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No.24249の一覧
[0] 異人ミナカタと風祝 【東方 オリ主 ダーク 恋愛(?) 『境界恋物語』スピンオフ】[宿木](2011/08/22 21:18)
[1] 異人ミナカタと風祝 序の一[宿木](2011/02/03 01:20)
[2] 異人ミナカタと風祝 序の二 弥生(夢見月)[宿木](2011/01/18 22:37)
[3] 異人ミナカタと風祝 序の三 卯月[宿木](2011/01/18 23:01)
[4] 異人ミナカタと風祝 第一話 卯月(植月)[宿木](2011/01/23 00:18)
[5] 異人ミナカタと風祝 第二話 卯月(苗植月)[宿木](2011/09/09 14:54)
[6] 異人ミナカタと風祝 第三話 卯月(夏初月)[宿木](2011/02/02 23:08)
[7] 異人ミナカタと風祝 番外編 ~八雲と橙と『御頭祭』~[宿木](2011/04/02 22:16)
[8] 異人ミナカタと風祝 第四話 皐月[宿木](2011/04/06 22:52)
[9] 異人ミナカタと風祝 第五話 皐月(早苗月)[宿木](2011/04/11 23:39)
[10] 異人ミナカタと風祝 第六話 水無月[宿木](2011/06/29 23:34)
[11] 異人ミナカタと風祝 第七話 水無月(建未月)[宿木](2011/07/03 22:49)
[12] 異人ミナカタと風祝 第八話 水無月(風待月)[宿木](2011/07/08 23:46)
[13] 異人ミナカタと風祝 第九話 文月[宿木](2011/07/15 23:08)
[14] 異人ミナカタと風祝 第十話 文月(親月)[宿木](2011/08/22 21:30)
[15] 異人ミナカタと風祝 第十一話 文月(愛逢月)[宿木](2011/08/28 21:23)
[16] 異人ミナカタと風祝 第十二話 文月(文披月)[宿木](2011/09/02 02:37)
[17] 異人ミナカタと風祝 第十三話 文月(蘭月)[宿木](2011/09/12 00:51)
[18] 異人ミナカタと風祝 番外編 ~『御船祭』と封印と~[宿木](2011/09/17 20:50)
[19] 異人ミナカタと風祝 第十四話 葉月[宿木](2013/02/17 12:30)
[20] 異人ミナカタと風祝 第十五話 葉月(紅染月)   ←NEW![宿木](2013/02/17 12:31)
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[24249] 異人ミナカタと風祝 第九話 文月
Name: 宿木◆e915b7b2 ID:21a4a538 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/15 23:08
 県立諏訪清澄高等学校。

 諏訪湖畔に築かれた、そこそこ古い公立高校で、諏訪地方ではかなりレベルの高い部類に入る。県下一位と二位、長野市と松本市の名門二校には及ばないが、それでもまあ、近隣では有名な学校だ。周辺の勉強が良い程度に出来る子供なら、大体はこの高校に来る。

 自主性を重んじる清澄の校風において、生徒の活動に大きな壁となるのが生徒会だ。
 部活でも課外活動でも、生徒が自主的な何かをするならば、必ず生徒会を経由する必要が有る。勿論、教職員が手配をする事も可能なのだが、何処かで必ず生徒会の承認を得なければならないシステムになっている。後か先かの違いだけ。

 そんな関係だからか、生徒会に入る、もしくは入れられる生徒は、他と少し違う。
 カリスマ性が有ったり、ずれていたり、阻害されていたり、天才肌だったり、馬鹿だったりと。

 『2005年度・生徒会役員』
 生徒会の片隅、古びた木造棚の中に仕舞われた活動報告書。
 表紙を捲ると、少し色褪せた写真に、当時の五人の役員の顔が並んでいた。

 生徒会長の欄には、佐倉帳。
 生徒会副会長の欄には、小出理園。
 そして庶務の欄には、御名方四音と書かれていた。






 異人ミナカタと風祝 第九話 文月






 七月。朝から日差しが厳しくなって来たな、と思いながら教室に入ると、教室が騒がしかった。いや、平時の教室と余り変わらない騒がしさなのだが、騒音の発生場所が机のすぐ近くだった。
 私の座席の二つほど後ろで、クラスメイトの佐倉さんが何かを話していた。

 「ホント、凄い美人がいたんだって!」

 口調は興奮気味で、明るい彼女の声が何時も以上に高くなっている。

 佐倉幕。同じ八坂二中から来た、新聞部に所属する活発な女子生徒。
 さばさばした性格は男女に問わず人を惹きつけ、私程ではないが中々の人脈を有している。噂話にも詳しく、人間関係の把握なら私以上かもしれない。
 中学校でやんちゃをしていた頃から、何かと交流が深かった。

 「水鳥先生も綺麗だけどさ、なんか、こう……うん、印象が違ったんだ」

 噂話を聞きながら、私は席に座る。

 本日は火曜日。一番忙しかった先週と打って変わって、生徒会の仕事は無し。素晴らしい。
 と言うのも、今週末には土日も挟んでの四日間の学園祭が有り、下準備と書類仕事の嵐が過ぎ去った今、むしろ学園祭を存分に楽しむのが仕事と言うべき事態だからだ。勿論、当日からは何かと臨時仕事が舞い込むだろうが、それでも暇という事実は心を軽くする。
 私が始業前に普通に着席しているのも、そんな訳だった。

 運動部の大会も終わり、積極的に活動している部活と言えば吹奏楽部ぐらい。その吹奏楽部も、多分夏休みで終わるだろう。ウチの学校のレベルで、県大会を勝ち抜けるとは……残念だが思わない。敵のレベルが高すぎる。
 週末に向け、クラスの出し物の準備も順調だ。授業は早めに終わるし、学園生活を満喫するのに今ほど良い時期は有るまい。まして、運動部三年生は、これが終わったら本格的に受験に入る。最後の青春と言う事だ。

 「どんな人だったの?」

 武居さんが質問した。
 四月に“不慮の事故”で兄を失くして以来、彼女としても心情が変化したのだろう。派手な化粧は抑え目になり、幾分か真面目に学校生活を送っている。背後にある御名方四音の事を考えれば頷けないが、勿論言いはしない。彼女に言った所で、何にもならないし。
 武居さんの言葉に、良く聞いてくれました、と佐倉さんが返した。

 「髪が金髪の地毛で、瞳が紫色。肌は白いし、スタイルが滅茶苦茶良い。皆が想像する『白人の美女』が、もっとグレードアップした感じ。肘まで白い薄い手袋で覆って、西洋と中華が混ざったような服で、日傘を指してた。……口元を扇子で覆ってもいたかな?」

 「……へえ」

 感心したような、呆れた様な声が半々で混ざる中、古出玲央も密かに感想を吐く。
 そりゃまた、随分とインパクトのある格好の女性だ。道端に佇む光景は、ちょっと想像できない。

 「何してたんだろうね、その人」

 「いや、なんか水鳥先生の知人だったみたい。その人か、運転手さんかは知らないけど」

 何でも、地方には不釣り合いな超高級な外車の横で、すらっとした女性の運転手さん(らしき人)と水鳥先生が、楽しく話をしていたそうだ。件の怪しい女性は、穏やかに微笑んで眺めていただけだそうで。
 その女性と、車の運転手。一体何者なのやら。

 思えば、あの先生も随分と謎だ。
 生徒会顧問として。または担任として、もう三ヶ月以上付き合っているが、分かった事は少ない。
 御名方四音がまともに接する数少ない存在で、学校内でも微妙に扱いに困っていて、教師としては問題が有るが仁徳はある。生徒からの人気も高く、授業も分かりやすく、適度に緩くて適度に厳しく、親しみやすい。そして私生活が全く見えない。――――まあ、このくらいだ。

 御名方四音が敵だと言う事は凄くはっきりしているのだが、あの先生の行動は本当に読めない。
 敵には思えないし、かと言って味方でもないと思う。だから困っている。

 「お早うございます。――――遅くなりました、レオ」

 「あ、お帰り早苗。絵手紙さんは何だって?」

 携帯を胸元に仕舞いつつ自席に付いた、早苗の方を向く。
 始業前にした電話は、東京に出ている親戚の姉。八島のお姉さんにだった。異常に密度の濃い生活を送っている絵手紙姐さんに連絡を入れるには、朝のこのくらいの時間しかない。

 「ええ。今週末の学園祭には顔を出すそうです」

 「分かった。――――あ、先生が来たみたい、詳しい話はまた後で」

 はい、と早苗が頷いた所で、私は前を向く。チャイムは朝のHR開始の合図だ。廊下の奥から、こつりこつりという足音が響いて、あちこちの教室に散らばって行く。佐倉さん達も自分の席に戻ったようだ。

 程なくして、水鳥先生が顔を出した。
 教壇の上に乗って、配布物をどさりと置き、全員に一言。

 「おはよう。今日も暑いが、張り切って一日を過ごす様に。あと、各自このプリントを持っていけ。学園祭の詳しいスケジュールが載っている。……以上だ」

 それだけで終わらせた。
 水鳥先生は、公的な場では無駄な話をぐだぐだと続けるタイプではない。素っ気ない、とも言われる態度だが、HRもテンポよく終わらせる為、私達も時間に余裕が有って助かっている。
 この時期、誰もが時間を多く欲している。たった五分とはいえ、授業前の五分がどれ程大切なのか、は学生時代を思い浮かべて貰えれば、きっと誰もが納得してくれるだろう。

 「何か質問や連絡事項のある奴はいるか?」

 「あ、先生!」

 「何だ、佐倉」

 はいはい、と元気よく手を上げた佐倉さんを指名。
 因みに、彼女の出席番号は10番。古出・東風谷・佐倉の順である。……私と早苗が時折、こっそり席を入れ替わっている事が有るのは、此処だけの秘密だ。

 「朝の人は誰ですか?」

 「なんだ、見ていたのか? ――――彼女は知人だ。……もう少し詳しく言うならば、昔の馴染みでね。一時、疎遠になっていたんだが、ここ最近はまた親しくなっている。まあ、朝から学校の近くで遭うとは思ってもいなかったがね。……それだけさ」

 軽く肩を竦めて、先生は話を打ち切った。
 入学初日にも思ったが、先生は質問を回避するのが妙に上手い。のらりくらりと、一件しっかり返答しているように見えて、しかし具体的な言及はしていない。春の質問でも、思いかえせば答えがアバウトすぎる。
 そう言えば早苗が、先生も御名方さんへの耐性を持っているだろう、と話していた。やっぱりタダものじゃないんだろう。

 「ああ、そうだ。放課後、学園祭の準備を行う時は怪我をしないように気を付けるように。やる気を出すのは結構だが、怪我をしたら何にもならないからな」

 はーい、とか、りょーかい、とか適当な返事が返った。

 私達の一時間目は、この教室で古典。移動も必要なく、特に苦手でもない。

 余裕が有るから、少しクラスに思いを馳せることにした。
 このクラスは、別に団結力が高い訳ではないが、低い訳でもない。クラスの纏め役(委員長)が上手に舵を取っているお陰で、それなりにスムーズにクラスの決め事は進んでいる。

 今年のクラスの出し物は、妖怪に纏わるエトセトラな展示、と言う事で、日本の伝説・近代都市伝説・二次創作としての妖怪、と幾つかに分類される。因みに、別サービスとして時間限定で早苗の『お祓い』付きである。集客を見込める、とか立案した女子はほざいていた。
 クラスの中では「巫女喫茶とかどーだ」という意見があがったりもしたのだが、早苗と私で却下した(早苗と比較されるのが嫌な女子も味方に付いてくれた)。学校の中でまで、巫女服を着るのは勘弁して欲しい。ただ『洩矢』として少し学園祭で一言、お願いすると要望が出てしまった為、その序と言う事で、『クラスで短時間だけでも』との懇願を却下しないでおいたのである。

 ……まあ、早苗はあの容貌だ。普段は遠目に見ている連中も、これを機にやって来るだろう。あわよくばお近づきになりたい、と考える輩もいそうだし。
 実の所、中学校時代に早苗に交際を申し込んだ男子が、いなかった訳ではない。というか、むしろ結構多く居た。だが、誰も長続きしなかった。別に早苗の性格が悪かった訳ではない。早苗だって年頃の娘だから、交際を申し込まれれば嬉しく思いはする。悩みを打ち明けられもした。

 だが結局。全て破局で終わっている。相手方が付いて来れなくなったのが理由だった。
 よくよく考えてみれば。
 早苗と友人以上に親しく、且つ異性であり、身内以外の存在は……今日び、御名方四音しかいない。

 ホント、あの生徒会長。性格さえ良ければ、容姿端麗・頭脳明晰・家も金も権力も人脈も仕事能力も全て良し、と文句の付けようのない人材なのだが、肝心の性格が、そのプラスを振り切りまくっている。自分で修正する気が無いから性質がもっと悪い。

 「レオ、なんか物憂げですね」

 「……そう?」

 そんなに顔に出ていたか?

 まあ、御名方四音の事を考えて、それで愉快に成れる人間はいないだろうから仕方がない。
 好いている、とは全く別の意味で、あの男は人の記憶に良く残る。事あるごとに思い出させる。風呂場のしつこい汚れみたいな感じだ。早苗と交流していると、その存在感はより大きい。

 「先週までの書類は、レオにも手伝って貰いましたからね。……疲れが残ってたりしますか?」

 「いんや。確かに多かったけど、休み挟んだし大丈夫」

 振られた話題には応えよう。

 昨日までの書類の嵐は、私も手伝った。と言っても、早苗と御名方さんに比較すれば微々たるもの。
 二人の実務能力は異常だった。本来ならば五人以上必要な筈の生徒会役員の仕事を、二人で全て終わらせていた。その光景を思い出すだけでうすら寒くなる。早苗の鬼気迫る表情なんて久しぶりに見た。

 御名方四音は嫌いだ、が、彼は生徒会長。何かあれば、穏便な学園生活が滞る。普通の生徒に被害を出すつもりはない。だから邪魔はしなかった。
 ……あの男。不健康そうな割には意外と仕事詰めでも普通にしている。外部刺激に鈍いからなのか。

 「それよりも、今日の三限目の数学の宿題、早苗出来た?」

 「ええ。やってはきました」

 「後で答えだけ確認させてよ。私だってやっては来たけど、とてもじゃないけど自信が無い」

 「良いですよ。……あ、そうそう」

 何かを閃いたのか、早苗は良い考えを思いつきました、と顔に浮かべて唐突に言う。

 「レオ、先輩に勉強、質問してみたらどうです? 淡々と懇切丁寧に、妥協無く教えてくれますよ」

 いや、それはちょっと勘弁して欲しい。
 確かに懇切丁寧かもしれないが、きっと気遣いからは程遠い説明だろう。

 私と早苗の日常的な会話は、古典担当の男性教諭が教室に入って来るまで続いた。




     ●




 御名方四音を負かす為に、何をするべきだろう?




 まず、私達はそこから考える事になった。

 肉弾戦。これは論外だ。彼は痛めつけられて負けを認める人間ではないし、そもそも病院通いすら避ける訳有りの虚弱体質。そんな相手に喧嘩を吹っ掛けて殴る蹴るの暴行を加えたとなれば、こっちが悪者だ。いくら理由が有るからと言って許される物ではないし、私だって遠慮したい。
 それに、だ。実の所、高校以前に彼に暴行を(程度の差こそあれ)加えた者は、皆、手痛いしっぺ返しを食らっている。四月に亡くなった武居さんもその内の一人だった。同じ轍を踏みたくない。

 となれば、精神的に攻めるしかない。
 御名方四音の心を折る。折らないまでも、負けを認めさせれば良い。

 四ヶ月見ていて分かったが、あの男、基本的に根が律義だ。どんな仕事でも放り出す事はしないし、口に出した約束は遵守する。筋さえ通っていれば大体の難問も頼まれてくれる。……にべもなく言えば、都合が悪くなると黙りこみ、余計な諍いを嫌い、偽りを口に出すより沈黙を美徳と考えるのだろうが。
 だから、だ。あの生徒会長が早苗を殺すと告げた以上、実行に動く。これは間違いない。しかし、その一方で、私達に負けを認めれば、それで彼は諦める。

 ならば、どうやって行うか。それが私達の当座の問題だった。

 「先輩に、何が効果的なのか。その心を知るには、先輩自身を知る必要が有ります」

 「そうは言ってもねぇ。御名方さんのご両親は亡くなっているし、本家のお固いお婆様方が、お話ししてくれるとも思わないけど」

 「はい。……此処はもう、学園生活からアプローチするしかないでしょう」

 そもそも、私生活が全く見えない御名方さんだ。あの古びた不吉な家で一体日々何をしているのか。全くと言って良い程、謎に包まれている。近所づきあいも最低限らしいし、伊達に呪いの屋敷扱いされている訳ではない。

 親御さんが亡くなっている事は承知の上。前にも軽く話したが、私と早苗は、御名方三司さんと出会っていたし、葬式に顔を出してもいた。だが、私生活の質問はした事がないし、人間関係も全然知らなかった。
 まさか、ボーダー商事の稲葉さん達に連絡を取る訳にもいかない。

 だったらもう、学園生活から推し量ろうと言うことになった。
 ただし、これも相当に困難なことに違いはない。

 そもそもあの生徒会長。自分の存在が他者にどれだけ迷惑になるのか、それを多少は知っているのか、それとも煩わしいのか。授業に殆ど出席していない。教室の自分の席に着くのはテストを受ける時くらいだ。学校内でも、親しい人間など皆無に近く、一番近しいのが私達なのだ。

 『御名方の事を知りたい、か。……済まないが、私は沈黙を守らせて貰うよ。お前達の敵に成るつもりはないが、御名方の味方で有りたいからな。だから言わない。訊かれても答えない。承知しておいてくれ』

 尚、いの一番に訊ねて行った水鳥先生には、そう先手を打たれてしまった。
 先生の事だから、本当に話してはくれないだろう。

 「どうするの、早苗?」

 「先輩のクラスは……?」

 「無理。ほら、須賀先輩の事もあって、名前を出すのも禁忌っぽい感じに成ってる」

 入学当時から今日まで二年間、御名方四音がクラスに溶け込む努力をした事はないそうだ。予想できるか。……それこそ、須賀長船さんのような、無駄にお節介を焼く人間だけが、細々と交流していた。
 水鳥先生の言う、御名方さんの悪問題もあるのだろうが、それは置いておこう。

 クラスの中で先輩を知る人はいない。何もしなければ無害と言われているお陰で、誰も関わろうとはしない。そして須賀さんが亡くなった事で、やっぱり疫病神だ、という認識が広まっている。事実、私が訊ねて名前を出した瞬間、確かにクラスが凍りついた。

 「早苗は? どうだった?」

 「……一応、佐倉さんから、お姉さんに連絡を取っては頂きましたが」

 「駄目だった?」

 「はい。先代の生徒会長にお話を伺いたい、と自己紹介の後に話を持ち出した所――――こう言われました。『東風谷さん。悪い事は言わない。さっさと御名方四音から離れるべきだ。そうじゃないと、きっと酷い目に合う……!』と。力説でしたね」

 ……それはそれは。あの御名方四音。ひょっとして昨年から、今の平常運転で過ごしていたのか。で、多分。佐倉帳さんを酷い目にあわせたのだ。こっちも十分に予想できる。

 先代の生徒会長の佐倉さんが、私達のクラスの佐倉幕のお姉さんだった。それを知ったのは、つい最近だ。生徒会室内で埃を被っていた過去の議事録を整理していた所、御名方さんが一年生の時の生徒会情報を得たのだ。そこで佐倉さんに頼んで連絡先を入手し、早苗から佐倉帳さんへ、お話を伺いたいと話を持って行ったのだが――――今言った通り、結果は奮わない。

 分かったのは要するに、先代の生徒会からも御名方四音が嫌われていると言う事だけだった。

 「ええと、レオ。……理園さんにも聞いてみましたが、明白に言葉を濁されました」

 因みに、副会長の欄には古出理園と名前が載っていた。
 ……私はどんな反応をすれば良いのか、分からなかった。

 まあ、姉が高校生だった頃、私は中学生。しかも色々と黒歴史を行っていた頃だ。当時は、姉と会話をする事も少なかったし、自分勝手な反発で迷惑をかけていた。姉が生徒会役員だった、との情報は初めだったが、きっと当時の私が自分で聞く耳を持っていなかっただけだろう。

 その他、生徒会には何人か所属していた様だが、彼ら役員の所在は、ちょっと調べてみたが不明だった。当時の生徒会は五人いて、一人は転校、一人は退学。残った三人が、御名方さんと佐倉(姉)と、理園。

 この状況、何と言えば良いのか。正直、もうヤバイ匂いがぷんぷんする。藪を突っつけば、さぞかし巨大な蛇が出て来てくれるだろう。勘など使わずとも分かる。

 「まあ、それは兎も角。じゃあ、先輩の事を知っている人間は、居ないってこと?」

 「いえ。実はですね。……理園さんから、アドバイスが一言、有りまして」

 「うん」

 「私も言われて思い出しましたが、八島のお姉さんも理園さんと同学年です。当時の、御名方四音の話をどうしても聞きたいならば、そちらに電話をしてみれば、……と」

 脈々と受け継がれてきた家の風習が成せる技か、同年代の親戚が結構多い。私と早苗もそうだが、例えば私と早苗の母も同年代。もう一世代戻って、祖母と早苗の祖母(洩矢の総責任者)と、尾形日文さんも同年代だった。古出理園と八島絵手紙も、その例には漏れない。




 かくして、私達は親戚の姉。
 『権祝』八島の一人娘、絵手紙さんに、連絡を取ることを決定したのである。




     ●




 さて、授業も終わった放課後。
 普段ならば部活や帰宅に向かう生徒が多いのだが、今週ばかりはそうはならない。

 机を片付けた教室では各々に展示の準備に追われ、中庭や体育館、その他各地の教室でも部活動や融資による出店、展示、研究発表などに追われて大忙しだ。
 金槌木槌が鳴り響く音、掛け声に呼び声、中庭ではステージの組み立てが行われているし、校庭や昇降口の広いスペースでは、看板やポスターの製作に余念がない。

 「良いですね、こういう雰囲気は」

 「そうだね、うん」

 普段、あんまり教室のイベントに参加出来ない私達だが、今はクラス展示の準備中だ。生徒会の仕事は、先週までの申請書類の決裁が一番大変だった。今も臨時の仕事が舞い込んできているが、まあ御名方さん一人で何とかなるだろう。

 二人で仲良く、私達が何をしているのかと言えば、教室への展示物を運搬中だ。
 持ち運んでいる中身がまともでさえあれば、さぞかし普通の学生生活なのだろう。

 「ところでさあ、早苗って、やっぱりマニアックだよね」

 「レオ、これは常識の範疇です」

 「……常識、ねえ」

 腕の中のバリエーション豊富なDVDを見ながら、私は溜め息を吐いた。
 これが常識だったら、私は常識外れだ。絶対に。

 「じゃあ言いかえるよ。早苗ってさぁ。……意外と残念な感じあるよね」

 「そうですかね」

 軽口を叩く。別に蔑んではいない。友人だから言える気兼ねない一言だ。

 展示物として並べる、妖怪が登場するサブカルチャーな品々を見て、思った。
 まあ人間、誰しも隠れた一面は持っている物。巫女としての早苗、学生としての早苗は凄く優秀な人間だが、庶民な早苗は意外と……まあ、言っちゃ悪いがアレだ。意外と秋葉系だし、かなりマニアック。その辺の男子と対等以上に「語れる」のだ。

 ま、最近の女子高校生の実態なんて、そんなもんだ。
 女に幻想なんて抱くもんじゃない。

 神社だから格式高い、の認識は間違いではないが、別に無駄に高いではない。四月にもちょろっと早苗が話していたが、最近の神社も、ただ偉くて由緒正しいだけではやっていけないのである。身も蓋もなく言ってしまえば、参拝客が来て儲けを出さなければ意味がない。だからあの手この手で金を落とさせる。

 幸いにも近年の景気に逆らって、『洩矢』は資金面では中々に潤沢だ。神社の雰囲気自体が、昔と違い、庶民派に転向しつつあるし、そもそも生まれ育った時代が違う。別に個人の趣味の範疇に抑えて、仕事が出来れば、大体何でも許されるのだ。それこそアニメやら漫画やらに嵌っていても。

 ……いや、そりゃあ昔からの付き合いだから知ってたけどさ。でも日曜日の朝から、戦隊特撮ヒーローとライダーを見たくせに、魔法少女アニメを見ないのは女の子としてどうかと思うよ。

 「レオも見てたじゃないですか」

 「間違えないで、早苗。私はアクションを見てたの。ロボを見て一喜一憂してた早苗とは違うの」

 早苗に付き合って一緒に見ていた、と言っても、方向性は真逆だ。
 俳優やアクションと見ていた私と、ロボットの合体シーンや怪獣の特徴や必殺技、あるいは別作品のオマージュまで語っていた早苗。どっちが健全かは言うまでもない。平成生まれの女子高生なのに、親世代が子供の頃のロボットアニメを語らないで欲しい。
 しかもロボだけと思いきや、大概のアニメや特撮、それこそ今私達が運んでいる、お化けや妖怪に纏わる代物まで持っている。

 「ところでさ、このDVD何処から持ってきたの? 明らかに古いのとか懐かしいのが混ざってない?」

 「ああ、それは――――昔にビデオに録画してあった物を、業者に頼んでDVDに入れ直して貰ったんです。画像処理もして貰いましたし、絵柄は少し古いですが、でもちゃんと見れますよ」

 ビデオテープ。懐かしい響きだ。そう言えばビデオもめっきり少なくなった。2007年現在では、まだ普及しているが、そろそろDVDに取って変わられるだろう。しかも何やら、ブルーレイとかいう品まで出てきているそうだ。機械には詳しくないから、詳しい事は知らないが。
 科学や技術の世界も日進月歩。まだ若い私達だが、それでも此処十年の電子機械の発展レベルは異常だという事くらいは分かる。小学生に入る前、弁当箱みたいな白黒携帯ゲームで、初代のポケモンに嵌っていた時代は遠く昔だ。

 「そういや世界には色々と消えてく技術や、廃れた物が有るけど、そう言った物は何処に行くのかね?」

 何気ない質問だったが、何か、早苗の琴線に触れたのだろうか。
 少しだけ遠い目をして、少し考えた後に、彼女は語った。

 「……さあ。分かりません。……でも、きっと何処かに消えて行くのでしょう。私達が忘れてしまった何処かに。人の記憶から零れ落ちた、品物だけに留まらない色々な物。噂、伝説、概念、信仰心までも――――きっと何処かにね」

 「……ふーん」

 ……早苗は、何か知っているのかもしれない。
 私には分からないが、神社である以上、そう言った物には無関係ではいられないのだ。きっと。

 敢えて訊ねる事はしなかった。何故だろう。その時の彼女の目が、まるで決して遠い事ではなく、むしろ身近な物のように捉えていたからだろうか。
 神社の跡取りとして昔から、早苗は天才と名をほしいままにして来た。そんな彼女だからこそ、分かる事が有るのだと思う。ほんの微かに。私でも見逃してしまいそうな位に僅かに、早苗の表情が陰っていた。

 「レオ、そんな心配そうな顔をしないでください。大丈夫ですよ、別に私は」

 「うん。いや、……そうかな」

 廊下で作業をしている人たちを巧みに避けながら、私と早苗は教室に向かっていく。
 生徒会室が三階にある、とは前に話したかもしれないが、私達一年生の教室も三階にある。三学年が一回なので、つまり学年が上がる毎に昇降口に近いのだ。三階には他に、放送室や図書館も置かれている。
 足元と手元が見えないと、必然的に足運びは慎重になる。
 ええい、話題を変えよう。

 「で、そうだ。絵手紙さんの話だけど」

 「あ、じゃあ朝の続きに成りますが」

 八島家の長女・絵手紙さん。

 理園ねえと同学年で、つまり私達よりも三つ上になる。
 この清澄高校を卒業後、推薦で受かった東京の大学に通い、現在は経済学、神学、経営学と言った様々な分野の勉強中だ。節操がない訳ではない。『洩矢』に貢献できる分野をなるべく多く取っているのだ。
 卒業後は此方に帰省し、家業を手伝いつつ、神社で働く事が決定している。

 「何でも、丁度テストが終わった直後だそうです。五日くらいならば十分此方に戻って来る余裕が有る、と。その時に私達に会って、序に学園祭に顔を出して行くと言っていました」

 「じゃあ、その時に?」

 「はい。先輩の話も聞けるでしょう」

 電話で聞こうとも思ったのだが、絵手紙さんは色々と多忙な生活を送っている。
 性格は呑気なのだが『余裕が有るとサボっちゃうから』という理由で敢えて実行ギリギリのスケジュールを組み、それを完遂する事を得意としているのだ。呑気な割にアグレッシブなのは身体だけではない。

 「序にあの、早苗。……一応聞いとくけど、理園ねえは?」

 理園姉さんの連絡先を知らない事は前にも話したが、実を言えば――――彼女が家を出て行った経緯には、私も関わっている。
 別に、あの姉の事を嫌ってはいない。半分しか血が繋がっていなくとも、あの人は私の姉だ。だが中学時代、拗らせた関係が修復されないままに別れてしまったからか。今でも、どう接すれば良いのかが、今一、自信が無いのである。
 理園と早苗は仲が良い。だから何時も、中継役をお願いしている。

 「理園さんは『絶対に来れない』と言ってました。『悪いけど今は帰りたくないんだー』、でしたかね。詳しい話は知りませんが、面白い研究をしている様ですよ」

 「ふうん?」

 まあ、好きな事に思う存分打ち込める。その環境を満喫しているのならば、別に何も言うまい。自力で金を稼いで(スポンサーがいるようだが)、好きに研究して、充実した日々を過ごす。羨ましい限りだ。
 早苗に、顔で『どんな内容?』と訊ねてみると、なんか変な回答が戻って来た。

 「何でも、サボテンの持つ……そう、『CAM型光合成』? を科学的に利用する、夢のサボテンエネルギー構想とか言っていましたね。世界が砂漠に成っても、サボテンならば生き延びるかもしれない、とか言う部分が着眼点らしいです」

 ……取りあえず、なんか凄い事は分かった。光合成に種類があったなんて今初めて知ったぞ。
 まあ、科学技術の進歩は、先程も言ったが飛躍的だ。例えば何時の日か世界が砂漠に包まれた時、サボテンエネルギーを有効利用して世界に平和が齎されることも、無い、とは決して言えまい。……何かありそうな気がしてきた。良く分からん電波が、VIVIT……じゃない、ビビッと来たのだ。

 「……さて、積もる話は有りますが、今はクラス展示の準備をしましょう」

 「そうだったね」

 階段を上りきって教室に入る。壁際に寄せられた机と、広くなった床に散乱する紙。足の踏み場がギリギリある状態だ。『ただいま帰りました』と声をかけて、私達は長らく運んで来た品々を近くの机の空きスペースに置いた。
 ふむふむ、様子を見るに、どうやら進行状況は順調らしい。

 一応、展示方法は簡単だ。
 教室の後ろの扉を入口に、机を重ねて回廊を造る。机の上に暗幕を掛けて、そこに紙を張る形で展示。回廊を抜けると少し広いスペースが有って、其処で早苗が『お祓い』と言う事だ。一回、百円である。
 勿論、早苗に余計なちょっかいを出されないように、必ず女子二人以上が周囲を見張っている。教室の客引きが一人、出口に一人。私物の見張り番や室内の監視がそれぞれ一人。つまり常時六人以上が教室に常駐している形だ。クラスのメンバーは36人なので、分担すれば六チーム。一回30分で交代して、平均すれば一日二回、午前と午後に見張りが回って来る訳だ。

 既にシフト表も形に成っていて、私は早苗とずっと同じ動きだった。因みに同じチームには佐倉さんもいる。名簿番号で近い人々で集まっているのだ。展示の分担も同じ担当だったのだが、姿が見えない。
 折よく武居織戸が居たので訊いてみる。

 「ああ、幕? ……確か――――そう。新聞の記事の写真撮影、だってさ?」

 「ふーん……」

 なんとなく、彼女の所在が気になった。
 早苗が家から持ってきたDVDを見たクラスメイトが集まり「わあ、懐かしいなあ」「古い」「あ、これ良く見てたよ」とか言っているのを聞きながら、私は、教室から廊下に出る。

 ちょっと探してみた方が良いかもしれない。窓からぐるりと、学校全体を見回すように首を動かす。私は目が良い。視力は2.0以上だ。遠視も少しあるお陰で、遠くの物でも良く見える。

 階下、回廊型校舎の中央広場から昇降口へ至る部分に、メインステージが設置されている。その傍らにはステージ管理の小屋が造られていた。小学校の運動会で見るような、パイプを組み合わせて、上に白い厚い生地を被せる即席の奴だ。
 本格的な暑さまではもう少しだが、日差しは強く太陽が眩しい。晴れ渡った空の下、中庭でも着々と準備が進行している。看板を張ったり、屋台を組み立てたりとさぞ暑い事だろう。

 「……いた」

 そのメインステージの横で、デジカメを携えながら写真を撮っている佐倉さんを見つけた。ふむ、周囲の注意が疎かになっているとみて間違いない。周りにいる生徒が、微妙に邪魔そうな顔をしているが、カメラを弄っている彼女はどこ吹く風だ。
 声をかけても此処では届かないだろうし、あの様子なら暫く動かないと思う。

 ……まあ、大丈夫かな。

 早苗の語っていた『天竜川の口承』通りに御名方四音が動いているなら、佐倉さんへの懸念は当然だ。
 だが、私はその時、確かに安心していた。
 勘。それも、良い方に働いた勘だ。




 多分、今は、御名方四音は何もしない。




 私は、そう思っていた。




 その判断が正しかったのかどうか。
 結局、それは分からない。




     ●




 事故が起きた。


 メインステージの高所に、看板を掲げる最中に――――作業をしていた男子生徒が、バランスを崩して、看板ごと落下すると言う事故だった。
 重量のあった、木製の看板と共に、梯子から地面に落ちる。
 例え二メートルも無い高さの梯子とはいえ、打ち所が悪ければ大きな被害を齎しただろう。
 しかも、男子生徒の落下地点には、周囲が見えていない佐倉さんが偶然にも居た。看板の大きさもある。彼女以外にも、周りの人間が一緒に潰されていた可能性は高かった。




 だが、“そう”は「ならなかった」。




 傾いだ方向が良かったのだ。男子生徒と看板は、地面に落ちるよりも先に、隣接して組み立てられていた本部棟の――――厚い布製の屋根の上に、転がることとなった。
 倒れた梯子は、誰もいないステージの上に倒れ込んだ。
 看板に被害はなく、本部棟も辛うじて男子生徒を支え切った。

 佐倉幕は。
 その様子を写真で撮影し――――『準備中に起きた意外なハプニング』と記事に題する事を決めたそうだ。

 事故と聞いて慌てて先生が飛んできたが、誰一人として怪我を負っていないと分かり、注意で済まされた。
 結局、被害は零。

 『奇跡』的にも誰一人、怪我すらも負わなかったのだ。

 偶然だったのか人為だったのか、其れは分からない。御名方四音は偶然だと言った。事実、彼は現場にいなかったし、生徒会室から動いていなかったようだ。だから、御名方四音が何かをしたかもしれないし、本当に偶然だったのかもしれない。少なくとも、私は訝しむ事は無かった。

 だが、それよりなにより。
 もっと重要で、もっと印象に残った言葉が有った。




 「ふう。危ない。…………偶然や奇跡も、楽じゃありませんね」




 事故の直前。私を探しに来たのか、咄嗟に廊下に駆け寄った早苗の発した、その言葉。
 決して自覚して表に出していたのではないのだろう。耳が鋭い私だって聞き間違いと思った。
 だが、決して聞き間違いではなかったのだ。




 この日から、私は東風谷早苗という親友の持つ“力”。
 そして『洩矢五官』の持つ神秘と《幻想》の事を、より深く知っていく事になる。
















 かくして、起承転結の「承」の始まり。
 「起」が古出玲央だとしたら「承」は御名方四音。「転」は東風谷早苗。「結」は洩矢諏訪子です。
 弥生(三月)が序章。卯月・皐月・水無月が「起」。文月・葉月・長月が「承」。神無月・霜月・師走が「転」。そして睦月・如月・弥生で「結」の予定です。ぐるっと回って一年。エンディング後に『東方風神録』本編スタートと言う感じでしょうか。
 まあ、間にちょこちょこと歴史・風習なんかの説明を入れて行くにしても、多分五十話。今迄の話も、無駄は極力省いて、全部重要な伏線が隠れている位のつもりで進行しているので、間延びはしません。……『境界恋物語』での反省を生かしたいと思います。

 ではまた次回。
 感想を頂けると嬉しいです。

 ……ところで皆さん、ユグドラ・ユニオンという「面白いクソゲー」の二次創作って需要が有りますかね? 何かを完結させたら書こうと思っているのですが。

 (7月15日・投稿)


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