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No.25915の一覧
[0]  †ネトゲの姫が開幕爆死した件† 【SAO二次】(旧題:†ネトゲの姫にはよくあること†)[かずと](2015/10/04 09:41)
[1] 第一話 「始まった二つのデスゲーム」[数門](2011/08/07 19:42)
[2] 第二話 「好奇心は”猫”を殺す」[数門](2011/08/07 19:43)
[3] 第三話 「吾友は病気である」[数門](2011/08/07 19:43)
[4] 第四話 「職人の朝は遅い」[数門](2011/08/07 19:44)
[5] 第五話 「ちーとはじめました」[数門](2011/08/07 19:45)
[6] 第六話 「○○充は爆発しろ」[数門](2011/02/16 13:43)
[7] 第七話 「たまによくあるこんな一日」[数門](2011/08/07 19:46)
[8] 第八話 「危うく死ぬところだった」[数門](2011/08/02 05:50)
[9] 第九話 「目と目が合う瞬間」 [数門](2011/08/02 05:50)
[10] 第十話 「ゲームはクリアされました」[数門](2012/02/27 14:39)
[11] あとがきというか、なかがきというか[数門](2011/08/03 05:00)
[12] 第十一話 「そういえばデスゲームだった」[数門](2012/02/19 22:50)
[13] 第十二話 「虐殺の日」[数門](2011/03/04 11:49)
[14] 第十三話 「信頼は裏切られるためにある」[数門](2011/03/08 10:05)
[15] 第十四話 「ハッピーエンドを君に」[数門](2011/03/09 15:16)
[16] 第十五話 「しかし石碑は事実を告げる」[数門](2011/03/11 06:59)
[17] 第十六話 「そして彼も罠にかかった」[数門](2011/08/07 19:49)
[18] 第十七話 「開かれるは漆黒への道」[数門](2011/08/07 19:49)
[19] 第十八話 「好奇心を”猫”は殺す」[数門](2013/11/20 12:16)
[20] 第十九話「それは見てはいけないもの」[数門](2012/02/19 23:54)
[21] 第二十話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」[数門](2012/03/05 12:25)
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[25915] 第二十話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」
Name: 数門◆50eab45e ID:6364cde8 前を表示する
Date: 2012/03/05 12:25
……心臓が止まったかと思った。

その時、<<チャレンジャー>>のリーダー【サカザキ】は、夜闇の中、
ホームの宿屋のところで眠りをとろうとしていたのだが……。

見てしまった。

(い、今……。か、壁に……)

きっかけは何だったか。

夜中【ドンドン!】と、どこかの壁から強い音がしたのがきっかけだ。

それで、眼を覚ました。

その途端、音はやんで、なんだったんだと思ったのだが……。

まあいい。

寝直そう……。

そう思った時だった。



ふと、壁を見たんだ。

そしたら……。見ちまった。


一瞬、白い、何かが……。


ビクッ!

い、今……。

誰かの言葉が頭をよぎる。

(「このゲーム、出る、らしいですよ……」)

いや……気のせいだ。
そ、そんなの、い、いるわけがねえ……。

また壁を見る。

すると、今度ははっきりと、人型の白いのが見え……
そしてまた壁に消えた。

(ひ、人型!?)

ガバッ!

上半身を起こす。

い、今のは……。


ドクン。

心臓の鼓動が聞こえる。

データの鼓動が。


昼の会話が、思い起こされる。


(「幽霊を見ると……数日後に、死ぬらしいですよ……」)


頭を振る。

いや……噂だ。きっと……今のも……見間違いだ。

だが、壁から眼が離せない。


……。


そして、じっと見据えること数分……いや、数十分だったかもしれない。

(や、やはり気のせいか……?)

何も起こらない。
静かなままだ。


(……夢か?それとも、見間違い?)


……。昼の話を意識しすぎたか……。
おそらく、最初飛び起きてからもう大分長くたつ。
その間、何事も起きていない。

何も起きないな……。

俺はそう結論づけると、ベッドの上、壁を見つめながら横になる。


(考え過ぎか……)

そう、ふっと気を緩めた瞬間だった。

壁から眼をはなし、反対側に寝返りをうった……そのとき。


目の前に、


布団の中に



それはいた。



真っ白の、人の形をした何か。

ベッドも壁も突き抜けた、半透明の、明らかに人ならざる存在。

それが、布団の中、すぐとなり、目の前に――










「drvgbhんjmkvgびんjもkcvbhんjmk――!!!!!!」









夜闇を切り裂き、悲鳴が響き渡った。














――――――――――――――――――――――――――――――

第20話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」

――――――――――――――――――――――――――――――









その日、俺はいつもどおり夜晩をしてた。

ここは、スラム街のとある酒場。


ここのゲームじゃ珍しく、人間による24時間営業、なんてのをやっている。

ギルドメンバーの持ち回りだ。

このゲーム長くやってるとそれなりに人恋しくなる。
ソロの奴でも、たまには活気に触れたくなるもんだ。

冒険者の宿り木としての存在。
そういう応援の仕方もあると思う。

俺たちはそういう奴らのために、24時間制の酒場を開いている。
騒いでもいいし、静かに飲んでも良い。
ダラダラしてもいいし、気合をいれてもいい。

潰れた奴のために、宿屋だって兼業している。

そんな店だ。


……というのは建前で、
単なる酒好き料理好き騒ぎ好きのオッサンが集まっただけだがな!


とはいえ、それでも深夜はやっぱり人がすくねえがな。
何人か常連はいるが……。今日はきてないようだ。

まあ、静かなのもいい。

料理の研究でもするか。
SAOの料理は奥が深い。
システムに登録されてる料理は簡単だ。
だが、そうじゃない、システムにない料理を再現する場合……
素材が少ないから、一つ料理を再現するのだけでも凄まじい根気がいる。

もちろん、再現したい料理は1つじゃねえ。いくつも、いくつも、いくつもいくつもある。
時間は、いくらあっても足りねえんだ。

かといって、客がいるときは難しいからな。
こういう一人の時が、貴重な研究時間というわけだ……。

そんな風に、思っていたときだった。



バタン!



「う、うあああああああああああああああああああああ!!!」


「なんだよ、うるせーなあ」


扉をかちやぶるように開き、何か、よくわからん喚いてる奴が飛び込んできた。

ってこいつ、何かのギルドのリーダーじゃなかったっけか。
なんだっけか。【チャレンジャー】の【サカザキ】だっけか。
マナーが良くないんであんま歓迎はしてねえが……。
まあ堅苦しいこといわねえのがモットーだしな。

だが、今日のこいつは、なんなんだ……。

「ゆ、ゆゆゆゆゆゆゆゆうれいが……」

「はあ?」

「出たんだ!助けてくれ!幽霊が!俺の家に!布団が!ゴーストが!」

「はあ……」

なにいってんだ?
そんな目で、俺はそいつを見やる。

「お、俺は……俺は!」

「何いってんかわかんねーけど、とりあえず落ち着けよ小僧。
 何もいねーじゃねーか」

ポン、と肩を叩いて、注意を促す。
そこでやっと、飛び込んできた奴は一息つく気になったらしい。
辺りを見回し、何もいないのを確認すると、大きく息を吐き出した。

「はあ……はあ……そ、そうか……」

そいつはおっかなびっくり、周りを見渡す。

「ふう……」

「なんだ一体どうした」

「いや……何でもねえ」

「はあ?あんだけ騒いでか。意味わかんねえな」

「……」

「なんだよ」

「あんた……幽霊って……信じるかい。
 モンスターじゃなくて……ほ、本物の、を……」

「はあ?このSAOでの話か?モンスターじゃなくて?
 いるわけねーだろそりゃあ」

「お、俺を疑うのか!?お、俺は聞いたんだ。そいつを見ると、死ぬ、と……」

「はあ……」

「そ、そして、俺は見た!見たんだ!いたんだ!」

「お、おい?」

「ほ、本当に、聞いたこと無いのか?
 あんた、色々情報も知ってるはずだろ?対処法とかさ……!なあ!おい!知ってんだろ!言えよ!」

「ちょ、ちょっとなんだよ。んなこと言われてもな……。
 大体、何の話してるかもさっぱりわかんねえよ」

「なんで知らねえんだよ!死ね!
 ゴーストが殺しに来るんだ!見たら終わりって……!俺が!俺を!あいつらも!」

「はあ……?」

全然何いってるんかわからねえ。
しまいにゃ逆切れしやがった。
しおらしかったり強気になったりなんだこの情緒不安定野郎は。

「なあ!本当にいねーのか?俺だけか?俺一人だけか?
 ふ、振りきれねえんだ……!どこにいっても、先回りするように……!
 転移も、できねえし……。……おい!聞いてんのか?

 いいか!今日だけでいい。ここに……ここに泊めさせるんだ!」

「あー……まあ、うちは宿屋もやってるから、別にいいけどよ……」

「よし、じゃあ借りるぞ!金はこれでいいか!
 あと……俺の部屋には、誰も入れさせんな!入れさせたら、こ、殺すぞ!」

いいな!と念をおすと、いうがいなや、部屋の鍵を
ひったくるように受け取ると、ダッシュで去ってしまった。

……なんだありゃ。







あれか。

このクソッタレなゲームの中に閉じ込められて、気でも狂ったのか。

……そう考えると、評判悪い奴とはいえ、不憫かもな。

まだわかんねーが……。

単に酔っ払って錯乱してるだけかもしれねえし……。


まあいい。ああいうわけわかんねえ奴なんざ酒場やってりゃいくらでも当たるわな。

それより、あいつがなぎ倒していったテーブルや椅子を元に戻さねえと……。


「しょーがねえな……」


そうぼやきつつ、再び俺は片付けをしはじめた。





すると、ギィ……と、扉が開く音がして……。



再度の来客が、訪れた。



女……いや、男?

その客は、マントフードをかぶっていた。




――――――

――――

――





「しかし……珍しいな」

「何がですか?」



軽い食事でオススメを、というマントフードのヤツに対し、
シチュースープを並々注ぎながら俺は答える。

ギルドメンバーたちで料理スキルを地道に研究して、
完成した、結構な自信作だ。
肉が中々手に入らないのがネックだが、スープとしてみれば充分な美味しさだ。
湯気と香り立つそれを、運びつつ語る。

しかし、見た目は顔もみえねえし男か女か分からんかったが、
声の質からすると、どうも男のようだな……。


「こんな時間にソロプレイヤーが来るってのがな……
 いや、来るのはいいんだが、つい最近も、変なソロがいたもんでな」


俺たちは冒険自体はできないが、冒険者の話を聞く事自体は非常に好きだ。
特に俺は。
まだ35歳だってのに、隠居っぽいかねぇ。
もし、現実に戻れたら、なんか酒場のマスターとかやりてえなあ。

「へえ……私の他にもいたんですか」

「ああ、ついさっきだ。聞こえなかったか?
 かなり大きい声で叫んでたんだがな」

「残念ながら……」

「そうか……いやあ、変な奴だったぜ。
 ていうか、変なこと口走ってたぜ」

なんだったんだろうなありゃあ。

そりゃゴーストっていう敵がいるのは聞いたことあるけどよ。
でも、それだけだぜ。
なんであいつがあんなにパニックになってたのやら。

「ふむ……誰ですかその人。知ってる人かもしれませんね」

「ああ……なんつったかな。時々うちにくるギルドなんだが……。
 そういや最近揃ったのみねえなあ……。
 確か……【チャレンジャー】って名前だったかな。それのリーダーだぜ」

「んー……どこかで聞いたような……。いや、ちょっと今は思い出せませんね」

「ふーん……そうだ。なあ、お前さん知ってるか?
 なんでも、幽霊だか、ゴーストだかがいるとかなんとか……」

ものはついでと、そいつの話を振ってみる。
まあ、冒険者の話をたくさん聞く俺ですら、よく分からん話だ。
正面の……多分男は知らないだろうと思いつつも、話の種に軽く振る。


「ああ……あの話かな」


「おお?知ってるのか?」


こいつは意外だ。
何の期待もしてなかったが、知ってるとなると俄然興味をかきたてられる。


「ええ……うわさ話ですけどね。
 好きですか?うわさ話」

「よもやま話が嫌いでマスターなんてやれねえよ」

「なるほど。では、話しましょうか。
 いえ、私も噂でしか知らない話なんですけどね……」



そして、フードの男は語りだす。

PKK幽霊という「システム」の話を。



俺はそれを熱心に聞いた。

そう長くもない話だったしな。



ふうむ。

中々面白い考察……そして話だ。
PKKの幽霊ね……。

だけど、まあ結局はうわさ話だろう。

やっぱり、そんな話を聞いたことがない。

オレンジギルドは増える一方だと聞く。
警察がないから当たり前だが。
基本的に【放って置いて減ることはない】のだから。
それは増える一方だろう。

そんなもんがあったら、それに歯止めがかかってておかしくないだろう。

俺はそう考え、話を男に振り返そうとした。


なあ、あんたはそれ、信じてるのかい?と、聞こうと。


「なあ――」



……その直後だった。


あの「声」……いや「叫び」が響いたのは。







――――――

――――

――



一方……。






ダガダガガガガガッ!

ギイッ!

バタン!

ガチャン!!!


「はあッ……はあッ……」


部屋に駆け上がったリーダーは、一息に扉をあけ、閉め、
鍵をかけると、ようやく一息をつく。

「ふぅ……ふぅ……」


辺りを見回す……。

いない。

振り切ったのだろうか?

それとも、人がいるとこではでないのか?

とにかく、さっきまでは、視界の端々にすこーし見えてた気がするのに。

今は、全く見えない。


(ふぅー……)


心を、落ち着ける。

そうだ、まずは落ち着かないと。

冷静に……冷静に考えよう。

あれは……なんだ?


あの……白い……人型の……。

い、いや!

あ、あんなの……いるわけねえ……!

ここはデータの世界だ、いるわけねえんだ!

そうだ、冷静になれ。

冷静に……!

いるわけない……。いない……。絶対いない……。


……。


……。


よし……!


お、落ち着いたぜ……。

そうだ、いるわけねえんだ、あんなの。よく考えれば。


きっと、見間違いかなんかだ。
大体、システムが生み出すっていうなら、逃さないだろうし。
逃げ切れる事自体おかしいんだ。
だから、あれはシステムじゃない。

システムじゃないなら、ここはデータの中だから、当然幽霊もいるわけない。

そ、そもそも。俺らがなんで死ななきゃいけねえんだ。
ただゲームを「楽しく」プレイしただけじゃねえか。
俺達は被害者なんだ。悪いのは閉じ込めた野郎じゃねえか。

そうだ。俺は何も悪いことなんかしちゃいねえ。

そうだ。だから、報復される理由がねえ。

そうだ。だからあれはなんかの見間違いだ。

ビビリすぎて、きっと夢かなんかでみたのと、勘違いしたんだ。

そうだ、それならベッド以外でほとんど見てないのも、今いないのも説明がつく。

そうだ。あれは夢だ。夢の中で隣で見て、そのあと飛び起きたんだ。そうだ。

そうだ、あんなの、実際はいな……



【ドンドンッ!】



「ハウッ」



急に、うしろの壁がノックされた。かなり強く……。

い、一体……。

しっとり、耳をすます。


……何も、聞こえない。



「だ、誰だッ!?ま、マスターか?」


声をかける。

……返事はない。誰かがいる気配もしない。

な、なぜ……。

これは、さっきの……?

さ、さっきはこの音のあと、確か……か、壁をみたら……。


ま、まさかまた……。


い……いや、いねえ。いねえはずなんだ!


ゆっくり……ゆっくりと壁を見る。




そして……みた。




……何もない、壁を。





「……」


辺りを見回す。

何もない……。


……。


だ、大丈夫か……。


とりあえず、もう寝よう。

何があっても、おきるまい……。


……布団の中は、いないよな?

恐る恐る、めくる。

ゆっくりと……ゆっくりと……。

い、いないはずだ……。いないんだ!


ガバッ!


……。


……。


……。



いない……。


……。

ふう。



やっぱり、さっきのは夢か……?

……とりあえずは、寝よう。

本当は起きてたいが、でも。

マスターと話して、なんで怯えるのかつっこまれたら
オレンジだとバレるかもしれねえ。
それはそれでダメだ。

そしたら軍だ。一章監獄。受け入れられるわけがねえ。

なにより……疲れた、本当に疲れた。




考えるのは、明日からだ。



とにかく……だ。



壁にもいなかった。布団にもいない。

再度辺りを見回すが、何もいない。



ふう……これで、ようやく一息つけるな。


そうおもって、仰向けに寝っ転がる。



そして、見た。




天井を。











そしたら







そこに




天井に



張り付くように


完全な


人型が


こっちを、睨む、ように……







――

――――

――――――











「ヒィィアアアアアア!!!!!で、出たあ!出たああ!!!」








二階から、大声が響き渡る。

マントフードの男に、話を振り直そうとしてた宿屋の主人は、驚いて階段をみた。

さっきの叫んでた奴か?

今度は一体?

なんにせよ、尋常ではなさそうだ。

声にすぐ反応し、主人は階段を駆け上がる。


「なんだってんだ、一体……。どうしたんだ?お客さん。ちょいと騒ぎすぎなんだがね!」


階段を駆け上がり、さっきの彼の部屋の扉をノックし、入ろうとする。


だが、中は鍵がかかっていてはいれない。そういうシステムだ。

どんな人であれ、一切部屋主の許可無くして扉の鍵をあけることはできない。

なのに、中から何かが「でた」という。

どうする?と彼が悩むも一瞬。

扉を蹴飛ばし、先ほどのテンパった男が飛び出てきた。


「出たんだ!あいつが、あいつが復讐にきたんだぁ!たす、助けろ!俺を助けろ!」

「ちょっと待ってくれよ、誰もいねえじゃねえか?あいつって誰だ?」

「出たんだ!あれが!あいつの怨霊が!」

「おいおい、落ち着けよ。そんなの、いるはずねえだろう」

「う、嘘じゃない、嘘じゃないんだ!!
 げ、現に他の奴は、死んじまった!
 の、呪いだ!
 怨霊だ!俺は見たんだ!
 このゲームには、怨霊がいるんだ!
 さっきも天井に、ゆ、ゆう……」


幽霊が!と続けようとしたとき、その宿屋の主人の後ろに。

リーダーは見てしまった。

白い……幽霊の姿を。ゆっくりと迫る怨霊を。


「ヒィイアアアア!!!」


駄目だ、この宿屋はもう駄目だ!
逃げないと、他のところに逃げないと!
どこかへ!
どこかへ!


宿屋の主人を押しのけ、階段を飛び降り

・ ・ ・ ・ ・
誰もいない1階の酒場フロアーを駆け抜け、

【チャレンジャー】のリーダーは店を飛び出した。




そして、丁度そのとき、メッセージが届いた。




サカザキにとっては救いでもあり……。

そして、地獄へ誘うメッセージが。











ピロン








……着信音が、響く。




焦る中、一旦無視しようと思ったが、件名と差出人をみて
サカザキはその封を開く。


そこには、こう書いてあった。



【ゴーストの解呪方法発見セリ 
 スラムエッジの、街の外、一本杉で会いましょウ †愛舞天使猫姫†】




「!」



き、きた!よくこのタイミングできた!

一本杉……あそこか!あの、超大きい奴の!

早く……早くいかないと!
さもないと……後ろが!後ろから!


彼は恐怖にかられ、目指す場所に走りだす。


そして、走る最中にも、メッセージが届きだす。

彼は走りながら、導かれるように、救いを求め、開いていく。

だが、それは救うどころか、さらに混乱に突き落とすメッセージ。



【私も、呪いにかかっタ】

!!!

な、なんだと……。

息を切らし、目的地に向かいながらそれを見る。

ピロン

着信音と共に、またメッセージが届く。


【既についてます。まってます】

ピロン

【もうひとりもマッテます】

も、もう一人……、もうヒトリってなんだ!

ピロン

【知ってますカ?】

なにをだ!

ピロン

【のろいをとくホウホウってヒトツしかないんですよ】


なんだ……なんだ一体!

でもとにかく……とにかく、いくしか!

あとちょっと……あとちょっとなんだ!



「ハァ……ッ!ハァッ…………」


必死の想いで指定の場所にたどり着く。


すると、木の根元。



ヒトリの、男が、うつむせに、倒れていた。



マントフードの男。


あの時会った日の服装。


だが、異様だった。


倒れている事も。

そして、何よりも。

               ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
その倒れた背中には、槍が突き刺されていたからだ。


「……!!!」



声にならない声が、サカザキを襲う。


(なんだ、一体、なんなんだよぉ!
 なんだよこれは!)


ピロン


さらに、同時に、メッセージが届く。


 【 シ ネ バ ト ケ ル
   オ マ エ モ シ ネ 】



「ヒッ……あ、アアアア」





そして、倒れた男のすぐとなり。

サカザキの目の前に、白い人型が、現れた。

何度もみた、あの忌まわしき死の宣告が。




サカザキの、限界が訪れた。








「ヒイイゥイァイァ!アゥアアウァアァアイァ!アイア!!!」







もはや何を言ってるのか自分でもわからない。
頭の中にあるのは、ここを離れなければという想い。

転移結晶を取り出す。

……が!

結晶は何も答えない。


――結晶禁止空間!


もど……早く、もど、戻らないと!

街へ……今度は街へ!

走る。

ただひたすらに。

街へ向かって。

木にぶつかり、草に足をとられ、岩を回りこみながらも
がむしゃらに街を目指す。

だが……。


ズバッ!


何かに貫かれたような痛み。
同時に、急に足がとまり、盛大に転ぶ。


「ヒィア!アア?」


……足が、麻痺している。

一歩も動けない。

そこに、ずさり、ずさりと近寄る音。






そこには、先ほど倒れていたはずの、マントフードの男の姿があった。

だが、腹を貫通していたはずの槍を片手に持ち。

そして……。



隣に、ゴーストを従えている。



「彼ら」は、無言で近寄ってくる。

ずざり。

ずざり……。


「あ、あ、あ」


まるでキョンシーのように、ゾンビのように近寄る男の姿。
そこによりそうように姿を現す霊。

もう、メッセージではなく、声が直接語りかけてくる。


【コ ロ ス …… コ ロ ス ……】


「ヒィ……」


もう、サカザキには、誰かの霊が猫姫の死体にとりつき、姿を表したようにしか見えなかった。
このゲームに死体がある事自体おかしいが、それに気づく心の余裕は一切無い。
いや、そもそもおかしいからこそ、余計にパニックになっている。

足が、動かない。

奴が、目の前まで、きた。



「ちちちいち、ち、近寄るなあああああああ!!!!!!!」


何がなんだかわからない。

腰を抜かしたまま、がむしゃらに剣を振り回す。
スキルでもなんでもない。
たんなる振り回し攻撃。

相手に当たる。
だが、全く効いてる様子はない。
何度も何度も攻撃があたるが、 相手のHPバーは微動だにしない。
ありえない状況。

地味にこの時、自分のHPバーの色が変化したが、
全くそれに気づく余裕は、リーダーには無かった。


【 ユルサナイ …… ユルサナイ …… 】


そういいながら、「男」が槍を構える。


「た、たひゅけてくりぇぃええええ!ち、違うんだ!
 アレは俺じゃない!あいつらが、そうあいつらが決めたんだ!
 どうせゲームだからって……。お、俺じゃない!」


【カエセ ・・・・ ウバッタモノ …… カセイダモノ …… カネ、ソウビ、アイテム、カエセ ……】


「返す!返す!全部渡すよ!おいてくから!だから、助けてくれえ!」

金も装備も、全部を地面に投げ出していく。もう必死の想いだ。

【マダ カエセ マダ タリナイ】

ゆらり。
マントフードの人物が、また一歩近づいてくる。

「も、もうないよ!これで全部だよおお!な、何があるってんだよお!」




【 イ ノ チ ヲ カ エ セ 】





「ヒィッ……」



リーダーの顔が、恐怖で大きく歪む。

そして、マントフードの影が槍を振りかぶり、振り下ろしたとき。

破砕音が響き……

静寂なる闇が、そこに広がるだけだった。





マントの男が、フードを取り去り、顔を出して空を見上げる。

今日は満月。空には、真っ黒な闇と明るい月だけが、静寂のなか佇んでいた。







「……ふん」




(落とし前はつけた。だが……)


男は、拳を握りしめ、歯をきしり、体を震わせる。


(だが、まだ、何も。
 何も、終わっちゃいねえ……。
 何も……)



男は月が浮かぶ闇の中、空を見上げ、言葉を紡ぎ出す。

「ヤツ」が最後にばらまいたアイテム。

【リネームカード】を手に拾いながら。

その言葉に、千の思い、万の感情を込めて。

空を見上げる。




「漆黒…………!」










全てはまだ、ここからだ。











――――――
――――
――


数日後。



「そういやあ……あいつは、一体どうなったんだ?」



酒場のマスターは、そう考えてひとりごちる。

あの夜……。

【サカザキ】だったかが、飛び出していった後。

気づいたら、なんだっけか。そういや名前聞いてねえな。
地味な格好した男もいなくなっていた。

騒がしいから出ていったのかも知れないが……。



あれ以後、サカザキを見かけたことはない。
別に数日みないぐらい、どってことはないが……。

それでも気になった。


あるルートで、彼らがどうもレッドギルドらしいという
話をきいたからである。


すると、思い出されるのはその時の、マントフードの男との会話。

そう、幽霊の……。




(へっまさか、な……)


(でも……)


たまたま、始まりの街にくる用事があった彼は考える。


(始まりの石碑、に名前みにいくぐらい……
 別にいいか。
 ちょろっといって、あいつの名前を見るだけだからな)

(せっかくここまで来たんだし)

(まあ、まさかだろ、まさか……。
 この世界に幽霊なんて、いるわけねえんだ……)



そして、彼は石碑に足を運び。



「あの日の結果」を、知ることになる。









もう時に埋もれ、今となっては誰も知ることはないが、
SAOプレイヤーの中で、一つの【噂】が広まったのは、この時を境にしてである。



ゴーストの噂……。


PKに関わるなら、誰でも聞いたことがあるという噂……。











【PKをすると……殺しに来る】







【PKK(プレイヤーキラーキラー)のゴーストが、殺しに来る】












この日。人々の中に、幽霊が生まれた。










――――――――――――――――――――――――――――――

第20話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」 終わり
第21話「もしもここで出会わなければ」 へ続く

※ゴーくんは、プレイヤー同様、街中での直接攻撃はできません。弾かれます。


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