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No.25529の一覧
[0] 【チラシの裏から移動】蒼神/人舞(GOD EATER×ワンピース)[Ray](2011/11/26 22:33)
[1] プロローグ[Ray](2011/01/20 00:14)
[2] 第1話 ウソップ海賊団入団[Ray](2011/01/22 15:55)
[3] 第2話 仲間[Ray](2011/02/19 11:56)
[4] 第3話 ヴァイオレンスウェイトレス[Ray](2011/01/28 16:19)
[5] 第4話 クリーク襲来[Ray](2011/03/08 23:36)
[6] 第5話 世界最強の剣士[Ray](2011/02/02 19:43)
[7] 第6話 新しい仲間”サンジ”[Ray](2011/03/08 23:37)
[8] 第7話 アーロンパーク到着[Ray](2011/03/08 23:37)
[9] 第8話 誇り[Ray](2011/03/08 23:40)
[10] 第9話 人喰らいのカリギュラ[Ray](2011/03/08 23:43)
[11] 第10話 蒼刃・氷女[Ray](2011/03/08 23:44)
[12] 第11話 アラガミの宴[Ray](2011/03/20 21:59)
[13] 第12話 いざ、偉大なる航路へ[Ray](2011/03/24 09:54)
[14] 第13話 リヴァース・マウンテン[Ray](2011/04/07 12:51)
[15] 第14話 愚者の所業[Ray](2011/04/09 20:58)
[16] 第15話 ゾロの夢、ウソップの出会い[Ray](2011/04/23 16:14)
[17] 第16話 新しい仲間“サリー”[Ray](2011/04/23 16:59)
[18] 第17話 前夜祭[Ray](2011/06/16 02:53)
[19] 第18話 カルネヴァーレ(1) グロ注意[Ray](2011/06/21 00:07)
[20] 第19話 カルネヴァーレ(2) グロ注意[Ray](2011/07/21 15:28)
[21] 第20話 カルネヴァーレ(3) グロ注意[Ray](2011/07/26 22:13)
[22] 第21話 後夜祭[Ray](2011/08/11 19:45)
[23] 第22話 新しき因縁[Ray](2011/08/25 14:37)
[24] 幕間1 アラガミがいる麦わらの一味の日常[Ray](2011/11/26 16:59)
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[25529] 第1話 ウソップ海賊団入団
Name: Ray◆6fb36f09 ID:4cd0596b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/22 15:55
甲板に寝ころび、青い空とフヨフヨと空を漂うように飛ぶカモメを見つめる。
 あの鳥とて、前の世界では当の昔に絶滅した生き物だ。
 やはり、私がいる世界は、過去なのだろうか?

「…違うな。少なくとも、『悪魔の実』などという奇怪な植物が存在したことはない。現在も、そして過去にも」

 アラガミは『地球』より発生した抗体ともいえる生物だ。今まで自覚がなかったが、『地球』が生まれてから、あの荒廃した世界となるまでに生まれ、滅んでいった全ての生物の知識を私は持っている。
 おそらく、これは原初の記憶。私が『地球』の分身である証。

「極めて中世の『地球』に近い別の星、というのが一番近いか。どうしてそんなところにやってきたかは全くもって不明だが」

 ため息を一つ。いっそ、自意識などなく、元のままの抗体でいられればここまで悩まずに済んだものを。
 …しかし、この服とやらはえらくムズムズする。人間たちがワンピースと呼ぶ布を一枚着ただけだというのに、今すぐ裸になりたいくらいだ。これなら、同類の皮を剥いで纏った方が幾分かましだ。

「天候は快晴。風向き、風速も理想的。湿度等から判断してもしばらくはこの天気が続く。あと2、3日といったところか」

 現在、私は捕喰した船員から得た情報に従い、村がある島に向かっている。航海の仕方等は学習済みだ。

「情報を得るには捕喰が一番手っ取り早いんだが…」

 情報を得るだけなら、島に着いた直後に村を襲い、村人を全員捕食してしまえばいい。これが最も効率的だ。
 だが、ヒトヒトの実という悪魔の実を食べ、自我というものを得た私は、あるものに飢えていた。

「コミュニケーション、対話、か。まあ、失敗したら喰ってしまえばいいし、やるだけやってみるか」

 島が見えたのはそれからちょうど2日後のことだった。





「みんな大変だー!海賊が攻めてきたぞー!」

「―――?」

 島近くの沖合で船を乗り捨て、小舟で島に近づくと、素っ頓狂な叫びが聞こえた。
 私が乗ってきたのは確かに海賊船だが、島からは確認できないところに乗り捨ててきたはずだ。というか、こういう風に騒がれないように態々遠くで乗り捨ててきたんだが…無駄だったか?
 まあ、無駄なら無駄でいい。最悪の場合でも、きちんと情報は得られるしな。

手頃な海岸を見つけたので、小舟をつける。
左右はちょっとした崖になっており、木が密生している。林、か。前の世界ではついぞ見ることはなかったが。
また、真正面には勾配のきつい坂がある。坂の上に陣取れば有利に戦えそうな地形だ。

「さて、まずは人間の村がどこにあるかだが…」

 アラガミは視覚、もしくは聴覚で対象を捉える。視覚または聴覚がずば抜けて鋭い策敵型、偵察型のアラガミもいるが、残念ながら私はそうではない。

「まあ、今はただの人間に限りなく近いしな。仮に索敵型でも感度は著しく落ちるだろう」

 自分の足で探すしかないか。まあ、これも一興。



しばらく道なりに歩くとあっけなく村は見つかった。

「もう少しくらい、冒険がほしかったな…ん?」

 少し前にある木の上になんか鼻の長い生物が見える。

「プークックックック、今日も俺を捕まえられないでやんの。ほんと、大人はとろいなぁ」
「おい」 
「ウギャーーーーッ!」

ドスン!

 あ、勝手に驚いて頭から落ちてきた。

「お、俺は工藤…じゃなかった。キャプテン…う~ん…」

 そのまま気絶。

「…一応、面倒見てやるか?はあ、ファーストコンタクトが長鼻の生物(なまもの)の介抱なんて…最悪だ」

 村が近いので、そこでもいいのだが、最初に人間との会話に慣れておきたいので、人目につかないところで介抱するとしよう。
 長鼻を背負うと、先ほど見つけた森の中の小さな泉へと向かった。



「犯人はお前だ!」
「やかましいわ」

意識を取り戻していきなり意味不明なことを言い出した長鼻の額にビシ!とチョップを決める。
前だったら頭から真っ二つなんだが…ここまで弱体化したのか、私は。

「いてぇ!って、お前誰だ!?」
「私?私は………誰だろう?」
「オイ!」

 今度はビシ!と長鼻に手の甲でツッコミを入れられた。…なんでツッコミの知識が原初の知識にあるんだ?

「誰だろうって、名前とか、なんでここに来たとか、どうしておれをプ二プ二して柔らかい膝で膝枕してくれているのかとかあんだろ」
「もう大丈夫そうだな。どけ」

ゴン!

「いてぇ!いきなり膝抜くな、後頭部強打したぞ!まあ、冗談はこのくらいにしておいて、ほんとにあんた誰なんだ?」
「ふむ、私は…」

 さて、何からこの長鼻に言うべきか。真正直に「私は人喰いです」とは言えんしな。
 名前とここへ来た理由を適当に考えて答えるか。

「…カリギュラ。カリギュラという」
「カリギュラ?ずいぶんと変わった名前だな」
「そうか?私は特に疑問には思わなかったが…」

 第一種接触禁忌アラガミ『カリギュラ』
これが人間たちが私につけた個体名。残虐で狂気に溢れていたといわれる暴君の愛称から付けられているらしい。
特に思い入れはないが、ずっと呼ばれていた名前を変えるのも何かしっくりこないので、そのまま名乗った。

「ここから遠い村で海賊に捕えられてな。なんとか逃げ出し、この島に辿り着いたんだ」
「何!?じゃあこの近くに海賊が!?」
「いや、この近くにはいないはずだ。何せ脱走したのが嵐の夜だったからな。どうにか奪った小舟は転覆しなかったが、かなり流された。少なくとも、このあたりは奴らの縄張りではない。安心しろ」
「その割には元気だな?血色もいいし」

 ム、こいつ間抜けかと思ったら結構鋭い。…やはり喰ってしまうべきか?
 いや、まだコミュニケーションという未知の体験は始まったばかりだ。もう少し様子を見よう。

「幸い、漂流してからそれほど日にちは経たずにこの島にたどり着けた。それに、私は【夜鷹】として売られる予定だったからな。食事や健康には気を使われていた。変な病気をしたら価値が下がる」
「よ、夜鷹って、つまりその…」
「男と寝る商売をする女のことだ」
「ストレートすぎるわッ!」

 回りくどく言うよりは早く話が進んでいいと思うんだがな。

「まあ、私に関してはこんなところだ。で、お前は自己紹介してくれないのか?」
「お、わりぃわりぃ。海賊のことで頭がいっぱいだった。―――ゴホン!おれの名はウソップ!誇り高き海の戦士にしてこの村に君臨する大海賊団『ウソップ海賊団』の船長だ!人はおれを称え、“我が船長”『キャプテン・ウソップ』、さらにその誇り高さから『ホコリのウソップ』と呼ぶ!」
「………」
「な、なんだよ、そんなにじっと見つめて。い、言っておくが、う、嘘じゃねぇからな!」
「誇り、とはなんだ?」

 『誇り』―――原初の知識の中にも、今まで捕喰で得た知識の中にも、なかった言葉だ。

「…え?」
「誇りとはなんだ?初めて聞く言葉だ」
「誇りっていうのはだな…そう、『絶対に譲れないもの』だな」
「絶対に譲れないもの?そんなものがあるのか?どんな物であろうとも、強大な力によって奪われるものではないのか?」
「ハッ!わかってねぇなぁ~、カリギュラ。いいか、『絶対に譲れないもの』ってのは物じゃあねぇんだよ。言葉にすんのは難しいが、これだけは絶対にしない、これだけは絶対に守る、とか、そういう『心』に刻まれた誓いのことだよ」

『心』―――これも知らない言葉。

「『心』?心とはなんだ?」
「おいおい、勘弁してくれ。これじゃあ堂々巡りだ。おれだって何もかもを知っているわけじゃねぇし、まして、言葉になんかできねぇ」
「そうか………」

誇り、心、誇り、心、ホコリ、ココロ、ホコリ、ココロ………

―――『誇り』および『心』の精細なデータを取るため、対象の捕喰を推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――却下。推奨―――受だk

「そこでだ!『誇り』と『心』がどんなものかお前が理解するために、特例としてウソップ海賊団に入団を許可する」
「…え?」
「カリギュラ団員、返事はハイだ。次にそれを破ったら『足の裏コチョコチョ30分の刑』に処す」
「…ハイ、キャプテン」
「ウム!よろしい!」

 …かなりまずかった。アラガミとしての捕喰本能と知識欲が自我の抑圧を超えて解放されかかった。今の私は非常に不安定ということか。折角捕喰では学習できない知識を学ぶ機会を得たのだ。以後気をつけねば。





 その後、村に行き、事情を説明して村に置いてもらえることになった。虚偽の話ではあるが、海賊にさらわれて、逃げてきたという私を村の住人達は快く迎え入れてくれた。ウソップ海賊団に入った以上、全員捕喰という選択は取れなかったので、好都合だ。
 住む場所に関しては、『誇り』と『心』について学ぶため、キャプテン(以後、ウソップのことをこう呼ぶ)の家に宿泊したかったのだが…

「絶対にだめです!ウソップさんも男の人なんです!こんなに綺麗な人と一つ屋根の下にいたら必ず間違いが起こります!だってウソップさんのベッドの下には(以下検閲削除)」

 村の富豪の跡取り娘―――確かカヤとかいったか―――に猛反対され、最終的にカヤの屋敷に客人として滞在することになった。キャプテンの話ではかなり病弱とのことだったが…
 とりあえず、カヤの発言によって、社会的に抹殺されたキャプテンの精神が早く回復することを願う。

それから―――

「こいつらがウソップ海賊団のメンバーだ!おい、お前ら、新入りに挨拶してやれ!」
「あ、え、えと、ぼ、ぼくたまねぎです!」
「お、おれはピーマン!」
「お、おおれはにんじん!」
「はじめまして。ウソップ海賊団の新入り、カリギュラだ」
「なんだなんだお前ら。顔が真っ赤だぞ~?」
「だ、だってこんな綺麗な人初めて見ましたよ!?もう身体のパーツからして違うって感じ!」
「どーやってこんな綺麗な人入団させたんですか!?弱み握って脅したんですか!?」
「ウォーイッ!テメェはおれを何だと思ってやがる!誇り高き海の戦士はそんなことは絶対にせん!」
「じゃー、どーやったんですか?」
「フ、惚れさせたに決まってんじゃねぇか」
「とりあえず死ね」
「ギャー!キャプテンがジャーマンスープレックスの餌食に!」



「海賊が来たぞー!早く逃げろー!」
「早く逃げないと男は生きたまま生皮を剥いで皆殺し。女は○した後、○○○として飼われてさらに―――」
「「「やめてくださいカリギュラさん!」」」



「さっすがキャプテン!パチンコ百発百中!」
「ふふ~んどんなもんよ、カリギュラ」
「どんなタマナシでも取り得は1つくらいあるものだな」
「そろそろ本気で泣くぞコルァ!」



「カ、カリギュラさん。本当にウソップさんのことは何とも思ってないんですね?」
「…少なくとも、カヤの言う男女の関係、とやらの気持ちはかけらもないな。私がキャプテンといる理由は他にある」
「そ、そうですか。よかった」
「―――?」



「ムグムグ…」
「おおー、さすが我がウソップ海賊団期待の新星!定食屋の『超特盛りカジキ丼30分以内に完食で賞金5000ベリーをゲットしろ作戦』も完了間近だ!」
「…喰い終わった」
「「「さっすがカリギュラさん!口だけのキャプテンとは違う!」」」
「ウォーイ!テメェらおれだってたまには………すいません、いつも口だけでした」
「もう一杯くれ」
「「「「さ、再チャレンジだとーーー!」」」」
「あ、あの細い身体のどこに入ってんだ?」
「見ろ、店主泣きながら作ってるぞ。だからあれほど再チャレンジ禁止にしとけって言ったのに」



「『動物系悪魔の実 変身のメカニズム』…これか」
「失礼いたします、お茶をお持ちいたしました。今日も性が出ますね、カリギュラさま」
「メリー…さん。私は何の知識もなく、この海に投げ出された。少しでも多くのことを知っておきたい。いずれ、帰るために」
「そうですか…貴女が来てからカヤお嬢様はとても元気になられた。出来ればこの村に居を構えてくれると嬉しかったのですが。貴女の意志なら、しかたありませんね」
「私はカヤに何もしていないが?」
「お話のお相手になってくれいるじゃありませんか。ウソップ君は男性ですし、使用人にはカヤお嬢様と年齢の近いものはおりませんからね。話し相手が増えて、カヤお嬢様も嬉しいのですよ」
「…よくわからない」
「はは、そのうちわかるようになりますよ」



「あ、クラハドール」
「おお、カヤお嬢様。今日はお出かけですか?」
「うん!お医者様も体調が安定しているから外へ行ってもいいって」
「ふふ、これもお隣にいるカリギュラさまのおかげですね」
「ええ!さあ、行きましょう、カリギュラさん」
「………ああ」
「………お気をつけて」



「なあ、服脱いでいいか?」
「「「「オールOK!」」」」
「なにアホなこと言ってるんですか、ウソップさん!」
「「「ギャー!キャプテンがスコーピオンデスロックの餌食に!」
「なんかチクチクして嫌なんだよ。本当だったら、下着一枚でも嫌なくらいだ」
「何言ってるんですか、カリギュラさん。女の子なんですから、しっかりおしゃれしないと」
「興味ないしなァ…」
「駄目です!カリギュラさんは最高の素材を持ってるんですからもっと―――」
「カ、カヤ…し、死ぬ…これ以上は、ほ、本当に死…ぬ…」
「「「キャ、キャプテーン!」」」



―――あっという間に1ヶ月が過ぎた。

「総損傷修復率は10%というところか。まあ、これの修復を最優先でしたしな」

 現在、私の左腕は青白く輝く装甲に覆われ、手首から伸びた特徴的な突起物の中には鋭利な3本のブレードが収納されている。まさに異形。これこそ私の本来の左腕。
 収納されたブレードを瞬時に展開し、左腕を一閃すると、目の前の木が真っ二つに斬れる。

「左腕ブレード修復完了。これで最低限の攻撃は可能か」

 1ヶ月の間、私はキャプテンたちと遊んでいただけではない。カヤの屋敷の本を読み漁り、この世界の歴史や航海術、そして悪魔の実についての知識を増やしていた。

「しかし、捕喰以外での知識の獲得がここまで面倒とはな。『これ』で喰えば一発なのに」

 左腕に力を込めると、青白く輝く装甲とブレードが、巨大な顎門(あぎと)に変わる。
 元々人間形態のままでも、捕喰は出来たが、如何せん口が小さすぎるため、捕喰に時間がかかる。
 そこで、ゴッドイーターたちの捕喰方法を採用することにした。

 左手の顎門を先ほど切断した木に喰いつかせるとギャブリと音を立てて、文字通り根こそぎ抉り喰った。

「捕食行動に問題はない。後はこれを繰り返して修復を行えば良いな。だが、動物系悪魔の実の3形態への移行はほとんどうまくいかず、か」

 本から得た知識によれば、動物系は3つの形態に変化する特性を持つという。
 一つ、悪魔の実を食べる前の種族の姿―――原型。
 二つ、悪魔の実の種類と本来の種族の混じった姿―――混成型。
 三つ、悪魔の実の種類に応じた姿―――完全変身型。
 と仮称しよう。

 通常、混成型、完全変身型こそが動物系の真骨頂であり、身体能力が著しく強化され、肉食性においてはさらに攻撃性、凶暴性が増すという。
 だが、私は違う。私は原型こそが最も力を発揮できる姿だ。逆に、今の完全変身型では、ほとんど人間と変わらない…と思われる。まだまともな戦闘を行っていないので、どこまで強いのかは未知数だが、少なくとも、本来の出力には遠く及ばない。
 この3形態は本人の意思である種の波長を調整し、自在に切り替えられるらしいが…私は波長のチューニングがうまくいかないのか、今は左手を原型に戻すのが精いっぱいだ。

「しかし…『誇り』や『心』については全く理解が進まないな」

 左腕を人間に戻し、地面にごろりと寝ころんでこれまで行動を振り返る。
 キャプテンの言葉に従い、この1ヶ月行動を共にしてきたがそれらを理解することはできなかった。3日ほど前にキャプテンにそのことを聞いたら

「おいおい、たった1ヶ月で理解しようとしてたのか?馬鹿だなァ、そういうのはよ、一生をかけてやるもんだ。まあ、おれはもう理解してるけどな!な~はっはっは!」

腹が立ったのでアッパーからシャイニングウィザードのコンボを決めてやった。



 色々と考えていると眠ってしまったのか、すっかり夜になってしまった。朝からいたから、かなりの時間眠ってしまったようだ。人間の身体とは本当に不便だ。

「―――ん?」
「おれは嘘つきだからよ。ハナっから信じてもらえるわけなかったんだ。おれが甘かったんだ」

 この声はキャプテンか?
 声質からして、今までになく真剣だな…なにかあったのか?
 坂道の方へと林を歩いて行く間にもキャプテンの声は続く。

「だから、おれはこの海岸で海賊どもを迎え撃ち!この一件をウソにする!それがウソつきとして!おれの通すべき筋ってもんだ!」

―――(嘘は吐くなって、俺がクラースたちに教えたんだ。筋は通させてもらうぜ)
「………」

「…腕に銃弾ブチ込まれようともよ、ホウキ持って追いかけまわされようともよ、ここはおれが生まれ育った村だ!」

―――(ケッ、腕一本くらいどうってことねぇ…オラ、さっさと来いよ)
「………」

「おれはこの村が大好きだ!みんなを守りたい!例え、それがキャプテン・クロのクロネコ海賊団だとしてもだ!」

 ―――(あいつらを守れたんだ。ここで死んでも…本望よ)
「………」

「そんな足ガクガクさせながら行っても説得力がないぞ、キャプテン」
「ん!?」
「誰!?」
「あん?」
「カ、カリギュラ!?」

 坂道を下りながら声をかけると、キャプテンが振り向く。他に見ない顔が3人いるが…キャプテンが先ほどまで話をしていたんだ。敵ではないだろう。

「お、お前今日はえーとその…」
「ああ、生理だった」
「だからストレートすぎだろッ!」
「特に問題はない。もう痛みも引いたしな」
「いや、それとこれとはまた別な話で―――」
「な~、ウソップ。こいつだれだ?」

 見知らぬ三人組の中の麦わら帽子をかぶった男が興味津津という視線を向けてきた。

「え?ああ、こいつはウソップ海賊団副船長のカリギュラだ!偉大なる航路(グランドライン)で見つけてきた仲間で、おれに心底惚れ込んでいる女だ」
「くたばれ」

 ドシュ
 あ、思わずブレードで刺してしまった。

「う、腕が…!」
「こいつも悪魔の実の能力者か!」
「ウホォォォォッ!カッケーーーーーッ!」

 三者三様の反応。オレンジ色をしたショートカットの女は驚愕。マリモ頭の男は戦闘態勢に移行。麦わら男は目をキラキラ輝かせて私の左腕を見ている。

「待て、私はウソップ海賊団の一員だ。お前らと争う理由は無い。上の林で休んでいたら、村に海賊が攻めてくるというのが聞こえてな、迎え撃つために詳しい話を聞きに来たんだ」
「…まあ、戦力は多い方がいいわよね」
「ん?お前らも戦うのか?」
「応!勿論だ!」
「ま、乗りかかった船だしな」

 …戦力として数えられるのはマリモと麦わらだけだな。オレンジ女はそれほど強くない。キャプテン?論外だ。

「そういえば、キャプテン、さっきからずいぶん静かだな」

ピューーー

「…血が噴水のようだ」
「って、これ止血しないと真剣ヤバいわよ!?」
「やれやれ、出陣前からこれでは、先が思いやられる」
「「「「オメェのせいだろうが!!」」」」

 ナイスツッコミ。

「私はナミ。海賊専門の泥棒よ。あ、戦力としては期待しないでね」
「おれはゾロ。ロロノア・ゾロだ。剣術には自信がある。前は賞金稼ぎとか言われてたが、今はこの楽天家の船長の下で海賊をしている」
「おれはルフィ。モンキー・D・ルフィ。ゴムゴムの実を食ったゴム人間だ。んで、海賊王になる男だ」

 キャプテンの手当てをしてから、とりあえず自己紹介しようということになった。ゴムゴムの実、確か超人系(パラミシア)の悪魔の実…動物系だったら変形のコツを訊きたかったな。

「私はカリギュラ。ウソップ海賊団の一員だ。いつの間にか副船長をやっていることになっている。見ての通り能力者だが、喰った実についてはわからん。少なくとも、こんな奇怪な腕を持つ生物はこの世に存在しないはずだから、動物系の幻獣種だとは思うが…詳細は不明だ」

 まさかこの腕が本来の姿ですとは言えないので、適当にごまかしておく。

「そして!おれがウソップ海賊団船長、キャプテ~~~ン―――」
「そんなことはどうでもいいから、さっさと海賊対策を立てるぞ、キャプテン」
「…はい」
「どっちがキャプテンだよ…」



「よし!完璧な布陣だ」

 数時間後、坂には大量の油が撒かれていた。
 油の下方には私、ルフィ、ゾロの武闘派の三人。上方にはキャプテン、ナミの後方支援担当が陣取っている。

「村へ行くにはこの坂を通るしかねぇ。坂の下でお前らが敵をぶちのめして、取りこぼしたのをおれたちが倒す。さらに油で足止めすれば、向こうが数で勝っていても十分いけるはずだ」
「了解」
「応!」
「一人も逃しはしねぇ」
「ま、カリギュラはともかく、あんたら二人の化け物みたいな強さは知ってるからね。楽させてちょーだいな」
「そんなにあの二人強いのか?だったらカリギュラ、お前もこっちに…」
「キャプテン。私は接近戦しかできないんだ。後方にいてもなにもできんさ。なに、心配するな、戦闘には『多少』自信がある」
「え?お前めっちゃ強ぇだろ?」
「だな、纏う空気が明らかに戦い慣れてるやつのそれだ」

 ふむ、彼らから見ると、私はそれなりに強いのか。

「無駄話は終わりにしよう。直、夜が明ける。海賊の襲撃は夜明けと同時だったはずだろ」



―――夜明けから5分後

「…来ないんだが?」
「寝坊か?」
「しまらん海賊だな、それ」
「ねぇちょっと、北の方からオー!って叫び声が聞こえる気がするんだけど」
「北!?」
「キャプテン、もしかして…」
「あ、ああ、確かに北にも上陸地点がある」
「間違いなくそっちだな。キャプテン、先に行ってくれ。キャプテンの足なら1分で着くだろ?」
「お、応!お前らも早く来いよ!」

 キャプテンは一目散に北の海岸へと走り出す。

「北の海岸って…まず!そっちには私たちの船もあるのよ!お宝が危ない!」

 続いてナミ。

「よっしゃ!30秒で行ってやる!」

 続いてルフィ…あ、油で滑ってずっこけた。

「つるつる滑って登れねェ!!」
「クソッ!布陣が完全に裏目に出てやがる!」
「ルフィ、ゾロ。お前ら身体の丈夫さに自信があるか?」
「あ?いきなり何言って…」
「応!岩に潰されたって大丈夫だ!」
「よし、じゃあやるぞ」

 二人の襟首を掴むとアンダースローの要領で両手を思い切り背中へ引き絞り…投げた。

「「ギャァァァァァッ!」」

 …思ったより飛んだな。あれなら落下地点から30秒ほどで北の海岸へ着けるだろう。
 さて、私もどうにかして坂を越えて加勢に行きたいが…

―――「オオオーーー!」

「別働隊か。知略に長けるといわれる海賊なんだ、この程度のことはするだろうな」

 海の方角へ振り返ると、猫を模した髑髏マークの旗を掲げた海賊船が、沖の方からやってくるのが見えた。





 北の海岸へ向かったルフィたち一行とキャプテン・クロの戦闘は佳境へと入っていた。

「さて、カヤはジャンゴが追っていった。お前たちはおれを抜けて助けに行かなければならない…が、もう一つ教えてやろう」

 両手に指先に長い刃物のついたグローブを嵌め、壊れた眼鏡を掌底で直す特徴的な仕草をするオールバックの男。この男こそ、3年間カヤの屋敷に執事として潜伏し、カヤの莫大な遺産と平穏な暮らしを奪おうと画策していたキャプテン・クロである。

「もう一つの海岸にも別働隊を送り込んである」
「なに!?」
「本来ならここだけの予定だったんだがな。あの女が来て計画を修正したんだ」
「あ、あの女って…カリギュラのことか!」
「ああそうだ。一目で腕が立つことがわかった。海賊に捕えられたとか言ってたが、奴はそんな玉じゃない。大方、おれと同じようにカヤの財産が目当てで取りいってきたんだろう。先に行動を起こしてもらっちゃ、おれの計画が台無しになるんでな、時期を早め、確実に奴を始末するために挟撃することにした。最も、部下どもがあまりに軟弱すぎて、ただの奇襲になっちまったがな」
「ふ、ふざけんな!あいつは、そんな奴じゃねぇ!」
「そうか?今ここにいないのも、すでに行動を起こしているからかもしれんぞ?」
「違う!あいつは、あいつは絶対に向こうの海岸で別働隊を迎え撃っている!」
「ククク、おめでたい頭だな。さっきも言ったが、あの女はそんな玉じゃねぇよ。奴の青白い眼を見たときにすぐわかった。同類だってな」
「いや、そりゃちげーな」
「何?」

 ウソップのカリギュラへの信頼をあざ笑うクロの言葉を否定するのは麦わら帽子をかぶった若き海賊ルフィ。

「あいつはキャプテンから村を守れって命令を受けたんだ。それを破る奴じゃねぇよ。眼を見ればわかる。お前の目が節穴なだけだ」
「だな、あいつとはついさっき知り合ったばっかだが、キャプテンに似てお人よしってのが一発でわかった。ひと月も同じ屋敷で暮らしていて気付かないとは、オメェ実際は大したことねぇんじゃねぇか?」
「…まあ、そんなことはどうでもいい。カヤは死に、あの女も死に、お前たちも死ぬのだからな!」

 ここに、村の歴史に残らない死闘が幕を開けた。





「なんだぁ、あの女は?」
 
 目標確認―――敵生体数25。

「うお!すっげー上玉じゃねぇか!殺さずに捕えて売ればいい金になりそうだ」

 勝利条件―――敵生体の全滅
 敗北条件―――本体の機能停止および敵生体の村への到達

「んなことより、さっさと村を襲おうぜ。計画通りやらないと、キャプテン・クロに殺されるぞ!」

 左腕形態変化開始―――完了。

「―――戦闘開始」
「な、なんだこの女、左腕ガァ…?」

 一番前にいた男に一気に間合いを詰め、左腕を一閃。男は5つのパーツに分かれて絶命した。

「あ、あの女も悪魔の実の能力者か!」

 あの女『も』?この中に能力者がいるのか。

「ほら、呆けてる場合ではないぞ」
「ウギャー!」

さらに一人。

「ひ、怯むなァ!所詮相手は一人だ!数で押せば問題ねぇ!」

 数で押すか、確かに効果的だ。坂を一気に駆け上がれれば、だが。
 極力背後に敵を逃さぬよう、素早く坂を駆け回りながら、海賊たちを仕留めていく。

「は、速ェ!グエ」
「ゲハッ!な、さっきまで端にいたのに、なんで…」

 そんな中、一人が私の背後に抜けた。

「はあはあ、やったぜゲェ!?な、なんだ!?あ、油ガェ!」
「キャプテンの知略炸裂だな。これからはちょっとくらい作戦の話を聞いてやってもいいか」

 油で滑って転がった男を足で踏みつけながら、キャプテンへの評価を少し高める。

「ヒィ!な、なんだその左腕、で、でっかい口みたいに…ま、まさか!や、やめろ、く、喰わないで―――」

グチャリ………マズ。

「さて、私も時間が惜しい。さっさと片付けさせてもらおう」
「ば、化け物だ!」

捕食を見て海賊どもは恐慌状態に陥っている。後は適当に切り刻んで…イタダキマス、だな。



「イタダキマシタ…」

 左腕を軽く振ってブレードに着いた血を飛ばす。
 あっという間に海賊は視界内にいなくなった。が、最初に感じた敵生体数より1人足りない。
 聴覚探知開始―――完了
 あの岩の裏か。

「ま、待ってくれ!おれはもう戦う気はねぇ!このまま大人しく帰るから見逃してくれ!」

 背が高い…目算で3m32cmといったところか。体系は痩躯で、リーチとスピードがありそうだ。両手に嵌めた鋭い爪付きグローブが武器のようだな。

「こ、こっちくんな!もう戦わないって言ってんだろ!あ、あんたみたいな化け物相手にできるか!」
「………」
「あ、すんません!化け物とか言ってすんません!謝るから許してください!」

 涙を滂沱のように流しながら地面に額をこすりつける男の姿を見ると、なんだか無性にむなしくなり、殺す気も喰う気も失せた。

「失せろ。二度とこの島に来るな」
「お、おお!ありがとうございますぅ!」

 とたんに男は顔を上げ、足に抱きついてきた。

「ウザい、離れろ」
「ああ、今すぐになッ!」
「―――!」

瞬間、胸に焼け付くような痛みが走った。

「ほう、完全に不意を突いたつもりだったんだが…急所をずらしたか。やるねぇ、お譲ちゃん」

 力を振り絞り、バックステップで男から距離をとる。
 胸、人間の最大の急所の一つ、心臓のすぐ横に深い刺し傷ができ、とめどなく血が流れていた。あの瞬間、とっさに身をひねらなければ終わっていた。
 人間の身体とはなんと脆い…!

「改めて自己紹介させてもらう。おれの名はノラ。クロネコ海賊団の奇襲部隊隊長だ。お譲ちゃんと同じ『悪魔の実』の能力者だよ」
「…さっき殺した男が言っていたのはお前のことか」

 男がニヤリと嗤うと、その姿が徐々に変わっていく。
体躯はさらに大きくなり、全身が真っ黒い獣毛に覆われる。グローブが破れ、その下からは明らかに人間ではありえない鋭さを持つ獣の爪が現れる。

「その通り。『動物系 ネコネコの実 モデル:ミックス』」
「明らかにお前らの頭目より強そうだな」
「ああ、強いよ?この実は最近喰ったばかりだしな。奇襲船の中にいた奴らにも今さっき喋ったばっかだ。ジャンゴ船長やニャーバンブラザーズは知らない。勿論、キャプテン・クロもな」
「…他の奴らが全滅するまで出てこなかったのは情報が漏れるのを防ぐためか」
「そうそう。おれの能力がばれちゃあ、いろいろとまずいんでね。手間が省けたよ」
「下剋上か」
「ニャはッ!海賊なら当然だろ?それにクロの大将はこの計画が終わったらおれたちを消すつもりだろうしな。殺る前に殺れ、だ」
「キャプテン・クロは頭脳派と聞いたが、この爪の甘さを考えると大したことないな」
「ニャははは!確かにな。だからあの男は海賊ということから逃げ出したんだ。しかし、お嬢ちゃんはどんな実を食べたんだ?身体の形が変わってるから動物系だと思うんだが…そんな刃物が付いた腕を持つ動物なんてしらねぇし、あのでっかい口も気になる」
「…教えると思うか?」
「ニャははは!そりゃそうだ。お嬢ちゃんをここで始末するのは簡単だが…どうだい?おれの仲間にならねぇか?」
「仲間?」
「そうだ。おれはキャプテン・クロを殺したら海賊団を乗っ取り、ノラネコ海賊団を旗揚げする。目指すは偉大なる航路!だが、あの海賊の墓場を行くにははっきり言ってジャンゴ船長やニャーバンブラザーズ程度じゃあ話にならねぇ。お嬢ちゃんみたいな高い戦闘能力をもつ能力者が欲しいんだ」

 ―――仲間?仲間とはなんだ?…わからない。
 わからないが―――

「断る。お前のような雑種のノラネコに飼われるなど、まっぴらだ」
「強がるなよ、お嬢ちゃん。自慢の左腕も地面につけてねぇと倒れそうなくらいキツいんだろ?」
「…本気でそう思っているなら、お前も大したことは無いな」
「なに?」

 ―――『ニブルヘイムの柱』

「あ、足が!」

 ノラと名乗った男は両足が急に凍りついたことに驚愕する。
 両足が凍りつく?クソ、今の出力ではこの程度か。

「本来だったらお前は塵になっていたはずなんだがな」

 ノラの足元に『ニブルヘイムの柱』を発生させるため、地面につけていた左腕を離し、立ちあがる。

「―――!?胸の傷が」
「再生までに63秒。…話にならんな」

 胸には先ほどまであった刺し傷など、跡形もない。時間が掛かり過ぎて目も当てられないが、ほぼ人間形態のままでも自己修復機能が働くことが確認できたので良しとする。

「な、なんだお前は!動物系つったって、あれほどの傷をわずかな時間で完治させるものなんて…!」
「今から死に往く者がそんなことを気にしてどうする」

 左手のブレードを顎門へと変換。

「や、やめろ!やめてくれ!」
「お前も大して美味そうではないが、動物系能力者としての形態変化の情報をもらうとしよう」
「い、嫌だ!お、おれには野望が、野心があるんだ!こ、こんなところで終わるはずが―――!」
「いや、お前はここで終わりだ」

グチャリ………やっぱりマズい。

「―――!?」

 急激にオラクル細胞の結合が回復していくのを感じる。

―――修復率確認。総修復率30%、右腕ブレード修復率45%、ブースター修復率37%。頭部装甲修復率25%、全身装甲修復率21%、尾部修復率16%。
右腕ブレードおよびブースター展開可能。ただし、右腕ブレード修復不完全のため、切断力、耐久力、攻撃範囲減少。ブースターも同様に長時間の飛行不可。

「…右腕ブレード、ブースター展開」

 本来の姿の右腕とブースターをイメージすると、右腕は左腕と対照的な構造となり、背部には翼を模したブースターが現れた。

「…破損が目立つな。まだ修復は完璧ではないようだ。だが、行動の幅が広がったのは大きいな」

 特にブースターが不完全とはいえ、使えるようになったのは大きい。これで機動力は大幅に上昇する。空中戦もある程度こなせるだろう。
 形態変化に関してもこれである程度予想はついた。原型の破損が激しすぎて、安全装置的なものが働き、原型に戻れなかったと見るべきだろう。捕喰を繰り返し、修復を進めれば、問題なく元に戻れるはずだ。

「そして、悪魔の実の能力者…正確には悪魔の実か。ここまで馴染むとはな」

 オラクル細胞の結合を急速に修復したのは悪魔の実で間違いないだろう。なぜ、そうなったかは現在解析中だ。

「今後、能力者にあったら積極的に捕喰するべきだな。…能力者といえば、確かルフィも………」

本体の修復を最優先し、モンキー・D・ルフィの捕喰を推奨―――

「―――!?却下だ!」

 私は今何をしようとしていた?ルフィを捕食する?馬鹿馬鹿しい。
 …馬鹿馬鹿しい?何故?最も効率がいいはずなのに、何故?

「…これもヒトヒトの実の効果か?アラガミたる私の行動原理にまで影響が及ぶとはな」

 ―――眼の奥がチリチリする。

 ふと、顔をあげて海を見ると、ボロボロになった海賊船が逃げていくのが見えた。

「…ノラという男のこともある。危険は完全に排除せねばなるまい」

 眼の奥がチリチリと焼ける音を聞きながら、私はブースターからエネルギーを放出し、飛び立った。





 船はもう島が見えないほど沖に出ていたが、私の飛行速度のほうが圧倒的に速い。ものの数分で追いついた。

「な、なんだ!?ま、また麦わらの仲間か!?」
「そ、空を飛んできた?それにその腕…こ、こいつも能力者だ」
「お、おれたちはもう二度とあの島には近づかねぇ!や、約束する、だから見逃して―――」

ザシュ
ズルリ、と言葉を発した海賊どもの上半身がずれて、甲板に落ちた。

「ノラという男がな、同じようなことを言っていたよ。それを信用して、私は胸を刺されたんだ。言葉は無用。ただ死ね」

「あ、ああ…!!」
「ひぃ、も、もう嫌だ、嫌だー!」

 後ろを向いて逃げ出す海賊が数名。
 ―――ブースター攻撃形態へ移行。『インキタトゥスの息』発動。
 私を中心にブースターから放射された極低温のエネルギー波は、甲板にいた海賊たちを完全に氷漬けにする。ふむ、出力が上がったか。

「か、身体が…凍った…?」

 運よく、いや、悪く甲板の端にいた海賊は凍りきれずに、自分の身に何が起こったのか理解に苦しんでいた。

「言ったはずだ。ただ、死ねと」
「あ…」

 ただ呆ける男に、無感情にブレードを振り下ろした。



コツコツと歩く。他に物音はしない。この船にいる海賊は一人を除いて私の腹の中だ。
 私はさほど索敵は得意ではないが、それほど大きくない船だ。この先にある医務室に生体反応があることくらいはわかる。

 医務室の扉にブレードを一閃。それだけで扉はただの木くずになる。
 その中には男が一人ベッドに横たわっていた。

「…カリギュラか。おれを殺しに来たようだな」
「ああ」
「クックック、お前がここにいるということは、奇襲部隊も全滅か。あのお遊び海賊団にお前みたいな化け物が入ってくるなんてな。おれはとことん運がない。結局、お前の目的はなんだったんだ?お前ほどの女が、ただ村を守るためだけに戦うとは思えん」
「………船長命令だよ」
「…何?」
「キャプテンが、ウソップ海賊団の船長が団員である私に『村を守れ』と命令を下した。私はそれに従ったまで」

 それを聞いたクロはこめかみに血管を浮かび上がらせ、怒りの表情を浮かべた!

「ふ、ふざけるな!テメェはあのウソツキのクソ餓鬼の命令どおりに行動しただけだというのか!おれの3年越しの計画は、たったそれだけの理由で崩壊したというのか!おれは、あのゴミみてぇな海賊団に負けたというのか!」

 ―――瞬間、眼の奥が燃え上がった。

「ガァ…!」

 クロの首をつかみ上げ、部屋の壁に叩きつける。

「な、なんだお前の眼、まるで、血のように…!」
「…宣言しよう。お前は足元から一寸刻みにしてやる」
「お、お前は、人間じゃ…ねぇのか?」
「ご名答。商品は無期限の地獄巡りだ」





 島へと戻ると、人気のない場所に着地し、ブレードとブースターをしまう。

「カリギュラー!どこだー!」

 私を探すキャプテンの声が聞こえるが、今なら、クロネコ海賊団と戦闘して死亡、もしくは行方不明として、消えることもできる。

「カリギュラー!生きてたら返事してー!」

ブースターも使用できるようになったので、後は適当に島々を渡り、捕喰を繰り返せば良い。むしろ、その方が効率的であるので、こちらを選択すべきだ。

「カリギュラー!出てこい!テメェにはおれをいきなり投げ飛ばしやがった借りがあるんだからな!」
「カリギュラー!腹減ってんだろ!一緒にメシ食おう!」

………

「「「カリギュラさーん!絶対生きてますよねー!」」」
「カリギュラさーん!お願いだから返事してください!」

 …まあ、寄り道というのもいいだろう。





「いやー、無事でよかった。おれの目は無事じゃねぇけどな」
「本当にな。おれの目は無事じゃねぇけどな」
「まったくだ。おれの目は無事じゃねぇけどな」
「ウ、ウソップさんが悪いんですからね!あんなにカリギュラさんの裸凝視して…!」
「あんたらも男なんだから過ぎたことでグダグダ言わないの」
「すまんな。戦闘に夢中で服のことなど全く気にしていなかった」

 あの後声の聞こえた方向へ向かい、無事にキャプテンたちと合流したのだが…
 ブースターの展開、『インキタトゥスの息』等を使ったりすれば、まあ、服は消し飛ぶわけだ。
 見事な全裸で登場した私を目の前にして、男性陣は鼻から出血(ルフィはなんかその場のノリっぽかったが)。それでも私の身体を凝視し続ける男性陣に対して、カヤはウソップ、ナミはルフィ、ゾロ、にんじん、たまねぎ、ピーマンの目を潰した。特にカヤは容赦なく。今は海賊たちが落していったであろう黒いズボンと黒いコートを羽織っている。

「しかし、キャプテン、いいのか?今日のことを話せば、村の住人たちも見直してくれると思うがな」
「おれの名誉と村のみんなの恐怖、どっちを取るかなんて、考えるまでもねぇだろ?」
「…まあ、キャプテンの命令なら従うまでさ」
「他の奴はどうだ?強制はしねえが…」
「「「はい!カリギュラさんが黙ってるなら黙ってます!」」」
「ウォーイ!なんでおれよりカリギュラの方が信頼厚いんだよ!」
「「「だって、キャプテンと違って頼りになるし…」」」
「なんだとテメェら!よーし、おれとカリギュラ、どちらが頼りになるかここで―――」

シャキーン

「ならば、掛かってこい」
「よし行ったれ!ゾロ!」
「お前がいけよ!」



 たまねぎたちはカヤを屋敷に送るため、一足先に村に帰って行った。

「ありがとう。村を守りきれたのはお前たちのおかげだよ」
「何言ってやがんだ。お前が何もしなけりゃ、おれは動かなかったぜ」
「おれも」
「ま、お宝が手に入ったし、別にいいわよ」
「キャプテンの命令を遂行したまでだ」
「おれはこの機会に一つ、ハラに決めたことがある。カリギュラ、お前も後で村外れの原っぱに来てくれ」
「…了解した」



 村はずれの原っぱにキャプテン、私、にんじん、たまねぎ、ピーマンのウソップ海賊団がそろい、キャプテンの口から、ウソップ海賊団解散の旨が知らされた。
 私以外の団員は皆そろって涙していた。涙、アラガミであった私にはないものだ。今の身体で流すことはできるのだろうか?
 わずか1ヶ月とはいえ、ウソップ海賊団の一員として過ごした日々は決して悪くないと感じる自分がいる。涙はでてこなかったが、胸に小さな穴が開いたようには感じた。

―――数時間後

「ぎゃああああああ!」

 ドスゥン!

 キャプテンの家の前で待っていると、パンパンの荷物を背負ったキャプテン、いや、ウソップが坂の上から転げ落ち、林の木に激突した。
 …本当にあの人は何をしているんだ?

「大丈夫か?」
「ん?おお、カリギュラか。おれを見送りに来てくれたのか?わりィな」
「見送り?違うな」

 私はウソップが散乱した荷物を詰め終わったリュックを持ち上げる。

「私も貴方についていく」
「つ、ついて行くって…お前故郷に帰るんじゃなかったのか?」
「故郷…?ああ、あれは嘘だ」
「へ?」
「まあ、私にも色々事情があってな。全ては話せないが、この海を冒険するというのは、私にとっても都合が良い。それに、まだ『誇り』や『心』についても理解していない。理解していると豪語する貴方についていけば、何かわかるかもしれないしな」
「………へ、行っとくが、おれがキャプテンだからな!」
「ああ、またよろしく頼む。キャプテン」



「ぎゃあああああああ!止めてくれー!」

 いきなりだが、キャプテンが海岸へ続く坂から転がり落ちている。

ドゴ!
あ、ルフィとゾロの蹴りで止まった。

「わ、わりぃな」
「「おう」」

 目の前には二つの船。一つは船首が羊を模しているキャラヴェル。名前を『ゴーイング・メリー号』。確か、メリーがデザインし、屋敷の地下に保管されていたものだ。ルフィが乗り込んだところを見ると、これが彼らの船なのだろう。もともとこの村には船を手に入れる目的で来たと言っていたしな。
もう一つはボートと呼んでもいいくらい小型の帆船。これが我が海賊団の旗艦だ。

「…だから私が運んで行くといっただろう、キャプテン」
「いや、さすがに女にこれを運ばせるというの男として…」
「安心しろ。そのあたりはすでに見限っている」
「………」
「泣くなウソップ!きっといつかいいことあるさ」
「おれのトレーニング器具貸そうか?」

 …これが友情というものだろうか?

「…やっぱり海に出るんですね、ウソップさん」
「ああ、決心が揺れねぇ内に行くよ。止めるなよ?」
「止めません…そんな気がしてたから」
「そうか、それもちっとさみしいが。よし、行くか、カリギュラ」
「ああ」
「―――へ?」

 カヤが素っ頓狂な声をあげた。

「ん?カリギュラも一緒に行くんだよ。ついさっき家の前に来てな、新生ウソップ海賊団に入りたいって言うから入れてやった。記念すべき一人目の船員だ」
「うむ、それでは行ってくる。カヤ、達者でな」

「―――!ルフィさん!」
「ん?なんだ?」
「ウソップさんをルフィさんの仲間に入れてあげてください!」
「お、おいカヤいきなり何って(ギロリ)なんでもありません」

 弱いぞ、キャプテン。

「―――?もうおれたち仲間だろ?」
「へ?」
「おら、さっさと乗れ。出航できねぇだろうが」
「カリギュラー、あんた航海術かじってるみたいだからサポートよろしくね」
「キャプテン、新生・ウソップ海賊団は麦わらの一味に吸収されたようだな」
「…ああ、そうみてぇだ。おーい!キャプテンはおれだろうなー!」
「馬鹿言え!おれがキャプテンだ!」

「………」
「おや、これは珍しいものが見れました」
「―――?」

 騒ぐキャプテンたちを見ていると、横からメリーが声をかけてきた。

「とても素敵な笑顔でしたよ。やはり、貴女には笑顔が似合いますね」
「笑った?私が?」
「ええ、しっかりとこの目で見ましたよ。どうか、カヤお嬢様に代わって、ウソップ君をお願いします」
「…了解した」





「新しい船と仲間に!」
「「「「乾杯だーーー!」」」」

 …このテンションについていけんな。だが………

 船上で乾杯をしながら空を仰ぐ。かつて血まみれの船上で、一人で見た空とそれほど変わりは無いはずだが、何かが決定的に違っている気がする。それが何かはわからないが、別にいいだろう。

―――ああ、こんな旅路も悪くない。
























【コメント】

一切の戦闘なく消えていったノラ君に何か一言お願いします。


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