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No.25145の一覧
[0] Der Freischütz【ストライクウィッチーズ・TS転生原作知識なし】[ネウロイP](2014/06/29 11:31)
[1] 第一話[ネウロイP](2011/02/06 20:37)
[2] 第二話[ネウロイP](2011/02/12 22:22)
[3] 第三話[ネウロイP](2011/02/21 20:35)
[4] 第四話[ネウロイP](2011/02/13 22:03)
[5] 第五話[ネウロイP](2011/03/08 21:48)
[6] 第六話[ネウロイP](2011/02/12 22:23)
[7] 第七話[ネウロイP](2011/02/12 22:24)
[8] 第八話[ネウロイP](2011/03/08 21:38)
[9] 第九話[ネウロイP](2011/02/12 11:31)
[10] 第十話[ネウロイP](2011/02/19 09:17)
[11] 第十一話[ネウロイP](2011/05/14 19:50)
[12] 第十二話[ネウロイP](2011/03/24 10:57)
[13] 第十三話[ネウロイP](2011/04/23 09:18)
[14] 第十四話[ネウロイP](2011/03/22 11:08)
[15] 第十五話[ネウロイP](2011/05/14 19:20)
[16] 第十六話[ネウロイP](2011/04/03 15:33)
[17] 超お茶濁し企画!![ネウロイP](2011/02/14 07:48)
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[25145] 第七話
Name: ネウロイP◆8cd559b4 ID:5faabe4b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/12 22:24
Der Freischütz 第七話 「死神のバレット、または司のカウハバ基地お料理奮闘記」




数ヶ月前 スオムス、ラドガ湖北部周辺


「中尉、哨戒から帰った兵より報告です。A6地区にてネウロイを発見、中型の四足が3で板付きが11。そのまま真っ直ぐコチラに向かっているそうです」


雪に紛れれば見つけることの難しくなる白い服を着た兵士は同じく白で統一した服を着た女性に声をかける。
中尉と呼ばれた女性の足に穿かれている陸戦用のストライカーユニットが彼女がウィッチである事を示していた。


「分かったわ、みんなを集めて頂戴。A2地区で待ち伏せていつも通りに手厚い歓迎と行きましょうか」


「了解です中尉。わざわざクソ寒いスオムスまで来てくれたんですから精々暖かくしてやりましょう」


皮肉げに笑い合うと男は仲間を集める為にいったん場を離れ、女性は地面に置いていたラハティL-39対装甲銃を軽々と持ち上げた。


「さぁ、来なさいネウロイ達。特別製のカクテルをあなた達に捧げてあげるわ」






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陽の光を受け、白銀に輝く雪原を黒い集団が踏みならしていく。
多砲塔戦車のボディに昆虫の様な四足を付けた異形とデッサン用の木偶人形の足にスキー板を付けたようなアンバンスな人型が徒党を組んでいるのだ。
人は彼らの名を、出現した土地にちなんでネウロイ(異形のモノ)と呼んでいる。
ネウロイ達は人々のいる街に向かい、ただただ行進していた。
それが明確な意志によるものか、はたまた本能によるものなのか? 無機質な黒い体躯からそれを推し量れる者はだれ一人としていない。
ただ人間に理解できるのがこのままネウロイを放置すれば街に向かい破壊と蹂躙の限りを尽くし、人の住めない場所になるということだけだった。


「開始っ!!」


息を殺して上からネウロイを窺っていた兵士達は無線機にて指示を受け、巨大な雪玉を斜面へ転がしていく。
現在ネウロイ達が密集している場所は周りよりも低地な為、無数の雪玉は自然とネウロイ達へ誘導された。
自分達へと向かってくる雪玉を脅威と判断したらしいネウロイ達は照準を雪玉に合わせ……、


「今よ、撃ち方始めっ!!」


ネウロイ達の照準が雪玉の方に向くと左右の森の中に潜んできた兵士たちが一斉に射撃を開始する。
正面の雪玉に加えての左右からの斜め十字砲火に、どちらを優先して処理すればいいのか混乱したのかネウロイ達の動きが鈍る。
その隙をついてさらなる指示が飛んだ。


「投擲ぃ!!」


合図ともに琥珀色の液体が充填されたガラス瓶が宙を舞う。
投げられたガラス瓶の一部は見事にネウロイに命中して瓶が割れ、同時に派手に炎上した。
『モロトフ・カクテル』、史実では冬戦争時、ソ連がフィンランドに最初に行った空爆について当時のソ連外相であるヴャチェスラフ・モロトフが『あれは空爆ではなくフィンランドの貧民にパンを投下したのだ』と発言したのを皮肉り、火炎瓶を『ご丁寧に爆撃機でパン(皮肉であり実際は全部爆弾だった)を配ってくれるモロトフに感謝の意味を込めて捧げる特別製のカクテル』と呼んだのだ。
単なる火炎瓶は投擲する前に火をつけるのだがこの特別製カクテルは塩素酸塩と硫酸の化学反応を利用し、片方を瓶の外側に塗布し片方を内部の液体と混合してガラスが割れると自然発火する仕組みになっている為、ネウロイに直撃した瓶が炎上したのである。
そして割れずに落ちた瓶も後続で投げられた手榴弾の爆裂により着火し炎上していく。
密集していたネウロイは残らず燃え盛り、言葉通りにスオムス兵達から暖かい歓迎を受けたのだ。
ネウロイ達は表面が溶けて焼け焦げ、ボロボロになり多砲塔戦車もどきにいたっては一体が内部に取りこんでいた機械に搭載された燃料タンクに引火したのか派手な花火を上げる。
だが、そんなことはおかまいなしに兵士達はネウロイに無数の鉛玉をプレゼントしていく。
兵士達が人型、中尉と呼ばれたウィッチがラハティL-39対装甲銃の20mm弾で戦車型を蕩けた穴開きチーズにするのにはさほど時間は掛からなかった。
中尉が残り一体の戦車型に止めを刺そうとした時、中尉が空けた風穴を通って一発の弾丸がコアを貫く。


「また獲物を取られた。あの射撃は多分……」


周囲を確認した後、炎上した場所を避けて隊員達は集合する。
すると一人だけ異彩を放つ兵士が居た。
雪のように白いギリ―スーツを纏った150cm程の小柄な男がオラーシャから貸与された120cmもあるモシン・ナガン狙撃銃をまるで手足の如く扱い、狩り残した獲物が居ないかと辺りを見回していたのだ。


「はい、今回ネウロイを仕留めた人!」


いったん周囲の警戒を続ける部下の一人をそのままにして中尉は他の部下達に尋ねる。
すると5人の兵士が人差し指以外を閉じた状態で片手を上げた。


「5人で五体ね。私が人型2に戦車を1仕留めて、戦車の内1体はカクテルに酔って月まで吹っ飛んだから……14引く9で残りが5体。ということは兵長…………じゃ、もうないのね。少尉! あなたは何体仕留めた?」


数週間前、五階級特進という前人未到の昇進を果たした部下に未だに実感が湧かず、中尉は少尉を前の階級で呼んでしまう。
けれど少尉は特に気にした様子はなく肩に掛けたスリング(負い紐)と片手でライフルを構えたまま、残った方の手の指を全て開いて中尉の方へ見せた。


「やっぱり5体か、人型4に戦車を1体仕留めたわけね。本当になんでウィッチの私よりもネウロイを撃破できるのやら? スロ・コルッカを目指せとは言ったけどまさかスロ・コルッカを超える活躍をするなんて……」


数か月前の突然のネウロイ達のスオムスへの侵攻。
地上から侵攻してきたネウロイは主に人型多数と四足の戦車モドキが少数でただ単純に突撃してくるばかりで個々では大したことはなかったが、いかんせん数が多かった。
しかし、戦力差を遅延戦術や地の利を活かしたゲリラ戦を仕掛けて覆し、ネウロイの集団を撃退する事に成功する。
中尉の率いる中隊もここラドガ湖北部周辺、コッラー地方を見事に防衛した。
その戦いの中で抜きん出た活躍をしたのが中尉の部下に居る少尉である。
少尉はウィッチが持つような特別な力は持っていなかったが射撃の腕は入隊直後から他の追随を許さなかった。入隊前はケワタガモ猟などで生計を立てていたという事なのでそれが関係しているのかもしれない。
ともかく当時、兵長だった彼はその卓越した射撃の腕を使ってネウロイ達を撃って撃って撃ちつくしたのだ。
そうして彼が撃破したネウロイの数は記録上は100以上だが、それは隊の仲間達と一緒に確認した彼のスコアであり少尉が自己申告していない非公式のものも合わせれば倍を超えるかもしれない。
記録上での撃破数の時点でエースのウィッチでも数人いるかいないかのレベルだ。
いくら人型ばかりだったとはいえ、ウィッチでもない彼がうち立てた記録はとんでもないとか凄まじいとか、そういう尺度を超越していたといっていいだろう。


「少尉、周囲の警戒はそれくらいにして……」


中尉が声を掛けようとした時、少尉は雪の中に伏せ、射撃体勢に移った。
仲間達は何事かと銃を構え、少尉の向いている方向を警戒する。
敵の姿など見えない200mほど遠方の雪原に少尉が一発の弾丸を撃ち込むと、突然雪が吹き飛び、中から黒い異形が姿を現したのだ。
つくしの様な長細い楕円形の頭を平べったい体から生やした人型のネウロイだった。
ネウロイは逃走を図ろうとした様だが、少尉はそれを許さなかった。
ボルトを引いて次弾を装填すると躊躇いなく引き金を引く。
発射された7.62mm弾はごく当たり前の様にネウロイの頭を貫き、ネウロイはそのまま仰向けに倒れ、砕け散った。


「これで6つね。雪の中に紛れてたなんて、いつから居たのよ。……それに何でネウロイが居たってわかったの?」


中尉が少尉に問いかけると少尉は辺りを見回し、戦車型ネウロイのカメラ部分だった残骸を見つけて手に取ると、陽の光に合わせて傾かせ中尉の所に向かって光を反射させる。


「もしかして、ネウロイの眼が太陽に反射して光ったから気付いたの?」


コクリと頷き肯定する少尉に中尉はなかば呆れていた。
200mほど離れた雪原からごく僅かにもれる光に気付くなんて……。
本人の狙撃銃も光に反射によるネウロイの察知を嫌ってスコープを使わず、アイアンサイトのみでのあの正確な射撃といい、この異常な察知能力といい人間離れしすぎなのだ。


「……まぁいいわ。――それにしてもあのネウロイ。あそこで私達の行動を監視してたってこと?」


ならばこれから同じ手が通用しない可能性が出てきたことになる。
ネウロイは個体同士である程度情報を共有している節があるのでこちらを監視していた個体を撃破したからといって情報が伝わっていないとは限らないのだ。


「――けれど同じ手が使えないなら次の手を考えるだけよ。いつでも来ればいいわ。あの異形達がスオムスの森を、川を、大地を、その恩恵のなんたるかを理解できない限り、スオムスの自然はこちらの味方。地の利はこちらにある。何度でも暖かく……、手厚く歓迎してあげるわよ」


「中尉、周辺に敵の姿はありません。敵は見当たらないと少尉も言っています」


「分かった。本陣まで戻りましょう。分かってると思うけど戻るまでがゲリラ戦よ。ノロくさ帰ってる途中で間抜けに背中を撃たれるなんて想像したくもない」


「――肝に銘じておきます。しかし冷えますな。戻ったらヴォトカ(ウィッカ)で一杯やっていいですか?」


「程ほどにしておきなさい。自重できないようならここに特別製のカクテルが残ってるけど、今飲んどく?」


杯を煽るジャスチャーをする部下に中尉は残っていたネウロイ・カクテルを見せた。


「謹んで遠慮させていただきますよ。いくら酒が北欧の男の燃料だからといってソイツはきつ過ぎる。飲んだ途端に火がついて昇天しちまいます。――そういやカクテルで思い出しましたがイワン共、最近ろくに補給も寄こしませんね。まぁ、もともと不要になった旧式兵器や安酒くらいしか送ってきませんでしたが」


スオムス軍は元々、武器、弾薬、装備が不足しており、各国からの援助によって装備を揃えている。隊の中で一部が使っているモシン・ナガンもオラーシャからの貸与品で初期モデルの設計が1891年であり、改良が重ねられてるとはいえ旧式感は否めない。
もっとも少尉は専用に調整されたものとはいえモシン・ナガンで数多の敵を葬っているし、専用の物を与えられる前から通常のモシン・ナガンで活躍していたが彼の基準を他の兵士に当てはめるのは酷というモノだろう。


「オラーシャも大分苦戦しているのでしょ。私達もコッラーの戦いは危なかったし」


「あの時は駄目かと思いました。なのに中尉ときたらヘグルンド少将の『コッラは持ちこたえられるか?』の言葉に『コッラーは持ちこたえます、我々が退却を命じられない限り』って返答してましたし。奴等が撤退してなかったらどうする……」


「最後まで戦ったに決まってるでしょ。むしろあそこから本番だったのに……、肩透かしを喰らった気分だったわ、あの時は……」


部下が『どうするつもりだったんですか?』と言い終える前に中尉は当たり前のように言い放った。
陸戦ウイッチであり、卓越した前線指揮官であり、年上、しかも男ばかりの部下達をまとめ上げ『母』と呼ばれ慕われるほどの女傑であるが、エキサイティングというかエキセントリックすぎる性格だけは問題があるんじゃないかと言葉を遮られた部下は思った。


「――そ、そういや中尉の妹さん、空軍の機械化航空歩兵に志願したんでしたよね。あれからどうなったんですか?」


これ以上のその話題を避けるため、部下は別の話題を振る。


「上への定時連絡の時に少将がご丁寧に教えてくれたわ。今は訓練学校に居るそうよ。問題も起しながらも中々に優秀な成績を修めているって。全く我が妹ながら……、第一次ネウロイ大戦のカールスラント空戦エース・リヒトホーフェン大尉の回顧録を読んで聞かせてあげてた頃から『私も空のエースになってやる』とか言ってたけど、この分だと本当になっちゃうかもしれないわね」


「いくら中尉の妹とはいえエースになっても中尉は超えられないでしょう。なにせ中尉はコッラの戦いの英雄ですよ!」


「ありがとう、お世辞でもうれしいわ。でも妹が世間の中でアウロラ・E・ユーティライネンの妹と呼ばれる枠で収まるか……、それとも私を越えて逆に私をエイラ・I・ユーティライネンの姉という枠に収めてくれるか――今から楽しみで仕方ないの」


空を見上げ不敵な笑みを浮かべる部隊の隊長、アウロラ・E・ユーティライネン中尉を見て部下達は隊長はやっぱり変わっていると再認識させられた。














時間を戻し場所はカウハバ基地。


「えっ! イッル、今何て言った?」


「だから、私の姉さんも陸戦のウィッチで中隊長をやってるんだけどその部隊の部下に凄腕のスナイパーが居るんだ。――――少尉っていう」


「ホントに! 本当に! その人の名前――――っていうの!?」


「ああ、そうだけど?」


「どうしたのツカサ? なんか慌ててるみたいだけど」


ニパの心配する声は耳に届かず、興奮した私はイッルに尋ねる。
現在、待機状態で暇を持て余していた私はいつもの様に同い年のイッルとニパと談笑していた。
サウナの妖精や、タロット占い、昔欧州の小さな国に居た吸血鬼の話(何故か聞いてる時に既知感を感じたが恐らく前世の知識のせいであろう)など話題は様々であったのだが今回はイッルの姉の話になり、そのアウロラ・E・ユーティライネンさんの部下の凄腕スナイパーの話になったのだが………私は知っていたのだ、前世からその名を。
白い死神、災いなす者、前世ではソ連兵達にそう呼ばれて恐れられた伝説の狙撃手。
私の知っている知識の範囲の中だけでも元世界ではエースパイロットだった人や有名な戦車乗りがこの世界ではウィッチになっているから、もしかしたらウィッチかと思ったけどどうやら普通に男の人らしい。(戦果を聞く限り普通の男性ではないが……)
やばい、やばい。つまりファンレターとか書いたら本人に送れるッてことだよね。
むしろ頼んだらサイン入りプロマイドとかもらえるかな?
何だろうこの気持ちの高揚感は、まだ一度目の人生で幼い子供だった時に誕生日やクリスマスを迎えてプレゼントに期待した時の心の高ぶりに似ている。


「ねぇ、イッル。イッルのお姉さんに頼んだら―――少尉のサイン入りプロマイドとかもらえるかな? 後。イッルがお姉さんに手紙出す時に私も――少尉にファンレター書いて送ったりしてもいい!?」


「別にいいけどさ。私の姉さんの自慢話してるのにそういう反応されると複雑だな」


「あ、ごめんなさい。できればイッルのお姉さんのプロマイドも頼めばもらえる?」


「そんなついでみたいな扱い……、姉さんもスオムスじゃ英雄扱いなんだけどな。やっぱ部下の――少尉が凄すぎんのか」


この時やたらとテンションの上がっていた私はイッルが次、姉の話をする機会があった時は可能な限り部下の――少尉の話にはしないようにしようと思っているなど露ほども分からなかった。
















私はカフハバ基地に来てまだ二週間経つか経たないかぐらいであるが、結構な頻度で料理を作る様になった。
義勇中隊のメンバーだけではなく最初のハヤシライスの時に食べに来てくれたアホネン大尉もたまに数人の部下を連れて料理を食べにきれてくれたりして量を多く作らなければならない場合もあるが全員に同じものを用意すればいいのでそれ程大変な訳でもない。
ハヤシライスに関しては後から穴拭大尉に『ハヤシライス』は語呂的に早死を連想させるから別の名前にしときなさいとアドバイスをもらい名前を暫定的に『ビーフライス』と改めた。
そういうデリケートな部分での気遣いができなかった事を反省した私は料理を作る前にみんなに一度意見を聞いて作っている。
他にも前世の日本で第二次世界大戦後に生まれた料理、パスタのトマトケチャップ炒め、『ナポリタン』に対してジュゼッピーナ准尉がこんなのロマーニャ料理じゃないと突っ込んできたのも記憶に新しい。
まぁ、元々の世界でもGHQのアメリカ兵達がパスタにケチャップを和えたレーションを食べているのを見た日本の料理人が思いついて創作した料理であり(ただしオリジナルのスパゲティナポリタンはトマトケチャップは使わずトマトピューレを使っていた)どちらかいえばアメリカ寄りの料理で、ロマーニャ人の准尉には私がカリフォルニアロールに『SAMURAI』とか名付けてしまう外国人料理人の様に思えたのだろう。
それらの事柄から様々な人種が入り乱れる義勇飛行中隊では一人一人の食のこだわりが違う事を強く実感したのだ。
しかしそれは私にとって辛いことではなく料理を作るうちに一人ひとりの個性が見えてきてむしろ面白かった。
料理を作るのを手伝ってもらいながら私はそれぞれの個性を確かめていった。
例えばリベリオン人のオヘヤ少尉の調理の仕方は豪快で悪くいえば大雑把だけれどお肉を切るのには慣れているらしく手早い。
食べる方に関してはあっさりしていて味が薄いものよりこってりしていて味付けも濃い方が好みの様だ。
対してブリタニア人のビューリング少尉は器用に調理をこなすが、料理については最低限食べれる料理であれば何でもいいらしい。
何というか……個性というより国民性な気がするが気にしない。
とにかく、今までの扶桑での料理生活とはまた違ったものが見えてきたという事だ。


「今日はまず頼んでおいたものを……」


私は準備を始める前に例の物を取りに行った。


「軍曹、頼んでたヤツは出来てるぜ。……しかし何の料理に使うんだソレ?」


PzB39を整備してくれた兵士の人に無理を言って頼んだのだがどうやら作ってくれたようだ。
机の上に置いてあるソレを私は確かめる。
薄い金属性の板が円環状に結合しており、筒の様な形をしていた。


「ちょっと小麦粉で作る皮の型抜きに使おうかと、――ちゃんと丸くなっている。ありがとうございます、こんな事まで頼んでしまって……」


「――別にこれくらいなら片手間でもすぐに終わるから構わねぇさ。しかし型抜きとはラビオリでも作るのか?」


「具を皮に包むのは合ってますがラビオリでないです。うまく出来たら今度差し入れましょうか?」


「……いや、遠慮しておく。俺だけ抜け駆けは良くねぇからな」


ややウンザリした様子でクイっ、クイっと後ろを指示す。
するとそこにはこちらを食い入る様に見つめるその他の整備兵の方々が居た。


「大丈夫です。皮と具材を用意すれば後はじゃんじゃん作れる料理なんで皆さんの分を持ってきますね。では――」


その場に居るみなさんにおじぎをすると急いで調理場に行く。今日の手伝ってくれる人達が待ってる筈だから早く行かなきゃ――、私は駆け足でその場を後にした。






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「おいっ、待った軍曹!! 別に差し入れは……って聞いちゃいねぇな。あんなに嬉しそうにはしゃいじまって……、やっぱりこど――うっ、何しやがる!! 首を絞めるな!!」


「あんなかわいいウィッチ引っ掛けやがってこの野郎! 一人だけずりぃぞ!! どうやったんだ? 昨日もお前を探して頼み事に来てたし。畜生うらやましい!!」


仲間の一人が整備兵に突っかかり、文句を言うと周りも同調し「そうだ、そうだ」と声を上げる。


「言っとくけどなぁ――、なりはでかいがあのウィッチの軍曹殿はまだ11歳だぞ。年が2倍も3倍も違うようなガキの相手してるだけで羨ましがられる筋合いは……」


「つまりお前はそういうのが好みだった訳だな!! 道理で花屋に誘ってもいつもお前だけ食いつきが悪かったが道理で……」


「はぁ!? 何言ってやがんだ。 勝手に人の……」


「いい、いい。――人には言えない事が一つや二つあるもんな。ただウィッチを相手にするのは問題があると……ウボぁっ」


言い終わる前に整備兵の鉄拳が炸裂し、強制的に仲間を黙らせた。


「人の話を聞けと言ってるだろクソッタレ!! それとも俺のケツをなめるか!?」


「やったなこのっ!! 表に出ろ!!」


些細な事から始まったこの事態は野郎同士の取っ組み合いまで発展した。
取り巻きの仲間達も「やれ! やっちまえ!!」とヤジを飛ばしていく。


「止めなくていいですか……これ?」


一番年の若い整備兵が仲間内では一番年を経ていて頼りにされている整備兵に意見をうかがう。


「好きにやらせとけ、いい傾向だ。いつもしみったれたツラで機械を弄ってやがったアイツがあんな生き生きした顔をしてやがる。仲間内でも一人だけ距離置いてやがったしこれで距離が少しでも縮まれば御の字だ。だがここ最近じゃ、少しは変わってきてたか? まぁ、そうだとしたらあの嬢ちゃんの影響だろうよ」


顎に手をやり、感慨深そうな様子で取っ組み合う二人を見つめる初老の男。


「そうなんですか!?」


初老の整備兵が肯くと、いつの間にやら当事者二人を囲むように整備兵達が円陣を組んでいた。血が昇っている二人が周囲の機械や工具に突っ込まない様にという配慮に加え見事なチームワークだった。
















「じゃあ始めますね。お願いしますエルマ中尉、穴拭大尉。後イッルとニパも」


私はまず最初に材料を確認していく。
小麦粉、塩、水、リーキ(西洋ネギ)、キャベツに朝オヘヤ少尉に手伝ってもらって挽肉機にかけて作ったミンチ。もう一方の方は野菜各種にポテトスターチ(要するに片栗粉)に調味料にご飯、その他etc……。
先にまずはエルマ中尉と穴拭大尉には野菜を切ってもらい。私達は小麦粉で皮を作っていく。


「イッルもニパももっと皮を伸ばして、1mmより薄くなるぐらいが目安だから……」


皮を伸ばすと今度は用意したあの型抜きで丸い形に切り取り、皮を作っていく。
必要な数だけ皮を用意すると今度は具材に取りかかった。
刻んだネギとキャベツにひき肉を混ぜ合わせる。本当は卵も加えるといいのだが今はないのでこれで我慢する。
混ぜ合わせた具材を皮にのせ、包んで閉じる。
この料理を作る際、一番苦労する工程はこれだろう。案の定みな苦戦したが穴拭大尉だけは飲み込みが早く一つ作っていく毎に上手くなっていった。
なんとか全て包み終えると、焼きには入らずメインの方に取りかかった。
メインの方が8割方完了した頃、メインを他の人に任せて具材を包んだ皮を温めて油の敷いたフライパンに載せていき……。


「油で揚げるんじゃなくて蒸し焼きするのね」


小麦粉の皮で包んでるし、中華料理を知らない穴拭大尉は餃子を洋食の一部と思っている為かそんな感想を述べた。
揚げ餃子もあるが元々のルーツである茹でたり蒸したりして作ったこの料理の残りモノを焼いて再利用する事からきた蒸しながら焼くという工程に従い私は作っていく。
水分が飛んだ後は蓋を取って底に焦げ目が付くまで焼きをいれた。


「出来たっ!!」


完成した料理をお皿に盛りつけていく。


「今日のお昼は野菜のあんかけご飯と焼き餃子です。タレはこれを付けて食べてください」


唐辛子が用意できなかったのでタレは醤油にお酢、ネギにゴマ油を少々加えたものを用意した。
けれど唐辛子があってもラー油を作るのはさじ加減が面倒なのに加え作るのにそれなりに時間が掛かるので作らなかっただろうけど。


「このギョーザって料理、皮がパリッとしてて中は肉と野菜の旨みが染み出てきておいしいわ。これも洋食なの?」


「ブリタニアでも見たことはないな。ガリヤのクレープやオラーシャのブリヌイに近い様な気がするが……」


「これは洋食ではなく私の完全な創作料理です。手軽に作れるものと思って考えつきました」


穴拭大尉やビューリング少尉の疑問に胸を痛めながら答えた。
本当の事など言える訳がない。それを語るにはこの世界には存在しない国の話から始めなければならないのだから……。
元の世界では世界三大料理に数えられていた中華料理が見る影もないのは悲しいことである。
後、中華包丁や中華鍋などの調理器具も存在しないのが痛い。
一応夢は洋食屋の店長だが、夢が叶ったなら中華料理も普及させていくよう活動していきたいと私は新たな目標を抱くのだった。


後日、整備兵の人達にも餃子を食べてもらったが予想外に盛況で結構な量を用意したが足りず追加でこちらの作るペースが間に合わないほどだった。
……ただ、PzB39の整備や餃子の皮の型抜きを作ってくれた整備兵の人は顔に無数の痣があり、静かにもくもくと食していた。隣に居た人も顔に痣を作っており同じく仏頂面で餃子を頂いていたけど……あの二人、何か喧嘩でもしたのかな?


















後書き

予定より早く書けましたが今回も話が、というか今回の方が話としては進んでいない。

後、完全に私事ですが執筆のテンションを上げる為にニコニコ動画でストライクウィッチーズのMADを見てたんですがミルキィホームズPSP版OPのパロMADの『アネキィホームズPSP版OP』っていうMADの完成度が高くて驚きました。
見れる方は是非高画質の時に見てください。



補足(今回はかなり多い)

◇ネウロイ
・戦車型(四足)
小説版や同人に出てくる陸戦型ネウロイ、キャタピラではなく四足で移動し砂漠だろうと凄まじい早さで向かってくる。
SSに出てきた戦車型ネウロイのイメージはソ連のT-35重戦車をひっくり返して四足を付けた感じ。ただし、T-35重戦車は史実の冬戦争には投入されてないとか。
・人型(板付き)
人型タイプのネウロイは小説版で出ており割と初期からいるらしい。こいつの存在があるから一期で芳佳以外のストライクウィッチーズのメンバーが躊躇なくウィッチ型ネウロイに攻撃したのではないかと作者は勝手に思ってる。
足に板が付いてるあたりは完全に作者の二次創作、ネウロイがスキー兵を摸倣したという設定。
手と足の板が伸縮しスキー板とストックの役割を果たす。
・つくし頭
これも作者の完全なオリジナルネウロイ。隠密行動に特化した人型という設定。


◇兵器
・ラハティ L-39 対戦車銃
10連発セミオートマック方式。
史実ではフィンランド軍が使用した対戦車銃で試作型が冬戦争に二挺投入された。
全長224cm 重量49.5kg 使用弾頭20mm 銃口初速800m/s
65口径長と言う長大な銃身を持つことから『象撃ち銃』とも呼ばれた。

・モシン・ナガンM1891/30
帝政ロシア陸軍が導入した五連発・ボルトアクションライフル、その後ソ連陸軍でも引き続き大量に配備されていた。
全長130.5cm 重量4.37kg 使用弾頭7.62mm 銃口初速810m/s
フィンランドでも輸入や生産、ソ連から鹵獲などして使用していた。

・モロトフカクテル
本編で説明しているので割愛。これの存在が火炎瓶をモロトフと呼ぶルーツになっている。


◇人物

・アウロラ・E・ユーティライネン中尉
エイラ・イルマタル・ユーティライネンの姉。陸戦ウィッチ。
元ネタはフィンランド陸軍のアールネ・エドヴァルド・ユーティライネン。ラドガ湖北のコッラの戦いにおいて兵士数で圧倒的に勝るソ連軍による攻勢を食い止めた国民的英雄。部下から慕われ『親父』などと呼ばれていた。

・少尉
本編でも名前は出しませんでしたが察してください。フィンランドが生んだ魔人一号。
詳しくは『冬戦争 狙撃』でネット検索すれば出てくる。
ウィッチにしようか迷ったが本SSでは特別な力を持たない男性のままにした。
だってホラ……、史実でもチートなのにウィッチなんかにしたら超絶チートすぎて『もう○○○だけでいいじゃないか』という事になっちゃいますし。

・スロ・コルッカ
フィンランドが生んだ魔人2号。正式な記録は残っていない。ただ実はスロ・コルッカの方が早くから冬戦争で活躍していたらしく、スロ・コルッカの活躍を聞いた魔人一号は『勲章が貰えるならと自分も数えるか』と戦果を数え始めたらしい……冬戦争の途中から。

・リヒトホーフェン大尉
元ネタの人物はフルネームでマンフレート・アルブレヒト・フライヘア・フォン・リヒトホーフェン。
史実では第一次世界大戦での撃墜王。赤い戦闘機に乗っていた事から『レッドバロン(赤い男爵)』、『赤い悪魔』などと呼ばれた。
エイラの元ネタのエイノ・イルマリ・ユーティライネンは兄のアールネ・エドヴァルド・ユーティライネンからリヒトホーフェンの回顧録をプレゼントされたことからパイロットを志すようになったという。


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