「ぐあっ!!」
ガッシャーンと派手な音を立ててファイズが工事用の一輪車やらレッドコーンやらの山に突っ伏した。何?俺がやったの?
思わず硬い物を殴った感触が残る右手を見る。
(はっ?)
一瞬のフリーズ。
視界の中に捕らえた俺の右手は見慣れた肌色ではなくて、妙にメタリックな銀色に代わっていた。
(ちょっ!?)
慌てて全身を見回す、腹、背中、足、その他諸々を確認っ!!。
まずは胸……なんか銀色で真ん中にΦのマークがあります。
腹…どう考えても人が座るシートです。
足…完全装甲が施されて、踵にはスラスターがついてますね。
背中…大きなタイヤが着いてるよ!やったねたえちゃん!!
結論、どうみてもバジンくんです本当にありがとうございました。
うん、まぁ胸と腹の時点でほとんど気づいてましたけどね、よく見たらこの視界もなんか数字とかいろいろ書いてあるし。
さて、落ち着いたところで…さんはい。
(なんでじゃああああああああああああ!!)
訳が分からん!気がついたらバジンになってましたって一体どーゆうことなのコレ!?夢…いや夢じゃねーやさっき思いっきり殴ったし!!
ぶっちゃけもう完全に理解不能、そもそもなんでバジンがファイズ殴ってんの!?俺の記憶だとバジンはファイズをしっかりサポートする相棒でファイズを攻撃なんて一度も…っ!?
(あった…)
一度だけ、俺の記憶が正しければバジンは一度だけファイズに牙を剥いたことがある、それは……物語が始まってまだ十話もいってない頃。
確かレギュラー陣の一人 啓太郎がファイズギアを持ち出して、変身できずにオルフェノクにベルトを奪われて……。
その瞬間、俺の頭の中で一つの謎が解けた。
「うぉおおおおっ!!」
工事道具の山から起き上がったファイズが叫びながら組み付いてくる、その一瞬、俺の(バジンの)視界がはっきりとソレを捉えていた。
ファイズと組み合う俺(バジン)を見て、呆然としてる男……その名も乾 巧!!察するに目の前のファイズは…偽者だ!!
(おりゃああああっ!!)
上がらない気合の声を上げて、俺の、いやバジンの両拳が目の前のファイズの装甲を一発二発と殴りつける。
バシンバシンと火花を散らして吹っ飛びそうになるファイズを左手で捕まえ、前後を入れ替えて止めのアッパーを顎に打ち込むっ!
「ガァアアアアアッ!!」
悲鳴を上げてトンネル(今気づいた)の天井にぶち当たるファイズ。
その瞬間、許容量を超えたダメージにファイズギアがその腰から外れて地面に落ちる。
(受け取れたっくんっ!!)
俺はすぐさまソレを拾うと、すぐさま座り込んだままの本来の持ち主に投げ渡した。
…………思ってたほど動かしにくくないなこの身体。