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No.25915の一覧
[0]  †ネトゲの姫が開幕爆死した件† 【SAO二次】(旧題:†ネトゲの姫にはよくあること†)[かずと](2024/03/30 04:37)
[1] 第一話 「始まった二つのデスゲーム」[数門](2011/08/07 19:42)
[2] 第二話 「好奇心は”猫”を殺す」[数門](2011/08/07 19:43)
[3] 第三話 「吾友は病気である」[数門](2011/08/07 19:43)
[4] 第四話 「職人の朝は遅い」[数門](2011/08/07 19:44)
[5] 第五話 「ちーとはじめました」[数門](2011/08/07 19:45)
[6] 第六話 「○○充は爆発しろ」[数門](2011/02/16 13:43)
[7] 第七話 「たまによくあるこんな一日」[数門](2011/08/07 19:46)
[8] 第八話 「危うく死ぬところだった」[数門](2011/08/02 05:50)
[9] 第九話 「目と目が合う瞬間」 [数門](2011/08/02 05:50)
[10] 第十話 「ゲームはクリアされました」[数門](2012/02/27 14:39)
[11] あとがきというか、なかがきというか[数門](2011/08/03 05:00)
[12] 第十一話 「そういえばデスゲームだった」[数門](2012/02/19 22:50)
[13] 第十二話 「虐殺の日」[数門](2011/03/04 11:49)
[14] 第十三話 「信頼は裏切られるためにある」[数門](2011/03/08 10:05)
[15] 第十四話 「ハッピーエンドを君に」[数門](2011/03/09 15:16)
[16] 第十五話 「しかし石碑は事実を告げる」[数門](2011/03/11 06:59)
[17] 第十六話 「そして彼も罠にかかった」[数門](2011/08/07 19:49)
[18] 第十七話 「開かれるは漆黒への道」[数門](2011/08/07 19:49)
[19] 第十八話 「好奇心を”猫”は殺す」[数門](2013/11/20 12:16)
[20] 第十九話「それは見てはいけないもの」[数門](2012/02/19 23:54)
[21] 第二十話「その日、幽霊(ゴースト)が生まれた」[数門](2012/03/05 12:25)
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[25915] 第十八話 「好奇心を”猫”は殺す」
Name: 数門◆50eab45e ID:1fe6a54f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/11/20 12:16
「やっぱ無理だわ」


いつの間に構えていたんだ?

そう言い放ったその時には、マントフードの男は既に短剣をかざし、俺の真正面にたっていた。

速すぎる!奇襲の安全距離は保っていたはずなのに……。

唖然とする俺を尻目に、フードの男は短剣を振りかぶる。

短剣は鮮やかな軌道を描き、避けようとした俺の喉を切り裂いた。

「グハッ」

クリティカル判定。

短剣及びノースキルなので、ダメージこそ大したことはない。
だが……。

「このッ……」

やりやがって!

反撃しようと、腰の剣をぬこうとする。

が、体が動かない。

(!……麻痺状態!)

体力ゲージが状態異常が発生した事を示す色になっていた。
あの短剣、麻痺属性を持つか、それか、麻痺の毒液を
既にたっぷりぬられていたらしい。

そして、斬ったあの野郎は、HPバーがグリーンから、オレンジ(犯罪者カラー)に変異する。
これで男はシステム上の犯罪者であり、人に殺されても相手には何のペナも発生しない存在となった。
最も、殺害ではなく傷つけただけなので、数日すれば解除される軽オレンジではあるが……
今この場において危険であるのは間違いない。

しかし、それを気にしたふうもなく斬った男は言葉を続ける。


「やっぱり無理だな……。うん、無理だ。
 万一ちょっとは事情あるかも誤解かもなんて考えてたが、論外だったな」

「てっ、てめえ……」

とにかくこの麻痺を解除しないと……!

俺は麻痺しながらも、道具袋に手を伸ばした……が。

その手はちょっと動いたその瞬間に、またも短剣で切り裂かれる。
先ほどのダメージとあわせ、残り6割ほどに減る。

「うあッ」

「考えてみれば当たり前だよな。
 こんな異常事態だろうと、積極的に人殺すような奴らだし。
 いやいや、やっぱりないわ」

「一体何をするつもりだ……!」

「何をって……。この状況で言わせるなよ。
 オレンジが麻痺った相手を目の前にして、他に何をするっていうんだ?」

マントフードの男がさらに斬りつける。
スキル【ダブルアタック】発動。

2重の刃がきらめき、タゴンのHPバーが3割消し飛ぶ。
これで残り3割。あっという間にイエローゾーンにHPが突入する。

こ、こいつまさか、本気で俺を殺すつもりじゃ……。

「だ、騙したのか!!」

「あんたらってさ。騙すことは考えてても、
 自分らが被害者になるかもっていう事、全然考えないよな。すごいよ。
 きっと、やり返されるかもって考えたこともないんだろうな」


「なんだ一体……て、てめえになんかした覚えなんて……」


「……確かに何もされてないね。俺には」


マントフードの男は再度武器を構える。



「……なんせ、何かされた奴は、実質死んでるらしいからな」








――ゾクリ。



俺は、男の、眼を見た。

その瞬間、俺の体を、恐ろしい殺意が寒気となって吹き抜ける。

明確な死のイメージ。

コイツはヤバい……。

まさか……死ぬ?
この俺がか?


「ま!待て!!話せば分かる!!!」

「もう十分話したじゃないか。とてもよく分かってるぞ。
 貴様らを生かしておけば、誰かが死ぬということがな」

奴は、俺のセリフにも、全く耳をかそうとしない。
そのまま短剣を振りかぶり……振り下ろす。

「ま、待て!ぐああああああ!」

HPバー、残り1割。体力がレッドゾーンに突入する。
もはや、何を食らっても死ぬ状態……。

死ぬ?まさか、バカな!

……嫌だ!

「ま、待て!待ってくれ!死にたくねえ!
 殺さないでくれ!な、なんでもする……なんでもするから!」

「……」

ピタリ。それを聞いて、男の手が止まる。

イケる!

それに……。今ちらっとマップウィンドウを見た。
あとちょっとでいい。ちょっとだけでも引き伸ばせば……。
なんとかなるはずだぜ!

「……本当か?」

「へ、へへ……ほ、本当だ!もう何もしねえ!あ、あんたの言うことには全部従うから!」

ここは正念場だ。
あとちょっとだけでも、時間を稼げば……。

『仲間がくる』

もう逃げれない。
そうすれば、俺を殺した瞬間コイツも死ぬ。
それを理解させれば、助かる可能性は大だ。
その時は見てやがれよ……。

奴は俺と違って、仲間が近づいてる事がわからないはず。
だから、後は俺がちょっと大声で叫んで、場所を伝えればいいだけ。
奴に気づかれないように。
そうすれば、仲間が奇襲してくれるはず。


「……信用できないな」

「ほ、本当だ!頼むぜ!!!!」

あえて、かなりの大声で返事をする。
特に頼むの部分を強調して。

よし!これであとは仲間の奇襲を待つだけだ。

仲間は、もう、すぐそこまで来ている。
いや、既に上にいる。
あっちも俺の場所や状況には気づいてるはず。

ここは落とし穴。
高さは、やや高いが、死ぬほどの高さじゃない。

上からは、俺と奴が見えるはずだ。
グリフィスら3人が飛び降り攻撃をすれば、やつを仕留めるには十分……。

「……」

奴はまだ考え中のようだ。

あと少し……。あと少しだ!
頼むぞ……グリフィス。



「頼む!!」



それが、合図だった。










――――――――――――――――――――――――――――――

第18話「好奇心を”猫”は殺す」

――――――――――――――――――――――――――――――









タゴンのやつからの言葉。

それが、俺たちが飛び降りる合図になった。
あらゆる準備は万端。
アギトや、ガルシェに先立ち、俺が真っ先に飛び降りる。
2人もすぐそれに続いた。


「死ね!」
「ヒャハッ!」
「オラァ!」


ガシィーン!!!!


斧が、片手剣が、細剣が……凄まじいヒット音を叩き出した。



……地面に対して。


「「「「!」」」」


避けた!?

俺たち4人の顔が驚愕にゆがむ。

そこに声が響く。

「助けてといった直後にこれか……
 何をするのかと思っていたが……」

一斉に振り向くと、奴が槍を構えながら立っていた。

……見えなかった。一瞬であの場所まで?

……まさかな。

しかも、俺たちに奇襲前から気づいていたようなセリフだ。
奴が上をみた素振りは何一つなかったはずだ。

……ま、いい。


だが、奴をタゴンから引き離すことには成功した。

瀕死……おまけに麻痺か。

ガルシェが回復を行おうとする……が失敗する。
チッ、結晶無効化空間か。
それをみて、慌ててPOTでの回復に切り替える。
まあ、全快にはまだかかるがこれでタゴンはなんとかなるだろう。
こんなバカでも盾ぐらいにはなるしな。

「おいタゴン、戻ってきてみたら……こいつぁどういうことだ?」

「グリフィス……。ハメられた……あの野郎、ネカマだったんだ!
 復讐者で!お前らと別れたあと、急に……落とし穴に引きずり込まれて!」

「へっ、ネカマかよ。変態かぁ?」

そこに、フードの男から声がかかる。

「その変態に釣られたバカもいたようだがな。
 さんざ笑わせてもらったぜ。グリフィスさん」

ブチッ

「この野郎……」

ふざけやがって……。
俺は斧を構え、攻撃の体制に移る。

「てめえ……今の状況分かってんのか?
 結晶無効化空間。狭い広場。4vs1。
 てめえに逃げ場はねえ。
 しかも、てめえはおあつらえ向きにオレンジときた。
 てめえを殺しても俺たちはグリーンのままだ。
 
 ククク……命乞いも通じねえぜ。
 最も、悲鳴ならいくらあげてもいいけどなあ!」

俺の声を合図に、他のメンバーも武器を構える。

「そういえば、直接手をだすのは初めてじゃん。楽しそうだぜ」
「せいぜい叫んでくれよな……」
「さっきは良くも調子にのってくれたなコラ。倍にして返してやる……」


じわりじわり。4人で1人を囲むような陣形に変化していく。


だが、奴は全く怯える素振りをみせはしない。


「それはこっちの台詞だと言いたいが……まあいい。
 俺も言いたいことがある。
 ……なぜ貴様ら、人を殺す真似ができる?
 攻略者が減れば、それだけクリアも遠のくんだぞ?
 ……いや、それ以前に、なぜ殺せる?」

その質問に……俺たちは思わず笑ってしまった。
こいつ状況分かってんのか?
はっ、何を言い出すかと思えば……クリアときたよ。


「はっ、バカじゃねーの?
 雑魚一人殺したぐれーで、上に影響なんかねーよ。
 大体、これはゲームだろ。
 ゲームを、楽しんでるだけだぜ俺らは」
「そうそう、ゲームを楽しくして何がわりいんだよ」
「殺しがダメなら、システム禁止すりゃいい。それがないってことは、殺していいってことなんだよ。
 そんなこともわかんねーのか?」

バカかこいつ。こんなあまちゃんが今まで生き残ってたなんてな。
まあそれも今日で終わりだが。

「大体さー、死ぬ時人はどうなるのかとか、どんな表情するのかとか、興味ないのか?
 ええおい!?こんなチャンス二度と無いぜ?
 ”好奇心”だよ”好奇心”。俺たちは知識の探求者なわけだよ」
「ハハハ!いいこと言うじゃんグリフィス!クックック」

ハッ!こんな、やりたい放題の世界なんて、二度とチャンスはないぜ。
自重するほうがバカだろーがよ!


「好奇心だと……?その程度、その程度のことで……漆黒を……」


漆黒……?
漆黒って……。あのバカのことか?

「へえ……てめえ、あのバカの知り合いか。なるほどな。それでたどってきたのか」
「は!そういやあいつの名前もアレだったが、てめえの名前もアレだったな!
 もう思いだせねーけど」
「愛……なんだっけ?姫だっけ?クハハ」


……そこまで笑った時だった。

急に、割って入る声があった


「……猫姫だ」

「は?」

「知り合いじゃねえ。改めて名乗ってやる。
 俺の名は、愛舞天使猫姫だ。          
 そして、漆黒の……てめえらが殺そうとした、

 漆黒の……

  ・ ・ ・
 親友だ!」 


「!」


奴が、槍をもって襲ってくる。

……速い!

だが、奴がまず向かったのは、片手剣……つまり、もう片方に盾装備をしているガルシェ。
槍と盾は盾が圧倒的に優位。矛先さえそらせばダメージは大幅に軽減できるからな。

ガルシェも同じ考えのようで、ふてぶてしい笑みを保ったまま、盾を真正面に突き出す。

そこに槍が突き出される。ぶつかる槍と盾。当然槍が盾に弾かれて、
奴は体制を崩す……はずだった。

なのに。

俺たちが眼にした光景は、ガルシェの盾を弾き飛ばし、
そのままの勢いで胸まで貫かれている、ガルシェの姿だった。

HPも、今の一撃で残り2割まで減少している。
バカな!盾で軽減はされてるはずなのに、たった一撃で!?

「ガルシェ!その槍を掴め!」

胸に刺さったままだと継続ダメージはあるが許容範囲だ。
抜けずに動けない隙に、すぐさま叩きのめしてくれる!
ガルシェはすぐ反応して、槍を掴んだ。

よし!気合をこめ、斧を振り下ろす。
タゴン、アギトも同じく剣で襲いかかる。
死ね!

だが、奴はなんと、槍を掴んだガルシェごと、
槍を持ち上げ、横に振り回した!

ギュオッ!先端に人が刺さってるとは思えない速度で、
さながら巨大なハンマーと化した奴の槍が俺たちに襲いかかる。

「くッ」

ガルシェをたたきつけられ、3人とも体制を崩す。
ガルシェのHPが、空になったのが目に入った。

「ぐああああッ」

横目に、一番攻撃をマトモに食らって体制を崩したタゴンが、
攻撃されているのが目に入る。
タゴンも剣で応戦するが、奴は避けるそぶりすらせず、攻撃を叩き込んだ。
相打ち……お互いの剣と槍が、お互いに刺さる。だが奴は剣が刺さっても気にしたふうもない。
逆に奴の槍はタゴンの頭に、槍がとてつもなく鋭い勢いで突き刺さり、貫通した。

タゴンの、回復しつつ合ったHPが、一瞬で空になった。

バカな!

なんだあの威力は!いくら急所といえど……。

一突きでガルシェを仕留めたあいつは、さらに返す槍で、
アギトを狙う。ヤバい、あいつはこの中で一番軽装の細剣使いだ。
だが、俺の態勢も戻った。奴がアギトを攻撃するその時は、奴も隙だらけになるはず。

「バカが、俺を無視するんじゃ……」

ねえ。そう言おうと思った瞬間。

ザスッ。何故か背後から攻撃を食らった感触。

「!?」

何ッ!誰もいなかったはずだ!

振り向く、やはり誰もいない。壁があるのみだ。
バカな。ダメージこそ浅いが、確かに斬られた。
間違いなくHPゲージも減少している。
今のは……。

「ぎゃああああッ!」

絶叫がこだまする。しまった!

振り向くと、アギトが細剣を弾き飛ばされ、地面に倒されたまま
何度も体に突きをくらいあっという間にHPを空にしていた。

こんな……一体……。
4vs1だったんだぞ……。

「バカな……こんな一瞬で……」

そんな呟いた瞬間に、槍が飛んで来る。
くそッ!
がむしゃらに振り回した斧が、偶然槍を弾く。

だが、相手の体制を崩すまでには至らない。


その隙に、距離をとり離れる。

お見合い状態。


あっという間に3人が……。もしかしてこいつ俺より……。
いや、そんなはずはねえ。
あいつらはLVが低いからな。
たまたまクリティカルが続いたのかもしれん。
俺だって、あいつらを殺そうと思えば、同じことやれる。
俺だけあいつの攻撃を防げたのがその証拠。格が違う。
そうだ、このギルドの『最強』はこの俺なのだ……。

「く……くく……やるじゃ、ねえか……。
 だが、こいつら倒していきがってんじゃねえぞ……。
 こいつらのLVはせいぜい30中盤かそこら。
 だが俺は違う。
 
 教えてやるぜ。

 俺のLVは……51だ!」


「……」

ククク……かたまったか?
なんせ、このSAOでは、階層=本来の適性LVとなっている。
そして、今の最上層は51層。
つまり、LV51というのは、最上層LVの強さということだ。
まあ、正確には60ぐらいが安全マージンを考えると適正だが……。
まあいい。

このゲーム、そのように、LVが10違えば『安全』なのだ。
圧倒的な差を見出すことができる。

こいつの自己申告はたしか30だったか……。それがフカしとして、多少高く見積もっても、
40程度だろう。であれば、俺が勝つ。
多少槍の武器性能はいいようだが……他のステータス差を武器一つで補えはしない。


「どうだ!おい……泣いて土下座するなら……八つ裂き程度にしてやるぜ?」

「……それがどうかしたか」

なんだと……!このタコが。
全くビビった様子をみせない、奴に対し、
胸の中にイラつきがこみ上げてきた。

「……てめえ、虚勢はってんじゃねーぞ!51だ!最上層クラスだぞ!
 この中層LVじゃもったいないほどの……」

「俺のLVは『71』だ」

「!」


……!

……い、今、なんていった?


「ハ……ハッタリいってんじゃねえぞ……」

「ハッタリかどうか……身を持って知れ」

奴の言葉が、頭に響く。

71。

七十一。

ななじゅういち。

LV71だと!!

ハッタリに決まってる。

だが……俺の頭を情報がよぎる。
最初、奇襲した時のあの一瞬の移動。見えなかった。
その後の、盾ごとガルシェを貫いた火力。
ガルシェごとぶん回した筋力。
そういえば、タゴンの剣と相打ちになったはずなのに、HPが欠片も減っていない。
そしていくら軽装のアギトでも、満タンからああも即死するだろうか。

……冷や汗が流れる。

まさか本当に……いや……。

そ、そんなはずはねえ……。
攻略組ですら、そんなにないはずなんだ!

混乱しかかる俺に、さらに混乱させる情報が襲いかかった。

「グ、グリフィス……」
「うう……」
「ぐ……」

「!……お前ら!」

生きてる?

そういえば、気にしてなかったが、こいつら、砕け散らずに倒れたままだった。
こいつらはなんで生きてるんだ?
HPは確実にゼロに……いや、1ドット残っている?なぜ?幸運?

「グリフィス……た、助けてくれ……」

アギトらが呼びかけてくる。
くそ……。
この役立たず共がもうちょっと動けてれば……。
ちくしょうが。

その時、壁が眼に入る。

いや……そうだ、閃いたぜ!

「……おい!あ……あんた!」

「……なんだ」

俺の呼びかけに反応し、男が攻撃姿勢は維持してるものの、声を返す。
よし、まだ話を聞く気はある。いけるか?

「こ、降参だ!降参する!
 武器も装備も道具も金も、全部やる!
 いや……

 俺の命もやる!

 だから……だからこいつらの命は助けてくれ!」

「……何?」

明らかに意表をつかれた顔で、奴が返してくる。
よしよし、それでいい。

「ああ……。こ、殺しの計画は俺とリーダーが大半たてたんだ。
 お前の目的は復讐だろう……?
 だ、だから……俺は死んでもいい。だが、こいつらは見逃してくれ!」

「グ、グリフィス……」
「お前……」

3人が、何か感動したように、倒れながらもこっちに寄ってくる。

「……本気か」

奴が、俺を睨んでくる。戸惑っているようだ。
攻撃の意思が、衰えているのを感じる。

やはり、コイツは甘い。思ったとおりだ。
タゴンを瀕死に追い詰めながらトドメていなかったから、そうだろうとは思っていた。

奴の位置を見る。
周りの位置を見る。
3人の位置をみる。
アイテムも確認。

よし、完璧だ。

「ああ……ほら、装備をまず解除するから……
 金もアイテムも全部渡す!

 この……アイテムを……

 オラぁッ!!!!!」

アイテムを渡すふりをして、袋からあるもの……煙玉を取り出し、

そのまま、地面に煙玉を叩きつける。

「何ッ!」

奴が叫ぶが無視。

そしてすぐ……俺は武器を振り回す。

          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
近くにいた……3人に向かって。


「グアッ」「ギャッ」「アガッ」

手応えアリ。
そして、何かが砕け散る音が後に響いた。

俺はそのまま、背後を振り向くと猛ダッシュで壁にかけより……。
そのまま壁をスピードの限り垂直にかけあがり……。

降りてきたときに、仕掛けておいたロープへ捕まる。
最初飛び降りる直前、戻るために準備しておいた脱出用ロープ。

そして、ロープを掴むと、そのまま足元より下のロープを、ナイフで断ち切る。

ここまでわずか数秒。

フハハ……完璧だ!!

完璧な展開!

のぼりつつ、もう一度足元からロープを切り落としながら
アイテム欄を確認する。

今殺した、アギト・ガルシェ・タゴンら3人の装備品やドロップアイテムが、
ぎっしりそこにはつまっていた。

「クククク……ハッハッハ!ハーッハッハッハ!!」

やったぜ!

なんで3人が瀕死で止まってたかしらねえが、奴らを見て、
ロープを降ろしていたのを思い出したときに閃いた。

やれやれ。本来はアギトだけぶっ殺す予定だったんだがよ……。
ま、仕方ねえな。これでも十分だ。計画は臨機応変にいかねえとな。
ギルドは抜けねえといけねえが、まあいい。
リーダーは俺を逃した分の、あいつの恨みを受けるだろうし。
まあソロはソロでやりやすい。どうせオレンジになっちまったしな。
適当に雑魚を殺して楽しむか……。<<ラフィン・コフィン>>とかにいくのもいいな。
しかし、あいつらも多少は使える奴だったが……、まあアイテムと金は有効に使ってやろう。

そこまで考えて、下を見る。
やっと、煙が晴れてきたようだ。

下に、俺を見上げる、あの槍使いが見える。

だが、ロープは既に断ち切られ、登るすべはない。
なんか腕輪なんぞ外してるようだが、何をしようが手遅れだ。
攻撃かって、この高さじゃ届かない。投擲系で死ぬほどひ弱じゃない。
例え鈎縄などの脱出アイテムを試そうが、
もはや俺の脱出には追いつけん。


ハッハッハ!!!最後に勝つのは、頭の良い奴なんだよ。


登り口まで、あと少しだ。

そう思い、崖登りを続け、ロープをたぐる手に力を入れた時だった。

フッと、何か、白い影が見えた気がした。

「ん?」

そう思ったのもつかの間。



――ブツン



……え?



何かの、切れる、音がした。

……いや、俺の目の前で、ロープが斬れた。



……何?

なぜ?

すべては、うまく、いっていたはず……。


だが、現実を受け入れられない俺の考えに反するように、

俺の体は、ゆっくりと、落下していった。



ドサッ!

「ぐうッ!」


なんで……また下に……。

しかも受身を取らずに岩に叩きつけられたせいで、HPが大幅に減少する。


クソッ。


だが、愚痴もそこまでだった。


ザッ……。


足音が、近づく。

ギギギギ……。

俺のクビが、油が切れたブリキの人形のように
ゆっくりと、その方向を向いた。

「よう……また会ったな」

ヒュンヒュンと音が奴の手から鳴り響く。
槍使いの槍が、高速で回転し、その眼は俺を捉えている。

「ゴーくんがいて……本当に良かったというところか」

ゴーくん……?何いってんだ?そ、それよりあれは

(アレは……『スパイラル・チャージ』……)

回せば回すほど威力が上がる超火力の槍の技。
ただし、出はバカみたいに遅く、その場から動くことも何かを防御することも一切できなくなるが……。

だが、既に準備は整っているようだ。

動けば、刺さる。

先ほど頭を貫かれた、あいつらの映像が脳裏に浮かぶ。

あ、アレを食らったら……死、死んじまう!

「お前らは……俺が甘いということを何回も教えてくれる……」

(俺が、死ぬ……?嘘だ!嘘だ!)

「ま、待ってくれ!こ、殺しは、もうしねえ!だから!」

「……だから?」

「た、助けてくれ!頼む!命だけは!」

「さっきも聞いた……貴様らに更生は二度と……絶対に!何があろうと期待しない。
 求めるのはただひとつ……」

男は一拍おいて、口をつむぐ。

「償いだけだ」

「あ、あれは……こ、今度こそほんとだ!助けてくれ!」

「そうか……。じゃあ一つだけ聞いていいか?」

「な、なんだ?」

「お前、お前がさっき殺した奴に、なんて言われた?」


さっき?さっきって……

              ・   ・ ・ ・ ・ ・
(――「グリフィス……た、助けてくれ……!!」)



「あ、あ……!!」


                  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「死ねとは言わない。これは単なるゲームなんだろう?あちら側でまた会おうじゃないか」

「ま、待て!まってく――」





















     「さよなら」


























ある洞窟の。



暗い穴の底。




ポリゴンの、破砕音が、静かに響いた。


























この日、一人の男がPKK(プレイヤーキラーキラー)として、目覚めた。


だが、世間がそれを知るのは、まだしばらく後のことになる。




――――――――――――――――――――――――――――――
第18話「好奇心を”猫”は殺す」 終わり
第19話「それは見てはいけないもの」  へ続く


※なおこの頃のキリトさんもLV71~73の間と推測。時期的にはクリスマスイベントでの2ヶ月後&51層あたりです。またキリトさんは、原作を読む限り、大体最前線の層+20LVぐらいを維持してるようです。
※傷つけただけだと1,2日でオレンジ解除というのは、2巻のキリトの発言によるものです。
  ただ、当作品は今後公式の刊行によるオレンジ設定塗り替えで全崩壊しかねない危険性を常にはらんでいます。ご了承くだしあ。


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