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No.25752の一覧
[0] 犬夜叉(憑依) 【完結】 【桔梗編 第六話投稿】[闘牙王](2012/02/27 00:45)
[1] 第一話 「CHANGE THE WORLD」[闘牙王](2011/04/20 21:03)
[2] 第二話 「予定調和」[闘牙王](2011/04/20 21:08)
[3] 第三話 「すれ違い」[闘牙王](2011/04/20 21:18)
[4] 第四話 「涙」[闘牙王](2011/04/20 21:28)
[5] 第五話 「二人の日常」[闘牙王](2011/04/20 21:36)
[6] 第六話 「異変」[闘牙王](2011/04/20 21:47)
[7] 第七話 「約束」[闘牙王](2011/04/20 21:53)
[8] 第八話 「予想外」[闘牙王](2011/04/20 21:57)
[9] 第九話 「真の使い手」[闘牙王](2011/04/20 22:02)
[10] 第十話 「守るもの」[闘牙王](2011/04/20 22:07)
[11] 第十一話 「再会」[闘牙王](2011/04/20 22:15)
[12] 第十二話 「出発」[闘牙王](2011/04/20 22:25)
[13] 第十三話 「想い」[闘牙王](2011/04/28 13:04)
[14] 第十四話 「半妖」[闘牙王](2011/04/20 22:48)
[15] 第十五話 「桔梗」[闘牙王](2011/04/20 22:56)
[16] 第十六話 「My will」[闘牙王](2011/04/20 23:08)
[17] 第十七話 「戸惑い」[闘牙王](2011/04/20 23:17)
[18] 第十八話 「珊瑚」[闘牙王](2011/04/20 23:22)
[19] 第十九話 「奈落」[闘牙王](2011/03/21 18:13)
[20] 第二十話 「焦り」[闘牙王](2011/03/25 22:45)
[21] 第二十一話 「心」[闘牙王](2011/03/29 22:46)
[22] 第二十二話 「魂」[闘牙王](2011/04/05 20:09)
[23] 第二十三話 「弥勒」[闘牙王](2011/04/13 00:11)
[24] 第二十四話 「人と妖怪」[闘牙王](2011/04/18 14:36)
[25] 第二十五話 「悪夢」[闘牙王](2011/04/20 03:18)
[26] 第二十六話 「仲間」[闘牙王](2011/04/28 05:21)
[27] 第二十七話 「師弟」[闘牙王](2011/04/30 11:32)
[28] 第二十八話 「Dearest」[闘牙王](2011/05/01 01:35)
[29] 第二十九話 「告白」[闘牙王](2011/05/04 06:22)
[30] 第三十話 「冥道」[闘牙王](2011/05/08 02:33)
[31] 第三十一話 「光」[闘牙王](2011/05/21 23:14)
[32] 第三十二話 「竜骨精」[闘牙王](2011/05/24 18:18)
[33] 第三十三話 「りん」[闘牙王](2011/05/31 01:33)
[34] 第三十四話 「決戦」[闘牙王](2011/06/01 00:52)
[35] 第三十五話 「殺生丸」[闘牙王](2011/06/02 12:13)
[36] 第三十六話 「かごめ」[闘牙王](2011/06/10 19:21)
[37] 第三十七話 「犬夜叉」[闘牙王](2011/06/15 18:22)
[38] 第三十八話 「君がいる未来」[闘牙王](2011/06/15 11:42)
[39] 最終話 「闘牙」[闘牙王](2011/06/15 05:46)
[40] あとがき[闘牙王](2011/06/15 05:10)
[41] 後日談 「遠い道の先で」 前編[闘牙王](2011/11/20 11:33)
[42] 後日談 「遠い道の先で」 後編[闘牙王](2011/11/22 02:24)
[43] 珊瑚編 第一話 「退治屋」[闘牙王](2011/11/28 09:28)
[44] 珊瑚編 第二話 「半妖」[闘牙王](2011/11/28 22:29)
[45] 珊瑚編 第三話 「兆し」[闘牙王](2011/11/29 01:13)
[46] 珊瑚編 第四話 「改変」[闘牙王](2011/12/02 21:48)
[47] 珊瑚編 第五話 「運命」[闘牙王](2011/12/05 01:41)
[48] 珊瑚編 第六話 「理由」[闘牙王](2011/12/07 02:04)
[49] 珊瑚編 第七話 「安堵」[闘牙王](2011/12/13 23:44)
[50] 珊瑚編 第八話 「仲間」[闘牙王](2011/12/16 02:41)
[51] 珊瑚編 第九話 「日常」[闘牙王](2011/12/16 19:20)
[52] 珊瑚編 第十話 「失念」[闘牙王](2011/12/21 02:12)
[53] 珊瑚編 第十一話 「背中」[闘牙王](2011/12/21 23:12)
[54] 珊瑚編 第十二話 「予感」[闘牙王](2011/12/23 00:51)
[55] 珊瑚編 第十三話 「苦悶」[闘牙王](2012/01/11 13:08)
[56] 珊瑚編 第十四話 「鉄砕牙」[闘牙王](2012/01/13 23:14)
[57] 珊瑚編 第十五話 「望み」[闘牙王](2012/01/13 16:22)
[58] 珊瑚編 第十六話 「再会」[闘牙王](2012/01/14 03:32)
[59] 珊瑚編 第十七話 「追憶」[闘牙王](2012/01/16 02:39)
[60] 珊瑚編 第十八話 「強さ」[闘牙王](2012/01/16 22:47)
[61] 桔梗編 第一話 「鬼」[闘牙王](2012/02/20 20:50)
[62] 桔梗編 第二話 「契約」[闘牙王](2012/02/20 23:29)
[63] 桔梗編 第三話 「堕落」[闘牙王](2012/02/22 22:33)
[64] 桔梗編 第四話 「死闘」[闘牙王](2012/02/24 13:19)
[65] 桔梗編 第五話 「鎮魂」[闘牙王](2012/02/25 00:02)
[66] 桔梗編 第六話 「愛憎」[闘牙王](2012/02/27 09:42)
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[25752] 第二十三話 「弥勒」
Name: 闘牙王◆53d8d844 ID:e8e89e5e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/13 00:11
桔梗との接触の翌日、犬夜叉たちは四魂のカケラの気配を頼りに森の中を進んでいた。犬夜叉はかごめの体の心配し一旦楓の村に帰ることを提案したのだがかごめの説得によりそのまま旅を続けることになったのだった。

「本当に大丈夫なの、かごめちゃん?」
珊瑚が心配そうにかごめに話しかける。珊瑚と七宝も桔梗との事情については既に犬夜叉から聞かされていた。

「ありがとう、珊瑚ちゃん。本当に大丈夫だから。それよりもごめんね、四魂のカケラ取られちゃって……。」
そう申し訳なさそうに謝るかごめ。既に半分近くの四魂のカケラをかごめたちは集めていたのだがそのすべてを桔梗に奪われてしまっていた。

「おら、犬夜叉とかごめにひどいことをする桔梗なんて嫌いじゃ!」
「七宝ちゃん……。」
桔梗の事情については理解しているものの自分にとって父親、母親同然の二人に怪我をさせた桔梗を七宝はどうしても許すことができなかった。

「気にするなかごめ。四魂のカケラはまた集めればいいさ。」
犬夜叉はそう言いその場を収めようとする。しかし

「でも四魂のカケラを集めていけばいつかは戦わなきゃいけないかもしれないね……。」
難しい顔をしながら珊瑚はそう呟く。犬夜叉とかごめはその言葉に何も返すことができなかった……。

しばらく森を進んでいるとかごめが四魂のカケラの気配を感じ取った。しかし

「気配が二つある…?」
「うん、一つはあの森の頂上あたりに。もう一つはあの村のあたりに感じるの。」
かごめは指をさしながら皆に説明する。

「でも村のほうの四魂のカケラの気配は…なんていうか霧がかかってるみたいにはっきりしないわ……。」
かごめは今まで感じたことのない感覚に戸惑っているようだった。

「どうする、犬夜叉?」
珊瑚は振り向きながらが犬夜叉に尋ねる。

「とりあえず村のほうに行ってみよう。そっちのほうが近いしな。」
犬夜叉の言葉によって一行は村に進路を向けた。しかし村の近くに辿り着いたあたりで犬夜叉は急に足を止めた。

「どうしたんじゃ犬夜叉?」
七宝が犬夜叉の肩に飛び移りながら話しかける。

「人の死体だ……。」
かごめたちは犬夜叉の視線の先に旅人らしき男性の死体が森の中にあることに気付いた。

「野垂れ死にじゃろうか……?」
恐る恐る七宝が死体に近づく。死体はまるで血を抜きとられてしまったかのように干からびてしまっていた。

「ひどい……。」
かごめはその姿に言葉を失くしてしまう。

「妖怪の仕業だね……。村に入ってからも用心したほうがよさそうだ……。」
「そうだな……。」
犬夜叉は珊瑚の言葉に頷く。一行は緊張した面持ちで村に入って行った。

しかし予想に反し村は活気に満ち溢れていた。様々な商人が店を構え人が溢れかえっている。

「村は妖怪には襲われてないのかな……?」
「多分そうだろうね……。」
かごめの言葉に珊瑚が答える。もし妖気に村が襲われているのならこんなに人が村に集まるはずはなかった。

「これからどうする、犬夜叉?」
かごめがそう犬夜叉に話しかけようとするが既に犬夜叉の姿は近くに見当たらなかった。

「犬夜叉?」
かごめが慌てて周囲を見渡すと犬夜叉と七宝は既に市場のほうに入って行ってしまっていた。

「見ろ犬夜叉、果物が一杯あるぞ!」
「金ならある、七宝好きな物買っていいぞ!」
「ほんとか!?」
犬夜叉と七宝は子供のようにはしゃいで買い物をしていく。

「全く、あれほど用心していこうって言ったのに……。」
珊瑚が呆れながら二人の姿を眺める。

(犬夜叉楽しそう……)
かごめははしゃぎながら七宝と騒いでいる犬夜叉を眺めながら考える。

(本当なら学校に行ったりして普通に暮らしてるはずだもんね……もし元の体に戻れたら一緒に学校に行ったり、買い物に行ったりできるかな……あ、でもみんなに見つかるとからかわれちゃうかも……それにまだ付き合ってるわけじゃないし……)
かごめが一人でどんどん妄想を膨らませていると

「かごめちゃん、どうしたの?」
珊瑚がその様子を見て心配したのか声をかけてきた。

「え、何!?」
いきなり話しかけられて慌てて我にかえるかごめ。

「なんだか考え事してたみたいだったけど……。」
「し、してない。変なことなんて考えてないんだから!」
かごめはしどろもどろになりながら答える。珊瑚はそんなかごめを見ながら

(変なこと考えてたのか……)
冷静にそう分析するのだった……。

その後犬夜叉と七宝をなんとか落ち着かせ一行は再び村の入り口に集まっていた。
「でもこれだけ人がおるとカケラを探すのも大変ではないか?」
「そうね……。」
この村にあると思われる四魂のカケラの気配はおぼろげであるため近くになければかごめも見つけることが難しかった。どうしようかかごめが考えていると

「カケラは多分弥勒が持ってるものだ…。」
犬夜叉がなぜか確信をもったようにそう告げる

「どうしてそんなことが分かるの?」
「この札に残ってる弥勒の匂いをこの村に入ってから感じるんだ。」
そう言いながら犬夜叉は前に寄った村の領主から見せられた破魔の札を見せる。
この札は前の村で弥勒がインチキのお祓いで使ったものだった。さらに記憶の中では初めて弥勒に出会った時、弥勒は既にいくつかの四魂のカケラを持っておりかごめがカケラの気配を感じにくいのも恐らく法力か何かで気配を隠しているのだと犬夜叉は考えていた。

「じゃあ二手に分かれて探そう。その方が効率もいいし。」
犬夜叉の説明を聞いていた珊瑚が皆にそう提案する。

「そうだな。」

「じゃああたしと七宝は向こうから村を見て行くから犬夜叉とかごめちゃんは反対からお願い。」

「うん、じゃあ後で珊瑚ちゃん、七宝ちゃん。」
そして一度そこで二手に分かれ犬夜叉たちは弥勒の捜索を始めるのだった。


「じゃあ探して行こうか、七宝、雲母。」
そう言いながら珊瑚は通行人たちに目を配って行く。しかししばらくして七宝が何か言いたそうな様子でこちらを見つめていることに珊瑚は気づいた。

「どうしたの、七宝?」
珊瑚はそんな七宝を見ながら不思議そうに話しかける。七宝は何かを考えるようなそぶりを見せた後

「珊瑚は犬夜叉と一緒に行かなくて良かったのか?」
そう珊瑚に尋ねる。

「え、どうして?」
いきなりそんなことを言われるとは思っていなかった珊瑚は疑問の声を上げる。さらに七宝は

「珊瑚は犬夜叉のことが好きなのではないのか?」
そう珊瑚に問いただしてきた。その言葉に思わず足を止めてしまう珊瑚。少しの間の後

「……気づいてたんだ、七宝。」
珊瑚は苦笑いをしながら七宝に話しかける。

「おらの目は節穴ではないぞ!」
そう言いながら七宝は胸を張る。といっても犬夜叉とかごめ以外の村の者は皆そのことには気づいていたのだが。

「確かに犬夜叉のことは好きだけど……あの二人の間に割って入るなんてできないしね……。」
珊瑚は少し悲しげな顔をしながら自分の素直な気持ちを七宝に語る。珊瑚は助けられたという恩を抜きにしても犬夜叉に対して好意を抱いていた。しかし犬夜叉とかごめの互いを想い合っている様子、二人の絆を見て身を引くことにしたのだった。

「珊瑚……。」
七宝は心配そうな様子で珊瑚を見つめる。珊瑚はそのことに気付き

「だから七宝、このことは二人には言っちゃだめだよ。」
そう微笑みながら告げる。

「分かった、おら口は固いからの!」
七宝は威張りながらそう元気よく答える。珊瑚たちはそのまま弥勒の捜索を続けていった。




「ちょっと犬夜叉まだなの?」
かごめがどこか慌てた様子で犬夜叉に話しかける。

「うるせえな、いろんな匂いが混じり合ってわかんねーんだよ!」
犬夜叉はかごめの言葉を聞き流しながら地面に残った匂いで弥勒を探し出そうと
地面に這い蹲っていた。しかし人の行き来が激しい道で半妖の犬夜叉が地面に這い蹲っているため通行人が集まって人だかりができてしまっていた。

「も~人が集まってくるし~っ!」
かごめは恥ずかしさのあまり赤面してしまう。

「弥勒の奴どこに行ってるんだ~?」
しかし犬夜叉はそんなかごめの様子にもお構いなしに匂いを嗅ぎ続ける。

「こんな人里に妖怪か……?」
集まってきた通行人たちが騒ぎ始める。

「ほら~、犬夜叉匂いで探すのはあきらめましょう!?」
かごめが人の目にとうとう耐えきれなくなったのか犬夜叉に懇願する。しかし

「男はともかく…あの娘の姿……。」
「妖怪かの?」
「妖怪じゃ。」
人々はかごめの制服を見ながらそんなことを囁き始める。

「え、私!?」
自分まで注目の的になっていることに気付いたかごめは涙目になりながら声を上げる。

「ふん、人のこと言えねえじゃねえか。」
犬夜叉はそんなかごめを見ながらぼやくのだった。




(はあ~ついてねえ~。)
大きなため息をつきながら弥勒は頭を抱えていた。目の前には美しい着物を着た女性たちが演奏をしながら舞を披露している。

「仰せの通り、とびっきりの上玉を集めました。」
この店の店主である老女が弥勒にそう告げる。

「これがそうですか……。」
弥勒がうんざりしたような様子でそれに答える。目の前にいる女性たちはとても上玉とは思えないような女性ばかりだった。

(前の村で稼げたのはよかったがここにはまともな女もいやしねえ……)
弥勒は自分の懐にある小箱に手をやる。その小箱には何枚かの札が貼られていた。

(四魂のカケラなんて面倒なもんも拾っちまったしな……。札で気配が分からないようにはしてるがどうしたもんかな。捨てるわけにもいかねえし……。)

そんなことを考えていると表が騒がしくなっていることに弥勒は気づいた。
そして慌ただしい音と共に目の前の障子が勢いよく開かれる。

「邪魔するぞ!」
「ごめんなさい……。」
そこには自信満々の犬夜叉と恥ずかしそうにしているかごめの姿があった。

弥勒と犬夜叉たちとの目が合う。犬夜叉はすぐに弥勒に話しかけようとするが

「おおっ、あなたは!」
弥勒のほうがそれより早く反応し犬夜叉たちに近づいてくる。そして犬夜叉の横を素通りし
「地獄に仏とはこのことだ、目が洗われるようです。」
かごめの手を握る。そしてかごめを見つめながら

「私の子を産んでくださらぬか?」
そう力強く告げる。

「は?」
かごめはそんな弥勒にあっけにとられてしまうのだった……。



犬夜叉たちと弥勒はとりあえず場所を移し事情を説明することになった。

自分たちは四魂のカケラを集めており同時に奈落を倒すために追っていること。
犬夜叉には未来予知の様な力があり風穴を持っている弥勒のことを知り仲間に勧誘しに来たことなどを弥勒に伝えた。

「風穴のことまで知っておられるとは……どうやら世迷言ではないようですね……。」
弥勒は右腕の封印された風穴を見ながら呟く。

「俺たちといたほうが奈落にも近づきやすいと思う。仲間になってくれねえか?」
犬夜叉が真剣な様子で弥勒に頼みこむ。そんな犬夜叉の様子を見てかごめもそれに続く。

「早く奈落を倒さないと死んじゃうんでしょ?私たちと一緒のほうが早く奈落を倒せると思うんだけど……。」

「かごめ様……私の身を案じてくださるのか……。」
弥勒は真剣な表情でそのままかごめに近づいてくる。かごめは自分の言葉に耳を傾けてくれたと思い安堵する。しかし次の瞬間

弥勒の手がかごめの尻を撫でまわした。

「きゃあっ!!」
思わず悲鳴をあげ弥勒から離れるかごめ。

「い…犬夜叉っ!!」
そのまま犬夜叉に向かって助けを求めようとしたかごめだったが犬夜叉は怒るどころか感心したようにその様子を眺めていた。

「何感心してみてるのよ!助けてよ!」

「お、おお。悪い…つい……。」
犬夜叉は記憶の中で弥勒がこういう人物であることは知っていたが本当に女性の尻をためらいなく触っている光景を見て驚きより思わず感心してしまっていた。

「これは失礼を。ただのお連れに見えたが…かごめ様は犬夜叉に惚れて…いやこれは失礼。」
弥勒は二人の様子を見ながらそう謝罪する。二人は弥勒の言葉で真っ赤になってしまう。

「ちっ…違うわよ!犬夜叉は…その…弟みたいなものなんだから!」
「おい!いつ俺がお前の弟になったんだ!?」
「う、うるさいわね!」
「なんだと!」
そのまま二人は痴話げんかを始めてしまう。どうしたものかと弥勒が考えていた時

「何やってるの、二人とも?」
珊瑚と七宝、雲母が騒ぎに気付き近づいてきた。

「おお、またも美しいおなごが……。」
そう言いながら弥勒が珊瑚に向かって手を伸ばそうとするが珊瑚は弥勒の手をつねりながらそれを阻止する。

「あなたが弥勒って人?」
「は…はい……。」
弥勒は痛みに耐え苦笑いしながらそれに答える。

(不良法師か……犬夜叉が言ってことは本当だったんだね……。)
珊瑚は弥勒を冷めた目で見ながらそんなことを考えていた。


犬夜叉とかごめが落ち着きを取り戻したところで改めて弥勒の返答を聞くことになった。

「美しいお二人の御誘いは嬉しいのですか…どうも私は人様と深く関わり合うのが苦手な性分でして……。」
少し迷いながらもそう告げる弥勒。

「そうか……。」
犬夜叉は何とか引き留める手はないかと考える。かごめはまた弥勒に触られないよう犬夜叉に縋りついている。

(あたしは別に誘ってないんだけど……)
珊瑚は呆れたように弥勒の様子を眺めていた。そして犬夜叉が口を開こうとした時

「妖怪だ!妖怪が出たぞー!!」
大きな叫び声が村に響き渡る。その声に村にいた人々はパニックに陥ってしまう。

「何だ!?」

「とにかく行ってみよう!」

犬夜叉たちは慌てながら声の下方向に向かって走り去っていく。

「全く、慌ただしい方々だ……。」
そして弥勒はその場に一人取り残されてしまった。



現場に辿り着いた犬夜叉たちは何人かの村人が血を抜かれて死んでいる光景に出くわす。

「これは…森で死んでた人たちと同じ……。」
かごめが先刻見た光景を思い出しながら呟く。

「みんな、上だ!!」
匂いで妖怪に気付いた犬夜叉はそう叫ぶ。村の上空には無数の鳥の様な妖怪が群れをなしていた。

「あれは…妖怪鳥!人間の血を吸うタチの悪い妖怪だ!」
珊瑚が飛来骨を構えながら犬夜叉たちに伝える。そして群れの中に人型の妖怪がいることに気付く。

「さあ、お前ら食事の時間だよ。一人残らず殺しちまいな。」
それは女性の姿をした妖怪だった。そしてその言葉が合図になったのか鳥たちが一斉に村に向かってくる。

(あれは…阿毘姫(あびひめ)!!)

犬夜叉は阿毘姫を見ることで記憶を思い出す。記憶の中では阿毘姫はその母親である鉄鶏(てっけい)の毒を治すために人間の血を集めていた。しかしそれを奈落に利用され最期には奈落の手によって殺されてしまった。


「かごめ、七宝!村のみんなを守ってやってくれ!」

「うん、分かった!」
「ま…任せろっ!」
かごめと七宝は犬夜叉の言葉に従い村人たちのほうに向かって走って行く。

「行くぞ珊瑚、雲母!!」
「ああ!!」
犬夜叉は鉄砕牙を鞘から抜き鳥に向かって飛びあがって行く。珊瑚も雲母に乗りながらその後に続く。

「邪魔だっ!」
犬夜叉は鉄砕牙で鳥たち次々に斬り払う。そして

「飛来骨!」
珊瑚は犬夜叉が取りこぼした鳥たちを飛来骨で薙ぎ払っていく。

「何だ、お前たち!?」
突然現れ鳥たちを殺された阿毘姫は噴怒の表情で犬夜叉たちに向かって叫ぶ。

「てめえこそなんだ!奈落に手を貸してんのか!?」
犬夜叉は裏で奈落が手を引いているのではないかと疑い問いただす。しかし

「何をわけのわからないことを……。食事の邪魔をするなら容赦しないよ!!」
阿毘姫はそのまま手に炎を纏わせそれを犬夜叉に向けて放ってきた。

「くっ!」
犬夜叉はそれを後ろに飛んで躱しながら考える。

(奈落に手を貸してるわけじゃなさそうだ…。それに食事って言葉……母親は毒にやられてねえのか!?)

どうやら時期が違うため記憶の中とは状況が異なっているようだった。しかし阿毘姫の攻撃のせいで隙が生じ何匹かの鳥たちが村に入って行ってしまった。
鳥たちは村の一角に村人たちが固まっていることに気付く。そしてそこに目がけて襲いかかってきた。

「ひいっ!」
「もうダメじゃあ!」
村人たちがそれに怯え悲鳴を上げる。そして鳥たちが村人に襲いかかった瞬間、鳥たちは見えない壁の様な物に阻まれてしまう。それはかごめが張った結界の力だった。

「みんな、私から離れないで!!」
かごめが村人に向かって叫ぶ。かごめは犬夜叉や珊瑚ができない部分を補うために楓から結界の張り方を学んでいたのだった。

「狐火っ!!」
七宝が結界の中から炎を出し鳥たちを追い払う。しかし鳥たちはあきらめないのか何度も結界に向かってきていた。阿毘姫はそんな様子を見ながらかごめが結界を張っていることに気付く。

「お前たちあの妙な格好をしている女を殺しな!そいつが結界を張ってるんだ!」

「てめえっ!!」
犬夜叉が飛び上がり鉄砕牙で斬りかかるも阿毘姫はさらに上空に逃げてしまう。

(ちくしょう……!)
空中戦になると飛べない自分はどうしても後手に回ってしまう。風の傷もあるがその間合いに引き込む必要があった。

「犬夜叉、そいつはあたしに任せな!」
珊瑚がそう言いながら阿毘姫に向けて飛来骨を投げつける。

「ちっ!」
阿毘姫はそれを何とか躱しそのまま炎で反撃をする。

「雲母!!」
珊瑚の言葉に応えるように雲母は炎を躱しながら阿毘姫を追っていく。珊瑚と阿毘姫はそのまま一進一退の攻防を繰り広げる。そして犬夜叉はその隙にかごめの援護に向かった。
しかしそれよりも早く鳥たちがかごめに向かって襲いかかる。かごめの結界を張る手に力がこもる。そして鳥が目の前に迫った時一つの人影がかごめの前に現れ鳥たちを斬り伏せた。

「え……?」
最初は犬夜叉が来てくれたのかと思ったかごめだったがそれは違っていた。目の前には錫杖を構えた弥勒がかごめを庇うように立っていた。

「これ以上は黙って見ていられませんな……。」
そう言いながら弥勒は右手の封印の数珠に手をかける。

「皆の集、風穴を開きます!私から離れなさい!」
弥勒は犬夜叉と珊瑚にも聞こえるよう大きな声でそう叫ぶ。

「「っ!!」」
その意図に気付いた犬夜叉と珊瑚は弥勒の前方から距離を取る。

「何だ……?」
阿毘姫がいきなり離れて行った珊瑚たちを訝しんだ瞬間、

「風穴っ!!」
弥勒の右腕の封印が解かれ風穴の力が解放される。そして鳥たちは何かに吸い込まれるような巨大な力に襲われた。

「なっ!?」
阿毘姫の視線の先には弥勒の右手に次々に吸い込まれていく鳥たちの光景が広がっていた。


(すごい…これが風穴…!!)
弥勒の後ろに隠れながらかごめは目の前の光景に目を奪われていた。まるでブラックホールに吸い込まれるように鳥たちが風穴に吸い込まれていく。犬夜叉から話は聞いていたが実際に目の当たりにするとその凄さに恐怖すら感じた。

(くそっ…ここはいったん引くしか…!)
阿毘姫は自分たちの不利を悟りそのまま村から逃げようとする。しかしその隙を珊瑚は見逃さなかった。

「逃がすか、飛来骨!!」
飛来骨が凄まじい勢いで阿毘姫に迫る。そしてそのまま阿毘姫は飛来骨によって両断されてしまう。

「そんな……この……私が……。」

力を失った阿毘姫はそのまま鳥たちと共に風穴に飲み込まれていった……。


「ふう……終わりましたか……。」
弥勒はそのまま右手の風穴を閉じ安堵の声を上げる。風穴は使えば使うほど広がってしまうため弥勒はできる限り風穴を使わないようにしていた。しかし今回は場合が場合なので使わざるを得なかったのだが。

そして村人たちも安心しかけたその時、巨大な鳥が村に降り立ってきた。その妖気も阿毘姫とは比べ物ならないほど巨大なものだった。

「何者です!?」
村人たちを守るように前に出ながら弥勒が問いかける。

「よくも私の娘を殺してくれたね……。村ごと皆殺しにしてくれる!!」
巨大な鳥は阿毘姫の母親である鉄鶏だった。そしてただでさえ強力な妖怪であるにも関わらず四魂のカケラを使っているためさらに妖力が増してしまっていた。

(これは……風穴を使わなければ厳しそうだな……!)
弥勒は迷いながらも右手に手をかけようとする。しかしその瞬間犬夜叉が弥勒を庇うように前に現れた。

「てめえが親玉だな……。」
そう言いながら犬夜叉は鉄砕牙を構える。

「ふん、半妖風情がこの私に楯突こうっていうのかい?」
鉄鶏はそんな犬夜叉を見て嘲笑いながら言葉をつなぐ。

「関係ねえ、俺はお前らが気に食わねえから倒すだけだ!」
犬夜叉は鉄鶏の殺気と妖気を浴びながらも何食わぬ顔でそう告げる。弥勒はその様子を見て犬夜叉の加勢に入ろうとするが

「大丈夫、犬夜叉なら心配ないわ。」
かごめが弥勒にそう話しかける。

「しかし……」
そう弥勒が何か言いかけた瞬間

「死ねえええ!!」
鉄鶏の口から犬夜叉に向けて巨大な炎が放たれる。犬夜叉はそれを避ける間もなく炎に飲み込まれてしまう。その後辺り一帯は焼け野原に代わってしまっていた。

「ふん、半妖如きが私に逆らうからさ。」
そう言いながら鉄鶏が弥勒たちにその矛先を向けようとした時、炎の中に人影があることに気付いた。

「なっ……!?」
そこには火傷一つ負わずに無傷でたたずんでいる犬夜叉の姿があった。
犬夜叉は鉄砕牙の鞘の力と火鼠の衣によって炎から身を守っていた。そしてまさか自分の攻撃を受けて無傷で済むものがいるとは思わず鉄鶏はそのまま怯んでしまう。

「悪いが手加減はしねえ……。」
犬夜叉はそのまま鉄砕牙に妖力を込める。その刀身から風の傷が渦巻く。そして

「風の傷っ!!」
犬夜叉は全力で鉄砕牙を振り切った。凄まじい風と衝撃があたりを襲う。その威力によって鉄鶏の体は粉々に砕け散ってしまった。弥勒はその様子を呆然とした様子で眺めていた。

(まさかこれほどとは……)
弥勒は阿毘姫との戦いを見ている限りでも犬夜叉はかなりの実力者だとは思っていたがここまで圧倒的だとは思っていなかった。
そして弥勒は残骸の中に四魂のカケラがあることに気付く。

(ちっ、せっかく見つけた四魂のカケラも邪気まみれか。おれには危なくて触れねえ……。)
四魂のカケラは鉄鶏に喰われた人間の血によって邪気にまみれてしまっていた。仕方なくそのままあきらめようとした時

「これ、誰が持つ?手伝ってもらっちゃったし……。」
そういいながらかごめは無造作にカケラに手を伸ばす。

「あ……。」
弥勒はそれを止めようとするがかごめはあっさりとカケラを拾い上げてしまった。それを見た弥勒は

「…かごめ様がお持ちください。」
そう告げる。

「いいの?」
かごめはすぐにそんなことを言われるとは思っていなかったのか驚くように尋ねる。

(この女、カケラの邪気を浄化した……)
弥勒はそのまま少し考えるようなしぐさを見せてから

「その代わり、私も旅に同行させていただきたい。」
そう犬夜叉たちに頼んできた。

「いいのか、弥勒?」
犬夜叉としては願ったり叶ったりなのですぐに了承したかったが一応弥勒に確認する。

「ええ、皆さんお強いようですし……何より美しいおなごと一緒のほうが楽しいですからな。」
そういいながらかごめと珊瑚に目を向ける。しかしかごめはその言葉におびえるように珊瑚の背中に隠れてしまう。

「もしまたかごめちゃんに手を出したら許さないからね……。」

「……はい。」
冗談ではない雰囲気を発しながら珊瑚が弥勒に忠告する。そんな様子に苦笑いするしかない犬夜叉。そして

「よろしく頼む。弥勒。」
「よろしくね、弥勒様。」
「……よろしく、法師様。」
「よろしく頼むぞ、弥勒!」

四人が弥勒に向かって告げる。

「こちらこそよろしくお願いします。」
弥勒は笑いながらそれに答える。

この瞬間、新たに弥勒が仲間に加わった。




「そういえば一つ犬夜叉に確認しておかねばいけないことがありました……。」
真剣な様子で犬夜叉一人に弥勒が話しかけてくる。

「何だ、弥勒……?」
犬夜叉もそれに合わせ真剣な表情で弥勒の話に聞き入る。そして弥勒は

「かごめ様と珊瑚、どちらが本命なのですか?それともお二人とも…?」
真面目にそんなことを聞いてきた。

「…………。」

この時犬夜叉は初めて本気で弥勒を仲間にしたことを後悔したのだった……。


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