UC0079年12月24日。午後6時。
ア・バオア・クー空域における戦闘は終息し、ジオン軍は翌日午前6時までにア・バオア・クーを退去し、サイド3に向かうこととなった。勿論、サイド3にて武装解除を受けるためである。
しかし、ア・バオア・クーから本国へ帰還しなかった一部艦艇(実際は一部ではなく、70%に及んだが)は月の裏側、カラマ・ポイントに集結。アステロイドベルトの小惑星アクシズを本拠地としての、地球連邦に対する反抗作戦を考えるようになっていく。勿論、地球圏に残存しての反抗を唱える、エギーユ・デラーズの存在もあった。
これに対し、この歴史ではサイド3を経由できなかったため、家族を避難させることが出来なくなっていた将兵たちには、祖国に帰る事を強く望むものたちの姿があった。けれども、アクシズに先行している輸送船から秘匿回線でドズル・ザビ生存の報告がもたらされると、一縷の望みをかけて、アクシズへ、という動きが加速する。
結局、地球圏に残っての情報収集・テロ活動をデラーズ艦隊が行い、地球連邦軍に対する総反撃に備え、離脱艦隊の多くはアクシズへの航路をとることとなる。
あの時、見えた光景は何だったのか。アムロ・レイは無事にトロッターに戻った後、一人、疲れた体をデッキに座らせながら考えている。60億が50億減った。自分の事をあざ笑いながらも、確かに聞こえた安堵の声。
そして、見たことのない光景。要塞内部で戦う自分とシャア。仮面をかぶったあの男と、セイラの前で二人で戦う光景。変だ。自分は要塞内に入っていないのに。更に、あの光景で見た戦いはガンダムだった。乗り換える前の。そして、基地の中で、戦ったよりも弱そうなジオングとビームを打ち合う光景。
わからない事だらけだった。見えた光景はそれだけ。あのゲルググのパイロットは何を知っているのだろうか。ピンク色の髪の女の子のことも見えたが、何をどうしたのかがよくわからない。そしてララァ。ララァの死。自分のビームサーベルで切り裂かれたエルメスが弾き飛ばされるのではなく、自分のサーベルがエルメスを貫いていた。
確実なララァの死。ビームサーベルの熱量で蒸発するララァの姿。違う。本来ならララァはああした死に方はしていない。掠めたビームサーベルがエンジンを貫き、エンジンが誘爆して死んだはずだ。現に、自分は弾き飛ばされてから一分ほどで爆発したララァの姿を見ているのだ。
あのゲルググ、ララァを庇ったゲルググがいなければ、そうなっていた?出会った事を認め合うまもなく、本来なら僕はララァをあそこで殺していたのか?訳がわからない。それに、セイラさんがシャアの妹?ばかばかしい。そんなことは僕は知らない。
見えた光景はたったそれだけで、自分には意味が解らなかった。しかし、アムロにはそれがどうしても気になって仕方がなかった。僕は今なんて考えた?あのゲルググに乗っていた男は、何と考えていた?
本来なら?
そんな言葉がアムロの脳裏をよぎった。本来なら、僕とシャアはああいう戦いをしたんじゃないのか?本来なら僕はララァを殺し、本来ならセイラさんはシャアの妹で、本来ならガンダムを乗り換えることはなく、本来ならあの形のジオングと戦い、本来なら要塞の内部で決着をつけていた?
でも。
でも、僕はここにこうしている。ララァを殺したかどうかが解らずに、セイラさんが行方不明で、セイラさんがシャアの妹かもしれないと言う疑いを抱き、ガンダムを乗り換え、あの形とは別なジオングと戦い、要塞の内部で決着をつける事無くここにいる。
あのゲルググ。手を振った瞬間に返事をしたゲルググ。
一体、アレに乗っていた人はどういう人なのだろう?
アムロ・レイの一年戦争は疑問と共に終了した。
第37話
UC0079年12月29日。ゼブラ・ゾーン空域
「若!シャア・アズナブル大佐をお連れしました!」
デトローフ・コッセル大尉が海兵隊に拘束されたシャアを引きつれてきた。ガーティ・ルーの艦長室。どこかトールの様子がおかしいことにシャアは気づいた。しかし、もうどうでも良かった。夢破れ、ドズルが生きていると言うことは既にジオンに自分の目がない事を察していた。脇に顔を赤くしたあのハマーンとか言う少女がいる。何処となくうれしそうだし、自分を見つめる瞳にこの前のような敵意がない。
目の前の少将が頷くと海兵隊員は拘束を解いて下がった。何のつもりだ、と考えるが、すぐに考え直す。パイロット程度の私の腕では、海兵隊やそれを率いるガラハウ少将に白兵戦では勝てんと見越してのことか。ふ、悔しいが正しい。
沈黙が二人の間に流れる。トールの背後に扉があるプライベートスペースから何か物音が聞こえた。シャアは興味なさげに目をやったが、トールは知らん顔だ。誰か、潜んでいるらしい。
「で、どうだった」
「どう、とは」
トールは口を開いた。心底疲れきっているらしく、声にも疲労が現れている。
「あんだけ傲慢をかまして言いまくった挙句に巨大MAを持ち出してボロ負けした。何か感じるところはあったのか、と聞いている。……何にもなければ本当におしまいだぞ」
「絶望しか残っておりません、少将」
そういうとシャアは仮面を脱いだ。額には傷跡。アムロとの決闘がなかったのに傷が?注視していると言った。
「ジオングからの脱出の際に。私にとっては忘れられない傷となりました。ララァを失い、理想も否定され、打倒すべきザビ家は残っております。しかも、恨みを抱けない人だけが」
「ドズルに恨みはなかったのか」
「……良くしていただきました。それに、良くも悪くも軍人であり、弟思いの方ですから。この艦に囚われてより、アルテイシアに母の事をお聞きしましたし……礼がまだでした。ありがとうございます。妹にはかけがえのない時間だったでしょう。おそらく」
シャアは其処で視線を逸らした。いや、母の事を思い出しているらしい。
「思えばララァにも、可哀想な事をしました。いや、これは愚痴です。いまさら、どうしようもないことです。それに気づけなかったことが、悔やまれてなりません」
シャアがこちらを見る。何か、決意したような面持ちだ。
「ジオングからの脱出の際、ララァの声が聞こえました。戦いの中に自分の生きる活路を見出してきた血まみれの自分に、彼女は優しく、妹に向けた、幼いころの優しさを思い出させてくれました。……今となっては、遅すぎますが」
「これから、どうする」
トールはたずねた。
「アクシズに行っても仕方がありません。どこか、落ち着けるところを見つけようかと思っています。顔が知られているので、まずはアンブロシアの民間区に身を潜めようかと。落ち着いて暮らせるなら、そうしたいのですが」
「アクシズに行かなくても火星と言う手があるが?」
シャアは頭を振った。憑き物が落ちたような顔をしている。ずいぶんと表情が柔らかくなったようだ。まぁ、この影響されやすい男のことだから、何か事件があればまたぞろ虫が騒ぎ出すのだろうが。
「……赤い彗星が赤い星に行くとは、洒落にもなりません。今の私に、赤は重過ぎます」
「確かにそうだな。……奥に君に会いたいと言っている方がいる。会ってやってくれ。私は席を外したほうが良いだろう……落ち着く先については相談に乗る。但し、君の重要性を考えると、所在は明らかにしてもらう」
「解りました。……会いたいといっている人間とは?」
「会えば解る。2、3時間ほどやるから、ゆっくり語るがいい」
ため息を吐くと艦長室のドアをロックして外に出る。まぁ、これで丸くなってくれれば良いが。腰に張り付くハマーンからは、先ほどのシャアの存在も気にしていないほどの喜びの感情が伝わってくる。『エロスは程ほどにな』とかもろ直球じゃないか。倫理的に問題がありすぎる。最後の一線は守ったが、それ以外はほとんどシテしまった。ミツコさんに断ったところ、セイラだけは許さない、とか言われたので避けたが……伝染とか言っていたが、あいつら、人の寝室でことに及ぶ真似はせんだろうな?
二時間ほど艦内の酒保にある喫茶店で過ごした後に戻ってみると、しっかりことに及んで清掃が必要な状態になってしまって艦長室を追い出された。仕方なく私はガーティ・ルーの格納庫に向かった。戦後を間近に控えるとあって、やはり準備には時間をかけておかなくてはならない。
「水天の涙」、かぁ。PS3を持っていないから、詳細わからないんだよな。でも、最終的にデラーズの援助を借りて、月のマスドライバーを使っての地上爆撃を仕掛ける手はずだから、恐らくNシスターズの一番大きいのかなぁ。マスドライバーはフォン・ブラウンにグラナダ、Nシスターズと3つ大きいのがあるから、其処の防備を固めておくぐらいしか方法考えられないし。
あの作戦は、恐らく連邦軍の再編計画が議会を通過したばかりのころだったからあんなに派手に出来たんだろうけど、こっちじゃまた変わるだろうからな、とか何とか考えながら、格納庫の前に差し掛かると声が聞こえてきた。
「もう、あんたさっさと整備させなさいよ!」
「システムによれば、私のメカニックが出来るのはテューディ嬢のみです。セニア嬢。私は確かに一介のA.Iですが、入れる体が限られている以上、無茶なエンジニアリングを認めるわけにはいきません」
格納庫の中を覗くと、ヴァイサーガの中のキットと、呼び出したメカニック、セニアが喧々諤々の論争をしている。どうやら、自分に出来ないことがあるとわかったセニアが、ヴァイサーガを実験台にして如何にかしようと考えたらしい。それを、現在の所キットのようなA.Iに対応している機体がヴァイサーガしかないため、喧嘩になっているようだ。
セニア・グラニア・ビルセイア。魔装機神の登場人物である。論理飛躍可能なコンピューター、デュカキスを作成し、ガンダムを参考に驚異的な性能を誇る魔装機デュラクシールを作り上げた凄腕のメカニック・ハッカーである。もう一人魔装機神から、体がないために狂ってしまったんだったら体作れば良いじゃないの、とテューディ・ラスム・イクナートも呼び出してある。
セニアが作ったデュカキスの論理飛躍可能なんてコンピューターとしては凄まじすぎる能力であることに気づいている人間は恐らくほとんどいないだろう、使える人材だと呼び出したが、メカマニアなところで意気投合してしまったのがうれしかった。テューディは体がなかったために、好きな男を作るわ仕事が充実するわの妹を恨んだのはそりゃしょうがないだろうと体を作ってみたところ、精神状態が一気に改善したことはうれしい。それに頼れるメカニック兼研究者を考えた場合、作った機動兵器の性能と人格からすると彼女ら二人がまず出てきた。
正直、ビアン博士に任せた場合、無駄に剣戟のモーションが増えそうで。いや、好きなんですよ、時代劇。……おぅ、ヴァイサーガの強化に必須の人材じゃないか。でもなぁ、あの濃いのを呼ぶのもなぁ。かといってリシュウ・トウゴウの示現流は趣味じゃないし。
それはともかく、彼女らはこれでもかという最強主義者なので、専用機にしても色々考えてくれるそうだ。一番うれしかったのは、彼女ら二人が「値段制限」という誰もが避けて通りがちなところにもチャレンジしてくれるところ。早速Nシスターズの太洋重工に席を用意させ、また専属メカニックを御願いすることとした。能力向上のポイントが洒落にならないくらいに高かったけど、それだけの価値があるのだ。
「テューディがお茶に行っている間にチョちょいと」
「……あなたのチョちょいがそれで終わったためしがないのですが」
「随分仲良いな」
整備用の台の上でこちらを見るセニア、そして機体の頭部をこちらに向けるヴァイサーガことキット。うぉ、シュールだ。……あ、淡いブルー。イタイイタイゴメンナサイゴメンナサイ。ミニスカなんだから仕方ない……折れるってば!
其処から始まる技術論の開陳だが、実際のところOG敵方ロボットに精通しているのはテューディの方。ハイ・ファミリアの作成が元となる精霊がいないため宇宙世紀世界での作成は無理なようだが、A.Iによる自立制御については問題がない事が判明。無理してファミリアを作る必要は無い、とテューディは言っていたが、それを聞いた私は少々不満顔だった。勿論、しゃべるペットを期待していたのである。
ため息を吐いたテューディは、精霊の一欠けらでも見つけてくれば、イスマイルに用いた技術を使ってみる、と約束してペット好きな私を喜ばせてくれたが、あれは絶対に何かを考えている目である。まぁ、危険なことはしないといってくれたし良いだろう。なんか目が気になったけどアレはどういう意味かなぁ。……ははは、システムのバカ野郎に天然排除されてますから察しはつきますが、見たくないだけです。
「トール、あなたからもこのわからずやのバカA.Iに何とか言ってよ!」
「トール、あなたは私の意見とこのお嬢さんの意見のどちらを取ります?勿論、帰ってきたテューディのご機嫌も考える必要がありますが」
頭が痛くなってきたのはここだけの話だ。
当然、格納庫は重力管制区の外で、重力がかなり小さくなり、体重がほとんどなくなっている。それに気づいたハマーンが後ろから人の体を登ってきたが、とりあえず顔を頭の横から出したいと伝わってきたので黙認する。もういい加減何もでないわ。喜んでいる理由を考えるとなきたくなる。何が『エロスは程ほどにな』だよ……。しっかりLOルールでポイント減少かけてるじゃないか。
「アンタら!何しているの!」
「ゲッ」
「はぁ」
「これはテューディ、お帰りなさい」
三者三様の返事を返すと、燃えるような赤い髪の女性、テューディ・ラクナートはため息を吐きながら言った。
「セニア、アンタまたヴァイサーガに手を出したね?まだマッチングの調整終わっていないんだからいじくるのはおやめってもう何度か言ったでしょう!キット、あなたもまともに付き合うんじゃなくて、わざわざそのマニピュレーターを動かせるんだから、つまみ上げて下におろすぐらいは出来ないの?」
「……テューディ、ヴァイサーガのプログラム内にはそういうプログラムはありませんし、私も未対応ですから、やったらセニアがプチッといって赤く染まります。あまりオススメ出来ません。……処理も大変そうです。オススメできません」
テューディはため息を吐いた。
「トール、キットのA.Iはアンタのデザインでしょ!?どういう思考をインプットしたの!?」
うお、矛先がこっちに来た。よし、元気に答えよう。
「学者系の老齢執事タイプ!たとえるならバットマンのアルフレッド・ペニーワース!しかしてその正体はグリッソムだ!」
「……あたしには如何見ても愉快犯に見えるんだけど。持ち主に似るんかねぇ」
さすがテューディ。システムの秘密を知っている女性の中では年長組に……とか考えていたら頭の横を何かが通り抜けていった。あれー?髪の毛がぱらぱらして、何本か落ちていくぞー。
「一体どんな裏技」
「目よ目」
ため息を更に重ねてからテューディは言った。いかん、いかんよ?ため息は女の幸せを……とか考えたら手に持った何かを構えたのであさっての方向を向くことにした。黙ったのを確認してテューディは続ける。
「……しかしまぁ、トールが持ち込んだ技術って完全に宇宙世紀の規格から離れてるわよね?特にワンオフ系の技術。あれ、かなり難しいわよ。オルゴン・クラウドも防御用にしか使っていないからあんまり実感できていないでしょうけど、ライフルやソードなんて一緒に使ってたら絶対にトラブルが発生するわ。技術的に遊びがすぎてる装備は特にそうね」
ふんふん、と頷く。元々リアル系が好きだから、銃砲系や非実体剣とかの、技術的な遊びがない装備以外に関してはあんまり使っていなかった。と言うよりも使えなかったのが正しい。一年戦争中にアカシックバスターやブラックホール・クラスターかまして遊ぶわけにも行かない。
「っていうか、めちゃくちゃ賢いか運が良いわよ、トール。あそこまで戦えた理由が、あんたのリアル武器好きなんだもの。オルゴンクローだとか、オルゴンブラスターとか、あとはそうねぇ、分身とか使っていたら、絶対に途中でブレーカーが落ちたみたいになったはずよ。笑えないわ」
なんだ、命助かった理由がそれか……そうか、今までの転生者の第一の関門がこれか。曰く、『俺Tueeeeeeee!に落とし穴アリ』……どこのホーク・ロイザーだ。しかし、大きな前進だ。テューディとセニアがいれば何とかしてくれるはず……
そういって見つめると二人とも胸を張った。おおぅ、セニア意外に胸がある。ステータスだと思っていたのに。あれか、SFCの魔装機神ではなかったけど、新しいDS版LOEが出るにあわせて増りょ……とか思っていたら胸から何か浮かんできた。……ああ、パッドらしい。そうか、セニアはそういう
「記憶を失ええええええええええええっ!」
其処からの記憶があいまいなのだが、とりあえず、よしとしよう。
一年戦争が終了したことで、歴史どおりなら60億近くの人間が死傷した戦争は8億の被害で終結した。これによりポイントとして、うれしいことに250万と言う巨大なポイントを得ることが出来たが、これからを考えると決して多くはない。これに連邦軍の腐敗減少とララァの生存、スペースノイドの独立をあわせて290万近いポイントとなったが、新たな問題も考えると、使いどころは慎重になる必要がある。まぁ、セニアとテューディに早速30万使って能力Upしたけどさ。
最後の戦いでマット・ヒーリィ中尉を救出することが出来たが、ティターンズがEXAM機を入手し、初期型とはいえファーヴニルを獲得しつつあり、アウターガンダムで描かれた無人MSについてもタッチしていることがわかった以上、グリプス戦役が始まるまでにはティターンズとの暗闘が中心となっていくだろう。結局、マット中尉もティターンズ所属から撃墜されての行方不明扱いになってしまった。……正常な状態に戻るまで、ナノマシンを使っても1年はかかるらしい。
ゴップ大将は離任して連邦政界に打って出る事を望んでいたが、戦後の連邦軍の軍政に不可欠の人材であるとして、その退任は83年まで延期されることとなった。これはとてもありがたい救いとなる出来事だが、あまり深く付き合いすぎると、連邦内部の政争で大将の地位も危うくする可能性が出てきたため、独自に動く権力を持つことは重要だろう。この点、閣下と話して連邦内部に一勢力を、ジャミトフ相手に作り出す必要がある。
そのため、地球では樺太基地をランドルフ少将の指揮下に保持することと、宇宙では月面に基地を持つ、連邦軍の憲兵隊としての地位を望んでみた。しかし、やはり難しいとの事。憲兵隊がこの一年戦争で壊滅しているため当初問題はそんなになかったらしいが、議会の一部から圧力がかかり始めているらしい。ジャミトフか?いや、KATANAを考えるとあのヤクザ組織が何かをしたのかもしれない。頭でっかち恨み骨髄のツルギ中佐か、あんまり相手にしたくないなぁ。
戦争が終了したことで改めてシステムと向き合ってみたが、やはりこのシステム、こちら側に隠していたことがあるようだ。
ミスマッチングの問題が最大の落とし穴だが、そもそも宇宙世紀という歴史上、あまりにもかけ離れた技術体系の導入はしてほしくないと考えているらしい。勿論、NTや強化人間、それにおそらくこれからは数的に優位に立ってくるだろう勢力と戦うためにはそれが必要なのだが、安易な技術のインフレは避けたがっているらしい。
解らないでもない。技術体系というものは元となる技術があり、それが研究されて発展していくもので、たとえるならば樹木の成長といったところだろう。しかし、ここに新しい技術が来る、というのは、単に樹木を移植するというレベルではなくて、違った生態系を丸ごと移植する、と言うのに近い。システムが避けたがるのも当然だ。最大のそれ―――ミノフスキー物理学を既に経験している以上、解らない話ではない。
色々調べてみると、ポイントキャラクター強化機能の方が却って使えることが判明した。先ほどのミスマッチングの問題もこれでどうにかなるらしい。なので早速使用したわけだ。魔装機については、おいおい考えていく必要があるだろう。何気に、セニアだけでも充分だろうと思う人が多いだろうが、技術を入手してテューディを呼んだ最大の理由は、バラバラにしないと勝手に再生を始めてしまうなんていう、魔装機版デビルガンダムのイスマイルが欲しかったからだ。宇宙空間でMSの四肢を失うことがあそこまで響くとは思わなかった。
……流石に乗り手を侵食しかねないDG細胞は避けたいので、似たような技術を持っている機体を考えて出てきたのはこれだったと言うお話。良い機会だからマサキとウェンディも呼ぶか?しかし、あの方向音痴のトラブルメーカーを考えると、グリプス以外で呼べないな……不明機との戦闘でボンとかいや過ぎる。
システムでステータスを確認するとミスマッチングもポイント強化でどうにか出来るようだから、やはり戦力をどうポイントを使って整備していくかが重要になる。オルゴン・クラウドとラースエイレムに救われた事を考えると、異星人技術のマッチング問題は絶対に解決しておかなければならない。システムによると、キャラクターの素の能力も関係ある、との事だったので、やはり主人公級、あるいは能力的に優れたキャラクターは必須になっていくのだろう。技術レベルはどうにかなっているが、私自身の技能レベルがお寒い限りだし。
というか、改めて見たけど、よくこんな技能レベルで生き残れたよ、ホント。ポイントも溜まった事だし、訓練訓練の毎日だな。
しかも、成長性で獲得できる能力にポイントを使えば、そのポイントは無駄と言うことになるらしい。ソーラ・レイの際にハマーンにプレッシャーを避けさせるためにポイントを消費したが、システムによれば、年齢向上と共に、NTにはこうした措置は必要なくなってくるらしい。感受性の強さと比例するデメリットのため、下手にポイントでシャットアウトすると、レベルが高くても総合値としてのNT能力が下がる結果につながるという。
拡大による技術量、能力量というよりも、質が問題になってくると言うわけだ。こりゃ頭が痛い。
そんな事を考えていると格納庫にシーマ姉さんが入ってきた。どうやら、一年戦争が無事終了したと言うことで海兵隊主催の宴会に入るらしい。姉さんはア・バオア・クーでの撃墜で酒が飲めないことを悔やんでいた。良い薬だと思ったのは秘密にしておく。
まぁ、今は戦争の終了を祝いましょう。でもなぁ。
背中で寝ているこのピンク色を如何しよう?
トール・ガラハウ改めミューゼルの一年戦争は、桃色で終わったのである。
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申し訳ありませんがEXAM機との戦闘をスルーしました。これで一年戦争編終了であります。