<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

その他SS投稿掲示板


[広告]


No.27528の一覧
[0] 【ネタ完結】私設武装組織ソレスタルキュービーイング(ガンダム00+キュゥべえ)[気のせい](2011/10/02 14:33)
[1] QB「皆僕のつぶらな瞳を見てよ!」[気のせい](2011/05/04 18:36)
[2] 変わりすぎるかもしれない世界[気のせい](2011/05/04 19:19)
[3] QB折衝[気のせい](2011/05/04 19:15)
[4] 僕に仕事を下さい[気のせい](2011/05/04 23:14)
[5] 管制官「こんなの絶対おかしいよ」[気のせい](2011/05/05 18:25)
[6] QBキャンセル[気のせい](2011/05/06 17:49)
[7] 次出たらぶん殴る[気のせい](2011/05/06 17:49)
[8] QB「本話の存在は了承されたよ」[気のせい](2011/05/08 17:24)
[9] 人革連「罠が仕掛けられない……だと」[気のせい](2011/05/08 17:51)
[10] QB「アレルヤ・ハプティズム、君の出番は余り必要性が無いよ」[気のせい](2011/05/08 18:45)
[11]  計 画 通 り[気のせい](2011/05/08 21:56)
[12] 金ピカ大使「私の頭の上にエンジェルの輪が見えるようだよ」[気のせい](2011/05/11 12:45)
[13] QB「もう少し我慢しててよ」[気のせい](2011/05/22 14:55)
[14] 三位一体「出番は?」 紫HARO「ネェヨ! ネェヨ!」[気のせい](2011/05/18 23:01)
[15] 三陣営首脳「我々って、ほんとバカ」[気のせい](2011/05/18 23:32)
[16] スメラギ「死相が見えるようだわ……」[気のせい](2011/05/21 16:01)
[17] 紅龍「浴室は無かった事にしよう」[気のせい](2012/05/30 18:52)
[18] 刹那「戦っているのか」 MS「戦っているわ」[気のせい](2011/05/23 21:11)
[19] MS「タダ飯! タダ飯!」[気のせい](2011/09/30 09:00)
[20] イアン「美人ならおk」 リンダ「あなた?」[気のせい](2011/09/30 09:03)
[21] サジ「ちゃんとご飯食べてる? 朝御飯食べないと力でないよ。育ち盛りはしっかり食べないと成長に支障が出たりするし、いくらナノマシンあるっていっても」[気のせい](2011/06/17 16:00)
[22] アレルヤ「刹那、それがGNタクシーの力だ!」[気のせい](2011/06/24 15:20)
[23] ロックオン「ハロ、Sレベルの秘匿義務って何かあったか?」[気のせい](2011/09/30 09:04)
[24] QB「CBの戦いはこれからだよ!」[気のせい](2011/06/30 23:47)
[25] QB「正しく2nd始まるよ!」[気のせい](2011/07/16 17:46)
[26] そんな機体名で大丈夫か。[気のせい](2011/07/22 23:25)
[27] 頭に……響くんだよォッ!![気のせい](2011/08/04 13:12)
[28] ヒリング「あたしの出番よ!」[気のせい](2011/08/30 13:32)
[29] 私マリナ・イスマイール。[気のせい](2011/08/21 04:05)
[30] トレミー「俺TUEEEEEEEE!」[気のせい](2011/08/30 15:58)
[31] ルイス「サジィ!」 サジ「ルイスゥ!」[気のせい](2011/09/22 21:10)
[32] アレルヤ「この期に及んで僕だけ原作イベントなのはどういう事なんだろうね……」[気のせい](2011/09/24 22:00)
[33] ミレイナ「アーデさんアーデさん! お話しして下さいですぅ!」[気のせい](2011/09/25 22:04)
[34] ELS「やあ」[気のせい](2011/09/30 09:07)
[35] ELS「待ってよー!」[気のせい](2011/09/30 08:51)
[36] 刹那「ネ申!」[気のせい](2011/09/30 09:35)
[37] ラッセ「なあ……最初から刹那だけテレポートすりゃ良かったんじゃないのか?」 スメラギ「それは言わない約束なの。でないと私達の出番無いわよ?」[気のせい](2011/10/02 19:25)
[38] 【小話】ミレイナ「魔法少女についてどう思うですか?」 スメラギ「これだから思春期は……」[気のせい](2012/03/16 23:13)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27528] QB「CBの戦いはこれからだよ!」
Name: 気のせい◆050021bc ID:899ac1f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/06/30 23:47
―UNION領・オーバーフラッグス基地―

 グラハム・エーカー、ハワード・メイスン、ダリル・ダッジの三名はデュナメスを北アメリカ西海岸で発見したが、突然機体の操縦が全く効かなくなり、デュナメスをロスト。
 仕方なく基地に戻り、謎の現象についてグラハムはビリー・カタギリに調査を頼んでいた。
「カタギリ、フラッグに何かおかしい所は無いか」
 端末を見ながらカタギリが言う。
「うーん、いや、フラッグにおかしい所は全く無いよ。確かにミッションレコーダーには映像が残ってるけど、急速にUターンしてそれきりだし、いやはや、不思議な事もあるものだねぇ」
「ガンダムの仕業という線は無いのか?」
 真顔でグラハムは問う。
「遠隔からハッキングして操縦を奪うって事かい?」
 カタギリが怪訝そうに尋ねた。
「そうだ」
 カタギリは唸る。
「流石にハッキングの痕跡も一切残さずに機体の操縦を奪うだなんてまずあり得ないと思うよ。大体もしそんな事ができるとしたら、最早それはガンダム、モビルスーツである必要性が無いしね」
 ガンダムについている武装はいらない、という事になる。
「それもそうだが、しかし悔やしさが残る」
 グラハムは拳を強く握りしめた。
 カタギリは苦笑して手で制そうとする。
「まあまあ、世の中そういう事もあるとして、今日のことは置いておきなよ」


―CB所有・南国島―

 刹那・F・セイエイはロックオン・ストラトスに先んじて帰投し、海中のコンテナにエクシア格納し、パイロットスーツを着たまま泳いで島に上がり砂浜の流木に座っていた。
 エクシアの機体状況は、コーンスラスターは完全に交換の必要有り、カメラアイの破損、槌による打撃でできた装甲の凹み、各所内部センサー機器類の損傷。
 コンテナの中でカレルという修繕用ロボットを既に稼働させてはいたが、イアン・ヴァスティが見たら嘆くレベルだった。
「KPSAの自爆テロ……」
 刹那は昔、同じ少年兵がテロを起こしに行こうとした時に止めようとした事を思い出す。
「アリー・アル・サーシェス」
 呟いて、刹那は拳を握りしめた。
 しばらくして、遅れてデュナメスが帰投してくる。
 デュナメスの破損は今回はGNフルシールドの凹み程度で済んだ。
 デュナメスは岩場の前に着陸し、外壁部迷彩皮膜を展開した上で、ロックオンはHAROを抱えて降りてくる。
 予め生体反応で刹那の居場所が分かっていたロックオンは砂浜へと向かった。
「刹那ぁ、戻ったぞ」
 ロックオンは座っている刹那の背後から声を掛けた。
「ロックオン」
 刹那は振り向いて立ち上がる。
「で、さっき話があるって言ってたのは何だ」
 二人の距離は数m。
 刹那は数秒の沈黙の後、
「ロックオン。俺は反政府ゲリラ組織KPSAに所属していた」
 そう口を開いた。
「なに?」
 聞き返すようなロックオンに刹那は更に言う。
「ロックオンの家族を奪った自爆テロを起こしたのは俺と同じ少年兵だった者だ」
 途端にロックオンの表情が険しくなる。
「それは本当か」
「ああ」
 一切間を開ける事の無い肯定。
 ロックオンは眉をつり上げる。
「刹那、何故それを言った」
 ガンダムマイスターの個人情報は例え仲間であっても明かす必要性は無い、Sレベルの機密情報。
 刹那は一切目を逸らさず真剣に言う。
「俺はロックオンの家族の仇だ。だから俺はロックオンの憎しみを、想いを知る必要があると思った。リリアーナ・ラヴィーニャのように」
 ロックオンは少し目を見開くと、僅かに下を向く。
「……そうか。なら教えてやる」
 言って、腰から銃を取り出して刹那に銃口を向ける。
「刹那、俺は今、無性にお前を狙い撃ちたい。家族の仇を討たせろ。恨みを晴らさせろ」
 刹那は全く動じず、沈黙を貫く。
 銃を構えたままロックオンはその刹那の様子に自然と脳裏に言葉が蘇る。
(……憎いよ。憎い、けど、人殺しはしたく……ないっ)
(それも一つの選択肢)
(だから、あなた次第よ)
 俺は……。
 引き金にかかる人差し指から力が抜ける。
「……お前がKPSAに利用されていた事、望まない戦いを続けていた事ぐらいは分かる。だがその歪みに巻き込まれ、俺が家族を失った事は変わらない。俺の憎しみが消えないのも変わらない」
 ロックオンは一つ息を吐き、そのまま銃をゆっくり降ろす。
「だが、お前は仲間だ。俺達はこの世界を変える必要がある。そうだろ、刹那」
 刹那が言う。
「……ああ。俺達はCBのガンダムマイスターだ」
「そうだな」
 ロックオンは腰に銃を戻した。
 会話が途切れ、沈黙が訪れ波の音だけが響く。
 が、再び刹那が口を開く。
「アリー・アル・サーシェス」
「ん、誰だ?」
 刹那は拳を握りしめる。
「KPSAのリーダー。アリー・アル・サーシェス。あの男はモラリアでPMCに所属していた。そして奴はアザディスタンの内紛でイナクトに乗っていた」
 みるみるうちにロックオンは怒りのこもった声を上げる。
「何? ゲリラの次は傭兵に、あん時の裏工作の実行犯だと! ただの戦争中毒じゃねぇか!」
 刹那がモラリアでコクピットを開けかけたのはそのせいか。
「……奴の中に神はいない。俺が信じ込まされていた神はいなかった。……いない神を信じて俺は、親を殺した」
 その告白にロックオンはハッとした表情をする。
「刹那、お前……」
「だから俺は変わる。この歪んだ世界を変える」
 この世界には希望の神がいる。
 そう自分に言い聞かせるように言う刹那を、ロックオンは複雑な様子で見ていた。
 家族をテロで失ったロックオンにとっては、テロが仇のようなもの。
 だが、刹那は家族を自身の手で殺してしまった。
 家族の仇は自分自身。
 ただ、どちらも悲しい出来事だというのは共通していた。
 しばらく、潮騒の音だけが響いていた。
 ふと、ハロが音声を上げ始める。
「オムカエ! オムカエ!」
「何だ?」 
 ふと、上空を見上げると赤いGN粒子を放出する二つの物体が降下してきていた。
 二機の強襲用コンテナ。
 ロールアウトしたGNアームズと共に試験運用として宇宙から直接大気圏を突破して来た。
 二機は程なくして島に降下し、元々海中に沈める前にコンテナを設置してあった場所に着陸した。
 刹那とロックオンがそこへ向かうと、丁度、中の操縦者が順に降りて現れ、ヘルメットを外す。
「よぉラッセ」
「アニュー・リターナー」
 ロックオンと刹那がそれぞれ声を掛けた。
 ラッセ・アイオンとアニュー・リターナー。
 アニューは会釈し、ラッセが後ろ手に強襲用コンテナを示して言う。
「おう、無事ミッションは終了したようだな。エクシアとデュナメスをこいつに入れて、宇宙に上がる試験に来たぞ」
 ロックオンが納得する。
「なるほど、例のGNアームズ共々ロールアウトしたのか。だが、大気圏突入は一体どうしたんだ。赤いGN粒子が出てたように見えたが」
 ラッセが腕を組んで頷く。
「その通りだ。今例の疑似GNドライヴを搭載してある。そういう意味では強襲用コンテナだけでも運用可能という事になるな」
「そいつぁ頼もしい」
 そこへアニューが事務的に言う。
「では、早速ドッキング作業に入りたいので、機体をお願いします」
「……了解した」「了解」
 そして、まず先にロックオンがデュナメスを運んで来ると、ラッセが通信を入れる。
[ロックオン、シールドが凹んでるがまさかまた例の魔法少女にやられたのか? 報告は無かったと思うが]
「ああ。だがその事は宇宙に戻ってからにしてくれ」
[……了解だ]
 事情を察したようにラッセが言った。
 デュナメスは問題なく強襲用コンテナとの接続は完了した。
 しかし、遅れて現れたエクシアは、よりにもよってコーンスラスターが歪んでしまった為にGNドライブとの接続がスムーズにできず、アニューがため息をついて、その場でスラスターだけ取り外す事になってしまったのだった。
 それはそうとして、とにかく接続を終えた二機は、大気圏を離脱して進路をプトレイマオスに向けた。


―UNION領・テリシラ邸―

 テリシラ・ヘルフィは、ラーズ・グリースの標的である金髪の子供のイノベイドの型であるブリュン・ソンドハイムとは無事に接触に成功して覚醒させる事ができ、AEUからUNIONに帰国した。
 ブリュンは自身の正体について無自覚のイノベイドの両親と一般家庭を構成して生活していたが、覚醒の結果、ヴェーダの指示によって遠くない未来にその両親とは別離せざるを得なくなる。
 しかし、当面はそのまま生活を続けるブリュンは、覚醒した事によって獲得した能力からすれば、距離的にレイヴ・レチタティーヴォ達といくら離れていても問題は無かった。
 ブリュンの能力は脳量子波によって型の違うイノベイド同士でも意識を繋ぐ事ができるというもの。
「ドクター、ブリュンの能力は凄いですね」
 ベッドで休んでいるレイヴが、帰ってきたテリシラに言った。
 テリシラは椅子に座り、紅茶を一口飲んで言う。
「ああ。離れていても脳量子波でやりとりできるというのは画期的だ。これで残るは後二人と後一人だが……問題は仲間の候補であるラーズをどうするかだ」
「ヴェーダは僕達の判断に任せるという事なんでしょうけど……さすがにもう撃たれるのはごめんですよ」
 レイヴが苦笑した。
「私も肝を冷やすのは勘弁したい。だがラーズを放置しておけばいつまでもレイヴやブリュンが危険、当然他のイノベイドもそうだが、狙い続けられる。ラーズが行く所手当たり次第に殺害対象のイノベイドの型を殺害しているのは偶然見かけたからという単純すぎる物だ。テレビに対象の型のイノベイドが映ればそれを殺しに現れる所を押さえるという方法でならまた接触できる可能性もあるだろうが……まず映らない事にはな」
 言いながらテリシラは顎に手をあてる。
「ドクターみたいに、ですね」
「ああ。私の型がラーズの対象に入っていなくて助かった」
 そこへインターホンが鳴る。
「ん」
 テリシラはすぐに立ち上がり、門の様子を映すモニターを見ると驚く。
「これは」
「ドクター? 一体誰が?」
「見てのお楽しみだ。少し出てくる」
 レイヴにそう返し、テリシラは玄関へと向かった。
 玄関を出て、広い庭を歩いて門まで着くと、そこには少女が一人。
「待たせてすまない。テリシラ・ヘルフィだ」
「暁美ほむらです」
 少女は軽く頭を下げる。
「まさか直接来てくれるとは思ってもみなかった。話は中で」
 テリシラが手で示して招き、少女はうなずいて邸宅へ入った。
 玄関から入ってすぐ、レイヴのベッドが置かれている広いホールに少女が姿を現すと、レイヴも驚いた。
「紹介しよう。彼はレイヴ・レチタティーヴォ。私達六人のイノベイドの仲間の最初の一人だ」
「は、初めまして。こんな体勢でごめんなさい」
 レイヴが上体だけ起こしてあるベッドから声を掛けた。
「お気になさらず。暁美ほむらです」
 六人のイノベイド……。
「席に掛けてくれて構わない。紅茶は飲むかね?」
「頂きます」 
 テリシラの言葉を受けて、少女はレイヴのベッドの近くのソファにゆっくりと腰掛けた。
 テリシラが紅茶を入れて戻ると少女に出し、自分も席に座った。
「改めて、直接訪ねてくれて感謝する。では早速、まずは、先に私達の事から話そう」
 少女はテリシラの方を向きながら次の言葉待つ。
「先ほどイノベイドと言ったが、私達は人間ではない。CBの根幹をなす量子演算型処理システム、ヴェーダの生体端末だ」
 テリシラは机に幾つもの写真を見えるように広げる。
「……見て貰えれば分かるが、これらは皆、ある塩基配列パターンに基づいている」
 少女は、髪型や表情の関係で若干個々で違うものの、同じ容姿をした者達が多くいる事を理解した。
 CBには人工生命体を作り出す技術まで……。
 QBがCBに目を付けたのは、やはりそういう訳ね。
「社会に出ているイノベイドは普段、自分の正体を自覚する事無く生活している。だが、私達はヴェーダによって特別な指示を受け、イノベイドである事を自覚している覚醒した存在だ」
 テリシラは更に、数枚の写真を出す。
「そして、これが十中八九、君の塩基配列パターンを使用しているイノベイドの写真だ」
 暁美ほむらに酷似した者達の写真。
 それを見て、少女は一つ息を吐く。
「全く、良く似ているわね」
 流石QB……と言った所かしら。
 人の気も知らないで、というのは無意味だけれど。
 そこへレイヴが声を掛ける。
「その様子だと知らなかったんだね」
「ええ。はっきり知ったのは今です」
「自分の遺伝子データが勝手に使用されているというのは決して良くない気分だろうが、更に、このイノベイド達は全員魔法少女だ」
「でしょうね」
 少女は自然に言った。
 テリシラは少女に怒る様子が一切見えない事には内心少し感心する。
「私達はヴェーダから魔法少女に関する情報も得ている。……ここまでで何か質問はあるかな」
「ヴェーダというそのコンピューターのようなものには、人間のような意志があるのですか」
 テリシラは否定する。
「いや、ヴェーダはイオリア・シュヘンベルグの計画を遂行する事を目的としたシステムだが、私達イノベイドのような個人としての感情は存在しない。膨大な情報を統合、計画に照らしあわせて、選択・実行をしている存在だ」
「分かりました。他に質問はありません」
 ある意味QBのようなものね。
「では。私達が君に会う必要があるという件だが、ヴェーダは君に私達六人のイノベイドと共にCBの監視者になって貰いたいらしい」
「監視者……」
 テリシラは両手を広げて説明を続ける。
「今までCBの監視者はCBに出資をしていた世界の財力ある家の人間などによって構成されていたが、それが解散となった。その為の新たな監視者組織。監視者はCBの行動をその名の通り監視する存在、そしてもしもの時にCBに対する否決権を監視者全員の総意によって行使するのが役目だ」
 それを聞いて少女は確認するように言う。
「私にその監視者に参加して欲しい、と」
「そういう事だ。勿論強制する権利は私達には無いが」
 テリシラの言葉が途中で遮られる。
「分かりました。引き受けます」
 テリシラとレイヴは意外だとばかりに目を見開く。
 レイヴが思わず尋ねる。
「ほ、本当に?」
「ええ。つい最近、似たような約束をしたので」
 少女の言葉にレイヴが疑問の声を上げる。
「約束?」
「そう、約束です」
 少女は内容を答えそうに無い様子で言った。
 QBがあの方法でここに来るのを言ってきたのは、私が引き受けるのも期待して……いえ、それは無いわね。
 もし彼に頼まれていなければ、引き受ける気は大して起きなかったかもしれないけれど、本当に、偶然ね。
 テリシラは敢えて約束については聞かずに言う。
「……いずれにせよ、引き受けてくれると言ってくれたのはありがたいよ」
 正直もう少し面倒な事になるかと思っていたが、拍子抜けだな。
「そういう事なら、ブリュン・ソンドハイムの能力でほむらに脳量子波を繋いでみると良いよ」
 忽然とひょっこり現れ、QBが首を傾げて勝手にそう言った。
「なんだ!?」「うぉ!?」
 突然のQBの出現にレイヴとテリシラが驚いた。
「じゃあ僕は帰るね」
 言って、すぐに消えた。
 場は沈黙。
 数秒してレイヴが提案する。
「えっと、じゃあ、ドクター、ブリュンに話しかけてみます?」
「ああ、頼む」
 するとレイヴの光彩が輝く。
《ブリュン、突然ごめんね。ドクターとハナミにも繋げて貰えるかな》
《はい、分かりました》
 海を跨いだAEUのブリュンと脳量子波通信が繋がり、テリシラの光彩も輝き、レイフ・エイフマンの家にいるハナミの光彩も輝く。
《良いぞ》
《何かあったんですか?》
 ハナミが尋ねた。
《魔法少女、暁美ほむらがドクターの家に来ているんだ》
《え! ホントですかぁ!》
《そうなんですか》
《私会ってみたいです。どんな人なんですか!?》
 ハナミのテンションが上がる。
 話を戻そうとテリシラが声を上げる。
《あー、いいかな。ブリュン、QBも突然現れて言って来たんだが、暁美ほむらにも脳量子波通信はできるか?》
《えっと、どうでしょう。どんな波長か分からない事には……》
 困った様子のブリュンにレイヴが試しに言う。
《ドクター、彼女に触れて貰う……とかどうでしょう?》
《触れたら繋がるような物とも思えんが、まあ、やってみるか》
 その間、少女は二人の光彩が輝き続けているのを見て少し驚いていたが、
「済まないが、私の手に触れて貰えるか」
 と突然その状態で声を掛けられた。
「分かりました」
《ブリュン、触れてみたが、どうだ?》
 テリシラが尋ねた。
 ブリュンは少し探るように言う。
《あ……えっと……はい、分かりました。繋いでみます》
《何ぃ!? ホントに分かったのか》
《どうも。暁美ほむらです》
 テリシラの驚きの声にすぐ少女の声が入った。
《わぁっ! 初めまして、私はハナミです!》
《僕はブリュン・ソンドハイムと言います》
 ハナミが明るい声で自己紹介し、ブリュンは落ち着いて言った。
《適当な思いつきだったんですけど、上手くいくものですね、ドクター》
 あはは、とレイヴが笑った様子で言う。
 現実の顔は一切笑っていない。
《……本当にな》
 テリシラは若干呆れた様子で言った。
《でも接触していないと駄目なの、ブリュン?》
《波長は覚えたので、大丈夫だと思います》
 それを聞いてテリシラが言う。
《暁美さん、手を離して貰って構わない》
《はい》
 少女はテリシラの手から手を離して言った。
《大丈夫そうだな》
《そうみたいですね》
 テリシラとレイヴが口々に言った。
《離れてても話せるなんて通信機器いらずですね!》
《うん、便利だよね》
《携帯代わりに脳量子波を使うというのは色々思うところはあるがね……》
 少女はそんな微妙に他愛も無い会話を頭に受信しながら思う。
 QBのテレパシーと同じ原理のようね。
 監視者という割には子供が多い気がするけれど……。
 そうワイワイ話している者達に少女はそう感じたが、実際子供が多いのは紛れもない事実。
 その後も少し話しを続け、テリシラがこの脳量子波通信は本来監視者として話し合いをする時の為のものだと言って聞かせたが、ハナミの様子からして確実に殆どそうはならないであろう未来がテリシラには読めた。
「少し、騒がしくて済まない」
「ごめんね」
 少女は首を振る。
「いえ。それで、今の方法で会話ができるという事はもう結構ですか?」
 帰りそうな雰囲気を出す少女にテリシラが言う。
「その件だが、できればまだしばらく滞在して貰えないだろうか? ゲストルームは豊富にあるから好きに泊まってくれて構わない。実は先程の会話で分かったと思うが、まだ私達は六人揃っていない。候補の一人は見つかっているんだが、少々厄介でね……」
 テリシラとレイヴは少女に、ラーズについて話した。
 レイヴが実際撃たれたという事、恐らく早々無いであろうが、ラーズが塩基配列パターン8686をイノベイドだと知ってしまうかもしれない事などから、少女は、残り二人の仲間が揃うまでなら一応滞在しても良いと答えた。
 それと、食事に関しても好きなものを注文して良いと言われたのもその要因だったのか、そうでもないのか。
 そんな中少女は思う。
 ヴェーダというシステムが私を監視者にしたがった理由は、真実は分からないけれど、QBがイノベイドを魔法少女にしている事について魔法少女の判断が欲しいという所なのかしらね……。


―CBS-70プトレマイオス―

 アレルヤ・ハプティズムは微妙に滅入って部屋で座っていた。
 部屋にイアンからの通信が入る。
[アレルヤ、キュリオスの整備をするぞ]
「……了解です」
 イアンが眉をひそめる。
[何だまだフェレシュテでの事気にしとるのか。シェリリンが少し怖がっとったぐらいだろうに]
 アレルヤはすぐに突っ込む。
「少しじゃなかったですよね……。どう見ても完全に怯えてたじゃないですか」
[まあ何だ、早く来てくれ]
「はい……」
 言って、通信が切れた。
 アレルヤは立ち上がりながらフェレシュテの地上基地にガストユニットを取りに行った時の事を思い出す。

 キュリオスで基地に着陸し、機体からイアンと共に降り、イアンは弟子のシェリリンとガストユニットの準備を始めた所、ある人物がキュリオスの側にいたアレルヤに絡んできた。
「よぉ! アレルヤ・ハプティズム、湿気た面してるが元気かぁ!?」
 両手は手錠で拘束されていながら、無駄にアレルヤに近づき、顔芸の如きガン飛ばす表情で言った。
「あ、あぁ、元気さ。というか君は……」
 思いっきりアレルヤは引いた。
 顔を。
「俺様? あーそういや知らなかったんだったな。あげゃげゃげゃげゃげゃッ!」
 盛大にフォン・スパークは笑い声を上げ、そしていきなり笑うのをやめ、キリッとする。
「俺様はフォン・スパーク。フェレシュテのガンダムマイスターだ。タクラマカン砂漠の時アストレアに乗ってたのは俺様だ」
「フェレシュテのガンダムマイスター」
 ああ、とアレルヤは納得する。
 続けて何を思ったかフォンは首をコキリと鳴らすと片側の口元をつり上げる。
「そうだァ、人革連のコロニーのアレは盛大だったな! ありゃ大したもんだったぜ!」
 あげゃげゃげゃ! と笑い出すフォンに言われたアレルヤは壮絶に顔をしかめる。
「フォン、アレルヤ・ハプティズムに絡むのは止めなさい」
 そこへシャル・アクスティカがたしなめに現れた。
 しかし、フォンは絡むのを止めない。
「どうせ今暇だろ。アレルヤ、あん時はどんな気分だったよ、なぁ?」
 するとアレルヤの頭に声が響く。
《アレルヤぁ、身体借りるぞ》
《ハレル》
 瞬間、アレルヤの人格は奥へ引っ込み、ハレルヤが現れ、
「んだテメェうぜぇぞ! 喧嘩売ってんのかァア!?」
 フォンに負けないレベルのガンを飛ばす。
 しかし、フォンは狂喜し、ハレルヤの額に自分の額をぶつける。
「ッハァ! お前が人革が攻めて来た時に現れたとかいう奴か! あげゃげゃげゃっ! 良いな、気に入ったァ、断然そっちの方が面白ぇ!」
 ハレルヤもその状態で最悪な目つきで言う。
「ハァ? テメェ不愉快な奴だなオィ! 何ゲラゲラ笑ってんだ、ぶっ殺すぞ!」
「いいぜいいぜ! 殺してみろよァア!? 手錠付けてる奴殺して満足ならなぁ!?」
「んだとアァ!?」
 どうしようもない不良二人がメンチを切りまくりだした。
 止めようとしていたシャルは制しようとした手をゆっくり降ろし、何も見なかったという様子で距離を取り始める。
 そこへイアンとシェリリンが現れ、シェリリンが声を出す。
「フォン、今から作業するからそこ」
「んだガキ! 邪魔すんじゃねェッ! すっこんでろッ!」
 ハレルヤが首をグルリと回し、ヤバイ顔で見下ろして言った。
「ひっ!」
 シェリリンは怯え、言われたとおりイアンの後ろに引っ込む。
 再びフォンとハレルヤは自分達の世界に入り、叫び声を上げ始める。
「あ……アレルヤぁ……」
 イアンはそれに呆れ、シェリリンの頭を撫でて見回すと端にいたシャルの方へ向かう。
「……シャル嬢、あれはどういう事だ」
 シャルがため息をつく。
「うちのフォンが絡み出したら何故か突然アレルヤが豹変して、こういう事に……」
「師匠、私怖い……」
「すまんなぁシェリリン」
 ……そして散々フォンとアレルヤは言い合いを続けた。
 途中でハレルヤが飽きるとアレルヤに戻り、その後、終始シェリリンはアレルヤを見ると怯えるのだった。
 余裕で年上のエコ・カローレすらも「す、すいません」とアレルヤにペコペコし、アレルヤは非常に滅入った。
 しかも、換装を終えて宇宙はプトレマイオスに戻り、ブリッジに報告に行くと、フェルト・グレイスがシェリリンとボソボソ会話しているのがチラリと見え、振り向いたフェルトは目を泳がせまるで視線を合わせようとしなかった。

 あのガンダムマイスター、ティエリアじゃないけどガンダムマイスターにふさわしくないと思うな……。
 ……何にしても、
「二度とフェレシュテには行きたくない……」
 ポツリとアレルヤは呟いて、格納庫へと向かった。
 そして数時間後。
 強襲用コンテナ二機がプトレマイオスに帰投した。
 コンテナごとプトレマイオスと接続し、着艦を終える。
 接続して早々、キュリオスとアイガンダムとヴァーチェの整備を終えていたイアンは、疑似GNドライヴでの強襲用コンテナの運用と、大気圏離脱が問題なく行った事については満足そうに通信をかけたが、モニターでエクシアとデュナメスの機体状況、特にエクシアの方を見た途端叫んだ。
「今度はエクシアかぁっ!」
 ともあれ、それはそれとして、ロックオンの提案によりスメラギ・李・ノリエガとガンダムマイスター達はブリーフィングルームに集合する事となる。
 スメラギがロックオンと刹那に言う。
「ミッションお疲れ様、ロックオン、刹那。それで話というのは、暗号通信には来ていなかったけど、恐らく例の魔法少女が出た事ね?」
 ロックオンは片手を掲げて見せて言う。
「ああ、その通りだミス・スメラギ。……まあそれだけじゃないんだが、最初から話す。暁美ほむらを刹那が第六スポットに東京から連れてきて、最終的に北アメリカまで送った」
「……はい?」
 スメラギは刹那が少女を連れてきた時のロックオンとほぼ同じような顔をしてみせた。
 そういう反応するだろうと思ったよ、と返してロックオンはやれやれと面倒そうな様子で丁寧に説明を始めた。
 事の一部始終を話し、HAROから端末を引き出し、映像も再生して見せた。
 何から言ったらいいのだろう、という表情でスメラギとアレルヤは余韻に浸っていたが、終始不機嫌そうな様子だったティエリアが先に口を開く。
「ロックオン・ストラトス、刹那・F・セイエイ、君達は」
 そこへスメラギがティエリアの肩に触れて止める。
「ティエリア、言いたいことは分かるけど。今回は気にしないで」
「しかし」
「しかしも何も、あなたが気にしているような事は起きないから大丈夫よ。その事も含めてQBの方も理解している筈だから」
 食い下がろうとしたティエリアを更にスメラギは諭して聞かせた。
 仕方ないと、ティエリアはそれで黙った。
 改めてスメラギが言う。
「言い出したら切りがないけど、とりあえず一件落着みたいね。事情は分かったわ」
 言外にお咎め無しと言うスメラギに、ロックオンは肩をすくめ更に説明を始める。
「そういう事にして貰えると助かる。でだ、俺が暁美ほむらをデュナメスで北アメリカまで送った時に聞いた事だが、話しによると魔獣ってのが生まれるのは別にQBが仕組んだ訳では無いそうだ。QBがコアを集めてやろうとしている事も、俺達が心配しているような事は無いとさ」
 それを聞いたスメラギ達は一瞬意外そうな顔をし、すぐにどこかホッとした様子になる。
 スメラギは伏せ目がちに言う。
「……そう。それなら良い……とは言い難いけど、300年生きているらしい彼女がそう言うなら、私達が心配しても仕方ない、のかもしれないわね。ロックオン、聞いておいてくれてありがとう」
「そりゃどうも」
 こうしてブリーフィングは、細かく聞きたいことはあるとしても、今はそこまで、となった。


―UNION領・テリシラ邸―

 数日後。
 既にレイヴの怪我は完治し、普通に起き上がって生活していた。
 いつも通り、テレビ映像をレイヴは見ながらほんの二、三日前の深夜の事を思いだす。

 レイヴが完治した時、テリシラは少女に、魔獣退治に一度同行させて欲しいと頼んだ。
 ヴェーダからイノベイド魔法少女の目から収集された映像は見たことはあっても一度だけで良いから直接見ておきたいとテリシラは考えたが為。
 少女はまるで乗り気では無かったが、別に構わないが、危険だと簡潔に忠告した上で、ある深夜、テリシラに加え成り行きでレイヴも加え、外へ繰り出した。
 目的地に行くまでの間、少女は後部座席で思う。
 まさか、車で行く事になるなんて。
 しかも……。
「次の交差点を右だよ」
 フロントガラスの前でQBが鎮座し、ナビゲート。
 ナビQB。
「分かった」
 微妙な様子ながらテリシラはきちんと了解し、言われた通り交差点でハンドルを回す。
「この辺りは郊外だから障気が薄いね。次はそのまま三ブロック直進してよ」
 QBが次々言葉を発するのをレイヴも非常に微妙な様子で聞きながら、目的地に到着するのを待った。
 QBの指示で停車し、三人は車から降り、今度は素早く一瞬で変身した少女が先導して歩く。
「結界に入るわ」
 少女が言うと、周囲の色彩が変化していく。
「あっ」
 レイヴとテリシラはそれぞれ周囲を見渡す。
 そして間もなく、少女の前方30m程度の距離に魔獣が三体出現した。
「あれが、魔獣!」
「映像で見たとはいえ、まさか本当に……」
 目を見開いてレイヴとテリシラは魔獣をその肉眼で目撃した。
「そこから動かないでいてもらえると助かります」
 言って、少女はそのままだと魔獣の斜線軸上にテリシラとレイヴが入ったままになるため即座に先頭の魔獣の頭上へ高く跳躍。
 同時に弓を形成、紫色の雷のように帯電した弦を引き絞り、矢を、放つ。
 放たれた矢の一撃は魔獣の頭部の真上から落ち、そのまま胴体までも貫通して、まず一体。
 すぐに残るニ体の魔獣が少女に向けて光線を放つ。
 しかし、少女は背中に白い翼を顕現させ、その高い機動性を以て最小限の動きだけで全て回避しながら、更に引き絞った次の矢を放ち、ニ体。
 当然、残された一体も為す術無く、頭部から穴を下まで穿たれ、消滅。
 実に僅かの間の出来事だった。
「つ、強い」
「これ程とは……」
 早業を見ていた二人が驚きの声を上げるとほぼ同時に、少女は翼を消して地面にふわりと着地し、すぐに残ったコアを拾い始めた。
 少女がカッカッと足音立てて戻ってくると、
「これで終わりです」
 と言い切り、軽く髪を掻き上げた。
 そのまま少女は二人が放心しているのも気にせず、勝手に車の置いてある方へと歩き出し、少しして我に返った二人は慌ててその後を追いかけた。

 わざわざ見に行った割には本当にあっと言う間だったなぁ……。
 イノベイド魔法少女からの映像も、魔獣を倒すのはあっという間という点では同じであったが、それは複数人での同時行動。
 対する、少女は完全単騎。
 何だかあの翼、まるで天使みたいだったけど、ハナミが見たら喜びそうだな……。
 と、脳量子波でブリュンを介して人懐っこく話しかけてくる少女の事を思いながらレイヴは淡々とテレビを見ていると、ハッと気がつく。
「あ、この人、仲間だ!」
 その人物はAEUの野党では代表格である女性議員の秘書官。
 偶然画面端に映っていた、アニュー・リターナーと同型のイノベイド。
 女性議員は難民対策に力を入れており、UNIONの議員との会談の為に今回UNIONに足を運ぶという情報が分かった。
 少女は優雅に紅茶を飲みながら、テリシラの家の大量にある本を好きに読んで良いと言うことで本を読んでいたがスッと顔を上げた。
 レイヴはブリュンに脳量子波を送り、皆に繋いで貰った。
《もう一人、仲間を今テレビ映像で見つけました。AEU野党議員の秘書官、エリッサ・リンドルースという人物です。しかもラーズの殺害対象に入っている型です》
《それはもしラーズも見ていれば、動く可能性があるな》
 テリシラが返答した。
《はい、僕もそう思います》
《そういう事なら、私に考えがある。勿論やるかどうかは判断してくれてからで構わない。まず……》


―UNION領・アメリカ・都心―

 某日。
 ラーズはUNION市内のとある高層ビルの屋上に到着した。
 左目の義眼とスナイパーライフルのスコープを接続し、見据えるのは数百m離れた所に位置するガラス張りの高層ホテル。
 その地上、ビルのエントランス前の道路。
 風が吹きラーズの長い銀髪が靡く。
「ピティ……」
 ラーズがここに待機しに来たのは新たに見つけた似非人とラーズが勝手に呼称しているイノベイドの殺害を行う為。
 飽きることも無く待つ事一時間としばし。
 そこへスーツを着たカールした黒髪の男性が目標のビル付近の歩道を歩いて現れ、その中へと入っていった。
「今の男、この前……」
 ラーズはその人物、テリシラに見覚えがあった。
 それから更に一時間。
「……あなたがラーズ・グリースね」
 穏やかな風と共にラーズの背後から声が掛けられた。
 微塵も気配に気づけなかったラーズは驚いて声の主の方に振り向く。
 即座にスコープと義眼の接続を外し、直視すると、黒髪の少女が髪を左手でかき上げていた。
 距離およそ十m。
 自然体でありながら、一切隙のない雰囲気の少女。
「貴様は何者だ」
 そして、ラーズ自身の名前を知っている人物などいる筈が無いにも関わらず、事実、呼んだ事にラーズは警戒して言った。
 素早く懐に手を入れ、拳銃にも触れる。
「暁美ほむら」
「……まさか似非人か」
 名前を名乗られた所で一切ラーズが知る訳もなく、個人的に接触してくるとしたら似非人以外にはまずありえないとラーズは判断した。
「確かに、私は人、では無いわね」
 やはり似非人か!
「神よ、似非人に死を、そして彼の魂に安らぎをッ!!」
 ラーズは懐から拳銃を取り出し少女に向けて即座に連続して三発発砲。
 しかし、残像を残すかの如く少女はソレらを回避し、一瞬にしてラーズの左側面に迫り、右の手刀をラーズの首めがけて降り降ろす。
「くッ」
 ラーズも驚異的な反射で喰らう寸前に左腕でガードをしながら、右手に構えられた銃口が少女の胴体に向く。
 発砲と同時に少女の身体は右腕に力を込めて上へ飛び、そのままラーズを飛び越える。
 着地と同時にそれを追いかけたラーズが更に発砲するが、少女は体勢を低くして避け、ラーズに回転しながら足払いを掛けた。
「ぬァっ!」
 左足のバランスを失い身体が倒れ掛けるが、右手に持つ銃は追跡を続け、足下の少女を捉える。
 至近距離で二発。
 それすらも少女は地を蹴り、滑るようにラーズの背後に回り込むようにして避ける。
 直後、鋭い手刀がラーズの首筋に叩き込まれた。
「っァ」
 短い呻き声と共にラーズの意識が飛ぶ。
 そのまま少女が支えるようにしてラーズの身体はゆっくり地面に倒された。
 少女は、一つ息を吐く。
「これで、終わりね」
 少女は徐に手を空に翳すと、ラーズの持ち物含め、忽然とその場から消えた。

 遡る事凡そ三時間。
 少女は高層ホテルの付近を歩き周り、レイヴはその高層ホテルの上層階の広い部屋の一室で双眼鏡を構え、ガラス越しに外を見回していた。
 全ては、エリッサを狙って現れるかもしれないラーズを探し出す為。
 それから二時間程が経過。
 レイヴが双眼鏡で斜めの方角に見えるビルの屋上に怪しい人影を発見したのが決定的だった。
 すぐに脳量子波でブリュンに呼びかける。
《ブリュン! ほむらに繋いで貰える?》
《分かりました》
《もしかして見つかったのかしら》
《うん、その通り。南西の方角に……》
 こうして、少女はレイヴが発見したポイントへ向かったのだった。
 一方で、テリシラは女性議員に難民への医療支援活動について話がしたいという旨の連絡を予めした上で接触をした。
 議員との会談の後、機を見計らってエリッサに見送られる形になった際、テリシラは覚醒も済ませ、ブリュンを介しての脳量子波で説明は行った。
 エリッサに与えられた能力は、六人のイノベイドと一人の魔法少女に関する記憶及び目覚めた能力のリセットというもの。
 監視者三名以上の同意があった場合に行使が可能となる。

 ……そして、レイヴ、テリシラと少女の三人は車に乗ってテリシラ邸に再び戻った。
 広間にて、テリシラが言う。
「では、ラーズを頼む」
「少し待っていて」
 言って、少女の姿は忽然と消え、間もなく再び姿を現す。
 簀巻きにされ、床に横に転がるラーズと共に。
「この前の似非人! 生きていたのかっ」
 現れて早々、ラーズは視界に入ったレイヴを見た途端に叫んだ。
 レイヴは勘弁して欲しいという表情をし、テリシラが声を上げる。
「ラーズ・グリース、君自身もその似非人とやらだ。130年生きていて老いることもないなど人間である筈がない。覚醒しろ!」
 テリシラは光彩を輝かせ、ラーズの能力を覚醒させにかかる。
「うぉォオぉおォッ!!」
 義眼ではない右目の光彩だけが輝き、頭に流れ込んでくる情報にラーズは声を上げた。
 ラーズは自分がイノベイドである事を理解し、似非人と呼んで殺害していた者達も皆同じイノベイドであった事を知る。
 妻は似非人に洗脳されたのではなくヴェーダに覚醒させられただけであり、当時の子供であるブリュンも似非人に殺された訳ではなかった。
 覚醒して理解したのは自身が数百人のイノベイドを殺して来たことの罪。
 真実を理解したショックから覚醒によってラーズに与えられた能力が発動する。
 医療用ロボット、P-5が壁際から突然勢い良くラーズに向けて動き出した。
「なんだ!」
 レイヴが驚くと、接近しながらP-5はアームを稼働させて伸ばし、その先端はラーズに向く。
 少女は素早く魔法を使い、P-5を遠隔コントロールして止める。
「彼に鎮静剤を」
 冷静に少女が言った。
「そうか、自殺する気か!」
 テリシラはP-5がラーズを狙ったのではなくラーズが能力を使い自殺を試みたのだと理解した。
「うぁアァぁァ!!」
 ラーズの右目の光彩が依然として輝き、少女が抑えているP-5が軋む音を立てる。
 少女とラーズの機械の遠隔操作が拮抗する。
「落ち着け、ラーズ!」
 そこへ鎮静剤を手にしたテリシラが戻り、ショック状態のラーズにすぐ投与する。
「あァァぁあアァ!」
 最後に声を上げるとラーズは気を失い、身体の痙攣も徐々に収まって行った。
 場に静寂が訪れる。
「……収まったか」
 テリシラが息を吐くと、レイヴもホッと胸を撫で降ろす。
「驚いた……」
 少女は無言でP-5の遠隔操作を止めた。
 すると今度はテリシラとレイヴの光彩が輝き始める。
「ヴェーダ」
 状況はどうあれ六人のイノベイドは揃った。
 成立した監視者組織に必要な具体的な情報が一斉にヴェーダから六人に送られた。

 ……かくして、新たな監視者組織が成る。
 少女はラーズを確保したのでテリシラの邸宅に滞在するのもこれまでと、テリシラとレイヴに挨拶をし、手を翳して虚空に消え、出口の通ずる日本へと帰っていった。
 一方、ひとたび眠らされてから、ラーズは昏睡状態のままだったが、ブリュンはラーズのその脳量子波に覚えがあり、昔自分の父であった事に気づいた。
 その為、ブリュンはテリシラ達にラーズの説得を自分がすると申し出て、懸命に呼びかけを続けた。
 数日が経ち、ラーズが再び目覚めた時、彼はイノベイドハンターを止めていた。
 自身の起こした罪の深さに苛まれるが、自殺を試みるのも止め、テリシラの家からテリシラとレイヴに見送られ、またどこかへと去っていった。
 そして、時をほぼ同じくしてレイヴもテリシラの元を去り、世界を見る旅に出ることを決めた。
 こうして、それぞれの監視者は世界各地に散った。
 しかし、いつでも七人は会話ができる。
 それからというもの、主にハナミがブリュンを介して、度々脳量子波で話しかけるようになった。
 何々は好きですか……など、かなりどうでも良い事も含め、わざわざ脳量子波で会話がされているのを努めて聞き流しながら、それ以外は普段の生活に戻ったテリシラはふと、赤いGN粒子による細胞異常を患っているパイロットについて思う。
 CBが保有する医療技術……ヴェーダに閲覧許可を申請すべきかどうか……。
 モレノ先生は実際にシャル・アクスティカに対しテロメア修復用のナノマシンの入った薬を処方している。
 コンタクトを取りたい所だが、立場上好ましくない。
 いや、しかし医者としては患者を助ける方法があるにも関わらず何もしない訳にはいかない。
 テリシラはそう思い直すと、光彩を輝かせヴェーダにアクセス、医療データの閲覧許可申請をした。
「ヴェーダ……」
 しかし、ヴェーダの答えは不許可だった。
 理由は社会的影響の大きさから。
 但し、テリシラが自身の血液から、ナノマシンを採取し、「個人的に」研究する事に関してはまた別に許可が降りた。
「いずれにせよ研究の段階を踏まなければ当然公的な使用は無理、という事か……」


―CBS-70プトレマイオス―

 CBの全地上基地はまず発見される事が無いようカモフラージュを終えた。
 不審な動きを見せている船舶に関してはテログループと断定次第武力介入を実行。
 一方で、UNION軍を初めとして、後からAEUと人革連も真似をし、正規軍もテロリストに対する取り締まりを強化した。
 その結果、双方からCBの基地を探そうと動いたテログループは虱潰しに叩かれ、早期にこの動きは終息を迎えたのだった。
 ブリッジで席からクリスティナがスメラギに振り向く。
「やっと落ち着きましたね、スメラギさん」
「ホントっすよ」
「だな」
 リヒテンダールとラッセが続き、フェルトはそっとスメラギを見る。
 スメラギは答えるように頷く。
「ええ、そうね。でも、まだまだこれからよ」
 言って、スメラギは少し憂いを帯びたその目をメインモニターに映る地球に向けた。
 これから起きるのは人革連の政権交代とAEU主要参加国の首脳陣の一部入れ替え。
 そして私達CBに対して有力な結果の出せないUNION……アメリカに対する参加国の信用が低下する。
 資源採掘に関する紛争を行っていた国の経済は傾き国民は不満を持つ。
 麻薬を栽培していた国も同じ。
 一部に集約した民間軍事会社は、止まらない市場規模自体の縮小で人員削減などに走り、傭兵の雇用は減少する筈。
 中東諸国に援助を回す余裕も無くなり、このまま三陣営の威信とバランスが揺らげば、反政府組織は勢いを盛り返し、減少しつつある紛争がまた新たな不満の火種によって起こりかねない。
 それを防ぐには……やっぱり世界を一つにする方向に向けるきっかけが必要……ね。
 三陣営軍事同盟。
 疑似太陽炉の供与は確かに今後の世界情勢の変化には有効だわ……。
 そして近いうちに必要になる。
 イオリア・シュヘンベルグの計画に人類の外宇宙進出が含まれているのは間違いない以上、その点を考慮に入れても、彼らは必ず動く。
 例えそれがAEUの新鋭機開発を始めとしてそれらに対して私達が行った牽制に逆行するとしても。
 ブリッジの空気は一段落した所で、クルーの明るい会話がしばらくの間続いた。
 ……そして、このスメラギの予想が現実の物となるのはそう遠くはないのだった。


―日本・群馬県見滝原市・とあるビルの屋上―

 深夜、少女はビル風に髪をたなびかせながら、ソウルジェムの浄化を行っていた。
 少女はコアを放り投げながら徐に口を開く。
「この前の魔法少女、どうしているかしら」
 上手に尻尾でバウンドさせてQBは背中にキャッチする。
「イタリアに戻ったよ。ソウルジェムの浄化が済んだらほむらが書いて渡した場所に行ってみるつもりらしいよ」
「……そう」
 QBの話に少女は短く言った。
 正直、何度もまた似たような事が起きるのは御免ね。
 リリアーナの事に手出しした後、QBに一応形式的に「助かったよ」と言われた事を思いだすと、今後どうなるかは分からないが、願わくば同じようなことが起きなければ良いと、少女は思った。
 夜風が髪を揺らし、少女は夜空をゆっくりと見上げる。
 果たして彼らが世界を変えられるのかは分からない。
 いかに困難であれ、必ず希望はある。
 約束通り、私は存在する限り見続ける。
 人の世の呪いには諦めを感じている私でも、その程度はできるのだから。


―月・裏面極秘施設―

 ヴェーダの実行した新たな監視者組織創設の一連の出来事は終息を迎え、それをリボンズ・アルマークは動く事も無く、宣言通り見物を終えていた。
 リボンズは優雅に椅子に座ったまま呟く。
「彼らに与えられた能力のうち二つは興味深い。……けど、今の所、特に問題は無いね」
 リジェネは僕より優位に立てると能力を欲しがったかもしれないけど。
 でも、彼は直接計画に参加できるようになって最近機嫌が良いから……もし知ったとしても、どうだったかな。
 リボンズは自然にフッと笑う。
 いずれにせよ、次の段階は近い。
「直接の導き無く人類は自力で一つになれるのか。さあ……その答え、見せて貰おうか」



遥か天空から舞い降りる六機のガンダム。
その手に携える物は世界に何をもたらすのか。
鳴り響くベルは、第三幕の始まりなのか。








本話後書き
原作のファーストシーズンは25話、ならばこちらも25話にせざるを得ない……という無理矢理感の滲み出るQBの介入し尽くしたファーストシーズンでした。
ただの【ネタ】から【ネタ→シリアス】にいつの間にかなってしまった本作、跡形も無いセカンドシーズンへ続く次話から、その他板に今更移動させようかと思っていますが、一応報告させて頂きます。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02751088142395