宇宙世紀0079年9月15日、受信のみに振り向けていた通信回線に、歴史どおり、サイド7、1バンチでの連邦、MS運用計画が察知されたことを確認しつつ、我々シーマ艦隊はルナツー襲撃任務を予定通り実行していた。
ルナツー襲撃作戦は、事前にシトレ本部長を通じて第一軌道艦隊司令のビュコック中将に連絡が行っており、地球軌道上のジオン軍の地上への増援の迎撃任務を題目に第一軌道艦隊が出撃。シーマ艦隊は艦隊が留守のルナツーを襲撃し、港湾設備および居住区の破壊を行う予定であった。
シトレ率いる連邦軍が、この段階でのルナツー基地の襲撃に反撃を行わない旨を選択したのにはいくつか理由がある。第一に、ルナツー基地の攻撃を看過しなかった場合、優勢なジオン海兵隊との交戦を行うこととなり、せっかく艦隊戦力を維持している第一軌道艦隊の戦力を減少させる可能性があること。ビンソン計画が完了していない現在の連邦軍にとって、ルナツー駐留の第一軌道艦隊の艦隊戦力は、何を持ってしても維持し続けなければならないからだ。
そして、もしルナツー基地が攻撃を受けて港湾施設に被害が生じたとしても、艦隊はサイド7に移動し、1バンチ~4バンチコロニーの港湾施設を使えば良いという判断もあった。また、サイド7には新型MSの試験にあわせてかなりの数の工作部隊が入っており、港湾施設の維持拡張を行っていたこともある。それらの部隊をまわして、敵が去った後でルナツーの施設の復旧を行えば良いと判断していた。
しかし、新任のルナツー基地司令、ハイアット大将は、この「大将会議」の決定を不服とし、第一軌道艦隊に関わらない戦力を持って交戦の準備を整えていた。その準備を行う部隊には、、MS運用試験隊として送られていた、2機のジムも含まれていたのである。
「こりゃ無理だぜ、ライラ少尉。機体を失えば少将にどやされるし、ハイアットの言い分は完全に命令無視だ。生き残ることを最優先に行動するしかないな」
ヤザン少尉からの通信。ライラ・ミラ・ライラ少尉は鼻で笑った。
「ヤザン、臆病風に吹かれたのかい?新型のMSをようやくこちらも配備したんだ。そりゃ撃墜はまずいだろうけど、戦う姿勢でも見せておかなきゃ帰るまで肩身が狭いよ?」
ヤザンはフン、と鼻を鳴らすと
「まぁ、そりゃそうだわな。OK了解した。ツーマンセルで墜せる奴だけ行くぞ」
ここに、連邦、ジオン初のMS同士の戦闘が始まったのである。
第13話
おいおいおい。なんでヤザンとライラが出てくるんだよ。はっきり言って、現状のジムじゃあ、こっちのゲルググMの相手にならんぞ。MSを持った事で慢心してるのか?
「姉さん、連邦にもMSがいるみたいだ。ちょうど良いから私がやる。姉さんはコッセルと一緒に、外に展開しているフネの相手を頼むよ……紫ババアに難癖つけられたくないから、適当に苦戦ぽくして!」
「あいよ!」
シーマ姉さんの返事を確認するとゲルググのフットレバーを踏み込み、M90はシールドに格納、一気に加速する。オルゴン・エクストラクター特有の緑色の粒子をスラスターから吐き出しながら、重力制御技術で打ち消されるギリギリの10G程度まで加速。一気に距離を詰める。
「なんだあ、新型!?ザクの三倍以上の速度って……赤い彗星以上の奴がいるのかよ!?」
受信専用のオープンチャンネルにしてある通信機から響く、サラミスの乗員のものらしいセリフを背景に二人のジムが盾の代わりにしているサラミスに接近。エンジン近くをビームサーベルで切り裂く。推進剤用のパイプを切り裂いたのか、派手に爆発が起こるが、基礎設計が優れているだけあってすぐの撃沈とはならない。
そのまま右舷の第二艦橋を足がかりに反対側左舷に向かうと、ヤザンのジムに切りかかる。
「早い!?ジオンの新型ぁ!?」
そのまま懐に飛び込んでサーベルで90mmマシンガンを切り裂くと同時に、胴体部分に向けて蹴りをいれる。慣性に従ってルナツー表面に激突したジムの頭部を踏み潰すと、ライラのジムから発射される90mmマシンガンをシールドで防ぐ。
「ヤザン!」
「……クソ、カメラがやられた……バーニアがつぶれて……」
「動くんじゃないよ!」
そういうとライラはバーニアを吹かし、弾幕を張りながらこちらに接近する。こちらの装甲はルナ・チタニウムやガンダリウム以上の硬度を誇るZ.O合金製だ。この時代の90mm程度では被害も受けない。流石にメインカメラなどに当たれば損傷はするから、シールドで防がせているが。
「効かない!?」
驚いた隙に機体を背後に回らせるとマニピュレーターでバックパックをつかむ。高出力にものを言わせてバックパックをむしりとると、誘爆の危険がなくなったことを確認後、背後から蹴りつけてルナツーへ。仕上げに頭部をM90で打ち抜く。これで終わりだ。
コンソールを操作して、今のジムとの戦闘記録を消去し、消去した操作ログも消すと、目撃者らしい2隻のサラミスに目標を定め、エンジン部分を切り裂いて轟沈させる。この機体に関する情報を、あまり広くもらすわけには行かないからだ。
信号弾。360mmジャイアント・バズを持って港湾部・居住区攻撃を担当していた部隊が攻撃に成功したようだ。長居は出来ないため、早速帰還する。ヤザンとライラに変な影響出ていないといいけれど……と思いつつ、私は機体を「マレーネ」へと向けた。
ルナツー襲撃作戦は、満を持して出撃したハイアット大将の顔を青ざめさせるものだった。ザク、ドム、グフといったこれまでのMSとは違う、新型で構成された部隊は、戦闘の実時間およそ15分ほどで、ルナツーの第1、第2番埠頭とそれに付随する居住区を攻撃し、破壊した。兵員の多くは第一軌道艦隊として出撃しているから、人員の被害は抑えられているが、ルナツーの基地機能は確実に低下している。
ハイアット大将は頭を抱えた。地球至上主義者としてジーン・コリニー提督(大将)の派閥に属する彼がここにいるのは、最近連邦軍内部で勢力を強めている、シトレ・レビル閥に対抗するためだ。ルナツー基地司令と言う役職も、シトレの懐刀であるビュコック中将とその参謀長ヤン少将へ打ち込んだ楔となるためのもので、このような被害を受けての敗将となるためではない。
責任を取らされることを思い、愕然となるが、しかし、と思いなおす。コリニー提督も派閥の領袖がほしいところ……上手くそこをつけば、降格や予備役編入は免れるかもしれん。まさかジオンの新型があれほどの性能だとは思いもしなかった。その新型の性能を見極められなかったのは諜報を担当しているはずの第3集団の責任、と強弁すれば良い。
しかし、その思惑は上手く行く事はなく、ハイアット大将は少将に降格の上、予備役編入を申し渡されることになる。連邦の軍政をつかさどるゴップ大将が、自身の懐刀となりつつある第三集団のミューゼル准将に腹を切らせるわけがなく、コリニー提督も後任の大将枠に自派閥のワイアット中将が入ると聞くと、ミューゼル准将への批判の矛先をおろしたのである。
連邦に戻った後に、ルナツー襲撃作戦の余波が意外なところにまで及んでいたと聞き、びっくりしたトール・ミューゼルです。
さて、9月16日にサイド7が歴史どおりシャアの部隊の攻撃を受け、多数の戦死者を出したが、その流れがもう、おかしなことになっています。本来ならサイド7に寄港するホワイトベースを追撃して、シャアのファルメルがRX計画を発見する流れでしたが、今回はシャアのサイド7近海への投入が送れたため、9月16日にファルメルが宙間機動試験中のガンダム1号機を捕捉したことで話が始まっています。
しかも、何のバタフライ効果か、サイド7内部に侵入したザクと最初に交戦したのはガンダム1号機。パイロット名を見るとファレル・イーハ中尉とあり、「アーケードが入るとは……こりゃサイコMK-Ⅲは絶対だな」と頭痛がしてきました。
ソレはともかく、性格が最悪なのも原作どおりで、倒れたザクに追撃をかまそうとしていたところを背後からデニム曹長のザクに打たれ、バーニアを損傷し転倒。あわや鹵獲というところで、アムロ少年の乗る2号機が動き出し、ザクを倒しました。
ここでもバタフライ効果が発生し、動力パイプを引きちぎって二号機が優位に立つのをみたファレル中尉が猛然と反撃を開始。流石にコロニー内で大爆発をさせないと言うところまで頭が働いたらしく、コクピット部分の破壊にとどめてなんと、ザクⅡ2機を鹵獲。テム・レイ技術大尉も酸素欠乏症になることなく無事で、大喜びした挙句に息子を無理やり連邦軍の志願兵に放り込んだと言いますからなんというご都合主義展開、と頭が痛くなりました。
その上、本来なら魚雷艇でパオロ艦長が時間稼ぎに入るところを急行したサラミスがファルメルに攻撃をかけたことでファルメルが撤退。士官の大部分が戦死し、候補生たちを昇格させて士官とし、さらにはサイド7、1バンチの住民で使える人たちを無理やり軍属として、現在、ルナツーから地球に降下すべく、大気圏突入にはいろうとしている、とのことでした。ああ、勿論、ルナツーで大破したジムを抱えたヤザン、ライラ両少尉を乗せて。
頭を抱えました。どんなカオス展開だよ、これ……。これで降下した場所がジャブローだったりしたら泣くぞ俺。いままで何とか原作に倣った展開を目指してきたのに、一番大事なところでこれとか。まぁ、ビュコックの爺さんが護衛にマゼラン1隻にサラミス4隻なんて大兵力を出したもんだから、そうなるとは思うけどさぁ……
悲しみにくれる私を癒してくれたのはカーン家三姉妹の方々でしたが……あれ?いつの間に増えたんだろう?私は確か、インゴルシュタットに乗ってアクシズの父親のところに行くように言った筈なのになぁ……
「ザクを一個小隊失ったぁ!?」
シャア少佐からの報告を受けたドズルは叫び声をあげた。第一軌道艦隊相手とは言え、旧式のマゼラン、サラミス相手にザク三機を失うなど、赤い彗星の指揮では考えられなかったからだ。
「サイド7、1バンチはやはり、工業ブロックがMSの工場となっています。敵の新型を相手に三機のザクを失い、現在、ファルメルには私とスレンダーの2機しかおりません。補給を御願いいたします」
「もう一度仕掛ける気か?ルナツーのビュコックのところに入られては手出しが出来んぞ」
シャアは否定した。
「奴らは研究結果をいち早く地球に持ち帰りたいはずです。ルナツーは、ガラハウ艦隊が襲撃し、基地機能を低下させていますから、護衛につけるとしても戦力としてはたかが知れているでしょう。大気圏突入を狙う可能性が高いため、軌道上で仕掛けます。新型の性能は高く、戦局を左右しかねません」
ドズルはため息を吐いた。
「トールの艦隊がおればな。ちょうど、月面工廠で組みあがった新型を導入したばかりだった。何機かもらっておくのだったな。おぅ、ちょうどいい。トールが持ってきた簡易宇宙型の先行量産型が30機ばかり届いたばかりで余裕がある。何機か回させよう。ガデムのパプワを送る。地球軌道上までの航路で落ち合え」
「了解いたしました」
ルナツーへ入港したホワイトベースは、史実どおり新基地司令ワッケインの詰問を受けるも、第一軌道艦隊ビュコック中将の言を容れて、パオロ中佐の機密規定違反を寛恕、引き続きジャブロー機関の援護を行うことを決定し、大気圏突入にマゼラン級「テメレーア」、サラミス級「マダガスカル」など6隻からなる第32戦隊を護衛につけた。
第一軌道艦隊と言う大戦力を前にしては流石のシャアも潜入・爆破工作などという事は考えず、当然のごとく大気圏突入時の追撃を狙ったため、ガデムが戦死することはなく、ファルメル後部にMS搭載、および推進剤タンク兼用のカーゴを搭載。同時にザクⅡ2機、ドラッツェ4機の補充を受け、追撃任務を開始した。
同時にホワイトベース内では損傷機の修理作業が最優先で行われていたが、頭部とバーニアを損傷していたジムの修理は早々に放棄され、ガンダム3号機のパーツを用いた1号機、2号機の整備が優先。一部ガンキャノンのパーツを流用し、大気圏突入前に修理を終えることができたのである。
「新たに諸君ら7名のパイロットを得たことは、誠に幸いである!」
シャアはソロモンより派遣された7名のパイロットを前にして言った。
「20分後には大気圏に突入する。このタイミングで戦闘を仕掛けた例は過去にない。当然、連邦のフネも、全神経を操船のみに集中しているだろう」
シャアはファルメルとホワイトベースの位置関係が映し出されている艦橋前の大型モニターを示した。
「当然、ザクは大気圏突入の摩擦熱には耐えられないため、奴らはこの段階での攻撃を予測していない。私とスレンダー、ヨセフ、クラウンは恐らく出撃してくるだろう、敵の新型MSを撃滅する。可能な限り拘束し、敵艦に帰還させないことが第一だ。アダー曹長のドラッツェ隊は、装備している90mmマシンガンとシュツルム・ファウストで敵艦のハッチ部分に攻撃を仕掛けてもらいたい。帰還の妨害が出来ればそれで良い。全くの新型だから無理はするな」
ドラッツェにはビームサーベルが装備されていない代わりに、固定された90mmマシンガンと盾内側にシュツルム・ファウスト2発を装備している。
シャアは全員の了承を確認すると続けた。
「恐らく、敵MSはともかく新造戦艦は降下に成功するだろう。私は地上のガルマ大佐と協力すべく、戦闘時間が15分を経過した段階で、ファルメルから発進したコムサイに戻る。ヨセフ、クラウン、スレンダーのザクもこれに同乗しろ。アダー曹長のドラッツェ隊は宇宙用であるため、ファルメルに帰還の上、ドレンの指揮下に入ること、以上だ」
10月1日、またもや連邦からジオンへ戻り、北米への潜入降下作戦を行おうと準備しているトール・ガラハウです。9月23日に行われたホワイトベースの大気圏突入ですが、またカオスな展開になっています。
大気圏突入前に攻撃を仕掛けたシャアの部隊を、ファレル中尉とアムロ准尉の2機のガンダムが迎撃し、ザク1機、ドラッツェ3機を撃墜して、歴史どおり大気圏に突入。北米に降下しています。イレギュラーだったファレル中尉は、ガンダム1号機の耐熱装備が未装備だったことが原因で大気圏中で機体が爆散。これに対して耐熱装備を持っていた二号機の方は、、耐熱装備を駆使した上でホワイトベースに取り付くことに何とか成功し、無事、地球に降下しました。
問題なのは、本来ならばジャブローに向かう予定のホワイトベースが、我らがスポンサー、ゴップ大将の命令により、安全なニューヨーク → ジャブロー・ルートから、西海岸の敵中突破 → 太平洋 → 樺太基地なんていうルートにへと変更を掛けられたことです。
ゴップ大将を問い詰めたところ、機体の開発設備をかなり樺太に移動させているため、ジャブローではジムの量産にかかりきりになっており、ジャブローにガンダムを持ってこられても困る、という話でした。実際、サイド7から大気圏、そして恐らく西海岸で戦闘をすることになるガンダムの持つ戦闘データは、量産機であるジムに移しかえるだけでも効果があること間違い無し。一刻も早くMSを戦力化したい連邦としては、東回り航路を使って移動する時間が惜しいことが第一の理由だ、とのことでした。
となると、歴史どおりシアトルにおいて、ガルマ・ザビ大佐の戦死という事件が起こる可能性が高くなり、ソレに対する対応のため、地球に降下することとなったのです。地球に降下して目的を果たした後は、樺太から出撃させた潜水艦に乗り込んで樺太経由で月面に帰還する予定です。
しかし、やっぱりNTは異常だよなぁ、と改めてため息を吐きたくなります。サイド7から大気圏、および9月23日から24日にかけて行われた、地球攻撃軍との戦闘結果を受け取りましたが、アムロの乗るガンダム二号機は、サイド7で2機のザクⅡ、地球降下の際に1機のザクⅡと2機のドラッツェ、地上に降下してからはドップを8機にマゼラ・アタックを12両、援護に出撃したザクも3機撃墜と、異常な戦果を挙げている。
俺、これと、いや、さらに悪魔のように成長したこれと、あと3ヶ月ぐらいしたら戦闘する可能性があるんだよな。
今から戦々恐々です……ポイントは自分の生存第一に考えよう。
ということでパイロット能力に関係する、重力制御技術と自分のパイロット技術を上げてみた。そろそろモンシア、ジェリド、ザビーネと微妙なキャラが続いたのでマシなのが出るかと思ったらカテ公かよ……。シュラク隊のお姉さま方はどれもヒットしまくりなのだが……。彼女らにあえるまで後70年かぁ……
一方、重力制御技術のおかげで、テスラ・ドライブがやっと生産可能に。やっぱりリオンシリーズは使い勝手良すぎるものなぁ。ポイントも高いのか、と改めて納得。グリプスあたりで考えてみようかと思いました。