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No.22507の一覧
[0] 機動戦士がんだむちーと【多重クロス】[Graf](2014/07/27 19:00)
[1] 第02話[Graf](2010/11/08 12:16)
[2] 第03話[Graf](2010/10/18 06:59)
[3] 第04話[Graf](2010/11/08 12:16)
[4] 第05話[Graf](2010/11/21 08:24)
[5] 第06話[Graf](2010/10/21 09:52)
[6] 第07話[Graf](2010/10/23 23:30)
[7] 第08話[Graf](2010/11/08 12:17)
[8] 第09話[Graf](2010/10/23 08:33)
[9] 第10話[Graf](2010/10/23 17:06)
[10] 設定集など(00-10話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[11] 第11話[Graf](2010/10/27 05:15)
[12] 第12話[R15?][Graf](2010/10/27 05:16)
[13] 第13話[Graf](2010/10/25 21:22)
[14] 第14話[ネタ][Graf](2010/11/08 12:17)
[15] 第15話[Graf](2010/11/08 12:17)
[16] 第16話[Graf](2010/10/30 21:19)
[17] 第17話[Graf](2010/10/30 15:05)
[18] 第18話[R15][Graf](2010/10/30 21:24)
[19] 第19話[Graf](2010/10/30 21:21)
[20] 第20話[Graf](2010/10/31 14:30)
[21] 設定集など(11-20話まで)[Graf](2010/11/06 11:04)
[22] 第21話[Graf](2010/10/31 14:31)
[23] 第22話[R15][Graf](2010/11/12 11:21)
[24] 第23話[Graf](2010/11/12 11:21)
[25] 第24話[R15?][Graf](2010/11/08 12:18)
[26] 第25話[Graf](2010/11/02 16:55)
[27] 第26話[Graf](2010/11/06 10:59)
[28] 第27話[Graf](2010/11/08 12:18)
[29] 第28話[Graf](2010/11/06 11:01)
[30] 第29話[R15?][Graf](2010/11/03 12:00)
[31] 第30話[Graf](2010/11/08 12:19)
[32] 設定集など(21-30話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[33] 第31話[Graf](2010/11/06 11:08)
[34] 第32話[Graf](2010/11/06 21:39)
[35] 第33話[Graf](2010/11/07 16:59)
[36] 第34話[Graf](2010/11/08 02:01)
[37] 第35話[Graf](2010/11/09 05:33)
[38] 第36話[Graf](2010/11/09 05:32)
[39] 第37話(R15 一年戦争終了)[Graf](2010/11/10 21:11)
[40] 設定集など(31-37話まで)[Graf](2014/07/27 07:34)
[41] 第38話(R15 戦間期前半)[Graf](2010/11/12 11:25)
[42] 第39話(R15)[Graf](2010/11/11 10:20)
[43] 第40話[Graf](2010/11/11 23:02)
[44] 第41話[Graf](2010/11/12 11:41)
[45] 第42話[Graf](2010/11/15 04:51)
[46] 第43話[Graf](2010/11/14 12:40)
[47] 第44話[Graf](2010/11/15 04:52)
[48] 第45話[Graf](2014/07/29 19:39)
[49] 第46話[Graf](2010/11/15 04:53)
[50] 第47話[Graf](2010/11/14 12:44)
[51] 第48話[Graf](2010/11/15 21:23)
[52] 第49話[Graf](2010/11/17 12:03)
[53] 第50話[Graf](2014/07/29 19:39)
[54] 設定集など(38-50話まで)[Graf](2014/07/27 07:35)
[55] 第51話[Graf](2010/11/20 12:13)
[56] 第52話[Graf](2010/11/19 21:13)
[57] 第53話[Graf](2010/11/20 12:18)
[58] 第54話[Graf](2010/11/20 18:20)
[59] 第55話[Graf](2010/11/23 16:11)
[60] 第56話[Graf](2014/07/29 19:39)
[61] 第57話[Graf](2010/11/23 16:12)
[62] 第58話[Graf](2010/11/25 23:37)
[63] 第59話[Graf](2010/11/27 14:09)
[64] 第60話[Graf](2010/12/02 03:42)
[65] 第61話[Graf](2010/12/05 19:08)
[66] 第62話[Graf](2010/12/05 20:11)
[67] 第63話[Graf](2010/12/09 23:45)
[68] 第64話[Graf](2010/12/20 04:54)
[69] 第65話[Graf](2010/12/20 06:47)
[70] 第66話[Graf](2011/02/09 20:31)
[71] 第67話[Graf](2011/02/24 22:50)
[87] 第68話[Graf](2014/07/27 03:12)
[88] 第69話[Graf](2014/07/27 07:31)
[89] 第70話[Graf](2014/07/27 07:31)
[90] 第71話[Graf](2014/07/27 07:32)
[91] 第72話[Graf](2014/07/27 07:32)
[92] 第73話[Graf](2014/07/27 07:33)
[93] 第74話[Graf](2014/07/27 18:50)
[94] 第75話[Graf](2014/07/27 18:51)
[95] 第76話[Graf](2014/07/27 18:52)
[96] 第77話[Graf](2014/07/29 19:40)
[97] 第78話[Graf](2014/07/29 19:40)
[98] 第79話[Graf](2014/07/27 18:53)
[99] 第80話[Graf](2014/07/27 19:00)
[100] 設定集(51-80話)[Graf](2014/07/27 07:36)
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[22507] 第62話
Name: Graf◆36dfa97e ID:00f883d5 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/05 20:11


 攻撃が始まったのは、加速器型マスドライバー施設を収めた谷の上に三機のMAが鎮座し、その周囲をMS隊が固め、上空に機雷を散布していたときだった。時間にして11月11日、午後7時11分(落着まで1763分)。攻撃に対しての最初の対応は、Iフィールダーの展開だった。またMS隊は即座に谷の入り口から攻撃を仕掛けてきた敵部隊に反撃を開始する。MS隊の指揮を執るのはインビジブル・ナイツのエリク・ブランケ少佐だった。

「レールを傷つけないように、絶対に谷の入り口から中に入れるな!」

 通信機に向かって怒鳴りながら、ビームライフルをジム顔の黒ウサギに向けて放つ。機体から見て、コンペイトウからの連邦軍ではなく、月の駐留部隊か。やはり、こちらの情報が何処からか漏れている可能性がある。インビジブル・ナイツの現在位置は谷の入り口から2キロの地点。Iフィールダーの効果範囲外だ。フィールダーを維持している三機のMAは基本、加速器型、レール型の本体部分の防備が担当のため、動かない。勿論、必要と状況が許せば、支援砲撃として二機のビグ・ザムの大型メガ粒子砲が放たれる。

 敵が連邦軍に属する部隊では高性能機ばかりで揃えられている事が有名な月第一艦隊の所属機であることは承知済み故に、こういう防衛方法を選択せざるを得なかった。これが連邦軍の通常編成部隊―――ジム、及びボールの混成部隊であれば、エリクは迷う事無く出戦撃滅を選択しただろう。

 高機動型ゲルググのコクピットから、機体を振り向かせて後方を見ると、谷全体に薄靄がかかったように見える。Iフィールダーを構成するミノフスキー粒子が電磁波――光を屈折させることで、陽炎や靄に近い現象を起こしているのだ。そして直撃するビームや砲弾はフィールドに当ると同時に爆発するか、霧散した。Iフィールダーはミノフスキー粒子を媒介にして、強めの電磁波を一定範囲内に流すことでフィールドを形成している。炸薬量の多い砲弾、及びビーム関係は上述した運命をたどる他は無い。

「良い具合だ」

 エリクはゲルググのビームライフルを不用意に入り込んだ一機に向けて放つ。流石に一年戦争より三年、しかも"あの男"の支配する月の部隊だけあってジム装備の部隊とは段違いに機動性が良いが、ここが入り組んだ谷である事を忘れていたようだ。思うように動きがとれず、続けざまにはなった二発のビームライフルを受けてしまう。そしてその結果にエリクは驚いた。

 二発。ジム程度なら簡単に撃墜できるその攻撃は、黒ウサギ―――ゲシュペンストの装甲には、部位の破損程度に抑えられてしまったからだ。直撃だけあって命中した頭部、及び左脚大腿部を吹き飛ばされているが、それが誘爆につながるジムとは違い、つながらない。メインカメラを失っての混乱と、脚部を失ったことによる擱座だけにとどまっている。それだけではない。操縦者は何とか機体を立て直し、即座の後退を図ろうとしている。練度も高く、判断も良い。

 パイロットはともかく、この機体が連邦軍の全部隊に量産されたら、ジオンにとっては恐ろしいことになる。

 そう判断したエリクは、被弾データを敵が知れないよう、即座の撃墜を決断して一気にバーニアを吹かして近寄ると、コクピットブロックにビームナギナタを刺し込んだ。やはり、通常のジムとは違ってビームが装甲を貫通してコクピットに入るまでの時間が長い。その時間はジムに比べて3秒ほど長いが、実戦での三秒の意味を知っているエリクはそこに恐怖を感じた。

 装甲材質は恐らくジムと同じルナ・チタニウム製だろうが、ビームがそこに押し入るまでにこれほど時間がかかると言うことは、これを装備する部隊の兵器の出力も、それにあわせて強化してあるということだ。超硬スチール合金製のゲルググは勿論、他のジオン製機体でも、被弾が即座の撃墜につながるということをエリクは再確認する。

 噛みあっての食い合い―――ドッグ・ファイトや中近距離戦は危険だ。こちらの損害もバカにならない。判断が行動につながり、エリクはアインス小隊への通信回線を開いた。

「前衛のビグ・ザムに支援砲撃を要請してくれ!」

 支援要請を受け取ったアンディ、リカルド両少尉のビグ・ザムが主砲の大型メガ粒子砲の射撃準備に入ると、上空からボールとジムの混成部隊が攻撃を仕掛けてきた。どうやら、グラナダの防衛隊が手を出してきたようだ。上空からのボールの砲撃に眉をしかめるが、閃光と共に爆発の連続と共に砲撃が止んだ。推進剤に引火したらしい水色の爆発が宇宙に花を咲かせている。まるで、アジサイの花が開いたようだ。

「アレがビグ・ザムの発展形か」

「あまり気持ちの良い形じゃないな」

 アンディ、リカルド両少尉のビグ・ザムの通信が混線する。それに続いたエリクの視線の先には、巻尺のような形態になったグロムリンが飛行している姿がある。どうやら、両側のヴァルアブル・メガ粒子砲で一気になぎ払ったらしい。グロムリンがそのまま方向転換し、続くジム隊と出撃もとのサラミスへ迎撃に向かった事を確認したエリクは、ビグ・ザムに谷の入り口で防戦を続けるMS隊の援護を再開させた。流石のゲシュペンストもビグ・ザムのメガ粒子砲の直撃は至近距離でもダメージを受け、爆散―――違う、クソ、あの機体は近距離でも装甲が融解するにとどまっている。

 しかし、流石の大威力に恐れをなしたのか、地形を使って徐々に後退を始めるゲシュペンスト隊。後方から長距離狙撃用のビームキャノンを使ってきているがIフィールダー相手に効果はない。このフィールド範囲内で使える武器はマシンガン程度。バズーカの弾ですら、発射した瞬間に誘爆する。また一発、直撃して霧散した。

 エリク率いる部隊の装備はザク、リック・ドム共にマシンガン。谷の入り口で防戦しているゲルググだけがビームライフル装備。敵が後退した場合は、フィールド効果範囲外に埋設してあるジャイアント・バズなどの装備を用いるようにしている。

 装備と機体の差をMAによる大火力の投入で凌ぎきる、それがこの作戦の肝だ。エリクは上空を舞い、グラナダ防衛隊らしきジムとボール、サラミスの相手をしているグロムリンの動きを再度確認した。動けないビグ・ザムは、一定範囲しか砲撃の制圧下に置けない。やはり、上空からのグロムリンの支援が必要になる。

 北の方角からアステロイドが密集して流れてくる。ああ、あのままではアステロイドに進路をふさがれながらグロムリンを回避することになる。防衛隊の船はどうにもならないな、と確認すると意識から上を排除した。恐れるのはボールだけだが、それももはや必要ない。また一機、ゲシュペンストを撃墜する。

 大型メガ粒子砲の第二射。更に1機のゲシュペンストが撃墜された。やれる。新型も地の利を生かして布陣したこちらに手が出せない。マシンガン程度でビグ・ザムに傷などつけられはしない。近づいてのビームサーベルもフィールドに邪魔をされる。ビーム砲関係など論外。ボールかガンタンクを十門単位で、しかも徹甲弾装備で投入してやっと如何にかなるぐらい。

 まぁ、連邦軍の最大口径、240mm砲程度ではどうにもならんのだが。爆発と閃光。エリクはまた一機、ゲシュペンストを撃墜した。




 第62話




 こちらとあちらでは装備の相性が最悪ね、とヤヨイ・イカルガは思っていた。先ほどからやっていることはフィールドの維持に、グロムリンの対空防御を幸運にもすり抜けてきた―――すりぬけた後が幸運かどうかは別問題だが―――ジムやボールを有線ビーム砲で迎撃するぐらいで、アインスが出る必要などない。前面の敵新型MS部隊―――ゲシュペンストとか言う、ガンダムに匹敵する機体らしい―――も、ビグ・ザムで如何にかなってしまうため手持ち無沙汰だ。上空のサラミスが降下を始めたときには出番が来たかと思ったが、有線ビーム砲を使う前にグロムリンが出て行った。

 ため息を吐く。そこに、上空のアステロイドベルトを使って接近したらしいジムの小隊が目に入った。喜びに目を輝かせて機体を操作するヤヨイ。有線ビーム砲が4つ、同時に起動すると触手でも伸ばすかのようにアステロイドベルトに伸びていった。標準装備らしいビームスプレーガンではIフィールダーどころか、アインスのフィールドにも効き目が無いことがわかっているから、無駄な回避はしない。

 そもそも、Iフィールダーは拠点防御用の兵器で、移動などは考えていない。そのためビーム兵器に対する防御と共に実弾兵器に対する防御も考えられており、フィールド内に流す電流・電磁波を使って炸薬を誘爆させることを考え付いた。炸薬が弾頭の大部分を占める、バズーカ・シュツルムファウスト、グレネードはこれで使用を封じることが出来る。

 そして、MS用マシンガンでは意味が無い。唯一、この布陣を破れる兵器を、彼らは持っていないのだ。

 ビーム兵器が全く通用しないことを確認してから出撃してきた機体らしく、ビームスプレーガンではなくマシンガンを装備しているジムを、次々とビーム光に捉えて撃墜しながらヤヨイは笑った。リカルド少尉はこの笑いが気に入らないらしく、笑う度にそういうことはしてくれるな、と通信を入れてくるが知ったことではない。アクシズでこの機体を与えられたからこそ、私は今、中尉としてここにいる。

 ヤヨイの考えどおり、この布陣を打ち破るためには、炸薬の反応しない兵器、所謂"冷兵器"が必要になる。MS隊がかなりの広範囲に展開しているから、遠距離からの砲撃など基本無理だ。初速を保ったままでないとビグ・ザムの装甲は抜けないから、連邦軍の240mm砲では展開範囲内に強行突入するしかない。

「まぁ、それもMS隊のエリクさんや、私やアンリさんが撃墜しちゃうけどね」

 上空からの侵入を図るボールにはアンリ博士のグロムリンが、地表からの接近を図るガンタンクがいるのなら、エリク少佐のMS隊が。どちらも、この地形の入り組んだ谷では、射撃ポイントは限られる。私たちは其処の近くに罠を仕掛けて置けばよいだけ。ほら、また一機の狙撃用ライフルを持ったらしいゲシュペンストが、射撃ポイントに設置されていた地雷にやられた。あ、やっぱりガンダム云々言われるだけあって硬い。マニピュレーターを失っただけだ。

 あの機体の硬さだけは褒めても良いけど、やっぱり撃墜されない敵機はムカツク。そう思ったヤヨイが有線ビーム砲を一基、その機体に向けて意識を伸ばす。ヤヨイの意識そのままに有線ビーム砲が蠢き、そのコードを触手の様にゲシュペンストに近づける。しかしビームを撃つ直前、その動きが止まった。

 頭の隅にちかり、と走る何かがある。別に気にする必要は無い。上空のジムに向けた有線ビーム砲によってまた一機、沈んだだけだ。……なんだ、これ?何かいやなものが近づいてくる?え?二つ……三つ?地上からも、上からも感じる?

「アンディ少尉、リカルド少尉!何か来る!?嫌なものが、……5つ!」

「解るのか!?」

「ヤヨイ、無理はするな!」

 その叫びと共に三機の立つ谷の尾根から谷の中にかけて、連続した着弾が生じた。え?ミサイル?炸薬が入っているタイプなら、フィールドに触った瞬間に……煙幕!?

 ヤヨイが着弾した弾の中身に推測が付くと同時に、谷と山一帯に大規模な煙幕がたかれた。他に全体が煙幕に覆われ、その影響から免れているのは谷の一番上の尾根に鎮座するアインスと上空に展開するグロムリンだけだ。続いての着弾。こちらも煙幕。どうやら、フィールド内部に間断なく煙幕をたき続けるつもりらしい。

 何を考えているのやら、とヤヨイは笑わざるを得ない。煙幕を谷の中にたいても、ほら。ヤヨイのNT能力に煙幕と言う視覚を封じる装備は意味を成さない。勿論サイコミュの使用については敵味方の区別を明確にさせる必要があるが、ヤヨイの高いNT能力は、"硬そうな、いやなもの"という認識でゲシュペンストを追いかけられる。

 後退を続けるゲシュペンスト隊を追って、すぐさま煙幕の効果範囲からMS隊が出てくる。谷の中からは追い出されたが……ああ、敵のMS隊の後退支援だ。谷の入り口からも、平野が続いているわけではなく、丘陵などが続く地形だ。マシンガンを抱えたドムが、丘陵の影に隠してあったらしいジャイアント・バズを取り出して砲撃を始める。更に後退する敵機。どうやら、位置の関係から煙幕にビグ・ザムを入れることで、大型メガ粒子砲を防ぐつもりらしい。

 バカめ。

 アインス・アールの両腕から有線ビーム砲が延びる。後退して丘陵の陰に隠れる敵機を上から狙撃。ああ、もう。コードの外に逃げていった。まだそんなに遊んで……

 ヤヨイがそう思った瞬間。煙幕が吹き飛び、聞こえるはずの無い音が走った。

 ビグ・ザムの装甲が深くえぐられている。誰もが驚きに目をむいた。連邦軍の装備に、Iフィールダーを備えたビグ・ザムの装甲を打ち破れる装備は無いはずだ。事前に判明している、そして聞かされたはずの連邦軍の砲に、RTX-44型とか言う半MS型戦車の240mmを越える正面装備は無い。61式戦車でさえ155mmの二門。ガンタンクとボールは120mmで、MS用対物狙撃ライフルが135mm。これが連邦軍の主力砲のはずだ。

 大きく後退して、膝を突くアンディ少尉のビグ・ザム。左下、対空メガ粒子砲の下側がごっそり削られている。幸いにして脚との接続面は無事の、と思えた瞬間、今度は左足が吹き飛び、完全に擱座してしまう。まだジェネレーターが動いているためフィールドは維持されているが、動けない、そして大型メガ粒子砲一門がほとんど無力化された瞬間だった。

 目をむいたヤヨイは、フィールドを自動維持に固定して脱出するアンディ少尉を確認し、マスドライバー施設への退避を連絡すると周囲の探索をはじめた。煙幕が上手く視界の下側を隠しているが、私にとってそんなものは関係ない。目を皿のように見開き、意識を集中させて砲撃した何かを探す。……いた。

 しかしここからではメガ粒子砲、有線ビーム砲共に届かない。ヤヨイは通信回線を開くとエリク少佐に連絡を入れた。


「クソ!浅い!砲弾の軌道を修正!目標中破!APFSDS、次弾装填!目標、敵大型MA!」

 デメジエール・ソンネン少佐は自身が操る、Nシスターズ防衛軍所属モビル・タンク、YMT-07ヒルドルブⅡを操り、18km先で擱座したビグ・ザムを確認すると射撃ポイントの変更を開始した。せっかくのチャンスをもらったのに、これではまだ戦果が足りない。ジオン国内で戦場に出ることも無くくすぶっていた自分を引き立ててくれた人たちに、彼は強い恩義を感じている。戦車乗りとしての復活は、彼らの力あればこそだ。

 YMT-05ヒルドルブを改造し誕生したYMT-07、ヒルドルブⅡは、MS及び艦艇の配備数を削られたNシスターズ自衛軍が導入を計画している長距離支援用重MS-MTの試作機である。ザメル用の680mmキャノン砲を改造した、480mm長射程滑腔砲を用いた砲撃は、遠距離から艦艇や大型侵攻用MAを撃沈・撃墜するために装備されたものだ。

 YMT-05ヒルドルブから発展した長距離支援重MS、YMS-16Mザメルは、ヒルドルブで実証した大口径砲による砲撃を生かすために、特に固定目標への直接砲撃を目的に開発されたMSであるが、ジャブロー侵攻作戦が議論されていた時期ならばともかく、ジオン軍が後退を開始した0079年末になると、逆に固定目標しか砲撃が出来ない(命中が期待できない)ことが欠点となった。勿論、それが無くともこのような単機能用MSは、地上用に3機ほどしか開発されなかった。そのうち1機がトリントン基地攻撃に投入されたが、追撃にかかったバニング隊に近距離に入られて撃墜されている。

 固定目標しか攻撃できないことを問題視するのは既に一年戦争中から指摘されていたし、戦後にザメルを1機接収した月第一艦隊もわざわざ支援砲撃を行う機体に、MSという人型を用いる意義を見出さなかった。月第一艦隊から委託を受ける形で、後継の大口径砲による支援モジュールの開発を請け負ったNシスターズ、より正確に言うならテューディ・イクナートは、支援砲撃を行うなら、無理に人型にするよりは砲撃を行う際に最も適した形態、つまり車両型で充分と判断した。

 そのためのベッドとしてヒルドルブに戻されたのは当然のことだ。半人型への変形機構も、砲の位置を高めに設定する事を可能にするものであるし、塹壕からの砲撃を行う際に、地形を利用した砲撃を可能にさせるために導入された。勿論、砲撃に用いる主砲の口径が強化されたことによる反動を軽減するために、砲弾については反動を減少させる改良が行われ、車体にも打ち込み式のアンカーを装備して発射できるようになっている。

 主機をゲシュペンスト用の高出力ジェネレーターのサイズアップ製品に変更し出力を強化して搭載し、砲塔を構成する上半身はマニピュレーターを自衛射撃用のみとはせずに姿勢制御用としても用いることで運用性を高めている。これだけの強化を施したにもかかわらず、全備重量がヒルドルプよりも20t多い240tに抑えられている点は、流石天才にしてチート技術者テューディというべきだろう。

 但し、流石にこの重量から重力下の環境に投入しての運用は不可能となった。勿論、Nシスターズも地球侵攻作戦など立案するつもりもないし、立案せざるを得ないだろうグリプス戦役に際しても、こんなものをジャブローやキリマンジャロに向けて投入するつもりも無いためそこは無視している。しかし、月面という、基本的に平原が連続して続く環境。また、低重力による運用性の向上とを考えて、自衛用の対艦車輌として用いる分には問題が無いと判断された。

 また、少しながらも重力が存在する月面においては、曲射砲撃も可能になるという点も見過ごせない。480mm砲の最大射程は48kmに達し、ミノフスキー粒子の下での有視界最大射程はヒルドルブと変わらず20kmのままだが、地上からの対空、対艦用として用いる分には問題ない。それに量子通信システムに対応しての情報リンクによる砲撃も可能である。

 但し、やはり重量の問題が正式採用を阻んでいる。が、ここで天才技術者テューディは一言、

「テスラ・ドライブ使えるようになれば問題ないでしょう?アルトアイゼンなんてネタ機体を作れるんだから」

 と、テスラ・ドライブの本格運用後は問題もないし、また試作機で、しかも残骸が回収できる環境で運用するならば問題ないと斬って捨てた。確かに、重量の多さは重力そのものを軽減させてしまうテスラ・ドライブの使用が可能になれば問題はない。そもそもグリプス期に入ってミノフスキー・クラフトに関する技術躍進が一定段階に入れば、テスラ・ドライブも公開可能な技術に入る。

 そしてこのヒルドルブⅡは、テスラ・ドライブを車体の前後に一つずつ装備し、240tの自重をほぼ半分の110tまで軽減させた。このため、その巨体からは考えられないほどの高機動性までもつようになってしまった。勿論、射撃の際には自重そのものを使って反動を押さえ込む必要があるため、テスラ・ドライブを停止させる必要がある。

「この軽さは異常だが……しかし役には立つ!第二射、装填!……砲身が暖まりすぎてるか?目標も大きい……フィールド頼りで馬鹿でかい図体を見せた自分を恨め!第二射、APFSDS発射!」

 第一射で薄れた煙幕を更に吹き散らしながら放たれた二発目は、リカルドのビグ・ザムの左上部に命中し、弾かれた。命中角度が浅かったため、湾曲した装甲の上を滑って弾かれたのだ。しかし、480mm砲から放たれたAPFSDS、装弾筒付翼安定徹甲弾の衝撃は大きく後退するビグ・ザム。何とか尾根から落ちることは避けたが、巨体を維持する脚部に負担がかかっているのか、少し、火花が散り始めた。

「くそ!射角が浅い!砲身が暖まって上に反れた!」

 ソンネンはそう叫ぶと射撃ポイントの再変更に入る。こちらの位置がばれた場合、敵の大型メガ粒子砲の砲撃を受ける可能性がある。先ほどの様子を見ると、稜線の影に隠れても稜線ごと貫かれる可能性もある。いちいち変更が面倒だが仕方が無い。それに、アンカーを使わなくてもそれなりに射撃できることが確認できたのは良いデータになった。

 大型MAという、防御の要を撃墜されることはジオン側にとっても避けるべき事柄らしく、砲撃を確認すると同時に敵のMS隊からこちらに向けて突進してくる部隊が現れ始めた。合計7機。ゲルググとドムの混成部隊。ゲルググは地表すれすれをNoe飛行で向かってくるし、ドムはホバーを使って接近してくる。

 ゲルググでNoe飛行が出来るとは、かなりの手練だな。ソンネンはかつての祖国の残滓をそこに感じながら淡々と移動を続ける。このままでは次の射撃ポイントに入るまでに、右側面から来るドムとゲルググの混成部隊に接触する。

「目標!右側面MS部隊、弾種榴散、続いて榴弾、交互射撃!」

 言葉に続いて射撃。砲の仰角を取って近づいてくるMS隊の上に榴散弾を降らせる。固定砲台と規格をあわせる意味もあって480mmが選択されたため、通常榴弾や榴散弾、対空用の散弾や徹甲弾と弾薬の種類は豊富だ。装弾数78発の内、APFSDS弾12発、榴弾(HE)10発、榴散弾(SS)20発、通常型徹甲弾(AP)24、粘着榴弾と対空用散弾6発ずつを備えるだけあり、弾薬の心配もない。

「!もらった!弾種散弾に変更!交互二射!」

 移動しながらの連続射撃。走りながらの砲撃だから、装薬の量が比較的少なく設定されている砲弾しか打てないが、それこそが狙いだ。尾根の境目からこちらに近づくゲルググに向けて対空用の散弾を、榴散弾と交互に二発ずつ放つ。流石に少数でマスドライバー基地を占拠しよう等と考える精鋭だけあって反応が早い。ゲルググ5機の内、1機の片腕を吹き飛ばすが他の機体には散弾しか命中していない。当たり所がよければ動きを鈍らせられるが、期待することも出来ない。

 周囲、及び後方から光。ヒルドルプⅡの援護の為に配置されたゲシュペンスト小隊の支援だ。ありがたい。今のソンネンに一年戦争の際に持っていたMSへの対抗心は無い。兵器の活躍の場は運用する側のやり方次第である、と考えるNシスターズ自衛軍やトール、カーティス大佐の支援あってこそ、MS全盛の時代を迎えつつあるこの時に、自分がヒルドルブで戦えている事を再認識する。

「借りは返さなくっちゃなア」

 ソンネン少佐は手に持ったドロップ缶からハッカ飴を取り出し、口に放り込んだ。

「あと1機、ビグ・ザムをやらせてもらうぜ……」

 稜線の影からビグ・ザムの巨体の一部が見えた瞬間、車体を止めてアンカーを射出し車体を固定する。周囲にゲシュペンストが展開し、防護体勢を整える。反撃の糸口がヒルドルブⅡにしかない事を確認した他の部隊も、ヒルドルブⅡを中心にした布陣を構え、要撃に向かってくるゲルググと射撃戦を始めた。さっさと射撃して、もう一機は潰す!

「弾種AP!連続発射!」

 そう叫ぶとソンネンはAP弾を三発、連続で発射した。1発は外れたが、1発が脚をかすめ、もう1発が右側の対空メガ粒子砲を直撃した。二機目もらったか!?そう思った瞬間、車内にアラームが鳴り響く。砲身が熱膨張を起こしたのだ。このまま射撃すれば、最悪暴発の恐れがある。また、それを確認したらしい旗艦「トロイホース」からもナタル少佐の後退命令が耳を叩いた。

 無視する事を一瞬考えたが、同乗している恩義あるカーティス大佐を思い出し、断念する。砲弾が命中したビグ・ザムも姿勢を整えたが脚を掠めた砲弾で動けなくなったようだ。乗員が操縦を自動に切り替えたのだろう。脱出するのが見える。

「……戦えたことの証明で満足するしかないか、煙幕散布!」

 ゲシュペンスト隊に向けて、後方からの煙幕弾の連続発射を中継してもらう。巡航ミサイルに搭載された煙幕がマスドライバー施設とヒルドルブⅡの間を覆い隠すのを確認すると、ソンネンは後退を開始した。後退するヒルドルブの護衛に、ゲシュペンスト隊が即席の防衛線を形作る。やはりこの部隊の出来は凄まじい。ジオンに響いたガラハウ艦隊と連邦の新型部隊、ミューゼル艦隊の合同部隊だけはある。

「フィールドは破れなかったがビグ・ザム1機撃破に1機中破!良い戦果だ!」

 ソンネンの内心は晴れやかだった。



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