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No.25529の一覧
[0] 【チラシの裏から移動】蒼神/人舞(GOD EATER×ワンピース)[Ray](2011/11/26 22:33)
[1] プロローグ[Ray](2011/01/20 00:14)
[2] 第1話 ウソップ海賊団入団[Ray](2011/01/22 15:55)
[3] 第2話 仲間[Ray](2011/02/19 11:56)
[4] 第3話 ヴァイオレンスウェイトレス[Ray](2011/01/28 16:19)
[5] 第4話 クリーク襲来[Ray](2011/03/08 23:36)
[6] 第5話 世界最強の剣士[Ray](2011/02/02 19:43)
[7] 第6話 新しい仲間”サンジ”[Ray](2011/03/08 23:37)
[8] 第7話 アーロンパーク到着[Ray](2011/03/08 23:37)
[9] 第8話 誇り[Ray](2011/03/08 23:40)
[10] 第9話 人喰らいのカリギュラ[Ray](2011/03/08 23:43)
[11] 第10話 蒼刃・氷女[Ray](2011/03/08 23:44)
[12] 第11話 アラガミの宴[Ray](2011/03/20 21:59)
[13] 第12話 いざ、偉大なる航路へ[Ray](2011/03/24 09:54)
[14] 第13話 リヴァース・マウンテン[Ray](2011/04/07 12:51)
[15] 第14話 愚者の所業[Ray](2011/04/09 20:58)
[16] 第15話 ゾロの夢、ウソップの出会い[Ray](2011/04/23 16:14)
[17] 第16話 新しい仲間“サリー”[Ray](2011/04/23 16:59)
[18] 第17話 前夜祭[Ray](2011/06/16 02:53)
[19] 第18話 カルネヴァーレ(1) グロ注意[Ray](2011/06/21 00:07)
[20] 第19話 カルネヴァーレ(2) グロ注意[Ray](2011/07/21 15:28)
[21] 第20話 カルネヴァーレ(3) グロ注意[Ray](2011/07/26 22:13)
[22] 第21話 後夜祭[Ray](2011/08/11 19:45)
[23] 第22話 新しき因縁[Ray](2011/08/25 14:37)
[24] 幕間1 アラガミがいる麦わらの一味の日常[Ray](2011/11/26 16:59)
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[25529] 第8話 誇り
Name: Ray◆6fb36f09 ID:4cd0596b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/08 23:40
「グゴー…zzz」

 ジョニー達と別れてしばらく経った。
 未だにルフィは道のど真ん中で寝ている。

「おい」

 サンジがゾロに声をかけた。

「カリギュラちゃんの言葉を疑うわけじゃないが、ナミさんは本当にあの長っ鼻を殺してねぇのか?」
「どうかね、おれが一度“小物”って発破掛けちまったから、勢いで殺っちまったかもな」

 やれやれ、ゾロの喧嘩っ早いところはどうにかならんのかね。

「ナミさんが小物だと!?」

 サンジの顔面がひきつる。
 それと同時に、道の向こうから懐かしい声が聞こえてきた。

「おお!あそこに居んのはゾロに…カリギュラ達もいるのか!おーい!お前達まだアーロンパークに―――」
「あ、キャプテン、そのタイミングだとゾロの鞘打ちとサンジの蹴りに―――」

「確かにカリギュラちゃんよりは小さいけど、ナミさんの胸のどこが小物だぁ!」
「なんでテメェの頭はそういうことしか考えられねぇんだ!?」

 ゴシャァッ!

 …遅かったか。

「ほら、私の言った通り、キャプテンは生きていただろう?」
「ああ。…だが、これで死んだんじゃねぇか?」
「まあ、キャプテンだし、大丈夫だろう。一応、ヒールバレットで治療する。退いてくれ」

 ゾロとサンジを離し、キャプテンを道に寝かせてヒールバレットを撃ち込んだ。



「いやー、カリギュラのヒールバレットっての、ホントに効果抜群だな!助かったぜ、サンキュー」
「あの程度の傷なら、即完治させられる。だが、致命傷は無理だ。あまり過度な信頼はしないでくれ」
「いやー、ウソップが無事でよかった」
「応、無事で何よりだ」
「良かったな、無事で」
「マリモとステキ眉毛はいつか殺すからな!」

 これで、ナミを除く麦わらの一味が揃ったわけだ。

「再会を喜ぶのはこれくらいにして、キャプテン、早速だが質問させてくれ。ナミは裏切り者なのか?」

 全員が今一番気なっていることは、これだろう。

「馬鹿言うな!おれが今、こうして生きてられるのはナミのおかげなんだ。おれはあいつが魚人海賊団に身を置いているのにはわけがあると思う」

 やはり、私の信じた仲間は…ナミは裏切ってなどいなかった。
 本当に、あの時の自分が愚かしく、腹立たしいな。

「無駄だよ。あんた達が何をしようと、アーロンの統制は動かない」

 突然、後ろから、女の声が聞こえた。

「ノジコ」

 後ろに居たのはショートカットの右半分を後ろに流し、バンダナを着けた女だった。タンクトップにズボンという、活動的な格好だ。容姿は整っており、美人と言える。

「誰だ?」
「ナミの姉ちゃんだ」
「ナ、ナミさんのお姉さま♡さすが、お綺麗だ♡」
「…サンジ、お前、もう少しその反応どうにかならないのか?」
「無駄ってのはどういうことだ?」

 ゾロの問いに対し、ノジコは腰に手を当てて返答する。

「お願いだからこれ以上この村に係わらないで。いきさつは全て話すから、大人しく島を出な」

 おそらく、ナミの過去に関わることだろう。なぜ、ナミがアーロン一味に身を置いているか、これではっきりする。

「おれはいい。あいつの過去になんか興味ねぇ。その辺散歩してくる」
「そうか。気をつけろよ」
「応」
「ちょ、いいのか、カリギュラ?」
「良いも何も、ルフィ自身が興味はないと言ったんだ。強制する必要もない。私達が聞けばいいだけのことだ」
「…本当にいいのかい?」

 ノジコが尋ねる。

「気にすんな。ああいう奴さ。話だったら、さっきこの青髪の女が言ったように、おれ達が聞く。ま、聞いたところで何が変わるわけでもねぇと思うがね………グゴー…zzz」

 言うだけ言っといて寝るな。

「言ったそばから寝るんじゃねぇよ!」
「やれやれ…話は私達3人で聞く。さあ、話してくれ」
「応!ナミのこと、理解してぇしな」
「当然、おれも♡」
「成程…ナミが手こずるわけだ」

 ノジコはどこか嬉しそうにため息をつくと、自分やナミの過去について、語り始めた。





 ノジコが話した話を頭の中でまとめる。
 ノジコとナミは戦災孤児で、血のつながりは無い。
ベルメールという女性が、戦場で2人を拾い、自身の出身地でもある、この近くにあるココヤシ村で2人を養子として育てた。貧しい生活ではあったが、3人は本当の親子のように、幸せだったという。
8年前、現在まで村を支配するアーロン一味が現れた。アーロン達は瞬く間にこの島を支配し、人間達から生存権とでもいうべき権利を金で買うように強要した。無論、払えないものは皆殺し。
村はずれにあったみかん畑に囲まれたナミ達の家も発見され、金を支払う必要が生じた。しかし、貧しい家に家族3人分の金は無かった。ゆえに、ベルメールは、ナミとノジコの命を有り金全てを使って買い、自らは命そのものを差し出した。ナミ達の目の前で。
だが、ナミの不幸は終わらない。彼女の持つ航海士として才能に目を着けたアーロンにナミは攫われてしまう。当時、ベルメール達を気にかけていたゲンゾウという男が阻止しようとしたが、返り討ちにあったらしい。
当時から賢かったナミは、アーロンとある取引をする。

―――『1億ベリーでナミ本人とココヤシ村を解放する』。

 彼女は守るべき村の人々から罵倒されながらも、8年間、命をかけて海賊達から財宝を盗み、金を貯めているという。
 そして、その取引は、後700万ベリーで達成されるとのことだ。

「…海賊の私がこんなことを聞くのはおかしいかもしれないが、海軍はどうしたんだ?」

 普通、海賊が島を丸ごと支配などしたら、海軍が攻めて来そうなものだが…

「だめだよ。このあたりの海に精通した魚人達によって、海軍の船は島に着く前に沈められてしまうのさ。海軍本部も、こんな片田舎の村になんて、海兵を派遣してはくれなかった」

 島に着く前に船を沈められるか。確かに、それでは攻めようがないが…
 海軍がこの島を解放できないのは、本当にそれだけが理由なのだろうか。何かが引っ掛かる。

「8年前のあの日から、あの娘は人に涙を見せることをやめた。決して人に助けを求めなくなった。あたし達の母親のように、アーロンに殺される犠牲者をもう見たくないから」
「10歳か…人間でいえば、まだ精神的に未熟で不安定な時期だな」
「そうさ。そのナミが絶望の中、一人で戦い、生き抜く決断を下すことが、どれほど辛く、苦しい選択だったかわかる?」
「…村を救える唯一の取引のために、あいつは自分の親を殺した張本人の一味に身を置いているわけか」
「愛しきナミさんを苦しめる奴ぁ、このおれがぶっ殺して―――」

 ガン!

 いきり立つサンジにノジコが拳骨を落とした。

「お、おねーさま、な、なにを…!」
「“それ”をやめろと私は言いに来たんだよ!あんた達がナミの仲間だとここで騒ぐことで、ナミは海賊達に疑われ、この8年間が無駄になる。だから…これ以上、あの子を苦しめないでほしいの」

 ノジコは憂いを帯びた瞳で、私達から視線を外した。

「…まあ、ナミが助けを求めず、自分の力でどうにかするというならば、私はどうこうするつもりはない」
「おい、カリギュラ…!」
「キャプテン、ここで勝手に暴れれば、ナミの顔に泥を塗ることになる。後700万ベリーであいつの戦いは終わるんだ。それを見守ってやるのも、仲間だと思うがね」
「だ、だがよ!あいつらが必ず約束を守るとは…!」
「…そうなったら、こちらも相応の手段を取ればいい」

 私は立ち上がり、ココヤシ村の方へ歩き出す。

「お、おい。どこ行くんだ!?」
「散歩だよ。ルフィも気になるしな」



 ココヤシ村は随分と閑散としていた。村というか、人に活気がない。
 しばらく村を歩いていると、村はずれまで来てしまった。そこには小さなみかん畑が広がっていた。
 村はずれのみかん畑…ここが、ナミの家か?

 「まだ見つからんのか!?米粒を探しているわけじゃねぇんだぜ!?“1億ベリー”だ!見つからねぇはずはねぇ!」

 …何やら騒がしいな。

「おい貴様、何故金額を知っている!?」
「ん?まあ、なんだ、そのくらいありそうな気がしたんだ。チチチチ…」

 ―――目の奥がチリチリと焼ける。

「まさか…!まさかアーロンがあんた達をここへ!?」
「さぁねぇ…私達はただ政府の人間として、泥棒に対する当然の処置を取っているだけだ」

 ―――目の奥がヂリヂリと焦げる。

「…!何という腐った奴らだ!」
「海軍が海賊の手下になり下がるなんて…!」
「………!アーロン!」
「出て行ってもらえ。捜索の邪魔だ」

 ドゥン!ドゥン!ドゥン!ドゥン!

 …まあ、こんなことだろうとは思っていたがな。



みかん畑からナミの金を強奪して帰る海軍の後を付けると、海岸に着けられた船にたどり着いた。
これがあのネズミ面の男の船だろう。
 入口には見張りが一人か…不用心なことだ。
 正面から蹴散らしても良いのだが、万が一他の部隊を呼ばれても困る。
 …ここは暗殺者の真似事でもしてみるか。

「ふあぁ…暇だな」
「ならば地獄へ行って来い」
「―――!」

 私は見張りの背後から忍び寄り、刃に変化させた左手の人差し指で海兵の喉を掻き切った。
 喉を斬られた男は呻き一つ立てることも出来ず、崩れ落ちる。
 人間形態は非力ではあるが、原型よりもオラクル細胞の構成が組みやすい。隠密行動や暗殺では、こちらの形態の方が重宝しそうだ。
 海兵の死体を手早く喰らうと、そっと船の中に足を踏み入れた。



「チチチチチ!笑いが止まらんな!9300万ベリーだ!この内3割は我々の懐に入る。素晴らしい…!」

 船内をくまなく捜索すると、みかん畑で聞いた甲高い声が聞こえてくる部屋を見つけた。
 やれやれ、やっと当たりか。ここを見つけるまでに、結局全ての部屋を捜索してしまった。つまり、この船の海兵はこの部屋に居るもの以外皆殺し。…いつもと変わらんな。

「しかしネズミ大佐…どれも血や泥で滲んでボロボロですな」
「チチチチ…金は金だ。あんないたいけな小娘が自由を信じてコツコツコツコツ8年間も馬鹿見てぇによくも集めたもんだぜ!…チチチチチチチチチチ!」

コンコンコン

「ん、なんだ?おい、確認して来い」
「わ、わかりました」

 大佐と呼ばれた男―――ネズミ面のことだろう―――に命令された男がドアを開けた瞬間

「ようこそ。人生の終焉へ」
「へ…?」

 素早く喉を掻き切る。男は首から血を噴き出し、そのまま自らの血の海に沈んだ。
私はそのまま部屋の中へと入る。

「な、なんだお前は…!あ、赤い眼の化物…!お、おい!誰か居ないのか!?」
「悪いが、この船に残っているのはお前だけだ。大佐」

 私はゆっくりと歩を進める。ここに来るまでに幾人もの血を吸った刃をぺロリと舐める。
 フフ…良い味だ。

「ま、まて!わ、私を殺すつもりか!?か、海軍を敵に回すことになるぞ!?」
「フフフ…」

 更に1歩前進。

「ヒ、ヒィ!」

 完全に腰の抜けたゴミは壁際までずり下がる。
 前進。

「お、お前はあの小娘の仲間か!?」
「そうとも。だから、ここに来たんだ」

 男はもう下がれない。
 私はもう男のすぐそばに居る。
手早く済ませることにしよう。

「ま、待て!こ、この金をやる!だから―――」

 何やら喚いているが、そんなものには講ず、拳を握り、男の顔を殴る。

「オゴ!」

 殴る。

「アガ!」

殴る。

「ウゲ!」

 殴る。

「ガペ!」

 殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

「………」

 …ふむ、顔の原型は無くなったが、一応生きてはいるな。案外、丈夫なものなのだな。
さて、次は取られたナミの金の回収だな。
この際だ。この船から700万ベリーを獲って、1億ベリーにしておこう。
海軍の船と言っても、金に汚いこの男の船だ。700万ベリーくらいどこかに貯めこんでいるだろう。





 海軍の船から出て、“荷物”を運びながらノジコの話の中にあったアーロンパークを探していると、麦わら帽子をかぶったナミが走ってくるのが見えた。

「ナミ、どうした?」
「カ、カリギュラ!?あんた、どうしてここに!?」
「ああ、少々野暮用がな。ところで、アーロンパークへ行くのか?だったら、私も連れて行け」
「ダ、ダメよ!アーロンは化物なんだから!先に突っ込んでったルフィ達はともかく、まだあんたはアーロンに存在を知られていない、だから早く…!」

 さすがはルフィ達、行動が早い。

「ルフィ達は勝手にアーロンを倒しに行ったのか?」
「………それは」

 ナミは答えずらそうに視線を逸らす。
 どうやら、独断専行ではないらしい。
 それ以外で我らが海賊団が動く理由となれば、一つだけだ。

「ナミ、ルフィ達に言ったことを私にも言ってくれ。これはお前の問題だ。お前の言葉がなくては、何も始まらない」

 私の言葉に、ナミは驚き目を見開いたが、すぐに微笑を浮かべた。

「カリギュラ………『助けて』。この村を救うために」
「了解した」

 ナミと一緒にアーロンパークへと駆けだす。

「これで私のしたことは無駄にならずに済んだな」
「―――?そういえば、気になってたんだけど、担いでる木箱は何なの?」

 ナミは走りながら、私が担ぐ2つの木箱について質問してきた。

「これか?まあ、大したものではない」





 アーロンパークの門の前には大勢の人だかりが出来ていた。
 その中を私とナミは描き分けて進み、門をくぐる。
 中では魚人達が気絶し、散乱していた。
 まだ意識があるのは3人。
 内2人はゾロとサンジ。両方ともボロボロで、満身創痍だ。
 最後の一人は鋸のような長い鼻をした魚と人が融合したような男。この男がアーロンだろう。

「アーロン!」

 ナミがアーロンに叫ぶ。

「ナミ…」
「ナミさん…♡」

 サンジ、お前少し黙れ。

「今、丁度“どこぞ”の海賊どもをブチ殺そうとしていたところだ。何をしにここへ?」
「あんたを、殺しに…!」
「殺しに?シャハハハハハハハ!おれ達といた8年間…お前が何度おれを殺そうとした?暗殺、毒殺、奇襲…結果、おれを殺せたか!?貴様等人間ごときにゃおれを殺せねぇことくらい身にしみてわかってるはずだ!」

 アーロンはナミの決意を嘲笑う。

「いいか…おれはお前を殺さねぇし、お前はおれから逃げられん…!お前は永久にウチの“測量士”でいてもらう」

「盛り上がっているところ悪いんだが」

 アーロンの脅迫からナミを守るように前に出る。

「カ、カリギュラ…」
「カリギュラちゃん、こいつはヤバい相手だ。いくら君でも…」

 瀕死のゾロとサンジが私を心配する声を上げる。

「あ?テメェもこいつらの仲間か?」
「そうだ。話を続けるが、8年前、お前はナミと『1億ベリーでナミと村を解放する』と言う取引をしたそうだな」
「ああ、したとも。後700万ベリーだったか…だが、不幸なことに、今日海軍に金を全て取られちまったようだがな。シャハハハハハハハハ!」
「そうか。確かに取引をしたということだな。そら、受け取れ」

 私は担いできた木箱の一つをアーロンの目の前に投げる。
 もう一つは適当にその辺に放り投げた。

「ゲフ!」

 何か聞こえたが、気にしない。

「何だこりゃ?」

 アーロンは訝しげに木箱を見つめる。

「1億ベリー」
「なんだと!?」
「えッ!?」
「嘘だと思うなら、確認してみろ」
「………」

 アーロンはこちらを睨みつけると、木箱を破壊した。

「馬鹿な…!」
「あ、あれは、私の…」
「海軍に取られてたんじゃなかったのか!?」
「なんであの嬢ちゃんが持ってるんだ!?」

 木箱の中にはナミが集めた9300万ベリーと海軍の船から見つけた700万ベリー、合わせて1億ベリーがあった。

「どうだ、アーロン。しっかりと1億ベリーあるぞ?」
「…テメェ、海軍の船を襲ったのか。そんなことをして、どうなるかわかってんだろうな?」
「勿論だ。だが、我らが船長ならこう言うだろう。―――「だからどうした」」

 私がニヤリと笑うと、アーロンの顔が苦々しげに歪む。

「で、約束通りナミと村を解放してくれるんだろう?」
「…嘗めやがって、貴様から血祭りにあげてやる!」
「…契約不履行だな。…ナミ」
「…え?な、何?」
「今のうちに恨み事でもあればしっかりとぶつけておけ。死人に言っても気は晴れんだろうしな」
「…一生を掛けても言い尽せないほどあるからいいわ」
「そうか。では、ゾロとサンジを安全な場所まで避難させてくれ」

「よし!そういうことなら任せろ!」

 …全く、この人は。

「ウソップ!」
「…いつからいた。キャプテン」
「ついさっき来たところだ。あ、おれも魚人海賊団の幹部を『1対1で!』1人倒したぜ!」
「そうか。成長したな、キャプテン。では、ゾロ達のことを頼む」
「応!いやー、カリギュラに褒められちゃった」
「…アホ、呆れられてんだよ」

 その傷で突っ込みを忘れないゾロに尊敬の念を抱いた。

「ほら、とっとと怪我人を回収するぞ、ナミ!」
「う、うん」

 キャプテンとナミはゾロとサンジの回収に向かった。

「…カリギュラ、気をつけて」

 私は言葉ではなく、親指を立ててそれに答えた。
 そして、改めてアーロンに向き直る。

「さて、待たせたな、アーロン。かつて七武海の一角と肩を並べたという実力、見せてもらおう」

 形態変化―――混成型

「…!?その姿、テメェも悪魔の実の能力者か!」
「ああ。その口ぶりからすると、ルフィとも戦ったのか?そういえば姿が見えないが…」
「シャハハハハ!奴なら海底だ。安心しろ、貴様もすぐに送ってやる」
「―――!」
(………)

 一瞬焦るが、私の視界の隅に居たサンジがアイコンタクトで、とりあえず手は打ってあると告げていたので、動揺を悟られないように、アーロンを挑発する。

「出来るのか?お前に」

 互いに睨みあう。
 一触即発の雰囲気が頂点まで高まろうとした、その時

「ブーーーーーーーーーーッ!ブハァッ!!」

 海門の方で噴水が起こった。

「何だ!?」
「来たか!後は足枷を外すだけだ!」
「まさか、ルフィの兄貴!」

 詳しい状況はわからんが、海に沈められていたルフィが息を吹き返したというところか。

「サンジ、ここは私が受け持つ。早くルフィを助けてやってくれ」
「…レディに一番危険な役目を任せるのは男としてあるまじき行為だが、今のおれにそれを言う資格は無いな。頼む、カリギュラちゃん」

 サンジが海へと飛び込んだ。

「ま、まて、おれも戦う」
「キャプテン、その半死人を動けないように縛っておけ。そして、すぐに医者に見せろ。その出血量は拙い」
「応!まかせろ」
「ほら、行くわよ」
「ウオ!や、やめろ!」

 キャプテンとナミはゾロをロープでグルグル巻きにすると群衆の方へと担いで去って行った。

「あんなところに噴水はねぇぞ!?まさか、あのゴム野郎…!」

 ジャキン!

 ルフィの元へ向かおうとしたアーロンの首筋に、ブレードの刃を当てる。

「これから死に逝くものが、あれを気にする必要はない」
「このイカレ女…!」

「ニュ…テメェらの好きにはさせねぇ…」

 突然、倒れていた6本腕のタコの魚人が起き上がった。
 拙い、サンジの後を追う気か!

「おっと、お前の相手はおれだろ?」
「クッ…!」

 タコの魚人を追おうとした私の前に、アーロンが立ちふさがった。

「邪魔だ、どけ!」

 この超近距離ではブレードを使えないので、アーロンの顔めがけ、右ストレートを打ち込む。

「シャハハハ!いかに能力者といえども、人間の女がサメの魚人のおれと殴り合いなんか出来るわけねぇだろう!」

 アーロンは嗤いながら、私の拳を狙うようにパンチを繰り出した。

 ダガァン!

 船と船が衝突したような音が辺り一面に響き渡った。
 アーロンのパンチによって、足元が陥没するが、それだけだ。
 私の拳は、しっかりとアーロンの拳を受け止めていた。

「な!おれのパワーと互角だと!」

 チ…こんな力しか出ないとは。
この姿だとやはり出力不足だ。

 お互い、弾かれるようにして距離を取る。

「クソ…タコの魚人を逃がしたか」

 アーロンとの小競り合いの最中に、タコの魚人は海中へと姿を消していた。
 海中にいるサンジがどうにかしてくれることを祈ろう。

「シャハハハハハハ!心配するな、すぐに全員同じ所へ送ってやる。あの世へな」
「奇遇だな。私もそう考えていたところだ。ただし、逝くのはお前達魚類共だがな」

 私は構えを取り、ブースターで加速を付けた踏み込みで、アーロンとの間合いを一気に詰める。

 ドゴ!

「オゴォ!」

 渾身の右ストレートがアーロンの腹に深々と突き刺さった。
 続けて、左フックで内臓を穿つ。

「グフ…!ちょ、調子に乗るなぁ!」

 アーロンはわき腹を殴られながらも、首筋に喰らいついてきた。

「―――!カリギュラ、アーロンに咬まれちゃダメ!」

 ナミが危険を知らせる。
 ふむ、ただの人間なら、サメに咬みつかれればただでは済まないが…

 ガキン!

「その程度の攻撃では、この装甲に傷一つ付けることはできん」

 今は半アラガミ。サメ如きでは文字通り歯が立たない。

「ば、馬鹿な…!?」

 驚愕の表情を浮かべたアーロンの顎を右アッパーで打ち上げ、更に左ストレートを顔面に叩きこむ。
 牙はガラスのように容易く砕け、アーロンは地面を転がりながら建物の壁に激突した。
 
私は思わずため息を吐く。

「とんだ期待はずれだな。七武海と肩を並べたというのは、所詮噂だったらしい」

 少なくとも、ミホークがこんな雑魚と同格のはずがない。

「お、おれ達は、夢でも見てるのか?」
「あのアーロンが…イーストブルー最強最悪の海賊が赤子扱いだ」

 群衆の驚愕の声。
 こいつが最強最悪か…ミホークが言っていたことがわかった気がする。

「グォォ…!嘗めるな下等種族がァァァッ!」

 アーロンが起き上がると、その目つきが変わった。
 図鑑で見た海王類が激怒した時の目と良く似ている。
 怒りが頂点に達したといったところか。

「フン!」

 アーロンは建物の壁に手を突っ込み、中から何かを引きずりだした。

「…何だあれは」
「馬鹿でけぇノコギリだ!」
「キリバチ!」

 アーロンが手にしていたのはアーロンの身の丈ほどもある巨大な鋸のような太刀だった。

「ブッタ斬れろ!下等種族!」

 あの太刀の重さとアーロンの力が加わった一撃は、さすがに外装甲だけで受けるのは無理なので、後ろに後退して脳天からの振り下ろしを避ける。

「甘ぇんだよ!」
「―――!」

 だが、アーロンはキリバチを叩きつけた反動を利用して、一回転し、続けざまに斬撃を放つ。

「………」
「シャハハハ!キリバチからは逃れられんぞ!」

 それも後方へ下がって避けるが、アーロンは更に一回転し、襲ってくる。
 これでは、避けに徹していても、いずれは一撃を貰うだろう。

「この程度の攻撃に、これ以上逃げる必要はない」

キリバチの斬撃は一定の間隔でやってくるので、タイミングを合わせるのは容易い。
 キリバチが振り下ろされるタイミングに合わせて、左手に造りだしたインキタトゥスでガードし、更にインパクトの瞬間に盾を押し込むことで武器破壊を狙う。

 バギャン!

 狙い通り、キリバチは半ばからへし折れた。

「ば、馬鹿な!おれのキリバチが…!」

 更に追撃。右ブレードでアーロンの胴体に横薙ぎの斬撃を加える。

 ザシュ!

「グォオォォォォォッ!」
「―――!振り抜けない…!」

 アーロンに筋肉を締められ、右ブレードが引き抜けなくなった。
 この形態の非力さと右ブレードの損傷が仇となったか。

「このまま海にブチ込んでやる!」
「チィ…!」

 アーロンはブレードに腹を抉られたまま、私を抱きかかえると、海へと飛び込んだ。



「「「カリギュラ!」」」
「「カリギュラ姐さん!」」
「「「「「嬢ちゃん!」」」」」

 悪魔の実の能力者は海に嫌われる。
 そのことを知るナミ達は能力を使えなくなったカリギュラが、アーロンに殺されることを予測した。

「ウ、ウソップ!この縄をほどけ、カリギュラを助けに行く!」
「馬鹿言うな!これ以上無理をしたら、本当に死んじまうぞ!」

 ゾロがカリギュラを助けに行こうとするが、治療を行っていた老医師に止められる。

「戻ったァァァァァッ!」

 その時、今まで海中に沈んでいたルフィが重しとなっていた岩を壊され、空から落ちてきた。

「ルフィ!」
「応!戻ってきたぞ!…ん?アーロンはどこだ?」
「ルフィの兄貴!アーロンはカリギュラ姐さんを海中に引きずり込みやがったんです!」
「なに!?てことは、海の中か!よし、カリギュラ!今いくグエ!」

 海に飛び込もうとするルフィの襟首をナミが引っ張る。

「バカ!あんたも悪魔の実の能力者なんだから、海の中で戦えるわけないでしょ!?」
「そ、そうだった!ど、どうしよう!」
「まだサンジが海の中に居るんだろう?あいつにどうにかしてもらうしかねぇな」
「ちくしょー!陸ならおれも加勢できるのに!」

 陸に居る麦わらの一味は、ただカリギュラが無事でいることを信じるしかなかった。



(―――!あれはアーロンと…カリギュラちゃん!)

 海中でルフィを拘束していた岩盤を蹴り砕いたサンジは、海に飛び込んできたアーロンとカリギュラを目撃した。

(拙い、カリギュラちゃんは悪魔の実の能力者だ!海の中じゃ力が出せない!)

 すぐさま加勢しようと泳ぎだしたサンジだが、信じられないものを目の当たりにした。

(な、なんだありゃ…!)

 カリギュラの身体がどんどんと膨張し、人型を失っていく。
 数秒後、目の前に落ちてきたのは、7mはあろうかという、青く輝く竜を模した化物だった。



「―――!一体、テメェは何もんだ…!」

 アーロンは原型に戻った私に驚き、拘束していた手を解いて、ブレードを無理やり引き抜き、距離を取った。

「…お前は起死回生の一手だと考えたようだが、最悪の選択をしたな」

 私の身体は悪魔の実の制約により、浮力を受けないので、海底に着地する。
 
(………!)

 すぐ後ろにはサンジの姿があった。おそらく、ルフィを助けた直後なのだろう。
 同じく海底に居たノジコを守るように、私を睨みつけてくる。
 …さすがはサンジ。私の原型を見ても、逃げ出さない胆力、恐れ入る。

「サンジ、信じられないかもしれないが、私はカリギュラだ」
(―――!)

 サンジの顔が驚愕に染まる。

「アーロンは私がどうにかする。お前たちは戦いに巻き込まれないように、早く陸へ上がれ」

(………ん!)

サンジは一瞬、逡巡したが、私に向かって「任せた」と親指を突き上げると、ノジコを連れて浮上して行った。

「…待たせたな。さあ、決着をつけよう。アーロン」
「テメェは…人間じゃねぇな。なぜ、あんな下等生物共に肩入れする」

 そういえば、今まで意識したことは無かったな。
 …簡潔に言うならば―――

「『楽しい』からだ」
「何…?」
「あいつらと…仲間と一緒に過ごす日々はとても『楽しい』。少し昔の私からは考えられないくらい、満たされた毎日を送っている。だから、私はあいつらを守る。お前のような、仲間を苦しめる敵からな。これこそが、私の『誇り』だ」

 決意と共に、指をアーロンに突き付ける。

「シャ、シャハハハハハハハハハ!あんな下等生物共を守るのが誇りだと?所詮は化物の考え…理解不能だな」
「お前如きにわかるようなものではない」
「わかりたくもねぇなァッ!」

 それだけ言うと、アーロンは身体を真っ直ぐに伸ばし、鋸のような鼻をこちらに向ける。まるで、発射前のミサイルのようだ。

「シャーク・ON・ダーツ!」

 次の瞬間、凄まじい勢いで、アーロンが突っ込んできた。

「一撃で葬る…!」

 私は冷気を左手に集め、氷槍を作り―――出そうとして、巨大な氷塊が出来た。
 …そうか、ここは海の中。冷気を発すれば、周りの海水が凍りついてしまうか。
 だが、今更別の攻撃方法は出来ない。仕方がないので、その氷塊で、突っ込んできたアーロンにカウンターを狙う。

「氷ごと貫いてやる!」

 アーロンは巨大な氷塊にも怯まず、そのまま突っ込んでくるが、

 ゴシャ!

 氷塊に傷一つ付けること敵わず、正面から激突した。

「オゴォァァァッ!」
「これは私が作りだした魔氷の塊だ。お前ごときの突進では、傷一つ入らんよ」

 原型時の力の強さも相まって、アーロンはそのまま海上へと打ち上げられていった。
 殴ったときの手ごたえがしっくりこなかったので、おそらく、まだ生きているだろう。

「…一撃じゃなかったな」

 私はブースターを点火し、海上へ出たアーロンを追った。



ズゥガァァァン!

海上へ出る直前、何かが激突する音が聞こえた。
アーロンが建物に突っ込んだ音だろう。
海上へ出た瞬間、原型から混成型に戻ってしまった。やはり、まだ陸で原型を保つことは出来ないようだ。

「な、なんだぁ!?」
「あ、カリギュラ!」
「カリギュラちゃ~ん!無事だったんだね!」

 ルフィ達が私の姿を見つけて、声を上げる。

「おっしゃ!陸の上なら加勢できるぞ!」

 ルフィが腕を伸ばし、私にしがみついてきた。

「む、ルフィ、これは私が始めた戦いだ。出来れば邪魔しないでほしいんだが」
「カリギュラより先に、おれがあの魚と戦ってたんだ。カリギュラの方が後だぞ!」
「…まあいい、とりあえずアーロンが突っ込んだ部屋まで行くぞ」
「応!」

 ルフィを連れたまま、アーロンが突っ込んだ最上階の左側の部屋へ向かった。

「紙がいっぱいだ」
「…ここは、測量室か?」

 中には大量の海図が積まれ、それを描くと思わしき作業台と、海図の元になる測量データの本棚が置いてあるだけの、淋しい部屋だった。

「ああ…そうだ」

 奥の壁にはアーロンが蹲っていた。
 私の原型の一撃を喰らっても、まだ息があるとはな。なかなかの生命力だ。

「8年間かけてナミが描いた海図だ。世界中探してもこれ程正確な海図を描ける奴ぁ、そういるもんじゃねぇ。天才だよ、あの女は」

 ゆっくりとアーロンが起き上がる。だが、足が覚束ない。瀕死、と言ったところか。

「ナミの海図で世界中の海を知りつくした時、おれ達に敵は無くなり、世界はおれの帝国となる…はずだった。貴様のような化物が現れなければな!」

 アーロンがギロリと私を睨みつける。

「ククク…おれもナミをさんざん利用してきたがな、貴様も似たようなもんだ、カリギュラ。貴様にとって、そこの麦わらを含む一味は、愛玩動物みてぇなもんなんだ。貴様は、ただ弱者を守って自己満足をしているに過ぎゴフォ!」

 アーロンの言葉を遮るように、ルフィが顔面に拳を打ち込んだ。

「うるせぇ!カリギュラがそんなこと考えてるわけあるか!」

 ………

「全くだ。そのようなこと、かけらも考えたことは無い。さて、覚悟は良いか?」

 アーロンはルフィのパンチで出来た流血を拭うと、こちらに向き直る。

「まさか、こんな辺境の海で野望が潰えるとは、思いもしなかった。だが、おれもイーストブルー最高賞金額の海賊、ただでは死なん!」

 命の火を一気に燃やしつくすかの気迫を放ち、アーロンが四肢を地につけ、大口をあける。
へし折った歯が全て生え換わっているのは、サメとしての特性ゆえか。
 アーロンの攻撃に備え、身構える。

しかし―――

「カリギュラ!貴様の仲間を道連れにしてくれる!」

 しまった、狙いは私ではない!

「ルフィ!」
「わかってる!」

 アーロンの殺気に反応し、ルフィはすでに天井を蹴り破るほど高く右足を天に向かって伸ばしていた。重力と伸縮力を加えた右足の一撃で、アーロンを迎え撃つ気らしい。
 だが、アーロンの攻撃の方が早い。

「シャーク・ON・トゥース!」

 アーロンは先ほど海中で見せた突撃と同じ要領で飛び立ち、更に回転を加える。
 遠心力を加えた牙で、ルフィを抉る気か。そうはさせん!

「今度こそ、この一撃で終わらせる」

 私もルフィと同じく右足を天に向かって180°開脚し、冷気を集中させて、右足を一振りの刃と化す

「遅いわァッ!」

 しかし、アーロンの突撃のスピードが予想よりも早く、ルフィの腹に牙が深々と突き刺さる。

「ルフィ!」
「………!!ゴムゴムの…!」

 だが、ルフィは怯まない。ならば、私もこの一撃でアーロンを斃すまで。

―――『ヘルの処刑刀』!
「オノォォォォォォォォ!」

 私達は同時に、右足をアーロンへと振り下ろした。

 ゴシャァッ!

「ッ…………!!!!!!!!」

 ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!

 私達の一撃で、アーロンは完全に絶命し、その衝撃で一回まで床をブチ抜いて落ちて行った。

「…終わったな」
「応」

 ルフィはその場に座り込む。
私の前にアーロンと一戦交え、海に落ち、さらにアーロンの決死の一撃を受けたのだ。さすがに堪えたのだろう。

「…先ほどの衝撃で、海図が滅茶苦茶だな」
「これでいいんだ。無理やり描かされた海図なんて、ナミに取っても、無くなった方がいいに決まってる。これからは、おれ達の仲間として、自分で好きに描けるんだからな!」
「…ああ、そうだな」

 ゴゴゴ…

「ん?なんか落ちてきたぞ?…石?」
「どうやら、先ほどの衝撃で、この建物が崩れるようだ」
「そっか…て、エエェッ!おれゴムだけど、生き埋めは嫌だぞ!?」
「案ずるな。私が何とかしよう」

―――『インキタトゥスの息』防性変化。
―――『インキタトゥスの防壁』を発動。

 ブースターから冷気が放たれ、私とルフィを包みこむように球体状の氷塊が形成された。

「おお!これ、カリギュラがやったのか!?」
「ああ。硬度の高い氷で球体状の防御膜を作った。この程度の瓦礫など、ものともしない」
「じゃあ、安心だな」
「安心だ」

 ボコ

「なあ、カリギュラ。床に穴があいて、下に落ちてんだけど、これ衝撃とかも防げるのか?」
「…無理だ」

 ドッシャーン!

 最下層に落ちた衝撃で、私とルフィは球体内を跳ねまわることとなった。

「アアアアアァ!カリギュラ!オメェの刃が!斬れる斬れる!元に戻ってくれ!」
「…いや、ここで人間型になると外装甲が無くなって、痛いんだ。我慢してくれ」
「おれは真っ二つだろうが!」

 …まだまだ改良の余地ありだな。




















【コメント】
 ゴムゴムの風車に使用した海獣はモームの妹です。


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