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No.27528の一覧
[0] 【ネタ完結】私設武装組織ソレスタルキュービーイング(ガンダム00+キュゥべえ)[気のせい](2011/10/02 14:33)
[1] QB「皆僕のつぶらな瞳を見てよ!」[気のせい](2011/05/04 18:36)
[2] 変わりすぎるかもしれない世界[気のせい](2011/05/04 19:19)
[3] QB折衝[気のせい](2011/05/04 19:15)
[4] 僕に仕事を下さい[気のせい](2011/05/04 23:14)
[5] 管制官「こんなの絶対おかしいよ」[気のせい](2011/05/05 18:25)
[6] QBキャンセル[気のせい](2011/05/06 17:49)
[7] 次出たらぶん殴る[気のせい](2011/05/06 17:49)
[8] QB「本話の存在は了承されたよ」[気のせい](2011/05/08 17:24)
[9] 人革連「罠が仕掛けられない……だと」[気のせい](2011/05/08 17:51)
[10] QB「アレルヤ・ハプティズム、君の出番は余り必要性が無いよ」[気のせい](2011/05/08 18:45)
[11]  計 画 通 り[気のせい](2011/05/08 21:56)
[12] 金ピカ大使「私の頭の上にエンジェルの輪が見えるようだよ」[気のせい](2011/05/11 12:45)
[13] QB「もう少し我慢しててよ」[気のせい](2011/05/22 14:55)
[14] 三位一体「出番は?」 紫HARO「ネェヨ! ネェヨ!」[気のせい](2011/05/18 23:01)
[15] 三陣営首脳「我々って、ほんとバカ」[気のせい](2011/05/18 23:32)
[16] スメラギ「死相が見えるようだわ……」[気のせい](2011/05/21 16:01)
[17] 紅龍「浴室は無かった事にしよう」[気のせい](2012/05/30 18:52)
[18] 刹那「戦っているのか」 MS「戦っているわ」[気のせい](2011/05/23 21:11)
[19] MS「タダ飯! タダ飯!」[気のせい](2011/09/30 09:00)
[20] イアン「美人ならおk」 リンダ「あなた?」[気のせい](2011/09/30 09:03)
[21] サジ「ちゃんとご飯食べてる? 朝御飯食べないと力でないよ。育ち盛りはしっかり食べないと成長に支障が出たりするし、いくらナノマシンあるっていっても」[気のせい](2011/06/17 16:00)
[22] アレルヤ「刹那、それがGNタクシーの力だ!」[気のせい](2011/06/24 15:20)
[23] ロックオン「ハロ、Sレベルの秘匿義務って何かあったか?」[気のせい](2011/09/30 09:04)
[24] QB「CBの戦いはこれからだよ!」[気のせい](2011/06/30 23:47)
[25] QB「正しく2nd始まるよ!」[気のせい](2011/07/16 17:46)
[26] そんな機体名で大丈夫か。[気のせい](2011/07/22 23:25)
[27] 頭に……響くんだよォッ!![気のせい](2011/08/04 13:12)
[28] ヒリング「あたしの出番よ!」[気のせい](2011/08/30 13:32)
[29] 私マリナ・イスマイール。[気のせい](2011/08/21 04:05)
[30] トレミー「俺TUEEEEEEEE!」[気のせい](2011/08/30 15:58)
[31] ルイス「サジィ!」 サジ「ルイスゥ!」[気のせい](2011/09/22 21:10)
[32] アレルヤ「この期に及んで僕だけ原作イベントなのはどういう事なんだろうね……」[気のせい](2011/09/24 22:00)
[33] ミレイナ「アーデさんアーデさん! お話しして下さいですぅ!」[気のせい](2011/09/25 22:04)
[34] ELS「やあ」[気のせい](2011/09/30 09:07)
[35] ELS「待ってよー!」[気のせい](2011/09/30 08:51)
[36] 刹那「ネ申!」[気のせい](2011/09/30 09:35)
[37] ラッセ「なあ……最初から刹那だけテレポートすりゃ良かったんじゃないのか?」 スメラギ「それは言わない約束なの。でないと私達の出番無いわよ?」[気のせい](2011/10/02 19:25)
[38] 【小話】ミレイナ「魔法少女についてどう思うですか?」 スメラギ「これだから思春期は……」[気のせい](2012/03/16 23:13)
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[27528] 三陣営首脳「我々って、ほんとバカ」
Name: 気のせい◆050021bc ID:899ac1f2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/18 23:32
―UNION・大統領官邸―

 大統領が机に両手を組んで呟く。
「まさか、新たに七機ものガンダムを投入してくるとは……いくらなんでも多すぎる」
 次の瞬間、大統領は頭を机に打ち付けた。
「大統領!」
 デイビットが焦った。


―人革連・国家主席官邸―

 国家主席が眉間にこれ以上にない程の皺を寄せて言う。
「CBは我々の作戦を読み切っていたというのかっ! 四機だけというのも見せかけだったとはっ……これでは我が党のこの先十年の安定すらも得られないではないかっ!」
 他所様の物を大義名分を掲げ、正直欲しいだけという本音を隠して奪おうと企てる者の紛れもない自業自得の姿がそこにはあった。


―AEU首脳会議室―

 首脳の一人が頭を片手で押さえて言う。
「十一機のガンダム……。三倍近い機体数とはどういう事だ……」
 実はまだガンダムには赤くなる三倍システムまでもが存在する事は彼らは知る由もない。
 しかし既に心はポッキリ折れたも同然。


果たして、三陣営の首脳陣は立ち直ることができるのか。


―王留美邸―

 プトレマイオスクルーのいた邸宅にはヴェーダからの緊急ミッションに関する報告は入ってなどいなかった。
 離脱どころか、降伏させたとも露知らず、現地時刻で朝頃、クリスティナ・シエラが広間で端末を操作している所、嬉しそうな様子で報告する。
「ハロからの暗号通信です! ガンダム四機とも健在! 太平洋第六スポットに帰投中だそうです!」
 リヒテンダール・ツエーリが言う。
「マジかよ!」
 ラッセ・アイオンが腕を組んで言う。
「心配かけやがって」
 スメラギ・李・ノリエガはその報告にQBが出たのかと安堵していた。
 フェルト・グレイスは椅子で寝ていた所、丁度朝方という事もあり、目を擦る。
「ミッションコンプリートですわね、スメ」
「ええっ!? どういう事!?」
 王留美がスメラギに言おうとした所、クリスティナが大声を上げてそれを遮った。
「何、どうしたの? クリス」
 スメラギがクリスが操作する端末へと近づきながら言う。
「そ、それが、これを見てください」
 訳が分からないという様子で、クリスが手で示して見せる。
 スメラギがクリスティナの横からモニターを見ると、
「は? ガンダム全11機でのヴェーダからの緊急ミッションを完遂した? 第二世代のガンダムも三機有り、データに存在しない機体も三機確認って……どういう事なの……」
 スメラギも意味が分からないと呟いた。
「第二世代、ですか?」
 王留美はまさかフェレシュテが動いたのか、と思いながら声を出したが、そこへ、丁度よく端末にヴェーダから直接緊急ミッションの内容が送られて来た。
「何ていうミッションなのヴェーダ。狙いは圧倒的な力を見せつけてガンダムの鹵獲計画を完全に放棄させる事……。それにしても太陽炉は一体どこから……」
 スメラギは顎に手を当てて悩むように呟いた。


―CB支援組織フェレシュテ―

 遡ることCBのタクラマカン砂漠でのミッション当日数日前、当ミッションがほぼ確定する状態に入った頃、ある資源衛星の一つに存在するフェレシュテの基地では、世界情勢を見て、ヴェーダにCBの支援にフェレシュテのガンダムを出撃させるか伺いを立てようかという丁度その時、ヴェーダの方から指示があった。
 それはCBの四機のガンダムに三機のガンダムで加勢し、例の緊急ミッションを完遂するようにという指示であった。
 また、そのミッション自体はCBのプトレマイオスにはミッションを完遂するまではあらゆる連絡を取らないようにとも指示があった。
 しかし、そもそも三機と言われても、太陽炉が一つしかない以上、不可能ではと思った矢先、フェレシュテに着艦許可を求める小型の輸送鑑が訪れた。
[ヴェーダからの指示で、物資の輸送に来ました。着艦許可をお願いします]
 モニターに現れたのは紫色の髪にやや長いショートヘアーの人物、アニュー・リターナー。
 簡単な解析をしてみても、モビルスーツが搭載されてもいなければ、特に武装も無い事が分かる。
 それに対し、長い銀髪のポニーテールに、隠れてはいても見えてしまう左目辺りにある傷が特徴的な暗い雰囲気のフュレシュテの管理官、シャル・アクスティカが少し緊張を見せながら言う。
「分かりました。着艦を許可します」
 伝えると、衛星に隠された扉を開け、その入り口から小型輸送鑑が着艦する。
 シャルとCBの総合整備士のイアン・ヴァスティの弟子である褐色の肌のフェルトと同じ年の少女シェリリン・ハイドがHAROを抱え、それとCBの中では立場のない予備マイスター、エコ・カローネがそれを出迎える。
 降りて現れた人物はノーマルスーツを着た二名。
 アニューと赤髪の寡黙な印象が強いブリング・スタビティ。
「着艦許可、感謝します。私はアニュー・リターナーと言います」
 ハキハキとアニューは言ったが、ブリングは重く口を開き、堅そうに一言。
「ブリング・スタビティだ」
 瞬間、シェリリンの腕の中から、HAROが飛び降り、立体映像が顕現し、二人を驚いた様子で見上げ、凝視する。
 もこっとした髪型にネコ耳が付いているシェリリンよりも小さい少女、ハナヨ。
「ハナヨ?」
 シェリリンが声を掛けるが、名乗られた以上、シャルが先に挨拶を返す。
「ようこそ、フェレシュテの管理官、シャル・アクスティカです。物資の輸送という事ですが、何でしょうか?」
「太陽炉を二基、搬送しに来ました」
 アニューがあっさり答え、
「太陽炉!?」「ええ!?」「何だって?」
 シャル、シェリリン、エコがそれぞれ驚く。
「お見せした方が早いと思いますので、少々お待ちください」
 言って、アニューとブリングは再び輸送鑑に戻り、貨物用のハッチを開けて、無重力であるが故に、一基の太陽炉を引っ張って現れる。
「本当に、太陽炉だ……」
 実物を見て、シェリリンが目を丸くする。
「ど……どうして……」
 ありえない、とシャルは動揺する。
「この太陽炉はオリジナルの太陽炉とは異なる部分もありますが、機能的にはほぼ同じと考えて頂いて問題ありません。これを使用し、フェレシュテに置かれているガンダム三機での出動がヴェーダからの指示です」
 実に説明口調で太陽炉を手で示しながらアニューが解説した。
「……そう、ですか、分かりました。リターナーさん、一つ質問をしても良いでしょうか?」
 一度目を閉じながら、了解の旨を言い、シャルは目を開けてアニューに尋ねた。
「はい、何でしょうか?」
「その太陽炉は、一体どこで作られたものなのですか?」
 シャルが目を細めて言い、アニューはパカっと口を開いて説明を始める。
「地上にある施設で作られたものです」
 聞いた瞬間、シャルは驚愕する。
「地上に施設?」
 アニューが軽く頭を下げて話し始める。
「詳しい事は答えられませんのでご了承下さい。ヴェーダからのミッションですが、私とブリングの二人にはこの太陽炉を搭載した二機のガンダムで出動させて頂きます。ミッション終了後、機体は返還致しますし、太陽炉もそのまま研究・使用していただいて構いません」
 シャルが困惑しながらも尋ねる。
「お二人はガンダムマイスターなのですか?」
「一応、そういう事にはなると思います」
「一応とは?」
 要領を得ない答えにシャルが不審そうにする。
「ヴェーダからの緊急の指示という事からお察し頂ければ」
 アニューは目を閉じながら答えた。
「……分かりました」
 こうして、アニューとブリングの二名は数日間、フェレシュテで働く事になり、主にシェリリンと疑似GNドライブの調整と換装作業を行った。
 ハナヨは終始、凝視するように二人を見ていたが、フォン・スパークはブリングに対し「お前ら、人間じゃねぇな」と核心を突く発言をし、ブリングの動揺を引き起こしていた。
 結果、疑似GNドライブ以外の情報が多く明かされる事も無いまま、ドライブ二基はフェレシュテのサダルスードとアブルホールの二機に換装され、オリジナルの太陽炉を搭載したアストレアと共に出撃したのであった。
 また、本来、フェレシュテのガンダムが運用されている事がCBのプトレマイオスメンバーにすら秘匿である事は、このミッションによりそこまでとなったのは言うまでもない。


―CBS-70プトレマイオス―

 時を戻せば、プトレマイオスにいたイアン・ヴァスティの元にもヴェーダからの情報が届いており、第二世代のガンダムが出撃していた情報について、腰を抜かしかけていた。
 そこへ、支援組織フェレシュテからの通信が入り、モニターにはイアンの弟子であるシェリリンと暗い表情のシャルが映った。
[師匠、ご無沙汰です。ヴェーダから通信許可が降りたので報告します!]
 元気そのものの様子でシェリリンが言う。
[イアンさん、ご無沙汰です]
 シャルが軽く会釈をして言う。
 それを見てイアンは嬉しそうな表情で答える。
「おお! シェリリンにシャル嬢! 久しぶりだなぁ! んで、今回のヴェーダからのミッションは一体何だったんだ? フェレシュテからも出撃したのか?」
[そうです、師匠。聞いてください! 数日前突然フェレシュテにヴェーダからの指示が来て、太陽炉が二つも届いたんです!]
 目を輝かせてシェリリンが言った。
「何ぃ!? 太陽炉が二つ? どういうこった!」
 イアンは思わず身を乗り出し、モニター一杯に顔面を近づけた。
[解析してみたら炉心部にTDブランケットを使用してないんです。ドライブ自体の活動時間は有限、粒子の色も赤色なんです。だから、言ってみれば疑似GNドライブ、です!]
 自信満々の様子でシェリリンは説明をした。
「ふぅむ……しかし、そんなモン一体どっから……?」
 気にかかる事ばかりだと、イアンは唸る。
 GNドライブの設計情報はヴェーダの中にしかない。
 だとすると、その情報を盗み出した者がいたのか、いや、それとも、ヴェーダそのものがわしらの知らない所で指示を出してたのか……?
[地上にある施設で作られたものだそうです!]
 ビシっとシェリリンは言い切った。
「地上にある施設ってなぁ……」
 どこにそんなもんがあるんだ、とイアンは髪をガシガシと手で掻きながら呟き、
「ん、だが、その太陽炉を運んできたのは誰だ?」
 ふと、その問題に思い至り、イアンが怪訝な様子で尋ねた。
[アニュー・リターナーという女性とブリング・スタビティという男性でした]
 シャルに続くように、シェリリンが不思議そうに言う。
[何か、うちのガンダムマイスターのフォンが二人に対して人間じゃないだろ、って言ってましたけど]
「人間じゃない……なぁ」
 思い当たる節はあるにはあるが、と思いながら顎に手を当ててイアンは答えた。
 いずれにしても、今回フェレシュテが出撃したのもヴェーダからの指示だったという事だけははっきりとイアンに伝えられ、後でヴェーダのデータに無い三機のガンダムを使用した者達から接触があるだろうという事で通信を終えた。
「マイスター874と同じ存在がどこかで活動していたという事か……しかし、十一機という事は残り一機数が合わんが一体……」
 イアンはそう呟いて、メディカルルームにいる昔からの付き合いであるJB・モレノと話しをしに行った。


―UNION・対ガンダム調査隊(仮)改めオーバーフラッグス基地―

 両断されたカスタムフラッグ十四機の残骸を乗せたまま海上空母が再び太平洋を横断してUNION領は基地へと戻る途中、オーバーフラッグス隊員は終始全員イライラしていた。
 何より、正規軍として認められたオーバーフラッグスがまともな出撃をする事無く、機体が壊滅させられたというのは、フラッグファイターとしては無念を通り越して、何かもう訳が分からない状態にならざるを得ない。
 そしてQB人形はズタズタの状態で待機室の隅に三体程転がっていた。
 アラスカのジョシュアはグラハム・エーカーが隊長を勤めているのが気に入らないという、同僚内での妬みはどこへやら、完全に新型のガンダム、もちろん、アイガンダムへの恨みへとシフトしていた。
 そんな中、QBの精神攻撃の餌食になったダリル・ダッジは、正直十一機もガンダムがあったCBとまともに戦わなくて済んだのはある意味良かったのではないかと少し思いながらもグラハムに尋ねる。
「隊長、新型とやりあってみてどうでした?」
 瞬間、グラハムは左の拳をギリリと握りしめ、鋭い目つきで答える。
「あの新型、機体の性能は元より、パイロットも相当な手練と見た。恐らくタリビアの一件、アザディスタンの一件で戦った二機のパイロットよりも上だろう。よもやあのような隠し玉があろうとはっ。圧倒的すぎるぞ、ガンダムッ!」
 最後の方、顔を上げて空に向かって言い始めるあたり、どう考えてもいつもの独り言になっている、と思いながらもダリルは磨きあげたスルースキルを駆使して言う。
「隊長がそこまでいうのなら、いよいよCBはとんでもない組織ですね。機体もパイロットもとなると……十一機というのも、まだ機体が幾つもある可能性もあります」
「カタギリとプロフェッサーは四機しか無いと見ていたが、その予想すら凌駕するとは。CBは完全に我々の作戦を読み切っていたらしい」
 想定の範囲外、ここに極まれり、という結論であった。
 太平洋上を横断するよそで、オーバーフラッグスが基地では、早速ビリー・カタギリとレイフ・エイフマンはグラハムが僅かとはいえ交戦をしたガンダムとの戦闘データと、他の巨大航空機の部隊とAEUと人革連からも互いに情報交換する事で伝わってきた新たなガンダム各機の情報分析に追われていた。
「まさか、新たに七機ものガンダムを投入してくるとは……完全に予想が外れましたね、エイフマン教授」
 これはやられた、という様子でカタギリが言った。
「じゃが、この新たなガンダム、全てが新型という訳では無い。特にこの三機」
 エイフマンがモニターに映る、アストレア、サダルスード、アブルホールの三機を見て言った。
「ええ、いつもの三機の原型機、と言った所でしょうか。特にこの飛行型の機体はそう断言できますねぇ」
 アブルホールを見て納得するようにカタギリが頷いた。
「対して、別のもう三機、これらは全く別の流れを汲んでいる新型と見て良い」
「そのようですねぇ。そして、最後にグラハムが交戦した一機はいつものガンダム四機の特徴を廃した汎用型と言える、完全な新型と言って良いでしょう。しかし、この一機にカスタムフラッグ十四機を出撃させる暇無く、破壊されるとは……」
 苦い顔をしてカタギリが言った。
「何、パイロットは失ったらそれまでじゃが、機体はまた作れば良いだけの事。費用を度外視すれば、じゃがな」
 エイフマンはさほどフラッグが破壊された事に憤りも感じていない様子で言い、それにカタギリが苦笑して言う。
「ごもっともです。それにしても、ガンダムが七機もあるとなると、直接鹵獲に力を注ぐより、教授の研究を進めるか、諜報機関がCBの基地を見つける方が余程近道のように思えますね」
 これは流石にお手上げでは、というようなカタギリに、エイフマンはフッと笑い、カタギリに問いかける。
「ふむ……時に、この五機のガンダムと六機のガンダム、放出する粒子の色が違う事についてどう見る?」
「大部分が同じ構造をした動力機関でありながら、どこかに明確な違いがあるのでは無いでしょうか」
 カタギリが顎に手をあてながら答えた。
「やはりそう見るか。わしは緑色の粒子を放出するガンダムの動力機関は稼働が無限、赤色の粒子を放出するガンダムの動力機関は稼働が有限であると見ておる」
 だとするならば……とエイフマンは目を細め、六機の赤いGN粒子を放出するガンダムを見ながら言った。
「なるほど……その可能性は高そうですね」
 カタギリは興味深そうに再び頷いた。


―経済特区・東京―

 ルイス・ハレヴィがスペインにいるいとこの結婚式に行くために、日本を離れるという話を、サジ・クロスロードとしていた一方、JNN本社内の休憩室で絹江・クロスロードは休んでいた。
「はぁ……」
 椅子の背もたれに身体を預け、溜息をつく。
「先輩、疲れてますね」
 絹江の部下が声を掛けた。
 絹江は目を閉じたまま答える。
「取材が空振り続きでね……」
「聞きました? 各陣営の公式コメント。大破・損壊したモビルスーツは累計563機、戦死者は100名程度だそうです。公式コメントとは思えないほど、相変わらず数おかしいですよね」
 不謹慎ではあるが何か笑いすら出てくるという様子で絹江の部下が言いながら、自動販売機から缶コーヒーを取り出す。
「はぁ!? 何、その563機って?」
 知らなかった絹江が叫んだ。
「それが、どうやら新しいガンダムが何機もうじゃうじゃ現れたらしいですよ」
「新しいガンダムが何機も!?」
 更に絹江は驚く。
「ええ。この分だとCBにはまだまだ余裕で隠し玉がありそうですね」
 軍も諦めたら良いのに、と部下は言いながらコーヒーを飲む。
「一体CBにはどれだけの規模と予算があるというの……」
 呆れた様子で絹江が呟いた。
「それはそうとして、先輩、例の似顔絵の女の子ですけど、知り合いか何かですか?」
 部下が懐から、暁美ほむらの精巧な似顔絵の書かれた紙を出して言った。
「その子がね、CBとQB、特にQBについて詳しく知ってる可能性があるのよ」
「この女の子がですか?」
 それは無いだろ、という顔をして部下が言った。
「見かけたら教えてくれればいいから。それだけよ」
 絹江は手をヒラヒラさせて言い、要領を得ない様子で部下が相槌を打つ。
「はぁ……そうですか」
「付きあわせて悪いわね。私、ちょっと個人的に群馬に行くことにするから、局の仕事に戻っていいわよ」
 絹江がそろそろ行ってみるか、という様子で言った。
「それも取材ですか?」
 絹江の部下が何で群馬に、と意外そうに尋ねた。
「まあ、そんな所よ」
 あれから調べてみると、やはり、ただのオカルトとは言えない程、統計的に見て、失踪者の偏りの内訳はどうもおかしい。
 私もあの子に会わなければ、それ程惹きつけられるものでも無かったけれど、実際に見た。
 あの子は何かしら関係が必ずある筈。


―某宙域・ランデブーポイント―

 ガンダムスローネドライに搭乗していたリジェネ・レジェッタにより、ティエリアに対して暗号通信で送られてきたポイントへとプトレマイオスが向かうよりも前。
 四人のガンダムマイスターと、王留美の手配によってプトレマイオスクルーが地上から全員プトレマイオスに戻り、イアンがある通信があった事から、スメラギの呼びかけにより、ブリーフィングルームに全員が集まっていた。
「支援組織フェレシュテ? それが前から第二世代のガンダムを改修して運用してたっていうのか?」
 ロックオン・ストラトスがそんな事知らなかったとイアンに尋ねる。
「ああ、そうだ。本当は機密だったんだが、ヴェーダからフェレシュテの存在を教えて良いって連絡が来てな。どっちにしろお前さん達気になって仕方がないだろうから言わざるをえんとは思っていたがな」
 腕を組みながらうんうん、とイアンが答えた。
 フェレシュテの存在をプトレマイオスクルーで知っているのはイアンとモレノのみであった。
 ただ、シャル本人としては、CBのプトレマイオスメンバーに自分達の存在を知られるのはできれば避けたい事であった。
 シャルは昔事故で仲間を失った過去から、また再び仲間を失って悲しみたくない、ならば、相手に知られることの無い存在ならばそもそも仲間と成立していないから、悲しむ事も無いだろう、という非常に暗い想いを抱えているから。
「知らされていない組織が存在していたというのか……」
 ティエリア・アーデが呟くように言った。
「という訳でだ、フェレシュテと通信を繋ぐぞ」
 言って、イアンがブリーフィングルームの巨大なモニターに通信先と繋ぐ。
 モニターに現れたのは、シャルとシェリリンの二名。
[……支援組織フェレシュテの管理官、シャル・アクスティカです。知っている皆さん、お久しぶりです]
[フェレシュテのメカニック、シェリリン・ハイドです]
 二人の姿、特にシェリリンを見て、フェルトがポツリと声を上げ、モニターに近づく。
「シェリリン」
 それにシェリリンも僅かに手を振って答える。
[久しぶり、フェルト]
 フェルトとシェリリンはどちらもCBで育ったが、両者共に無口であり、その会話も傍から見るとどうにも微妙なものであった。
「知り合いなの? フェルト」
 クリスティナがフェルトの後ろから声をかけると、フェルトは振り返りもせずに肯定する。
「はい」
 フェルトを見たシャルは目に動揺の色を浮かべるが、スメラギが話を進めようと口を開く。
「いいかしら、フェルト。プトレマイオスの戦況予報士、スメラギ・李・ノリエガです。イアンからある程度は聞きました。私達が活動している陰からサポートをして頂いていた事、感謝します」
 スメラギはフェレシュテの存在を知らなかったので、素直に感謝した。
[いえ、当然の事です……。それが私がヴェーダから許可を得てフェレシュテを設立した意義ですから……]
 暗く憂いを帯びたような表情で目を伏せて話すシャルの様子に、プトレマイオスのブリーフィングルームも雰囲気が心なし暗くなる。
「あー、でだ、例の疑似GNドライブを持ってきた二人はどうしたんだ?」
 完全に会話が停止した所、イアンが今回の本題について尋ねる。
 ティエリアもそれについて壁にもたれかけながらも鋭い目つきでモニターを見る。
[それが、師匠、フェレシュテにサダルスードとアブルホールで普通に帰投した後、疑似GNドライブを二基とも残したまますぐに二人はどこかに帰っていってしまったんです]
 シェリリンがどうしてか分かりませんけど、と答えた。
「何ぃ!? 止めなかったのか?」
 イアンが声を裏返して言った。
[ヴェーダからの指示だそうです。その代わりCBには別の仲間が改めて話をする予定ですので、と言ってました]
 シェリリンが、アニューから言われた事をそのまま伝えた。
「ティエリアに暗号通信を送ってきたのはそれか……。疑似GNドライブを置いていった事には何と言ってた?」
[最初に来た時に研究・使用しても構わない、と言っていた通りだと思います]
 今度はシャルが答え、イアンが考えるように唸り、ティエリアが壁から背を離して一つ尋ねる。
「シャル・アクスティカ管理官、その二人はガンダムマイスターなのですか?」
「一応、そういう事にはなる、と言っていました。ヴェーダからの緊急の指示という事から、恐らく一時的にマイスターの権限を持っているものと考えられます。詳しい情報は聞けませんでした」
「……そうですか」
 短くティエリアは答え、これから合流する事になる人物を待つ事にした。
 そのまま、その後少しのやりとりの後、通信は終了、一旦解散となり……そして、時は現在、場所はランデブーポイント。
「光学カメラが接近する物体を捕捉」
 フェルトが報告し、スメラギが指示する。
「メインモニターに出して」
「了解」
 メインモニターに映ったのは小型の輸送鑑にコンテナを取り付けたような物。
「あれが……」
 スメラギが呟き、リヒテンダールが拍子抜けして言う。
「随分小さいすね」
 しかし、スメラギは表情を強ばらせ、更に指示を出す。
「フェルト、エクシアの出撃準備を。クリスはあの船をスキャンして」
「了解です」
 しばらくすると、そのまま小型輸送艦はプトレマイオスにどんどん近づいてくる。
「コンテナの中にモビルスーツを確認しました」
 フェルトが報告し、
「コンテナの中に……?」
 ラッセが呟いた所、小型輸送艦から光通信が発信される。
「輸送艦からの、光通信を確認」
「トレミーへの着艦許可を求めています」
 フェルトとクリスティナがそれぞれスメラギに端末を操作しながら告げる。
「許可すると返信して。それから、エクシアの待機を解除。刹那をブリーフィングルームへ」
 スメラギが素早く指示を出し、腕を組む。
「了解です」
 輸送艦が丁度の距離に入った所、輸送艦から一人だけ飛び出し、ハッチから入ってくる。 
 隔壁が開き、廊下に入ってきたのは紫色のCBのガンダムマイスターと同じパイロットスーツの姿。
 それにガンダムマイスター三人とスメラギが驚く。
 その人物が頭に両手を当ててヘルメットを取って姿を現すと。
「なっ!?」「ティエリア!?」「そんな」「ティエリアが二人?」
 一番最初に絶句したのはティエリア本人。
 残りは皆、一度自分達の側にいるティエリアを思わず確認する。
「着艦許可ありがとうございます。リジェネ・レジェッタです」
 リジェネはティエリアよりはウェーブのかかった髪型であるが、完璧に容姿は同じであり、顔は微笑んでいるものの、ティエリアをじっと見て言った。
「な、何故だ? 何故、僕と同じ容姿をしているっ!?」
 ティエリアは動揺を隠す事無く、その場で叫んだ。
《それはDNAが同じだからさ。塩基配列パターン0988タイプ》
 脳量子波の通信により、ティエリアにリジェネの声が伝わり、ティエリアは一歩二歩と下がる。
「頭に声が!?」
《GN粒子を触媒とした脳量子波での感応能力。それを使ってのヴェーダとの直接リンク。遺伝子操作とナノマシンによる老化抑制。……ティエリア、君にはヴェーダによる情報規制がかかっていて自分に同類がいる事を知らなかったんだったね》
「そんな……」
 筈は……と更に後ろに下がるティエリアを見かねて、
「おぃお前、ティエリアに何かしてんのか?」
 ロックオンが顔を顰めてリジェネの前に立ち入った。
「人前では言えない話をしていただけです」
 そこへ、刹那がエクシアから降りてやってくる。
「な、ティエリアが二人?」
「僕はリジェネ・レジェッタ」
 リジェネは即座にもう一度自己紹介をした。
「と……とにかく、ここじゃ何だから、部屋で話しましょうか」
 スメラギが我に帰って提案し、
「お願いします」
 リジェネが軽く頭を下げた。
 一方、ブリッジ内も騒然としていた。
 フェルトはぱっくりと口を開けたまま完全停止し、ラッセのモニターで映像を見ていたクリスティナが適当に言う。
「まさか、ティエリアの生き別れの双子……とか?」
 リヒテンダールが引きつった顔で言う。
「そ、そうかもしれないすね」
 ラッセが唸る。
「うぅん……」
 そして、場所はブリーフィングルームに移る。
 リジェネ一人に対し、向かい合うように五人が並ぶ。
「何故、あなた……あなた達はガンダムを所有しているの?」
 容姿の事はティエリアが依然動揺して、一人奥の方に離れているので触れないとして、スメラギは一人しかいないものの、一応訂正して尋ねた。
「ある施設で建造していたからです。擬似GNドライブも同じように建造しました。場所は答えられません」
 あっさりリジェネは口を開いて、GNドライブについても言及する。
 ロックオンとアレルヤもその言葉には目を見開く。
「そ、そう……。では、ヴェーダのデータバンクにタクラマカン砂漠での三機と、あなたが乗ってきた……スキャンさせて貰ったけれど小型輸送艦のコンテナに入っているガンダムが無いのは何故かしら?」
 スメラギは小型端末を見て、次の質問を投げかける。
「ヴェーダのデータバンクにはきちんと存在しています。ただ、普通にはデータバンクには無いように処理されていて、アクセスできないだけです。それと、タクラマカン砂漠での三機は現在既に解体中です」
 その言葉にロックオンが意外そうに声を上げる。
「解体? どうしてだ?」
「必要無いからです。仮に搭乗するとしても、我々には適していないので」
 リジェネは正直スローネ三機には全く興味がない様子で答えた。
 リジェネの言い方に眉をひそめてスメラギが尋ねる。
「その事だけど……あなた達はガンダムマイスターとしてこれからも行動するのかしら?」
「必要がある時には。タクラマカン砂漠での物量で押して、こちらにあるオリジナルの太陽炉を搭載したガンダムを鹵獲するような作戦の際には必ず。迷惑ですか?」
 微笑を浮かべて、リジェネが言った。
「いえ……そういう訳では無いのだけど。実際あなた達が来なければ鹵獲されていた可能性も高い訳だし」
 スメラギが表情を緩め、首を一度振って答えた。
 そう言われると、とアレルヤ、ロックオン、刹那も否定はできなかった。
「質問ばかりですが、僕からもそろそろ話をしても良いですか?」
 リジェネの方から話をする気がある様子にスメラギは一瞬驚く。
「え、ええ、勿論よ。色々質問責めにしてごめんなさい」
 リジェネは一度目を閉じ、再び開けて両手を広げながら言う。
「CBの武力介入による計画の第一段階は三陣営に軍事同盟を結ばせるなどして、世界を一つにする足がかりを作らせる事ですが、その後CBはヴェーダの計画ではどうなる予定になっていると思いますか?」
 ロックオンが怪訝な顔で言う。
「紛争根絶を達成するまで武力介入を続けるんじゃないのか?」
 ハッとした顔でスメラギが恐る恐る口にする。
「……ま……まさか。……CBは滅びる事になっているとでも言うの?」
「スメラギさん、そんな」
 筈はないでしょう、とアレルヤが言う前に、リジェネが肯定する。
「そのまさかですよ。CBはヴェーダの計画では元々数百日の活動の後、滅びる運命にあります」
「な!」「馬鹿な」「ヴェーダ……」
 ロックオン、アレルヤ、ティエリアが同時に声を出して停止し、スメラギは口を手で抑え、刹那が怒ったような顔で言う。
「CBは、ガンダムは戦争を根絶する為に存在する。戦争根絶を達成する事無く滅びると決まっているならCBは、ガンダムは何の為にある?」
 リジェネが目を閉じて答える。
「ヴェーダにとっては、計画の為のステップにしかすぎません。必要がなくなったと判断されれば処分されるだけです。その昔、オリジナルの太陽炉五基が完成した際、木星で開発を行った科学者達が全員処分されたように」
 そこでリジェネは目を開け、それに動揺したスメラギが尋ねる。
「そ……それは事故だという話では無かったの?」
 フッと笑い、リジェネが言う。
「ヴェーダに、事故、などという計画の失敗を意味するような現象が、ましてやそんな重大な案件に偶然起きると思いますか? ヴェーダは常に完全であり、根幹を為すシステムです」
 ヴェーダの決定は絶対、というのがCBのルールであったが、このリジェネの言葉は重かった。
 五人は完全に停止する。
「……声も出ないようですね。因みに、これだけ話してしまっている僕も、そろそろヴェーダから必要ないと判断されて処分が決定される一歩手前になりかねないんですよ?」
 自嘲染みてリジェネが肩をすくめて言った。
「っ……」
 その発言にロックオンが舌打ちをする。
 首を振り、アレルヤが両手を前に出しながらリジェネに確認する。
「ヴェーダは必要ないからという理由だけで、簡単に人の命を奪うというのか?」
 リジェネが頷く。
「その通りです。また、計画にとって障害になると判断される人物に関しても同様です。……例えば、スメラギ・李・ノリエガ、あなたの恩師、レイフ・エイフマン教授はこのままだとそろそろ抹殺対象に入る可能性が高いですよ」
 リジェネはスメラギを見て言い、スメラギが声を上げる。
「教授がっ! どうして!?」
 即座にリジェネが説明を始める。
「彼の研究がGN粒子と太陽炉の本質に迫って来ているからです。そんな事を知られては、当然、CBの障害になりますよね?」
 スメラギも一歩下がる。
「なんてこと……」
「おぃおぃ、それが本当ならヴェーダはとんでもねぇな」
 ロックオンは頭を掻いて言った。
「CBにスカウトされた僕たちは……騙されていたというのか?」
 アレルヤが手に汗を握って言った。
「ヴェーダはシステムです。善悪という概念は存在しません。常に計画に則って必要か、不必要か、有益か、そうでないか、それを判断し、決定するだけです」
 スメラギがここに来て、リジェネの行動に疑問を呈す。
「……なら、あなたはどうしてわざわざここに来たの? あなたの命の危険になるような事を話すのもヴェーダの計画の一部だというの?」
 リジェネはここで、微笑み、事情を明かす。
「……ヴェーダの計画、いや、イオリア計画は最終段階の半分が既に達成されてしまった。その為、ヴェーダの計画には変化が起きて来ているんです」
 ロックオンが何のことか分からないと尋ねる。
「最終段階? どういう事だ?」
「QB。彼らが何か知っていますよね?」
「異星生命体……」
 スメラギが呟いた。
「イオリア計画の途中の段階は省きますが、最終段階は人類の外宇宙への進出と、それに伴う未知との来るべき対話に備え、それを達成する事です。QBはその未知であり、我々が来るべき対話を行うべき存在です」
 壮大な話である筈が、QBがここに絡んできた途端、場の空気が急速にげんなりする。
 散々これまでQBに振り回されているだけに、尚更。
「QBとの対話がイオリア計画の最終段階ですって……」
 呆れた顔でスメラギが言った。
「あー、散々ぶん殴ってるんだが、大丈夫なのか……」
 ロックオンは俺やっちまったぞ、という顔でやれやれ、と言った。
「ロックオン……」
 アレルヤがロックオンに呆れるように言った。
「QBとの対話の結果、CBは数百日で滅ぶ事無く、可能な限り超長期的に活動する事になりました。これが僕がここに来て、これだけ話す事ができる理由です」
 緊張の抜けた顔で、リジェネは、最後に息を付いて言った。
 イノベイドも正直溜息を付きたい状況である。
「ここに来てQBに結び付くというのが、何とも言い難い気分なのだけど……つまり私たちはこれからもCBとして活動をすれば良いのかしら?」
 スメラギは額を手で抑えながら尋ねた。
「そうです。ヴェーダもCBの武力介入行為で本当に世界から紛争を根絶できるかまでは測りかねています。ですが、仮にできないとしても、CBは世界の抑止力となって存在し続けることに意義があるでしょう」
 刹那がその言葉を復唱する。
「存在し続ける事に意義がある……」
「はっ……良く言う」
 ロックオンが背中を壁から離して言った。
「それに当たって、ティエリア、君に新しい機体を持ってきたよ」
 突如、リジェネは後ろの方にいるティエリアの方をしっかり見て言った。
「僕の……新しい、機体?」
 未だ混乱が収まらない中、ティエリアが呟いた。
「コンテナに積んできた0ガンダムの後継機、アイガンダム。時と場合によって太陽炉を換装して使い分けて使用すると良いさ。あれならヴァーチェと違って気をつければパイロットを殺さなくて済むからね」
 くすくす、と笑いながらリジェネが言った。
「勿体無いとかいうQBの差し金か?」
 ロックオンが目を細めて尋ねた。
「僕も人間の死を勿体無いというQBの表現、そのもの、には若干の嫌悪を覚えます。ですが、QBにとって理由がどうあれ、殺さない事は悪くは無い筈。ティエリアも結構気にしてるだろう?」
 リジェネは首を傾げた。
「くっ……」
 思考を読まれている……とティエリアは苦虫を噛み潰したような顔をした。
 そこで、スメラギが腕を組んで尋ねる。
「……そろそろ、あなたが一体何者なのか、話しては貰えないかしら?」
「良いでしょう。では、イアン・ヴァスティとJB・モレノも呼んで貰えますか?」
 リジェネの提案にスメラギはどうして、と思いながらも、
「イアンさんとモレノさんを……? 分かったわ」
 言って、スメラギはイアンとモレノを通信で呼び出した。
 間もなく、ブリーフィングルームにイアンとモレノが到着し、リジェネの姿を直接見て驚く。
「モレノ医師、ヴェーダのデータバンクの中の医療系に関する情報、ナノマシンなどについて閲覧を許可されていますね?」
 リジェネがモレノに尋ね、モレノが肯定する。
「あ、ああ。そうだが」
 情報を引き出すように、リジェネが問いかける。
「僕たちが何者か、分かりますか?」
「……ヴェーダによって人工的に作り出された存在……と言った所だろうか」
 サングラスで目が隠れ、表情ははっきりとは分からないが、尻すぼみに答えた。
「という事です。まだ質問はありますか?」
 言って、リジェネはスメラギを見た。
「……いいえ、十分よ」
 スメラギが首を振る。
 イアンが眉間に皺を寄せて尋ねる。
「わしはお前さんに聞きたい事があるんだが良いか?」
「どうぞ」
 リジェネが頷く。
「すまんが通信で聞かせて貰っていた。ヴェーダに事故は無いと言っていたが、プ……いや、あの事件も、ヴェーダによって計画された事なのか?」
 プルトーネの惨劇、フェルト・グレイスの両親が、シャル・アクスティカを助ける為に死亡する事となった事件。
「あの事件というのが同じ物を想定しているかは分からないですが、心当たりがあるとすれば、それは僕たちの中にいた裏切り者がヴェーダにも気づかれずに勝手に仕組んだ事で、あれは確かにヴェーダの中では残念ながら事故と言えるものですね」
 リジェネは淡々と答えた。
「裏切り者だって? そいつは今どうしてる!?」
 イアンが鬼気迫るように尋ねた。
「つい先日、しぶとく生き残っていた所を発見し完全に処分しました。それ以外でCB内でイアン・ヴァスティに心当たりある事件も大体全てその裏切り者のせいです。詳しい事はヴェーダ本体内部での情報機密ですので」
 それを聞き、イアンは勢いを失うが、もう一つだけと口を開く。
「何……そうか……。だが、これだけは聞かせてくれ。何故お前さん達の中から裏切り者が出たんだ?」
 リジェネはティエリアを示しながら答える。
「見ての通り、僕たちはそれぞれ異なる人格があり全て別人です。当然考えも異なります。思想の違いですよ」
「そういう事か……分かった」
 イアンは溜息を付き、納得した。
「では、機体も搬送しましたので、今回はこの辺りで失礼しますが、宜しいでしょうか?」
 リジェネが大体話した所で、帰還する事を申し出る。
 そこで慌ててスメラギが待ったを掛ける。
「ちょっと、私も一つだけ良いかしら。エイフマン教授を」
 リジェネが即座に言葉を重ねる。
「助ける方法は無いか、ですか。安心して下さいとは言えませんが、僕たちはこれからあるプランをヴェーダに進言する予定ですので、抹殺対象から外れる可能性は高いですよ。スメラギ・李・ノリエガ、あなたもヴェーダにプランを提示し、レイフ・エイフマンが生きている事が、計画にとって有益である事を示せば、あるいは……」
 言って、リジェネは僅かに口元を吊り上げ、ブリーフィングルームから出て行った。
 そのまま、ハッチを開けて貰い、出るか、という所でティエリアが急いで追いかける。
「待て!」
 リジェネが笑いながら振り返る。
「フフ、どうしたんだい、ティエリア? 一緒に僕と来るかい?」
「違う!」
 ティエリアが怒鳴り気味に否定した。
「その割には何を言ったら良いか分からないみたいだね。何か言いたい事があったら、脳量子波でメッセージを送れば良いさ。またね、ティエリア」
 リジェネは頭を指で示しながら言って、実際ティエリアは何を言ったら良いのか分からず拳を握り締めたまま、リジェネがそのままハッチから出て行くのを見送った。
 リジェネはそのままパイロットスーツの姿勢制御スラスターを噴かせて輸送艇に戻り、コンテナを切り離して、一方的に機体を残し、その場から去っていった。
 ヴェーダの中では元々CBは数百日のうちに滅びる予定だったという事にブリーフィングルームでのリジェネの話を聞いていた、ブリッジクルー達含め、プトレマイオスの者は皆、しばらくの間、沈黙していた。
 しかし、スメラギが、CBが超長期に渡り、武力介入行為を続ける事になった以上、これまでと何も変わらないという結論を出して、解散となった。
 スメラギの指示により、イアン達はプトレマイオスのすぐ傍に放置されてしまったコンテナを開けて、アイガンダムを、プトレマイオスの格納コンテナを詰めて収納した。
 一応怪しいから、という事でイアンはアイガンダムを調べ始める。
 しばらくして、スメラギがやってきて、調査状況を尋ねる。
「イアンさん、その機体はどう?」
 端末を手に、イアンが顔は向けずに答える。
「ああ、特にシステムトラップは無いぞ。これが例の十一機目だろう。機体自体は第二世代のアストレア系列のデータが反映されている汎用機のようだ。しかも、0ガンダムに搭載していたGNフェザーまで使えると来た。ご丁寧に擬似GNドライブまで付いているが、太っ腹だよ、全く。バイオメトリクスも恐らくティエリア用に設定されているだろうさ」
 メカニックとしては、完璧にガンダムタイプとあって調べずにはいられないという様子で、イアンは情報に次々と目を通していく。
「大丈夫そうなのね。問題はティエリア自身だけど……。ところで、擬似GNドライブについてどう思います?」
 スメラギは不安気な顔でイアンに尋ねた。
「んぁ? そうだな、フェレシュテからシェリリンが解析したデータを既に受け取って見たが、TDブランケットを使用しないという構造上、量産化が可能だ。恐らくだが……わしらは命が助かったんだろう。QBが奴さん達と対話とやらをしたお陰で」
 イアンは苦笑し、続けて言う。
「間違いなく擬似GNドライブは既にどこに大量にあるんだろう。ヴェーダの計画の中で元々わしらは数百日のうちに壊滅する事になっていたのだとすると、その擬似GNドライブを三陣営に回して、軍事同盟を締結、わしらを叩かせるというのが筋書きだったんだろうさ」
 端末を操作し、目線を素早く動かしながら話すイアンの何気ない言い方にスメラギは更に暗い顔をする。
「やっぱりそう……ですよね……」
 流石にイアンはふとスメラギの方を向き、溜息を一つ付き、元気づけるように言う。
「そんな暗い顔するなぁ。わしらはこれからも活動を続けていけば良い。それが例え矛盾を孕んでいようともな。それより、ヴェーダからのミッションが来るまで、恩師を助けるプランでも考えたらどうだ?」
 スメラギはそれを聞き、少し困ったような様子で答える。
「そうですね。ありがとうございます、イアンさん」
 そのままスメラギは格納庫を後にして、自室へと戻っていった。
 その背中を見ながら、ふとイアンは思った。
 一体QBにはCBが武力介入を続ける事に何の利益があるんだ。
 そもそも、QBが死者の数を極限まで減らして、ましてや「勿体無いじゃないか」というなら、そもそも武力介入そのものを起こしているCB自体が無い方が良さそうなものだが。
 「CBが壊滅すると困る」というのはCBが形式として存在していることに重要性があるのか、とまで考えた所で、それでもさっぱり分からない。
 感情エネルギーの回収などという訳の分からない理由があるなど、イアン達には到底思いも寄らないのは無理もない。
 かくして、最も得をしているのはQBに他ならないようであるが、壊滅する筈だったCBメンバーにとっては期せずして救い手のようなものであり、イノベイド達が裏から世界を操って世界を強引に統一させようとする事で起こりえる、情報統制で伏せられる非道な虐殺も起きそうにないと、色々良いのか……どうなのか。


―UNION・オーバーフラッグス基地―

 エイフマンは基地の自室でパソコンのキーボードを叩きながら考えていた。
 私の仮説通り、ガンダムのエネルギー発生機関がトポロジカルディフェクトを利用しているなら、全ての辻褄が合う。
 ガンダムの機体数が少ない理由……いや、新たに現れた機体に搭載されているものはまた違うが……200年以上もの時間を必要としたことも……。
 あのエネルギー発生機関を造れる環境は木星。
「っは」
 エイフマンは思わず息を飲む。
 120年前にあった有人木星探査計画。
 あの計画がガンダムの開発に関わっておったのか。
 だとすれば、やはりイオリア・シュヘンベルグの真の目的は、戦争根絶ではなく……。
 それを踏まえた上での、
「人類の外宇宙への進出」
 エイフマンはそう呟いた。
 あのエネルギー発生機関ならばそれが可能の筈。
 しかし、これを発表したとて、木星に行くだけでも膨大な時間が掛かるというに……。
 そこへ、カタギリから通信が入る。
[教授! ニュースを見てください! 大変ですよ!]
「何?」
 エイフマンは疑問の声を出しながら、ニュースを付ける。
 そこに映ったのは例の四足動物の顔面アップ。
[三陣営の偉い人達、合同軍事演習なんて言いながら実はガンダムが目的で、わざとテロを見逃してまで捕まえようとしたのに、残念だったね。命を落とすのは三陣営の偉い人達じゃなくて、駆りだされる兵士達。勿体無いよね。これ以上無意味な事はしないよう、仕方がないから君たちにCBから余っているガンダムの動力機関を近いうちに上げる事にしたらしいよ。期待すると良いんじゃないかな?]
 最後にズームが解かれ、QBが首を傾げて言った。
「何を考えているQB!? いや、CB!?」
 レイフマンはそのニュースに叫び声を上げ、ガタリと椅子から立ち上がった。


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