イノベイターである市民の皆さんは念の為、軍の有する脳量子波遮断処理施設への避難を……]
「ELS……」
 一体地球は、どうなってしまうというの……。
[また、予てより異星生命体を自称するQBとELSとの関係は定かではありませんが、JNNでは……]


―UNION領・国際連合・緊急時特別政府議会―

 可及的速やかに設置された議会は紛糾していた。
「木星から異星人が攻めてくるなどただの夢想にしかすぎん!」
「異星人ではなく変異性金属体です」
「どっちでもいい!」「細かいこと言うなぁ!」
 あちこちから怒声の交じる発言が飛び交う。
「有人探査船はELSの斥候という可能性もある!」
「そうだ!」
「我々が狙われないという保証はどこにもない!」
 反論が飛ぶ。
「しかし、木星からの物体が絶対に地球に来るとは限らない!」
「何を楽観的な事を! イノベイターが集中的に狙われている以上来ると考えるのが道理! 現に被害が出ているではないか!」
「そもそもCBがGN粒子など撒き散らすからこういう事になったのではないか!」
 最早今更な発言をした議員に対し、ブリジアが発言する。
「過ぎてしまった事はどうしようもありません! 市民に対して私達は何らかの対策を打ち出す必要があります」
 勢いづいたようにブリジア派の議員が声を上げる。
「一般市民のイノベイターの隔離! 脳量子波遮断施設の建造を!」
「それだけでは甘い! 軍備増強! 先手を打つ! それしか市民を守る方法はない!」
「闇雲な軍備増強は費用負担の問題から世論の反発を招きますぞ!」
 緊急時特別政府議会は紛糾するが、それより現実の前に毎夜苛烈な戦いを続ける者達がいた。


―AEU領イタリア―

 ビル群の屋上にそれぞれ出現した十三体の魔獣に対峙し、同じくビルの屋上で槌を構える緑色の髪の女性がいた。
「はぁッ!」
 リリアーナ・ラヴィーニャは空を飛び、柄を伸ばしながら巨大へと変化させ一体の魔獣を消し飛ばす。
「っく!」
 しかし、普段よりも明らかに数の多い魔獣は、大気を震わせるようなうめき声を上げ、両手の指から光線を放つ。
 リリアーナは熟達した魔力操作により、その光線の雨を一気に上方の空へと飛び上がる事で避け、追尾してくる光線を掻い潜り可能な物は槌で防ぎ切る。
「数が、多い! でもッ!」
 高速で空を飛びながらリリアーナは着実に一体一体の魔獣に狙いを定めて槌を振るい消しとばす。
 その場での激しい戦闘終了後。
「はっ、はぁっ。……皆の所に加勢に行きたいけど、私が離れればこの街が……」
 消耗もするが、それに比例して集まったコアを使用してソウルジェムを浄化して行く。
 そこにQBが話しかける。
「リリアーナ、北地区にも8体の魔獣が出たよ。次々湧いてキリが無いね」
 冷ややかな目でリリアーナは呟く。
「北地区……ね」
 リリアーナはQ頭身のニュースを見た際、当然にQBに問いただした。

「QB、今日のニュースのアレは何」
「僕らに続くこの星へ来訪した異星生命体さ。僕らの頭部に擬態しているのは想定外だけど、君達人類が壊滅的な被害を受けないよう僕らから情報を伝えた時に体の一つが吸収された影響だろうね」
「異星生命体……?」
 いつも通りの明るい子供のような声でQBは言う。
「そうだよ。僕らが何もしなければ、彼らはイノベイターだけでなく普通の人間にも構わず同化してしまう所だったんだ。最悪、人類が滅びるような事にはならないから安心してよ」
 その代わりただでさえ強力な脳量子波をELSは常時最高水準で放つようになったけどね、とはQBは言わなかった。
 嘘ではないにしても、はっきり言って、全く隠す様子も無く人類の危機すら感情エネルギーの回収に利用しているとしか思えないQBに、リリアーナは普通にイラついたが個人的な感情はどうあれ、魔獣を倒さなければ被害が出るのは変わらない。

 私は希望を抱いて、まだ魔法少女として生き続ける。
「行くわ」
 リリアーナはまだまだ希望を宿した目で北の方角を見た。
「頼むよ」
 しかし、史上稀に見る魔獣の超大量発生は一定以上の戦闘力の水準に達していない魔法少女にとっては地獄であり、死地である。
 AEU領内の教会の建物に住むリリアーナの知る魔法少女達は魔獣との戦いの中で精神的に磨り減り、コリーン・リーベルトは成人を迎える前に円環の理に導かれてしまう。
 しかし、それも有史以前から延々と続く魔法少女となった者の宿命である。
 QBにしてみれば、戦いに耐え切れなくなった魔法少女は円環の理に導かれるのみであり、その穴は死を恐れぬイノベイド魔法少女で埋めれば良く、一部の高い能力を持った人間の魔法少女しか残らないのならばそれはそれで構わない。
(遅かれ早かれ、結末は一緒だよ)
 厳然たる事実を、QBはただただ述べるのみ。


地球はELSの来訪により混迷し、経済や治安が不安定になり始める。
ELSがイノベイターを狙うという情報が明らかなせいで、イノベイターと周囲に知られている人々はただでさえELSの脳量子波に苦しめられているにも関わらず、周囲からは近くにいられると危険だとして排斥され、人革タワー低軌道ステーションの脳量子波遮断施設への移動を余儀なくされる。
しかし、1000万人を越えたイノベイターを全て収容するのは物理的に不可能であり、イノベイターと同じく、数億のイノベイターの因子を持つ人々もELSの脳量子波から逃れたくとも行き場が無く、時にはその症状から既にイノベイターであると疑われる。
果てはイノベイターを根絶しさえすればELSは来なくなると標榜する過激な団体が現れ、イノベイターに否定的な勢力によるイノベイターを狙ったテロが起きる。
それに対し、CBは擬似GNドライヴと太陽光発電システムからの受電を可能とした改造をプトレマイオス2に施した。
超人機関出身の新人ガンダムマイスター、レオ・ジークを加えたフェレシュテは、プトレマイオス2Fを新たな母艦として地上に降下、秘密裏に武力介入を実施した。
最悪の事態を想定しELS対策を進めていたCBであったが、ELSが近づいてくる所へとこちらから向かうには二の足を踏んだ。
刹那は依然意識不明の重体、アレルヤもELSの脳量子波の影響でとてもではないが出撃不可能。
航行母艦CB内の脳量子波遮断処置の施された部屋で主に生活し、そうでない時は脳量子波遮断スーツを常時着ていたが、それでは対話ができないのだ。
そうこうしている内に、木星に更なる異変が起きる。
直径3000kmの超弩級ELSの出現。
月とほぼ同じ大きさを有するそのELSは膨大な量の木の根が複雑に絡み合うように形成されているかのような球体。
球の上下には細く針のような物が伸び、球の周りには惑星の環のように小型ELSが群を成す。


―ほむホーム―

「これはまるでグリーフシード……!」
 少女はマジカル☆モニターを見て驚愕に立ち上がった。
[本日新たに木星より出現した物体は大型のELSと認定されました。直径は月とほぼ同じ。その規模から見て太陽系各所、特に火星、地球圏への影響が懸念されますが現在この大型ELSは木星宙域に留まっています。市民の皆様は各機関の指示に従い……]
「その驚き方だと、君の言う前の世界ではグリーフシードはあんな形だったのかい? 僕らは見たことが無いから分からないけど」
 影からタイミングよくQBが現れた。
 少女は振り返り、QBを見下ろすように言う。
「……QB、あれは本当にただの異星生命体なの」
「そうだよ。この宇宙では一般的なタイプの生命体だね」
「あれが、一般的……?」
 少女が不思議そうにしていることが理解出来ないとばかりにQBは言う。
「僕らにしてみれば全ての個体が独立して別個に感情を持っている君達人類の方が稀有な生命体なんだよ」
「そう。そうだったわね……」
 前にも聞いた事があると、少女は思い出したように言った。
「それで、ELSが地球に来る目的は何なのかしら」
「それは挨拶だよ」
 当然だよね、と言うQBに対し、少女は理解出来ない様子で呟く。
「挨拶……?」
「そうだよ。今もELSは脳量子波でメッセージを送り続けている。君達が理解できるかどうかは別だけどね」
 脳量子波が強すぎて彼らにとっては逆効果だけど、お陰で魔獣が増えている、とは言わずにQBは首を傾げた。
「あなた達、仲介するつもりはないの」
「僕らですら最初は人類を理解するのに時間が掛かったんだよ。僕らは観察という方法で時間を掛けて理解したけど、彼らは同化するのがその手段なんだ。それを直接でなく僕らを介して間接的に都合よく簡単に伝えられると思うかい?」
 その説明に少女は沈黙し、QBが続ける。
「君達人類にとって彼らがそうであるように、彼らにとっても人類は言わば想像だにもしなかった未知の存在だよ。彼らに人類の在り方を教えるのは全く存在しなかった概念を一から教えるようなものだ。だから僕らは最悪君達人類が滅んでしまわないように最低限の事はしたんだ」
 充分手助けはしたつもりさ、と言わんばかりのQB。
「それが、ELSがイノベイターしか襲わない理由……という所かしら」
 少女は最早Q頭身について突っ込みはしない。
 否、突っ込みたくなかった。
 QBは少女の問いに、ひょいっと椅子に乗って言う。
「具体的にそう行動するように伝えた訳ではないけど、そうだね。もちろん僕らも情報を伝えただけで、彼らの行動が今後変化しないという絶対的な保証はできないよ」
「……そう。でも、現状、魔獣が増えてあなた達は良いわよね」
 冷ややかに少女が言うと、QBは屈託の無いとても可愛らしい声で言う。
「そうだね!」


ELSの群が一本の途切れることのない川となって地球に続々と迫る。
人類の存亡をかけて国連軍が動き、CBは切り札を欠きながら世界に天上人の力を示す。
来るべき対話の始まり。
それは、人類の目覚めなのか。










本話後書き

Q頭身「正直これがやりたかっただけだよ!」

まだ映像補完していない方、興味のある方、またアレを見てようかなという方はQ頭身とgoogle先生にお願いすれば、一番上に某所の解説記事が出る筈です。


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