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No.25529の一覧
[0] 【チラシの裏から移動】蒼神/人舞(GOD EATER×ワンピース)[Ray](2011/11/26 22:33)
[1] プロローグ[Ray](2011/01/20 00:14)
[2] 第1話 ウソップ海賊団入団[Ray](2011/01/22 15:55)
[3] 第2話 仲間[Ray](2011/02/19 11:56)
[4] 第3話 ヴァイオレンスウェイトレス[Ray](2011/01/28 16:19)
[5] 第4話 クリーク襲来[Ray](2011/03/08 23:36)
[6] 第5話 世界最強の剣士[Ray](2011/02/02 19:43)
[7] 第6話 新しい仲間”サンジ”[Ray](2011/03/08 23:37)
[8] 第7話 アーロンパーク到着[Ray](2011/03/08 23:37)
[9] 第8話 誇り[Ray](2011/03/08 23:40)
[10] 第9話 人喰らいのカリギュラ[Ray](2011/03/08 23:43)
[11] 第10話 蒼刃・氷女[Ray](2011/03/08 23:44)
[12] 第11話 アラガミの宴[Ray](2011/03/20 21:59)
[13] 第12話 いざ、偉大なる航路へ[Ray](2011/03/24 09:54)
[14] 第13話 リヴァース・マウンテン[Ray](2011/04/07 12:51)
[15] 第14話 愚者の所業[Ray](2011/04/09 20:58)
[16] 第15話 ゾロの夢、ウソップの出会い[Ray](2011/04/23 16:14)
[17] 第16話 新しい仲間“サリー”[Ray](2011/04/23 16:59)
[18] 第17話 前夜祭[Ray](2011/06/16 02:53)
[19] 第18話 カルネヴァーレ(1) グロ注意[Ray](2011/06/21 00:07)
[20] 第19話 カルネヴァーレ(2) グロ注意[Ray](2011/07/21 15:28)
[21] 第20話 カルネヴァーレ(3) グロ注意[Ray](2011/07/26 22:13)
[22] 第21話 後夜祭[Ray](2011/08/11 19:45)
[23] 第22話 新しき因縁[Ray](2011/08/25 14:37)
[24] 幕間1 アラガミがいる麦わらの一味の日常[Ray](2011/11/26 16:59)
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[25529] 第11話 アラガミの宴
Name: Ray◆6fb36f09 ID:4cd0596b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/20 21:59
 なんとか間に合った。

 あの海兵たちの後をつけていくと、広場でルフィが今まさに処刑される瞬間に出くわした。
 私は即座にブーストを展開して処刑台に突っ込み、処刑刀を振り上げた男をブレードで真っ二つにした。
後数秒でも遅れていれば、ルフィの首は刎ね飛ばされていただろう。

私はルフィの枷を外し、共に地上へと飛び降りる。

「なははは。生きてる!もうけ」
「やれやれ…私が全速力で飛んでこなければ、お陀仏だったぞ?」

あと少しで首が飛んでいたというのに、この男は…

「ルフィ!カリギュラ!」
「さっすがカリギュラちゃん!頼りになるぜ!」

 野次馬や他の海賊達が呆然とする中、ルフィを助けようとこちらへ向かっていたゾロとサンジに合流する。

「ゾロ、私の造った刀はどうだ?」
「良い刀だ。軽すぎず重すぎずで手に良く馴染む。切れ味もスゲェ」
「いや、私が言っているのは―――」
(まあ、待て創造主。私にも準備と言うものがある。『同調』の準備は今終わったところだ。これから始める)

 ゾロの腰にある蒼刃・氷女が念話で私の発言を遮る。

「…まあ、いいか。お前に任せると言ったしな」
「―――?なんのことだ?」

 私の呟きに、ゾロは首をかしげた。

「すまん、なんでもない。それより、この町を早く出よう。もうひと騒動ありそうだ」

「広場を包囲!海賊どもを追いこめ!3等部隊は市民の避難を最優先!人喰いに近付けるな!」

 言っている傍から、広場の入り口方面から、海兵たちがなだれ込んできた。

「きたッ!逃げろーーー!」

 ルフィが我先にと走り出す。

「キャプテンとナミは?」
「安心しろ。先に船に向かってる」

 ならば、一安心か。

「しかし、海軍め、私は敵でない人間は喰わんと言うのに…」
「海軍に其処までわかんねぇよ。ただ、これで追手の数が減るのはありがてぇ」
「港まで一気に駆け抜けよう!おれについてきてくれカリギュラちゃん。あ、野郎どもは海軍の足止めな」
「「ふざけんな!」」

 私達は人混みをかき分け、ゴーイング・メリー号の停泊している岸へと駆け出した。



「コナクソーーーッ!あのハデゴム悪運野郎め!」

 プスプスと煙を上げながら、カリギュラに真っ二つにされた道化姿の男の上半身が起き上がる。さらに、下半身も何事もなかったかのように上半身の元へ歩いてきて、合体した。
切断面は見事にくっつき、傷跡一つ無くなる。
 これがバラバラの実の能力。この男は切っても切れないバラバラ人間なのだ。

「バギー船長!生きてたんですね!」
「生きらいでか!」

 道化姿の男―――バギーに参謀である剣士カバジが、海軍と切り結びながら声を掛ける。

「クソ!あの空を飛んできた女は一体誰だ?このおれを真っ二つにしくさりやがって!」
「“人喰らいのカリギュラ”だよ。麦わらの一味の副船長にして、懸賞金1億ベリーの超大物ルーキーさ」

 巨大な金棒を振り回す美女がバギーに答える。

「はあぁッ!?1億だと!?そんな額、グランドラインにだってそうはいねぇぞ!?」
「今はそんなことを議論してる場合じゃないよ!こいつら“本部”の海兵だ!大物が出てきたら分が悪い!」
「チ…まあいい。あの女も麦わらの野郎もこの島からは出られねェ!まさか自分達の船が灰になっているとは夢にも思ってねぇだろ!海軍なんぞ無視して、あいつらの一味を叩きつぶす!行くぞ、野郎ども!」
「「「「「オオォォーーーーーッ!!」」」」」

 バギーの号令に団員達は雄たけびで答える。

「モーター!」
「はい、船長!」

 部下の一人がバギーに向かって前輪とエンジン付きの後輪を投げる。
 バギーは前輪を両手でつかみ、両足のひざ下に後輪を入れる。最後に首を切り離して腹の上に置いた。

「これぞバラバラカー!!行くぞ!西の港!」

 はっきり言ってダサい。

「ゲレンデセット!」
「はい、アルビダ姉さん!」

 一方、アルビダは部下に滑り台のようなゲレンデを用意させた。

「摩擦ゼロ!スベスベシュプール!」

 アルビダがゲレンデを滑ると、そのままの勢いで地面を滑りだす。
 普通ならば、足と地面の間に摩擦が発生し、すぐに止まるはずであるが、スベスベの実を食べたアルビダの肌は、摩擦が0になる程のスベスベ肌となっているため、スピードを保ったまま、滑り続けることが出来る。

 アルビダ、バギー共に海軍の包囲網を突き破ろうとした、その時―――

「ホワイト・アウト!」

 真っ白な煙に絡めとられてしまった。
 バギー達だけではない。その部下も全て白煙に束縛されている。

「スモーカー大佐!」
「てめぇらの相手してる場合じゃねェんだよ。雑魚どもが」

 この白煙の発生源こそ海軍本部大佐“白猟のスモーカー”の両腕そのもの。これこそ、彼のモクモクの実の能力である。
 悪魔の実は大別して3種類ある。
 原型を保ったまま、常識では考えられない能力を得る『超人系(パラミシア)』。これはルフィやバギーが該当する。
 3つの形態と、純粋な身体能力の強化を齎す『動物系(ゾオン)』。これはカリギュラの喰べたヒトヒトの実が該当する。
 そして、自然現象そのものに変化する能力を与える『自然系(ロギア)』。
自然系の悪魔の実は3種類の中でも最強と言われる。なぜならば、他の2種類と違い、実態をなくすことが出来るからである。流動する身体を持つ自然系能力者には、斬撃や銃撃等の物理的な攻撃は一切効かない。
スモーカーはこの自然系の能力者である。

「『ビローアバイク』を出せ。“麦わら”と“人喰らい”を追う」
「ハッ!」

 スモーカーに言われて部下はすぐにビローアバイクを用意する。
 巨大な三輪がついたこのバイクは、スモーカーのモクモクの能力を動力源とする、水陸両用の専用バイクである。

「この白猟のスモーカーの名に賭けて、お前らを絶対に逃しはしない!」

 スモーカーの心中を察したように、ビローアバイクは雄たけびのような唸りをあげて、豪雨の中を急発進した。



「風がひどくなってきた」
「そうだな。これ以上強くなれば、船が出せなくなりそうだ」

 風も雨も時間が経つに連れて、ますますひどくなって行く。
 一刻も早く出航しなければならないのだが…

「待てー!海賊どもー!」

 海軍がしつこい。

「どうする?止まって戦うか?」
「やめとけ。キリがねぇ。それにナミさんが早く船に戻れっつってたんだ」
「私としては少々捕喰を行いたかったのだが…仕方ないか」
「お前は本当にさらりと怖いことを言うよな」
「折角の馳走を逃したんだ。少しくらい喰いたくもなるさ」

 ルフィを処刑しようとしていた道化師と金棒を持った女からは悪魔の実の匂いがした。
 本来なら喰っておきたかったが、なにぶん、この嵐の所為で時間に余裕がない。
 まあいい、匂いは憶えた。今度会ったら喰らうとしよう。

「ロロノア・ゾロ!」

 前方に黒いコートを着た女剣士が立ちふさがった。

「たしぎ曹長!」

 後方の海兵たちの反応から察するに、あの女は海軍の下士官か。

「あなたがロロノアで、海賊だったとは!私をからかってたんですね!許せない!」

「お前あの娘になにしたんだよ!」
「お前こそ、海兵だったのか」
「―――?」

 サンジがゾロにくってかかるが、ゾロは相手にもしない。ルフィはそもそも状況を理解できていない。
 自由行動中に、ゾロと女海兵の間に何かあったと見るべきだろうな。

「名刀“和同一文字”、回収します」

「…ゾロ、あいつは誰だ?」
「武器屋であった変な女だ。まさか海兵だったとはな。世の中の悪党から名刀を回収するのがあいつの目的なんだとよ。それより、こいつはおれが何とかする。お前達は先に行け」
「応!」
「了解した」

 ゾロは腰の和同一文字と蒼刃・氷女を抜くと、女海兵に斬りかかる。
 女海兵はそれを自身の刀で受け止めると、そのまま鍔迫り合いに入った。

「あの野郎!レディに手を出すとは―――!」
「五月蠅い黙れ」

 ガン!

「………」
「さて、先を急ぐぞ」
「カリギュラ容赦無ぇ~………」

 気絶させたサンジを担ぐと、ルフィと共に船へと駆け抜ける。



 ゾロとたしぎ、二人の斬り合いはしばらく続いていたが、ゾロがたしぎの刀をたたき落としたことによって、終焉を迎えた。

「この刀達は…渡せねぇんだよ。どうあってもな…!」

 たしぎの首のすぐ横に和同一文字を突き立てながら、ゾロは語る。

「た…たしぎ曹長が負けた…!?」

 海兵たちに動揺が走るなか、ゾロはたしぎに止めを刺すことなく、刀を鞘に納めると、その場を立ち去ろうとする。

「じゃあな。先を急ぐんだ」
「―――!何故斬らない!」

 たしぎは見逃されたという事実に激昂する。

「私が、女だからですか!?」
「―――!」

 たしぎがゾロに向けてはなった言葉は、昔、幼馴染に言われた言葉とそっくりだった。

「女が男より腕力が無いからって、真剣勝負に手を抜かれるなんて、屈辱です。“いっそ男に生まれたかった”なんて気持ち、あなたにはわからないでしょうけど…!私は遊びで刀をもっているわけじゃない!」
「………!」

 姿かたち、その言動、それらがあまりにも死んだ幼馴染と似過ぎているたしぎに、ゾロはついに我慢できなくなった。

「てめぇの存在が気にくわねぇ!」
「んな!?」
「いいか、お前のその顔、昔死んだおれの親友にそっくりなんだ!しまいにゃあいつと同じようなことばっかり言いやがって!真似すんじゃねぇよ、このパクリ女が!」

 ゾロは氷女を鞘から抜くと、“鍔迫り合いになるように”、斬りかかる。案の定、たしぎは拾った刀でそれを受け止める。

「何をそんな子供みたいな…!失礼な!私は私で私のままに生きてるんです!あなたの友達がどんな人かは知りませんけど、心外は私の方です!そっちがパクリなんじゃないですか!?」
「何だとコラァ!」

「曹長…」

 もはや緊張感も何もない。傍で見守っている海兵たちが呆れた声を出した瞬間―――

「―――!!?」

 ゾロに激痛が走った。
 海兵たちは誰一人として発砲などしていないし、たしぎも同様である。

「―――え?」

 だが、たしぎは見た。
 蒼刃・氷女の柄から、まるでゾロの右腕を侵食するかのように広がる、蒼い触手を。

「―――!」

 それを見て、即座にゾロから距離を取ったのは、剣士としての天凛のなせる業か。
 数瞬前までたしぎがいた場所を、氷女を凄まじい速度でなぎ払った。明らかに胴を真っ二つにする斬撃である。

「い、いきなり何を…!」
「「真剣勝負に手を抜くなと言ったのは貴様だろう」」

 聞こえてきた声はおかしなものだった。
 先ほどまでがなり合っていた男―――ゾロの声に混じって、聞いたこともない女の声が混じっている。
 たしぎは目の前の人物が、ゾロでない、別の存在であることを感じた。

「あなたは…誰ですか?」
「「これから死に逝く者に語ったところで無意味だ」」

 ゾロらしき者はそれだけ言うと、即座に斬りかかってきた。

「―――!速い!」

 それは明らかに人の限界を超えた速度だった。
 たしぎがそれを捌けたのは、運と先ほどまでの剣の技量が無くなっていたからだ。
 凄まじい速さを持った、素人の斬撃。たしぎはそう感じた。

「「ふむ、やはり『同調』したてでは剣の技量まではうまく再現できないか…」」

 蒼い触手が絡みつく右腕をしげしげと見つめながら、ゾロらしき者は不満をこぼす。

「「まあ、それでもこの場に居る敵生命体を全滅させるには十分か」」

 ゾロらしき者は再び刀を構える。
 ゾロが先ほどまで行っていた二刀流ではなく、身体を浸食している氷女の切っ先を地面につけ、腰を落とす。地摺り青眼の構えだ。

「たしぎ曹長!」

 その時、ゾロの変化に危機感を憶えた部下の海兵達がたしぎを守ろうと、間に入ってきた。

「ダメ!下がりなさい!」

 たしぎは軽率な部下に退避するように命令するが、もう遅い。

「「疾ィ…!」」

 ゾロらしき者の刀が振り抜かれ、部下達の上半身が宙を舞う。

「あ………!」

 信じられないことに、目の前の存在は、複数の人間の身体を、一太刀の元、苦も無く切断した。
 本来、人間の身体は脂肪や筋肉、骨などが邪魔をし、そう簡単に斬れるものではない。名刀を持った達人でも一人を斬れるかどうかと言うところだ。
 相変わらず、敵の剣筋は拙い。部下達は腕力と刀の斬れ味だけで、真っ二つにされたのだ。

「ひ、怯むなーーー!」

 仲間が斬り裂かれても逃げ出さずに戦い続けようとする意志は、さすがは海軍本部の精鋭と言ったところか。

「「死に急ぐか。それもいいだろう」」

 例え、それが無謀と呼ばれるものであったとしても。

―――「「捕喰・餓鬼」」

 氷女の刃が向かってきた海兵の一人を切り裂く。
 すると、海兵はたちまち“骨だけ”を残して崩れ落ちる。
 地面を転がる頭蓋骨が、何かの冗談のようにも見える。

「ヒィ…!」
「ば、化物だ…」

 さすがの海兵たちもこれには戦慄を禁じ得ない。
 得体のしれない者への恐怖がその場を支配しようとしたその時

「総員撤退!殿は私が引き受けます!一刻も早く支部まで撤退し、態勢を立て直しなさい!」
「た、たしぎ曹長…!しかし…!」
「行きなさい!これは上官命令です!」
「は、はい!」

 たしぎが号令を飛ばし、海兵達を恐慌から立ち直らせた。

「「誰一人として逃さん。ここで死んで行け」」
「させない!」
「「ヌッ…!」」

 たしぎは相手が何か行動をする前に、氷女に自分の刀を叩きつけ、動きを封じる。
 先ほどから敵はこの氷女しか攻撃に用いていない。氷女を自由にさせなければ、少なくとも部下達を逃がす時間くらいは稼げるとふみ、たしぎはそれに賭けた!

「「…味な真似をしてくれる」」
「やはり、あなたはこの氷女を使ってしか、攻撃が出来ないんですね。ならば、部下達が撤退するまで、何が何でも使わせません!」

 たしぎは、刀をはじき返そうとする相手の力を上手くいなし、氷女を封じ続ける。

「「…いくらなんでも同調率が悪すぎる。何故だ主殿、何故、私を受け入れない?」」
「―――?」
「「貴方は、誰にも負けない強さが欲しいのではないのか?私とならば、それを手に入れられるというのに…」」
「………」

 少しでも気を抜けば刀を弾かれ、真っ二つにされるという極限の状況の中、たしぎはゾロではない者の声を聞き、その正体を直感した。

「まさか…貴女は氷女?」
「「………!」」

 ゾロらしきものがわずかにたじろぐ。
 その動揺を見て、たしぎは自分の直感が正しいことを確信した。

「「ハァッ!」」

 だが、その瞬間に凄まじい力で刀が押し返されてしまった。
 追撃を警戒して守りに入ったたしぎだが、相手はただこちらをじっと見つめている。

「意思をもった刀…そんなものが、実在するなんて」
「「…ふん、私の正体を見破った程度で良い気になるな。他の奴らは逃してしまったが、お前だけは確実に殺す」」
「持ち主を操り、人を斬る妖刀…危険すぎる。妖刀“蒼刃・氷女”!回収します!」
「「嘗めるな…!」」

 再び始まる剣劇。
 だが、一合、二合と斬り結ぶたび、たしぎは押されて行く。
 悔しいが、自力が違う。だが、部下達が応援を連れてくるまで、この命、何としても持たせねば!

「もうすぐここに応援が来ます。私の上司を連れて!そうなれば、いくら貴女とはいえ、捕えることが出来る」
「「ならば、その前に貴様の首を刎ねるまで」」
「―――!しまった!」

 苛烈なる一撃に、ついにたしぎの刀は弾かれ、地面に突き刺さった。
 氷女はそのまま返す刀でたしぎの首を狙う!

 これは避けられない。
 たしぎは自分の死を覚悟した。

 (…すいません、スモーカーさん。私はここまでです。今まで、本当にありがとうございました)

 まるで、スローモーションのようにゆっくりと自分の首に近づいてくる氷女の刃を見つめながら、たしぎは今際の際に、迷惑ばかりかけていた上司に謝罪を述べた。



「何だ、誰かいる!」

 豪雨の中を港へと向かっている私達の前に、一人の男が立ちふさがった。

「来たな。麦わらのルフィ、人喰らいのカリギュラ」
「お前、誰だ!?」
「おれの名はスモーカー。“海軍本部”の大佐だ。お前たちを海へは行かせねェ!」

 スモーカーの両腕が煙へと変化し、ルフィに迫る。

「うわっ!何だ何だ!?」
「チィ…!」

 煙に巻かれる前にルフィを突き飛ばし、担いでいたサンジをルフィに投げる。
 だが、代わりに私がスモーカーの煙腕に捕らわれてしまった。

「カリギュラ!」
「来るな!お前はサンジを担いでそのまま船を目指せ!こいつは私が何とかする!」
「………!わかった、必ず戻ってこい!お前はおれ達とグランドラインに入るんだからな!」

 一瞬躊躇いを見せたルフィだが、気絶したサンジを庇いながら戦えるほど目の前の男は甘くは無いと悟ったのだろう。すぐに港に向かって走り出した。

「逃がすと思ってんのか?ホワイト・スネーク!」

 だが、スモーカーの煙腕がルフィを捉えようと、蛇の如く迫る。

「させん!」

 私は右腕をオヴェリスクに変化させ、ルフィを追う煙腕に『インキタトゥスの吐息』を放つ。
 『インキタトゥスの吐息』は極低温のエネルギーを竜巻状にして放つアラガミバレットであり、破壊よりも凍結に重きを置いた行動阻害弾だ。

「なに!?」

 インキタトゥスの吐息によって、スモーカーの煙腕は一瞬で凍結し、細かい氷の粒となって霧散した。
 成程、冷気による攻撃は、多少効果があるようだ。
 私は左手を原型に戻し、エネルギーを集中させ、氷炎を作り出す。
氷炎を纏った左手を胴体を拘束している煙腕に当てると、同じく煙は氷の粒子となり、戒めが解かれた。

「チ、まさか冷気を操る能力まで持っているとはな。ミホークの野郎、肝腎なことを報告して無ぇじゃねぇか。これだから海賊は信用ならねぇんだ」

 スモーカーは両腕の煙腕を破壊されたのにも関わらず、気にも留めていない。

「だが、その程度の攻撃じゃ、おれは倒せん」

 次の瞬間、氷の粒子が急速に気化し、煙に戻ると、スモーカーの両腕に収束していく。
 煙が晴れると、何事もなかったかのように、両腕を組むスモーカーの姿があった。

「…自然系悪魔の実の能力者か」
「正解だ。いかに動物系幻獣種の能力者とはいえ、お前はおれに傷一つ付けることもできねぇ。観念しな」

 …?ああ、そうか。海軍は私が人間の能力者だと勘違いしているのか。

「なに、倒せなくとも、私の仲間達が逃げ出す時間が稼げれば良い。実際、私の冷気でお前の煙はある程度封じることは出来たしな。今度は全身を氷漬けにしてやろう」
「出来るもんならやってみな」

 スモーカーが背中の巨大な十手を引き抜き、右手に握る。どうやら、ここからが本当の勝負のようだ。

「お望み通り、氷の棺で眠らせてやる」

 意識を集中させ、混合型へと変じる。
 未だ原型に変化出来ないとはいえ、変化のスピードは目に見えて上がってきている。
 今では、距離がある程度開いていれば、変化の隙を突かれることはない。
 
「青白く輝く装甲とブレードにおかしな形の銃に変形する腕、まるで兵器のような翼を模したブースター…お前の食べた実のモデルはさぞかし戦い好きなんだろうな」
「まあ、否定はしない。お喋りがお望みなら、いくらでも付き合ってやる。」
「ああ。後は支部の牢屋でたっぷりと尋問してやるよ!」

 スモーカーが十手を引っ提げ、真正面から突っ込んできた。
 私もスモーカーへと突進する。

「ホワイト・ブロー!」

 スモーカーの腕が煙へと変化し、長いリーチを伴った拳打となる。

「さて、実態を伴わないものを喰ったら、どうなるのかな」

 右腕を捕喰形態に変化させ、スモーカーの煙腕を喰いちぎる。

「な…!この化けモンが!」

 スモーカーの腕が元に戻る。
 やはり、捕食しても致命的なダメージとはならないか。
 だが、少々面白いことが出来るかもしれない。

 ―――右腕変化。タイプ『オヴェリスク』
 ―――“ロギアバレット”『スモークボム』装填。

「面白いものを見せてやろう」

 ―――発射。

「―――!」

 先ほど喰らったスモーカーの煙をバレットとして再構築し、スモーカー目掛けて撃ち出した。
 撃ち出したバレットは『スモークボム』。文字通り、爆発を起こす煙の爆弾だ。
 スモーカーに命中したスモークボムは、白煙をまき散らしながら、大規模な爆発を起こした。

「バカな!今のは間違いなくおれの…!」
「隙あり」
「しまっ…!」

 自分の能力を模写されたことに驚愕するスモーカーに、煙にまぎれて一気に接近し、氷炎を纏った手でスモーカーに触れる。

 ―――コキュートスの棺

 一瞬で、スモーカーは全身氷漬けとなった。
 これならば、煙に変じることも出来まい。

「中々に楽しかったぞ。では、私の糧となるがいい」

 右腕を捕喰形態へと変化させ、スモーカーを捕喰しようとした瞬間―――

「甘ぇんだよ!化物!」
「―――!」

 スモーカーが氷ごと一瞬で気化し、煙と化したまま、持っていた十手を私の捕喰機関に突っ込んだ。
 まさか、全身を氷漬けにしても、その能力を失わないとはな。
 さすがは、悪魔の実の最強種といったところか。

「…これは」

 何度か味わった感覚を感じる。
馬鹿な、ここは陸だぞ?

「この十手の先端には海楼石ってもんが仕込んである。詳しいことは解ってねぇが、海と同じエネルギーを発する鉱石で、悪魔の実の能力者を無力化する。これで終わりだ。“人喰らい”」
「なるほど。道理で…」

 海楼石とやらから発せられるエネルギーで、脱力感と、それを上回る力の充実を感じる。

「力が漲るわけだ」
「―――!」

 捕喰機関に突っ込まれた十手の先端をそのまま喰いちぎる。
 体内に取り込まれた海楼石の効果によって、私の身体は原型へと戻り始める。

「お前は…お前は一体何なんだ!?」
「…アラガミ。そう呼ばれていた存在だ」

 完全に原型に戻った私に、スモーカーが先ほどよりも一層深い驚愕を浮かべる。
 ふむ…海楼石の効果によって、陸上でもしばらくの間は原型を維持できそうだ。

「さあ、スモーカー。第二回戦と行こうじゃないか」
「…相手が何であろうと、おれは退かねぇ!白猟のスモーカーの名に賭けて、ここで貴様を仕留める!」

 私の原型を目の当たりにしても折れぬ闘争心。見事と言う他無い。

「フフ、お前を喰らえば、完全修復に達するかもしれないな。肉片一つ残さず、喰い尽してやろう」
「嘗めるな!化物!」

 スモーカーが全身を煙と化し、私を包みこむ。

「ホワイト・アウト!」

 蔓延していた煙が私を拘束…否、押しつぶそうと迫る。
 が、甘い。

 ―――インキタトゥスの息。

 ブースターから極低温の冷気を放出する。
 完全変形型や混成型とは、強さ、範囲共に桁違いだ。

「バ、バカな…!」

 私を包みこんでいた煙は全て氷の粒子と化した。
 そして、粒子が溶けて煙が集束したところを狙い、氷炎を纏った手で、煙を掴みとる。

「フフフ…どうやら、煙を凍らされると、一旦は集束させる必要があるようだな」
「グ…は、離しやがれ!」

 煙から人型に戻ったスモーカーが私の手の中でもがく。
 だが、それは無意味だ。
先ほどまでと違い、今の私は原型。その冷気の強さは正しく桁が違う。
全てを静止させる絶対零度。煙の粒子如きが動くことなどあり得ない。

「さあ、今度こそ、私の糧になって貰うぞ?白猟のスモーカー」
「ここまでか…!」

 スモーカーは悔しそうに目を瞑り、無念の言葉を口にする。
 潔い。苦しまぬよう、一息に喰ってやろう。

―――では



































【コメント】
 主人が望むときに斬れるのが『名刀』。
 主人が望まなくても斬れるのが『妖刀』。
 主人が望まなくても強制的に斬るのが『氷女』。

「そんな装備(氷女)で大丈夫か?」
「大丈夫じゃない。大問題だ」


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