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No.25915の一覧
[0]  †ネトゲの姫が開幕爆死した件† 【SAO二次】(旧題:†ネトゲの姫にはよくあること†)[かずと](2024/03/30 04:37)
[1] 第一話 「始まった二つのデスゲーム」[数門](2011/08/07 19:42)
[2] 第二話 「好奇心は”猫”を殺す」[数門](2011/08/07 19:43)
[3] 第三話 「吾友は病気である」[数門](2011/08/07 19:43)
[4] 第四話 「職人の朝は遅い」[数門](2011/08/07 19:44)
[5] 第五話 「ちーとはじめました」[数門](2011/08/07 19:45)
[6] 第六話 「○○充は爆発しろ」[数門](2011/02/16 13:43)
[7] 第七話 「たまによくあるこんな一日」[数門](2011/08/07 19:46)
[8] 第八話 「危うく死ぬところだった」[数門](2011/08/02 05:50)
[9] 第九話 「目と目が合う瞬間」 [数門](2011/08/02 05:50)
[10] 第十話 「ゲームはクリアされました」[数門](2012/02/27 14:39)
[11] あとがきというか、なかがきというか[数門](2011/08/03 05:00)
[12] 第十一話 「そういえばデスゲームだった」[数門](2012/02/19 22:50)
[13] 第十二話 「虐殺の日」[数門](2011/03/04 11:49)
[14] 第十三話 「信頼は裏切られるためにある」[数門](2011/03/08 10:05)
[15] 第十四話 「ハッピーエンドを君に」[数門](2011/03/09 15:16)
[16] 第十五話 「しかし石碑は事実を告げる」[数門](2011/03/11 06:59)
[17] 第十六話 「そして彼も罠にかかった」[数門](2011/08/07 19:49)
[18] 第十七話 「開かれるは漆黒への道」[数門](2011/08/07 19:49)
[19] 第十八話 「好奇心を”猫”は殺す」[数門](2013/11/20 12:16)
[20] 第十九話「それは見てはいけないもの」[数門](2012/02/19 23:54)
[21] 第二十話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」[数門](2012/03/05 12:25)
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[25915] 第七話 「たまによくあるこんな一日」
Name: 数門◆50eab45e ID:3f0dd04b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/07 19:46
――――――――――――――――――――――――――――――
     第七話 「たまによくあるこんな一日」
――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――
こんなラストバトルは嫌だ
――――――――――――――――――――――――――――――

――あれから、大分時が過ぎた。





「ついに、ラスボスか……」

そう、ついに俺達はきたのだ。

この、全100層からなる浮遊城の最上階まで。
数ヶ月で数千人が脱落し、2年で3000人近くが脱落したこのデス・ゲームも、もう終わりだ……。


「フヒッ……おぬしのおかげで、ここまでこれたですぞ。らぶりーえんじぇるにゃあこどの……」
「俺もお前には助けられたぜ。礼には及ばないさ、魔法少女☆彡萌え萌えみんとちゃん……」
この40手前のおっさんも、大分貫禄がついてきたな……。

「おっと、俺も忘れちゃ困るな」
「忘れるわけねーだろ、フサフサ妖怪さん……」
ちびで若ハゲだが、その強さはホンモノだ。この頭が光り輝く人に、どれだけ助けられたことか。

「ハァハァ……とにかく、これで最後ってわけだ……ハァハァ……」
「美しきロリハンター加藤陽一……。伝説とよばれるアンタに出会わなかったら俺はどうなってたか……」
ネタ名と本名の融合。伝説の戦士加藤。ヒョロメガネながらムードメーカーでもあり、実力者でもある。
引きこもってた彼を仲間に引き入れられたのは、幸運だった。

「「「あとはあいつもいれば……」」」
「……あいつは、俺たちがここにくるためにその身を犠牲にした。
 報いるためにも、絶対に俺達がラスボスを倒すんだ!
 天国で俺たちを見守ってくれ……漆黒闇……えっと、闇なんちゃら…ッ」



「「「「さあ!行くぜ!」」」」


ギィィ……。最後の扉がひらく。


そこに、ラスボスが現れる。
奴らは一人ではない。複数の集団なのだ。あいつらに、どれだけの猛者がケチらされたことか……。
たくさんの仲間が、奴らの前に血の涙を流し、散っていった。


「今度こそ……倒させてもらうぞ!フラグ王……キリト!!!」


奴が姿を現す。その身に、3人の女を纏って。

「「「グッハァッ!!」」」

ああッ早速味方があれをみただけで吐血を!

「アスナ……結婚しよう……」
「うん……キリト君、私をお嫁さんにしてください……」
ロング髪の正統派美少女が彼を抱きしめる。

「ゲボラァッ!!」
「あっ、一瞬で魔法少女☆彡萌え萌えみんとちゃんのHPが空に!
 大丈夫か!おい!40みえても諦めるな!学校の青春が二度と取り戻せなくても諦めるなーッ!!」
「フヒィ……安西先生……それがし……逆に諦めたほうが……グハッ」
「みんとちゃ――んッ!!」
くっ、なんてひどいことを!
みんとちゃん(デブオタ)は、40の年で異性と未だに手をつないだこともないというのに!

「キリト……一緒に寝てくれる?服なんていらない……それよりも肌のぬくもりが欲しいの」
「リズベット……俺でよければ……」
「キリトの髪サラサラ……気持ちイイね……」
ショートの健康的美少女が彼に寄り添う。

「ヒギィ!!」
「アアッ、次はフサフサ妖怪さんが!
 こらえろ!こらえるんだ!まだまだ増毛キャンペーンは実施中!今なら3割引ですーッ!!」
「親とじいちゃんを見たときから、嫌な予感は……ガハッ」
「フサフサ妖怪――――――ッ!!」
許さねえ……ッ。フサフサ妖怪は、25という若さでもう前が死滅して、無理やり横からバーコードをしてるぐらいなのに……ッ!
茅場に戻されたときの衝撃がお前らにわかるとでもいうのか!

「キリトさん……お兄ちゃんって呼んでいい?家族なら、ずっと傍にいれるよね……」
「シリカ……ああ、辛いことがあったら、いつでも頼っていいんだぞ」
なんとも可愛らしい美幼……美少女が脚にまとう。

「カハッ……」
「美しきロリハンター加藤陽一ィィイイ!!歴戦のお前が一撃で!
 生きろ!お前にはまだ二次元がきっと残ってるぞおおおおおお!!……あ、ここも二次元だった」
「ゲホッ!」
うああ、今のでHPが0に!誰がこんなひどいことを!
「ハァハァ……ね、ネタでちょっとやって、すぐキャラつくり直すつもりが……ガクッ」
「美しきロリハンター加藤陽一ィィイイ――ッ!」
ここまでやるか……?
加藤はなあ、顔もそうだし素でもハァハァいってて変質者っぽいのに、名前までこんなんだから全く希望がもてないのに!
その上、本名だから現実世界に戻っても社会死亡はほぼ確定だ!


「許さない……許さないぞキリト……」
「いや……俺に言われてもな……」
キリトが困ったように、頭をポリポリとかく。
おのれ!この惨状をみてもまだいうか!誰がどうみてもお前のせいじゃないけどお前が原因だろうが!
無自覚な悪……!俺が断ち切らねば。

「いくぞッ……」
「ああ、来るなら受けて立つぜ。らぶりーまいえんじぇるにゃあこたん♪」
「読み方変えてるんだね、姫さん♪」「愛舞天使だってー♪」「変な名前ですッ♪」
「ぎゃあああー!」

一瞬で壁まで弾き飛ばされる。集団攻撃とは卑怯な……。だが、これで終わりではない。俺には、皆の想いがつのってるんだ!

感じるぞ……皆の、絶望を!皆の黒歴史が!みんなのトラウマが!集まってくる!
ククク……お前も不幸な過去を持ってるようだが、俺が本当の真の不幸な過去を見せてやる!

真の不幸な過去…… 『何にもなかった過去』 を見るがいい!それとも何もないから見れないか!?

クククどうだこのイベントのなさは!本気で何もないまま終わってしまったぞ!!どうしてくれよう!
この頃を思い出すだけで……うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
力が……力と涙があふれてくるッ……。
変身せよ……俺の体ッ!

「アンギャアアアアアアアアアアアアアアアアス!!!!」

そして顕現する、黒き怪物。

俺はゴジラだ……ゴジラになるんだ!この咆哮……慟哭を食らえ!
俺達は叫ぶことしかできないが、叫ぶことなら誰にも、お前にだって負けない!
いや……負けるはずがない!!!積み重ねた歴史が違うんだよキリトォ!!

俺達の黒歴史ごと粉砕されるがいい!さらばだ、キリト!
これが、俺達の心の叫びだ!!リア充は爆発しろ!!

「エンダアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
 イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

爆発の光が、当たりを包み、そして……







――ガバッ









……。





…………。





………………。



「あれ?猫サン今日は狩りしないノ?」




「うん……今日は丸一日休むわ……。そういえば7ヶ月間、一度も休んだこと無いし……」

疲れてるな、うん……。

俺、基本的には他人の不幸を願う人間じゃないと思うんだけど……。
あと同じ境遇の奴ら集めれるかとかちょっと考えたけど、やっぱ無い方向でいこっかな……。
どんなに胸を張っても所詮は虚勢、リア充の前には砕け散るしかないんだ……。


っていうかアスナとかリズベットとかフサフサ妖怪とか誰なの……俺誰一人知らないんだけど……。
ナーヴギアがバグって、なんか他人のデータでも俺の脳に転送したんだろうか……。

とにかく、今日は休もう、うん……。きっと疲れてるんだ。

一応、地味にこれ以後、この手の夢をみることは減った。

ストレス解消にはなったということだろうか……。








――――――――――――――――――――――――――――――
お気に入りの模索
――――――――――――――――――――――――――――――

……こいつはNPCの店の中で何やってんだ?


「こうかヨ……」

ビシッ

「いや、違う。コウ……?」

ビシィッ!

「こういうのもアリかモ……」

シャキーン!


(……そろそろ声かけようかな)

「……なあ漆黒、鏡の前で何やってんの?」

「あっ、猫サン……!い、いつからみてたヨ?」

「シュババババッ!あたりから」

「ほとんど最初じゃないかヨー!いるなら……!」


いるなら、言えとか?
流石に勝利ポーズ練習を覗かれるのは恥ずかしいのか。


「一緒にやろうヨ!2人だとグッとバリエーションも増えるネ!」

「誰がやるか!」


こいつは本当にブレないな。

俺が甘かったよ。

「さらにゴーくんも加えればもっとバリエーション増えるヨ!」

「もうわかったから!」



――――――――――――――――――――――――――――――
こっそり
――――――――――――――――――――――――――――――

深夜、闇の中に影が一つ……。

「こいッ……ゴーくん!」

俺の背後に、ゴーくんが出現する。

「憑依……!オーバーソウル!」

俺にゴーくんが重なり、未知なる力が引き出される!

……気がする!

「合体ッ!」

……。

…………。

………………。



シーン……。



――――――
――――
――



「アレ?猫サン、何やってたノ?」

「いや、もう寝るとこ」


やっぱないか……



――――――――――――――――――――――――――――――
何気ない会話「決め台詞」
――――――――――――――――――――――――――――――

「やっぱり、『つまらぬものですが切ってしまいました……』ダヨー」

「『悪・即・斬!』も捨てがたいと思うんだが……
 あと、つまらぬものを切ってしまった、だろ。お歳暮かよ」

「『我が剣に……切れぬものなし』もイイヨー」

「分かってるねえ……。
 槍だと『我が槍に貫けぬものなし』だなー」

「異性のハートは貫けないのにかヨー」

「今思いだしたんだが『てめーは俺を怒らせた』……というセリフもいいよな」

「こ、こんな部屋にはいられないヨー!先に帰らせてもらうヨー!」

……それは死にたいとうけとっていいんだよな?
ミステリーな死亡フラグ的に。




――――――――――――――――――――――――――――――
なんでもない会話「決まる格好」
――――――――――――――――――――――――――――――

「オリジナルスキル欲しいヨー。『九頭竜閃!』と叫んで、何度もぶった切った後に
 カタナを収めて、チンっっていう音と共に敵が粉砕……しびれるヨー」

「カタナは主人公武器が多くて優遇されてるよなー。
 やっぱ納刀ってのがいいね。槍は、そういうモーションがないし」

「だしっパで、片手にもちっぱだもんネー。邪魔にならないかヨ?」

「正直、超邪魔です。ずっと片手ふさがりは不便だし。外にいるからいいけど、街中の奴はどうしてんだろ」

「アイテム欄にしまってるのかもヨー」

「無手ってのもそれはそれで格好つかねーな……
 斜めに担いだこともあるんだけどさ……
 全然とっさのときに構えにいけないんだよな」

「Oh・・・」

斧使いもそうだけど、皆どうしてるんだろね?
マジで謎。






――――――――――――――――――――――――――――――
どうでもいい会話「ifの未来」
――――――――――――――――――――――――――――――

「まあ、その意味では、このゲーム、魔法がなくてよかったよ」

「何故ヨ?」

「そうだな。もし魔法があったら……例えば、それは杖とかからでるだろう」

「そーだネ」

「そしたら当然『スターライトブレイカー!』とか『ふたりは~プリキュア!』とかやりたがる奴もでるわけだ」

「hm」

「そしたら、当然、衣装や名前も……、う、うわああああああ!」

「ああッ、また猫サンのトラウマスイッチが!」

やめろおおおお!
魔法少女になれるなんて事前情報が流れてたら、
今とは比較にならない阿鼻叫喚率にいいいい!




――――――――――――――――――――――――――――――
ソロ指導
――――――――――――――――――――――――――――――

「さて、引き続き問題だ。あそこに宝箱があるな。漆黒一人ならどうする?」

「当然空けるヨー。ダンジョン最奥の光り輝く宝箱!きっとレアだヨー」

「大外れだ。ああいう宝箱は無視しろ。ソロじゃ死ぬぞ」

「も、勿体なくないカヨ?」

「今のお前のLVじゃ、ここの敵を同時に10体相手は無理だ。ということは罠があったら一発。
 どんな宝でも生命のリスクと引換にはできん。全く勿体無くない」

「デモ、もしレアだったら……宝箱光り輝いてるシー」

「あけれない宝箱にもしも糞もない。いいか、この宝箱、考えうる最悪の配置なんだ。
 まず行き止まりに配置。出入口は狭く、その上部屋。つまり脱出しにくく囲まれやすい最悪の形。
 次に今の手持ち。ダンジョンの最奥まできたせいで回復剤が減ってるはず。コレも一つ。
 で最悪なのが、結晶無効化空間だ。これが一番ダメだ。これ一つで諦めるほどな。緊急離脱や緊急回復が効かない。
 これで麻痺や睡眠トラップ+偶然に敵が大量ポップとか、瀕死ダメージトラップ+敵湧きや
 アラーム系や敵召喚トラップだったら、お前十分に死ねるぞ」

「Oh……」

「ソロの鉄則は、各個撃破。逆に四面楚歌は絶対に回避。宝箱といえどこれが基本だ。
 あと退路はどんな時でも確保。できないときは退路があるとこまで退避。
 それでも空けたい時は、ゴミ結晶アイテムを使用して有効かどうか判断。無効時は絶対手を出さない。
 付近のモンスターは殲滅させておいて、なんかあったら即出口までダッシュできるようにして、やっとあける。
 そんなとこだ」

「覚えること多いネ~」

「これでも語り足りないぐらいだがな……。特に、結晶無効化空間かどうかは、普段も常に把握しとけよ。
 何でもなさそうなところが普通に無効だったりするからな。ソロの天敵だ。
 そうだなあ、基本的に、そこのフロアの奴が10体同時に周りに集まってもなんとかできる自信があるならまあいいかな。
 回復もちやバステもちは複数になるといきなり強さ変わるから、それも勘定にいれろよ。
 そこらへんがラインだ」

「じゃあ、この宝箱は実際どうするノ?」

「まあ、今回は俺もいるし、20体ぐらいまでなら平気だろ。ソロだったら絶対無視しろよ。
 低層のレアより中層の通常ドロップだからな。
 だから、空ける……けどちょっとまった!まだ空けるな!」

「ど、どうしたヨ」

「色々準備があんだよ。周りの敵は殲滅したから問題ないな。地図は覚えたか?
 もし囲まれたら脱出するルートだ。あそこの通路通って右に抜けてワープするぞ、いいな。
 次、耐麻痺POTと、耐毒POTと耐睡眠POT飲んどけ。あと、HP満タンだが全快POT飲んどけ。
 あと俺が空ける……5分後に」

「どうしてヨ?」

「ダメージトラップや瀕死罠だった場合、一瞬で回復する結晶が使えないからな。回復POTの効果は5分後だ。
 その効果発動時間直前に回復するように時間合わせて空ける。
 ……罠の中には無効化空間にするのもあるから、全部この対応でもいいぞ」

……そして4分半が経過する。

「よし、空けるぞ……グアッ!」

開けた瞬間、中から何かが飛んできて体力を削られ、その直後、ポリゴンの粉砕音が響く。
……宝箱が粉砕した音だが。俺のHPはPOT効果で既に回復している。
ダメージ&アラームトラップか。もう終わったけど。

「アラームの対処は、宝箱そのものの破壊だ……っていうか、宝箱は基本的に開けたら即破壊していい。
 アラームならとまるし、他のだとしても弾かれるだけでペナルティはない。
 それより、敵がくるぞ。すぐ粉砕したからそれほどでもないようだけどな」

……敵の数は8匹か。入り口塞がれてるが、まあ余裕だな。

「よし、いこうか、漆黒」

「おうヨ!猫サンのお尻は任せるネ!」

「背中だからね?人前で間違っても間違うなよ?」

あと、別に二正面からきてるわけでもないのに、後ろ守る必要あるのか?


しかし、無意識にやってる対策が色々あるな。
ソロのイロハを教えきれるのはいつになることやら。

ちなみに中身は、そこそこのレア度の……『胸防具』だった。
やったーといいたいが……とっくに持ってるんだよなこれ……。

気合入れて買ったカードゲームのパックのレアが、全部ダブりだった気分だ……。
こういうのがあるから、あんまり空けるのにこだわってもしょうがないんだよな。







――――――――――――――――――――――――――――――
皆やるとおもう
――――――――――――――――――――――――――――――

ゴクリ……俺は、俺は、今、人生最大の葛藤に直面していた。

成功すれば、それは無限の富……。
だが失敗すれば、地獄へ一直線……。

ちょっとだけ踏み込む、という手はない。

やるか、やらないか。

0か、100かなのだ。

俺のLVは十分だろうか。挑戦は一度きりだ。
今回は低かったからもう一回。はできない。
失敗したら、未来永劫挑戦権はない。

あたりを見渡す。

誰かはいる……。街中だから仕方ない。
ここにこないことを祈るのみだ。
幸い、近くにはいない……。

ゴクリ……。

そして、手を……。


出せない……ッ!


くそっ!

こういうとき!ソロじゃなければ!
ソロじゃなければ、俺は救われてるのに!
たった一つの情報でいい!俺はそれだけでいいんだ!

でもソロじゃその情報を手に入れるのに生命をかけなきゃいけない!
ソロじゃなければ、まず手に入ってる情報なのに……。

一人になってから、おそらく一番、後悔したかもしれない。
もしこれがクリアできるなら、街中に恥と引換に残っても良いと思うほど。


い……けない!

くそ、俺はこんなにもチキンだったのか……。


葛藤すること、30分……。

ついに、ここに……店の中に、人が入ってきてしまった。

とっさに外にでて、隠れる。くそう……俺は、俺はチキンだ……。
窓の外から、こっそりと中を伺う。

だが、店に入ってきたそいつは、何も買う様子がない。
そして、やたらと周りを気にしている。明らかに挙動不審。
これから怪しいことをしますよといわんばかりだ。

まさか、こいつ……。

俺の想像をなぞるように、そいつは行動を起こす。

そろり、そろり……。
ギリギリまで、安全圏のギリギリまで、近づく。

そして、本当にギリギリまできたとき、ついに行動に移した!

(!!……早い!!)

俺の眼にもとまらないほどの速さで、奴の手が動く。
なんという高LV……しかも間違いなく敏捷極振りだろう。
超俊敏に、超高速で、神速の手が目標物に到達する。

そして、その手ががっしりと目標物をつかみ、すぐさま離れようとしたとき!

【警告を無視。ハラスメントフラグが立ちました。強制的に黒鉄宮へ転送します】

アラート音。そして、システムメッセージのあと、

        ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
NPC店員のおっぱいをつかんだ男は、華麗に転送されていった。


SAOにおいて、NPCは基本的にさわっても大丈夫なのだが、
そうすると変態はいるもので、いつまでも触りたいという奴もでてくる。
SAOは発散場所ないからね……。

だがそんな変態のためのシステムも万全。
長く触り続けるとアラートがでて体が不快な衝撃と共に吹き飛ばされる。
移動制限もあって、一定以上の距離を移動すると元の場所に戻ってしまう。
お持ち帰りしたいだの一緒に寝たいだの言う奴のための対策だな。


しかしさらなる変態もいる。何度吹き飛ばされてもいいから、触りたいという奴だ。
もしくはシステムの穴をつく。触る→離すを繰り返すのだ。アラーム中に離せば問題ないのだ。
ま、個人的には好きにしろと思ってるが……。

だが、何事にも例外はある。それが胸と尻だ。

ちょっと揉む→すぐはなす→を繰り返せば永久に揉めるのではと考えるのだが……。
この部位だけは、警告でるのが超早い。そして、対処も吹き飛ばしではない。
黒鉄宮にいきなりすっとばすのだ。恐ろしい。俺がいったら詰みだ。

警告→転送がどのくらい早いかというと今みたぐらい早いようだ。
つか今の速度だと、事故で転送されてしまわないか?
だが、事故で触ったときは大丈夫なのだ。何でAIは区別してるのだろう?
純粋に接触時間?奴もそう考えたのだろうか。
それは失敗したようだ。胸は異常に時間が短いのか。それとも即OUTなのか。


今の状況をみるに、ソロ以外の人らでも、NPC攻略はまだできていないらしい。
事故と故意をみわけているのだろうか。どうやって……?


それにしても、今の奴の空気は、歴戦の戦士がまとうソレだった。

もしかすると、NPCの服を突き破ってしまうのではないか?そんな迫力すら感じさせた。

奴は再び舞い戻り、また挑戦するのだろう。
AIである以上、必ず何かの隙はある……。



トライ&エラーを、奴は……いや、奴らは、それまで繰り返すのだろうか。


ふっ、俺ごときの情報力やLVじゃ、あいつには太刀打ちできないな……。
何の情報ももたない俺が攻略しようなんて、思い上がってたな。

身の程を知ったぜ……。


俺は誰もいない店の中を再度振り返り、いっそ清々しい気分で立ち去った。

これは、ある漢たちの戦いの記録。
それは誰にも記されることはない……。


イイハナシダナー?





――――――――――――――――――――――――――――――
暇な時間
――――――――――――――――――――――――――――――

「じゃ姫……もとい、猫サン、拙者は今日は上がるヨー」

「あいよー。俺はまだ狩ってくんでなー。あと次に姫って呼んだら殺す」

そして数時間後……。

――――――
――――
――


「……ふう」

今日もたくさん狩った。狩りも狩ったり連続12時間っと。
しかし……漆黒は俺が狩りしてる間、暇にならんのかね。

あいつはLVあげはそこそこついてくるけど、スキルとかは結構放置してるからなー。
正直俺のペースのほうが異常だから、別に好きなペースでやりゃいいとは思うが、
実際暇になると思うんだけどな。
俺と違ってあいつは街にいくけど、俺のいいつけどおり、あんま長居しないはずなんだけどな
(……あいつを長く街で買い物されると、余りにも簡単にカモにされそうでな……)。

あんまりあいつが暇を持て余すようなら、解散してもいいんだが……。
もうソロでやってけるはずだし。
漆黒がそれを言い出したことは一度もない。

……ふむ。今日はあれだな。
ちょっと狩りを中止して、漆黒を追いかけてみるか。
いつもはメッセージを送って、狩り終了を知らせているが、こっそり近づいてみよう。


キャンプ張ってあるところから、ちょっと移動したところでなんかやってるな……。

……さてさて。

――――――
――――
――

「ハァー!!牙突ゼロスタイルーッ」

「グハッ……コレホドマデトハ……」

「フッ……拙者の飛天三刀流に挑むには一昨日早いネ……。
 顔を磨いて腕を洗って出直してくるヨ」

「グヌヌ……だが、それがしのアバン流デンプシーロールが破られたわけでは無いネ!
 いつかお主の横っ面にカエルの小便を叩くヨ!」

「ヨカロー!だが、拙者はまだ3人分の変態を残してる事、忘れちゃダメネ!
 メイド喫茶のお土産に見ていくといいヨ!」

なんて嫌な残し方なんだ……。そう言いながら漆黒は懐からアイテムをとりだし、地面に叩きつける。
煙幕アイテム。数秒ほど、漆黒が煙でみえなくなり……。

「ヘシン!!」

今の間に装備をつけかえたらしい、漆黒が、コスチュームも新たに立っていた。

「コレで……私の戦争力は53万人分ヨ!人類は滅びるヨ!!」

「な……ナンダッテー!!!ノストラダムス!!!」

それを形容詞のように使うのはおかしい。名詞だぞ、何故か間違ってない気もするけど。

「まだ俺のターンは続くゼ!ドロー!パチモンスターカード!ビカチュウを召喚!ビ、ビガアア!アゥア!」

おいやめろ、それはいろんな意味で危ない。しかもそのパチモン、なんかヤク中はいってないか。

「甘いネ!モンスターボール!よっしゃア!バケモンゲットダゼ!」

おいバカ真実をつくな。確かに半分ぐらいはバケモンの域だけども!



……ハッ

気づいたら突っ込みを……いけない、このままでは声に出てしまう。

……俺はそっとその場を後にした。

――
――――
――――――


……うん。

まあ、いいんじゃないかな。
突っ込みどころが山を集めてさらに山をつくりましたぐらいあったけど、まあいいんじゃないかな。
あのままずっとみてたら、一つ以上の山脈ができてたね。まあいいけどね。

気づいたら突っ込んでたし。
毎度思うがあいつの間違い方は紙一重すぎる。ある意味間違ってないというかなんというか。
せめて声まででなかった俺を褒めてくれ。

既に分かってると思うが、上の掛け合いは全て漆黒の一人芝居だ。
うん、でも、まあ、俺が言うことじゃないよね。

あ、でもああいう変身ネタとかあるんだな……いやいや。見られたら恥ず過ぎだろ。

……でもあいつ、俺との修行差分の時間はトータルすると
何十時間も何百時間もあると思うが全部あんなことやってたのか……。

何百時間分もの一人漆黒ショー。

よく飽きないな……。いや、飽きないから漆黒なのか……。

あんなもん、もし人に見られたらどん引きされるぞ……。
でもあそこまで突き抜けてると、逆にずっとみたいような……みたくないような……。



少なくとももしずっと現場にいたら俺は突っ込みだけで喉が死滅するのは確かだろうな。

まあ、休みに何をやってるかの謎は解けた。うん、解けたけどさ……。

金田一のじっちゃん……謎は全て解けても、スッキリするとは限らないんだね……。
















でも、ストレス解消には結構よさそ……いやいや、ちっとも思ってないかんね。

――――――――――――――――――――――――――――――
第七話 「たまによくあるこんな一日」   終わり
第八話 「危うく死ぬところだった(猫視点)」 へ続く



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