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No.25752の一覧
[0] 犬夜叉(憑依) 【完結】 【桔梗編 第六話投稿】[闘牙王](2012/02/27 00:45)
[1] 第一話 「CHANGE THE WORLD」[闘牙王](2011/04/20 21:03)
[2] 第二話 「予定調和」[闘牙王](2011/04/20 21:08)
[3] 第三話 「すれ違い」[闘牙王](2011/04/20 21:18)
[4] 第四話 「涙」[闘牙王](2011/04/20 21:28)
[5] 第五話 「二人の日常」[闘牙王](2011/04/20 21:36)
[6] 第六話 「異変」[闘牙王](2011/04/20 21:47)
[7] 第七話 「約束」[闘牙王](2011/04/20 21:53)
[8] 第八話 「予想外」[闘牙王](2011/04/20 21:57)
[9] 第九話 「真の使い手」[闘牙王](2011/04/20 22:02)
[10] 第十話 「守るもの」[闘牙王](2011/04/20 22:07)
[11] 第十一話 「再会」[闘牙王](2011/04/20 22:15)
[12] 第十二話 「出発」[闘牙王](2011/04/20 22:25)
[13] 第十三話 「想い」[闘牙王](2011/04/28 13:04)
[14] 第十四話 「半妖」[闘牙王](2011/04/20 22:48)
[15] 第十五話 「桔梗」[闘牙王](2011/04/20 22:56)
[16] 第十六話 「My will」[闘牙王](2011/04/20 23:08)
[17] 第十七話 「戸惑い」[闘牙王](2011/04/20 23:17)
[18] 第十八話 「珊瑚」[闘牙王](2011/04/20 23:22)
[19] 第十九話 「奈落」[闘牙王](2011/03/21 18:13)
[20] 第二十話 「焦り」[闘牙王](2011/03/25 22:45)
[21] 第二十一話 「心」[闘牙王](2011/03/29 22:46)
[22] 第二十二話 「魂」[闘牙王](2011/04/05 20:09)
[23] 第二十三話 「弥勒」[闘牙王](2011/04/13 00:11)
[24] 第二十四話 「人と妖怪」[闘牙王](2011/04/18 14:36)
[25] 第二十五話 「悪夢」[闘牙王](2011/04/20 03:18)
[26] 第二十六話 「仲間」[闘牙王](2011/04/28 05:21)
[27] 第二十七話 「師弟」[闘牙王](2011/04/30 11:32)
[28] 第二十八話 「Dearest」[闘牙王](2011/05/01 01:35)
[29] 第二十九話 「告白」[闘牙王](2011/05/04 06:22)
[30] 第三十話 「冥道」[闘牙王](2011/05/08 02:33)
[31] 第三十一話 「光」[闘牙王](2011/05/21 23:14)
[32] 第三十二話 「竜骨精」[闘牙王](2011/05/24 18:18)
[33] 第三十三話 「りん」[闘牙王](2011/05/31 01:33)
[34] 第三十四話 「決戦」[闘牙王](2011/06/01 00:52)
[35] 第三十五話 「殺生丸」[闘牙王](2011/06/02 12:13)
[36] 第三十六話 「かごめ」[闘牙王](2011/06/10 19:21)
[37] 第三十七話 「犬夜叉」[闘牙王](2011/06/15 18:22)
[38] 第三十八話 「君がいる未来」[闘牙王](2011/06/15 11:42)
[39] 最終話 「闘牙」[闘牙王](2011/06/15 05:46)
[40] あとがき[闘牙王](2011/06/15 05:10)
[41] 後日談 「遠い道の先で」 前編[闘牙王](2011/11/20 11:33)
[42] 後日談 「遠い道の先で」 後編[闘牙王](2011/11/22 02:24)
[43] 珊瑚編 第一話 「退治屋」[闘牙王](2011/11/28 09:28)
[44] 珊瑚編 第二話 「半妖」[闘牙王](2011/11/28 22:29)
[45] 珊瑚編 第三話 「兆し」[闘牙王](2011/11/29 01:13)
[46] 珊瑚編 第四話 「改変」[闘牙王](2011/12/02 21:48)
[47] 珊瑚編 第五話 「運命」[闘牙王](2011/12/05 01:41)
[48] 珊瑚編 第六話 「理由」[闘牙王](2011/12/07 02:04)
[49] 珊瑚編 第七話 「安堵」[闘牙王](2011/12/13 23:44)
[50] 珊瑚編 第八話 「仲間」[闘牙王](2011/12/16 02:41)
[51] 珊瑚編 第九話 「日常」[闘牙王](2011/12/16 19:20)
[52] 珊瑚編 第十話 「失念」[闘牙王](2011/12/21 02:12)
[53] 珊瑚編 第十一話 「背中」[闘牙王](2011/12/21 23:12)
[54] 珊瑚編 第十二話 「予感」[闘牙王](2011/12/23 00:51)
[55] 珊瑚編 第十三話 「苦悶」[闘牙王](2012/01/11 13:08)
[56] 珊瑚編 第十四話 「鉄砕牙」[闘牙王](2012/01/13 23:14)
[57] 珊瑚編 第十五話 「望み」[闘牙王](2012/01/13 16:22)
[58] 珊瑚編 第十六話 「再会」[闘牙王](2012/01/14 03:32)
[59] 珊瑚編 第十七話 「追憶」[闘牙王](2012/01/16 02:39)
[60] 珊瑚編 第十八話 「強さ」[闘牙王](2012/01/16 22:47)
[61] 桔梗編 第一話 「鬼」[闘牙王](2012/02/20 20:50)
[62] 桔梗編 第二話 「契約」[闘牙王](2012/02/20 23:29)
[63] 桔梗編 第三話 「堕落」[闘牙王](2012/02/22 22:33)
[64] 桔梗編 第四話 「死闘」[闘牙王](2012/02/24 13:19)
[65] 桔梗編 第五話 「鎮魂」[闘牙王](2012/02/25 00:02)
[66] 桔梗編 第六話 「愛憎」[闘牙王](2012/02/27 09:42)
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[25752] 第三十一話 「光」
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/21 23:14
「今日で中学生活も終わりかー。」
「あっという間だったね。」
かごめの友人であるあゆみと由加が感慨深げにしながらそんなことを話している。今、かごめたちは最後の授業を終えみんなで一緒に下校をしている最中だった。

「まだ卒業式が残ってるじゃない。」
二人の言葉を聞き笑いながらかごめが会話に加わってくる。しかし友人たちは何か言いたいことがあるような表情でかごめを見つめてきた。

「な……何……?」
その雰囲気に思わず後ずさりをしてしまうかごめ。そんなかごめを見ながら

「いいよねーかごめは。年下の愛しい彼氏がいるもんねー。」
「ほんとほんと。それにあんなに学校休んでたのに第一志望に受かっちゃうんだもん。」
「いいなー。」
三人は次々に言いたいことをかごめにぶつけてくる。

「か……彼氏は関係ないでしょ!それにみんなだって受かってるじゃない!」
顔を赤くしながら慌ててかごめが三人に食って掛かる。しかし三人はそんなことはどこ吹く風といった風にかごめをからかい続ける。かごめは受験が近いということでしばらくの間現代へ戻ってきていた。そして無事に受験も終え第一志望の高校に見事合格したのだった。

「じゃあ来年には彼氏も同じ高校に入ってくるの?」
あゆみが興味深々にかごめに尋ねてくる。残りの二人もその言葉に反応して詰め寄ってくる。

「そうなの、かごめ?」
「かごめちゃんの彼氏にあってみたいな。違う学校の男子なんでしょ?」

「そ……それは……」

かごめは三人の問いに思わず考え込んでしまう。確かに犬夜叉は自分より年下の中学二年生だが今は戦国時代からこちらに来ることができない。元に戻る方法も探してはいるが今のところ具体的に何かを見つけているわけではなかった。

(四魂のカケラ集めが終わったら犬夜叉はどうするつもりなんだろう……?元に戻る方法を探すのかな……でも元に戻れなかったら……私は………)

かごめはこれまで真剣にそのことを考えたことがなかったためにそのまま深く考え込んでしまった。

「全く……またあたしたちのこと忘れちゃってる……。」
「いつものことだけどね。」
「かごめちゃん、最近楽しそうだよね。」

友人たちは一人自分の世界に入り込んでいるかごめを見ながら苦笑いするのだった……。


「ただいま、みんな。」
かごめが元気な声を上げながら楓の家に入ってくる。犬夜叉たちはちょうど昼食も終わり居間でくつろいでいるところだった。

「かごめ、待っておったぞ!」
すぐさま七宝がかごめに抱きついてくる。かごめは約二週間ぶりにこちらの世界に戻ってきたのだった。

「かごめ、受験はどうだったんだ?」
犬夜叉がそれに続くようにかごめに尋ねる。犬夜叉は結局かごめの受験勉強に付き合わされ一緒に勉強をさせられることになってしまった。そこまでしたからにはきちんと受かってくれなければその苦労が無駄になるため犬夜叉は真剣にそのことを心配していた。

「大丈夫、ちゃんと第一志望に受かったわ!」
かごめはそう胸を張って告げる。その言葉を聞き犬夜叉はこれ以上勉強に付き合わされることはないことを知り胸をなでおろす。

「よく分かりませんがおめでとうございます、かごめ様。」
「おめでとう、かごめちゃん。」
事情がよく分かっていない弥勒と珊瑚だったがめでたいことだということは何となく察したのかかごめにお祝いを述べる。

「ありがとう、みんな。」
かごめは上機嫌な様子ではしゃいでいる。楓もそんなかごめを見て苦笑いをするしかない。

「ふん……受験前はあんなにひいひい言ってたくせに……。」
「何か言った、犬夜叉?」

かごめの言葉に誰にも聞こえないように呟いたつもりだった犬夜叉は思わず身震いしてしまう。そしてそのまま痴話喧嘩がはじまり周りがそれを眺めながら笑いを漏らす。犬夜叉一行はいつもと変わらない日常を送っていた……。


かごめの合格祝いがひと段落したところで犬夜叉たちはこれからのことを話し合うことになった。皆の前には今かごめが持っている四魂のカケラが置かれていた。それは玉でいえば三分の一ほどの大きさになるほどの数だった。

「最近はかごめも四魂のカケラの気配を感じなくなったし……カケラも鋼牙の奴から手に入れたのが最後でそれからは一つも手に入ってねえ……。」

犬夜叉は四魂のカケラに目をやった後にかごめたちに視線を向ける。皆犬夜叉が何を言いたいのかは既に分かっていた。

「つまり……四魂のカケラが私たちと奈落が持っているもので全て出揃ったということですね……。」
弥勒が代表してその事実を口にする。犬夜叉は黙ってその言葉を肯定する。

「ああ……一つ訂正すれば琥珀のカケラを含めてだ……。」

「………。」

その犬夜叉の言葉に珊瑚が微かに反応する。犬夜叉は以前桔梗と再会した時に桔梗から琥珀のことを聞いており、珊瑚たちも琥珀が桔梗と行動を共にしていること、琥珀のカケラを使い桔梗が奈落を倒そうとしていることは既に皆知っていた。

「珊瑚……。」

「大丈夫だよ、法師様。琥珀は必ず私の手で助けて見せる。」
弥勒が心配していることに気づいた珊瑚は決意に満ちた顔でそう宣言する。しかし

「『私たち』の間違いじゃねえのか、珊瑚?」
「そうよ、みんなで琥珀君を助けましょう。」
「そうです、桔梗様がカケラを使う前に我々が奈落を倒せばいいのですから。」
「そうじゃそうじゃ!」

犬夜叉たちが次々に珊瑚に声をかけて行く。

「ありがとう……みんな……。」
珊瑚はそんな仲間たちを見て笑顔を浮かべる。みんなと一緒ならきっと琥珀を救い奈落を倒すことができる。そう珊瑚は確信したのだった。

「そういえば犬夜叉、奈落を倒した後お前はどうするのですか?」

これからの方針が決まり一息ついたところで話題を変えようと弥勒が犬夜叉に話しかけてきた。

「なんだよ弥勒、いきなり……」
犬夜叉は突然そんなことを聞かれたため思わず聞き返してしまう。弥勒はそんな犬夜叉の様子に苦笑いしながらさらに続ける。

「いえ、四魂のカケラが出揃ったのですから近いうちに奈落とは決着がつくでしょう。ですからその後お前がどうするのか聞いておきたかったのです。」

「そうだね……何か考えてるの?」
珊瑚もそんな弥勒の言葉に何か感じることがあったのか犬夜叉に尋ねてくる。


「…………そうだな……とりあえずは元の体に戻る方法を探すつもりだ。」
犬夜叉はしばらく考え込んだ後そう答える。最近は四魂のカケラ集めや奈落のことで頭が一杯だったためそれほど考える機会がなかったがとりあえずはそうしようと犬夜叉は考えていた。

「犬夜叉はおらたちと一緒にいるのは嫌なのか?」
七宝は心配そうな声で犬夜叉に尋ねる。七宝は犬夜叉がこの世界にはいたくないのではないかと思いそう尋ねたのだった。

「そんなこと言ってねえだろ!」
七宝の勘違いに気づいた犬夜叉は慌てて弁解する。確かに憑依した当初は早く帰りたくて仕方がなかったが今はこのままこの世界で生きて行くのも悪くないと思い始めていた。

「七宝そこまでにしておきなさい。……犬夜叉、もしよければ私たちもそれに協力させていただけませんか?」
弥勒はそう七宝をなだめながらそう犬夜叉にそう提案する。その様子から犬夜叉はそれが冗談ではないことに気づいた。

「いいのかよ、付いてきても得になることはないと思うぜ?」
犬夜叉としてはありがたいことこの上ないのだが一緒に来てもらっても返せるものは何もないため思わずそう弥勒に言ってしまう。

「何をいまさら。それに犬夜叉、あまり言いたくはありませんが元の体に戻れないことも考えておいたほうがいいでしょう。」
真剣な表情でそう弥勒が告げる。それは厳しいようだったがまぎれもない事実だった。

「………そうだな。」
犬夜叉は弥勒の言葉に素直に頷く。今まで旅を続けてきたが憑依に関することは何一つ分かっていなかった。帰れない可能性のほうがはるかに高いのは明白だった。

「………犬夜叉、もしそうなったときには私たちと一緒に妖怪退治屋をする気はありませんか?」
難しい顔をしている犬夜叉を見つめながら弥勒は唐突にそう犬夜叉に話しかける。

「妖怪退治屋?」

「そうです、お前の強さは折り紙つきですからね。加えて退治屋である珊瑚もいます。お前が一緒に来てくれれば助かるのですが……どうですか?」
それは犬夜叉にとってはこれ以上にない誘いだった。村で畑仕事をすることが嫌いなわけではなかったが犬夜叉はやはりそういう仕事のほうがあっていると自分でも自覚していた。

「俺は構わねえけど……珊瑚はいいのかよ?」
犬夜叉は確認するように珊瑚に目をやる。弥勒の言いようなら珊瑚も一緒に退治屋をするような意味合いが強かったからだ。

「……法師様。あたしはそんなこと全然聞いてないよ?」
珊瑚はそんな犬夜叉を一度見た後弥勒に振り返りそう問いただす。しかし

「それはそうでしょう。今初めて話したのですから。」
しれっとした様子で弥勒はそう切り返す。珊瑚はそんな弥勒を見て溜息を吐いた後

「全く……あたしは全然構わないよ。元々奈落を倒したら退治屋を再開するつもりだったし。それに法師様と犬夜叉が加わってくれるならこちらからお願いしたいくらいさ。」
そう笑いながら犬夜叉に告げる。

「おらも一緒に行くぞ!」
七宝もその話が気に入ったのか犬夜叉の肩に乗りながら元気よくそう宣言する。

「お前ら……。」
犬夜叉はそのまま弥勒たちに目をやる。皆それが当たり前だというような顔で犬夜叉を見つめている。犬夜叉は誰にも聞こえないような声で

「………ありがとな。」

そう呟くのだった。

そんな中かごめは犬夜叉たちを見ながら一人何かをずっと考え続けるのだった。




薄暗い洞窟の中にほとりの男がたたずんでいる。それは狒々の皮を纏った奈落だった。奈落は一人目の前にある泉を見つめ続ける。するとその水面に人の姿が浮かび上がってくる。しかしそれは奈落を映しているものではなかった。現れたのは全身大火傷を負い包帯で体中を巻かれている男の姿だった。

『戻ってきたか……奈落……』

「ふん……戻りたくはなかったがな……。」
奈落は無表情のまま男に答える。

『くくく……そうだろう……お前はこの鬼蜘蛛の心……桔梗を想う心を忌み嫌い体外に出しここに封じ込めていたのだから……』
水面に映っているのは奈落が持っていた鬼蜘蛛の負の心だった。

『だが奈落、貴様はこうして戻ってきた……なぜだ……?』

鬼蜘蛛がそう奈落に問いかける。しかし奈落はそのまま一人深く考え込んでいる。


(四魂のカケラは全て出揃った……犬夜叉たちは確かに厄介だがさらに力を増した今のわしならば葬ることは容易い……だが……)
奈落の脳裏に一人に巫女の姿が浮かぶ。それは桔梗の姿だった。

(桔梗……奴だけは油断ならん……どうやら琥珀と共に行動しているようだが姿を隠しているのか捉えられん。以前四魂のカケラをわしに渡してきたが……奴は間違いなくこの奈落を殺そうとしてくるはず……)

奈落はそのまま己の背中の蜘蛛の形をした火傷に目をやる。それは奈落が半妖であることの証ともいえるものだった。

「この背中の火傷……何度体を組み替えてもなくなることはなかった……。つまりこの奈落にとって鬼蜘蛛……お前の心は切っても切り離せないものだったのだろう……?」

『ふ……ようやくそのことに気づいたか……』
鬼蜘蛛は何をいまさらといったふうに話し続ける。

『人間の心は貴様が忌み嫌うほど悪いものばかりではないぞ……邪な想い、あさましき願い、薄汚い執着……それら桔梗にまつわる人間の負の心は貴様の四魂の玉に闇の力を与える……』

「桔梗を殺すほどの……か。」
その瞬間、奈落から冷たい殺気が溢れだす。

『だからこそ貴様は……わしを取りに戻ったのだろう?』

水の中から一匹の蜘蛛が現れ奈落の手に平に止まる。そしてそのまま蜘蛛は奈落の体に溶け込んでいく。今この瞬間、真の意味で半妖奈落が完成した。

負の心か――――そうだ桔梗を殺すにはそれが一番ふさわしい武器――――

負の心こそわしと桔梗をつなぐもの――――

奈落はそのまま夜の闇に姿を消した………。




ある村の外れで二つの人影が身を隠すように佇んでいた。それは桔梗と琥珀の姿だった。桔梗は結界を張り周りからは自分たちが見えないようにしながら村の様子をうかがっていた。

「桔梗様、村まで下りてきて……何かあったのですか?」
琥珀が今まで身を隠していたにもかかわらず人里に下りることになったことに疑問を持ち桔梗に尋ねる。

「糸だ………恐らくは奈落の……。」
桔梗は目を細めながら琥珀の問いに答える。桔梗の目には村を覆うように広がっている蜘蛛の巣の様なものが見えていた。昨日から桔梗はこの蜘蛛の糸がまるで自分を探すかのように迫ってきていることに気づき移動していた。しかし結界を張っているにもかかわらず糸は桔梗のことを確実に狙って広がって行っていた。

(結界を張っているのに……一体なぜ……それにこの糸からは私に向けられた悪意を感じる……以前どこかで……)
桔梗がそのことに気づき記憶を辿ろうとした時、目の前にいた村の子供に糸が絡みつき子供は意識を失い倒れ込んでしまった。

「咲、どうした!?しっかり……」
母親が娘の異変に気づき慌てて近づこうとするが

「下がって!」
桔梗はそれを間一髪のところで制止する。母親は桔梗が巫女であることに気づきその言葉に従いその場から離れる。そして桔梗はそのまま娘の様子をうかがう。娘は蜘蛛の糸に絡まれ完全に意識を失ってしまっているようだった。

(無関係の娘を使って……どうあっても私に糸に触れさせようという魂胆か……)

桔梗は一目で奈落の思惑に気づく。奈落を倒すことを考えるならこの糸に触れるわけにはいかない。酷なようだが奈落を倒すまではこのままでいてもらったほうがいい。自分には無関係の人間でもある。しかし

「ふっ……。」
桔梗は急に何かに気づいたように笑みを浮かべる。

「桔梗様……?」
そんな桔梗の様子を訝しみながら琥珀が話しかけるも桔梗は笑っているままだった。

(以前の私ならば見捨てていたかもしれん……だが……)

桔梗の脳裏にいつかの光景が蘇る。桔梗は目を閉じた後、娘に向かって手をかざし浄化の力を使った。その瞬間、娘を覆っていた蜘蛛の糸は消え去ってしまった。

「あ……あたし……?」
「咲っ!よかった……!」

目を覚ました娘に母親が涙を流しながら抱きつく。桔梗と琥珀がその光景に安堵した時、村を覆っていた蜘蛛の糸が次々に桔梗に襲いかかってくる。

「桔梗様っ!!」
「琥珀、お前は離れていろ!この糸は私だけを狙っている!」

そう言い放ち琥珀から距離を取りながら桔梗は襲いかかってくる糸を次々に浄化していく。しかしその数は段々と増していき、ついにそのうちの一本が桔梗の腕に巻きついてしまう。そしてその瞬間、桔梗は自分の浄化の力が徐々に失われていくのを感じ取った。

(これは……鬼蜘蛛の悪意!?糸を通して私を汚そうとしている……!!)

そのことに気づき何とか糸を振り払おうとするが弱まった浄化の力ではそれも敵わない。桔梗はそのまま鬼蜘蛛の糸に完全に捕えられてしまった。

「くそ……っ!」
琥珀の目には鬼蜘蛛の糸は見えないが桔梗が何かに捕らえられてしまったことは一目瞭然だった。しかし自分にはどうすることもできない。それでも今の自分にできることしなければ、そう考えた瞬間


「ほう……思ったより早くかかったようだな……。」


琥珀と桔梗の前に邪悪な笑みを浮かべた奈落が姿を現した………。



「かごめっ、こっちであってるんだな!?」
「うん、この先に空から糸の束みたいなものがある!」
犬夜叉の背中に乗っているかごめが叫ぶ。今、犬夜叉たちはかごめが見つけた蜘蛛の糸を空を飛びながら追っている最中だった。

「しかし……我々には見えない糸とは……。」
「やっぱり奈落の仕業かな……?」
雲母に乗っている弥勒と珊瑚がそう話しこんでいる時、犬夜叉は以前感じたことのある感覚に襲われた。

「琥珀だ!琥珀がこの先にいやがる!!」

「琥珀が!?」
「匂いで分かったのですか!?」
珊瑚と弥勒が犬夜叉の言葉に驚きながらも尋ねる。しかし蜘蛛の糸の先はまだ遠く匂いで分かる距離ではなかった。しかし犬夜叉はその気配が間違いなく琥珀であることを確信していた。

「っ!私も感じたわ!間違いなく琥珀君よ………それに近くにもう一つ大きい四魂のカケラの気配がある……奈落だわ!!」
かごめも四魂のカケラの気配を感じ取り犬夜叉の言葉を肯定する。そして奈落が琥珀に迫っていることが分かり一行に緊張が走る。

「……飛ばすぞ!しっかり捕まってろ、かごめ!!」
「うん!!」
そう言いながら犬夜叉は飛ぶ速度を上げる。それに合わせて雲母も速度を上げついてくる。

(桔梗……無事でいてくれ……!!)

犬夜叉は鉄砕牙を握りしめながらひたすらに琥珀の気配に向かって飛び続けるのだった……。



「奈落っ!!」
突如姿を現した奈落の驚きながらも距離を取り琥珀は戦闘態勢を取る。しかし奈落はそんな琥珀を嘲笑うかのように何の反応も示さなかった。

「ふん……死にかけの分際でこのわしに歯向かうつもりか?まあいい……貴様は後回しだ……まずは桔梗、貴様に死んでもらう……。」
そう言いながら奈落は悠然と桔梗に迫って行く。

「く……っ!」
桔梗は残った力を振り絞り破魔の矢を放つ。しかしそれは奈落の結界の前に難なく弾かれてしまった。桔梗はそれで力を使い果たしてしまったのか地面にうずくまってしまう。

「まだそんな力が残っていたか……だが無駄だ。仮にお前が万全の状態だったとしてもわしを傷つけることはできん。」
奈落は桔梗を見下ろしながら触手を体から生み出しその切っ先を桔梗に向ける。しかし

「…………」
桔梗はまだ何か考えがあるのかそのまま鋭い目つきで奈落を睨み続けていた。奈落はそんな桔梗に気づいた後

「なるほど……そういうことか……だが残念だったな……。」
その触手で桔梗の体を貫いた。

「ぐ……っ!!」
「桔梗様っ!!」
琥珀がすぐさま桔梗に走り寄るしかし新たな触手が次々に襲いかかり琥珀はそれに捕まり身動きが取れなくなってしまう。桔梗は痛みにうめきながらも驚愕の表情で奈落を睨みつける。

「奈落……貴様……!!」

「ふ……どうやら鬼蜘蛛がいた洞窟の土を身に纏っていたようだな。確かにそれがあればわしはお前に触れることができなかっただろう。以前のわしならな……。」
奈落はそんな桔梗をあざ笑うかのように言葉をつなぐ。

「どういうことだ……?」
桔梗が息も絶え絶えに奈落に問いただす。桔梗は奈落との戦いにそなえ自分を想う鬼蜘蛛の心を利用しようと考え洞窟の土を身に纏っていた。どんなに取り繕ったところで奈落は鬼蜘蛛をつなぎに使った半妖。それならば自分を傷つけることはできない。以前死魂虫を使ってきたのも自分が手を下すことができないからこその策だった。にも関わらず奈落はいともたやすく自分を傷つけてきた。

「貴様も気付いているのではないか……?貴様をからめ取っているその糸は鬼蜘蛛の負の心……わしはそれを完全に受け入れた……貴様が相手だとしても何の問題もない、いやそれどころかさらに力が増してくるほどだ……。」
そう奈落が告げた瞬間、触手から桔梗の体に瘴気が注ぎ込まれる。その強力さに桔梗の体は悲鳴を上げ傷口が広がって行ってしまう。奈落はそのまま桔梗を自分の元に引き寄せ抱きかかえる。

「くくく……どうだ、憎いわしの腕に抱かれながら死にゆく気分は……?」
奈落は桔梗を見据えながら心底面白いといった様子で笑い続ける。

「憐れだな桔梗。お前が死にかけているというのに愛しい犬夜叉はかごめと共にいる。」
奈落はさらに言葉を続ける。しかし

「…………」
桔梗はそんな奈落を睨みながらも口を開こうとはしなかった。

「無駄だ桔梗、貴様とわしは蜘蛛の糸でつながっている。だから―――伝わってくるぞ。わしに対する憎しみと軽蔑と―――犬夜叉への未練がな。」

(犬……夜叉………)

桔梗はそのまま目を閉じる。そして奈落は桔梗の心に感じる違和感に気づく。

(なんだ……これは……この心は……犬夜叉への物ではない……?)

そのことに気づき桔梗を問いただそうとした瞬間



「桔梗―――っ!!」

犬夜叉の鉄砕牙が桔梗を捕えていた触手を切り裂いた。

「何っ!?」
いきなりの犬夜叉の奇襲に奈落は思わずたじろぐ。そして

「飛来骨!!」
その隙を狙い珊瑚が飛来骨で琥珀をからめ取っていた触手を切り裂き琥珀を救いだす。

「姉上っ!!」
「琥珀、しっかり捕まって!」
珊瑚は琥珀の手を取りそのまま奈落から距離を取る。犬夜叉も桔梗を抱きとめたまま地面に降り立つ。

「大丈夫か、桔梗!?」
「犬夜叉……?」
桔梗はまだ事態が飲み込めていないのかうつろな反応を示す。犬夜叉はそのまま桔梗の体に目をやる。その体は肩が砕かれ瘴気によって蝕まれていた。

「犬夜叉、桔梗は私に任せて!」
かごめがそのことに気づき慌てて二人に近づいてくる。かごめは桔梗を支えながら地面に横にする。そしてそのまま桔梗の体にある奈落の瘴気を浄化しようと試みる。

「かごめ……」
「今はしゃべらないで、絶対助けて見せる!」
桔梗は一点の迷いも見られないかごめの姿を見ながら

「すまない……。」
そう告げるのだった。


「ふ……少し遅かったようだな犬夜叉。桔梗はもう助からん。我が瘴気を体に送り込んでやったのだからな……。」
戦闘態勢を取りながら奈落は犬夜叉を嘲笑うかのように挑発する。その体から強力な妖気と邪気が溢れだしてくる。その力によって辺りの森は次々に蝕まれ枯れ果てて行く。

「奈落……今度こそ逃がさねえ……ぶっ殺す!!」
犬夜叉は鉄砕牙に妖力を込めその切っ先を奈落に向ける。二人の間に緊張が走る。そして犬夜叉はそれを破るかのように上空に飛び上がった。

「はあっ!!」
犬夜叉がそのまま奈落に向かって鉄砕牙を振り下ろす。しかしそれは奈落の結界に阻まれてしまう。

「ふ……忘れたのか、貴様の攻撃はわしの結界を破ることはできん。」
奈落はそのまま触手で犬夜叉を貫こうと力を込める。しかし

「なめるなっ!!」
犬夜叉がさらに鉄砕牙に力を込める。その瞬間、奈落の結界にひびが入り始める。鉄砕牙の刀身には風の傷が纏っていた。それは犬夜叉が殺生丸との修行で編み出した技だった。

「ちっ!」
このままではまずいと悟った奈落はそのまま犬夜叉と距離を取ろうとする。しかし犬夜叉も空を飛びそれに喰いついていく。両者は一進一退の攻防を繰り広げていた。


「雲母、この場を離れるよ!急いで!!」
珊瑚の言葉に答えるように雲母は速度を上げ上空に離脱しようとする。珊瑚と弥勒は事前の打ち合わせで琥珀のカケラを守るために琥珀を先に安全場所まで逃がすことになっていた。珊瑚と弥勒の攻撃が奈落には通用しないこと、風穴の使用も難しいことから奈落の相手は犬夜叉とかごめがすることになっていた。そしてそのままこの場を離脱しようとした時、大量の蜘蛛の糸が珊瑚たちを襲った。

「く……っ!」
「これは……!?」
突然の事態に珊瑚と弥勒が驚きの声を上げる。糸の先には森から次々にはい出てくる巨大な蜘蛛の大群の姿があった。


「逃がすとでも思ったか……?そやつらはわしの体から生み出した分身、貴様らを相手にするならそやつらで十分だ。」

奈落は珊瑚たちを見据えながらそう告げる。巨大な蜘蛛たちは珊瑚たちを逃がすまいと次々に糸を放ってくる。何とか抵抗し続けるがついに雲母の足に糸が絡まり地上に引きずり下ろされてしまう。

「珊瑚!弥勒!」
犬夜叉はその様子に焦り助けに入ろうとするが奈落の触手がそれを邪魔するかのように犬夜叉に襲いかかってくる。犬夜叉は何とかそれらを斬り払いながら奈落に対峙する。

「てめえ……。」

「お前の相手はわしではなかったのか?助けに入っても無駄だ。貴様らの持つ四魂のカケラと琥珀のカケラを奪いわしは完全な四魂の玉を手に入れる。そのために犬夜叉……貴様たちには死んでもらうぞ。」
そう奈落が口にした瞬間、これまでとは比べ物にならない程の数の触手が犬夜叉に迫る。犬夜叉はそれをまっすぐに見据えながら鉄砕牙を構える。そして

「風の傷っ!!」
全力の風の傷を奈落に向かって放った。凄まじい妖力波が触手を薙ぎ払っていく。しかし奈落はそれを見ながらも余裕の表情を崩さない。

「無駄だ。それではわしを傷つけることはできん。」
絶対の自信を持って奈落は風の傷を結界で受け止める。しかしその瞬間、結界は風の傷によって消し飛ばされてしまった。

「何っ!?」
そのまま奈落は風の傷に飲み込まれてしまった。

(………やったか?)

犬夜叉は鉄砕牙を構え油断なく奈落がいた煙に覆われた場所を睨みつける。殺生丸との修行によって犬夜叉は風の傷の威力を増すことができていた。そして何よりも犬夜叉自身は気づいていないがこれまでの約一年間のうちに成長した半妖としての力が目覚め始めていることが大きな理由だった。

煙が徐々に晴れて行く。そしてそこには黒い鎧甲を纏った無傷の奈落の姿があった。

「な……っ!?」
思わず犬夜叉は驚愕の声をあげてしまう。いくら結界があったとはいえ全くの無傷であるとは考えもしなかったからだ。そして同時に奈落が纏っている鎧甲の正体に気づく。

(あれは……冥王獣の鎧甲!!)
冥王獣の甲羅はどの妖怪よりも硬いといわれる物。記憶の中では魍魎丸がそれを取り込みそれは犬夜叉の金剛槍破ですら傷をつけることができない程の堅さを誇っていた。

「わしの結界を破るとはな……だがこの冥王獣の鎧甲は何人にも破ることはできん。」
奈落の強さは自らの体を組み替えることで力を増しさらに他の妖怪を取り込むことでその力を我がものにできるところにあった。奈落の激しい攻撃が犬夜叉を襲う。犬夜叉はそれを何とか防ぎ続けるが犬夜叉の攻撃は奈落には通用しない。このままでは消耗したところをやられてしまう。

(ちくしょう……!)
そのことを理解しながらも犬夜叉は時間を稼ぐことしかできなかった。

「そんな……どうして……!?」
かごめは桔梗を救うために浄化の力を使い続ける。しかしいくらやっても桔梗の体にある奈落の瘴気を浄化することができなかった。

「もういい……かごめ……私のことはいい……それよりも犬夜叉を援護してやれ、このままでは犬夜叉も……。」
桔梗は痛む体を何とかごまかしながら起き上がりかごめにそう告げる。

「でも……。」

「この瘴気はただの瘴気ではない……鬼蜘蛛がもつ負の心を含んでいるもの……いくらお前でもこれを浄化することはできん……。」

「そんな……。」
桔梗の言葉を聞きながらかごめは自分には何もできないことに絶望してしまう。

「気にするな……元々私は死人……この世にあるべきものではない……だからかごめ……犬夜叉に力を貸してやれ、それは私にはできないことだ……。」
桔梗はそんなかごめを見ながらそう言葉をつなぐ。そしてかごめは桔梗の言葉を胸に刻みながら弓を取り出し構える。

(私の矢でもあの鎧はきっと砕けない……なら……!)

かごめは弓に力を込めながら目を凝らす。そして奈落の体の四魂のカケラの場所を見抜いた。
「犬夜叉、合わせて!!」
かごめはそう叫ぶと同時に破魔の矢を奈落に向かって放つ。それは一直線に奈落に向かって飛んで行った。そして犬夜叉は一瞬でかごめの意図に気づく。矢はそのまま奈落の体に突き刺さるもやはりその鎧甲を傷つけることはできなかった

「ふん、無駄だ。破魔の矢であってもわしを傷つけることはできん。」
そう奈落が嘲笑った瞬間

「ここかっ!!」
犬夜叉が破魔の矢が突き刺さっている場所に向かって鉄砕牙を振り下ろした。

(こいつ……まさか四魂のカケラを狙って……!?)
奈落はかごめと犬夜叉の狙いに気づく。だが

「風の……傷!!!」
犬夜叉は鉄砕牙を鎧甲に押し込んだまま全力の風の傷を放つ。その衝撃で犬夜叉の火鼠の衣は裂け体には無数の傷ができていく。それは零距離で風の傷を放った代償だった。

「貴様……死ぬつもりか!?」
「死ぬのはてめえだけだ!!」
犬夜叉の気迫に奈落が戦慄する。鉄砕牙がその衝撃に悲鳴を上げる。しかし奈落の鎧甲にひびが入りそれがどんどん広がって行く。それにあわせるように犬夜叉の体は風の傷によって血だらけになっていく。そして鎧甲がついに砕けようとした瞬間

「なめるなっ!!」
奈落はその力を振り絞り何とか犬夜叉を振り払う。犬夜叉はそのまま地面にたたき落とされてしまった。だが奈落の鎧甲には大きな割れ目ができてしまっていた。

(おのれ……このままでは……ならば!!)
奈落は犬夜叉のその隙を突いてその矛先をかごめに向ける。そしてそのまま触手をかごめに向かって放ってきた。

「こんなもの!」
かごめはそれを見ながら慌てずに結界を張る。しかし触手はその結界を難なく溶かし襲いかかってきた。それは溶命樹と呼ばれる結界を溶かす樹の力を奈落が取り込んでいたためだった。

「きゃあっ!」
かごめはそれを何とか間一髪のところで躱す。しかしその衝撃で四魂のカケラが入った小瓶が地面に落ち割れてしまう。かごめは咄嗟にそれらを拾い上げようとするが

「熱っ!?」
かごめは四魂のカケラが放つ熱によってカケラに触れることができなかった。そしてその隙に奈落の触手がカケラを奪い去ってしまう。

「そんな……どうして!?」
かごめはこれまで起こったことのない事態に戸惑う。そしてカケラは全て奈落の手の元にわたってしまった。

(これは……一つになろうとする四魂の玉の意志か……?)
桔梗がその様子を見つめながら考える。

「確かにいただいたぞ……四魂のカケラ!」

奈落はかごめが持っていた四魂のカケラを取り込んだことでさらに妖力を増す。先程まで割れていた鎧甲も治り結界もより強固なものとなってしまう。奈落に手には玉の形になりほぼ完成された黒い四魂の玉が握られていた。

「くそ……!」
何とか起き上がりながら犬夜叉は奈落を見上げる。先程まででほぼ互角の力だった奈落が四魂のカケラをさらに手に入れてしまった。犬夜叉とかごめは絶望的な状況に陥ってしまっていた……。



「飛来骨!!」
「はあっ!!」
珊瑚と弥勒が襲いかかってくる巨大な蜘蛛に向かって攻撃を仕掛ける。何とか何匹かは退治することができたがこの蜘蛛たちにも完全ではないとはいえ冥王獣の鎧甲が使われているため倒すことは困難を極めていた。

「ちくしょう!!」
珊瑚が残る力を振り絞りながら飛来骨を放つ。それは何匹かの蜘蛛の足を砕いていくが蜘蛛はその数を減らすことはなかった。既に周りは取り囲まれており逃げ場もない。珊瑚たちは絶体絶命の危機に陥っていた。

(このままでは……)
弥勒は自らの右手の風穴に目をやる。以前の奈落との戦いで傷が広がり、さらに時間の経過によっての広がりも続いている。蜘蛛たちも奈落の邪気を大量に含んでいる。風穴を使えば自分は今度こそ死んでしまうかもしれない。しかしそれでも……

(珊瑚……お前を死なすわけにはいかん!!)

弥勒は決意し右腕の封印に手をかける。

「法師様!?」
そのことに気づいた珊瑚が思わず悲鳴を上げる。しかし

「珊瑚!!琥珀を連れてこの場を離れなさい!!」
弥勒は有無を言わさぬ勢いでそう告げる。そして右腕の風穴を解放する。その瞬間、蜘蛛たちは次々に風穴に吸い込まれていく。しかしそのたびにその邪気が弥勒を蝕んでいく。だがそれでも弥勒は風穴を閉じようとはしなかった。珊瑚はその姿を見ながら

「琥珀……雲母に乗ってここから離れるんだ。できるな?」
そう告げた。


「姉上……?」
琥珀は珊瑚の様子に違和感を感じる。そして次の瞬間、珊瑚は弥勒の元に元に駆け出して行った。


(これは……想像以上にきついな………)
弥勒は朦朧とした意識の中でそれでも右腕を構え続ける。邪気によって体は蝕まれ口からは大量の血が流れている。そしてついにその膝が地面につこうとした時


弥勒の手に珊瑚の手が重ねられた。

「珊瑚……?」
弥勒は信じられないものを見たような顔で自分を支えている珊瑚に目をやる。珊瑚はそんな弥勒を見ながら

「今度はあたしが法師様を助けるって約束したからね……。忘れたとは言わせないよ。」
そう微笑みながら告げた。弥勒はあっけにとられた表情を見せた後

「そうでしたね……頼りにさせてもらいますよ、珊瑚。」

そう軽口を叩く。二人は寄り添い合うように支え合いながら戦っていた。


「姉上……みんな………」
自分のために命をかけて戦ってくれる珊瑚たちを前に琥珀はそのまま立ちつくしてしまう。そして琥珀は自分の体にある四魂のカケラの浄化の光に気づく。


(そうだ……俺は決めたんだ……二度と逃げないって………だから!!)
琥珀は自分の戦う意味を見つけ走り出した。そして弥勒と珊瑚の元に向かい風穴を無理やりに閉じさせる。

「な……っ!?」
「琥珀っ!?」
いきなり自分たちの前に現れ風穴を無理やり閉じられた二人は驚きのあまり尻もちを突いてしまう。琥珀はそんな二人に微笑みながら

「姉上……みんな……こんな俺のために……本当にありがとう。俺……行きます……それが俺の役目だから!!」

絶対の決意を持って琥珀は奈落の元に向かっていく。

「琥珀……琥珀――――!!!」
珊瑚はそんな琥珀に向かって叫び続けることしかできなかった……。




「ハァ……ハァ……」
犬夜叉は満身創痍の体を何とか支えながら奈落に向かう。対する奈落は全くの無傷。結界も鎧甲も健在だった。かごめも霊力を使い果たし座り込んでしまっている。犬夜叉はかごめと桔梗を庇いながら何とか凌いでいたが限界に近付いていた。

「ふ……ここまでだな……よくやったとほめてやりたいが遊びは終わりだ……。」

奈落の体からこれまでとは比べ物にならに程強力な妖気と触手が現れる。犬夜叉はそれでもそれに立ち向かうように鉄砕牙を構える。そして奈落の攻撃が犬夜叉たちを襲おうとした瞬間、一本の鎖鎌が奈落の結界に突き刺さる。それは琥珀が放ったものだった。

「琥珀!?」
「琥珀君!?」
犬夜叉とかごめがそれに驚きの声を上げる。しかし桔梗は琥珀を黙って見続けていた。

「琥珀か……わざわざ最後の四魂のカケラを持ってきてくれるとはな……。」
奈落はそのまま触手の矛先を琥珀に向けそのまま琥珀を捕える。琥珀はそれにも関わらず鋭い視線で奈落を睨みつけ続ける。

「馬鹿な奴だ……親、仲間を殺し姉を傷つけ挙句の果てにこのわしに最後のカケラまで差し出しながら死ぬことになるのだから。」
奈落は琥珀の心を抉るように挑発する。しかし琥珀はそんな奈落の言葉にも全く動じず

「俺は……許されない罪を犯した……いまさらそれが許されるなんて思っていない……それでも……」


「俺一人では死なない……お前も道連れだ、奈落!!!」
そう慟哭する。

「戯言を……望み通りあの世に送ってやる!!」
奈落の触手が琥珀の体を貫く。その瞬間、琥珀の体にあった四魂のカケラが奪われてしまう。そしてもう用はないとばかりに琥珀は地面に向かって放り出される。琥珀がそのまま地面に激突するかといったところで

「琥珀っ!!」
珊瑚が何とか琥珀を抱きとめる。しかし琥珀はそのまま動かなくなってしまった。

「そんな……琥珀………」
珊瑚はそのまま地面に座り込み琥珀に縋りつく。その目には涙が溢れていた。犬夜叉たちはその様子を黙って見続けることしかできなかった。


「ついに手に入れたぞ……四魂の玉……!!」
奈落は手に入れた琥珀のカケラをそのまま取り込もうとする。しかしその瞬間、まばゆい光が奈落を襲った。その光は四魂のカケラにも入り込み四魂の玉の汚れを浄化していく。

(これは……浄化の光!?わしを玉ごと浄化する気か!?)

光が力を増し次々に奈落の体を壊していく。しかし奈落の瘴気もそれを押し返さんと抗う。玉の中では霊力と邪気が闘っていた。

「あれが……琥珀君のカケラの浄化の光……」
かごめが奈落の姿を見ながらそのことに気づく。琥珀はこれを狙い自分の命をかけて奈落に向かっていった。それは琥珀が自ら選んだ道だった。それでも

(それでも……他に方法はなかったの……?)
かごめはそのまま桔梗に目を向ける。その表情からは桔梗の感情を読み取ることはできなかった。

そしてそのまま奈落が滅せられるかと思われた時

「はあっ!!」
奈落が邪気の力によって浄化の光を押し込め琥珀のカケラを弾きだした。そして奈落の傷ついた体はその瞬間、またたく間に再生していく。

「そんな………。」
最後の頼みの綱である浄化の光までもが奈落の邪気に負けてしまった。

「くそ……!!」
犬夜叉は悔しさに顔を歪ませながら弾きだされた琥珀のカケラを取り戻す。そしてその瞬間、犬夜叉は奇妙な感覚に囚われる。

(これは………!!)

犬夜叉はこの時、自分の役割と運命を悟った。



「珊瑚………。」
弥勒がふらつきながら琥珀に縋りつきながら泣いている珊瑚に近づいていく。そして珊瑚に声をかけようとした時、


琥珀が息をしていることに気づいた。

「珊瑚…琥珀が……!!」
「え……?」
珊瑚が弥勒の言葉に気づき顔を上げた瞬間、

「姉……上……?」
琥珀はゆっくりと目をあける。琥珀は間違いなく生きていた。そのことに驚き珊瑚たちは思わず固まってしまう。琥珀もなぜ自分が生きているのか分からない様子だった。犬夜叉たちが戸惑っていると

「浄化の光の力を……お前に分け与えた……これでお前は四魂のカケラがなくとも命をつなぐことができる……。」
桔梗がそう琥珀に告げた。

「桔梗様………。」
琥珀は信じられないといった表情で桔梗を見つめる。珊瑚はそのまま琥珀にしがみつき泣き続ける。弥勒もそのことに安堵したのかその場に座り込んでしまった。

「桔梗……お前……どうして……?」
犬夜叉がそう桔梗に尋ねる。琥珀に力を分け与えなければ恐らく奈落を倒すことができたはずだったからだ。桔梗は犬夜叉を見据えながら

「人を助けるのに理由なんてない……そうだろう……?」

そう微笑みながら答えた。




「ふん……とんだ茶番に付き合わされたわ……。」
奈落の声が犬夜叉たちに響き渡る。その言葉に犬夜叉たちは再び身構える。奈落は浄化の光でダメージはほとんど残っていないようだった。

「琥珀を救うためにこのわしを殺す唯一の機会を逃すとはな……桔梗……お前はこれで完全な無駄死にというわけだ……。」

奈落は瀕死の桔梗を見ながらそう嘲笑する。桔梗は既に身動きが取れない程瘴気に蝕まれてしまっておりもう長くないことは誰の目にも明らかだった。

「無様だな犬夜叉……貴様はまた桔梗を救うことができなかった……そしてこれから他の仲間たちもその後を追うことになる……。」

奈落はそう言いながら戦闘態勢に入る。かごめたちにはもう戦う力残されていなかった。


どうしようもできない絶望に皆があきらめかけたその時、


犬夜叉の鉄砕牙が震えていることにかごめは気づいた。

「犬夜叉……?」

かごめは恐る恐る犬夜叉に声をかける。鉄砕牙が震えているのは犬夜叉の手が震えていたからではなかった。それは鉄砕牙自身が震えているために起きていることだった。そしてその瞬間、七宝と雲母が急に震えだす。

「どうしたの、七宝ちゃん、雲母!?」
突然の出来事にかごめが慌てて七宝に近づく。七宝はそのまま地面に座り込んでしまった。

「おら……おら……!」
七宝自身も自分に何が起こっているのか分からないようだった。そして再び犬夜叉に目をやろうとした時、辺りは凄まじい妖気に包まれた。

「なっ……!?」
「これは……!?」
珊瑚と弥勒が突然の出来事に思わず声を上げる。その妖気は犬夜叉から発せられているものだった。しかしその妖気はとても犬夜叉が放っているものとは思えないようなものだった。その衝撃で珊瑚たちは犬夜叉のそばから吹き飛ばされてしまう。

「珊瑚ちゃん、弥勒様!!」
かごめがその様子に叫び声を上げると同時に砂埃があたりを覆ってしまう。そしてそれが収まった後には妖怪化をした犬夜叉の姿があった。

目は赤く、頬には痣の様な物が浮かび、爪はさらに鋭くとがっている。その姿は間違いなく妖怪そのものだった。

「そんな……どうして……?」
かごめはその姿に思わず膝に力が抜けその場に座り込んでしまう。犬夜叉は鉄砕牙のおかげでもう妖怪化は抑えられたはずだった。にもかかわらず犬夜叉は鉄砕牙を握ったまま妖怪化してしまっていた。

鉄砕牙は犬夜叉の妖怪の血を抑える守刀。それを手にしている限り犬夜叉は妖怪化することはない。しかし犬夜叉自身が成長し飛躍的に力をつけたこと。そして怒りの感情によって妖怪の血が呼び起されてしまったことで犬夜叉の妖怪の血の力を鉄砕牙が抑えきれなくなってしまった。鉄砕牙の震えはそのために起こっていることだった。
以前、初めて奈落と戦った時にも同じことが起こったがその時はまだ犬夜叉が未熟であったためすぐに抑え込むことができていたがその力はもはや鉄砕牙では抑えきれないところまで来ていた。そしてその強力すぎる妖気に妖怪である七宝と雲母は恐怖し身動きが取れなくなってしまっていた。それは大妖怪と妖怪の絶対的な力の差から生じるものだった。そしてそれは奈落といえど例外ではなかった。

(な……なんだこれは……体の震えが止まらん!?こ……このわしが!?)
奈落が自分に起こっていることが何なのか理解しようとしたその時、奈落は凄まじい衝撃に襲われそのまま地面にたたき落とされた。その衝撃で地面はクレーターができてしまっていた。

「ぐ……!」
奈落は何とかその場がら起き上がるそして顔を上げた先には妖怪化した犬夜叉が悠然とこちらを見下していた。

「貴様……!!」
奈落はすかさず触手を犬夜叉に向かって放つ。しかし犬夜叉は全く動じず鉄砕牙を振り下ろす。その剣圧によって触手は吹き飛び奈落を守る結界も消し飛んでしまった。

「ば……馬鹿な……!?」
風の傷ならいざ知らず剣圧のみで自分の結界を破られたことに驚愕する奈落。犬夜叉はそんな奈落の様子を見て笑みを浮かべる。それはまるで子供が虫を殺して無邪気に遊んでいるような表情だった。そして鉄砕牙の刀身が風の傷に包まれていく。犬夜叉はそれを大きく振りかぶり、全力で振り切った。その衝撃で辺りの森は次々に吹き飛んでいく。奈落は風の傷に巻き込まれ吹き飛んでしまった。



「珊瑚、かごめ様を!!私は桔梗様を連れてこの場を離れます!!」
「分かった!!」
弥勒と珊瑚は二人を連れ全速力でその場を離れる。このままその場にとどまれば自分たちも殺されてしまう。人間である二人も本能でそのことに気づいていた。



「が……は……」
朦朧とした意識の中で奈落は何とか意識を取り戻す。その体は既にバラバラだった。鎧甲は粉々に砕けてしまっている。それでも四魂のカケラの力で何とか再生をしようとした瞬間、その体に鉄砕牙が突き立てられた。

「ぐあああああっ!!」
「どうした、もう終わりか?」
犬夜叉はつまらないといったような表情で奈落を見下ろす。奈落はそんな犬夜叉に戦慄する。今の犬夜叉は殺生丸に匹敵する強さを手に入れていた。

「き……貴様一体……!?」
奈落は息も絶え絶えにそう問いただす。自分は半妖である犬夜叉と戦っていたはずだ。それが何だ。目の前にいる犬夜叉はまさに妖怪そのもの。いやそれ以上の存在だった。

「俺の体に流れてる妖怪の血はお前なんぞとは格が違うんだ!!」
そう言いながら犬夜叉は手で奈落の頭を掴みながら引きずり起こす。その目は相手を殺すことができるという喜びに満ちていた。

「ひっ………!!」
奈落はこの瞬間、生まれて初めて『恐怖』を感じた。そしてそのまま犬夜叉が奈落の頭を砕こうとした瞬間


「やめて、犬夜叉―――――っ!!!」

かごめの絶叫が辺りに響き渡った。犬夜叉はその声に反応し一瞬動きを止める。奈落はその隙に逃げ出してしまう。しかし犬夜叉はそんなことには全く気付かずかごめの姿を凝視する。その目には涙が溢れていた。その姿は少年がもう二度と見たくないと思っていたかごめの姿だった。


「かごめ………」
犬夜叉の手から鉄砕牙が抜け落ちる。それと同時に妖怪化は解け元の半妖の犬夜叉に戻った。そのことに気づいたかごめはそのまま犬夜叉に抱きついてくる。犬夜叉はそのまま立ちつくすことしかできなかった。

(俺は……一体何を……相手を殺すことを……楽しんでた……?)
そのことに気づき犬夜叉は辺りを見渡す。そこには全てが破壊しつくされた光景が広がっていた。その惨状に犬夜叉は言葉を失う。

(これを俺が………)

「犬夜叉……もう大丈夫なの?」
かごめが心配そうに犬夜叉に話しかける。

「ああ……大丈夫だ……。」
犬夜叉は心を落ち着かせながらそう答える。妖怪化によって体の傷は全て治ってしまっていた。

「私……恐かった……犬夜叉が……犬夜叉じゃなくなっちゃうんじゃないかって……。」

かごめは泣きながらそう犬夜叉に告げる。犬夜叉はその言葉に何も答えることができなかった……。




犬夜叉たちは傷ついた桔梗を連れて安全な場所まで移動をした。桔梗の傷は深くもう持たないことは明らかだった。犬夜叉は静かな森の中で桔梗を抱きかかえていた。空には星空が広がっていた。

「犬夜叉……本当に何ともないのか……?」

「お前……人の心配してる場合かよ……!」
自分が死にかけているにもかかわらず自分を気遣う桔梗に犬夜叉は思わず怒鳴ってしまう。
桔梗はそんな犬夜叉を見ながら

「すまないが……奈落のことはお前たちに任せる……。」
そう犬夜叉たちに後のことを託す。


「桔梗……。」
かごめが申し訳なさそうな表情で桔梗に話しかける。桔梗はそんなかごめを見ながら
「かごめ……お前は私の様になるな……。」
そう静かに告げる。

「え………?」
かごめはその言葉の意味を尋ねようとするが

「ひとつ……頼みがある……楓に伝えてくれ………長い間、辛い思いをさせてすまなかったと………。」
桔梗はそうかごめに遺言を託す。桔梗の体から力が抜けて行く。そのことを感じ取った犬夜叉は涙は流しながら

「すまねえ……桔梗……俺はお前に何もしてやれなかった………。」
そう呟く。桔梗はそんな犬夜叉の頬に手を添えながら

「私はお前のおかげで誰かを怨みながらではなく……誰かを想いながら逝くことができる……誰かに看取られながら………そして……」

桔梗はまっすぐに犬夜叉を見つめながら


「お前は来てくれた………それでいい……。」

いつかみた笑顔で犬夜叉に微笑みかける。その瞬間、桔梗は光に包まれる。それは桔梗の魂の光だった。

(犬夜叉………今、会いに行く………)

桔梗の魂はそのままかごめの中に戻って行く。それは桔梗の魂が長い旅路を終えたことを示していた。


(温かい……)
かごめはその温かさに涙する。そしてそのまま犬夜叉に寄り添いながら

「犬夜叉………今は……泣いていいのよ………。」
そう優しく告げる。

「う…う……うああああああああ!!」

犬夜叉はかごめに縋りながら泣き続ける。それは少年が初めて親しい人の死に流した涙だった。

珊瑚たちはそんな二人を見守りながら桔梗を悼む。そして犬夜叉たちの手には最後の四魂のカケラがある。




犬夜叉とかごめ、二人の旅の終わりが近づいていた――――


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