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No.25915の一覧
[0]  †ネトゲの姫が開幕爆死した件† 【SAO二次】(旧題:†ネトゲの姫にはよくあること†)[かずと](2024/03/30 04:37)
[1] 第一話 「始まった二つのデスゲーム」[数門](2011/08/07 19:42)
[2] 第二話 「好奇心は”猫”を殺す」[数門](2011/08/07 19:43)
[3] 第三話 「吾友は病気である」[数門](2011/08/07 19:43)
[4] 第四話 「職人の朝は遅い」[数門](2011/08/07 19:44)
[5] 第五話 「ちーとはじめました」[数門](2011/08/07 19:45)
[6] 第六話 「○○充は爆発しろ」[数門](2011/02/16 13:43)
[7] 第七話 「たまによくあるこんな一日」[数門](2011/08/07 19:46)
[8] 第八話 「危うく死ぬところだった」[数門](2011/08/02 05:50)
[9] 第九話 「目と目が合う瞬間」 [数門](2011/08/02 05:50)
[10] 第十話 「ゲームはクリアされました」[数門](2012/02/27 14:39)
[11] あとがきというか、なかがきというか[数門](2011/08/03 05:00)
[12] 第十一話 「そういえばデスゲームだった」[数門](2012/02/19 22:50)
[13] 第十二話 「虐殺の日」[数門](2011/03/04 11:49)
[14] 第十三話 「信頼は裏切られるためにある」[数門](2011/03/08 10:05)
[15] 第十四話 「ハッピーエンドを君に」[数門](2011/03/09 15:16)
[16] 第十五話 「しかし石碑は事実を告げる」[数門](2011/03/11 06:59)
[17] 第十六話 「そして彼も罠にかかった」[数門](2011/08/07 19:49)
[18] 第十七話 「開かれるは漆黒への道」[数門](2011/08/07 19:49)
[19] 第十八話 「好奇心を”猫”は殺す」[数門](2013/11/20 12:16)
[20] 第十九話「それは見てはいけないもの」[数門](2012/02/19 23:54)
[21] 第二十話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」[数門](2012/03/05 12:25)
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[25915] 第三話 「吾友は病気である」
Name: 数門◆50eab45e ID:3f0dd04b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/07 19:43
そこに向かったとき、あちらからも近づいてきた。
人数は4人。

俺は木の影に潜み、暗褐色のマントを覆う。
深夜の森マップにおいて、自分の隠蔽スキルの高さもあり
すぐとなりを通ってもまず気づかれまい。

そして潜むこと数分。

そうとは知らず、6人のプレイヤーが会話しながら横を通り抜けていく。

こいつら……DQNだな。間違いない。

「いやあ、アレはやばかったな」
「俺らは別にヤバくねーだろ、あいつは知らねーけど」
「おいおい、ヤバかったんじゃなくて、ヤバくしたんだろーが」
「まーな!」

茶髪長髪のリーダーっぽい奴を筆頭に、4人は
ギャハハ!と下品な笑いをたてながら通りすぎていく。



……嫌な予感がする。

俺の嫌な予感は当たるんだよな……。

別に正義漢を気取るつもりはないが……。
何があったかを見るぐらいは構うまい。

俺は、即座に彼らが現れた方向にかけ出していった。




――――――――――――――――――――――――――――――
     第三話 「吾友は病気である」
――――――――――――――――――――――――――――――






間一髪。




その状況を単語で表すならそうなるだろう。

俺は見事に、その瞬間に間に合った。

そう、人が死ぬ瞬間に。


俺がたどりついたとき、その黒ずくめのやつは
5体ものモンスターに追われていて今にも背後から最後の一撃をくらわんとするところだった。

あれはヤバイ!

(――あのままだと死ぬ!)

俺は人にバレてはいけない、という自らの縛りを瞬時に忘れてその渦中に飛び込んだ。

「伏せろ!」

声をかける。
そいつが伏せるのと、その頭上を俺の槍が通過し、モンスターを粉砕するのは同時だった。
これで残り4体か。

「そんな瀕死で何やってる!回復はどうした!」
「モッテナイ!」
「……!」

(ありえんだろ!)

そう思いながらも、体は冷静に反応。
俺はアイテム欄から素早く操作を行うと、複数の回復POTを相手に投げ渡す。

「飲め!そんで退いてろ!」

「助カル!」

ん?
そこで違和感をやっと感じ、チラッとそいつを見る。
外国人?
いや、間違いない。この風貌はそうだ。一体どこの……

ヴォン!

ちょっと考えに沈んだ俺に、敵の攻撃が額をかすめる。考え事はあとだな。

ざっと敵をみる。ある程度は敵もHPが減ってるようだ。こいつも頑張ったということか。
しかし、多対一の鉄則は、均等に削っていくのではなく一人ずつ確実に仕留めていくことだ。
やり方を誤ったな。

しかし、逆にここまで減ってるなら、俺一人でもなんとかなるな。

逃走から、殲滅へと選択肢を切り替える。

立ち止まった俺に、突っ込む勢いもそのままにクマ型のモンスター2体が手を振りかぶって攻撃してくる。
火力が高くても、こういうリーチの短い奴らは、槍のカモだ。
彼らの切り裂きのはるか手前から、額に向けて槍を突き出す。

「トライズゲイル!」

喉・人中・額の3つ急所を攻撃する神速の三段突き。余りに速すぎて同時に見えるそれは、
さる有名な幕末志士が得意としたという。剣でだけど。

このゲームでは人型や哺乳類モンスターに特効だ。目の前のクマとか。
クリティカルヒット。まだレッドゾーンの体力ではなかったが、一撃で粉砕。

すぐ槍を引く。もう一体のクマも槍の射程内。だが、あえてそいつは無視する。

猿型のモンスターが頭上から襲いかかってきたからだ。敵の攻撃が俺の肩にヒットする。

「ぬ」

チッ、攻撃を被弾してしまった。すぐさま距離を取る。
この猿型は攻撃力も低く、単体の性能は余り高くないが、中々狡猾なAIをもっていて
奇襲や陽動をよく使ったり、群れできたりする。

いやまてよ、陽動……?確か、もう一体モンスターがいたはずだ。そいつは今?

嫌な予感に、すぐ後ろを振り返る。すると、案の定、背後のプレイヤーに、頭上から猿が襲いかかっていた。

まずい。

「おい、上だ!」

だが、心配は無用だったらしい。俺が叫ぶのと、頭上から振りかかる猿が切り裂かれる音がするのは、同時だった。

「タイマンなら、大丈夫ネ」

……そこそこの強さはあるということか。安心した。体力もレッドゾーンは抜けだしたようだ。

「じゃあ、まかせるぜ?」
「OK!」

さて、あとはじゃあ、猿とクマか。2体程度なら、普通の狩りとなんら変わらないな。

俺達は危なげ無く、残るモンスターも撃破した。


――――――
――――
――


「アリガトーネ!助かった-ヨ!あなた生命の断つ人ネ!」

「いや、いいよいいよ。危なかったな。あと、恩人ね。イントネーションもちょっとなんか違う気がするし」

「お礼、するネ!お財布ギャランドウだけど、それ以外ならなんでもいってネ!」

「いやいいって。そういうの目当てでもないし。
 あと、がらんどうね。そんな毛深そうな財布はいらない」

「本当?あなた、すっごくいー人ネ!お名前教えてもらえるかヨ?」

ビシィッ

俺の表情が凍りつく。
そーきたか。まあ、そーくるわな。
うん……。

「あ……ええと……だな。俺の名前は……だな」

「あ、ちなみに拙者の名前はこうヨ!」

人に振っといて、話飛ばすな。俺の名前聞けよ。いや、聞かなくていいけど。

奴はステータスウィンドウを開き、俺に自分の名前欄を見せる。

いいねえ、気軽に名前見せれる奴は。俺なんて……。って!

ううッ、こ、この名前は……ッ。

「で、名前教えてほしーヨ」

そっちも忘れてなかったのか……。

……どうする?絶対に見せたくは無かったが……。
もしかすると『こいつなら』平気かもしれん。

いやッ、男は度胸。こいつも、公開したんだ。俺も……。

ステータスウィンドウを開き、俺の名前を開示する。
嘘の名前を教えてもいいが……その後にシステムメッセージで
本名が流れたら嫌すぎる。素直にみせるとしよう。

「んーコレ、なんて読むの?あいまいてん……」

「ま、まーまー!名前なんてフルで呼ばなくていいじゃないか。
 あだ名で!そう、愛称で!あと、俺の名前は絶対に人にはいわないでくれ。
 っていうか、存在を言わないでくれ。いいな」

「別によいけどヨ。でもナンデ??雪女ナノ?」

「違えよ!よくそんな民族伝承しってるね!日本人でもきょうび知らないのに!
 女の名前で、俺がそれ言いふらされたら、凍っちゃう、って部分はあってるけどな!
 って何言わせんだ!単に超恥ずかしいからだよ!」

雪女の民族伝承とは、紆余曲折あって自分の事を言いふらしたらダメ、という女と一緒に住んだはいいけど
バラしちゃって結局凍らされたという話だ。

「……コホン。テンションあげすぎた。まあ、お前も同類だろうから、分かってくれ」

「セッシャの名前、別に恥ずかしくナイヨ」

「ねーよ!」

とっさに口にだしてしまった。ああッ、俺のクールキャラ(笑)が崩壊していく。

いや、その名前でそれはないだろ。

こいつのステータスウィンドウを再度注視する。



【漆黒闇聖闘士†炎の吹雪(FireSnow)】




色々LV高すぎだろ。流石の俺も引くわ。

漆黒と闇ってかぶってるんじゃないのとか。
闇と聖が同時に名前にあるのってどうなのとか。
それがいいんだろうとか言われそうだけど、ないから。
何、聖なる力をもちつつ闇にも見込まれたとかそういう両方欲しいみたいな設定なの?
あと、闘士ってのも地味にポイント(なんの?)高いよね。
あえて剣士や騎士じゃなくて、闘士。
こいつはカタナ使いなのに闘士。
これはポイント高いよ。

さらに「†」。
俺が言うのもなんだけど、厨ニ御用達。
名前被りでもないのに、記号が入ってるのは強い。
しかも記号の中で最強(多分)とされる【†】ですからね。
単体でどうこうではないが、一気に何かのポイントが倍になるクセモノだ。

次いでセカンドネームというか、称号というか。
ていうか、これどっちが名前でどっちが称号なんだよ。
つか名前がねえんだけど。
しかも炎の吹雪って。
そのとりあえず正反対をあわせ持つ俺カコイイみたいなのやめようよ。
大体、対比は2つにしとけよ。4つは多いよ。結局、光と闇と炎と氷どれなんだよ。
全部、とかいいそうだけど。
さらに【(FireSnow)】ですよ。これって読み方でしょ?
普通ここってカタカナが入るんじゃないの。さらに英語とかワケ分からん。
それに炎のファイアはともかく、吹雪ならブリザードじゃないのか。

大体長すぎだろ。一々これ全部読むのかよ。
ファイアスノウはどこまでかかってるんだよ。
そもそも素でここまでなるか?なったとしたら重症すぎる。
わざとじゃないんだろうか?

でも、俺の勘が告げる。こいつは素だと。
素でやってる。

それにさ。なによりもさ。

これでイケメンなら華になるけどさ。

どうみてもイケメンじゃないし。

んーあれだな。外人だからって美形とは限らんよね。
なんつーか、まあ普通?南米っぽい感じ。なんとなくだけど。

それに、なんかオタっぽい。見ただけで分かる。

そうだな。まずその指穴あきグローブはやめよう。そんなのSAOにあったんだな。
ついでに、全身真っ黒なのも!肌も黒めだからって服までそうしなくても!
えっ?どっかのMMO小説の主人公も黒い?あれはイケメンだからいいんだよ。

丸メガネも四角のほうがいいんじゃないかな。
っていうか、何故SAO内でメガネ。視力関係ないぞこのゲーム。知的クールキャラ?

そういうのはちょっと君には似合わないから!そういうのはイケメン限定な。全般的に。
メガネに注目した途端、クイッって中指であげるし。
ウゼエ。

いやいいんだけどね。外見に関しては。俺自身も、オタっぽいと思うし。
この世界では、みんなオタというかコスプレイヤーっぽいから余り浮かないけども。
俺も、実は目隠しのマスクとかあるし……。
あ、いや、カッコイイからとかじゃなくて、あくまで外見を隠すためだかんね!


まあ、あれだよ、普通だったら俺もそんなに外見に突っ込まないけどさ。名前と人種の相乗効果というか。
名前の破壊力がありすぎて、狙ってやってるようにしか(ある意味狙ってるだろうが)見えないんだよな。

なんか仕草もさ、なんか知的キャラ?っていうか。ダークキャラというか。
それを意識してる感じだが……どうにも見た目からして浮いている。
そこはかとなく感じる生来の陽気さや脳天気さが全てをダメにしているというか……。

どうやったら、一行の名前だけでここまで突っ込みどころを増やせるんだ?

つうか重症すぎだろ。思わずブラックジャックによろしくしちゃうぜ。


「先生……うちの息子が、病気なんです。中学二年を過ぎても治らなくて。どのお医者さんもさじを投げて……」
「ふむ……確かに手遅れですな。私以外では直せないでしょう」
「先生!じゃあ……ッ!」
「ただし、治療費に三千万。貴方にそれが払えますかな?」
「先生、よく考えたら私にこんな息子はいなかった気がしますの」
「その言葉が聞きたかった……」


ああっ俺の脳内医師が敗北を!
「その言葉が聞きたかった……」じゃねえよ!見捨てる気満々だ!
なんという強敵……。

まあ、あっちも俺の名前と風貌に関して同じことを思ってる可能性も低くない。
突っ込んでもいいが、わざわざバトルを誘発することもないだろう。

お互いに傷つけあい、勝利者のいない戦いになること請け合いだ。
俺は明らかに恥を自覚してるが、あっちはどうだか分からないという違いはあるが……。

いや、この名前で恥ずかしくないのはダメだろ。
突っ切りすぎて逆にカッコイイとか?いや、ないな。
やっぱり、ねーよ。というわけで俺はただしい。

……ここまで0.5秒ぐらいで考えた。

まあ、こいつの名前がこんなんだから、俺もさらけ出したというのはあるが……。



「まあ、突っ込み度合いはおいておいて……事情を聞いてもいいか?」

「ジョウジ?」

「あんた外国の人だろ?なんでやってるか理由聞いてもいいか?
 それとこっちのほうが重要なんだけど……なんであんな危険な状態になった?
 あと、ジジョウね。逆にすると一気にホモくさくなるからやめようね」

片言とはいえ、やたら日本語ペラペラだし。
一応、リアルのこと聞くのはどうかと思うけど、聞いてみよう。

それに、何故あんな死にそうな目にあったかははっきりしとく必要がある。

こいつはソロじゃない。9割型、あの4人と関わりがあるはずだ。

しかも会話の内容からすると……ある種意図的な。


そして、彼の口から語られた内容は、それを裏付けるものだった。


――――――
――――
――

なるほどな……。

まず、なんでプレイしてるかだけど、まあ要するにこいつは重度のゲームやアニオタだってことだな。
日本語も、アニメや漫画をみながら覚えたらしいし。
こいつの話し言葉がさっきからやたら突っ込みどころ満載なのはそのせいか。

この名前も、漫画とかでかっこいいと思ったもの全部くっつけたそうで、本人はとても満足してるらしい。
……ノーコメントで俺は行こう。

彼個人は、中国人とアメリカ人のハーフで、アメリカで育ったらしい。
さらに祖父が日本人で祖母が南米系らしいな。色々まざってんなー。
それで、まあ生活のうちに、漫画とかにドはまりしたと。
そして、日本好きが高じてってわけでもないが祖父を頼って中三からこっちにきたらしい。
一応勉強のためという名目で。それでSAOやってれば世話はないが……。
まあこうなるって分からないもんな。しかし、どうでもいいけど俺より年下なんだな。

そんで、肝心のさっきのピンチについてだが……結論からいうと、やはりというべきか、どうもハメられたようだ。

元PTのやつらとは、一応半年前……ログイン時からの付き合いらしい。
まあ普通にPTプレイしてたところに、事件が起きたと。

ただ、問題はその後だ。どうも話を聞く限りだと、
こいつが、世間知らずで人が良いのをいいことに元PTの奴らは、かなり良いように扱ってたようだな。
PTでの役割を聞いたが酷いもんだ。囮として放りだされるわ、壁役として立たされるわ。
そのくせ戦利品は取り上げられ、EXPもほとんど吸わせられず、PT収入も分担されない。
そんな感じで、やってきたらしいな。
ただ、そんなばっかだと、当然LV差が開く。

それでこいつは、LV差を埋めるために、深夜に一人で狩りに出かけてを
繰り返していたんだが最近バレたらしくて、ついてこられたと。
そしたら、LV上げに協力してやるという名目で、アイテムに頼ったら強くなれねえだろというお題目の元、
回復POTや転移クリスタルを取り上げられ、さらに経験値が欲しいだろうとのことで、
モンスターをたくさんひきつられてこれたという。

そして、俺との出会いにつながるというわけだ。

長い長い話だったし、片言で話す上にしょっちゅう話がそれるうえに聞き取りづらかったがようやく終わった。


まあ彼は自身ではそういう、酷い扱いをうけていたという自覚は余り無いようだが……。


しかし……それをさしひいても。


胸糞悪い話だな。


はっきりいって、他人事ながら気に入らん。日本人の恥だ。
死ねばいいのにとまではいわんが、HP0になってポリゴンがパリンッってなればいいのに。


お題目はどうあれ、これはイジメっ子による、イジメの極地。
れっきとしたMPK……PK(プレイヤーキラー)だ。
オレンジネームにならない分さらにたちが悪い。

やってるほうはイタズラ気分かもしれんが、クソが。

あいつらは見た目からしてDQNだったが、聞いたら超DQNだったな。

まあコイツのこの名前に自業自得的な部分があるとはいわんが……。
でも責められることではないだろう?
俺も責める気にもなれん。楽しみ方はひとそれぞれ。別に犯罪でもないし。
だが、奴らがやったのは紛れもなく犯罪だ。ここに法律はないがな。


「嫌な話だな。それは明らかにPKだぞ。復讐したいとか思わないのか」

「復讐ッテ?」

「決まってる。PKされそうになったんだ。PKやり返すってことだよ」

「イヤ……しないヨー。殺すのはよくないネ」

「しかし……殺されそうになったんだぞ?」

「そんなのワカンナイヨ。今のボクは生きてますヨ。
 それにやっぱり、殺すのとかはイヤネー。
 ルフィも不殺(ころさず)が大事だといってたヨ」

「殺しの意志があったのは明白だと思うけどな……。
 あと、言ってたのは剣心だからね?」

確かにゴムゴムのほうでも人死なないけども。
不殺が大事っていってるのとは違う気が……。

ま、殺しまではイヤか。当たり前かもしれんが、そこまで割り切れないか。

俺も、胸糞悪いからといって、じゃあコイツの代わりに俺が殺しにいってやろう、とかそういう気は全然おきないしな……。

冷たいかもしれんが、所詮は他人事。
死にそうになったからと言って、じゃあ俺が殺すというほど義憤するほど、血に飢えてないぜ。
君子危うきに近寄らず、が基本だしな。


「じゃあどうすんだ。まさかもどるのか。また同じことになるぞ」

「フム。ユーは戻るの反対ナノ?」

「ああ、まあね。聞く限りじゃ、そんなこと繰り返してたら、いつか死ぬぜ。
 ゲームクリアは100層。今は最前線が23層ぐらいだからあと75層近くもあるんだぞ?
 こんな早いうちから生き死にをしてて、持つはずがない」

「ジャー、ドスレバ、イイノ?」

「……PT抜けて、ソロになったらどうだ?」

「ソロ?ソロは危険が危ないって聞イタヨ。デッド率高いッテ」

……。突っ込まないぞ。

「まあ、確かにな。危険といやあ危険だけど。でも、そのPTよりは安全だと思うわ。
 無理ってわけでもないしな。現に俺は、もう半年以上ソロずっとやってるし」

そういうと、奴は大仰に飛び跳ねて、こっちをなにやら輝いた眼で見始めた。

「ウワオ!ソレ凄イネ!一人で生き残るセンシ!カコイイネー!忍者プレイ?」

ちげーよ!

「忍者じゃねーよ!そんな職はない!あったら人気だっただろうけど!
 とりあえずいいたいのは、ソロでも大丈夫ってことだ!まあ、不安があるなら多少なら色々教えるよ。
 人には絶対俺のことをしゃべらないならな」

「オー、貴方親切ネー!デモ、もっといい案あるヨ!ジッチャンの名にぶっカケテ!」

「……なんか嫌な予感がしないでもないが、なんだよ。
 あと、「ぶっ」はいらないし、お前の爺ちゃんは知らない」

「ユーがセッシャとPT組んであげるネ。これ最強ネ。プリキュアなれるヨ」

「お前は本気で誘う気があるのか?」

やる気あってもやる気なくすぞ。
もっと下手にでろよ。
男同士でとか、どう考えてもハートキャッチプリキュアどころか、ハートリリースプリキュアだろ。


まあいい。そういう予感はしていた。どうするかな。

一緒にいくか、いかないか。
戻すという選択肢はないし。目覚めが悪そうだ。
じゃあ放置……も、少し無責任か。どうせ、少しなら教えるっていったしな。
まあ、合わなかったらその時に別れれば義理は果たしてるだろ。

「うーん……じゃあしばらく一緒にくるか?そっちの強さにもよるが」

余り離れすぎてたら、逆にお互いのためにならん。

「LVはいくつだ?あと装備とか教えてくれ」

聞いてみたら、意外にLVはあった。ずっと深夜も戦いどおしというのは嘘じゃないようだな。
装備は……まあ普通かな。いくら邪険にしてるといっても、壁役こなす以上そこそこはないと困るってか。
ま、俺のサブレアを与えればそこそこよくなるだろ。
NPCに売るのももったいないし、けど使わないしってのがいくつかあるからな。

総合としては、このLVなら、俺ほどのLVではないにせよ、
そこらの平均的なPTよりは強そうだし。足手まといになることもないだろう。

「問題なさそうだな。その強さならここらでもやってけるし」

「ジャア……!」

「おっと、一つ警告する。言っとくが、俺はそこまで人に気を使うタイプじゃない。
 もしあんたが負担になったら、その時点で解散させてもらうがいいか?」

「イーヨイーヨ!ソレマデよろしくーネ!」

軽いヤツだ。俺と対照的だな。彼が、手を伸ばしてくる。

「ああ。ただし、何度もいうが、俺の事は絶対誰にも言うなよ。特に名前。未来永劫な。
 ま、抜けたきゃいつでも抜けていいぜ」

俺はそれに、握手で答えた。

奴も、それに笑顔で答える。









「ヨロシクお願いスルネ!

      愛   舞  天  使   猫  姫
 『 ら ぶ り ー まいえ ん じぇ る にゃ あ こ 』たん!」

「やめて!」






バリバリバリバリ。








フルネームだけはマジ勘弁。

つうか隠された真の名(俺による裏設定)を、なんで呼べるんだよこの野郎!

おめー最初は、あいまいてんしって読みかけてたじゃねえか!

ぎゃーす!











……ま、こうして、俺はPTを、実に半年ぶりに組んだのだった。










あ、そうそう。
ちなみに、奴の名前は、【漆黒】と呼べばいいそうです。

……そっちが名前だったのか。

――――――――――――――――――――――――――――――
第三話 「吾友は病気である」     終わり
第四話 「職人の朝は遅い」      へ続く


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