湯気を立てるご飯に、生しらすをふんだんに盛り付ける。
小皿に醤油と生姜を取り分け、山葵もお好み程度に追加で添えておく。
少し風味の強い赤味噌の出汁に、適度な大きさに切り揃えたタラの身を投入して、さっと味をくぐらせて。
箸休めとして大根と胡瓜と人参の三色浅漬けを用意したら、完成である。
「おぉ、このしらすという小魚が、いい塩梅に暖かなご飯と合うな」
「神奈子、こっちの味噌汁も美味しいよ。ちょっと味が濃い目だけど、しらす丼と一緒に食べると丁度いい感じで」
美味しそうに食べてくれる2人を見ながら、俺も一緒に箸をすすめる。ポリポリかじる大根の浅漬けが、しらす丼や魚の赤出汁で鈍った舌の感覚をクリアに戻す。
我ながら良い仕事してますねって言いたくなる様な出来栄えに、思わず頬が緩む。ま、カードのおかげなんだが。
団欒のひと時を楽しむ大和一家、とでも言えるだろうか。
俺の目指していた光景の一つである。
何でこんな事になっているのかというと、事の始まりは、戦勝祝いだったかの祭りの際に出された食事から始まった。
今までずっと空気を食べてきて、飽きの来ない能力によってこれといって不満もなかったのだが、あの味の無い団子やら焼き魚やら粟やら何やらを、基本塩味のみで食えというのが、現代生活だだ浸かりだった俺には拷問にも等しかった。
せめて味噌か醤油でもあればと思ったけれど、今は恐らく……西暦四、五百年位か。
どちらの調味料も、後数百年は待たねば味わえないときた。
これは無理、と。
そう、祭りの最中に思った。
その祭りも終わり、勝手知ったるなんとやらと化した、諏訪子さんの社の一室で考える。
かといって自作出来る知識も無いし、この状況を甘んじていられる訳でもない。
ということで、MTGの出番と相成ったのであるが……。
(食べ物を出す効果を持ったカードなんて知らねぇ……)
カードゲームにそんな効果を持つカードなどある筈も無く、料理を知っていそうなカードキャラも思いつかないし、かといって手当たり次第に召喚する線は、時間も体力もマナも食う。
おまけに目標を達成するまで、一体いつまで掛かるのか不明と来た。
こりゃダメかなぁなんて思って諦めようとした時。ふと、別の観点からカードを召喚してみてかどうか、という考えが浮かんだ。
それが、【フレーバーテキスト】である。
『フレーバーテキスト』
MTGの雰囲気や世界観をあらわすために使われる文章を指す。ゲームのプレイやルールには関係しない、ルール・テキストでない文のこと。元は【バニラ】クリーチャーという何の能力も持たないカードの能力欄を埋める為のもの。
ちなみに勇丸にもそれはあり、
『その猟犬は空気に鼻をひくつかせ、低いうなり声をあげた。武野御大将は忠実な勇丸を見下ろし、撫でて落ち着かせた。「兵を準備せよ。神が来るぞ。」』
という一文が記述されている。
この文の効果か否かは分からないが、勇丸は姿を隠していた、神である諏訪子さんに気づけたのかもしれない。
思い出すのは、ある【アーティファクト】
多分、公式の大会では一部を除き、1度として使われた事など無いであろうもの。
コスト2の、クリーチャー戦闘を若干サポートする程度の能力を有するそれは、【フレーバーテキスト】に、こう記してある。
『旅の間、ジャンドールが毎日、鞍袋を開けるたび、そこには羊肉から、チーズやマルメロの実、ナツメヤシ、ワインまで、ありとあらゆる種類の、おいしく滋養に富んだ食料が詰まっていた。』
と。
その名は【ジャンドールの鞍袋】
ジャンドールというのは誰の事だか分からないが、馬に備え付けられる機能を伴っている、食べ物関係で特化した道具なのだろう。某青タヌキの秘密道具を思い出す。
召喚したそれは、まさしく袋。
所々に金銀宝石で彩りが鮮やかになっているそれは、サッカーボール二、三個なら収納できそうな大きさだ。
(すげー、こんなに貴金属が付いてる袋とか初めて見た)
若干の疲れを感じながら持ってみると、思ったより重く、あんまり長時間の持ち運びは出来ないなと考える。売ったら高いだろうなぁ……。
で、早速能力を行使。多分カードを使用する要領で脳内に描けば袋の中に現れるのかな~? と思って試してみる時―――ふと、気になる疑問を解決する為、脳内にある食べ物を思い浮かべる。
それはラーメン。
完成された食品が出るのか、それの一段階手前の食材が出現するのか、カード絵を見る限りだと後者な印象が強く、不安に思ったからだ。
チーズやワインといった、ある意味完成された食品は出てくるらしいが、これが汁物で様々な工程を踏んだ食品だった場合はどうだろうか。
まさか器の無い状態でびちゃびちゃになって出現することは無いだろうな、とビビりながら袋を確認すると、そこには湯気を立てるオーソドックスな、ザ・ラーメンとでも言わんばかりのものが収まっていた。
ただし、あの卍の連なったような模様が特徴的な器に入った、四百~六百円で食べられそうな、あれではない。
スーパーカップと呼ばれるカップ麺のしょうゆ味が、今三分経ちました的に湯を注がれた状態で収められており、嗅覚を刺激する。カップヌードルでないのはご愛嬌。
久しく嗅いでいなかったあの独特な醤油ベースの中華麺に舌鼓を打ちながら、胃へとかっ込む。
手元に箸など無かったので必然と流し込む形になったが、今の俺はそんなことなど気にならない。
あぁ、この安っぽい味が堪らない。
口内を軽く火傷させながら、まだ半分ほど手元に残っているカップメンをマジマジと見つめる。
どう見ても俺の記憶にある、あれそのもの。
水を通さない特殊な容器から、プリントされている鮮明な絵柄まで、記憶の中のそれ、そのまま。
何となく予想を立てながら、次々に頭の中で思い描いた食品類を取り出し始める。
日本酒―――豚の丸焼き―――うまい棒。
日本酒は中部地方地の大吟醸『究極の花垣』。
一般的に酒瓶と呼ばれる、無色透明の頑丈な容器に入っている。
豚の丸焼きはアニメデフォではなく、中華街などで見られるあれが皿でドンと出てきて、うまい棒は考えていた味が全てパッケージごと出てきた。
……あれだ。
この袋、食べ物に関しては一部を除き、制限が無いっぽい。そしてその一部というのが、どうにも空想というか二次系の代物のようで。
ドラゴンボールの仙豆や、蟲師の光酒、ハリーポッターのビーンズなど、色々後から試してみたのだが、欠片すら出る気配は無かった。残念。―――光酒、飲んでみたかったなぁ(追伸・仙豆、ハリーポッターの百味ビーンズは商品化されていますが、現状はスルー)。
そんな訳で、出した料理や酒を調べてみると、酒は味や香りは全く問題なく。豚の丸焼きは流石に袋には収まりきらなかったようで、切り分けしたような感じで大皿に盛られて出てきた。駄菓子系に関しても味も形もしっかりとしている。
この袋の口径が食材の大きさの限界なのだと思いながら、久々のチート能力に内心で歓喜の声を上げる、俺。
しかし、やはりというか、能力を使えば使いほど疲労が溜まるようで、何百品も出してたんじゃへとへとになりそうである。それでも大パーティー一回くらいならいけそうな感覚なのだけれど。
で、わいわいと自己満足的に酒やら食べ物を勇丸と二人で楽しんでいたら、匂いに釣られて諏訪子さんがやってきて、あれよあれよという間に食事担当に。
とはいってもマナも体力も地味に使うので、週に一回だけって制約を飲んでもらった。
ただ一つ気になったのが、【アーティファクト】もそうだが、クリーチャー以外の呪文を維持する体力の度合いが少なく感じたのだ。
コスト2の【ジャンドールの鞍袋】を維持し続けているのが、同じくコスト2のクリーチャーに比べるとあまり苦にはなっていないので、体力が増えたのかそういった制約なのか悩むところではある。
その一件以来、気分が乗らないとき以外は、俺が一から食材を捌いたりして料理やらつまみを提供している。その方が、料理を作る楽しみがあるからね。
何しろ食材は全て一級品を新鮮なうちに用意出来るのだ。いくら俺が単純な料理しか作った事がない独男とはいえ、不味くなる筈がなかった。
食事も後半になり、デザートにと用意していた苺大福とほうじ茶を用意する。
やっぱ苺大福は香川の夢菓房でしょ! ……と思ったり思わなかったりしながら、二人の前に差し出した。
諏訪子さんは目を輝かせて……というか“キラキラ”とか効果音が聞こえそうなくらい光っていらっしゃる。目から星がこぼれそうです。
一方の神奈子さんも嬉しそうな表情をするのだが、諏訪子さんに比べれば反応が薄い。
……そうだった。神奈子さんはこっちよりも別のものが好きなんだった。
ポンと。片手をもう片手に打ち付ける。
隅に置いてあったジャン袋を引き寄せて、取り出したのは、またも大福。
けれど中身は別物で、今度は苺ではなく塩大福。
巣鴨の通りにある、塩大福といったらこのお店。的なポジションになる『みずも』のものを前に置く。
諏訪子さん程ではないものの、何処かその表情が柔らかくなったのを確認しながら、俺は自分用の豆大福(そこらのスーパーで売ってそうな奴)を確保する。
この時代じゃあ、ちゃんとした甘味なんて数が限られている上に、どれも味が単調……微妙(俺の感覚で)だと来たもんだから、この手の食品は実に受けが良い。
美味しそうに頬張る諏訪子さんと、一口一口吟味するように、けれど感じる幸せは隠し切れずにこぼれてしまっている神奈子さんを見ながら、そういえば、と前々から思っていた疑問を口にした。
ちょっと込み入った事だから聞きづらかったんだが、ある程度は親密になったし、こういったまったりの場なら尋ねても良いだろ。
「神奈子さん神奈子さん」
「ん? どうした」
「その、ですね。前々から気になっていたんですが……答え難かったら、それはそれで構わないんで、教えていただければ」
「ほう、私に何を聞きたい。……いや、私“の”何を聞きたいんだ?」
いつも浮かべている不敵な笑み、というものが現れた。
何となく聞く内容が想像ついてんだろうなぁ。
その辺の察しの良さは、流石神様、とでも言うべきか。
恐らく嫌な事を聞く事に対して、ものによっては答えてやる、的な気分になったのだろう。
「簡単に言いますと、ここに侵略を仕掛けてきた経緯が聞きたいんですよ。今でこそ、こうして三人で大福食べる仲ですが、あんまりその手の過去の話とか知らないもんで」
直接本人の口からは、ですがね。
今更語るまでも無い事実として、俺は転生を行っている。
知識として仕入れた東方プロジェクトの設定は多少なりとも目を通しているのだが、神奈子さんの侵略経緯までは知らない。というか見ていない。
諏訪大戦が起こる前に知っていたのならこの戦いを止められたのかもしれないが、全てが終わった今となっては、ただ、俺の興味を満たすだけのものに過ぎない。
「何だそんな事か」
「またもう、あっさりと……。もう少し重めに言って下さいよ。そのせいで俺や諏訪子さんは侵略されちゃったんですから」
「それで何が変わる。せいぜいお前の気持ちくらいだろう? ならば問題あるまい」
「神奈子って、九十九に対してはいつも等閑(なおざり)だよね。他の配下達には、それなりに優しいのに」
「私を神として見ているからな。それに答えるのが我々だろう。それは、お前にも言えるのではないか? 諏訪子」
「そりゃそーだ。九十九ってば私達に対しても……もっとこう、崇め奉るって気概を持って接しても良いんじゃない?」
げ、よく分からん内に俺が説教食らっとる。
「そういう関係になるくらいなら、俺は逃げ出しますよ。あんまり格式ばった関係ってのは好きじゃないんです。………………もう職場復帰とか出来んな(ボソッ」
自傷気味に呟いた言葉に『職場?』と首を傾げるお二方。
すんません、転生前の事なんで流して下さい。
「それより、さっきの話の続き、聞かせて下さいよ」
「お前は物事をはぐらかすのが好きだな。いつかしっぺ返しを受けるぞ」
「うっ……すいません」
強引にやり過ぎちゃいけませんって事か。
しかし、今の俺にはそうでもしないとちゃんとした言い訳なんて思いつかんのだから、勘弁してほしいッス。
「自覚はしておけ。いつかそれが行動に変わる。……さて、この国に攻め入る切欠となった話だった」
ですです。
「とっても、先にも言ったとおり、大した理由は無い。―――国を従える者とは、国の発展を考え、人材、資材、国土を確保するよう勤め上げるものだ」
「えー、より豊かになる為に攻め入った、と?」
「むしろ、それ以外で他国に侵攻する理由が思いつかんぞ。あんなもの、国が発展する行為の1つでなければ、誰がするものか」
前にチラっとバトルジャンキーな面を覗かせていたけれど、やっぱりその辺の分別はしっかりあるようだ。
国の指導者がその性格を前面に押し出すようなら、それこそ民がついて来ず、神などではなく妖怪として名を轟かせるようになるだろう。
「それは、まぁ何と言うか……これからも続けていくんですか? 戦」
「当たり前だ。広い国土とはそれだけで選択肢が増える。当然問題も増えるが、そんなものは些細なものだ。豊かな土壌が国を発展させ、それが強い国を生み、安心して暮らせる場所を作り出す。それは民達が私に従う前提条件。そうでなければ、誰か進んで戦場で命を捧げるものか」
ものの本では、戦争は最も儲かる事象の一つだと書いてあった。
儲かる。という事は、金だけではない。軍事、行政、教育など、様々な分野の躍進も行ってくれる。
一時的には国としての成長率止まる、もしくは伸び悩んでしまうが、戦争が終わった後の……外敵が居なくなり、軍事方面に割く資金を他の分野に回せるようになるだけでも、大分変わるものらしいのだ。
「それは分かりますが……」
「他により良い手段があるのなら、そうしよう。だが現状でそれ以上、国の発展を助長する手段を私は知らない。これを否定したいのであれば、代案を示せ」
そんなん分かったら俺は億万長者どころか世界一の大富豪だわさ!
何だろなぁ、国を戦争より豊かに出来る方法なんて……。
既存の知識や技術じゃ思いつかないし、かといってカード方面に頼るってのは、俺がずっと居るならまだしも、あんまり頂けないよなぁ。
「そう渋い顔をするな。私とて、現状のままで良い、と思っている訳ではない。年に一度、出雲に話し合いの場を設け、それによって他の案を模索しておるわ」
もっとも、良い代案など近年はとんと出てこないが。
そう言って締め括る神奈子さんに追随するように、諏訪子さんが横から声を掛けて来た。
持っていたお茶碗を置いて口を拭う姿が愛らしい。
「そういえば、もうそろそろじゃない? 出雲に出向くのって」
「ん? 出雲って、神様の会議がある、あの?」
何の名称だったか忘れたが、旧暦の十月十日には、年に一度。日本中から八百万の神々が集まり、一週間程、自国の行く末なんかを話し合う会合が行われていた筈だ。
それに赴く、と言っているのだろうと当たりをつけて、尋ねてみた。
「あれ? 九十九って知らなかったっけ?」
「ええ、そういった祭事があるというのは知っていましたが。……神奈子さんは兎も角、諏訪子さんは去年もその前も行ってませんでしたよね?」
「私は代わりの者を向かわせていたからね。そもそも土着神っていうのは、その土地からあまり出たがらない性分なのさ。自身の力が弱まるっていうのもあるんだけど、土地自体の力も弱体化してしまうのが大きい。だから、滅多な事では、ね。私もそうだけど、他の土着神達も、自分達の使いを寄越すだけかな」
そういえば、諏訪子さんはその土地の神なんだった。
というか日本の神って殆どがそれに部類されるんじゃないだろうか。
って事は、その祭事って殆どが代理出席? うぅん、ちょっと残念な気分。
「ただ、今年は流石に私達も出なきゃダメかなぁ。戦の詳細を伝えないと、下手をすれば、報告するまでずっと戦時中、ってなる可能性もあるし。それだと他国からの使者やら商人やらが来難いから」
「戦後間も無くである故、私もあまり動きたくないが、仕方がない。……幸いにして、国の融合はあまり支障が無かったからな。諏訪子のお陰だ。感謝するぞ」
「神奈子がこっちの死者を勇丸以外誰も出さなかったのが大きいからね。ホント、戦で戦死者がほぼゼロってどうなのさ」
「ゆくゆくは我が国の一端を担う者達を、出来うる限り存命させたいと思うのは当然だ」
情けは人の為ならず、ってか。
それを地で行える神奈子さんマジぱねぇッス。
しかし、出雲かぁ。
一度で良いから見てみたいよなぁ、神々の集会。
「出雲の会合って、やっぱり名立たる神々も出席されるんですよね?」
「そうだ。イザナキ、イザナミは勿論、ツクヨミやスサノオなどが常連だな。アマテラスを筆頭に、他の皆がそれぞれ報告やら相談事を持ち込む、といった事が、神在祭の概要だな」
おぉ、一度は耳にした事のある神様の名前がオンパレードで出てきましたよ。
話を聞くに、太陽神のアマテラスが司会進行役で、ツクヨミやらが副司会。イザナキ、イザナミは完全中立のご意見番、といった立場のようだ。
良いなぁ、ちょっと見学させてくれんかなぁ。
日本に生まれたからにゃあ、その国の神話の光景に興味が無い筈が無い!
といっても前々から興味があった訳ではなく、見る機会があるのなら見たい、という野次馬根性丸出しな理由なのだけれど。
……ん? イザナキとかって神様の部類なのか? まぁいいか。
「良いですねぇ。ちょっと見れるものなら見てみたいです」
もしかしたらご同行出来るかなぁー? なんて暗に期待しながら二神に目をやると、諏訪子さんは『どうだろねぇ』的な表情を浮かべ、神奈子さんに至っては至極真面目な顔で考え込んでしまった。
流石に、ただの人間がお偉いさんが集う場を覗き見るような真似は不味いか。
神様の御付の人で~、なんて路線なら“もしかして”と思ったんだけどなぁ。
「……お前は出雲に行った事が無いのか?」
「? ありませんけど……」
不意に、神奈子さんがそう尋ねてきた。
転生前ですら行った事無いですからね。
日本人としては一度くらいは出雲大社とか見てみたかったんですが……って、あ。
「神奈子さん、前にも言いましたけど、俺、神様じゃありませんからね? その辺を考えても無意味ですよ」
どうもこの神様、前々から俺の事をどこぞの神だと勘繰っている節があって、その度に色々と微妙なフェイクや誘導尋問っぽい言葉攻め……? をされているのだが、本当にそういった裏事情なぞ無いので無駄なのですよ。
「今、そう判断した所だ。なに、いずれ外の神とやらにでも、お前の事を聞くとしよう」
って今度は外国な神様路線ですか。
外国って言うよりは、地球外な神という方向性なら合ってるのかもしれんなぁ。
あのカードとかこのカードとか。
神系列で考えるのなら基本はクトゥルフ……だけじゃないか。
変なところで色々な体系が出てきてるから、何処、と当てはめる事が出来んわ。
「……だが、我らについて来れば問題無かろう。出雲に集まった神々は、大概そこに控えている従者達で身の回りの世話をさせているが、先にも言った名立たる上位の神達は、専属の者達を連れて来ているからな。それに習い、お前を連れて行く事も可能だろう」
「あぁー、そういえば、そういった事もあったねぇ。私は殆ど代理に行かせていたから、すっかり忘れていたよ」
「諏訪子……偶には顔を出すようにしておけ。いずれ、お前の神気すら忘れてしまう輩が出てくるかもしれんぞ」
「無い無い。負の感情に私は潜むからね。憎しみの裏に洩矢あり、ってな具合さ。人間が居る限り、私(憎悪)を忘れるという事は無いよ」
「ふむ、想いに宿る神は、そういったところが羨ましいな」
互いの良いところを再認識しているお二人だが、こっちは、ついていけるかもしれない、という選択肢にドキドキが止まらない! ……とまではいかないけれど、内心で期待を膨らませる。
御付の従者路線がまかり通りそうだぜ!
まぁ、色んなトラブルもありそうだが……言っちゃ悪いが、二千年後には全ての神は表舞台から退場している。
最悪、それまで逃げ切れば良いのだし、この出雲の集会が期間限定モノだと来たら、見ない訳にはいかないだろう。
もし行く事になったのなら、何か、その手のトラブルをやり過ごす事の出来るカードを考えておくべきだろう。
―――そのまま話は続き、それの延長線上にあった、この地を統べている神々の話を聞いた。
北から南。西へ東へ行ったり来たり。
あちらの神は信仰が強い、そちらの神は無病息災に秀でている、等々。
全てが新鮮で、どれも興味をかきたれられる物語ばかり。
今まで御伽噺としてしか知らなかった知識を、体験談として聞く機会があるというのは、これまでに無かった面白さの発見である。
気づけば日も完全に沈んだ頃合。
ぐいぐいと神奈子さんや諏訪子さんの話に引き込まれ、あっという間に時間は過ぎていった。