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No.22507の一覧
[0] 機動戦士がんだむちーと【多重クロス】[Graf](2014/07/27 19:00)
[1] 第02話[Graf](2010/11/08 12:16)
[2] 第03話[Graf](2010/10/18 06:59)
[3] 第04話[Graf](2010/11/08 12:16)
[4] 第05話[Graf](2010/11/21 08:24)
[5] 第06話[Graf](2010/10/21 09:52)
[6] 第07話[Graf](2010/10/23 23:30)
[7] 第08話[Graf](2010/11/08 12:17)
[8] 第09話[Graf](2010/10/23 08:33)
[9] 第10話[Graf](2010/10/23 17:06)
[10] 設定集など(00-10話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[11] 第11話[Graf](2010/10/27 05:15)
[12] 第12話[R15?][Graf](2010/10/27 05:16)
[13] 第13話[Graf](2010/10/25 21:22)
[14] 第14話[ネタ][Graf](2010/11/08 12:17)
[15] 第15話[Graf](2010/11/08 12:17)
[16] 第16話[Graf](2010/10/30 21:19)
[17] 第17話[Graf](2010/10/30 15:05)
[18] 第18話[R15][Graf](2010/10/30 21:24)
[19] 第19話[Graf](2010/10/30 21:21)
[20] 第20話[Graf](2010/10/31 14:30)
[21] 設定集など(11-20話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[22] 第21話[Graf](2010/10/31 14:31)
[23] 第22話[R15][Graf](2010/11/12 11:21)
[24] 第23話[Graf](2010/11/12 11:21)
[25] 第24話[R15?][Graf](2010/11/08 12:18)
[26] 第25話[Graf](2010/11/02 16:55)
[27] 第26話[Graf](2010/11/06 10:59)
[28] 第27話[Graf](2010/11/08 12:18)
[29] 第28話[Graf](2010/11/06 11:01)
[30] 第29話[R15?][Graf](2010/11/03 12:00)
[31] 第30話[Graf](2010/11/08 12:19)
[32] 設定集など(21-30話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[33] 第31話[Graf](2010/11/06 11:08)
[34] 第32話[Graf](2010/11/06 21:39)
[35] 第33話[Graf](2010/11/07 16:59)
[36] 第34話[Graf](2010/11/08 02:01)
[37] 第35話[Graf](2010/11/09 05:33)
[38] 第36話[Graf](2010/11/09 05:32)
[39] 第37話(R15 一年戦争終了)[Graf](2010/11/10 21:11)
[40] 設定集など(31-37話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[41] 第38話(R15 戦間期前半)[Graf](2010/11/12 11:25)
[42] 第39話(R15)[Graf](2010/11/11 10:20)
[43] 第40話[Graf](2010/11/11 23:02)
[44] 第41話[Graf](2010/11/12 11:41)
[45] 第42話[Graf](2010/11/15 04:51)
[46] 第43話[Graf](2010/11/14 12:40)
[47] 第44話[Graf](2010/11/15 04:52)
[48] 第45話[Graf](2014/07/29 19:39)
[49] 第46話[Graf](2010/11/15 04:53)
[50] 第47話[Graf](2010/11/14 12:44)
[51] 第48話[Graf](2010/11/15 21:23)
[52] 第49話[Graf](2010/11/17 12:03)
[53] 第50話[Graf](2014/07/29 19:39)
[54] 設定集など(38-50話まで)[Graf](2014/07/27 07:35)
[55] 第51話[Graf](2010/11/20 12:13)
[56] 第52話[Graf](2010/11/19 21:13)
[57] 第53話[Graf](2010/11/20 12:18)
[58] 第54話[Graf](2010/11/20 18:20)
[59] 第55話[Graf](2010/11/23 16:11)
[60] 第56話[Graf](2014/07/29 19:39)
[61] 第57話[Graf](2010/11/23 16:12)
[62] 第58話[Graf](2010/11/25 23:37)
[63] 第59話[Graf](2010/11/27 14:09)
[64] 第60話[Graf](2010/12/02 03:42)
[65] 第61話[Graf](2010/12/05 19:08)
[66] 第62話[Graf](2010/12/05 20:11)
[67] 第63話[Graf](2010/12/09 23:45)
[68] 第64話[Graf](2010/12/20 04:54)
[69] 第65話[Graf](2010/12/20 06:47)
[70] 第66話[Graf](2011/02/09 20:31)
[71] 第67話[Graf](2011/02/24 22:50)
[87] 第68話[Graf](2014/07/27 03:12)
[88] 第69話[Graf](2014/07/27 07:31)
[89] 第70話[Graf](2014/07/27 07:31)
[90] 第71話[Graf](2014/07/27 07:32)
[91] 第72話[Graf](2014/07/27 07:32)
[92] 第73話[Graf](2014/07/27 07:33)
[93] 第74話[Graf](2014/07/27 18:50)
[94] 第75話[Graf](2014/07/27 18:51)
[95] 第76話[Graf](2014/07/27 18:52)
[96] 第77話[Graf](2014/07/29 19:40)
[97] 第78話[Graf](2014/07/29 19:40)
[98] 第79話[Graf](2014/07/27 18:53)
[99] 第80話[Graf](2014/07/27 19:00)
[100] 設定集(51-80話)[Graf](2014/07/27 07:36)
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[22507] 第64話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/20 04:54

 その思念を受け取ったのは、大型MAの攻撃をアステロイドを使って避けていたときだ。アクセルさんの援護があるが、正直、ファンネルでも使わない限り、今のアンジュルグの装備で戦うには近接戦に持ち込むしかない、と思っていた矢先。トールが私を頼ることは珍しい。今までは、どちらかと言えば守ってくれたり、出来るだけ戦闘から遠ざけようとしていた向きがあるから意外だった。けれど、この前の何かで吹っ切れたのかもしれない。ちょっと可笑しい。

「アクセルさん、私は下に行きます」

 私は後ろから援護していたアクセルさんのソウルゲインに声をかけた。手に持っているビームライフルを向けて何発か打つだけ。効き目は見込めないけれど、パイロットではない博士相手には牽制にはなる。大分、距離を詰めたようだから後はソウルゲインの装備だけでも充分だろう。それに煙幕の距離も近くなってきた。

「おおし、援護する。こいつの射線に乗っからないようにな」

 頷くと、アステロイドに隠れながら煙幕の中に入った。煙幕で何も見えないがトールが何処にいるかはわかる。円陣を組んで加速器型のマスドライバーを守ろうとしているジオン軍の中に入り込み、全機の背後―――円陣の中心にいる。何を考えているかは良くわかった。NTの能力だが、ここまで考えが通じ合うのは信頼されている証拠でもある。

 単純に嬉しかったし、信頼されて戦力として当てにされていると言うことは誇るべきだ。良い変化だとも思う。

 トール、着いたよ。私は何をすれば良い?と思いながらトールのヴァイサーガとの接触回線を開いた。

「ファンネル。こいつら、恐らく円陣が完成したら煙幕の排除に入ってこっちを見つけ次第撃ちまくるつもりだ。だから、煙幕が晴れると同時に俺が上昇して囮になる。ハマーンは射線が上に集中した機会を狙って、ファンネルと装備の武器で攻撃してくれ。全滅は狙わなくて良いし、マスドライバーのことも考えなくて良い。上空のMAを倒したら、俺はあのでかいのを狙う」

 あのでかいの。恐らく、ジオングに似た武器を使うアインスとか言うMA。乗っている人間から受ける感覚が気に入らない。何か、嫌な目的のために使っていることが解る。それに、自分に向けられた心配の念を無視しているところも気に食わない。誰かが思ってくれていることは、とても幸せなことなのに。

「了解。無茶はしないで。あのMAのパイロットは気に食わない。けど、かなり強いということだけはわかる。多分、サイコミュの扱いは私と同じぐらい……一年戦争のときのシャアよりも上手いはず」

「解っている。乗っている人間がどんな奴かも知っている。……大型メガ粒子砲の直撃を喰らわない限りは大丈夫のはずだ」

 そういう事を言っているんじゃないんだけど。トール、サイコミュの扱いが私より上手いって言うことは、接近したときにサイトロンが混線する可能性があるって言うことだよ?そうなったらキットの補助しかなくなるわけだから、危ないって意味なんだけど。それから、乗っている人間が知っている人間だからって、戦場で下手に情けなんてかけるのは……

「……解っているよ、ハマーン。アクシズを切ったときからある程度予想はしていた」

 ふう、其処まで考えているなら良いんだけど。でも、トールは結構こちらの考えを無視して無茶してくれる。油断は禁物だ。このひとは、他人がかかわらない限り自分の安全については二の次にしてしまう。システムのおかげで死んでも生き返るらしいけど、それを見る気は私には無い。

「本当にそう思えるなら良いのだけど。思っている方からすると、私みたいに心を読めないと浮気を疑うわ」

「……やっぱり誤解されるよなぁ、普通」

「私は誤解していないから大丈夫。セニアたちのことは知らない」

 困り果てる思考を送ってくるトールをほほえましく感じた私は、接触回線を開いている左手をつないだまま、トールのヴァイサーガをゆっくりと上に押しやる。せっかく、トールと一緒にこうして戦えるのだ。見栄の一つも張ってみたい。ゴメンナサイ、ジオン軍。私はあなたたちに恨みは無いけれど、ザビ家は嫌いだし、そのザビ家のために戦うあなたたちは好きにはなれない。

 でも、思い返すとこの人たちも本当にザビ家のために戦っているのかしら。ただ、自分たちの戦う理由になるだけで、ザビ家万歳を言っているような気がしてならない。地球に暮らしている人たちの安楽さを見ると心に恨みが生ずるけれど、それをそのまま言ったのでは体裁が悪いから、理想を掲げて戦争をしている、恐らくそんなところだろう。

 そして、その体裁の悪さを隠すために、別な私は犠牲になった。別な父と別な姉、別な妹は犠牲になった。恐らく、戦争の最初の目的はどこかに行ってしまったのだろう。戦いそのものが目的になってしまったんだろう。

 トールの悲しみが伝わってくる。けれど、私はこの感情を捨てる気にはなれない。この人たちは、象徴がいる限り戦う。恐らく、象徴がなくなっても戦う。ただただ、自分の不満をごまかしたいが為に。そんなことの為に戦い、人を犠牲にする事をいとわない。だったら。

「ジオンは嫌い。ザビ家も嫌い。そんな奴らに仲間するのも嫌い。……ジオンは、嫌いだ」

 背面両側の、文字通りのウィング・バインダーに格納された左右6基、合計12基のファンネルを一斉に起動する。上にいるヴァイサーガに手を伸ばし、周囲にファンネルという名の羽を散らすその姿は、地上に手づから舞い降りた、天使のように見えてくれることだろう。そんなことは如何でも良い。でも、ジオンを嫌う気持ちはそのまま、ジオンに属するものたちを追い詰めてくれるだろう。私の、このファンネルで。

「行け、ファンネル」



 第64話





「天使!?」

「羽をつけたMS!?」

「踊っている……天使と踊っているだと!?」

 煙幕が晴れた瞬間、2機のMSが、そして続いて3機のMSが撃破されたと同時に、攻撃を受けた背後を振り返ったジオン軍残党は、そこに天使の姿をしたMSと手をつなぎ、今まさに上昇をかけようとしている、マントを羽織ったゲシュペンストの改造機らしきMSを見た。まるで、バレエの一場面を見ているかのよう。

 しかし、目の前で踊っているのはダンサーではなくMSだ。パイロットの中には人間そっくりの、いや人間以上のバランス感覚で運用される2機のMSを見た瞬間に、自分たちの使っているMSとの技術格差に思い至り、即座に手に持ったマシンガンを向けるザクがいた。しかし、直後に撃墜。天使の羽らしき物体が宙に浮かんでおり、その羽の根元からビーム光が出たのだ。

「……なんだあの装備は!?」

 いち早く正気を取り戻したエリクは自分のゲルググをすぐさま手近な施設の影に入れる。羽の羽毛の部分から、見慣れた推進剤の炎をきらめかせながら動き始めた羽は、根元の部分からビームを次々に放ち、円陣を組んで固まっていたMS部隊を撃破する。ビームの出力はそれほどでもないらしく、直撃した部分は融解にとどまっているものの、如何せん数が多い。

 4本のビームをあらゆる方向から浴びたリック・ドムが、融解部分がジェネレーターに達したらしく爆発する。ランドセルを直撃されたザクが爆発に吹き飛ばされ、腕にビームを受けたリック・ドムが武器を失う。何だこの兵器は?ミノフスキー粒子の散布下においては、誘導兵器の類が使用不可能になっているのは常識だ。

 しかし、今現在エリクの目の前で行われている行為は、その常識を吹き飛ばすものだ。そして気付く。ああ、そうか。アレはイカルガ中尉の使用している武器の発展形なのだ。有線通信も、有線の中を走る電磁波がミノフスキー粒子の影響を受けている以上、有線であるために影響が少なくなるとはいえ通信障害が発生する。だから、サイコミュとか言う、ミノフスキー粒子の影響を受けない電波を発生させる機械を搭載していると聞いた。

 アクシズの技術士官から解説を受けた事を思い出す。そしてゆくゆくは、ミノフスキー粒子によってこの世界から消えてしまった、無線誘導兵器の再登場……やられた!連邦か月の部隊かは知らないが、奴らもサイコミュを開発していたのだ!

 そんな事をエリクが思っている間に、羽の形をした武器は戦場を乱舞して次々にMSを撃破していく。更に、上空から降下してきたヒゲがついた男性型MSが、下の方でマスドライバーのレールを壊し始めた。イカルガ中尉のアインスが砲撃を開始するが、命中もしなければ敵機の回避に追いつかない。それに、運良く命中したビームも装甲にはじかれてしまった。

「この部隊はなんなんだ!」

 エリクは叫ぶと、生き残っていたらしいインビジブル・ナイツを率いて―――総計28機を数えた部隊も、気付けば既に10機ほどだった―――加速器式のマスドライバーを背に防衛線を再構築する。対空迎撃―――隕石撃墜用の大型メガ粒子砲に俯角をかけさせ、狙える範囲に敵MSが入った瞬間に撃たせるように基地の兵士に伝えると、側面からの攻撃を行うべく、1機のゲルググ―――をつれて塹壕代わりに使用したクレーター丘の背後から右側面に回り込もうと試みる。

 そこに、上空から何かが落ちてきた。轟音と共にクレーターの尾根部分に激突し、機体を構成していたらしい部品をばらばらに撒き散らしながら谷底へ。長い首らしき部品。側面部を構成していたらしい装甲板。小規模な爆発を次々と、機体中に刻まれた斬られた痕から噴出し、更に内部部品を飛散させながら、グロムリンが谷底に落ちる。

「まだ、10分も……!?」

 エリクのゲルググの前に、天使のMSが立ちふさがった。いつの間に、と思って味方を確認すると、今しがた最後に残ったMSが破壊されていた。見忘れもしない、あの剣を構えたMS。トール・ガラハウ少将の仇の機体に良く似た、二本の剣を振るうMS。一本は普通のヒートブレードらしいが、もう一本は……なんだ?クリスタル?長さが……

「連邦軍の……ナハト系の機体なのか?」

「いいえ、違うわ」

 混線した通信回線に、目の前のMSから女性の声が響く。暗く、冷たく響くその声はまた同時に幼く、か弱く、儚げでMS戦という雰囲気にふさわしくないことこの上ない。実際に幼いのだろう。士官学校に進む事をタチアナが決めた日、その思い出の声に近い。乗っているのは少女、か!?

「連邦でもジオンでもない。あなたたちが、嫌いなだけよ」 

「誰だか知らないが、ジオンの理想の邪魔はしないでもらおう!」

 エリクはゲルググのナギナタを接近させて振るうが、相手は見透かしていたのだろう。すぐに距離をとるとビームサーベルを抜いた。しかも恐ろしいことに、その近接戦の動作を取っている間にも羽が動き、周囲のMSに攻撃を浴びせている。

「理想。便利な言葉。その言葉にもう意味は無いのに。スペースノイドが独立した今、あなたたちは何のために戦っているの?」

「私は戦っている!地球から宇宙を見捨てた人々に剣を振るう!見捨てられた宇宙に咲く、ジオンの理想を掲げるために!」

 味方への攻撃をやめさせるためには、この機体を撃墜するしかない。中に乗っているだろう少女を殺すのは忍びないが、仕方ない。そう決めたエリクは距離をとられないために接近を繰り返すが、そのたびに距離をとられてしまう。どうやら、彼女もサーベルこそ抜いたものの、周囲のMS隊に気を回しているため、積極的な攻撃までは気が回らないようだ。

「サイコミュを使えると言うことは君もニュータイプだろう!?何故ジオンの、スペースノイドの為に戦わない!?今のスペースノイドのおかれた状況は連邦の欺瞞だ!月とサイド1を申し訳程度に独立させて、戦争の損失を全てサイド3に被せる!それが連邦のやり口だ!」

「8億人殺されたにしてはずいぶん軽い処置。それに大量破壊兵器の投入を図った側には言えない。それに、ジオンは戦争に負けたの。敗者は勝者のいう事を聞くのが戦争の約束でしょう?あなたたちだって、連邦が負ければ立場が逆転していて、しかもその立場を肯定していたはず。いまさら往生際が悪い」

 痛い所を突かれる。言われた内容はエリク自身が疑問に思っていたことだ。ア・バオア・クーでの降伏。そのときに見上げた、月の後ろに見える地球。降伏を知らされた時に、"負けた"と感じることが出来なかったのが自分がここで戦っている一番の原因だ。

 そして、見てしまったのだ。戦争を全く知らなかったサイド3を。戦争前と、変わらないままのサイド3を。

 一年戦争が開始されてから、一度も戦場となる事無くレビル将軍の進駐を受けたサイド3は、第一連合艦隊が紀律厳正であったこと、首都防衛大隊や、本国師団の降伏と治安維持部隊としての承認故に、戦争を実感することも無く敗戦を迎えた。サイド3住民の知る"戦争"とは、プロパガンダ放送の流す景気の良い戦勝宣伝だけ。

 しかも、食料及び衣類の不足が無く(農業プラントで自給可能)、太陽電池による生活電力の供給と言う、スペースコロニー特有の生活環境は彼らに生活面でも負担を強いることが無かった。戦争の負けを実感させたのは唯一、クリスマスに行われた首都防衛大隊のクーデターぐらいなもの。それすら、1バンチのズム・シティだけで終わってしまった。

 そして彼らは敗戦を知り、敗残兵を迎え、戦後の賠償・難民問題に直面する。それがどういう結果を生むかは明らかだ。0080年のサイド3では、帰還兵は労働力以外では厄介者の負け犬としか映らなかった。特にそれは前線でMSパイロットとして奮戦した、港湾・建設労働者に対して強かった。

 戦争が始まる前に港湾での荷揚げ、宇宙空間での建設作業にワーカーを用いていた経験がモビルスーツの操縦に生かされたことで、戦争中は主力の花形に押し上げられ惜しみない賞賛を受けた彼らは、敗戦後には敗戦の総責任者の位置を押し付けられた。息子娘の責任を取りサイド3の被害を抑えるべく一身をささげたデギン公王は勿論批判対象ですらなく、槍玉に挙げられるべき残ったザビ家、キシリアは処刑された。

 サイド3の住民には、年が変わると共に押し付けられた負債と屈辱から生まれる憤懣をぶつける対象が必要だった。軍人とMSパイロットは、身近にいるそうした対象として好適だった。そして艦艇乗組員がそれに続かされた。誰もが、誇りある独立の勇士から、厄介者の敗残兵に零落れたことに我慢がならなかった。

 そして彼らは"残党軍"となった。

「私は……ジオンの理想を!」

「……そう」

 幼いその声に恐怖を感じたエリクは、サイド3で手荒い歓迎を受ける友軍を見たあのときを思い出す。帰還兵の、うつむいた敗北感あふれる行列に投げ込まれる卵、トマト……いや、それどころか生ゴミに消火器、果ては唾や汚物。連邦軍の兵士が間に入り取り押さえるが、住民の憤懣は収まらない。

 あんな扱いを受けるために我々は戦ったんじゃない。独立。独立のためだ。

 少年らしい理想は敗北と憤懣の前に消え、解決しようの無い虚無だけが残る。そして戦いの中でそれに視線を向ける事を忘れ、"星の屑"と"水天の涙"という大作戦を前に一年戦争の自分を取り戻し、"理想"を取り戻しかけたそのとき。この天使のようなモビルスーツは、それを私から奪っていった。少女らしい、直接的な問で以て。

 気がつくと、体が振るえていた。呼吸も荒く、喉が異様に乾き、目の奥に痛みを感じる。何か、全てを覗かれているような気分。思い出したくない事を思い出したのは、この"プレッシャー"のせいか、と目の前のモビルスーツを見返す。天使のようなその姿と、天使が告げるものである"死"を重ねさせたとき、言い様の無い恐怖がエリクを襲った。

 見栄も外聞も捨てて機体を翻すと、他の小隊と戦いながらアインスのほうへ向かっている、あの仇―――トール・ガラハウ少将を討ったMSに似た機体に向けてゲルググの小隊を動かす。恐怖、いやプレッシャーか?そんな考えが頭の隅をよぎるが今は関係が無かった。この恐ろしさから、ガラハウ少将の仇を討つ事を言い訳に逃げる方が先だった。後ろで何が起こっているかは、振り返りたくなかった。

 興味をなくしたらしい天使は、仇に似たMSが攻撃を仕掛けている巨大MA―――アインス・アールへ向けて翼を振る。頭上を飛び去る敵機を見つめるエリクの表情には、恐怖と畏怖、屈辱と自戒が、そしてそれよりも強い、渇望に似た真情が表れていた。



 円陣の中心でアンジュルグがファンネルの全基使用によるオールレンジ攻撃をしていた最中。アンジュルグと交代してグロムリンに対峙したトールのヴァイサーガは、サイトロンとサイコミュの併用による感覚と反応性の強化でメガ粒子砲の砲撃を難なく避けていた。しかし攻撃はしていない。

「サイトロンの運用は順調。NT用の機体でも、NTが乗っていない限りは混線の可能性は大丈夫のようです。追従性もコンマ0.01内に収まっています。人体と変わらず動かせるようです」

 キットの声がコクピット内部に響く。モーショントレースシステムの調子は良い。確かに動きに支障は無いようだ。

「やっぱり鍵は乗り手か」

 そういいながら操縦桿を使わずにメガ粒子砲を回避させ、アステロイドベルトの間を縫うように動かす。感覚の補助をキットに頼んでいるが、操縦桿を使わずにサイトロン及びサイコミュのみの操縦だ。勿論、途中途中でサイトロンのみ、サイコミュのみに切り替えている。

 幾つか実験してみた結果、反応速度と追従性の劇的な向上が出来るものの、NT相手では混線してしまう可能性が高いサイトロン、反応速度と追従性が慣れるに従って向上するが、感覚が掴み難い上に反動が凄まじいサイコミュとそれぞれに一長一短があることがわかった。キットの補助があれば両システム共にかなり使えるレベルまで伸びるが、サイトロンを使った場合は相手の能力による様子だ。NT以外には基本無敵、と。しかし、だからといって東方先生に勝てるとは絶対に思えないのだが……。

「こうなったら!」

 混線したらしい通信回線から、グロムリンに乗ったアンリ博士の声が聞こえる。こちらの簡単な排除が出来ないと悟るや、彼本来の目的であるグラナダ市への攻撃に切り替えるつもりになったようだ。周囲を確認し、ハマーンがMS隊と、アクセルがMAと戦闘に入っている事を確認し、位置関係から自分の行動を決める。

 ヴァイサーガが反応だけではなく姿そのものを消したと思った次の瞬間、緑色の光と共にグロムリンの目前に現れた。

「行かせない」

「バカな!?」

 いきなり目の前に現れたヴァイサーガに驚くグロムリン。オルゴン・クラウドの方も順調、と。トールはもっとも確認したかった装備が問題なく動作したことで安堵のため息を洩らす。これが動くなら、こちらも大丈夫だろう。

 ヴァイサーガが二本の剣を抜く。右腕はア・バオア・クーでも使用した五大剣。今回は問題なく、五つの動作モードが稼動するようになっている。そしてもう片方はオルゴンソード。ライフル兼用で用いることも出来る。しかし、双方共にアンリ博士の目には実体剣としか見えていないはずだ。片方が通常通りのヒートブレードで、もう片方が新素材の、というぐらいだろう。

 そしてそう判断した彼らしく、こちらが追撃のための武装を持っていないと思って逃走に入った。しかし、こちらには遠距離にも届く武装が充分にある。

「オルゴンソード、イメージ開始……連接剣」

 叫ぶと同時に左手のオルゴンソードを振るう。イメージは連接剣。刃はV字型に分かれ、それぞれのパーツを鎖がつないでいる。そして刃の後ろに仕込まれた小型アポジモーターで敵機の追撃が可能なタイプ。自分の考え、想像したとおりの武器を左腕に持っているイメージ。よし、重なった!

 イメージが完成した瞬間、振るわれてグロムリンに向けられていたグリーンのクリスタル状の刃が次々に分かれ、間に同じグリーンの鎖でつながれながら、"元の長さを逸脱して"グロムリンに迫る。同時にスラスターを吹かしてグロムリンへ接近を開始する。連接剣はまるで生き物のように蠢くとグロムリンを絡めとり、雁字搦めに縛りとる。

「本職のパイロットでないこと、グラナダに気を取られていてよかった」

「なんだと!?」

 通信が混線したらしく、発言が聞こえたらしいアンリ博士の驚いた声が聞こえてきた。この世界では博士が先に死ぬ、か。シン・フェデラルの目はあるのだろうか。いや、そんな事を考えている暇は無い。

「オルゴンソード、連接剣・マインモード」

 もう一度先ほどと同じ。今度は連接剣の各部分が吸着地雷に変わったイメージ。こちらの方はケンプファーのイメージがあるからやりやすい。炸薬の化学式をイメージし、そのイメージで剣の中を満たす。そして、起爆。グロムリンを包み込むように連続した閃光と爆発が生じ、機体をばらばらに砕いてゆく。手元のパーツまで爆発しそうになり、あわててイメージを元通りに。

 よし。これでまず一機。

 同時にハマーンから暗い情念を感じ取る。そして対するエリク少佐のものらしいゲルググから恐怖を。ハマーンめ、プレッシャーを使ったな。能力に慣れてゆくにつれて、あのグリプスで見た、冷たいハマーンに変わっていく感じを受けて仕方が無い。考え付く解決法が、シャアと同じような方法しか見出せないのがもどかしく、また苦しくもあった。


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 この戦闘はまだオードブル程度なのに……終わらない。


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