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No.24592の一覧
[0] とある世界達の反逆戦争(とある×シャナ×東方×ネギま)[雷](2011/04/02 15:36)
[1] 第一話『焰と時』[雷](2011/02/14 17:36)
[2] 第二話『焰と時・Ⅱ』[雷](2011/02/14 17:36)
[3] 第三話『焰と時・Ⅲ』[雷](2011/02/14 17:37)
[4] 第四話『焰の悩み・道と神』[雷](2011/02/14 17:38)
[5] 第五話『時と道の激突』[雷](2011/02/14 17:39)
[6] 第六話『最凶と最弱』[雷](2011/02/14 17:40)
[7] 第七話『世界と全ての生き物よ』[雷](2011/02/14 17:42)
[8] 第八話『灼熱の揺らぎ』[雷](2011/02/14 17:43)
[9] 幻想郷・プロローグ『始動』[雷](2011/02/14 17:34)
[10] 幻想郷・第一話『地の人形』[雷](2011/03/01 15:36)
[11] 幻想郷・第二話『虹の翼』[雷](2011/03/06 12:03)
[12] 幻想郷・第三話『天さえも知らぬ思いを』[雷](2011/03/09 16:19)
[13] 第九話『子供に振り回されるのは大人の役目』[雷](2011/03/25 17:47)
[14] 第十話『すれ違い都市』[雷](2011/03/31 14:00)
[15] 第十一話『電撃姫と木の演奏者』[雷](2011/04/02 15:37)
[16] 第十二話『炎と時』[雷](2011/04/06 16:50)
[17] 第十三話『そして物語は加速する』[雷](2011/04/12 16:59)
[18] 第十四話『ジャッジメント』[雷](2011/04/18 14:44)
[19] 第十五話『龍族とジャッジメントと』[雷](2011/04/30 12:31)
[20] 第十六話『悪人と善人』[雷](2011/05/04 17:56)
[21] 第十七話『──前の平和』[雷](2011/05/08 16:31)
[22] 第十八話『自覚』[雷](2011/05/12 11:57)
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[24592] 第七話『世界と全ての生き物よ』
Name: 雷◆c4b80eb2 ID:6c2363a9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/14 17:42


第七話『世界と全ての生き物よ』















「あっはははははははははは!!」

高笑いが一つ、暗い暗い空間で響く。
笑っているのは、一人の青年。
おぞましい、邪悪な笑いは見た目と合わず、またそれが一種の怖気を走らせる。
悲鳴の如く震える大気。
本人は気にせず、ひとしきり笑っていた。

「はははははははっ!浜面仕上!面白い!全く持って面白いよ!」

空間に満ちるその言葉一つ一つが、重い。
言葉自体は軽い筈なのに、まるで怨念のような重さを持っている。

「まさかまさか、フランドールを懐柔するとはな!マジで予測不可能、本当の奇跡だ!実力でも、運でも、状況でも無い!そう、"偶然"!」

段々と、声がおかしくなってきた。
まるで一度に大量の人間が同じ言葉を喋っているような、そんな言葉。

「これだから、人間で遊ぶのは止められないというもの!あぁ、久しぶりね、こんなに笑ったのは何時振りだろうかなぁ!」

ビキ、と。

近くにあった何かに亀裂が入る。
だが、"ソレ"は気にしない。
ただただ、笑い続ける。

「"封絶"の有効人物に入れてあげたんだ!踊って楽しませろよ!?あはっ、はははははははははははははははははははははっ!!」

バキャンッ

何かが、弾けた。
だが、"ソレ"は毛程にも気を止めない。
ただただ、笑い続ける。

「さぁ、舞台は間も無く準備を終える!観戦者は私と八雲紫にアレイスター・クロウリー!舞台は飛び入り参加ありの大宴会!」

"ソレ"は、






「さぁて、どんな"劇"になる?どう登場人物達は踊ってくれる?ははっ、はははははっ、ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっ!!!!!」






狂って、笑っていた。









世界において、十月十六日、深夜と称される時間の時のことである。



























上条当麻は欠伸をしていた。

「ふぁ~……」

大きく、口に手を当てつつ彼は息を吸い込み、吐き出す。
暢気な、惚けた姿。
彼は現在、高校の教室に居る。
月曜日の今日なら二日ぶりの学校だー!と生徒の何人かはテンションが上がるだろうが、生憎と上条は昨日補習で学校に来ていたのでテンションなど上がらない。
むしろ下がっていた。
教室はザワザワとざわめき、朝のHR前独特の雰囲気を保っている。

「あー……」

窓際の席に一人、テンション最低の状態で陽気に浸る。
結局昨日自分が居ない間に何があったのか、シスター少女ことインデックスとフレイムなんとかのシャナは、仲が良くなっていた。
あくまで上条視点からの話であり、シャナ本人に聞けば否定されるだろう。
彼女が全くもって素直で無いことは、たった二日だが分かっている。
なにせ昨日、上条が帰って来てからの台詞が『別にここ以外に行く場所も無いし、行く場所が見つかるまでここに居るから』だ。
耳だけが赤かったのが、印象に強く残っている。

「……本当に何があったんだ」

同居人少女の偉業に、上条が冷や汗を垂らしながら感服していると、

「カミやんどうしたんや~?」
「本当、お前は何時も通りだな」

青髪ピアスの大男がヘラヘラ笑いながら上条の横の席に座っていた。
彼も昨日上条と同じ様に補習を受けた筈なのだが、元気が無いようには見えない。
むしろ元気良さそうだ。

「当たり前や!なんせ本来ならありえん休日の二日連続で小萌先生に会えるんやで?テンション上がらへん方がおかしいわ!」
「おかしいのはアナタです」

ビシッ、とツッコミを入れてもはははーと陽気に笑い続ける青髪ピアス。
再度、上条は重くため息を吐く。

「あっ、そういえばカミやん聞いた?」
「何をだよ?」
「"昨日の事件"」
「はっ?」

肩肘をついたまま、彼は首を傾げた。
昨日の事件、と言われても思い当たる出来事は無い。
精々、帰り道安いメロンパンを買って少女二人にあげたら『なんなのよこの科学調味料ばっかりのメロンパンは!馬鹿にしてるの!?』と投げつけ返されたことだろうか。
今思い出せば、かなり理不尽な気もする。

「廃墟ビル地帯があるやんか?あそこでビルが幾つか倒壊したそうや」
「ふん?」
「かといって重機を使われた様子も無いんで、高位能力者の仕業やないかって言われとるんやけどな」
「へぇ……」

頭の中で、もたらされた情報を反復した。
もしかしたら、あのいけすかない学園都市ナンバーワンが言っていた『戦い』に、関係があるのかもしれなかった。
上条はそう思い、しかし何処か自覚が薄い。

(……実際よく分かんねぇな)

世界の存亡をかけた闘い、などと言われてもさっぱり自覚が湧かない。
話のスケールが大き過ぎるのだ。
『戦い』と言われても、彼に起こった変化といえば異世界から来たという少女一人。
確かにその少女は明らかに普通では無かった。
人間離れした身体能力、普通ではあり得ない不思議な道具。


しかし実の所、"それだけ"なのだ。


彼は馬鹿みたいな身体能力を持つ人間を知っているし、とんでもない道具も見たこと聞いたこと、対峙したことすらある。
なので、上条には問題の大きさというのがいまいち分からない。
今まで数々の命をかけた事件に関わって来た、故に話のスケールをリアルに想像出来ない。
それは良いことでもあり、悪いことでもあった。

「あれ?そういや土御門は?」
「さぁ?あれや、通学路の途中で可愛い女の子でも見つけて追いかけて行ったんじゃ……」
「だからそれはてめぇだけだっつーの!この青髪変態星人EX!」

ギャーギャーと、何時もの如く騒ぐ二人。
もう既に日常の光景となっているため、周りの人間は特につっこまない。

のだが、

「貴様等……相も変わらず馬鹿騒ぎね。少しは"一端覧祭"に向けて頑張ろうって気は無いの?」

声をかける者が一人。
少女だった。
赤みがかかった黒い髪と、かきあげた前髪が特徴的。
……上条はもう一つ特徴を思い浮かべたが、思い浮かべた瞬間頭突きを喰らいそうなので忘れることにした。
彼女は吹寄制理。上条のクラスの委員長。

「でもさぁ、どうせ中学の時とあんま変わん無いだろ?」
「腑抜けてるわね」

ジロリ、と睨まれ、上条は意味も無くデコを抑える。
危険を本能が察知したからだ。

「そんな風だったら、またお得意の不幸で"あの事件"にも巻き込まれるんじゃない」
「いやいや吹寄さん。上条さんとてビルが倒壊するような不幸に巻き込まれることなんか殆ど無い……よ、な?」
「カミやん、疑問系になっとるで」

自分で自分の言葉になくなって来た上条当麻。
頭を抑え『いやいや上条当麻お前はそんな体験を二桁も行って無いはずだしっかりしろ』とブツブツブツブツ呟く彼を上から見て、吹寄は、

「ビルの倒壊事件もあるけど、それだけじゃないらしいのよ」
「へっ?」
「それは初耳や」
「私も小耳に挟んだだけなんだけどね、どっかの"操車場"でコンテナの山が崩れたらしいわ。しかも明らかに人為的な破壊の跡も結構あるみたい」
「っ」

彼女の口から出たとある単語に、思わず上条は息を飲む。
首の後ろを、一雫の冷や汗が伝う。

「どうしたのよ?」
「い、いや……」

何とか言葉を返す。
そう、本当に何でも無いのだ。
ただ操車場というのが、彼にとって余りいい思い出のある場所ではないということ。

(……まさか、な)
 
外へと視線をずらす。
そこは晴れ模様の大空が広がっていて、彼の悩みなどちっぽけに見えるくらい青かった。




彼は知らないが、今日は十月十七日。






本来の物語ならば、彼はイギリスに行くはずだった日だ。
















物語の主人公(ヒーロー)は問題の大きさが分からず、
故にこの最初の、"灼熱"の話は、
彼が主人公(ヒーロー)では無い。
























「……」
「……」

カップラーメンという物をご存知だろうか?
人類が生み出した超高速調理食品だ。
調理方法はお湯を入れて三分待つ。
それだけ。

だが、世の中そんな簡単なことも出来ない子が居るのだ。

「う、うううううううううっ!」
「まだ一分よ」
「け、けどもう待てないんだよ!」

その調理方法の『三分待つ』が出来ない暴食シスターことインデックスは、昨日も同じベットで寝た新たな同居人少女、シャナにストップをかけられていた。
箸をグーで握ってよだれを垂らし、キラキラ光る瞳は小動物のよう。
だがしかし、シャナにかといって彼女を解放する義理は無い。
その無愛想さが、今になって痛くなるインデックスである。

「うー……シャナの意地悪……」
「いや、あんたがおかしいのよ」
「修道女がそこまで強欲でどうする」

突然、男の声が響く。
その余りにも的を射ている正論に、インデックスはうぐっ、と呻いた。
声の主はシャナの胸元にある宝石のペンダント、"コキュートス"に意思を表出させる"紅世の王"アラストール。
彼女の契約者でもある炎の魔神は、呆れた風に(声からしか感情を読み取れないが)、

「たかが三分。その程度の時間を待てぬ者が人を導く立場であって良いのか?」
「うっ……」

箸を握ったまま呻き続ける。
その年相応の姿に、つい昨日とは別人だなとシャナが思っていると、

ピピピッ!


「あっ、三分たっt「いただきます!」


……早かった。
とにかく早かった。
シャナはフレイムヘイズであり、故に彼女は銃弾を視認して躱す程の反射神経が存在する。
だが、そんな彼女の目でさえ霞んで見えるスピードで、インデックスはカップラーメンに食いついて行った。

「「…………」」

唖然とする彼女とその契約者を尻目に、インデックスは止まらない。
汁が飛び散り、かなり汚いが気にしていないようだ。

「ズルズルアムアムむしゃむしゃむしゃっ!御馳走様なんだよ!」

もう何処から突っ込めばいいのだろうか。
その異常な箸の早さか、食い付くまでの猛獣のごとき表情とか、完食までの僅かな時間へか。

「……屋上で食べて来る」
「分かったんだよ」
「我の見当違いだったか……?」

シャナはカップラーメンを持ち、玄関へすたすたと歩いて行く。
その小さな背中を、インデックスは手を振って見送った。

「……ふぅ。片付けないとね」

バタン、と玄関の扉が閉まる音を耳に入れつつ、彼女は修道服を揺らして立ち上がる。

「うーん、でも今日のかっぷらーめんは何時もより美味しかったんだよ」

何時もは三分待たなかったからだよ、とツッコミを入れる人間は居ない。
インデックスはカップを持って台所へ向かった。
とてとてと、柔らかな、可愛らしい足音が一人だけの部屋に響く。

「……」

が、突如笑顔は消え、表情は何処か影がさし、シスターとしての顔になった。
シャナが居ない、今だからこその表情だった。

「……『神』」

一体、それはどんな存在なのだろうか。
彼女は聖職者であり、『神』と呼ばれる程の者がどんな姿でどんな力を持っているのか、知りたかった。
神様を超えると言う『神』。
この世界だけでは無く、全ての世界の絶対強者。

「アレイスター・クロウリーは何を……」

答えを知っていて、しかし何も言わず、あれから姿の一つも見せない学園都市のトップに文句を言おうとした所へ、






「彼なら観戦者だから、過剰の干渉は出来ないのさ。まっ、八雲紫はその分動いてるようだけどな」






サラリと、その声は彼女の耳へ紛れ込んで来た。

始め、インデックスはそれが幻聴だと思った。
もしくは、何かの物音だと。
それだけその言動は自然過ぎ、そして尚且つ人の気配が全くしなかった。
気配、というのも様々だが、大概は人間の息遣いや極わずかな動きによる空気の流れ、振動。


しかし、インデックスは何も感じなかった。
息遣いどころか、物音一つ。


「──っつ!?」

意識を回復させ、彼女は声がしたと思われる場所、自分の後ろを見る。
そこに居たのは、黒い何かだった。
いや、何かという表現は正しく無い。
それは、人。
黒い髪に、黒い目。全身を黒の色調で包んだ日本人らしき青年。
少なくとも"表面上は"人間だ。

「っ」

その姿を見て、インデックスは息を飲む。
突然見知らぬ男性が居たからでは無く、この世の物とは思えない歪んだ笑みへでも無く、理由は一つ。






"影が無い"。






窓からさす、僅かな太陽光。
薄く床に広がる筈の影が、"ソレ"には無い。

人間として、いや、この世の万物として決してあってはならない現象が、今現在目の前で起こっている。

「……幽霊、もしくは、人間とは違う存在?」
「いや、俺は"人間"だよ。散々バケモノ扱いされてるけど」

"ソレ"はインデックスの呟きに、律儀に反応して来た。
何をぬけぬけと、と彼女は思わず心中で吐き捨てる。

(……なんなの……?)

ただ、同時に混乱してもいた。
彼女には、十万三千冊の魔導書が脳内にあり、魔術に関することならほぼ全てのことがインデックスには分かる。
例え神様や更に上にある"人には理解出来ないであろう存在"の話だったとしても、推測や憶測を立てることは出来るだろう。




しかし、分からない、




理解出来ない。不可能。不可解。
目の前の"ソレ"からは何も感じられない。
異世界の力だとしても、何かを感じておかしくは無い。
なのに、全く感じない。

目の前に居るというのに、まるで其処に居ないのではないか、そう思わせるくらい、"ソレ"からは"何も感じなかった"。

「あぁ、映像とかじゃないぞ?俺はちゃんとここに居る」
「……」

それは分かっていた。
映像や遠隔音声にしては、声が余りにも生々しい。

「実際の所、たいしたことじゃない。物質的、空間的に自分の体へ干渉出来ないようにしただけだ。空気も、電子も、光子も、魔力も、気も、妖力も、霊力も、神力も、法力も、存在の力も、天使の力も、全て」

まぁ、その代わり此方からも物理的干渉は不可能なんだけどな、と付け加えて"ソレ"は言葉を締めくくる。
言葉には少し理解できない部分があったが、インデックスにはこれだけは分かった。




これは、たかが一つの世界の法則しか知らない者が、理解できる存在では無い。




足を背後に一歩下げる。
しかし一体何処に逃げろというのだろう。
台所から外へ続く通路には"ソレ"が居る。
他に通路は無く、袋小路だ。

「安心しろ」
「っ!?」

距離を、一瞬で詰められる。
それは本当の一瞬だった。
世界における、時間の最小単位。
三メートルの距離をそんな速さで詰めたお陰で姿がブレる。
光以上のスピード。
例え、インデックスが地球の裏側に逃げたとしても、目の前の存在は一瞬で彼女に追いつけるだろう。

「言ったろ?今この体に残ってるのは光子と声の振動による干渉、それと"世界の束縛"だけだ」
「世界の、束縛?」

なんとか唾を飲み込み、震える声で尋ね返す。
"ソレ"は何が楽しいのか、ニヤリと笑いながら、

「セフィロトの樹は知っているだろ?本来は少し違うが……は要するに束縛だ。人間はここまで、神様はここまでっていうような、世界からの束縛。世界が定めた法。世界が、世界であるための」
「でもそれだと、貴方がここにいる理由が分からないかも」

セフィロトの樹というのは人間や神様などの位階級のことで、言ってしまえば確かに彼が言った通りの物だ。
だとすればおかしい。
世界において、人や神が居られる数は限られている筈だ。
世界とは常に満タンの袋のような物。
無理矢理に別の存在が入って来た場合、世界は──

「あ──」

其処まで考えて、インデックスは気がついた。
そうだ、世界には常に限界がある。
人間の数という、限界が。
限界を超えてしまった場合に待っているのは椅子取りゲームのような、体と精神の移動。
ならば、ならば何故、






あのシャナという"異世界から来た"少女が居るのに、そんな混乱が起きていない?






「なに、簡単なことだ。肉体にかかる世界の束縛を変えればいい」

彼女の考えを読んだかのようにゆったりと"ソレ"は続ける。

「といっても何ら難しい話じゃない。世界に自分を認識させるだけ。方法は千を越す。それこそ、ただ普通の人間なら世界の壁を超えるだけでいい。それだけで、世界は全てを受け入れる。異世界人も、転生者も、神様も、全てのイレギュラーな存在を」

つまりそれは、この世界において真の頂点とは、"世界"という一存在となる。
そして、一存在であるとすると、世界も人と同様。
数で数えることや、破壊さえ可能になる。

「世界は受け入れる。全てを」

もう一度、"ソレ"は呟く。
インデックスの恐怖に染まる表情へ、歪んだ顔を近づけ、










「世界は全てを受け入れる。絶望も、邪悪も、破壊も、破滅も、全て──」




















「っ!」

ガバッ!と、インデックスは跳ね起きた。

「……あ、あれ?」

はぁはぁと息を荒げながら、彼女は周りを見渡す。
間違いない。普段通りの、自分が居候させてもらっている部屋だ。

「……夢?」

至極真っ当な答えを、彼女は小さな唇から零す。
しかし、テーブルの上に置かれたコップが、夢だという理由を否定した。

「……痛っ」

ズキンッと、頭に痛みが走る。
反射的に頭を抑えると、手が汗で湿っていた。
手だけでは無く、全身も。
お陰で修道服がベトつき、暑苦しい。

「世界の、法則」

頭を抑えながらも、インデックスは考える。
『神』が話していた内容は、正しくこの世界の限界を超えた、数字で表しきれない類いの話だった。
それこそ、言葉で説明するのさえも。
ただ一つ分かるのは、

「世界を変えられている」

今更ながら、はっきりと自覚が湧き上がる。
異世界からの存在、あれだけの異常な『神』がこの世界に平然と存在すること。
それが、この世界が変えられていることの証明となる。

「だとしたら……」

不味い、と彼女は思った。
そもそも世界はそんなに簡単に変えていい物では無い。
『神』様が作った、神聖で繊細な機構によってなりたつ物だなのだから。

「……その『神』が世界を……」

しかし、残念なことにその神様とやら自身が世界を破壊しようとしているのだ。
彫刻者が、自分の作った石像を叩き壊すが如く。




インデックスは今、この世界に数少ない真理に迫る者だった。
あの『神』にしか分からないであろう、世界という物の『本当の中の本当』。
そこに彼女は迫りつつあった。
世界というものの、本質を。
それはアレイスターや紫でも、異世界に存在する神や閻魔などでも、自論でしか理解できない物。

何故、世界によって神の立ち位置が違うのか?
何故、世界によって人間の持つ力が違うのか?
何故、世界によって異能の力の在り方が違うのか?
何故、世界によって物理法則や因果率さえ変わるのか?
何故、世界によってイレギュラーな転生者などの存在が居るのか?
何故、殆ど同じなのに結末が違う世界が存在するのか?




何故世界は、同じ素材、人、法則から、全く違う物へと変わって行くのか。




セフィロトの樹や数学では分からない、あらゆる世界の法則の中に存在する唯一の真実。

それこそ、『神』の余興とすら知らずに彼女は考えていたが、

「っ……」

再度、頭に痛みが走り、思考が強制的に中断されてしまった。
当たり前だ。
これは既に、人間が理解していい領域を超えてしまっている。
幾らその脳内に十万三千冊の法則を持っていたとしても、無限に存在する世界の真理に届くなど不可能。

「……喉が乾いたんだよ」

それを理解したインデックスは、のろのろとした動きでベットから下りる。
とにかく汗をかき過ぎて、喉が乾いていた。
水が欲しい。


「──あ、れ?」


だが、コップに伸ばされた手は宙で止まる。
傍目からは世界には何も起こっていない。
しかし、彼女には分かる。









「なんで、空気中に魔力が──!?」

















彼女は気がつかない。
真理に近づき過ぎ、世界の異変に気がついたせいで。
自身のポケットに放り込まれた、"金色の鍵"に。


























「──これは確かに真実と判断しするべきね」
「あぁ、俺もこれは予想外だ。世界に魔力を振りまくなど」
「恐らく、世界において異世界の者が全力を震えるような配慮ね」

"イギリス"──
深夜の英国、とある場所にて、土御門元春と一人の女性が話し合っていた。

「普通、魔力というのは魔術師自身の生命力を変換して作られる物だが、こう空気中にばら撒かれると不味いことになる」

魔術とは、かなり繊細な物だ。
魔術師である土御門は、自分の肌から感じる魔力に表情を歪めつつ述べる。

「ふむ……まず考えれしは、魔術の暴発と言う所。次は"一般人による無意識の魔術発動"という所かしらね。何せ本来特別な技法で精製せし魔力が普通に存在しているのだから」
「……意外と冷静なんだな」
「ふふっ、色々ありけるのよ」

"上司"の軽い笑みに、影がさしたのを土御門は見逃さなかった。
どうやら、彼女にも『神』とやらが関わっているらしい。

「さて……しかし、混乱が"今から"世界にて起こてる今、よりにもよって学園都市に増援を送るのは難しい話よ」

空気を吹き飛ばすかのように、女性は問題を語る。
土御門は苦々しい笑みで頷き、

「一番良いのは"ステイル"か"神裂"なんだが、二人共仕事中とはな」
「かといって、放っておく訳にも行かぬわね。能力者が魔術を使えるようになっている以上、"能力者(PSI)が魔術(オカルト)の領域に踏み込む"、なんてことになりし可能性は無視できない」

そう。
今、土御門が一番危惧しているのがそれだ。
正直、『神』などどうなろうがしったこっちゃない。
大事なのは、科学サイドと魔術サイドの関係なのだ。
この二つが現在、綱渡りにも近い状態で均衡しているというのに、こんな境界をあやふやにするようなことをされたら。






待っているのは、世界を巻き込む大戦火だ。






何万、下手すると何億単位での命が消えるような。

「ふむ、取り敢えず身内を纏め上げないと話にならぬわね」

そんな、大変な状況に置いてもイギリス清教の"最大主教(アークビショップ)、ローラ=スチュアート"は笑っていた。





















世界の魔術師達を混乱に落とし込んだ、『魔力散布現象』。
十月十七日午前十時に起きたこれにより、実質殆どの魔術結社が活動を停止してしまう。
原因は空気中に存在する魔力による魔術の暴走、及び誤作動。
特にイギリスやフランス、ロシアによる混乱が酷く、"とあるクーデター"は起きなくなる。

しかし現時点において『神』に対抗出来る戦力が、魔力などのオカルトに関係無い科学サイド──




学園都市とそれに付属する幻想郷だけになったのは、確かだった。





















──■■■■jptkhanyu■■─kahqimuxb─■■■──gptaknxymwagw■──

a──────────






『来るな"バケモノ"!』

『悪魔よ……あれは悪魔の子よ!』

『に、逃げろ!悪魔に喰われるぞ!』


勝手な拒絶から逃げて、向かったのは他人の居ない山奥。

自分の■■を使って獣を殺して、生のまま肉を食べる汚らしい感触。

何故か涙が止まらず、体を生臭い真紅に染め上げながら、嗚咽を零す。

何故、こんなことになったのだろう。

自分は、誰かを傷つけるつもりなど無かったのに。

ただ、自分の持つ■■を使っただけなのに。

当たり前のことでないと気がついた時には、既に遅かったのだ。

何が『■■■■■■■■■■』だ。

不幸なだけの、無様な力では無いか。


山に、村人達による討伐隊が踏み込んで来た。


自分を、殺すための。






場面は切り替わる。

何処かの古城へ。

古ぼけた、歴史と伝統を感じさせるそこには、血。

石の部屋は紅に染まって、闇夜からの月明かりに照らされる。

さながら、生き物の内臓の如く、無気味に照り出され。

這い蹲るのは、異端の生物。

この世に存在してはならぬ物。

"カインの末裔"。


またの名を、"吸血鬼"。


血みどろのそれに突き刺さるのは、銀の短剣。

一本二本では無く、それは数十単位で突き刺さっていた。

銀という魔術的力により、"バケモノ"は地に倒れ伏す。

次々生まれてくる血の池の中で、軽くステップを踏み、歩く。

己の身が血塗られるのにも関わらず、膝をついて吸血鬼の様子を見る。

まだ息があった。


ドスッ


止めの一撃に血が吹き出し、降り注ぐ。

吸血鬼の魂が見せる最後の芸術とも言える、神秘的で吐き気がする光景。

雨のように降り注ぐが、気にせず歩く。

目的を果たした今、この古城に居る意味は無い。

鮮血のシャワーの中で、無表情に歩くその姿。


自分。






我ながら、"バケモノ"と呼ばれる光景に相応しいと思った。
















「──」

パチリ、と。
瞼が開かれ、光を眼球に取り入れた。
カーテンの隙間からさす太陽光線が、自分の全身を照らす。
何処か暖かいその光を遮るように、十六夜咲夜は額に手をやる。
白い柔らかな寝着に包まれた腕と、それよりも更に白い自分の肌が見える。

「……久しぶりね、"アレ"を見るのは」

自嘲気味に彼女は呟き、ベットからガバッと身を起こす。
布団がはだけられた下に覗いたのは、此方に来て買った寝着だ。
メイド服を何着か置いて行った以外に、八雲紫からの接触は無い。
故に世界の間を渡る術を持たない彼女は、この部屋に居座り続けている。

「さて、ご飯の用意……」

ベットから出て立ち上がり、背伸び。
咲夜は居候の例として料理を作ることにしている。
料理だけでは無い。
日によっては掃除もするつもりだ。

「……」

チラッと視線を近くにやる。
リビングでもあるこの部屋には、もう一人住人が居る。
そもそも、この部屋は咲夜の物では無い。
ソファーに横になっている、彼のためにある部屋だ。
毛布の一つも身に纏わず、彼は普通の服(彼なりの寝着らしい)で横になって眠っている。

「全く」

時刻は現在朝の九時。
普通の人ならとっくに目を覚ましている時間帯だ。
特に彼女の場合、早寝早起きが普通の世界に居たため余計に遅く感じる。
問題の人物は咲夜のそんな呆れも知らず、健やかな寝息をたて眠っていた。
黒いソファーに全体的に白いイメージの彼が横になっているのは中々目立つ。
自分より白い肌を持つ彼を一瞥し、ふと咲夜は考える。

「……"ベクトル操作能力"……」

それが彼から聞いた、彼の力らしい。
あらゆる物のベクトルを操作出来る、と最初言われた際には意味が分からなかったが、説明を聞いて愕然とした。
ベクトルというのは、向き。
この世の物には全て向きが存在し、彼はその向きを自由に操作出来るのだ。
例えば、彼にナイフを飛ばしたとする。
その場合、ナイフの先に彼を突き刺そうとする『力の向き』が存在する訳だ。
彼は、皮膚にその向きが触れた瞬間、それを自由自在に操ることが出来る。
そらす事も、跳ね返す事も、自由自在。
この世の全てのベクトルを操作出来る。ありとあらゆる全てを。
彼女の世界風に言うならば、『あらゆる向きを操る程度の能力』。
この力を使えば、




彼は、例え"地面に立っているだけ"でも世界を敵にまわして勝つことが出来る。




ただ、今まで魔力などは操作したことが無かったため、完璧には操作出来ないようだ。
だがしかし、そうだとしても強い力には変わりない。
なにせその気になれば、地球という星の自転の向きすら変えれるのだから。

"世界を確実にかつ迅速に滅ぼせる力"。
幻想郷でも、滅多にお目にかかれないレベルの力だった。

「……」
「スゥ……」

自分と同じ、いや、自分以上に色素が抜けた髪を少し揺らしながら、彼は相変わらず寝息をたて続けている。
素直な寝顔からは、普段の彼がどれだけ警戒していたのかが分かるだろう。

しかし、その姿から一体全体何人が、彼が人類の歴史を一瞬で終わらせれる"バケモノ"などと思うだろうか。

いや、と咲夜は自分の考えを否定する。
バケモノなどと決めるのは、力の大きさでは無い。
そうだとすれば、"幻想郷"はバケモノしか居ないことになる。
バケモノというのは、


周りが、力ある存在をどう思うかによって決まるのだ。


そして、"人間"にとってバケモノは、バケモノと"呼ばれる"のは ──


「……馬鹿らしい」

今更、自分は何を考えているのだろう。
夢の影響でも受けたか。

コツン、と軽く自分の頭を小突いて、彼女は着替えを始める。
上着を脱ぎさり、ズボンも一気に脱いで下着姿へ。
下着の色は雪のような白で、肌と同化したかのように違和感が無い。
見ようによっては、裸にさえ見えるだろう。
純白のガターベルトを彼女はさくさく付け、違和感が無いよう布地を引っぱって整える。

「っ、うん……」

流石に朝から下着姿は少し寒い。
彼女は何時ものメイド服──ガラステーブルの上にあるそれを取ろうとして、




「っ……ァあ……?」
「──」




バッチリ、目があった。
起き上がって来た、彼と。

(し、しまぁぁ……っ!?)

情けない悲鳴を心中で上げる。
声に出さなかったのは、完全瀟酒を自負する故か。
もっとも、心中は完全瀟酒などとは結して言えない。

(あぁ……忘れてた、時間を止めるのを忘れてた……っ!)

固まった状態で、咲夜は悔やむ。
昨日は彼が居るから態々時間を止めて着替えたのだ。
しかし今日は考え事で紅魔館の自分の部屋で着替えるが如く、堂々と、惜しげもなく裸身を晒していた。

「ン……」

一方、彼は目をこすり、眠たそうな目をソファーの上から向けて来る。
固まったまま、声も出せずに咲夜は次の動きを待っていた。

そして、

「……ン、毛布毛布」
「はっ?」

彼は動く。寝ぼけた状態で。
フラつきながらも手を伸ばし、ガシッと掴んだ。




ガラステーブルの上に置かれた、メイド服を。




ビキリッ、と今度こそ本当に咲夜の全てが止まった。
思考とか呼吸とかも、全て。
さながら時を止められたかのように。
彼はそんな咲夜を無視し(というより寝ぼけて気がついてない)、再度ソファーに横たわる。
咲夜のメイド服を鷲掴みしたまま。

「ふがふが……」

しかも体に毛布のように巻付け、顔を埋めているではないか。
スースーとした布地越しの呼吸音が聞こえる。
つまりそれは、自分の服の匂いを嗅がれているというわけで──

「──ッッ!?!?」

その辺りが限界だった。
顔の色が驚愕の青から羞恥の赤に移り変わり、彼女の腕が勢い良く振り上げられ、




「この……変態ぃぃぃぃいいいいっ!!」
「がはっ!?」




パァーンッ!!と、マンションの部屋に、清々しいビンタの音が響いた。


















彼女は後ろを見ない。
過去を見返してしまえば、唯一の自分が終わってしまうから。
彼女は、完全瀟酒であろうと今を見続ける。

























──■■■■jpkpytjhcu■■─kjtrynxb─■■■──kntpgbwuowagw■──

a──────────






『くっ、駄目だ!銃が効かない!』

『対能力者用の装備を至急準備するんだ!急げ!』

『戦車の砲弾が効かないだと……クソ、バケモノめ!』


とある所に、一人の少年が居た。

名字は二文字、名前は三文字。

それ程珍しい名前でも無かった筈だ。

彼は学園都市という場所で、■■を手に入れた。

それが、自分を不幸にする物だと、幼い彼は気がつけなかった。

少し、喧嘩に能力を使っただけ。

大して珍しくも無い、学園都市ならよくあること。

しかしその行為によって、彼は自分が世界を滅ぼしかねないバケモノだと知った。

自分を囲う、化学兵器の山と人の言葉によって。


その日、彼はそれまでの自分を捨て、


一方通行(アクセラレータ)と名乗るようになった。






場所は変わる。

何処かの研究所。

嫌な、人工的な匂いしかしないその場所へ、少年は居た。

白い、何処までも白いイメージしか与えない彼が見るのは、一枚の紙。

そこに書かれていたのは、二万人のクローンを殺すことによって成り立つ、最悪の実験。

彼を"最強"などという中途半端では無く、"無敵"にするための。

少年は、誰とも関わりたくなかった少年は、それを受け入れた。


そして、茶色の髪の少女を殺す毎日。


首を折り、四肢を叩き潰し、反射によって殺し、血管を破裂させる。

彼には一滴たりとも血が触れない。

それが、何者も寄せ付け無い彼の■■だからだ。

人の形をした物を殺す、異常な、壊れた日々。

崩れた操車場の風景の中、ゆっくりと呑気に歩く、無傷の自分。






我ながら、"バケモノ"と呼ばれる光景に相応しいと思った。













「っ~クソが……」

ヒリヒリする頬を抑え、一方通行は呻いた。
彼の頬には赤い紅葉のような跡が一つハッキリと残っており、様々な痛々しさを感じさせる。

「俺が何したってンだ」

一方通行としては、正に一方的な制裁だった。
目覚めのビンタなど何故されなければ無かったのか。
本気で怒り、文句を言おうとしたら向こうは殺気混じりの怒りをぶつけて来たので思わず「あ、あァ。すまねェ……」と理由も分からないまま謝ってしまった。
彼女は「今度から絶対に時間を止めて……」などとブツブツ呟きながら台所へと姿を消した。
スパスパ何かを切り裂く音が聞こえるので、大方料理を作っているのだろう。
彼としては食事が自動で出てくるので、悪いことでは無い。
誰かと一緒に食べるというのは慣れないが。

「あー……」

暇、である。
料理の手伝いなどを一方通行がやる訳が無いため、食事が出来るまで彼は暇だった。
彼女によると普段は時を止めたり加速することにより、かなり調理スピードを上げているらしいが、今は忙しく無いからそんなことはしないと言われたので、それなりに時間がかかるだろう。

「……」

ふとそこで、彼は視線を部屋の隅にやる。
二倍に広くなった部屋の片隅にポツンと、薄型テレビが置かれていた。
一方通行はこの部屋を一時的な隠れ家としてしか考えていなかったため、台所や備品などの細かい設備は調べていなかった。

暇を潰すのには持ってこいだろうと思い、テレビのスイッチを入れる。
パシュン、と軽快な音と共にテレビの画面に光が灯り、映像が流れ出す。

『では次のニュースです』

映ったのは何処にでもある普通のニュースだった。
無論、見たい番組など無いのでチャンネルを変えずそのままにしておく。

『第七学区にて廃墟ビルが倒壊した事件ですが──』
「……ふァ」

が、もう既に意識はニュースから離れていた。
ニュースキャスターが事件の詳細を説明しているのを朧げに感じつつ、一方通行は思考を夢へと飛ばす。
僅かにぼやけたその内容は、懐かしくもあり、馬鹿馬鹿しくもある内容。

(……どうせ、メイドのせいだろォな。カッ、有難迷惑だってンだ)

世界には自分に似ている人間が三人は居るという。
だとすれば、異世界には何人自分に似ている人間が居るのだろう。
少なくとも、一人は居た。

時を操る力──なるほど、応用性から見ても破格の力だ。
空間をも操作し、ありとあらゆる戦略を作り上げる。
しかも彼女はソレだけで無く、魔力や霊力と呼ばれる力によって人間を超えた動きに、空まで飛べる。
異世界人と呼ぶに相応しい力だった。

ただ、一つ。
彼女から他の『〜程度の能力』について聞いたが、どうも此方の超能力に似たような力も多い。
具体的には『炎を操る程度の能力』や『風を操る程度の能力』などだ。
しかも能力というのは、人間は余り持っていない物らしい。


だから、憶測が一つ。




人間であって『時間を操る程度の能力』などという能力を持った彼女は、自分と似たような経験をしたのではないか?




間違い無く、そうだろう。
咲夜の自分に対する好意も、自分の咲夜に対する奇妙な対応も、原因はこれだ。


しかし、


「どうでもいいな」

そう、どうでもいい。
彼女がその内にどれだけの地獄を抱えて来たとしても、どうでもいい。
赤の他人の自分に気にすることなどないし、そもそも、自分みたいなバケモノが肉体的にならともかく、精神的に誰かの助けになるなど不可能だ。
一万三十一人の人間を殺したバケモノが、一体何をしようというのか。






自分は、"悪党"なのだから。






どちらにしろ、彼女が大して気にしていない以上、彼が気にすることは無い。

「はいっ」

一方通行が結論を出し終えた所で、テーブルにドンッと皿が置かれた。
皿の上に盛られているのはスパゲッティ。
赤いミートソースがタップリと盛られ、ほかほか湯気を立てるそれから目を離し、対面に座った少女を見る。
咲夜は顔を多少赤くしながら自分の分のスパゲッティにフォークを突き刺していた。
呆れた目で、一方通行は口を開く。

「何キレてンだよ朝っぱらからよォ」
「なんでもないわ」

興奮しながら短く切り捨てる彼女に一方通行は訝しげながらも、用意された自分のスパゲッティを見る。
毒の危険性などは考えていない。
今、彼女が自分を殺した所でデメリットしかないから。

「……」

黙ったまま、一方通行はクルクルとフォークを回して紅く染まったパスタを掬い取る。
本当は肉料理が食べたかったが、我慢した。
口へとフォークを運び、口内に放り込む。

「どう?」
「喰えなくはねェな」
「そう」

辛辣な一言に、咲夜は笑顔で返す。
彼女には分かったからだ。今の言葉が単なる素直になれないだけの言葉だと。
一方通行にそれに気がつき、顔をあからさまにしかめる。

(クソ、面倒臭ェ……)

やはり、一方通行は咲夜という少女をどう解釈しても苦手だった。

冷めない内にさっさと全部食べてしまおうと、フォークを動かす。

「……あら?」
「どうした」

だが、突然目の前の彼女が何かに気がついたかのように、フォークの動きを止めた。

「いや、何時の間にか空気中に魔力が存在しててね。この世界には魔力なんて無いと思ってたんだけど」
「分かるように説明しやがれ」
「つまりね……魔力っていうのは二パターンあって、自分の精神力や生命力を練って生み出す"自分の魔力"と、空気中にあって自分の魔力で従えれる"空気中の魔力"があるの」

ようするに火種とガソリンか、と一方通行は自分流に解釈しつつ、フォークの動きを止めない。
なんだかんだ言いつつ、彼女の料理を黙々と食べていることから、やはり美味しいようだ。

「で、空気中に満ちる魔力ってのは場所や地域によって変わるの。だから本来は空気中の魔力は自分の魔力で間に合わない時に使うんだけど……」
「だけどなンだ」
「元々、この世界には空気中の魔力なんて無いのよ。多分、"空気中に魔力が無いと過程しての魔術及び魔法"しか無いと思うの。もしくは"魔力以外の力を用いた魔術"とか」
「……」

段々、一方通行にも話が見えて来た。
つまり、

「この世界の魔術師達、今ちゃんと魔術を使えるのかしら?」

そういうことだ。
一方通行に実感は無いとはいえ、かなり不味いのだろうというのは想像がつく。
土御門は魔術サイドの増援を求めに行ったのだろうが、そういうことでは本人さえ戦力として期待出来ないかもしれない。

「"幻想郷"から来たオマエは大丈夫なンだな?」
「えぇ」
「なら問題はねェな」
「確かに」

短く会話を終え、二人は食事に戻る。
一方通行は魔力など関係無い(反射には関係あるが)し、咲夜は大丈夫だと言う。
ならば、二人にとって問題は無かった。






二人は、二人でさっさと問題(協力者集め)を解決しようとしていた。
力ずくで。


なんとも、二人らしい選択だった。















白い少年は、貫く。
自分の道、自分の業(カルマ)から逃げずに、
ただ一人ボロボロになりながら、それでも進む。























「うー……眠いですの」
「"黒子"ー、どうしたのよアンタ」

とある朝。
ある少女は同居人の寝ぼけっぷりに首を傾げた。
呼びかけられた、黒子というらしい少女は茶色かかったツインテールの髪を揺らしながら答える。

「実は昨日、"風紀委員(ジャッジメント)"の仕事で余り寝てないんですの」
「なんか事件があったの?」
「えぇ。ニュースでもあったと思いますが、ビル倒壊事件」
「あぁ」

納得、という声を上げた。
黒子は更に言葉を続ける。

「重機の跡も見られないので高位能力者の仕業と考えられているのですが……」
「ビルを崩すって、結構凄い奴ってことよね」

通学路の道を歩き、少女はそう呟いた。
ビルを崩すとなると、とんでもない力が必要になる。
それこそ──

「しかもそれだけじゃありませんの」
「んっ?」

ふと、隣からの言葉に彼女は思考を中断した。
まだ続きがあるようだ。

「どうやら第七学区遊園地近くの"操車場"で、コンテナの山が崩れたり地面をえぐられたような破壊痕があったそうですの。恐らく、ビル倒壊と同じ犯人だと思われますわ。確証はありませんが」
「っ」
「"お姉様"?」

一瞬、息が詰まった少女へ、黒子は下から顔を覗き込みながら尋ねた。
少女は慌てて手を振り「なんでもないなんでもない」と返す。
そう、なんでもないのだ。
ただ、"操車場"というのが彼女にとって余り良い思い出のある場所では無いだけで。
そのため、胸につっかえるような違和感を覚える。

「しかも」

黒子はそれに気がつき、しかし特に踏み込まずに言葉を続ける。

「両方とも、少し上から圧力がかかりましたの」
「……」

その言葉に、無言となる。
彼女達は少々普通とは違い、普通の学生なら知らない、学園都市の闇に触れたことがある。
なので、上からというのに余りいい印象を抱いてない。

「ただ、様子がおかしくて」
「おかしい?」
「えぇ、今までは自分達の悪い所をもみ消すような悪意を感じる圧力だったのですけど、なんだか今回は"無用な混乱を避けたい"という意思を感じまして。勘ですが」
「ふぅーん……」
「だからお姉様?余り首を突っ込んだり、危険に飛び込んだりしないでくださいですの」
「わ、分かってるわよ……」

後輩の小言にしろどもになりながら返して、しかし、

(……ちょっと、調べてみるかな)

彼女は思考を終わらせ、後輩とともに学校へと向かう。
"茶色の前髪"から、時折"青い火花"を散らしながら。




彼女達が現在向かっているのは、常盤台中学。
学園都市でも名門の、お嬢様学校。






そんな学校へ向かう彼女の名は、"御坂美琴"。











学園都市に七人しか居ないと言われている、"超能力者(レベル5)"の一人。






















「なんでこんなことになってんだろうな……」

浜面仕上はベッドの上でため息をつく。
ぼさぼさの染めた金髪を掻き、自分の前にある現実をもう一度見つめ直す。

「……んっ……」

現実が少し身じろぎした。
はぁ、ともう一度ため息。
しかし現実は全く変わらなかった。

彼が寝そべるフカフカのベット。
高級感溢れるそれは、どう見ても隠れ家のボロい布団では無い。
柔らかさといい、香りといい、正しく一級品の物だった。
それから分かるように、ここは浜面が寝泊りしていたビルでは無く、とある学園都市の高級ホテル。
ただ、悪趣味な大地に聳え立つ巨大ホテルでは無く、五階建ての"外観は"普通のホテルに過ぎない。
ここは"訳有りの人"のための、隠れホテルというべき場所なのだ。
さり気なく防弾ガラスをはめ込まれた窓を触り、浜面はふぅと、本日三度目のため息を吐く。
何時もの野暮ったい格好に着替え終わった彼は、改めて自分の状況のおかしさに参っていた。

「『神』だの吸血鬼だの……何時から世界はこんなオカルトちっくになりやがった」

そして世界において科学の最先端を行く、この学園都市のトップがオカルト話を言うのだからもう色々終わっているのかもしれない。
最初は突発的に湧いた怒りも、今では意気消沈していた。
怒った所で"死んだ奴等"は返って来ないし、話された内容もぶっ飛んでいたからだ。

「ホント、一体全体何が何やら……」

世界が終わる?異世界?
漫画で使い古されたような単語を使っての話に茫然となったのはつい昨日の夜だ。

「何で俺なんだよ、クソ」

フランの実際に吸血鬼たる証拠を見た浜面は、どうにかオカルトの存在を飲み込んでいた。
が、何で自分なのかと疑問に思う。
こういうのは、もっとヒーローっぽい奴の仕事では無いのか。


あの、ヒーローのような。


自分は、ただの無能力者だ。
超能力者(レベル5)を倒したりもしたが、運と状況が大きく関わった上での勝利だ。
フランから助かったのだって、ただの運だ。

「どうしろってんだよ」

しかし、浜面は逃げれない。
逃げることを、許されない。
何故なら、助けた少女がなんでかなついたからだ。
彼女はとんでもない戦力になるらしい。
だから、彼女を扱えそうな浜面は、必然的に協力しなければならないのだ。
協力の代償として、こんな隠れ家を利用させて貰っているし。

「……はぁ」

五度目のため息を吐きながら、しかし何処か仕方無いかと思う。
なにせ、自分はしっかり考えた筈だ。
フランを助けたことによって起こる、様々なデメリットや責任を。
そう、しっかり考えた。








そして、よかれと思う選択を、彼は自らの意思で選んだのだ。








ならばこそ、浜面は責任から逃げず、真正面から対峙しなければならない。

(あぁ、"滝壺"に何て説明しよう……)

割りと深刻な悩みに呻き、窓の外へと視線を飛ばす。

風力発電のプロペラがクルクルクルクル回っていた。






















ただの少年は悩みながらも進む。
己の進むべき道を、ボロボロになりながら。
ヒーローとは、悩みながらも進む者だと知らずに。





















フランドール・スカーレットはベットに潜り込み、考えていた。

(お姉さまに叱られるかな……絶対叱られるよね)

少年と違い、割りと明るいことを。
無論、重大な内容を忘れた訳では無い。
『神』のこと、このままでは世界ごと消されるということ。
なる程、確かに重大な内容だろう。
だが、深刻だからといって何時までもうじうじ悩んでいても仕方が無い。

(……浜面は何してるんだろう)

ベットから出て行った少年がまだ部屋の中に居るのは分かる。
匂いや気配で簡単に。
ただ、何やら悩んでいるような呻きが聞こえてくる。

(あったかいな)

ベットの中には、彼の残り香と暖かさが残っていて、それを感じるだけでなんだか幸せな気分になれる。
彼はベットに自分が潜り込んだ時こそ驚いたものの、暫くすれば普通に寝ていた。

不思議だな、と思う。
死にかけてまだ怖い筈なのに普通に接せられる浜面も、




彼を■さない自分も、両方とも。




それは、自分の彼に対する気持ちのせいか。
それとももっと別の何かなのか。

(何をしよう……そうだ、浜面に街を見せて貰おうかな)

ただ一つ言えるのは、フランドール・スカーレットは恋していた。
何の力も無い、ただの人間を。
何故か?
分からない。誰にも分からないかもしれない。
本人でさえも。

推論を述べるとするなら、






始めて打算も何も無く赤の他人から差し伸べられた手(希望)が、彼女に始めて触れたからなのかもしれない。






だが、

(もふもふー、もふもふー)

当の本人は難しいことを考えず、ベットの中でゴロゴロ暴れていた。
普通の、子供らしく。

















悪魔の妹は、気がつかない。
この先、降りかかってくる苦難を。
ただ今は、安らかな幸せに浸り続ける。




















窓の無いビルの中。
機械的な光のみが、場を照らし出す空間にて。
アレイスター・クロウリーは動かずに居た。
正確には、動かないようにさせられていた。
見た目にはなんら変化が無くとも、彼を縛る何かが、今窓の無いビルごと覆っている。
現在彼は、誰にも干渉することが出来ない。

(……やれることはやった、が。不確定要素が多過ぎる。特に"魔法の世界(マホウノセカイ)"からの増援が、全く期待出来ないのが……)

彼は、その気になれば誰かに干渉することは出来るだろう。
世界最高の魔術師とは、伊達では無い。








ただその場合、世界が消え去るが。
"ルール違反"ということで。








(結局の所、我々はこのゲームに付き合うしか無いのだな)

なにせ、相手はその気になればいつでも世界を滅ぼせるのだ。
だとすれば、相手の機嫌をそこねないようにしなければならない。
故に、アレイスターは待つ。
役目を終えた、彼は。

(…………)

巨大なビーカーの中で、解放の時を。






全てを、他の者へと託して、魔神は一時の眠りにつく。
目覚めた時に待っているのは、地獄か、それとも──





















紅魔館──、"幻想郷"に位置するそこには、一匹の悪魔が居る。
正確には二匹だが、今は居ない。
その悪魔こと、レミリア・スカーレットは幼い顔を無機質な物へ変え、紅茶のカップを掴んでいた。
窓の無い、ランプで照らされただけの、締め切った暗い部屋。
テーブルに座ったままくるくるとスプーンを動かし、紅茶をかき混ぜる。
特に意味は無い。
ただの暇つぶしだ。
銀色のスプーンが揺れ動く度に、紅茶の紅い水が波紋を立てる。

「……」

暫し、無言。
くるくると機械的に回し続け、ボンヤリとしていた。
やがて、ピタッとスプーンが止まり、レミリアは口を開く。

「浜面、仕上」

それが、妹を助けた者の名前らしい。
先程の紫のセリフを、彼女は思い返していた。
咲夜はともかく、せめてフランを連れ戻せと言った時の、あの言葉。




「『本当の笑顔を教えてくれるかもしれない』ね……」




"本当の笑顔"。
それは確かに、紅魔館や幻想郷に居る全ての者が、彼女に教えられないことかもしれない。
495年間、ずっと幽閉し続けた彼女。
気がふれて、破壊に甘美を覚える狂った悪魔と言うべき存在。
もし、彼女が本気で迫った場合レミリアも勝つことは出来ないだろう。


しかし、異世界の男──浜面仕上は、フランに殺されていない。


あの圧倒的な力の前に、あの狂った精神の前に、ただの人間がだ。

「……"信じる"、ねぇ」

全く、簡単に言ってくれるとレミリアは吐き捨てる。
その言葉に頼るしかない、自分自身にも苛ついた。

「どうせフランも利用しようって魂胆なんでしょうけど……」

『神』とやらは、そこまで危険な存在なのか。
自分に世界を渡る術が無いのが、残念に他ならない。

「咲夜は居ないし、パチュリーは術式研究中だし、中国は門番やってるし……」

暇だー、と、レミリアはテーブルの上に体を押し付ける。
カチャン、とティーカップが音を立てた。

「……」

眠い。
そも、吸血鬼にとっては昼間の今は寝る時間だ。
別に寝て悪いことは無い。
どうせ風邪など引かないからと、彼女は眠気に身を任せる。
急速に、意識が落ちて行く。

「フラン……浜面仕上……」

異世界に居る妹と、それを助けた姿知らぬ男の名を呟きつつ、彼女は意識を闇に沈めた。
















一方、レミリアがそんな風に妹とまだ見ぬ妹の思い人へ思いはせている頃、

「はぁー……」

紅魔館の門へ、ため息を吐きながら歩く少女が居た。
華やかな花壇の光景に、その落ち込みようはとんでもなく似合わない。

緑色の鮮やかな長髪にカエルと蛇の飾りを付け、身体に纏うのは青と白の巫女服。
赤では無く青であり、袖と体の部分が繋がっていない。
つまりは、脇の部分が露出している。
そんな改造巫女服を着た少女の名は、東風谷早苗。
"守矢神社"という"幻想郷"に存在する神社の風祝、ようするに巫女であり、本人自身も特別な力を持った"現人神"とまで呼ばれる存在である。
ただまぁ、この世界においては本物の神様を殴り飛ばしてしまうような力の持ち主が居るので、早苗も少し強いだけのただの人扱いだ。
別にその点に置いてはもう気にしていない。
ため息を吐いた問題はそこでは無く、

「やっぱり、私が行くべきだったんだろうなぁ……」

つい五時間前の騒動のことである。
彼女は立場的にも、性格的にも、経験的にも、実力的にも全てが異世界に放り込むにはばっちりだったらしい。
そのため、無理矢理にでも行かせようとしたそうな。
まぁ言われてみれば、個人の事情なんか世界の問題の前には些細なことだろう。

「でも理由を言ってくれるなり、考える時間とかくれれば良かったのに」

そうすれば……と、早苗はうって変わって今度は文句を呟き始めた。
ブツブツブツブツ……と、彼女にしては珍しく怨みを込めた呟き。

「大体、何で幻想郷で強い人達って大概身勝手なんでしょうか。いや、私もそうでしたし言える立場じゃないのは分かってますけど、でも──」
「あっ、お帰りですか?」
「わひゃあっ!?」

ふとそこで、突然声をかけられた。
分かりやすく飛び上がり、早苗は慌てて声の主を見る。

「め、美鈴さん」
「はい、そうですよ」

ニッコリ微笑みながら返され、自然と早苗も笑顔になる。
民族風……チャイナドレスと思われる物を着て、緑色の帽子を被った女性が、門の近くに立っていた。
三つ編み二つと、ストレートに伸ばしている紅い髪を揺らしながら、彼女はニコニコと何が嬉しいのかと言いたくなるくらい笑顔だ。
紅美鈴。それが、彼女の名前だ。

彼女はこう見えて妖怪だが下手な人間よりも人間らしく、紅魔館な中でも比較的常識人(妖怪?)なため、早苗としては数少ないまともな知り合いである。

「そうそう。先程はすみませんでした」
「い、いえ。レミリアさんに命令されたんじゃ、美鈴さんも断れないでしょうし……」

ぺこりと丁重に頭を下げられ、早苗も頭を下げ返す。
二人が言っているのは先程の騒動の際のこと。
早苗をスキマに放り込もうとしたのが、美鈴だったのだ。
まぁ、彼女はレミリアに仕える身なため、渋々といった感じでやっていたのだが、それでも良心が傷んでいたようだ。

「それに、私の方こそごめんなさい」
「何がです?」

きょとん、と。
本気で分からないのだろう。
美鈴からの純粋な疑問の声に、早苗は少し表情に影をさしつつ、謝罪する。

「だって、私が早く行ってればフランさんも"向こう"に行くことは無かったじゃないですか」

そう。
あの時早苗が下手にごねらず、さっさとスキマに飛び込んでいれば、フランが異世界に行くことは無かったのだ。
聞けば、向こうで彼女は太陽の光を浴びて死に掛けたらしい。
ただでさえ吸血鬼には弱点が多く、フランという少女自身も危険だというのに……
そう考えて更に落ち込む彼女へ、






「あれっ?"そんなこと"ですか?」






「──えっ?」

早苗は呆気に取られ、口を開けたまま思わず惚ける。
今、彼女は何を?
惚けた状態の早苗へと、美鈴は笑いながら、

「いやぁ、"心配しなくても大丈夫ですよ"」
「──」

声が、出ない。
それだけ呆気に取られていた。
一体全体、何が大丈夫なのか。
フランドール・スカーレットという吸血鬼を知る者なら、まず口に出せない言葉を、紅魔館の門番は口から放つ。

「妹様だけじゃない。咲夜さんもきっと大丈夫です」
「──あっ」

そこで漸く、彼女は気がついた。
美鈴の笑顔に込められた物に。


それは、"信頼"。


圧倒的なまでの、それこそ下手な"信仰"など相手にもならない程の。

「……美鈴さんは、皆さんを信じてるんですね」
「えぇ、勿論」

迷うこと無く、彼女は答えた。

「何せ、お嬢様や妹様とはまだ母乳を飲んでいた頃からの関係ですし。パチュリー様はそのお嬢様の友人、咲夜さんは仕事仲間となれば、信じれない人なんか居ませんよ」

ただ本当の意味で人と呼べるのは咲夜さんだけですけどねー、と彼女は笑顔で紡ぐ。
其処からは、単なる年月だけでは構築し得ない、硬い絆を感じた。

(──凄い)

早苗は始めて、本当の意味でこの妖怪を凄いと思った。
弾幕ごっこは自分の方が強い。
しかし、他人を信じる気持ちにおいては、きっと自分は彼女に叶わない。

「もしかして、美鈴さんって門番の仕事サボったりしてるのは、館の人を信じてるから……?」
「うーん、それもあるかもしれませんね。私が抜かれたとしても大丈夫!ってどこか安心はしてますけど」

はははっ、と美鈴は苦笑い。
実は彼女、度々門番の仕事中に立ったまま寝るという無駄な技能でサボっていることがあるのだ。

「でも今はちょっと大変だなぁ。咲夜さんが居ないから、昔みたいに私も館の中のことしないといけないし。"黒白"も来ないんで、結構暇だったからいいんですけど」
「……あれ?そういえば、咲夜さんって元から紅魔館に居たんじゃないんですか?」

ふと、疑問に思ったことを尋ねてみた。
今までの口振りからすると、あの完全瀟酒なパーフェクトメイドがこの紅い館に来たのは、そう昔のことではないようだが……

「あー……まぁ、色々あってですね……」

問いかけられた美鈴は、言葉を濁す。
やはり、余り触れられたくない部分だったようだ。

「す、すみません」
「いえいえ……言ってもいいんですけど、咲夜さんが嫌がるかもしれないんですよ。だから本人が居ない今はちょっと……」
「そうですね、本人が居ない所でそう言う話は……」

ごにょごにょと謝罪の言葉を言う、青い巫女。
そのある種の保護欲を感じさせる姿に、美鈴は苦笑しながら対応する。
一方で、

(……懐かしいなぁ)

昔を、少し思い返してもいた。
咲夜との出会い、そして付き合い。
そんなに時は経ってないのに、人間というのは成長がやはり早い。






『さて、今日はオシャレをしてみましょう!』
『……おしゃれ?』
『えぇ。主人に仕えし者。身だしなみをキチンと整えなければ!』
『どうするの?』
『んーと、そうですね。お化粧はまぁまだ咲夜さんには早いですし、髪型を変えてみましょうか?』
『髪型……』
『どんなのが良いですか?私が好きなようにカットして上げますよ~。こう見えて私、偶にお嬢様の髪を切ったりもしてるんです』


『……それ』
『それ?あぁ、"三つ編み"ですか?まぁ、私のこれも確かにオシャレと言えばオシャレですし……でもいいんですか?』
『……うん』


『分っかりました。じゃ、そうですね……この、緑のリボンでいいですか?』
『……うん』
『……咲夜さん、どうして私の服を見て……?』






(『美鈴の服の色だから』は、正直嬉しかったですねぇ……)

自分の顔の両脇に垂れ下がる三つ編みを撫でながら、彼女はフワリ、と微笑む。
その柔らかな笑みに、早苗も釣られて笑顔になっていた。









































「"盟主"」

暗闇の中、声が一つ。
学園都市の、とある廃墟の一室。
部屋の光景は、暗く染まって人の眼力では捉えられない。
しかし、確かにそこに誰かが居る。

「あぁ、"分かる"」

暗闇の中、飛び交う言葉。

「むぅ?私には何が何やらサッパリアル」
「……何やら"別の力の塊"が、大気に満ちている」

声は四つ。
それぞれが違う音の振動を生み出し、会話を行う。
一つは青年の、まだ若さを感じ、しかし何処か遠くから響く声。
一つは男の低い、物騒気な声。
一つは少女の、特徴的な口調の声。
一つは更に若い、子供のような少女の声。

「そろそろ本格的に動くべきだろう」
「味方集めネ?」
「甘いことを……"手駒集め"だろう」
「はは……確かに、味方までは厳しいかな。せめて協力者だ」

口調が、変わる。
しかし、それを注意する者は誰もいない。
当たり前のことだからだ。

「じゃ、各自解散だ。手当り次第、しらみつぶしに捜して行こう」
「らじゃアル!」
「やれやれ、面倒なことだ……」
「……」

闇に、影が散る。


十月十七日。
深夜のこと。




『戦い』が、迫る。


















同時刻──

「……」

バタバタと、布が風によってはためく、存外大きな音が響く。
はためくのは、黒いマント。
学生寮の屋上。
古びたフェンスを軋ませ、彼女は淵にバランス良く立っていた。

「……」

彼女は黒い長髪を風に任せる。
癖の一つも無い柔らかな髪は、揺れて風の流れを浮かび上がらせた。

彼女は、肌で大気を感じ取る。
其処にある、明らかに感じたことの無い力を。

「魔力──」

そう、あの白いシスター少女が言っていたことが正しければ、これこそが一つの異世界での地から。
なる程。"存在の力"とは、質がかなり違う。

「……」
「行くか」
「……アラストール」
「なんだ?」

彼女は、己の契約者に呼びかけた。
魔神は言葉に答え、尋ね返す。

「今の私、戦えるかな?」
「それはお前の決めることだ」

彼の端的な言葉に、彼女は内心で頷く。
そうだ。
自分のことは、自分で決める。
そして、今は迷うべき時では無い。
戦いに、私情を持ち込まない。
それは、戦士として当然のこと。




「行く」
「うむ」




ボウッ!と、灼熱が弾けた。
瞬く間に髪が炎の赤に染まり、瞳も紅き灼眼へ。
体の周囲に、この世の物では無い火の粉が弾けて舞い散る。
周囲の空気は熱で震え、異常な現象だということを指し示した。

「すぅ……」

ギチッ、と、足に力を溜め込む。
そして、

「──ぁぁああああああああああっ!!」

吠えて、屋上から飛んだ。
一直線に、本来なら絶対にあり得ない直線を描いて、少女は飛ぶ。
その小さな背中には、炎の翼が広がっている。

目指すは、街中に突如張られた"封絶"。

夜中、突然現れた開戦の合図。
当然、彼女は気がつき、あの二人を置いて戦うことにしたのだ。
あの少年は、色々言っていたが。

少しだけの回想を振り切り、彼女は飛ぶ。








戦場へと、"フレイムヘイズ"シャナは飛び込んだ。








戦いが、始まる。















炎髪灼眼は戦う。
戦いの先に、自分の絶望があるとも知らず、
異世界で刀を振るい、闘う。


























「……そろそろ『戦い』が始まってもおかしくは無いわね。ここまできたら、後は任せるしか無いか……」

場所は変わって、"幻想郷"。
昼の時間帯のため、八雲紫の手元にも日光がさしていた。日傘をさしているが、日光は強く紫を照らす。
只今彼女は"守矢神社"に居た。
其処にいる"神二柱"と更に話し合うため。
ただ、話し合いは終わったため、現在紫がここに居るのは──

「と、思ったら」

キィィィィィンッ、と甲高い音が神社の砂利の上に立つ、紫の鼓膜を揺らす。
音は、遥か上空から響いていた。
"幻想郷"に居る、大概の者が聞いたことがあるであろうこの音は、空を高速飛行している時の音だ。
そして紫の真上に一瞬影がさし、
ストンと、柔らかに誰かが着地した。
紫の後ろに着地したため、彼女は其方へ向こうと体を動かす。
フリルのついたドレスが、フワッと揺れた。

「あっ、"衣玖"が会うのってアンタだったの?」
「……あれ?」

が、そこに現れた意外な、いや、ある意味簡単に予想出来た人物にガクン、と肩を落とす。

黒くて丸い帽子に何故か桃を付け、白いドレスに虹色の文様をあしらっている。
髪は青くストレートに伸ばしており、イタズラっぽい子供のような光を含んだ瞳は、紅い。


知っている者は知っている、"天人"、非想非非想天の娘。
比那名居天子。


それが、現在紫の前で無い胸張っている少女の名だ。
普段は、"幻想郷"の天空に位置する世界、"天界"に居る筈だが……

「聞いたわよ。なんかとんでもなくヤバイ奴と戦うって話じゃない。何でこの私を呼ばないのよ!」

色々面倒だからよ、と言い返したくなったが、紫は大人の余裕でグッとこらえる。
正直、今かなり疲弊した紫ではそれなりの実力を持つ天子に勝てないだろう。
故に、柔らかな口調で、

「そう、貴方天界に居たのよね?天人達の様子はどうだった?」

他の話題へと移る。
本来ならば天界へスキマを開き、どうなっているのかを見ていただろうが、紫はついさっきまで全力で動いていたのだ。
そんな余裕など無い。
紫の問いかけに、天子は渋い顔になって首を振る。

「残念だけど、あの馬鹿達の助力は無いと思った方がいいわ。どーも『現実性が無い』だの『暫く考える猶予を』だの言ってるけど、あれただの言い訳ね」
「あら、そう」

何となく予想していた答えのため、紫は短く返す。
天人達の態度は今に始まったことでは無いため、特に気にしてもいなかった。
確かに戦力は欲しいが、実がない力など要らない。寧ろ邪魔だ。

「で、あなたは"緋想の剣"を持って一人やって来たと?」
「まぁね。別にいいでしょ?」
「そうね……」

"紅い剣"を肩に担ぎ、此方へ問いかけてくる天子のことを顎に手を当て、考える。
確かに、彼女は戦力としては申し分無い。
だから別に悪くは無いのだが。

「──ふぅ。総領娘様は早過ぎです」
「あら。漸く来たわね」

ヒラリ、と。
新たな人影が、紫の近くに着地した。
天子とは対象的な、柔らかな動きで着地したのは緋色の羽衣を身にまとう、一人の女性。
背は天子より高く、女性らしい体つきをしていた。
触角のような飾りが付いた帽子を被り、天子と同じ青い髪に紅い目。

彼女は永江衣玖。
竜宮の使い、妖怪だ。
一応、天界において、天子より下の立場の存在である。

「って衣玖~。私のことは天子でいいって言ったじゃん」
「善処します」

ちょっとー、という天子の文句を彼女は無視。
紫へと、彼女は"空気を読んで"言葉を告げる。

「"龍神"様からのお言葉です……『この世界のことはなんとかする。例え世界を犠牲にしてでも、"奴"を殺せ』と」
「有難う。これでかなりの無茶が決行出来そうね」
「礼なら私では無く、龍神様にお願いします。私はただ伝えただけですから」

そんな二人の会話に、首を傾げながら天子が入り込んだ。
彼女は純粋な疑問の声を上げる。

「龍神って、あれよね?幻想郷の最高神。確か万物の法則全てを生み出したっていう」
「えぇ。そして私は彼の使いです」
「これからは世界にかなり負担をかけるからね。龍神の協力を取り付けれたのは幸いだったわ」
「ふーん……他には何処に協力を求めるの?」

天子の疑問に答えるべく、紫は手を虚空へとさし伸ばした。
瞬間、小さなスキマが開き、紙が一枚彼女の手に握られる。
かなり異常な現象だが、天子は特に気にせず紙を自分で取って眺めた。

「えと、◯が付いてるのが協力を取り付けたのよね……へぇ、"太陽の畑"まで」
「上手く行くかはさて置いて、ね。一応候補に入れてるの」
「よし!」
「?」

と、急に気合いを入れる彼女に紫が首を傾げると、




「取り合えず私が行ってくるわ!」




いや、何故だ。
そう紫が突っ込む暇さえ無かった。
天子は紙を持ったまま駆け出し、地面を蹴って宙を飛ぶ。
そして二人を置いて、あっという間に飛び去っていた。
後に残るのは、空気を切り裂く高い音と取り残された紫と衣玖だけ。

「「………………はぁ」」

二人の口から揃ってため息が吐かれる。
呆れと呆れと呆れと、呆れしか篭ってないため息が。

「そもそもあの子って太陽の畑の場所知ってるの?」
「多分話でしか知らないかと……」
「「……はぁ」」

再度ため息を吐いてから、二人は気を取り直し、其々の行動を始めた。
紫はスキマを開き、衣玖は天子を追うべく宙に浮く。

「まぁ龍神様からも総領娘様に付いて行くよう言われてますから」
「お願いね」

空気を読んでくれた彼女に感謝して、紫は単眼が煌く闇へ飛び込もうと、

「一つ、聞きたいのですが」

した所で動きを止めた。
振り返り、羽衣を揺らす彼女を見る。
衣玖は少しばかり躊躇いを見せながら、しかし一度呼び止めたのだからと尋ねた。

「何故、龍神様は直接戦わないのでしょう?」
「……」

返るのは、ただの沈黙。
彼女は、尚も続けた。
ずっと抱いていた疑問を。

「龍神様は強い……それこそ、この世界全ての存在を束ねたよりも、です」

そう。
龍神とは、名がつく前の神。
万物に五行相関の法則も作り出した最高神。
自然の豊かさや恵みがあるのも、全ては龍神のおかげなのである。
天界、地獄、冥界、魔界、異世界、幻想郷、様々な世界を例外無く超えられる正に破壊と創造の神。
例え月の民や大天使、天罰神や創造神といえど、龍神の前では無に等しい。
それだけの実力がある。
その気になれば、世界を破壊出来る程の。


だからこそ、衣玖には分からない。


『神』というモノが危険なら、龍神自身で滅ぼしてしまえばいいものを、何故?
いや、その『神』が龍神よりも強いとしてもだ、"一緒に戦う"という選択をしなかったのは、何故なのか。

「まるで、龍神様は御自身が"絶対に勝てない"と悟っているかのようでした」
「……あってるわよ、それで」

彼女の問いかけに、紫は答える。
その声に含まれているのは、何なのか。

「細かい理由はまだ言えない。けど、そう、あえて言うのなら──」

スキマへと身を踊らせ、彼女は最後にたった一言だけ言った。

重い、暗い、闇に染まった声で。
































「人形は、人形師に逆らえない」































天界でも、冥界でも、地獄でも、魔界でも、異世界でも無い何処か。

「遊びが過ぎるのでは?」
「いや、寧ろこれくらい遊んだ方が丁度いい」

並んで歩く二人が居た。
宮殿のような廊下を、ただ歩く。

コツコツ、と。
硬い足音が連続して響く。
其処は、何処なのか。
本当に大地を踏みしめているのか。
あやふやな感覚を発する、不思議な空間。

「"ネギ・スプリングフィールド"達は?」
「依然、まだ抵抗してます」
「そうか。丁度良いな」

答えながら、"学生服"の少年は寒気が一瞬だけ走るのを感じた。
不思議な物だと思う。
"作られたただの人形に過ぎない"自分が、寒気などという人間らしい感情を抱くことに。

「もう既に手は打ってる。幻想郷にもな。後は観戦だ」
「……」
「まぁ、英雄の息子達はもう少し後でいい」

カツ、カツと。
"ソレ"は歩く。
人の姿を持ちながら、確実に人では無い。
そう嫌でも感じさせる、独特の雰囲気がそこにある。
彼等は高い場所に立っていた。塔の先端のような場所に。
周囲は気流が逆巻き、唸りをあげている。

「さて……じゃ、留守番は任せたぞ、"フェイト"」

次の瞬間には、"ソレ"は黒いローブを身に纏っていた。
体を覆い隠すどころか地面にまで届くボロボロのローブを。

「はっ」

フェイトと呼ばれた少年は跪き、返事を返した。
何処までも律儀なその態度に、"ソレ"は笑う。

「ははっ、"代行体"も面白い人形を作ったもんだ」
「……」

人間扱いされていないというのに、フェイトは何も言わない。
何故か。間違っていないから。

「しかし、あの世界は本当に面白い。まさかあれだけのヒントで真理に届こうとする者が居るとはな……"プレゼント"をやりに行って正解だった」

頂の上で遥か眼下を見下ろし、笑う。
笑みからは、見た者の魂を削るような悪意を放ち。

「……」

後ろでその姿を見るフェイトは、何も言わない。
当たり前だ。
人形は、人形師に逆らえない。
逆らおうとも思わない。
"人間"では無く"人形"なのだから。

「全ては、貴方の意のままに」

故に彼は、胸の中にドロリと漂う何かを出さずに、言葉を紡ぐ。


































「我が主『造物主(ライフメイカー)』」
























その言葉に応えるように『始まりの魔法使い』は笑う。


それはまるで、紫色の毒の如き笑みだった。























世界は、全てを飲み込む。
世界は、全てを受け入れる。
世界は、──────────























おまけスキット




スキット3「上条当麻の一日」



上条「寝惚けて教科書忘れて来ちまった……不幸だ」


上条「朝、通学途中で転けたせいで弁当の中身が……不幸だ」


上条「同居人達が何か騒いでる……不幸、だ?」


青髪「不幸な訳無いやろぉがぁああああああああああああっ!!ロリ二人の同居人?舐めとんかゴラァァァァァアアアアアッ!!」

上条「おわっ!?」



スキット4「カップラーメン」


シャナ「……あれ、同じ銘柄なのに」

アラストール「どうした?」

シャナ「うん。御崎市で食べてたのと同じ物の筈なのに、こっちの方がやけに美味しくて」

アラストール「原材料名に『化学調味料』と書かれているが?」

シャナ「なっ!?化学調味料……」

アラストール「……何故ショックを受ける」



スキット5「訳が分からねェ」


一方通行「そういやよォ」

咲夜「なに?」

一方通行「朝結局何があったンだ?」

咲夜「うぐぅっ!?」ギクンッ!

一方通行「こっちはイキナリぶっ叩かれたンだ。理由を聞く権利ぐれェあるよなァ、クソメイド」

咲夜「メ、メイド……メイド服……」ブツブツブツ……

一方通行「オイ何黙ってンだよ」

咲夜「五月蝿い!この世から消し去られたいのこの変態ィィイイイイイッ!!」

一方通行「誰が変態だァ!」



スキット6「それなぁに」


フラン「ねぇねぇ浜面」

浜面「何だ?」

フラン「朝抱きついてた時に気がついたんだけどさ、なんで[そこまでよ!]が大っきくなってたの?」

浜面「えぎあがっ!?」

フラン「確か[そこまでよ!]ってあんなに大っきく無かったと思うんだけどなぁ。絵とか資料でしか知らないけど」

浜面「お、男には色々あるんだ!色々!」

フラン「色々?」

浜面「色々!色々ったら色々!!俺ちょっとトイレに行ってくる!」

ダダダッ!バタンッ!!

フラン「……むぅー、私に欲情して無かったのかなぁ……?」



スキット7「あっち!」


天子「あっ、衣玖」

衣玖「総領娘様、太陽の畑の場所も知らないのに何処へ行こうというのですか?」

天子「だから天子でいいって、固っ苦しい。太陽の畑の場所ぐらい知ってるわよ」

衣玖「……本当ですか?」

天子「だって、太陽の畑って言うくらいだから太陽の方にあるんでしょ!それくらい分かるわよ!」

衣玖「………………」

天子「どうしたのよ?」

衣玖(総領娘様って、こんなにバカでしたっけ……?)













すぺしゃる企画!

暴露コーナー!!

(注意!ここからかなり先まで、後書きコーナーと同じ台詞形式が続きます)




上条「と、いう訳で!」

浜面「今回のこの企画は更新が何回か遅れたお詫びも含めた、特別企画だぜ!」

上条「作者によるとんでもない事実が次々と暴露されていくぶっちゃけ企画だから、気をつけてくれよ!」

フラン「おーっ!」


三人「「「………………」」」




シャナ「…………」

咲夜「…………」

一方通行「…………」




上条「……いや、あの?お三方も参加してくれませんかー……?」

シャナ「面倒」

咲夜「こういうのは余り……」

一方通行「死ね」

上条「っておい!?一方通行は酷くないかそれ!?」

一方通行「黙れ死ね」

フラン「だめだよアクセラレータ!そんなこと言っちゃぁ!」

上条「おお!よし、フランちゃん言っちゃって下さい!この最近人気急上昇で天狗になってるアルビノ野郎へ!」

フラン「そこはせめて"壊れろ"、ぐらいにしとかなきゃ!」

上条「大して意味変わってない!?」

浜面「というかそこの、シャナ、だっけ?何周りキョロキョロ見渡してんだよ?」

シャナ「別に何でもない」

咲夜「あら?さっき小声で『悠二……』とか言ってなかったかしら?」

シャナ「っ!!?な、なななんで……っ!?」アタフタ

咲夜「瀟酒ですから」

浜面「いや、それ理由になってねぇよ」

シャナ「くっ……"ヴィルヘルミナ"と同じ服着てるのに、嫌な奴……」

一方通行「あのォ、俺もォ帰っていいですかァ?というか帰るわメンドクセェ」

フラン「待って待って!こういうのは皆でやらないと!もし勝手に帰るなら……」

一方通行「なンだよ?」




フラン「◯◯◯を"きゅっ"して"どかーん"するからね!」




男三人「「「」」」

シャナ「……◯◯◯ってなに?」

咲夜「あのね、世の中には知らなくていい事も山程あるのよ」

シャナ「?」

フラン「分かったっ!?」

男三人「「「ハイ!」」」

フラン「あれ?なんで浜面と当麻も頷いてるの?顔青いし」

浜面「誰だって恐怖するって……男の象徴爆破されるなんて言われたら……」ダラダラ

一方通行「……とっと始めろ」ダラダラ

上条「わ、分かった。えーと、まず一つ目は……」


『咲夜さんのPADネタ入れたいと最近死ぬ程思ってる』


咲夜「OK。殺してあげる」シュンッ

浜面「き、消えた!?」

フラン「咲夜凄ーい!」

上条「というか作者馬鹿だろ!?こんなの暴露したら殺されるって分かんだろ普通!?」

シャナ(……というか、ぱっどってなによ)

一方通行「オイ、なンか次血塗れの紙が回ってきたぞ」

上条「生きてたか作者……んじゃ、次」


『そもそもこれ(暴露コーナー)書いてるのはギャグを書きたかっただけだったり』


上条「ダウトォォオオオオオオオオッ!」

浜面「本当にぶっちゃけやがったぁぁぁぁぁぁっ!?」

一方通行「後先全く考えてねェな」

シャナ「ギャグ……?」

フラン「そしてシャナは原作通り、相変わらず無知だねー」

シャナ「……喧嘩売ってるの?」

フラン「クスクス……なに言ってるの?自意識過剰なんじゃない?」

シャナ「余り調子に乗ってるなら……」シャキン

フラン「いいよ。炎の剣でネタが被っちゃうから、シャナには是非消えて欲しいし……」ゴォォォッ

浜面「って、うぉい!?なんだこの灼熱空間は!?」

上条「二人共、すとーっぷ!?」

咲夜「あら、妹様楽しそうね」

一方通行「作者の馬鹿は?」

咲夜「しょうがないから半殺しで済ませてあげたわ」




少女戦闘中…………




上条「はー、はー……つ、次……」

浜面「なんで十分足らずで、こんなに疲れんだ……?」


『このコーナー、浜面VSフラン戦よりも前に書いてたりする』


上条「だ、か、らぁぁぁぁっ!?」

咲夜「こういうの、よく分からないけど言わない方がいいんじゃないかしら?」

一方通行「作者にンな常識が通じる訳ねェだろ」

フラン「そもそも、この話自体が前代未聞だったりするんでしょ?」

シャナ「確か、普通クロス作品って大体二つしかクロスしないわよね?」

浜面「あぁ。四作品とかになると、作者が纏められなかったり、読者が付いていけなくなったりするのばっかだな。成功して、しかも完結したのなんか超稀だ。……そもそも普通のクロス自体難しいってのに……」

上条「それをウチの作者は四つも……ライトノベル、漫画、同人ゲームってなんだこの組み合わせ!?」

浜面「"リリカルなのは"まで入れてたら、"アニメ"もプラスされてたな。いや、とあるもシャナも東方も(※1)ネギまもアニメあるか」

(※1同人作品で東方アニメがあります)

シャナ「まぁ、今の所ネギま?、の奴らは出てきて無いけどね」

一方通行(……本当は一人出てるンだが、黙っとくか)

上条「じゃあ、次!」


『実は前々回の話、半日で書き上げてたりする』


全員「…………………………」

浜面「……いや、なんと言ったらいいのか……」

フラン「半日で書いたなら、直ぐに投稿すればよかったのに」

シャナ「見直しがあったんじゃないの?」

咲夜「えーと、なになに……『投稿した日の一日前に感想を見てテンションを上げて、後は勢いで書いた』……?」

浜面「典型的なテンションタイプだな……」

上条「『バトルが一番早く書けた』と書いてる……まぁ、咲夜VS一方通行戦はずっと書きたかったらしいしな」

シャナ「……裏、なんか書いてるわよ」

上条「あれ?」

フラン「本当だー。えーとね」


『作中で一番自信が無いのはバトルシーン』


浜面「いや、なんでだぁぁああああああああっ!?」

一方通行「一番早く書き終わるクセに一番自信無ェのか!?」

咲夜「理由は……『戦いが現実離れし過ぎて表現が難し過ぎる。短い気もする』ですって」

上条「……まぁ、確かに」

浜面「普通の人間は空飛んだりビーム撃ったりビル破壊したりしないもんな」

咲夜「そうかしら?」

フラン「そうかなー?」

上条・浜面「「そうなんです!」」

一方通行「まァ作者も?それなりに喧嘩してたから殴り合いは簡単に書けるとか言ってたなァ」

シャナ「……例えば?」

一方通行「少学生でガラス殴り割って、血塗れの拳で喧嘩したとか」

上条「え?」

一方通行「中学生で初日から目をつけられて毎日五人以上と喧嘩してたとか」

浜面「ちょ」

一方通行「一回、十人近くにバットでリンチされて、逆にバット奪って足折ったとか」

上条「カーット!!カァァァァァァァットォォォォォォッ!!」

浜面「ストップ!ストップ!」

咲夜「妹様、暫くこれを掲げていて貰えますか?」

フラン「?うん、分かった」

シャナ「忙しい連中ね」

一方通行「オイ、オマエら一体何」

フラン「せーのっ









──只今電波が乱れています、暫くお待ち下さい──by雷放送局










上条「しゃあっ!張り切って続き行くぜぇぇえええええええっ!」

浜面「おおおおおおおっ!!」

一方通行「」返事が無い、只の屍の様だ

咲夜「平仮名では無く漢字ね……よいしょ」

フラン「あー!膝枕だ!いいなー」

咲夜「クスッ……妹様は其方の男の方が宜しいのでは?」

フラン「それもそうね!浜面〜」

シャナ「膝枕とか馬鹿らしい」

フラン「ふふっ、どうせ"お子ちゃま"には分かんないでしょ」

シャナ「……何ですって?」

フラン「あれ、何か間違ったこと言ったかな?だって原作でも世間知らずっぷりをあますことなく発揮してたじゃない。キスとかも知らなかったし(笑)」

シャナ「さっきの続きでもしたいの?このチビ」

フラン「大して身長変わらない癖に!」

浜面「落ち着けって!早く次行くぞ!」


『そもそも最初はフランを出すつもりは無かった。浜面も』


上条「はっ?」

浜面「えー、と?吸血殺しとかの質問をされた時に思いついたんだっけ?」

シャナ「突然の思いつきにしては、随分大胆ね」

咲夜「作者馬鹿だから」

フラン「でもそのお陰で私が出れたんだから感謝しないと!最低でも"二部"までは名前すら出る予定無かったらしいし」

シャナ「……ふん」

上条「次ー」


『そもそも東方紅魔郷しかしたこと無い』


浜面「今回最大級の暴露来やがったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

(※2 現在は緋想天も持ってます)

咲夜「作者としての大前提をぶち壊したわね」

上条「いやいや……作者買いに行けよ早く……」

フラン「『店に行くのに一時間かかる上に、暇が無い』だって。その分、えっと、ゆーちーむ?で動画を見てるって」

上条「『紅魔郷の弾幕全部覚えたのに、ルナティッククリア出来ない』どうでもいいわ!」

浜面「『キーボードじゃなくてゲームパッド使いたい』だから知らねーよ!」

咲夜「どうりで紅魔郷キャラの比率が高い訳ね……単純に好みもあるみたいだけど」

一方通行「っ……ぐっ」

咲夜「あっ、起きた」

一方通行「一体何が……って、何で俺は膝枕なンざされてンですかァ!?」

浜面「いいじゃねぇか。役得だろ」

上条「そうそう。美人メイド少女に介護されるとか、役得以外の何ものでもないぞ」

一方通行「元々の原因を作ったのはオマエらだろォが……っ!」

フラン「そうした原因を作ったのは一方通行だけどね!」

シャナ「自業自得よ」

一方通行「……ちっ」

咲夜「舌打ちは酷いわね」

一方通行「うるせェクソメイド」

咲夜「ふふっ……」


上条「さて、上手く纏まった所で今回はこれでお終いだ」

浜面「あぁ、終わりだ……」

シャナ「もうこんなことは二度とごめんよ」

一方通行「全くだ、クソったれ」

フラン「えー、面白かったじゃん。またやろうよー」

咲夜「そうですね、妹様」

上条「そうだなー、次は"一部"が終わった後にでも」


ヒラリ


上条「……って、何か紙が出て来たぞ……」

浜面「まだ何かあったのか?」








『この作品は三〜五部構成になる筈ですが、多分一部で終わります。体力・気力的に』




……………………………

「「「「「「ハァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」」」」」」







PS
『一部が終わった後に、キャラアンケートを実施するつもりよ。その時は好きなキャラ、気にいったキャラに投票してね☆なんなら、本編に出なかった四作品のキャラでもOK~。まぁ、まだ先のお話だし、頭の隅っこにでも覚えていて貰えれば幸いよ』byゆかりん♡





END













「「「「「「いや、作者待っ」」」」」」





強制END

















今回の話は短い話が連続して続く総集編でした。
その分、文量は過去最高……なのか、な?
様々な人物やらキーワードやらが続々と、それこそ作者ですら認識出来ない程(えっ?)てんこ盛りです。

特にインデックスの話は自分のちょっとした理屈が入ってます。自論ですので、超分かりにくいですが。

それと龍神の強さは勝手な自己設定です。
魔界神や、天照とかの神々の方が強いんじゃないの?と言われるかも知れませんが、この作品ではそれらを楽に上回る強さという設定です。御了承下さい。

更に『神』の正体ですが、実はまだ本当の姿ではありません。
本当の姿は、もっと別の存在です。


これからはとある魔術の世界と東方の世界、両方世界での戦いを書いていけたらなと思っています。

久しぶりの投稿のため、後書きも長くなってしまいました。

次回も遅れる可能性が高いですが、どうかよろしくお願いいたします。




次回は、シャナ大活躍!……の、筈です。





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